説明

微粒状填料の水性スラリー、その製造方法および填料を含有する紙の製造のためのその使用

本発明は、少なくとも部分的にアニオン性ラテックスで被覆された微粒子填料の水性懸濁液であって、微粒子填料の水性懸濁液を少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解されたデンプンとを含む水性分散液で処理することによって得られる懸濁液と、該水性懸濁液の製造と、填料を含有する紙、ボール紙または板紙の製造であって、紙材料を脱水することによって行なわれる製造における、紙原料の添加剤としてのその使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリー、その製造方法ならびに高い乾燥強度を有する填料含有紙、填料含有ボール紙および填料含有板紙の製造における、紙原料の添加剤としてのその使用に関する。
【0002】
填料含有紙の製造において、填料スラリーを繊維懸濁液に添加した後、この繊維懸濁液を抄紙機のフォーマーに移す。可能な限り多くの填料を紙シート中に保持するために、普通は歩留向上剤または歩留向上剤系を填料/繊維懸濁液に添加する。紙に填料を添加することにより、製紙業者は、シート特性に数々の改善を実現することが可能になる。このような特性には、不透明性、白色度、触覚特性および印刷適性などの特性が含まれる。
【0003】
さらに、その填料が繊維よりも安価である場合、填料の添加または添加の増量は、繊維含有量の低下につながり、ひいては紙の製造コストの削減にもつながる。填料含有紙または特に高い填料含有量を有する紙は、填料を含有していない紙または比較的低い填料含有量を有する紙よりも容易に乾燥させることができる。この結果として、抄紙機をより高速で、かつより低い蒸気消費量で作動させることができ、これにより生産性が向上し、かつコストが削減される。
【0004】
しかしながら、繊維懸濁液への填料の添加には不利点もあり、それらの不利点は、さらなる製紙助剤の添加によって部分的にしか補償することができない。所定の坪量に対し、使用可能な填料の量に関しては限度がある。紙の強度特性は、通常は、紙中の填料の量を制限する最も重要なパラメータである。また、他の要因、例えば填料歩留、紙原料懸濁液の脱水、ならびに歩留およびサイジングにおける場合によっては増加する化学物質の必要量もここで影響を与えうる。
【0005】
紙の強度特性の損失は、時として、乾燥強度増強剤および湿潤強度増強剤を使用することで、完全にまたは部分的に補償することができる。この場合の常用の手段は、乾燥強度増強剤としてのカチオン性デンプンの紙原料への添加である。また、合成の乾燥強度増強剤および湿潤強度増強剤、例えばカチオン性またはアニオン性のポリアクリルアミドをベースとするものも使用されている。しかしながら、添加量および強化効果は、多くの場合限定される。同様に、填料の増量による強度の損失に対する補償効果、ひいてはそもそも実現可能な填料の増量も限定される。さらに、乾燥強度増強剤の使用によって、全ての強度特性が同程度に向上するわけではなく、時としてせいぜい不十分な程度にしか向上しない。この重要な例は引裂強度であり、これは他の強度パラメータと比較して、デンプンまたは合成乾燥強度増強剤の使用による影響をわずかにしか受けない。一方、紙中の填料含有量を増加させることは、概して引裂強度に極めて大きな悪影響を及ぼす。
【0006】
さらなる重要な特性は、紙の厚さおよび剛さである。同じ坪量での填料含有量の増加は、紙密度の増加と、紙シートの厚さの減少とをもたらす。後者は、紙の剛さをかなり低下させる。この紙の剛さの低下は、多くの場合、単に乾燥強度増強剤を使用するだけでは補償することができない。しばしば、追加手段、例えば、抄紙機のスムージング装置のプレス部、カレンダまたは乾燥部における機械的圧力の低下が必要となる。これは、填料の増加による厚みの損失を完全にまたは部分的に補償する。
【0007】
国際公開(WO−A)第03/074786号は、ポリマーで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリーを開示している。これらのポリマーは、紙用コーティングスリップのための結合剤であり、そのガラス転移温度は、−40〜+50℃の範囲、好ましくは6℃未満である。実施例において使用する結合剤のガラス転移温度は5℃である。
【0008】
未公開の欧州特許出願(出願番号第08159619.9号)は、ガラス転移温度−5℃〜−50℃のアニオン性ラテックスで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリーを開示している。
【0009】
同様に未公開の欧州特許出願(出願番号第08159631.4号)は、重合単位の形態で組み込まれたホスホン酸基および/またはリン酸基を含む少なくとも1つのモノマーを含むアニオン性ラテックスで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリーを開示している。
【0010】
したがって、紙の製造において、既知のスラリーと比較して改善された裂断長および印刷適性を有する紙を生じる、さらなる微粉状填料の水性スラリーを提供することが本発明の目的であった。さらに、本発明による方法で製造された紙は、高い填料含有量および高い乾燥強度を有するべきである。
【0011】
この目的は、本発明によれば、アニオン性ラテックスで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリーであって、微粉状填料の水性スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液で処理することによって得ることができる水性スラリーにより達成される。
【0012】
本発明による水性スラリーは、例えば1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%の少なくとも1つの微粉状填料を含む。少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液の量は、例えば0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜3質量%(填料に対する水性分散液の固形分)である。アニオン性ラテックス対分解デンプンの比率は、例えば、30:1〜1:1、好ましくは10:1〜1:1、特に好ましくは5:1〜1:1である。
【0013】
また、本発明は、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液0.01〜10質量%(填料に対する水性分散液の固形分)が少なくとも1つの微粉状填料の水性スラリーに添加されるか、あるいは少なくとも1つの微粉状填料の水性スラリーが、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液に導入され、それらの成分がそれぞれ混合される、水性スラリーを製造する方法にも関する。
【0014】
本発明は、さらに、紙原料を脱水することによる、高い乾燥強度を有する填料含有紙、填料含有ボール紙、または填料含有板紙の製造における、紙原料の添加剤としての上述の水性スラリーの使用にも関する。
【0015】
本発明に関連して、ラテックスという用語は、好ましくは分散液またはエマルジョンの形態で使用される水不溶性のホモポリマーおよびコポリマーを意味すると理解される。
【0016】
本発明に関連して、分解デンプンという用語は、1,000〜65,000の平均分子量Mwを有するデンプンを意味すると理解される。
【0017】
このラテックスは、好ましくは、少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%のいわゆる主モノマー(a)を含む。
【0018】
主モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、最大20個の炭素原子を含むカルボン酸のビニルエステル、最大20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ハロゲン化ビニル、1〜10個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子と1つまたは2つの二重結合とを有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物から選択される。
【0019】
例えば、C1〜C10−アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートを挙げることができる。
【0020】
とりわけ、アルキル(メタ)アクリレートの混合物も適している。
【0021】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えば、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、および酢酸ビニルである。
【0022】
最大20個の炭素原子を有する適切なビニル芳香族化合物は、ビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレンおよび4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンであり、好ましくはスチレンである。エチレン性不飽和ニトリルの例は、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルである。
【0023】
ハロゲン化ビニルは、塩素、フッ素、または臭素で置換されたエチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニルおよび塩化ビニリデンである。
【0024】
1〜10個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテルとして、例えば、ビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。1〜4個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテルは好適である。
【0025】
2〜8個の炭素原子と1つまたは2つのオレフィン二重結合とを有する脂肪族炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンを挙げることができる。
【0026】
好適な主モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、およびアルキル(メタ)アクリレートとビニル芳香族化合物、とりわけスチレンとの混合物(まとめてポリアクリレートラテックスともされる)、または2つの二重結合を有する炭化水素、とりわけブタジエン、あるいはそのような炭化水素とビニル芳香族化合物、とりわけスチレンとの混合物(まとめてポリブタジエンラテックスともされる)である。
【0027】
主モノマー(a)に加え、ラテックスは、さらなるモノマー(b)、例えばヒドロキシル基を含むモノマー、とりわけC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシル基を含むモノマーをアルコキシド、とりわけエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドでアルコキシル化することによって得ることができるような、アルコキシ基を有するモノマーを含んでいてもよい。
【0028】
さらなるモノマー(b)は、フリーラジカル重合が可能な少なくとも2つ、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個、極めて好ましくは2個または3個、とりわけ2個の二重結合を有する化合物である。そのような化合物は、架橋剤とも称される。
【0029】
架橋剤(b)のフリーラジカル重合が可能な少なくとも2つの二重結合は、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基、およびアリルエステル基からなる群から選択することができる。架橋剤(b)の例は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタリルメタクリレート、ブタ−3−エン−2−イル(メタ)アクリレート、ブタ−2−エン−1−イル(メタ)アクリレート、3−メチルブタ−2−エン−1−イル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のゲラニオール、シトロネロール、シンナミルアルコールとのエステル、グリセリルモノアリルエーテルもしくはグリセリルジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルもしくはトリメチロールプロパンジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,3−プロパンジオールモノアリルエーテル、1,4−ブタンジオールモノアリルエーテル、さらにジアリルイタコネートである。アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレートは好適である。
【0030】
さらに、アニオン性ラテックスは、さらなるモノマー(c)、例えば、カルボン酸基を有するモノマーおよびその塩または無水物を含んでいてもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸およびアコニット酸を挙げることができる。ラテックス中のエチレン性不飽和酸含有量は、一般に10質量%未満である。これらのモノマー(c)の比率は、例えば、少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%、特に好ましくは少なくとも3質量%である。ラテックスの酸基は、場合によっては、その後の使用前に、少なくとも部分的に中和することもできる。好ましくは、少なくとも30mol%、特に好ましくは50〜100mol%の酸基を中和する。揮発性塩基、例えばアンモニア、または非揮発性塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、とりわけ水酸化ナトリウム溶液は、塩基として適している。
【0031】
本発明の第1の実施形態において、上述のモノマーからなるアニオン性ラテックスは、−50〜+50℃、好ましくは−50〜+10℃、特に好ましくは−40〜+5℃、極めて好ましくは−30〜0℃のガラス転移温度(DSCにより測定)を有する。
【0032】
ガラス転移温度Tgは、一般に当業者には既知である。これはガラス転移温度の限界値を意味し、G. Kanig(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere, Vol. 190、第1頁、方程式1)によれば、ガラス転移温度は、分子量の増加に伴ってその限界値に近づく。ガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点測定、DIN 53765)によって測定される。
【0033】
Fox(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II] 1, page 123、およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie, Vol. 19, page 18,4th edition, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)によると、以下はごくわずかに架橋したコポリマーのガラス転移温度の良好な近似式である:
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+・・・xn/Tgn
[式中、
1、x2・・・xnは、モノマー1、2・・・nの質量分率であり、Tg1、Tg2・・・Tgnは、それぞれモノマー1、2・・・nのうちの1つのみから構成されたポリマーのガラス転移温度(Kelvin温度)である]。ほとんどのモノマーのホモポリマーのTg値は既知であり、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry. Part 5. Vol. A21. page 169, VCH Weinheim. 1992に記載されている。ホモポリマーのガラス転移温度のさらなる出典は、例えば、J. Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 1st Ed., J, Wiley, New York, 1966、2nd Ed., J. Wiley, New York, 1975、および3rd Ed., J. Wiley, New York, 1989である。
【0034】
上述の参考文献を用いて、モノマーの選択によって相当するガラス転移温度を有するアニオン性ラテックスを得る方法は、当業者には既知である。
【0035】
この第1の実施形態の好ましく用いられるアニオン性ラテックスは、例えば、
(1)スチレンおよび/またはアクリロニトリルもしくはメタクリロニトリルと、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリレートおよび/またはメタクリレートと、場合によっては、
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸と、
の水性分散液である。
【0036】
(1)スチレンおよび/またはアクリロニトリルと、
(2)C1〜C4−アルコールのアクリレートと、場合によっては、
(3)アクリル酸と、
のアニオン性ラテックスの水性分散液は、特に好適である。
【0037】
例えば、このような特に好適なポリアクリレートラテックスは、2〜20質量%のスチレンと、2〜20質量%のアクリロニトリルと、60〜95質量%のC1〜C4−アルキルアクリレート、好ましくはC4−アクリレート、例えばn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはtert−ブチルアクリレートと、0〜5質量%のアクリル酸とを含む。
【0038】
本発明の第2の実施形態において、アニオン性ラテックスは、上述のモノマーに加え、重合単位の形態で組み込まれたホスホン酸基および/またはリン酸基を含む少なくとも1つのモノマーを含み、これらは遊離酸基を有するモノマーならびにその塩、エステルおよび/または無水物であってもよい。
【0039】
ホスホン酸基および/またはリン酸基を含む好ましく用いられるモノマーは、モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と、場合によってはモノアルコキシル化されたホスホン酸および/またはリン酸とのエステル化によって得ることができるものである。モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と、一般式(I)
H−[X]n−P(O)(OH)2 (I)
[式中、
Xは、直鎖状もしくは分岐状のC2〜C6−アルキレンオキシド単位であり、
nは、0〜20の整数である]の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸とのエステル化によって得ることができる、場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸基を含むモノマーは、特に好適である。
【0040】
好ましく用いられる式(I)のモノアルコキシル化リン酸は、Xが、直鎖状もしくは分岐状のC2〜C3−アルキレンオキシド単位であり、nが、5〜15の整数であるものである。Xは、特に好ましくはエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位であり、特に好ましくはプロピレンオキシド単位である。
【0041】
当然ながら、さまざまな、場合によってはモノアルコキシル化されたホスホン酸および式(I)の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸の任意の混合物をモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸とのエステル化に使用することも可能である。同じアルキレンオキシド単位、好ましくはプロピレンオキシドを含むが、アルコキシル化度、好ましくはプロポキシル化度が異なる、式(I)のモノアルコキシル化リン酸の混合物が、好ましくは用いられる。モノアルコキシル化リン酸の特に好適な混合物は、5〜15個のプロピレンオキシド単位を含み、すなわちnは5〜15の整数である。
【0042】
ホスホン酸基および/またはリン酸基を含むモノマーを製造するために、3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸を、上述の場合によってはモノアルコキシル化されたホスホン酸および/またはリン酸、好ましくは一般式(I)の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸とともにエステル化させる。このようなモノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸およびイタコン酸、マレイン酸である。アクリル酸およびメタクリル酸は、好ましくは用いられる。
【0043】
当然ながら、モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸の混合物を、場合によってはモノアルコキシル化されたホスホン酸および/またはリン酸、好ましくは式(I)の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸とのエステル化に使用することも可能である。しかしながら、好ましくは1つだけのモノエチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸を使用する。
【0044】
第2の実施形態の好ましく用いられるアニオン性ラテックスは、例えば、
(1)スチレンおよび/またはアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルと、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリレートおよび/またはメタクリレートと、場合によっては、
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸と、
(4)式(I)[式中、Xおよびnは、上述の意味を有する]の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸の(メタ)アクリレートと、
の水性分散液である。
【0045】
(1)スチレンおよび/またはアクリロニトリルと、
(2)C1〜C4−アルコールのアクリレートと、場合によっては、
(3)アクリル酸と、
(4)式(I)[式中、Xは、プロピレンオキシド単位であり、nは、5〜15の整数である]のモノアルコキシル化リン酸の(メタ)アクリレートと、
のアニオン性ラテックスの水性分散液は、特に好適である。
【0046】
例えば、このような特に好適なポリアクリレートラテックスは、2〜25質量%のスチレンと、2〜25質量%のアクリロニトリルと、50〜95質量%のC1〜C4−アルキルアクリレート、好ましくはC4−アクリレート、例えばn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはtert−ブチルアクリレートと、0〜5質量%のアクリル酸と、0.1〜5質量%の式(I)[式中、Xは、プロピレンオキシド単位であり、nは、5〜15の整数である]のモノアルコキシル化リン酸の(メタ)アクリレートとを含む。
【0047】
通常は、第2の実施形態のアニオン性ラテックスのガラス転移温度(DSCにより測定)は、−40〜+50℃の範囲である。好ましくは、ガラス転移温度−20〜+20℃、特に好ましくは−10〜+10℃を有するアニオン性ラテックスを、微粉状填料の本発明による水性スラリーに使用する。
【0048】
アニオン性ラテックスの製造は、上述の2つの実施形態とは独立して、普通は乳化重合によって実施する。したがってこのポリマーはエマルジョンポリマーである。フリーラジカル乳化重合法による水性ポリマー分散液の製造は、それ自体公知である(Houben−Weyl, Methoden der organischen Chemie, Volume XIV, Makromolekulare Stoffe, loc. cit.の第133頁以下を参照)。
【0049】
ラテックスを製造するための乳化重合において、イオン性および/または非イオン性の乳化剤、および/または保護コロイドもしくは安定剤を界面活性化合物として使用する。界面活性物質は、通常は、重合させるモノマーに対して0.1〜10質量%、とりわけ0.2〜3質量%の量で使用する。
【0050】
常用の乳化剤は、例えば、高級脂肪アルコール硫酸エステルのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、例えば、n−ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪アルコールリン酸塩、エトキシル化度3〜30のエトキシル化C8〜C10−アルキルフェノール、およびエトキシル化度5〜50のエトキシル化C8〜C25−脂肪アルコールである。また、非イオン性およびイオン性の乳化剤の混合物も考えられる。さらに、リン酸基または硫酸基を含有する、エトキシル化および/またはプロポキシル化されたアルキルフェノールおよび/または脂肪アルコールも適している。さらなる適切な乳化剤は、Houben−Weyl, Methoden der organischen Chemie, Band XIV, Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1961の第192頁〜第209頁に記載されている。
【0051】
ラテックスを製造するための乳化重合の水溶性の開始剤は、例えば、ペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素もしくは有機過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドである。また、いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系も適している。
【0052】
前記開始剤の量は、重合させるモノマーに対して、一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。また、乳化重合において複数の異なる開始剤を使用することも可能である。
【0053】
乳化重合において、調節剤を例えば重合させるモノマー100質量部に対して0〜3質量部の量で使用することが可能であり、これによりモル質量が減少する。例えば、チオール基を有する化合物、例えばtert−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエチノール、メルカプトプロピルトリメトキシシランまたはtert−ドデシルメルカプタン、あるいはチオール基を有さない調節剤、とりわけ、例えばテルピノレンは適している。
【0054】
ラテックスを製造するための乳化重合は、普通は30〜130℃、好ましくは50〜100℃で実施する。重合媒体は、水のみまたは水と水混和性の液体、例えばメタノールとの混合物のいずれかであってよい。好ましくは、水のみを使用する。乳化重合は、バッチ法として、あるいは段階方式または勾配方式を含む供給法の形態で実施することができる。供給法が好ましく、重合バッチの一部を最初に使用し、重合温度まで加熱して重合させ、続いて重合バッチの残部を重合ゾーンに連続的に、段階的に、または濃度勾配をつけて、重合を維持しながら供給するが、この残部は、通常複数の空間的に離れた供給流であって、そのうちの1つ以上がモノマーを純粋な形態または乳化された形態で含む複数の供給流を介して供給する。重合の際に、例えば、ポリマーシードを最初に使用することにより、粒子サイズをより良好に確立することもできる。
【0055】
フリーラジカル水性乳化重合中に重合容器に開始剤を添加する方法は、平均的な当業者には公知である。これは、最初に重合容器に全て入れても、あるいはフリーラジカル水性乳化重合中のその消費速度に応じて、連続的または段階的に使用してもよい。具体的には、これは開始剤系の化学的性質および重合温度に依存する。好ましくは、一部を最初に用い、残部を消費速度に応じて重合ゾーンに供給する。
【0056】
残留モノマーを除去するために、通常は、実際の乳化重合の終了後にも、すなわちモノマー転化率が少なくとも95%に達した後にも、開始剤を添加する。
【0057】
供給法では、個々の成分を反応器に、上方から、側部で、または反応器底部を通して下方から添加してよい。
【0058】
共重合後、ラテックス中に存在する酸基を少なくとも部分的に中和してもよい。これは例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩を用いて実施することができ、好ましくは、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+またはBa2+など、いかなる対イオンまたは複数の対イオンと会合していてもよい水酸化物を用いる。アンモニアまたはアミンもまた中和に適している。水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水性溶液は好適である。
【0059】
乳化重合において、普通は固形分15〜75質量%、好ましくは40〜75質量%を有するラテックスの水性分散液が得られる。
【0060】
ラテックスの粒子サイズは、好ましくは10〜1000nmの範囲、特に好ましくは50〜300nmの範囲である(Malvern(登録商標) Autosizer 2 Cを用いて測定)。
【0061】
微粉状填料の本発明による水性スラリーは、填料スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液で処理することによって得られる。上述のように、この分解デンプンは、1,000〜65,000の平均分子量Mwを有する。分解デンプンの平均分子量Mwは、当業者に既知の方法によって、例えば、多角度光散乱検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーによって、容易に測定することができる。
【0062】
そのようなデンプンを得るためには、全ての種類のデンプンから、例えば天然、アニオン性、カチオン性、または両性のデンプンから出発することが可能である。このデンプンは、例えばジャガイモ、トウモロコシ、小麦、米、タピオカまたはモロコシに由来してもよく、あるいはアミロペクチン含有量が80質量%を上回る、好ましくは95質量%を上回るもちデンプン、例えばもち性トウモロコシデンプンまたはもち性ジャガイモデンプンであってもよい。デンプンは、アニオン変性および/またはカチオン変性、エステル化、エーテル化、および/または架橋されていてもよい。カチオン化デンプンが好適である。
【0063】
デンプンの分子量Mwがすでに1000〜65,000の範囲にない場合、その低分子量化を行なう。この低分子量化は、酸化的に、熱的に、酸分解的に、または酵素的に実施することができる。デンプンを酵素的におよび/または酸化的に分解する手順が好適である。分解デンプンのモル質量Mwは、好ましくは2,500〜35,000の範囲である。
【0064】
アニオン性またはカチオン性のデンプンの使用は、特に好適である。そのようなデンプンは公知である。アニオン性デンプンは、例えば、天然デンプンの酸化によって得ることができる。カチオン性デンプンは、例えば、天然デンプンを少なくとも1つの4級化剤、例えば2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドと反応させることによって製造する。このカチオン化デンプンは、第4級アンモニウム基を含む。
【0065】
置換デンプン中のカチオン性基またはアニオン性基の割合は、置換度(DS)を用いて示される。これは、例えば0.005〜1.0、好ましくは0.01〜0.4である。
【0066】
単一の分解デンプンを用いることも、あるいは2つ以上の分解デンプンの混合物を用いることも可能である。
【0067】
特に好適な形態では、マルトデキストリンを分解デンプンとして使用する。本発明に関連して、マルトデキストリンは、デンプンの酵素分解によって得られ、グルコース単位からなり、デキストロース当量が1である、水溶性炭水化物である。
【0068】
微粉状填料の本発明による水性スラリーの製造に使用するための、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンを含む水性分散液は、種々の方法で製造することができる。例えば、分解デンプンを固体の形態で、または水溶液として、イオン性ラテックスの水性分散液に導入して、混合することができる。あるいは、アニオン性ラテックスの製造のための乳化重合を分解デンプンの存在下で実施してもよい。
【0069】
少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液は、本発明により、微粉状填料の処理に使用される。適切な填料は、通常製紙業で使用される、無機材料、例えば重質炭酸カルシウム(GCC)、チョーク、大理石または沈降炭酸カルシウム(PCC)の形態で使用することができる炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、サチンホワイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウムまたは二酸化チタンを含む全ての顔料である。2つ以上の顔料の混合物を使用することも可能であるが、1つの顔料を使用することが好ましい。平均粒径は、例えば0.5〜30μmの範囲、好ましくは1〜10μmの範囲である。
【0070】
また、本発明は、微粉状填料の水性スラリーを製造する方法にも関する。
【0071】
填料は、例えば、水に導入することによって水性スラリーに加工する。沈降炭酸カルシウムは、通常は、分散剤の不在下では水中に懸濁する。その他の填料の水性スラリーを製造するために、普通はアニオン性分散剤、例えば、モル質量Mが例えば1,000〜40,000のポリアクリル酸を使用する。アニオン性分散剤を使用する場合、例えば0.01〜0.5質量%、好ましくは0.2〜0.3質量%のアニオン性分散剤を、水性填料スラリーの製造に使用する。アニオン性分散剤の存在下で水中に分散した微粉状填料は、アニオン性である。この水性スラリーは、特に好ましくは、10〜40質量%の少なくとも1つの填料を含む。
【0072】
微粉状填料の本発明による水性スラリーを製造するために、場合によってはアニオンによって分散された、微粉状填料の水性スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液で処理する。例えば、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンを含む水性分散液0.01〜10質量%(填料に対する水性分散液の固形分)を、1〜70質量%の少なくとも1つの微粉状填料を含む水性スラリーに添加してもよく、あるいは微粉状填料の水性スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液に導入し、これらの成分をそれぞれ混合してもよい。また、微粉状填料を固体の状態で、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液に導入することも可能である。アニオン性ラテックスと分解デンプンとを含む水性分散液での微粉状填料の水性スラリーの処理は、連続式またはバッチ式で実施することができる。微粉状填料と、アニオン性ラテックスと分解デンプンとを含む水性分散液との配合時に、填料がアニオン性ラテックスで少なくとも部分的に被覆または含浸される。成分の混合は、例えば、せん断場で実施する。一般的には、成分を配合後に攪拌するか、またはUltraTurrax装置のせん断場で処理すれば十分である。水性スラリーの構成成分の配合および混合は、例えば温度範囲0℃〜95℃、好ましくは10〜70℃で実施することができる。一般的に、これらの成分をそれぞれの室温から40℃の温度までで混合する。アニオン性ラテックスで処理された填料の水性スラリーのpHは、例えば5〜11、好ましくは6〜9であり、炭酸カルシウムを含むスラリーのpHは、好ましくは6.5を上回る。
【0073】
少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液での処理による、微粉状填料の本発明による水性スラリーの製造は、普通は室温で実施する。しかしながら、時として、熱を供給することによって処理を実施することが有利となりうる。例えば、微粉状填料の水性スラリーは、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液の添加時に、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、特に好ましくは少なくとも50℃の温度(いずれの場合も大気圧下)に加熱することができる。また、微粉状填料の水性スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液の添加前に加熱して、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、特に好ましくは少なくとも50℃の温度(いずれの場合も大気圧下)にすることも可能である。微粉状填料の水性スラリーの加熱は、積極的な加熱によって、すなわちエネルギーを供給することによって実施することもできるが、填料スラリーの製造時に発生する反応熱によっても実施することができる。あるいは、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液での微粉状填料の水性スラリーの処理は、室温で実施することもでき、その後本発明による水性スラリーを少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、特に好ましくは少なくとも50℃の温度(いずれの場合も大気圧下)まで加熱する。また、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、特に好ましくは少なくとも50℃(いずれの場合も大気圧下)まで加熱した、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む分散液を、室温のまたは加熱した微粉状填料の水性スラリーに添加することも可能である。それぞれの成分の加熱時に、水性スラリーまたは水性分散液の沸点(大気圧下)は、当然ながら超過してはならない。
【0074】
特に好ましくは、分散剤を含まない沈降炭酸カルシウムの水性スラリー、および塊の形態の炭酸カルシウムまたは大理石をアニオン性ポリマー分散剤、例えばモル質量1000〜15,000のポリアクリル酸の存在下で粉砕することによって得ることができる重質炭酸カルシウムの水性スラリーは、特に好ましく製造される。
【0075】
本発明は、さらに、紙原料を脱水することによる填料含有紙、填料含有ボール紙または填料含有板紙の製造における、紙原料の添加剤としての水性スラリーの使用にも関する。
【0076】
アニオン性ラテックスと分解デンプンとで処理した水性顔料スラリーは、全ての品質の填料含有紙、例えば新聞印刷用紙、SC紙(スーパーカレンダー紙)、木材を含まないまたは木材を含む筆記用紙および印刷用紙の製造に使用することができる。そのような紙を製造するために、例えば、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ(PGW)ならびに亜硫酸塩パルプおよび硫酸塩パルプを主原料成分として使用する。本発明による水性スラリーを使用することによって、強度特性を事実上変化させずに、紙の填料含有量を実質的に増加させることができる。そのような紙は、低い固形分を有する従来の紙のものに匹敵する強度特性を有する。
【0077】
微粉状填料の本発明による水性スラリーは、紙製造時に繊維と混合することによって、完全な紙原料を形成する。処理された填料および繊維に加え、完全な原料は、別の従来の紙添加剤も含んでいてよい。これらには、例えば、例えば、サイズ剤、例えばアルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジンサイズ剤、湿潤強度増強剤、合成ポリマーをベースとしたカチオン性またはアニオン性の歩留向上剤が含まれる。適切な歩留向上剤は、例えば、アニオン性微粒子(コロイド状シリカ、ベントナイト)、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性デンプン、カチオン性ポリエチレンイミン、またはカチオン性ポリビニルアミンである。さらに、これらの任意の組み合わせ、例えばカチオン性ポリマーとアニオン性微粒子、またはアニオン性ポリマーとカチオン性微粒子からなる二成分系も考えられる。高い填料歩留を達成するために、そのような歩留向上剤を添加することは賢明であり、これらの歩留向上剤は、例えば高粘稠度原料または低粘稠度原料に添加することができる。
【0078】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
実施例において示される百分率は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、質量パーセントである。
【0080】
ポリマー1
アンカー型撹拌機を備え、平面すり合わせジョイントを有する4L容器に、最初に、脱塩水411.6g、ポリスチレンシード(固形分33%、平均粒子サイズ29nm)14.6g、および45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)1.4g、ならびに7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液15.4gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を攪拌しながら93℃まで加熱した。この温度に到達後、あらかじめ作製しておいた、脱塩水534.4gと、15質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液(Disponil(登録商標) SDS 15、Cognis社)22.4gと、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)8gと、10質量%濃度の水酸化ナトリウムの溶液12gと、アクリル酸35gと、スチレン168gと、n−ブチルアクリレート829gと、アクリロニトリル168gとからなるモノマーエマルジョンを2時間45分かけて均一に計量供給した。同時に、7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液49.7gも計量供給した。このバッチを温度を一定に維持しながら、さらに45分間攪拌した。その後、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液93.6gを添加し、反応内容物を60℃まで冷却した。次に、a)10質量%濃度のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液24gと、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gおよびアセトン1.62gの付加物を含む13質量%濃度の溶液33gとからなる2つの供給流を同時に30分間かけて計量供給した。反応器内容物を室温まで冷却した。
【0081】
固形分51質量%の事実上凝塊を含まないポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度が+5℃であった。
【0082】
脱塩水810gを添加して、固形分を30質量%に低下させた。30質量%のマルトデキストリン溶液(Cargill社製、MD(登録商標) 09015)404gを続いて混入した。
【0083】
得られた混合物は、固形分30質量%およびPH6.5を有した。
【0084】
ポリマー2
ポリマー2をポリマー1と同じように製造するが、ただし混合時に、30質量%に希釈したマルトデキストリン溶液(Cerestar社製、Staerke 019 S1)を使用した。
【0085】
ポリマー3
アンカー型撹拌機を備え、平面すり合わせジョイントを有する4L容器に、最初に、脱塩水411.6g、ポリスチレンシード(固形分33%、平均粒子サイズ29nm)14.6g、および45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)1.4g、ならびに7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液15.4gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を攪拌しながら93℃まで加熱した。この温度に到達後、あらかじめ作製しておいた、脱塩水534.4gと、15質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液(Disponil(登録商標) SDS 15、Cognis社)22.4gと、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)8gと、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液12gと、アクリル酸36gと、スチレン60gと、n−ブチルアクリレート1044gと、アクリロニトリル60gとからなるモノマーエマルジョンを2時間かけて均一に計量供給した。同時に、7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液49.8gも2.5時間かけて計量供給した。このバッチを温度を一定に維持しながら、さらに45分間攪拌した。その後、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液93.6gを添加し、反応内容物を60℃まで冷却した。次に、a)10質量%濃度のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液24gと、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gおよびアセトン1.62gの付加物を含む13質量%濃度の溶液33gとからなる2つの供給流を同時に30分間かけて計量供給した。反応器内容物を室温まで冷却した。
【0086】
固形分50質量%の事実上凝塊を含まないポリマー分散液得られた。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度が−25℃であった。
【0087】
脱塩水810gを添加して、固形分を30質量%に低下させた。30質量%のマルトデキストリン溶液(Cargill社製、MD(登録商標) 09015)404gを続いて混入した。
【0088】
得られた混合物は、固形分30質量%およびPH6.4を有した。
【0089】
ポリマー4
アンカー型撹拌機を備え、平面すり合わせジョイントを有する4L容器に、最初に、脱塩水340.8g、ポリスチレンシード(固形分33%、平均粒子サイズ29nm)14.6g、および45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfasx(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)1.4g、ならびに7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液15.4gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を攪拌しながら93℃まで加熱した。この温度に到達後、あらかじめ作製しておいた、脱塩水483.6gと、15質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液(Disponil(登録商標) SDS 15、Cognis社)22.4gと、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)8gと、10質量%濃度の水酸化ナトリウムの溶液12gと、リン酸で末端がエステル化されたオリゴプロピレンオキシドを含むメタクリレート(Sipomer(登録商標) PAM 200:CH2=C(CH3)−COO−(CH2CH(CH3)O)8〜10−P(O)(OH)2、Rhodia社)12gと、アクリル酸24gと、スチレン168gと、n−ブチルアクリレート828gと、アクリロニトリル168gとからなるモノマーエマルジョンを2時間45分間かけて均一に計量供給した。それと同時に、4質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液87gも計量供給した。このバッチを温度を一定に維持しながら、さらに45分間攪拌した。その後、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液62.4gを添加し、反応内容物を60℃まで冷却した。次に、a)3質量%濃度のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液80gと、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gおよびアセトン1.62gの付加物を含む13質量%濃度の溶液33gを加えた脱塩水53.4gとからなる2つの供給流を同時に30分間かけて計量供給した。反応器内容物を室温まで冷却した。
【0090】
固形分50質量%の事実上凝塊を含まないポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度が+4℃であった。
【0091】
脱塩水810gを添加して、固形分を30質量%に低下させた。30質量%のマルトデキストリン溶液(Cargill社製、MD(登録商標) 09015)404gを続いて混入した。
【0092】
得られた混合物は、固形分30質量%、pH6.5、および動的光散乱(Malvern HPPS)により測定した粒子サイズ137nmを有した。
【0093】
ポリマー5
アンカー型撹拌機を備え、平面すり合わせジョイントを有する4L容器に、最初に、脱塩水1064.6g、ポリスチレンシード(固形分33%、平均粒子サイズ29nm)7.2g、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)0.6g、およびマルトデキストリン(Cargill社製、MD(登録商標) 09015)240.0g、ならびに7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液7.8gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を攪拌しながら93℃まで加熱した。この温度に到達後、あらかじめ作製しておいた、脱塩水267.2gと、15質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液(Disponil(登録商標) SDS 15、Cognis社)11.2gと、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)4gと、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液6gと、アクリル酸18gと、スチレン84gと、n−ブチルアクリレート414gと、アクリロニトリル84gとからなるモノマーエマルジョンを2時間かけて均一に計量供給した。それと同時に、2.5質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液34.8gも2.5時間かけて計量供給した。このバッチを温度を一定に維持しながら、さらに45分間攪拌した。その後、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液46.8gを添加し、反応内容物を60℃まで冷却した。次に、a)2質量%濃度のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液30gと、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gおよびアセトン1.62gの付加物を含む13質量%濃度の溶液16.4gを加えた脱塩水55.6gとからなる2つの供給流を同時に30分間かけて計量供給した。反応器内容物を室温まで冷却した。
【0094】
固形分29.3質量%およびpH6.1を有する、事実上凝塊を含まないポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度が+5℃であった。動的光散乱(Malvern HPPS)により測定した粒子サイズは149nmであった。
【0095】
比較ポリマー1
アンカー型撹拌機を備え、平面すり合わせジョイントを有する4L容器に、最初に、脱塩水411.7g、ポリスチレンシード(固形分33%、平均粒子サイズ29nm)14.5g、および45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)1.4g、ならびに7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液15.4gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を攪拌しながら93℃まで加熱した。この温度に到達後、あらかじめ作製しておいた、脱塩水534.2gと、15質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液(Disponil(登録商標) SDS 15、Cognis社)22.4gと、45質量%濃度のドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩溶液(Dowfax(登録商標) 2A1、Dow Chemicals社)8gと、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液12gと、アクリル酸36gと、スチレン60gと、n−ブチルアクリレート1044gと、アクリロニトリル60gとからなるモノマーエマルジョンを2時間かけて均一に計量供給した。それと同時に、7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液49.7gも計量供給した。このバッチを温度を一定に維持しながら、さらに45分間攪拌した。その後、10質量%濃度の水酸化ナトリウム溶液93.6gを添加し、反応内容物を60℃まで冷却した。次に、a)10質量%濃度のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液24gと、b)二亜硫酸ナトリウム2.67gおよびアセトン1.62gの付加物を含む13質量%濃度の溶液33gとからなる2つの供給流を同時に30分間かけて計量供給した。反応器内容物を室温まで冷却した。
【0096】
固形分50.2質量%、pH7.5、および動的光散乱(Malvern HPPS)により測定した粒子サイズ172nmを有する、事実上凝塊を含まないポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSCにより測定したガラス転移温度が−25℃であった。
【0097】
実施例1
まず、30質量%濃度のポリマー1の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0098】
実施例2
まず、30質量%濃度のポリマー2の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0099】
実施例3
まず、30質量%濃度のポリマー3の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0100】
実施例4
まず、30質量%濃度のポリマー4の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0101】
実施例5
まず、30質量%濃度のポリマー5の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0102】
比較例(VB)1
まず、30質量%濃度の比較ポリマー1の分散液3gを20質量%濃度の沈降炭酸カルシウム(PCC)スラリー150gと、室温で穏やかに攪拌して混合した。添加中および添加後に、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転/分(rpm)で混合物を攪拌した。その後、混合物のpHを8.5に調整した。
【0103】
填料含有紙の製造
実施例6〜20
比較例2〜7
漂白樺材硫酸塩と漂白松材亜硫酸塩との混合物を比率70/30、固体濃度4%で、叩解度30〜35に達するまで実験室用パルパー中でフロック不含(stippenfrei)に叩解した。次いで、この叩解した原料に、蛍光増白剤(Biankophor(登録商標) PSG、Kemira Oy社)とカチオン性デンプン(HlCat(登録商標) 5163 A)とを添加した。カチオン性デンプンの蒸解は、10質量%濃度のデンプンスラリーとして、ジェット蒸解器内で130℃および滞留時間1分で実施した。計量供給した蛍光増白剤の量は、紙原料懸濁液の固形分に対して市販製品0.5質量%であった。計量供給したカチオン性デンプンの量は、紙原料懸濁液の固形分に対してデンプン0.5質量%であった。原料のpHは、7〜8の範囲であった。次に、水を添加して、叩解した原料を固体濃度0.35質量%に希釈した。
【0104】
填料含有紙の製造における上記の水性填料スラリーの作用を判断するために、それぞれ500mlの紙原料懸濁液を最初に用い、それぞれ実施例に従って処理したスラリーと、歩留向上剤としてのカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標) KE 540、BASF Aktiengesellschaft社)とをこのパルプに計量供給した。計量供給した歩留向上剤の量は、紙原料懸濁液の固形分に対して、全ての場合にそれぞれポリマー0.01質量%であった。
【0105】
次いで、上述の前処理した填料(実施例6〜20および比較例2〜4)を用いてシートを形成した。この目的で使用した填料の量は、填料含有量が約20%、30%、または40%となるように調節した。前処理した填料の場合、特定の目標値に到達するために使用しなければならないスラリーの量は、未処理の填料の場合よりも常に少ない。
【0106】
さらに、処理した填料のそれぞれの種類に対して、未処理の填料を用いて比較例を実施した(比較例5〜7)。この目的で、填料含有量約20%、30%、または40%を達成するために必要な未処理の填料スラリーの量を予備実験でまず測定した。次いで、未処理の填料を用いてシートを形成した。
【0107】
それぞれの例において、ISO 5269/2に準拠したRapid−Koethenシートフォーマーで、シート質量70g/m2の紙シートを製造し、次いで90℃で7分間乾燥させた。
【0108】
紙シートの試験
一定に23℃および相対湿度50%での恒温恒湿室内で12時間保管した後、DIN 54540によるシートの乾燥裂断長、DIN 54516による内部強度、およびDIN 53121による曲げ剛さを測定した。この結果を第1表に示す。比較例に対応するスラリー、またはそれらから製造された紙シートを用いた比較例は、(VB)の付記により識別される。その他の実施例は、本発明による実施例である。
【0109】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性ラテックスで少なくとも部分的に被覆された微粉状填料の水性スラリーであって、前記スラリーが微粉状填料の水性スラリーを少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液で処理することによって得ることができることを特徴とする水性スラリー。
【請求項2】
前記アニオン性ラテックスのガラス転移温度が−50℃〜+10℃である、請求項1に記載の水性スラリー。
【請求項3】
前記アニオン性ラテックスが、
a)スチレンおよび/またはアクリロニトリルもしくはメタクリロニトリルと、
b)C1〜C10−アルコールのアクリレートおよび/またはメタクリレートと、場合によっては、
c)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸と、
からなる、請求項1または2のいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項4】
前記アニオン性ラテックスが、2〜20質量%のスチレンと、2〜20質量%のアクリロニトリルと、60〜95質量%のC1〜C4−アルキルアクリレートと、0〜5質量%のアクリル酸とからなる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項5】
前記アニオン性ラテックスが、重合単位の形態で組み込まれたホスホン酸基および/またはリン酸基を含む少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1に記載の水性スラリー。
【請求項6】
モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸と一般式(I)
H−[X]n−P(O)(OH)2 (I)
[式中、
Xは、直鎖状もしくは分岐状のC2〜C6−アルキレンオキシド単位であり、
nは、0〜20の整数である]の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸とのエステル化によって得ることができるリン酸基を含むモノマーが使用される、請求項5に記載の水性スラリー。
【請求項7】
式(I)[式中、Xは、直鎖状もしくは分岐状のC2〜C3−アルキレンオキシド単位であり、nは、5〜15の整数である]のモノアルコキシル化リン酸が使用される、請求項6に記載の水性スラリー。
【請求項8】
5〜15個のプロピレンオキシド単位を有する式(I)のモノアルコキシル化リン酸の混合物が使用される、請求項6または7に記載の水性スラリー。
【請求項9】
前記モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸および/またはイタコン酸である、請求項6に記載の水性スラリー。
【請求項10】
前記モノエチレン性不飽和C3〜C8−カルボン酸が、アクリル酸またはメタクリル酸である、請求項9に記載の水性スラリー。
【請求項11】
前記アニオン性ラテックスが、
(1)スチレンおよび/またはアクリロニトリルもしくはメタクリロニトリルと、
(2)C1〜C10−アルコールのアクリレートおよび/またはメタクリレートと、場合によっては、
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸と、
(4)式(I)[式中、Xおよびnは、上述の意味を有する]の場合によってはモノアルコキシル化されたリン酸の(メタ)アクリレートと、
からなる、請求項5から10までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項12】
前記アニオン性ラテックスが、2〜25質量%のスチレンと、2〜25質量%のアクリロニトリルと、50〜95質量%のC1〜C4−アルキルアクリレートと、0〜5質量%のアクリル酸と、0.1〜5質量%の式(I)[式中、Xは、プロピレンオキシド単位であり、nは、5〜15の整数である]のモノアルコキシル化リン酸の(メタ)アクリレートとからなる、請求項11に記載の水性スラリー。
【請求項13】
前記分解デンプンが、1000〜65,000の平均分子量Mwを有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項14】
前記分解デンプンがマルトデキストリンである、請求項13に記載の水性スラリー。
【請求項15】
少なくとも1つの微粉状填料1〜70質量%と、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンを含む水性分散液0.01〜10質量%(前記填料に対する前記分散液の固形分)とを含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の水性スラリーを製造する方法であって、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液0.01〜10質量%(前記填料に対する前記分散液の固形分)が、少なくとも1つの微粉状填料の水性スラリーに添加されるか、または微粉状填料の前記水性スラリーが、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液に導入されて、前記成分がそれぞれ混合されるか、あるいは前記微粉状填料が、固体の形態で、少なくとも1つのアニオン性ラテックスと少なくとも1つの分解デンプンとを含む水性分散液に導入されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の水性スラリーを製造する方法。
【請求項17】
紙原料を脱水することによる、填料含有紙、填料含有ボール紙または填料含有板紙の製造における、前記紙原料の添加剤としての、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性スラリーの使用。

【公表番号】特表2012−510572(P2012−510572A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538972(P2011−538972)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066010
【国際公開番号】WO2010/063658
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】