説明

微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法

【課題】微細凹凸構造が表面に形成された物品の製造を終了する際にモールドの表面に発生する表面欠陥が、物品の製造を再開した際に物品の表面に転写されることを抑制することができる、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の硬化性樹脂組成物39を、微細凹凸構造を表面に有するロール状モールド20とフィルム42との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44をフィルム42の表面に形成し、物品40を得る工程(I)、内部離型剤を含む第2の硬化性樹脂組成物38をロール状モールド20とフィルム42との間に挟み、硬化させて、硬化樹脂層44をフィルム42の表面に形成する工程(II)、第1の硬化性樹脂組成物39または第3の硬化性樹脂組成物をロール状モールド20とフィルム42との間に挟み、硬化させて、物品40を得る工程(III)を有する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、略円錐形状の凸部を並べたモスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0003】
物品の表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、ロール状モールドと、ロール状モールドの回転に同期してロール状モールドの外周面に沿って移動する帯状の基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給し、基材越しに活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化樹脂層を基材とともにロール状モールドから剥離して、連続的に物品を製造する方法が注目されている(特許文献1)。
【0004】
微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する装置としては、微細凹凸構造を外周面に有するロール状モールドを用いた装置が知られている。該製造装置は、ロール状モールドと対向して配置されたニップローラと、ロール状モールドとニップローラとの間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給するための供給装置とを備えている。該製造装置を用いた物品の製造は、以下のように行われる。
【0005】
ニップローラとロール状モールドとによって挟まれた基材と、ロール状モールドとの間に、供給装置によって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給し、ロール状モールドと基材に挟まれた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することによって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させ、ロール状モールドの外周面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成する。そして、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を表面に有する基材をロール状モールドから剥離して、微細凹凸構造を表面に有する物品が連続的に製造される。
【0006】
物品の製造を終了する際、モールドを交換する際、または製造装置を一時的停止する際には、ロール状モールドと基材との間に残存する未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を除去するために、以下の操作を行う。
まず、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の供給を停止する。ロール状モールドと基材との間に残存する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、硬化樹脂層を基材とともにロール状モールドから剥離し、製造装置外に完全に搬送してから、活性エネルギー線の照射を停止する。
【0007】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の供給を停止すると、ロール状モールドの回転(基材の移動)とともに、ロール状モールドと基材との間に挟まれた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の量が減少するため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の幅も徐々に減少する。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、通常、酸素雰囲気下においては硬化が阻害されやすい傾向にあるため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の幅方向の端部は、その他の部分と比べて硬化率が低くなる傾向にあり、ロール状モールドの外周面への樹脂残り等の問題が発生しやすい傾向にある。そのため、物品の製造を終了する際等、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の幅を徐々に減少させながら、活性エネルギー線を照射して硬化樹脂層を形成すると、ロール状モールドの外周面に半楕円形の連続的に幅が変化するような形状で、樹脂残り等の表面欠陥が発生することがある(以下、このような幅が連続的に変化するような形状の表面欠陥を「樹脂幅痕」と記す)。
【0008】
ロール状モールドの外周面に樹脂幅痕が発生すると、次回に同じロール状モールドを用いて物品の製造を再開した際に、樹脂幅痕に対応した形状までもが物品の表面に転写されてしまう。樹脂幅痕は、従来の光学シートでは問題となる可能性は低い。一方、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品においては、反射防止性能が非常に優れているため、樹脂幅痕に対応した形状が視認されてしまう場合がある。
【0009】
樹脂幅痕は、硬化不良の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がロール状モールドの微細凹凸構造の内部に入り込んで発生する。いったん樹脂幅痕が発生しても、直ぐに物品の製造を再開した場合には、樹脂幅痕は、硬化樹脂層とともにロール状モールドの外周面から剥離されやすいため、物品に転写される樹脂幅痕は徐々に視認されなくなる。しかし、物品の製造を中断してしばらく時間を置くと、微細凹凸構造の内部に入り込んだ硬化不良の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を取り除くことが極めて困難となる。
【0010】
樹脂幅痕を発生させないためには、製造装置を停止させずに連続的に動作させ続ければよいが、保守点検、基材の交換等を行わずに製造装置を連続的に動作させ続けることは現実的に困難である。そのため、物品の製造を停止するたびに、樹脂幅痕が発生してしまったロール状モールドを交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−025683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微細凹凸構造が表面に形成された物品の製造を終了する際にモールドの表面に発生する表面欠陥が、物品の製造を再開した際に物品の表面に転写されることを抑制することができる、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I)〜(III)を有することを特徴とする。
(I)第1の硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に挟み、前記第1の硬化性樹脂組成物を硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
(II)前記工程(I)の後、重合性化合物と内部離型剤とを含み、かつ前記第1の硬化性樹脂組成物および下記第3の硬化性樹脂組成物よりも分子量300以下の重合性化合物の割合が高い第2の硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、前記第2の硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂層を前記基材の表面に形成する工程。
(III)前記工程(II)の後、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、前記第1の硬化性樹脂組成物または前記第3の硬化性樹脂組成物を硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【0014】
前記第2の硬化性樹脂組成物は、重合性化合物と、重合開始剤と、内部離型剤とを含み、前記重合性化合物100質量%のうち、分子量300以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上であることが好ましい。
前記工程(II)において、前記モールドおよび前記第2の硬化性樹脂組成物の温度を30℃以上とすることが好ましい。
【0015】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法においては、前記モールドが、ロール状モールドであり、前記基材が、前記ロール状モールドの回転に同期して前記ロール状モールドの外周面に沿って移動する帯状の基材であり、前記帯状の基材を前記ロール状モールドの外周面に沿って移動させながら、前記第2の硬化性樹脂組成物に替えて、前記第1の硬化性樹脂組成物または前記第3の硬化性樹脂組成物を供給することで、前記工程(II)についで前記工程(III)を連続して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、微細凹凸構造が表面に形成された物品の製造を終了する際にモールドの表面に発生する表面欠陥が、物品の製造を再開した際に物品の表面に転写されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】微細凹凸構造を表面に有する物品の製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程を示す断面図である
【図3】微細凹凸構造を表面に有する物品の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。また、微細凹凸構造は、凸部または凹部の平均間隔が可視光波長以下、つまり400nm以下の構造を意味する。また、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物は、オキシアルキレン基を1つ有するオキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物またはオキシアルキレン基を2つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物を意味する。
【0019】
<物品の製造方法>
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I)〜(III)を有する方法である。
(I)第1の硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
(II)工程(I)の後、内部離型剤を含む第2の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成する工程。
(III)工程(II)の後、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【0020】
(工程(I))
工程(I)においては、第1の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る。
【0021】
モールドとしては、後述する製造方法で得られるモールドが挙げられる。
基材の形状としては、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等が挙げられる。
基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、ガラス等が挙げられる。
【0022】
第1の硬化性樹脂組成物としては、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。すなわち、第1の硬化性樹脂組成物としては、重合性化合物と、重合開始剤とを含むものが挙げられる。第1の硬化性樹脂組成物を硬化させて製造する微細凹凸構造を表面に有する物品には、親水性や疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をその用途に応じて適宜用いることができる。
【0023】
重合性化合物としては、後述する重合性化合物が挙げられる。
重合開始剤としては、後述する重合開始剤が挙げられる。
第1の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、内部離型剤を含んでいてもよい。
【0024】
工程(I)は、例えば、図1に示す製造装置を用いて、下記のように行われる。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の回転に同期してロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(基材)との間に、タンク23から第1の硬化性樹脂組成物39を供給する。
【0025】
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および第1の硬化性樹脂組成物39をニップし、第1の硬化性樹脂組成物39を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0026】
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して第1の硬化性樹脂組成物39に活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性樹脂組成物39を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、硬化樹脂層44が表面に形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような物品40を得る。
【0027】
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0028】
所望の量の物品を製造した後、または製造装置の運転を一時的に停止する場合には、ロール状モールド20とフィルム42(基材)との間に残存する未硬化の第1の硬化性樹脂組成物39を除去するために、以下の操作を行う。
まず、第1の硬化性樹脂組成物39の供給を停止する。ロール状モールド20とフィルム42との間に残存する第1の硬化性樹脂組成物39を硬化させた後、硬化樹脂層44をフィルム42とともにロール状モールド20から剥離し、製造装置外に完全に搬送してから、活性エネルギー線の照射を停止する。
【0029】
第1の硬化性樹脂組成物39の供給を停止すると、ロール状モールド20とフィルム42との間に挟まれた第1の硬化性樹脂組成物39の幅がロール状モールド20の回転(フィルム42の移動)とともに徐々に減少する。第1の硬化性樹脂組成物39は、通常、酸素雰囲気下においては硬化が阻害されやすい傾向にあるため、第1の硬化性樹脂組成物39の幅方向の端部は、その他の部分と比べて硬化率が低くなる傾向にあり、ロール状モールド20の外周面への樹脂残り等の問題が発生しやすい傾向にある。このため、物品の製造を終了する際等、第1の硬化性樹脂組成物39の幅が徐々に減少させながら、活性エネルギー線を照射して硬化樹脂層44を形成すると、ロール状モールド20の外周面に樹脂幅痕が発生する。
【0030】
(工程(II))
工程(II)においては、工程(I)の後、内部離型剤を含む第2の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成する。第2の硬化性樹脂組成物は、第1の硬化性樹脂組成物および後述の第3の硬化性樹脂組成物よりも、分子量300以下の重合性化合物の割合が高い硬化性樹脂組成物である。
【0031】
工程(II)を行うことによって、第2の硬化性樹脂組成物が、モールドの微細凹凸構造に付着した異物や、樹脂幅痕の原因となる微細凹凸構造の内部に入り込んだ第1の硬化性樹脂組成物に浸透し、硬化樹脂層を基材とともにモールドから剥離する際に、異物や樹脂が同時にモールドから除去される。また、異物、樹脂等が付着していた部分やモールドの離型剤による処理が不十分な部分が、第2の硬化性樹脂組成物から移行してきた内部離型剤で被覆されるため、モールドの微細凹凸構造を均一にかつ十分に離型剤で処理できる。そして、第2の硬化性樹脂組成物は内部離型剤を含んでいるため、第2の硬化性樹脂組成物によるモールドの表面への樹脂残りは発生しにくい。さらに、工程(II)の直後または連続して、後述の工程(III)が行われることによって、工程(II)の終了時に樹脂幅痕が発生したとしても、工程(III)の初期に樹脂幅痕が除去される。
【0032】
モールドは、工程(I)で用いたものを引き続き用いる。
基材の形状としては、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等が挙げられる。
基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、ガラス等が挙げられる。
【0033】
第2の硬化性樹脂組成物としては、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、内部離型剤を添加したものが挙げられる。すなわち、第2の硬化性樹脂組成物としては、重合性化合物と、重合開始剤と、内部離型剤とを含むものが挙げられる。
第2の硬化性樹脂組成物としては、モールドの微細凹凸構造に付着した異物や、樹脂幅痕の原因となる微細凹凸構造の内部に入り込んだ第1の硬化性樹脂組成物に浸透しやすいという点から、単官能モノマー、2官能モノマー等の分子量が小さいモノマーを含むものを用いることが好ましい。
【0034】
第2の硬化性樹脂組成物としては、重合性化合物100質量%のうち、分子量300以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であるものがより好ましく、40質量%以上であるものがより好ましく、50質量%以上であるものがさらに好ましい。さらには、重合性化合物100質量%のうち、分子量200以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であるものがより好ましく、40質量%以上であるものがより好ましく、50質量%以上であるものがさらに好ましい
【0035】
重合性化合物100質量%のうち、分子量300以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上であれば、硬化前にモールドの微細凹凸構造に付着した異物や、樹脂幅痕の原因となる微細凹凸構造に入り込んだ第1の硬化性樹脂組成物に浸透し、モールドの表面から異物や樹脂幅痕の原因となっている樹脂残り等を除去できる。
重合性化合物100質量%のうち、分子量200以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上であれば、モールドの表面への硬化物の残留をより厳密に抑えることができる。
【0036】
異物や樹脂への第2の硬化性樹脂組成物の浸透性は、モールドおよび第2の硬化性樹脂組成物の温度が高いほど良好になる。よって、工程(II)においては、モールドおよび第2の硬化性樹脂組成物の温度を30℃以上とすることが好ましく、40℃以上とすることがより好ましい。また、加温する場合は、85℃以下とすることが好ましく、75℃以下とすることがより好ましい。85℃を超えると、低分子量成分が揮発する恐れがあり、異物や樹脂への第2の硬化性樹脂組成物の浸透性が低下する恐れがある。
また、第2の硬化性樹脂組成物が異物や樹脂に接する時間が長いほど浸透が進むため、第2の硬化性樹脂組成物を供給して硬化するまでの時間が長いほど好ましい。
【0037】
また、第2の硬化性樹脂組成物としては、積算光量1000mJ/cmの活性エネルギー線を照射して硬化させた硬化物の23℃における押込み弾性率が5〜2000MPaとなるものが好ましい。硬化物の23℃における押込み弾性率が5MPa以上であれば、離型時に硬化物が引きちぎられることなく、モールドの表面に硬化物が残ることがない。また、硬化物の23℃における押込み弾性率が2000MPa以下であれば、硬化物の微細凹凸構造が脆くなることが抑えられ、外部離型剤を塗布したモールドとの離型時に硬化物が折れることなく、モールドの表面に硬化物が残ることがない。より望ましくは、前記押込み弾性率が1000MPa以上であれば、モールドの表面への硬化物の残留をより厳密に抑えることができる。
硬化物の押込み弾性率は、超微小硬さ試験システム(フィッシャー社製、フィッシャースコープHM2000)を用いて測定される。
【0038】
内部離型剤としては、第2の硬化性樹脂組成物からモールドの表面へと移行し、モールドと硬化性樹脂組成物の硬化物との離型性を改善する化合物群の中から選べばよい。
内部離型剤としては、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物、リン酸エステル系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、ポリオキシアルキレン基を有する化合物、固形ワックス(ポリエチレンワックス、アミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンのパウダ等)等が挙げられる。
第2の硬化性樹脂組成物の硬化物とモールドとの離型性が良好となる点から、内部離型剤として(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
【0039】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物としては、離型性の点から、下記式(1)で表わされる化合物が好ましい。
(HO)3−n(O=)P[−O−(CHCHO)−R ・・・(1)
は、アルキル基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜3の整数である。
【0040】
としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキル基がより好ましい。
mは、1〜10の整数が好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物は、モノエステル体(n=1)、ジエステル体(n=2)、トリエステル体(n=3)のいずれであってもよい。また、ジエステル体またはトリエステル体の場合、1分子中の複数の(ポリ)オキシアルキレンアルキル基はそれぞれ異なっていてもよい。
【0041】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物の市販品としては、下記のものが挙げられる。
城北化学社製:JP−506H、
アクセル社製:モールドウイズINT−1856
日光ケミカル社製:TDP−10、TDP−8、TDP−6、TDP−2、DDP−10、DDP−8、DDP−6、DDP−4、DDP−2、TLP−4、TCP−5、DLP−10。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物の量は、重合性化合物の100質量部に対して、0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.05〜0.1質量部がさらに好ましい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物の量が1質量部以下であれば、モールドの表面の異物を十分に除去できる。また、基材との密着性の低下が抑えられ、その結果、モールドへの樹脂残りが抑えられる。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物の量が0.01質量部以上であれば、モールドの表面に十分な量の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物を移行できる。また、モールドからの離型性が十分となり、モールドへの樹脂残りが抑えられる。
【0043】
工程(II)は、例えば、図1に示す装置を用いて、下記のように行われる。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の回転に同期してロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(基材)との間に、タンク22から第2の硬化性樹脂組成物38を供給する。
【0044】
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および第2の硬化性樹脂組成物38をニップし、第2の硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0045】
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して第2の硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、第2の硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、硬化樹脂層44が表面に形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離する。
【0046】
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0047】
工程(II)において第2の硬化性樹脂組成物38を供給するタンク22および供給ラインと、工程(I)において第1の硬化性樹脂組成物39を供給するタンク23および供給ラインとは、同じタンクおよびラインであってもよく、別々のタンクおよびラインであってもよく、樹脂の切り替え時に洗浄しなくてよい点から、別々のタンクおよびラインであることが好ましい。
【0048】
(工程(III))
工程(III)においては、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る。工程(III)は、工程(II)の直後または工程(II)と連続して行うことが好ましい。これにより、工程(II)の終了時に樹脂幅痕が発生したとしても、工程(III)の初期において樹脂幅痕を除去することができる。
【0049】
モールドは、工程(II)で用いたものを引き続き用いる。
基材の形状としては、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等が挙げられる。
基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、ガラス等が挙げられる。
【0050】
第3の硬化性樹脂組成物としては、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。すなわち、第3の硬化性樹脂組成物としては、重合性化合物と、重合開始剤とを含むものが挙げられる。第3の硬化性樹脂組成物を硬化させて製造する微細凹凸構造を表面に有する物品には、親水性や疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がその用途に応じて適宜用いることができる。
【0051】
重合性化合物としては、後述する重合性化合物が挙げられる。
重合開始剤としては、後述する重合開始剤が挙げられる。
第3の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、内部離型剤を含んでいてもよい。
工程(III)においては、第3の硬化性樹脂組成物の代わりに、工程(I)と同じ第1の硬化性樹脂組成物を用いてもよい。
【0052】
工程(III)は、例えば、図1に示す製造装置を用いて、工程(I)と同様にして行われる。
【0053】
工程(III)において第3の硬化性樹脂組成物を供給するタンクおよび供給ラインと、工程(I)において第1の硬化性樹脂組成物39を供給するタンク23および供給ラインとは、同じタンクおよびラインであってもよく、別々のタンクおよびラインであってもよく、樹脂の切り替え時に洗浄しなくてよい点から、別々のタンクおよびラインであることが好ましい。
また、工程(III)において第3の硬化性樹脂組成物を供給するタンクおよび供給ラインと、工程(II)において第2の硬化性樹脂組成物38を供給するタンク22および供給ラインとは、同じタンクおよびラインであってもよく、別々のタンクおよびラインであってもよく、樹脂の切り替え時に洗浄しなくてよい点から、別々のタンクおよびラインであることが好ましい。
【0054】
工程(II)から工程(III)へ移行するにあたっては、一旦、ロール状モールド20の回転およびフィルム42の移動を停止させてもよいし、生産性の向上等を目的としてロール状モールド20の回転およびフィルム42の移動を停止させることなしに移行させてもよい。
【0055】
工程(III)の終了後、再び工程(II)を行い、ついで工程(III)を行ってもよい。
【0056】
(作用効果)
以上説明した本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法にあっては、第1の硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程(I)と、工程(I)の後、重合性化合物と内部離型剤とを含み、かつ第1の硬化性樹脂組成物および第3の硬化性樹脂組成物よりも分子量300以下の重合性化合物の割合が高い第2の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成する工程(II)とを有するため、工程(I)の終了時に、モールドの表面に樹脂幅痕等の表面欠陥が発生したとしても、工程(II)においてモールドの表面の樹脂幅痕等の表面欠陥を除去できるため、工程(III)において物品の製造を再開した際に物品の表面に樹脂幅痕等の表面欠陥が転写されることを抑制することができる。
【0057】
さらに、第2の硬化性樹脂組成物に内部離型剤を含ませることによって、モールドの微細凹凸構造の領域全体にわたって、均一にかつ十分に離型剤で処理できる。そのため、工程(II)の終了後、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程(III)において、モールドから転写された微細凹凸構造における欠陥を抑えることができる。さらに、工程(III)を工程(II)の直後、または工程(II)と連続して行うことによって、工程(II)の終了時にモールドの表面に樹脂幅痕が発生したとしても、樹脂幅痕を工程(III)の初期に除去することができる。
【0058】
また、モールドとしてロール状モールドを用い、基材としてロール状モールドの回転に同期してロール状モールドの外周面に沿って移動する帯状の基材を用い、帯状の基材をロール状モールドの外周面に沿って移動させながら、第2の硬化性樹脂組成物に替えて、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を供給することで、工程(II)についで工程(III)を連続して行うことによって、モールドの微細凹凸構造が精度よく転写された微細凹凸構造を表面に有する物品を生産性よく製造できる。
【0059】
<モールドの製造方法>
モールドは、モールド基材の表面に微細凹凸構造を形成して製造される。
モールド基材の材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。
モールド基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
【0060】
モールドの製造方法としては、例えば、下記の方法(i−1)または方法(i−2)が挙げられ、大面積化が可能であり、かつ製造が簡便である点から、方法(i−1)が特に好ましい。
(i−1)アルミニウム基材の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(i−2)モールド基材の表面にリソグラフィ法によって微細凹凸構造を形成する方法。
【0061】
方法(i−1)としては、下記の工程(a)〜(f)を有する方法が好ましい。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の表面に形成されたモールドを得る工程。
【0062】
工程(a):
図2に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑化にするために、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電解研磨処理(エッチング処理)などで研磨されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前にあらかじめ脱脂処理されることが好ましい。
【0063】
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0064】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、平均間隔が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0065】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、平均間隔が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0066】
工程(b):
図2に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。
【0067】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0068】
工程(c):
図2に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0069】
工程(d):
図2に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0070】
工程(e):
図2に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0071】
工程(f):
図2に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド18が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0072】
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて形成されたモスアイ構造の反射率低減効果は不十分である。
【0073】
細孔12の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0074】
細孔12の深さは、平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。
細孔12の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
【0075】
ついで、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面を外部離型剤で処理する。
外部離型剤としては、アルミニウム基材の陽極酸化アルミナと化学結合を形成し得る官能基を有するものが好ましい。なお、厳密には微細凹凸構造を表面に有するモールドの、微細凹凸構造の表面を離型剤で処理するものであるが、以降単に「微細凹凸構造を表面に有するモールド」や、「モールドの表面」を処理する、と記載する場合がある。
【0076】
外部離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられ、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が特に好ましい。加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の市販品としては、フルオロアルキルシラン、KBM−7803(信越化学工業社製)、MRAF(旭硝子)、オプツールHD1100、HD2100シリーズ(ハーベス社製)、オプツールAES4、AES6(ダイキン工業社製)、ノベックEGC−1720(住友3M社製)、FS‐2050シリーズ(フロロテクノロジー社製)等が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の内部離型剤として利用できるフッ素含有化合物、シリコーン系化合物、リン酸エステル系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、ポリオキシアルキレン基を有する化合物、固形ワックス(ポリエチレンワックス、アミドワックス、ポリテトラフルオロエチレンのパウダ等)等を溶剤で希釈したものも使用できる。
【0077】
外部離型剤による処理方法としては、下記の方法(ii−1)または方法(ii−2)が挙げられ、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面をムラなく外部離型剤で処理できる点から、方法(ii−1)が特に好ましい。
(ii−1)外部離型剤の希釈溶液にモールド本体を浸漬する方法。
(ii−2)外部離型剤またはその希釈溶液を、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面に塗布する方法。
【0078】
方法(ii−1)としては、下記の工程(g)〜(l)を有する方法が好ましい。
(g)モールドを水洗する工程。
(h)工程(g)の後、モールドにエアーを吹き付け、モールドの表面に付着した水滴を除去する工程。
(i)加水分解性シリル基を有するフッ素化合物をフッ素系溶媒で希釈した希釈溶液に、モールドを浸漬する工程。
(j)浸漬したモールドをゆっくりと溶液から引き上げる工程。
(k)必要に応じて、工程(j)よりも後段にてモールドを加熱加湿させる工程。
(l)モールド本体を乾燥させる工程。
【0079】
工程(g):
モールドには、微細凹凸構造を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液、リソグラフィ法に用いた剥離液等)、不純物(埃等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
【0080】
工程(h):
モールドの表面に水滴が付着していると、工程(i)の希釈溶液が劣化するため、モールドにエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
【0081】
工程(i):
希釈用のフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.5質量%が好ましい。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
【0082】
工程(j):
浸漬したモールドを溶液から引き上げる際には、電動引き上げ機等を用いて、一定速度で引き上げ、引き上げ時の揺動を抑えることが好ましい。これにより塗布ムラを少なくできる。
引き上げ速度は、1〜10mm/secが好ましい。
【0083】
工程(k):
工程(j)よりも後段にて、モールドを加熱加湿させてもよい。モールドを加熱加湿下に放置することによって、フッ素化合物(離型剤)の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノール基が生成し、該シラノール基とモールドの表面の水酸基との反応が十分に進行し、フッ素化合物の定着性が向上する。加湿方法としては、飽和塩水溶液を用いた飽和塩法、水を加熱して加湿する方法、加熱した水蒸気をモールドに直接吹付ける方法等が考えられる。この工程は恒温恒湿器中で行えばよい。
加熱温度は、30〜150℃が好ましい。
加湿条件は、相対湿度60%以上が好ましい。
放置時間は、10分〜7日が好ましい。
【0084】
工程(l):
モールドを乾燥させる工程では、モールドを風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、30〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
【0085】
上記のような外部離型剤でモールドの表面を処理した場合、モールドの表面が外部離型剤で処理されたことは、モールドの表面の水接触角を測定することによって確認できる。外部離型剤で処理されたモールドの表面の水接触角は、60゜以上が好ましく、90゜以上がより好ましい。水接触角が 60゜以上であれば、モールドの表面が外部離型剤で十分に処理され、離型性が良好となる。
【0086】
モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面をモールドと化学結合を形成し得る外部離型剤で処理することで、モールドの微細凹凸構造を物品の表面に転写する場合に、初期の離型性が良好となる。また、繰り返し転写した場合であっても、離型性が低下しにくくなるため、微細凹凸構造を表面に有する物品を生産性よく製造できるようになる。
【0087】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物、もしくは第2の硬化性樹脂組成物のベースとして用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、少なくとも重合性化合物と重合開始剤とを含む。
【0088】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
【0089】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
【0092】
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
【0093】
(重合開始剤)
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0096】
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量部を超えると、硬化膜が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0097】
(他の成分)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒を含んでいてもよい。
【0098】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0099】
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
【0100】
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
【0101】
第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を硬化させて製造する微細凹凸構造を表面に有する物品には、親水性や疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がその用途に応じて適宜用いることができる。
【0102】
(疎水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
【0103】
フッ素含有化合物:
フッ素含有化合物としては、フッ素含有モノマー、フッ素含有シラン化合物、フッ素含有界面活性剤、フッ素含有ポリマー等が挙げられる。
【0104】
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
【0105】
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0106】
フッ素含有シラン化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0107】
フッ素含有界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0108】
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ素含有ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0109】
シリコーン系化合物:
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられ、例えば、信越化学工業社製のシリコーンジアクリレート「x−22−164」「x−22−1602」等が好ましく用いられる。
【0110】
(親水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、少なくとも親水性モノマーを含む組成物を用いることが好ましい。また、耐擦傷性や耐水性付与の観点からは、架橋可能な多官能モノマーを含むものがより好ましい。なお、親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーは、同一(すなわち、親水性多官能モノマー)であってもよい。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その他のモノマーを含んでいてもよい。
【0111】
親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート、必要に応じて単官能モノマーを含む組成物を用いることがより好ましい。
【0112】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL220、EBECRYL1290、EBECRYL1290K、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、KRM8200)、ポリエーテルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL81)、変性エポキシアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL3416)、ポリエステルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL800、EBECRYL810、EBECRYL811、EBECRYL812、EBECRYL1830、EBECRYL845、EBECRYL846、EBECRYL1870)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0113】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、10〜50質量%が好ましく、耐水性、耐薬品性の点から、20〜50質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が10質量%以上であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が50質量%以下であれば、表面に小さな亀裂が入りにくく、外観不良となりにくい。
【0114】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、アロニックスM−240、アロニックスM260(東亞合成社製)、NKエステルAT−20E、NKエステルATM−35E(新中村化学社製)等の長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
【0115】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合は、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が30質量%以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が80質量%以下であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。
【0116】
単官能モノマーとしては、親水性単官能モノマーが好ましい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、物品本体への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
【0117】
単官能モノマーの割合は、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。単官能モノマーを用いることにより、基材と硬化樹脂との密着性が向上する。単官能モノマーの割合が20質量%以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートまたは2官能以上の親水性(メタ)アクリレートが不足することなく、防汚性または耐擦傷性が十分に発現する。
【0118】
単官能モノマーは、1種または2種以上を(共)重合した低重合度の重合体として活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に0〜35質量部配合してもよい。低重合度の重合体としては、M−230G(新中村化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート類と、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートとの40/60共重合オリゴマー(MRCユニテック社製、MGポリマー)等が挙げられる。
【0119】
<物品>
図3は、微細凹凸構造を表面に有する物品40の一例を示す断面図である。
フィルム42は、光透過性フィルムである。フィルムの材料としては、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
【0120】
硬化樹脂層44は、第1の硬化性樹脂組成物39または第3の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、第1の硬化性樹脂組成物39または第3の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
【0121】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0122】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部を形成した場合、凸部間の平均間隔は100から200nm程度となることから、250nm以下が特に好ましい。
【0123】
凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0124】
凸部の高さは、平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。凸部の高さが80nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが500nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0125】
凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部のアスペクト比が1.0以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が5.0以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
【0126】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0127】
硬化樹脂層44の屈折率とフィルム42の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化樹脂層44とフィルム42との界面における反射が抑えられる。
【0128】
微細凹凸構造を表面に有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
【0129】
硬化樹脂層44の材料が疎水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、90゜以上が好ましく、110゜以上がより好ましく、120゜以上が特に好ましい。水接触角が90゜以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
【0130】
硬化樹脂層44の材料が親水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、25゜以下が好ましく、23゜以下がより好ましく、21゜以下が特に好ましい。水接触角が25゜以下であれば、表面に付着した汚れが水で洗い流され、また油汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。該水接触角は、硬化樹脂層44の吸水による微細凹凸構造の変形、それに伴う反射率の上昇を抑える点から、3゜以上が好ましい。
【0131】
物品40の用途としては、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品、より具体的には、ディスプレー用反射防止、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、太陽電池部材等が挙げられる。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
(陽極酸化アルミナの細孔)
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔の間隔、細孔の深さを測定した。
【0134】
(外観評価)
外観評価は、LEDライト(朝日電機社製、DOP−XRE301)を使用し、暗室で目視確認することにより行った。モールドについては、工程(II)の終了後、全域にわたって樹脂幅痕の有無を評価した。フィルムについては、工程(III)の終了後、連続品の200m地点の1m、バッチ品10回目のものを目視確認し、樹脂幅痕の有無を評価した。
モールド樹脂幅痕:
○:目視確認できる。
×:目視確認できない。
フィルム欠陥数:
○:フィルム1mまたは1枚あたり0〜2個。
×:フィルム1mまたは1枚あたり3個以上。
フィルム樹脂幅痕:
○:目視確認できる。
×:目視確認できない。
【0135】
〔調製例〕
第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物について、表1に示された割合で各成分を調合し、それぞれの実施例に用いた。なお、表中の略称は下記の化合物を表している。
【0136】
TAS:コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物(大阪有機化学工業社製、TAS)、
C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学社製、C6DA)、
X−22−1602:ラジカル重合性シリコーンオイル(信越化学工業社製、X−22−1602)、
M260:ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM260)、
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、
MA:メチルアクリレート、
Irg.184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)、
Irg.819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア819)、
INT1856:(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物(アクセル社製、INT−1856)、
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、A−TMMT)、
PHE:フェノキシエチルアクリレート(第一工業製薬社製、ニューフロンティアPHE)、
TDP−2:(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物(日光ケミカル社製、TDP−2)。
【0137】
〔製造例〕
(ロール状モールドa)
ロール状のアルミニウム基材(純度:99.99%)を用意した。
【0138】
工程(a):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で6時間陽極酸化を行った
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で20秒間陽極酸化を行った。
【0139】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で20秒間陽極酸化を行った。
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(d)を行い、平均間隔:100nm、深さ:220nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状モールドを得た。
【0140】
工程(i):
モールドを、オプツールDSX(ダイキン化成品販売社製)の0.1質量%希釈溶液に浸漬した。
工程(j):
モールドを一晩風乾して、離型剤で処理されたロール状モールドaを得た。
【0141】
(平板モールドb)
5cm角のアルミニウム板(純度99.99%)を用いた以外は、前記ロール状モールドaと同様の方法で、平板モールドbを得た。
【0142】
〔実施例1〕
各工程(I)〜(III)には、表1に記載された第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いた。
【0143】
(工程(I))
図1に示す製造装置を用いて工程(I)を行った。
ロール状モールド20としては、ロール状モールドaを用いた。
フィルム42としては、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、W32A、厚さ:88μm、幅:300mm)を用いた。
【0144】
帯状のフィルム42を、ロール状モールド20の回転に同期させてロール状モールド20の表面に沿って移動させつつ、ロール状モールド20とフィルム42との間に、タンク23から第1の硬化性樹脂組成物39を供給した。
フィルム42側から、積算光量1100mJ/cmの紫外線を、第1の硬化性樹脂組成物39に照射し、第1の硬化性樹脂組成物39を硬化させることによって、フィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した。
【0145】
200mのフィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した後、タンク23からの第1の硬化性樹脂組成物39の供給を停止し、紫外線の照射を停止した。その後、ロール状モールド20の表面を観察すると、樹脂幅痕が形成されていることが確認された。
【0146】
(工程(II)、(III))
図1に示す装置を用いて工程(II)、(III)を行った。
ロール状モールド20としては、工程(I)で用いたロール状モールドaを用いた。
フィルム42としては、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、W32A、厚さ:88μm、幅:300mm)を用いた。
【0147】
帯状のフィルム42を、ロール状モールド20の回転に同期させてロール状モールド20の表面に沿って移動させつつ、50℃に加温されたロール状モールド20とフィルム42との間に、タンク22から50℃に加温された第2の硬化性樹脂組成物38を供給した。
フィルム42側から、積算光量1100mJ/cmの紫外線を、第2の硬化性樹脂組成物38に照射し、第2の硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、フィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した。
【0148】
200mのフィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した後、タンク22からの第2の硬化性樹脂組成物38の供給を停止し、引き続き、ロール状モールド20とフィルム42との間に、別のタンクから第3の硬化性樹脂組成物を供給した。
フィルム42側から、積算光量1100mJ/cmの紫外線を、第3の硬化性樹脂組成物に照射し、第3の硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、フィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した。
【0149】
200mのフィルム42の表面に硬化樹脂層44を形成した後、タンクからの第3の硬化性樹脂組成物の供給を停止し、ついでフィルム42の移動を停止した。硬化樹脂層44の表面を目視で観察したところ、離型不良、樹脂残り、異物等による欠陥はフィルム1mあたり0〜2個であった。さらに、物品の表面には樹脂幅痕に対応した形状が転写されていなかった。また、ロール状モールド20の表面を目視で観察すると、工程(III)の終了時に形成された樹脂幅痕のみしか形成されていないことを確認した。これらの結果を表2に示す。
【0150】
〔実施例2〕
各工程(I)〜(III)には、表1に記載された第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いた。
【0151】
(工程(I))
モールドとしては、平板モールドbを用いた。
フィルム42としては、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、W32A、厚さ:88μm、幅:300mm)を所定の大きさにカットしたものを用いた。
平板モールドbに第1の硬化性樹脂組成物を滴下し、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、W32A)を所定の大きさにカットしたフィルムを被せた後、フィルム側から、積算光量1100mJ/cmの紫外線を照射し、フィルムの表面に硬化樹脂層を形成した。この工程(I)を3回繰り返し、物品の製造を行った。物品の製造後、モールドの表面を観察すると、樹脂幅痕が形成されていることが確認された。
【0152】
(工程(II)、(III))
以下のようにして、工程(II)、(III)を行った。
モールドとしては、工程(I)で用いた平板モールドbを用いた。
フィルム42としては、ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、W32A、厚さ:88μm、幅:300mm)を用いた。
工程(I)よりも広域に第2の硬化性樹脂組成物を滴下し、工程(I)と同様の方法で硬化樹脂層を形成した。この工程(II)を10回繰り返して行った。
さらに、工程(III)として、工程(I)と同様の方法で硬化樹脂層を形成する工程を3回繰り返し行った。その後、形成された硬化樹脂層および平板モールドbの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0153】
〔実施例3〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層および平板モールドbの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0154】
〔実施例4〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層および平板モールドbの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0155】
〔実施例5〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層および平板モールドbの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0156】
〔比較例1〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層およびロール状モールドaの表面を目視で確認した。
【0157】
その結果、離型不良によって発生した微小な欠陥(フィッシュアイ)が全長にわたって確認され、その数はフィルム1mあたり20個以上であった。さらに、樹脂幅痕に対応した形状が転写されていることが確認された。これらの結果を表2に示す。
【0158】
〔比較例2〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層およびロール状モールドaの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0159】
〔比較例3〕
表1に記載の第1の硬化性樹脂組成物、第2の硬化性樹脂組成物、第3の硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にして工程(I)〜(III)を行った。その後、形成された硬化樹脂層および平板モールドbの表面を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品の効率的な量産にとって有用である。
【符号の説明】
【0163】
10 アルミニウム基材
12 細孔(微細凹凸構造)
14 酸化皮膜
16 細孔発生点
18 モールド
20 ロール状モールド
22 タンク
23 タンク
24 空気圧シリンダ
26 ニップロール
28 活性エネルギー線照射装置
30 剥離ロール
38 第2の硬化性樹脂組成物
39 第1の硬化性樹脂組成物
40 物品
42 フィルム(基材)
44 硬化樹脂層
46 凸部(微細凹凸構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(I)〜(III)を有する、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
(I)第1の硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に挟み、前記第1の硬化性樹脂組成物を硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
(II)前記工程(I)の後、重合性化合物と内部離型剤とを含み、かつ前記第1の硬化性樹脂組成物および下記第3の硬化性樹脂組成物よりも分子量300以下の重合性化合物の割合が高い第2の硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、前記第2の硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化樹脂層を前記基材の表面に形成する工程。
(III)前記工程(II)の後、第1の硬化性樹脂組成物または第3の硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、前記第1の硬化性樹脂組成物または前記第3の硬化性樹脂組成物を硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【請求項2】
前記第2の硬化性樹脂組成物が、重合性化合物と、重合開始剤と、内部離型剤とを含み、
前記重合性化合物100質量%のうち、分子量300以下の重合性化合物の割合が、20質量%以上である、請求項1に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【請求項3】
前記工程(II)において、前記モールドおよび前記第2の硬化性樹脂組成物の温度を30℃以上とする、請求項1または2に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
【請求項4】
前記モールドが、ロール状モールドであり、
前記基材が、前記ロール状モールドの回転に同期して前記ロール状モールドの外周面に沿って移動する帯状の基材であり、
前記帯状の基材を前記ロール状モールドの外周面に沿って移動させながら、前記第2の硬化性樹脂組成物に替えて、前記第1の硬化性樹脂組成物または前記第3の硬化性樹脂組成物を供給することで、前記工程(II)についで前記工程(III)を連続して行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−108502(P2012−108502A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237039(P2011−237039)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】