説明

微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法

【課題】熱交換器に酸化物やごみが付着することを防止することができ、且つ、冷却効率を一時的に向上させることによってピーク負荷に対応することのできる微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法を提供する。
【解決手段】凝縮器である室外機10は、熱媒体が冷却管38内を流れる熱交換器32と、冷却管38外にエアを送気させるファン34とを備え、ファン34によるエアの流れに対して熱交換器32の上流側で且つ熱交換器32から離れた位置には、エアと水を同時に噴射することによって粒径10μm以下の微細ミストを発生させる微細ミスト発生ノズル46が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法に係り、特にビル設備などの空調システムに用いられる微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル設備などでは、空冷凝縮器を持つチラー(冷凍機)や業務用パッケージの室外機が多用されている。空冷凝縮器は、熱媒体(冷媒)が内部を流れる放熱フィン付きの熱交換器と、この熱交換器の外側にエアを送気するファンとによって構成されており、熱交換器の内部を流れる熱媒体は外側のエアに放熱することによって冷却される。
【0003】
ところで、ビル設備などの空調システムは一般に、ピーク負荷に基づいてその最大能力が設定されている。すなわち、負荷は外気温度などに応じて大きく変動するが、その最も高い値(ピーク負荷)に対応できるように空調システムの最大能力が設定されている。
【0004】
しかし、ピーク負荷に達するのは年間で10〜20時間程度であり、その時間以外は無駄に大きな能力の空調システムを設置することになるため、改善が望まれていた。
【0005】
このような問題に対して省エネルギーの観点から、夏場の外気温度が上がる際に生じる性能低下を回復させる手段として、水散布を行う機能を付加した製品が開発されている。たとえば、特許文献1には、空冷凝縮器の放熱フィンに水を噴霧し、放熱フィンを濡らすことによって、その水の蒸発潜熱で放熱フィンを冷却することが記載されている。さらに、特許文献2には、噴霧手段と熱交換部との間に電位差を発生させ、噴霧した液敵が放熱フィンに確実に付着するようにしたことが記載されている。これらの特許文献1、2によれば、放熱フィン表面の伝熱係数を向上させることができ、その結果として冷却効果を向上させることができる。
【特許文献1】特許第3707737号
【特許文献2】特開2005−214578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような水散布方式は、多大な水を散布しなければならないという問題や、水が空気中の酸化物(たとえばSoxなど)やごみを搬送してフィン表面を腐食させたり、さらにその酸化物やごみがフィン表面に堆積して空冷時の冷却効率を損なったりするという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、熱交換器に酸化物やごみが付着することを防止することができ、且つ、冷却効率を一時的に向上させることによってピーク負荷に対応することのできる微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、熱媒体が管内を流れる熱交換器と、該熱交換器の管外にエアを送気させる送風機と、を備えた凝縮器において、前記送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側で且つ該熱交換器から離れた位置に、エアと水を同時に噴射することによって粒径10μm以下の微細ミストを発生させる微細ミスト発生ノズルが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、熱交換器の上流側に粒径10μm以下の微細ミストを発生させるようにしたので、熱交換器の管外を流れるエアの温度を低下させることができる。これにより、凝縮器の冷却能力を一時的に向上させることができ、最大能力を低く設定してもピーク負荷に対応することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記微細ミスト発生ノズルから噴射された微細ミストは、前記熱交換器に到達する前に蒸発することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、熱交換器に水滴が付着することを防止することができるので、熱交換器の腐食や熱効率の低下を防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記送風機は該送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側に設けられ、該送風機の軸支部材に前記微細ミスト発生ノズルが形成されるとともに、該微細ミスト発生ノズルは、前記送風機によるエアの流れに直交する方向に前記微細ミストを噴射することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、送風機の軸支部材に微細ミスト発生ノズルが形成されるので、ノズル用スペースが不要であり、凝縮器を小型化することができる。また、請求項3の発明によれば、送風機によるエアの流れに直交する方向に微細ミストを噴射するので、微細ミストがエアに混合して蒸発しやすい。したがって、微細ミスト発生ノズルと熱交換器との距離を狭めて凝縮器を小型化することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は請求項3の発明において、前記微細ミスト発生ノズルからの噴射速度と前記送風機によるエアの流れ速度とによって求められる前記微細ミストの拡散方向が、前記熱交換器全体をカバーするように設定されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、微細ミストが熱交換器全体を覆うように広く拡散するので、熱交換器を通過するエア全体を微細ミストの蒸発潜熱によって冷却することができ、熱交換器の性能を向上させることができる。なお、微細ミストの拡散方向とは、微細ミストの噴射速度ベクトルとエアの流れ速度ベクトルとを合成することによって得られ、その合成ベクトルが熱交換器の外縁又は熱交換器よりも外側を示すように設定することが好ましい。
【0016】
請求項5に記載の発明は請求項1又は2の発明において、前記送風機は該送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側に設けられ、該送風機の軸支部材に前記微細ミスト発生ノズルが形成されるとともに、該微細ミスト発生ノズルは、前記送風機によるエアの流れ方向に前記微細ミストを噴射することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、微細ミストをエアの流れ方向に拡散することによって、エアの流れを乱すことなく微細ミストを噴射することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は請求項1〜5のいずれか1の発明において、前記微細ミスト発生ノズルよりも上流側のエアの温度に応じて、前記微細ミストの発生量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明によれば、ノズル上流側のエアの温度(たとえば外気温度)に応じて微細ミストの発生量を制御するようにしたので、熱交換器の位置におけるエアの温度を所望の値(たとえば一定値)に制御することができる。したがって、凝縮器において安定した冷却能力を得ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は請求項1〜6のいずれか1の発明において、前記微細ミスト発生ノズルで噴射したエア量に応じて、前記送風機の送風量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明によれば、ノズルから噴射するエア量に応じて送風機の送風量を制御するので、熱交換器の管外を通過するエア量を制御することができる。したがって、たとえば熱交換器の管外に一定流量のエアを送気して安定した冷却能力を得たり、冷却負荷に応じて熱交換器の管外を通過するエア量を増減させて冷却能力をコントロールしたりすることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は請求項1〜7のいずれか1に記載の発明において、前記送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の直前に湿度センサを設け、該湿度センサの測定値に基づいて、前記微細ミスト発生ノズルから噴射するエアと水の混合比を調節する混合比調節手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明によれば、湿度センサの測定値によって、微細ミストが蒸発していることを確認し、微細ミストが蒸発していない場合には、エアと水の混合比を調節する。これにより、熱交換器の位置までに微細ミストを確実に蒸発させることができ、熱交換器の表面が濡れることを防止することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は請求項1〜8のいずれか1に記載の発明において、前記熱交換器が並列に複数設けられ、各熱交換器の上流側が混合ボックスに接続されるとともに、該混合ボックスに前記微細ミスト発生ノズルが設けられ、前記混合ボックスの内部で前記微細ミストが混合したエアが各熱交換器に送気されることを特徴とする。
【0025】
請求項9の発明によれば、混合ボックスで微細ミストを混合したエアを各熱交換器に送気するようにしたので、微細ミスト発生ノズルを各熱交換器ごとに設ける必要がなくなり、装置の小型化及び管理の簡略化を図ることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は前記目的を達成するために、熱交換器の管内を流れる熱媒体を、前記熱交換器の管外に送風機により送気したエアで冷却する凝縮器の制御方法において、前記送風機により送気するエアの温度がしきい値を超えた際に、該エアの流れに対して前記熱交換器の上流側で且つ該熱交換器から離れた位置に、エアと水を同時に噴射して粒径10μm以下の微細ミストを発生させることを特徴とする。
【0027】
請求項10の発明によれば、熱交換器の上流側に粒径10μm以下の微細ミストを発生させるようにしたので、熱交換器の管外を流れるエアの温度を低下させることができる。これにより、凝縮器の冷却能力を一時的に向上させることができ、凝縮器の最大能力を低く設定しても、ピーク負荷に対応することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明は請求項10の発明において、前記微細ミストが前記熱交換器に到達する前に蒸発するように前記噴射する水の量を制御することを特徴とする。
【0029】
請求項11の発明によれば、熱交換器に水滴が付着することを防止することができるので、熱交換器の腐食や熱効率の低下を防止することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明は請求項10又は11の発明において、前記送風機により送気するエアの温度に応じて、前記微細ミストの発生量を制御することを特徴とする。
【0031】
請求項12の発明によれば、エアの温度(たとえば外気温度)に応じて微細ミストの発生量を制御するようにしたので、熱交換器の位置におけるエアの温度を所望の値(たとえば一定値)に制御することができる。したがって、熱交換器において安定した冷却能力を得ることができる。
【0032】
請求項13に記載の発明は請求項10〜12のいずれか1の発明において、前記微細ミストの発生時に噴射したエア量に応じて、前記送風機の送風量を制御することを特徴とする。
【0033】
請求項13の発明によれば、微細ミストの発生時に噴射したエア量に応じて送風機の送風量を制御するので、熱交換器の管外を通過するエアの総量を制御することができる。したがって、たとえば熱交換器の管外に一定流量のエアを送気して安定した冷却能力を得たり、冷却負荷に応じて熱交換器の管外を通過するエア量を増減させて冷却能力をコントロールしたりすることができる。
【0034】
請求項14に記載の発明は請求項10〜13のいずれか1に記載の発明において、前記熱交換器の直前で湿度を測定し、該湿度の測定値に応じて、前記微細ミストを発生させる際のエアと水の混合比を調節することを特徴とする。
【0035】
請求項14の発明によれば、湿度の測定値から、微細ミストが蒸発しているかを判別し、微細ミストが蒸発していないと判別した場合には、エアと水の混合比を調節する。これにより、熱交換器の位置までに微細ミストを確実に蒸発させることができ、熱交換器の表面が濡れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、熱交換器の上流側に粒径10μm以下の微細ミストを発生させるようにしたので、熱交換器の管外を流れるエアの温度を低下させることができる。これにより、凝縮器の冷却能力を一時的に向上させることができ、ピーク負荷に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下添付図面に従って本発明に係る微細ミストを用いた凝縮器及びその制御方法の好ましい実施形態について説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る微細ミストを用いた凝縮器を備えた空調システムを模式的に示す構成図である。同図に示すように空調システムは、被空調室14の内部に設置された室内機12と、被空調室14の外部に設置され、空冷凝縮器である室外機10とで構成される。室外機10と室内機12とは熱媒体(冷媒)の循環ライン16で接続されており、この循環ライン16内を熱媒体が循環することによって、室外機10で熱媒体が冷却されるとともに、室内機12で熱媒体が被空調室14のエアから熱を奪い、被空調室14が冷却される。
【0039】
室内機12は、ケーシング20を備え、このケーシング20の内部を循環ライン16が通過するようになっており、循環ライン16上には不図示の拡張弁と熱交換器22が配置されている。したがって、循環ライン16を流れる熱媒体は、拡張弁を通過して圧力が低下した後、熱交換器22の管内で蒸発される。その際、管外のエアから熱が奪われ、管外のエアが冷却される。
【0040】
また、室内機12は、ケーシング20の内部にファン24が設けられ、このファン24を駆動することによって、被空調室14内のエアがケーシング20内に吸引され、吸引されたエアが熱交換器22の管外を通過して被空調室14に送気される。その際、熱交換器22の管内の熱媒体によって熱が奪われるので、冷却されたエアが被空調室14に送気される。これにより、被空調室14を所望の温度に冷却することができる。
【0041】
一方、室外機10は、図2に示すように、ケーシング30を備え、このケーシング30の内部を循環ライン16が通過するようになっており、循環ライン16上には圧縮機36と熱交換器32が設けられている。したがって、循環ライン16を流れる熱媒体は圧縮機36で圧縮されて、熱交換器32に送られる。
【0042】
熱交換器32は、複数の冷却管38と、複数の放熱フィン40によって構成される。複数の冷却管38は平行に設けられ、各冷却管38が接続されて熱媒体が流れるようになっている。放熱フィン40は、平面状に形成されており、冷却管38に直交する向きで、且つ、冷却管38が貫通するように配置されている。また、複数の放熱フィン40は、平行で且つ一定の間隔で配置されており、さらに冷却管38に接触して熱伝達が効率よく行われるように構成される。
【0043】
室外機10のケーシング30の内部には、ファン34が設けられる。ファン34は、モータ42と羽根44とを備え、モータ42を駆動することによって羽根44が回転し、ケーシング30の内部に外気が吸引される。吸引されたエアは、熱交換器32の冷却管38の外側を通過してケーシング30の外部に排気される。
【0044】
なお、ファン34の位置は、ファン34を駆動させた際に発生するエアの流れ方向に対して、熱交換器32の上流側が好ましいが、これに限定するものではなく、熱交換器32の下流側に配置してもよい。
【0045】
熱交換器32とファン34との間には、複数の微細ミスト発生ノズル46(以下、たんにノズルという)が設けられる。ノズル46には、エアと水を同時に噴射する二流体ノズルであり、エアの給気ライン48と、水の給水ライン50が接続されている。このノズル46は、エアと水を同時に噴射することによって粒径10μm以下の微細ミストを発生させる構成になっている。給気ライン48と給水ライン50はそれぞれ、開閉弁52、54が設けられており、この開閉弁52、54の開度を調節することによって、ノズル46から噴射するエアの量と水の量(すなわちエアと水の混合比)を調節できるようになっている。なお、エアと水の混合比は、体積比でエア/水が500以上600以下が好ましい。
【0046】
また、複数のノズル46は、図3に示すように、ケーシング30の壁面に取りつけられ、中央部に向けて噴射するように配置される。また、複数のノズル46は、一定の角度間隔(たとえば図3に示す如く45°間隔)で配置されており、各ノズル46から均等に微細ミストを噴霧できるようになっている。さらに、ノズル46は、図2に示す如く、ファン34によるエアの流れ方向に対して直交する方向に微細ミストを噴射するように配置される。これにより、ノズル46から噴射された微細ミストが、熱交換器32に付着しにくくなる。
【0047】
なお、ノズル46の位置は、ノズル46から噴射された微細ミストが熱交換器32に到達するまでに確実に蒸発されるように、熱交換器32に対して所定の距離Lだけ離間して配置される。ここで、所定の距離Lは、微細ミストの発生量やエアの送風量などによって異なるが、通常200〜300mmが好ましい。
【0048】
前述したファン34、及び、ノズル46の開閉弁52、54は、制御装置56に接続されている。制御装置56は、外気温度を測定する温度センサ58に接続されており、この温度センサ58の測定値に基づいて開閉弁52、54を制御する。たとえば、外気温度がしきい値(たとえば32℃)を超えた際に開閉弁52、54を開いて微細ミストの発生を開始する。これにより、外気温度が高くなって負荷が増えた場合にのみ、微細ミストを供給して冷却性能を向上させることができ、無駄な微細ミストの供給を防止することができる。
【0049】
また、外気温度が上昇するにつれて開閉弁54の開度を大きくし、外気温度に比例して微細ミストの発生量を増加させる。これにより、微細ミストによるエアの温度低下量が大きくなるので、略一定温度のエアを熱交換器32の冷却管38外に通過させることができる。
【0050】
また、制御装置56は、開閉弁52の開度に応じてファン34の回転数を制御するように構成される。すなわち、ノズル46から噴射するエアの流量に応じて、ファン34による送風量を制御する。たとえば、ノズル46から噴射するエアの流量が増加(或いは減少)した場合には、ファン34による送風量を減少(或いは増加)させ、熱交換器32を通過するエアの流量が常に一定になるようにする。これにより、熱交換器32による熱交換量を、エアの温度だけでコントロールすることができるので、冷却性能の制御を容易に行うことができる。なお、制御装置56は、ファン34の回転数を一定に維持し、且つ、温度センサ58の測定値に応じて開閉弁52の開度を制御するようにしてもよい。すなわち、冷却負荷に応じて、ノズル46からのエアの噴射量を制御し、熱交換器32に送気されるエアの総量をコントロールするようにしてもよい。
【0051】
また、制御装置56は、熱交換器32の直前に設けられた湿度センサ60に接続されており、この湿度センサ60の測定値に基づいて開閉弁54を制御する。たとえば、湿度センサ60で測定した湿度が高く、飽和状態(微細ミストが蒸発していない状態)であると判断した場合には、開閉弁54の開度を小さくして水の混合比を小さくし、微細ミストの量を減少させる。これにより、微細ミストが熱交換器32に到達するまでに微細ミストを確実に蒸発させることができる。なお、湿度センサ60で測定した湿度が低い場合には、開閉弁54の開度を大きくして微細ミストの量を増加させ、冷却効率を向上させるようにしてもよい。
【0052】
次に上記の如く構成された空調システムの作用について説明する。
【0053】
外気温度がしきい値よりも低い場合は、熱交換器32の冷却管38内の熱媒体を外気によって十分に冷却できる状態にある。したがって、この場合には開閉弁52、54を閉じておき、微細ミストの噴霧は行わない。これにより、微細ミストの無駄な供給を防止することができる。
【0054】
外気温度がしきい値を超えた場合、外気だけでは冷却管38内の熱媒体を十分に冷却させることができない。そこで、この場合には開閉弁52、54を開き、ノズル46から粒径10μm以下の微細ミストを噴霧する。粒径10μm以下の微細ミストは、蒸発するまでの時間が短く、壁面などに水滴をつくりにくい。したがって、エア中に噴霧された微細ミストは、熱交換器32に到達するまでに蒸発し、エアから蒸発潜熱を奪って、エアの温度を低下させる。これにより、熱交換器32に到達するエアの温度を低下させることができるので、熱交換器32の冷却管38内の熱媒体を効率良く冷却することができる。
【0055】
このように本実施の形態によれば、微細ミストを噴霧するようにしたので、熱交換器32の放熱フィン40を濡らすことなく、冷却効率を向上させることができる。したがって、放熱フィン40に酸化物やごみが付着して放熱フィン40が腐食したり冷却効率が低下したりすることを防止することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、外気温度が高くなった場合のみ、微細ミストを噴霧し、且つ、外気温度が向上した際には微細ミストの発生量を増加させるようにしたので、熱交換器32を通過するエアを所望の温度にコントロールすることができる。したがって、熱交換器32の性能を外気温度に依らず安定させることができる。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、ノズル46から噴射するエアの流量に応じてファン34の送風量を制御するようにしたので、熱交換器32を通過するエアの流量を常に一定値に保つことができ、熱交換器32における冷却性能を安定させることができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、熱交換器32の直前でのエアの湿度に応じてノズル46から噴霧する微細ミストの流量を制御するようにしたので、熱交換器32までに微細ミストを蒸発させることができ、熱交換器32の表面に微細ミストが付着することを確実に防止することができる。
【0059】
図4は第2の実施形態の凝縮器を模式的に示す断面図であり、二点鎖線は、熱交換器32の設置範囲を示している。
【0060】
同図に示すように、第2の実施形態は、微細ミスト発生用のノズル46がファン34に一体化されている。すなわち、ファン34は、羽根44を回転自在に支持する軸部43を有し、この軸部43の外周面に複数のノズル46が形成されている。複数のノズル46は、一定の角度間隔で配置されており、各ノズル46に水とエアが供給され、微細ミストを均等に噴霧できるように構成されている。また、ノズル46は、ファン34による気流の向きと直交する方向に微細ミストを噴射するように構成されている。
【0061】
さらに、第2の実施形態では、ノズル46から噴射する微細ミストの拡散方向が熱交換器32全体を覆うように構成されている。ここで、微細ミストの拡散方向は、微細ミストの噴射速度とファン34によるエアの速度によって求められるものとする。すなわち、図4に示すように微細ミストの噴射速度ベクトルをV1、エアの流速ベクトルをV2とした際に、その合成ベクトルV3が拡散方向であり、その拡散方向が熱交換器32の外縁又は外側を示すように設定する。これにより、熱交換器32を通過するエア全体を、微細ミストの蒸発潜熱によって冷却することができる。
【0062】
上記の如く構成された第2の実施形態によれば、ファン34とノズル46を一体化したので、ノズル46の設置スペースを別途設ける必要がなく、装置を小型化することができる。
【0063】
なお、上述した第2の実施形態は、固定部分である軸部43にノズル46を形成するようにしたが、羽根44と一緒に回転する部分にノズル46を形成するようにしてもよい。この場合、微細ミストが攪拌されやすくなるので、微細ミストの蒸発潜熱に伴うエアの冷却効果を向上させることができる。
【0064】
また、上述した第1、第2の実施形態は、ファン34によるエアの流れ方向と直交する方向に微細ミストを噴射するようにしたが、微細ミストの噴射方向はこれに限定するものではなく、たとえば、図5に示すようにファン34によるエアの流れと平行に、微細ミストを噴射するようにしてもよい。また、ファン34によるエアの流れ方向に対して斜めに噴射したり、これらの複数の噴射方向を組み合わせたりするようにしてもよい。
【0065】
図6は第3の実施形態の凝縮器を模式的に示している。
【0066】
同図に示すように、第3の実施形態では、複数の室外機10、10…を備え、各室外機10に熱交換器32とファン34が設けられている。複数の室外機10はそれぞれ、ダクト62を介して一つの混合ボックス64に接続され、この混合ボックス64に微細ミスト発生用のノズル46が設けられている。したがって、ノズル46から噴霧された微細ミストは、混合ボックス64内でエアに混合される。これにより、エアの温度を微細ミストの蒸発潜熱で低下させることができ、各室外機10に送気されるエアの温度を低下させることができる。
【0067】
上記の如く構成された第3の実施形態によれば、混合ボックス64を設けることによって一カ所で微細ミストを噴霧するようにしたので、各室外機10に微細ミスト発生用のノズル46を設ける必要がなくなる。したがって、微細ミスト発生用のノズル46がない従来の室外機を利用してシステムを構築することができ、空調システム全体のイニシャルコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る凝縮器を適用した空調システムの構成図
【図2】図1の室外機の構成を示す模式図
【図3】図2のノズル位置での断面図
【図4】第2の実施形態における室外機の構成を示す断面図
【図5】図4と異なる構成の室外機の構成を示す断面図
【図6】第3の実施形態の凝縮器を示す構成図
【符号の説明】
【0069】
10…室外機、12…室内機、14…被空調室、16…循環ライン、20…ケーシング、22…熱交換器、24…ファン、30…ケーシング、32…熱交換器、34…ファン、36…圧縮機、38…冷却管、40…放熱フィン、42…モータ、43…軸部、44…羽根、46…ノズル、48…給気ライン、50…給水ライン、52…開閉弁、54…開閉弁、56…制御装置、58…温度センサ、60…湿度センサ、62…ダクト、64…混合ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が管内を流れる熱交換器と、該熱交換器の管外にエアを送気させる送風機と、を備えた凝縮器において、
前記送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側で且つ該熱交換器から離れた位置に、エアと水を同時に噴射することによって粒径10μm以下の微細ミストを発生させる微細ミスト発生ノズルが設けられたことを特徴とする微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項2】
前記微細ミスト発生ノズルから噴射された微細ミストは、前記熱交換器に到達する前に蒸発することを特徴とする請求項1に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項3】
前記送風機は該送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側に設けられ、該送風機の軸支部材に前記微細ミスト発生ノズルが形成されるとともに、
該微細ミスト発生ノズルは、前記送風機によるエアの流れに直交する方向に前記微細ミストを噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項4】
前記微細ミスト発生ノズルからの噴射速度と前記送風機によるエアの流れ速度とによって求められる前記微細ミストの拡散方向が、前記熱交換器全体をカバーするように設定されることを特徴とする請求項3に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項5】
前記送風機は該送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の上流側に設けられ、該送風機の軸支部材に前記微細ミスト発生ノズルが形成されるとともに、
該微細ミスト発生ノズルは、前記送風機によるエアの流れ方向に前記微細ミストを噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項6】
前記微細ミスト発生ノズルよりも上流側のエアの温度に応じて、前記微細ミストの発生量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項7】
前記微細ミスト発生ノズルで噴射したエア量に応じて、前記送風機の送風量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項8】
前記送風機によるエアの流れに対して前記熱交換器の直前に湿度センサを設け、
該湿度センサの測定値に基づいて、前記微細ミスト発生ノズルから噴射するエアと水の混合比を調節する混合比調節手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項9】
前記熱交換器が並列に複数設けられ、各熱交換器の上流側が混合ボックスに接続されるとともに、該混合ボックスに前記微細ミスト発生ノズルが設けられ、前記混合ボックスの内部で前記微細ミストが混合したエアが各熱交換器に送気されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器。
【請求項10】
熱交換器の管内を流れる熱媒体を、前記熱交換器の管外に送風機により送気したエアで冷却する凝縮器の制御方法において、
前記送風機により送気するエアの温度がしきい値を超えた際に、該エアの流れに対して前記熱交換器の上流側で且つ該熱交換器から離れた位置に、エアと水を同時に噴射して粒径10μm以下の微細ミストを発生させることを特徴とする微細ミストを用いた凝縮器の制御方法。
【請求項11】
前記微細ミストが前記熱交換器に到達する前に蒸発するように前記噴射する水の量を制御することを特徴とする請求項10に記載の微細ミストを用いた凝縮器の制御方法。
【請求項12】
前記送風機により送気するエアの温度に応じて、前記微細ミストの発生量を制御することを特徴とする請求項10又は11に記載の微細ミストを用いた凝縮器の制御方法。
【請求項13】
前記微細ミストの発生時に噴射したエア量に応じて、前記送風機の送風量を制御することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器の制御方法。
【請求項14】
前記熱交換器の直前で湿度を測定し、該湿度の測定値に応じて、前記微細ミストを発生させる際のエアと水の混合比を調節することを特徴とする請求項10〜13のいずれか1に記載の微細ミストを用いた凝縮器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−128500(P2008−128500A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310532(P2006−310532)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】