説明

微細化顔料組成物および該微細化顔料組成物を用いた顔料分散体の製造方法

【課題】従来の微細化顔料以上に微細化された顔料、特に、その一次粒子径が10nm以下で、かつ微細化顔料が安定して分散されている微細化顔料組成物、および該微細化顔料組成物を含む顔料分散体の製造方法を提供すること。
【解決手段】有機顔料、分散安定化溶剤、分散剤および水溶性無機塩を含む混合物を摩砕混練した後、水洗し、脱水して得られる、前記水溶性無機塩を除去してなる微細化顔料組成物であって、前記有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤の組合せが、前記微細化顔料組成物を用いて調製される顔料分散体の有機顔料、溶剤および分散剤の組合せと同じか、またはそれと同等の機能を有する組合せである微細化顔料組成物により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化顔料組成物および該微細化顔料組成物を用いた顔料分散体の製造方法に関し、各種インクジェットプリンター用インキや、カラーフィルター(フォトリソグラフィー方式、およびインクジェット方式のカラーフィルターを含む)用分散体、カラートナーなどに用いられる微細化顔料組成物および該微細化顔料組成物を用いた顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機顔料(以下、単に、顔料という場合がある。)は塗料、印刷インキ、樹脂の着色材料として使用されてきたが、このような用途に用いられる顔料の粒径は0.1μm程度のものであった。近年、顔料の耐熱性、耐光性、耐水性などの優れた特性が着目され、種々の用途に用いられるようになっており、例えば、透明性が要求される樹脂製品用の着色材料、液晶表示装置用のカラーフィルターの着色材料、インクジェットインキ、電子写真方式現像剤などの用途においても広く使用されるようになってきている。これらの用途の中でも、カラーフィルター、インクジェットインキなどに使用される顔料は、着色力、色相、透明性等の着色効果における向上に加え、低粘度、高流動性等の取扱い性の向上などが強く要請されており、従来のような顔料では対応が困難となっている。
【0003】
このような着色効果の向上に対応する方法としては、より微細化された顔料を均一分散した状態で得ようとする方法が検討されており、上記のような要請に対応するには顔料の一次粒子径をできるだけ小さくすることが必要であると考えられている。顔料を微細化する方法としては、種々の公知技術が存在するが、粗顔料、水溶性無機塩、水溶性溶剤等を含有する組成物をニーダー等で混練するソルトミリング法が、微細化、整粒等の点で有効なことから、広く採用されている。
【0004】
しかし、ソルトミリング法により顔料を微細化する場合、一般に、前記の組成物をニーダー等で混練後、水洗し、脱水した後、箱型乾燥機やバンド乾燥機で乾燥し、更にハンマーミル等で粉砕して粉末の微細化され、各種用途の顔料として使用されるため、ソルトミリングにより一定の微細化顔料が得られたとしても、その後の乾燥粉砕工程を経て、所望の目的の顔料分散体とした段階で、強固な凝集が生じたり、容易に再凝集が生じたりするため、十分な着色効果が得られず、また粘度が経時的に上昇するという問題があった。
【0005】
このような課題に対しては、ミリング時に顔料誘導体を添加したり、ミリング時の温度調整をしたり、食塩などの水溶性無機塩を微粒化したりする試みがなされている(特許文献1〜3)。また、前記のような乾燥工程を経ることなく、脱水後の顔料の水ペーストと所定の溶剤とを混合し、フラッシング(転相を意味し、以下同義で用いる場合がある。)して顔料分散体を得る方法なども試みられている(特許文献4)。
【0006】
しかし、これらの方法を用いたとしても、実際には、TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行うと、顔料の一次粒子径は、10nmより大きくなっており、一次粒子径を10nm以下とすることは、ほぼ不可能であるか極めて困難であるのが現状である。また一般に、一次粒子径が小さくなるほど、再凝集が起こり易く、顔料分散体の粘度は上昇しやすくなるため、微細化した顔料が安定して分散した状態である顔料分散体を得ることは極めて困難である。そのため、顔料を再分散させるためには相応の動力が必要になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−57425号公報
【特許文献2】特開2006−335920号公報
【特許文献3】特開2008−50588号公報
【特許文献4】特開2007−191699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、その目的は、従来の微細化顔料以上に微細化された顔料、特に、その一次粒子径が10nm以下で、かつ微細化顔料が安定して分散されている微細化顔料組成物、および該微細化顔料組成物を含む顔料分散体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、従来のソルベントソルトミリング時に使用される水溶性溶剤は、それに適した添加剤等を用いるのに対して、顔料分散体には、ソルトミリング時とは異なる溶剤および該溶剤に適した分散剤を使用している点に着目し、有機顔料等の微細化時から顔料分散体を製造するに至るまで一貫した非凝集の概念を取り入れ、終始同等の分散安定系を形成し、ソルトミリングから、更には顔料分散体の製造まで、分散安定系で一連の操作を行うことにより、顔料の微細化を容易に行うことが可能になり、分散安定化した顔料分散体の製造が可能であることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
(1)本発明は、有機顔料、分散安定化溶剤、分散剤および水溶性無機塩を含む混合物を摩砕混練した後、水洗し、脱水して得られる、前記水溶性無機塩を除去してなる微細化顔料組成物であって、前記有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤の組合せが、前記微細化顔料組成物を用いて調製される顔料分散体の有機顔料、溶剤および分散剤の組合せと同じか、またはそれと同等の機能を有する組合せであることを特徴とする微細化顔料組成物。
【0011】
(2)前記有機顔料が、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、および縮合多環系顔料から選択される少なくとも一種である(1)記載の微細化顔料組成物。
【0012】
(3)前記縮合多環系顔料が、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、金属錯体顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料から選択される少なくとも一種である(2)記載の微細化顔料組成物。
【0013】
(4)前記分散剤が、結晶安定化、易分散化、および/または分散安定化の機能を有する(1)に記載の微細化顔料組成物。
【0014】
(5)前記有機顔料が、有機顔料の誘導体を含有する(1)記載の微細化顔料組成物。
【0015】
(6)前記水溶性無機塩が、芒硝または食塩である(1)の微細化顔料組成物。
【0016】
(7)顔料濃度が10〜70重量%の顔料水ペーストである(1)記載の微細化顔料組成物。
【0017】
(8)前記分散安定化溶剤が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤から選択される少なくとも一種である(1)記載の微細化顔料組成物。
【0018】
(9)前記エーテル系溶剤が、アルキレングリコール低級アルキルエーテルアセテートである(8)記載の微細化顔料組成物。
【0019】
(10)前記微細化顔料組成物がカラーフィルター用である(9)に記載の微細化顔料組成物。
【0020】
(11)有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤から成る分散安定化顔料組成物、および水溶性無機塩を含む混合物を混練摩砕した後、洗浄し、脱水して、微細化顔料組成物を得る微細化工程、該微細化顔料組成物と溶剤をフラッシャーに仕込み、顔料を水相から油相に転送相した後、水をデカンテーションして除去する溶剤転相工程を有し、前記微細化工程における混合物に含まれる分散安定化溶剤および分散剤が、前記溶剤転相工程において使用される溶剤および分散剤と同一、または同等の機能を有することを特徴とする顔料分散体の製造方法。
【0021】
(12)前記溶剤転相工程において、水をデカンテーションして除去した後、更に減圧蒸留する(11)記載の顔料分散体の製造方法。
【0022】
(13)減圧蒸留により顔料分散体中の残留水分を1.0重量%以下にする(11)記載の顔料分散体の製造方法。
【0023】
(14)前記有機顔料が、有機顔料の誘導体を含有する(11)記載の顔料分散体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有機顔料の微細化から顔料分散体に至るまで一貫した非凝集の概念を入れ、分散安定系を形成する組成でソルトミリングすることで、一次粒子径が10nm以下の微細化顔料を含む微細化顔料組成物を容易に提供することができる。しかも、乾燥工程等を経ないで顔料水ペーストの状態で顔料分散体の調製に使用できるので、再凝集しないで、微細かつ均一で、分散安定性に優れた顔料分散体を小さい動力で、即ち安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の意義は、有機顔料の微細化時から顔料分散体を製造するに至るまで一貫した非凝集の概念を取り入れ、終始同等の分散安定系を形成し、ソルトミリングから顔料分散体の製造を行うことにより、最終的には極めて微細化された顔料が安定して分散された状態にある顔料分散体を得ることができる点にある。
【0026】
そして、このような観点から、本発明の微細化顔料組成物は、有機顔料、水溶性無機塩、分散安定化溶剤および分散剤を含む混合物を摩砕混練した後、水洗し、脱水して得られる、前記水溶性無機塩を除去してなる微細化顔料組成物であって、前記有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤の組合せが、前記微細化顔料組成物を用いて調製される顔料分散体の有機顔料、溶剤および分散剤の組合せ(最終製品に要求される「顔料の分散安定系組成物」に該当する)と同じか、またはそれと同等の機能を有する組合せであることを特徴とする。
【0027】
即ち、本発明では、最終的に得られる顔料分散体の使用用途に応じて選択される顔料に適した溶剤および分散剤の組合せを、ソルトミリングを行う段階から採用し、分散安定系を形成することを特徴とするものである。これにより、顔料の微細化時の状態を維持した微細化顔料組成物を得ることが可能となり、該微細化顔料組成物を用いれば、所望の用途に適した微細化顔料を含む顔料分散体を容易に得ることが可能となる。
【0028】
従って、本発明では、先ず顔料分散体の用途を決定すると、その用途で分散安定系を形成するのに適した有機顔料、溶剤、および分散剤の組合せを決定し、当該組合せを有機顔料のソルトミリングによる微細化時から採用することを原則とする。但し、ソルトミリング時の組合せが、顔料分散体で用いる顔料、溶剤、分散剤の組合せに必ず一致していなければならない訳ではなく、顔料分散体において顔料と組み合わせて使用される溶剤、分散剤と同等の機能を有する溶剤、分散剤を用いることが可能である。本発明では、このような組合せを、「同等の機能を有する組合せ」という。よって、このような組合せのものを用いることにより、得られる顔料分散体は後述のような分散安定系を形成することができる。
【0029】
例えば、顔料分散体において、溶剤としてトルエンを用いる場合には、トルエンと同等の機能、即ちトルエンと相溶性があり、トルエンと組み合わせて使用される分散剤の作用を妨げることがない溶剤のうち、ソルトミリングにおいて安全衛生面やコスト面から選択される溶剤を分散安定化溶剤として使用することが可能である。例えば、ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどである。このようにすれば、ソルトミリング時に実質的に使用が極めて困難な溶剤に代えて分散安定系での微細化処理を行うことが可能となる。
【0030】
尚、本発明において、「分散安定系を形成する」とは、ソルトミリング組成や顔料分散体組成中において、微細化された顔料がフロキュレーションやアグロメレーションといった凝集状態を形成することなく、単分散に近い状態を維持し、再凝集することがないか、再凝集が殆ど起きない状態を形成していることを意味する。
本発明では、再凝集すれば顔料分散体の粘度が上昇することに着目し、ニュートニアン流動の指標であるチキソトロピックス・インデックス(TI値)を用いて、顔料分散体が分散安定系を形成した状態にあるか否かを評価する。具体的評価基準は、以下のとおりである。
即ち、顔料分散体について、剪断速度が10[1/sec]および100[1/sec]の時の粘度をレオメーターを用いて測定し、剪断速度が10[1/sec]の時の粘度が100[mPa・s]以下で、TI値=(10[1/sec]の時の粘度)/(100[1/sec]の時の粘度)が1.5以下、より好ましくは1.2以下である場合に、顔料分散体が分散安定系を形成した状態にあることとする。また、ここでいう顔料分散体とは、原則として、最終的に得られる本発明の顔料分散体を意味する。ただし、製造工程ないし最終状態における分散体の分散安定系を予め確認する場合においては、顔料濃度を概ね5〜20重量%とし(顔料誘導体を用いる場合は、顔料誘導体が含まれる。)、分散剤、分散安定化溶剤等を用いて調製した確認用の顔料分散体を意味する。
また本発明では、分散性確認の一つの指標である塗膜の透明性を表すヘイズを用い、分散安定系についての補助的な確認方法として考慮することができる。但し、ヘイズについては、測定条件によっては測定値が異なるため、必ずしも絶対値で表わせるものではないが、たとえば後述する分散安定系確認試験法を採用した場合においては、ヘイズが15以下であることを分散安定性の一つの目安とする。
そして、このような数値で現れる状態を形成している顔料分散体は流動性に優れ、彩度や濃度などの色特性が優れたものとなる。
【0031】
前記の高度に微細化された顔料が安定して分散していることを必要とする分野のうち、ここでは、カラーフィルターを一例として、以下に、本発明の微細化顔料組成物の作製方法を説明する。
【0032】
<微細化工程>
本発明では、ソルトミリング法を用いて有機顔料を微細化する。当該方法は、有機顔料、無機摩砕剤、分散剤、および溶剤(本発明では、特に分散安定化溶剤という。)を混合し、いわゆる顔料の分散安定系組成に対し、混練機等を用いて機械的に摩砕混練し(このように摩砕混練された混合物をマグマと称する場合がある)、有機顔料を微細化する方法である。尚、本発明では、有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤から成る混合物を分散安定化顔料組成物とも称する。
【0033】
前記分散安定化溶剤は、上述のように顔料分散体の用途に基づいて設定する必要があるが、顔料分散体を調製する場合の溶剤としては、概ね、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤を使用することができる。より具体的には以下の通りである。
【0034】
アルコール系溶剤としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アミルアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケントン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0035】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0036】
エーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0037】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンが、また、芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等が挙げられる。
【0038】
上記の溶剤のうち、特に好ましくは、シクロヘキサノン、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。尚、この場合でも、顔料分散体の用途に基づいて設定する必要があることはいうまでもない。
【0039】
また、カラーフィルター用として顔料分散体を調製する場合は、エーテル系溶剤を用いることができる。ソルトミリングにおいては、前記のとおり、好ましくは上記のカラーフィルター用顔料分散体の溶剤種から、作業上の安全術生面やコスト面から選択される溶剤を分散安定化溶剤として用いることができる。さらに好ましくは、水溶性無機塩を除去する工程での作業のし易さから、水溶性か、または水への溶解度を幾分か有する溶剤が適しており、エーテル系溶剤から、アルキレングリコール低級アルキルエーテルアセテートの群に属する溶媒が好ましく用いられる。
【0040】
より具体的には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテートが挙げられる。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましく用いられる。フォトリソグラフィー方式用の分散体として、レジスト樹脂との相溶性や印刷法や転写法等パターン化する場合の流動性や乾燥速度など、カラーフィルター作製工程において、最も取り扱いやすい溶剤であることによる。
【0041】
これらの特定の分散安定化溶剤がマグマ中での顔料の分散安定性、特に一次粒子径が10nm以下の超微細化顔料の分散安定性に寄与する理由は、ミリングにより新たに生じた表面と分散剤とを効率的に接合・吸着させることを容易にし、その後の水洗脱塩工程での水による悪影響を防止しているからであると考えられる。また、顔料分散体において、カラーフィルターの膜形成樹脂との相溶性が良好で、混合時の凝集が抑制されることによるものと推定される。
【0042】
微細化工程での分散安定化溶剤の使用量は、特に制限はなく、ソルトミリング時に顔料が水溶性無機塩により効果的に摩砕される剪断力を得ることができるマグマの粘度、硬さが保持できるように、適宜決定すれば良い。
【0043】
本発明では、使用する有機顔料について特に制限は無いが、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、および縮合多環系顔料から選択される少なくとも一種を用いることができる。また、縮合多環系顔料としてはアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、金属錯体顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が例示できる。
【0044】
本発明では、有機顔料および前記分散安定化溶剤との組合せにおいて、結晶安定化、易分散化、および/または分散安定化の機能を示す分散剤を使用することができ、例えば、樹脂型または界面活性剤型の顔料分散剤を用いることができる。
【0045】
樹脂型顔料分散剤として、具体的にポリウレタン、ポリエステル、不飽和ポリアミド、燐酸エステル、ポリカルボン酸及びそのアミン塩・アンモニウム塩・アルキルアミン塩、ポリカルボン酸エステル、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、変性ポリアクリレートなどの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体などの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物が用いられ、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。樹脂型顔料分散剤の重量平均分子量は1000〜30000程度のものが好ましい。
【0046】
具体的には、ソルスパース3000、9000、13240、17000、20000、24000、26000、28000、32000、32500、41000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、Disperbyk−108、110、112、140、142、145、161、162、164、166、2000、2001、2050、2070、2150(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、EFKA−4401、4403、4406、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080、5064、5207、5244(以上、EFKA Additive社製)、アジスパーPB821(F)、PB822、PB880(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトT−8000(川研ファインケミカル(株)製)、ディスパロンPW−36、DA−325、375、7301(楠本化成(株)製)などが挙げられる。
【0047】
界面活性剤型顔料分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル等のアニオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン活性剤等が挙げられる。
【0048】
具体的には、デモールN、RN、MS、SN−B、エマルゲン120、430、アセタミン24、86、コータミン24P(以上、花王(株)製)、プライサーフAL、A208F(以上、第一工業製薬(株)製)、アーカードC−50、T−28、T−50(以上、ライオン(株))などが挙げられる。
【0049】
前記水溶性無機塩としては、食塩(塩化ナトリウム)、芒硝(硫酸ナトリウム、無水物を含む)、塩化カリウム等が例示できる。
【0050】
本発明においては、結晶安定化、分散安定化のために使用される有機顔料の誘導体を適宜添加して使用してもよい。この誘導体は、前記有機顔料を基本骨格とし、分子内に酸性を付与する置換基や、塩基性を付与する置換基を導入した化合物であり、分散対象となる顔料に吸着して極性を与えることで分散剤や樹脂との相互作用から分散効果を与えると考えられるものである。
【0051】
具体的には山陽色素(株)での合成品の他、市販品の例として、EFKA−6745、6750(EFKA Additive社製)、BYK−Synergist2100(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ソルスパース5000、12000、22000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。
【0052】
本発明では、分散剤に補助的効果を付与するため、カラーフィルターとしての性能に悪影響を及ぼすことの無い分散助剤として、前記分散安定化溶剤に可溶であるが、水不溶性で、かつ室温では固体状態になる合成樹脂を添加することができる。また、繊維素誘導体や、ゴム誘導体、タンパク誘導体も、合成樹脂に準じて同様の性能を有するものを選択して使用することができる。
これらの合成樹脂では、特にエポキシ樹脂および(メタ)アクリル樹脂が好適に使用される。汎用性が広く、透明性が高く、またカラーフィルターにした時の諸耐性においても優れているためである。
【0053】
エポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基を1個以上含むエポキサイドをいい、本発明では硬化剤で架橋されていない、溶解性のものが好ましい。エポキサイドとしてはビスフェノール系、ノボラック系、アルキルフェノール系、レゾルシン系、ポリグリコール系、エステル系、N−グリシジルアミンなどのグリシジル型や,環状脂肪族エポキサイド等があげられる。
【0054】
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル酸とメタクリル酸およびそれらのエステルのモノマーの単体あるいは混合物の共重合体で、他にスチレン、酢酸ビニル、無水マレイン酸等のラジカル重合性のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0055】
これら合成樹脂の添加量は特に制限はないが、有機顔料等100重量部に対し5〜200重量部が好ましく、5重量部より少ない場合は期待する効果が乏しく、200重量部より多い場合は、最終的にカラーフィルター用組成物として加えられる熱硬化性樹脂、熱可塑性、感光性樹脂、モノマー、オリゴマー、光開始剤等の機能を損なうなど悪影響を及ぼす可能性がある。また、それら添加組成物との相溶性の悪さが目立ち、目的とする分散安定化に効果が発揮されないことがある。
【0056】
ソルトミリング時に使用可能な混練機等は公知のものを使用可能であるが、高速撹拌装置、またはニーダー等の高トルク混練装置を用いることにより、顔料の微細化が容易となり、高速の処理が可能となる。
【0057】
<含水ペーストの調製>
前記の微細化工程が終了した後、マグマを取り出し、水中に投じて撹拌分散し、ろ過と洗浄を行い、水溶性無機塩を取り除く。このようにして、本発明の微細化顔料組成物を顔料水ペーストとして得ることができる。
【0058】
この際、前記顔料水ペーストは、微細化顔料の濃度が10〜70重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。この範囲の顔料濃度にあると、成分として含まれるその他樹脂等固形分により顔料水ペーストの取扱いが容易であり、その後の溶剤転相工程でも、機械力の掛かり方から混練性、水分離性の点で有利である。
【0059】
<溶剤転相>
上記のようにして得られた微細化顔料を含む顔料水ペーストは、そのまま乾燥、粉砕し、さらに分散工程を経て、例えば、カラーフィルター用顔料分散体とすれば、従来のソルベトソルトミリングにより得た微細化顔料より優れた分散性を示し、カラーフィルターとしての性能も向上する。本発明では、さらに課題のひとつである大幅な省力、易分散化のために、顔料水ペーストを乾燥することなく溶剤転相を行い、そのまま分散体組成を調製する製造方法を極めて有効に実施することができる。
【0060】
即ち、上記のようにして得られた微細化顔料を含む顔料水ペーストと非水溶性溶剤をフラッシャーに仕込み、非水溶性溶剤でフラッシングし、顔料を水相から油相へ転相した後、水をデカンテーションして除去することで、顔料分散体を製造するこができる。この方法により、強力な分散処理工程に付することなく、かつ顔料が微細に分散された状態で分散剤により包含処理され、乾燥工程で強い凝集を生じることがないため、より凝集性の低い微細化顔料の分散体を得ることができる。また、このように強力な分散工程や乾燥工程を必要としないことから大きなエネルギーを必要とすることも無い。
【0061】
尚、非水溶性溶剤でフラッシングする場合、溶剤(フラッシング溶剤)に加えて、ソルトミリングで用いる、分散剤や樹脂のうち、非水溶性でかつ前記フラッシング溶剤に溶けるものを選択して、一部を添加することも可能である。すなわち、ソルトミリング時の分散安定化組成を阻害しない範囲で、一部または全部をフラッシング時に併用することができる。
【0062】
更に、上記顔料分散体を減圧蒸留し、残存する水分を最終顔料分散体中で1.0重量%以下まで除去することが好ましい。これより残存量が多いと、例えば、最終的なカラーフィルターの製膜性やその他必要特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0063】
この溶剤転相の工程で用いられる溶剤としては、本発明の微細化顔料組成物の水ペーストから溶剤ペーストに転相でき、そのまま目的の最終顔料分散体の溶剤とするもの、または転相後、最終分散体溶剤で置換できる(即ち、後工程の蒸留で除去することが可能である)ものから選択し、各種分散剤、樹脂、添加剤等を考慮して選択する必要がある。
【0064】
前記溶剤としては、非水溶性溶剤であることが必要であり、例えば、カラーフィルター用の顔料分散体を調製する場合は、アルコール系溶剤(非水溶性のものに限る)、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。
【0065】
前記のアルコール系溶剤としては、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール;ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケントン、シクロヘキサノン、;エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル;脂肪族炭化水素系溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン;芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン;エーテル系溶剤としては、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテートなどが挙げられる。前記の溶剤は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。尚、上記エーテル系溶剤は顔料分散体を調製する際に用いる溶剤でもある。
【0066】
尚、顔料種によっては、ソルトミリング後の水ペーストをトルエンなどでフラッシングした後、そのトルエンを除去した上で、分散体溶剤に置換し、所望の顔料分散体を得ることができる。
【0067】
また、フラッシャーとしては、公知のものを用いることができ、例えば、ニーダー、サンドグラインダーミルなどが挙げられるが、水相から溶剤相に転相することが可能であれば、その他装置を用いてもよく、何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明を、実施例および比較例により、カラーフィルター用として用いる場合についてより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
<微細化工程>
ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue15:6(P.B.15:6と略称する場合がある。)、東洋インキ製造(株)製、「リオノールブルーE」)150g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)3038g、顔料誘導体(日本ルーブリゾール(株)製、「顔料誘導体系分散剤 ソルスパース5000」)16.5g(顔料中の10重量%)、高分子分散剤(味の素ファインテック(株)製、「アジスパーPB821F」)83.3g(対顔料50重量%)、アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製、「バナレジンPSY−C1」)33.3g(固形分換算、対顔料20重量%)、分散安定化溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMAと略す。協和発酵ケミカル(株)製、「アーコソルブPMA」)584gを双腕型混練機(以下、ニーダーという。(株)モリヤマ製、5LニーダーΣ型。)に添加し、ニーダー中の混練物の温度が50℃になるように温度コントロールして10時間混練した(以下、混練物をマグマという。)。以上により微細化工程が終了した。
【0070】
尚、前記組成物のうち中性無水芒硝を含めず、PMAを用いて顔料分10重量%に濃度調整した系で、別途、ペイントコンディショナー(以下、PCと称する場合がある。)で分散調製して得られる分散体(以下、PC−B−1と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果より、低ヘイズかつ低粘度(剪断速度10[1/s]の時の粘度を意味する。以下同じ。)であり、TI値が1.5以下であることから、分散安定系組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0071】
<含水ペーストの調製>
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水30Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返した。水洗された水分を多く含んだ微細化顔料組成物である顔料水ペーストは、顔料濃度が30.6重量%であった。
【0072】
<溶剤転相(フラッシング)>
微細化後の顔料水ペースト(固形分52重量%)425g(顔料純分で130gに相当)を、1Lニーダー((株)モリヤマ製、Σ型)に投入し、ジャケット温度を35℃の条件下で撹拌運転しながら、溶剤PMA70gを加えて30分間混練した。その後、デカンテーションにより分離水を取り除いて、PMAを主体に多く含む微細化顔料のペーストを得た。次に、更にPMAを加えて顔料濃度が約12重量%になるまで希釈し、60℃の減圧蒸留により残留する水を1.0%以下まで脱水した。この段階で顔料濃度約14重量%の顔料分散体を得た。
【0073】
<顔料分散液の調製>
次いで、得られた顔料分散体から顔料純分で2.6gを秤量し、70mLのガラス製の瓶に入れ、さらに、顔料濃度が全組成物に対して13重量%になるようにPMAを加えた。
0.5mmφのジルコニアビーズ80gを加えてPCで分散処理して、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液を得た。5分間分散後と60分間分散後のものを後述のカラーフィルター評価用の分散体として使用した。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF1−1と、60分間分散後のものをCF1−2と称する。
【0074】
ここで、PCの分散時間として前記2点の試料を評価する理由は以下の通りである。
前記のとおり、本発明の課題の一つとして、大幅な省カ分散による製造コストの削減が挙げられるが、本発明の微細化顔料組成物の分散の容易さを確認するために、溶剤転相を経た顔料分散体にごく僅かな分散力を加えたタイプとしてPCの分散時間が5分間である分散体を作製した(以下、PC5分と称する場合がある)。一方、十分分散エネルギーを加えたタイプ、即ち到達品質確認用としてPCの分散時間が60分間である分散体を作製した(以下、PC60分と称する場合がある)。両者の特性値の開きが小さいほど易分散性であると判断する指標とした。
【0075】
尚、PCの分散時間が60分間の分散は、実験室において標準的に顔料分散体を作製する際の方法であるため、粉末顔料を原料とした、PC60分の顔料分散体を本実施例および比較例の参照(基準)として採用した。
【0076】
(実施例2)
ε型銅フタロシアニン顔料の微細化工程において分散安定化剤として、PMAに替えてエチレングリコールアセテート(EDGAC)(ダイセル化学工業(株)製)を用いたことを除き、実施例1と同様にして溶剤転相工程を経たCF評価用顔料分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF2−1と、60分間分散後のものをCF2−2と称する。
【0077】
尚、微細化工程における組成物のうち中性無水芒硝を含めず、EDGACを用いて顔料分10重量%に濃度調整した系で、別途、PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−B−2と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果より、低ヘイズかつ低粘度であり、TI値が1.5以下であることから、分散安定系組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0078】
(比較例1)
ε型銅フタロシアニン顔料の微細化工程で溶剤として、PMA584gに替えて、エチレングリコール(EG)((株)日本触媒製)610gを用いて実施したことを除き、実施例1と同様にして溶剤転相工程を経たCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF3−1と、60分間分散後のものをCF3−2と称する。
【0079】
尚、微細化工程における組成物のうち中性無水芒硝を含めず、EGを用いて顔料分10%に濃度調製した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−B−3と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果から、色分かれし、全く分散が不可能な組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0080】
(比較例2)
<微細化工程>
ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:6、東洋インキ製造(株)製、「リオノールブルーE」)150g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)3038g、溶剤としてエチレングリコール(EG)590gを5Lニーダーに添加し、混練物の温度が70℃になるように温度コントロールして10時間混練した。以上により微細化工程が終了した。
【0081】
尚、微細化工程における組成物のうち中性無水芒硝を含めず、EGで顔料分10%に濃度調製した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−B−4と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果から、色分かれし、全く分散が不可能な組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0082】
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水30Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。
【0083】
水洗後の顔料水ペーストを取り出し、乾燥用棚(材質、SUS304)に採り、乾燥機に移して105℃で20時間乾燥させた(乾燥後の微細化顔料を乾燥ブロックと称する。)。乾燥ブロックを粉砕機(協立理工(株)製、小型粉砕機、サンプルミルSK−M2)で粉砕した。このものをカラーフィルター用微細化顔料として用いた。
【0084】
<分散体調製>
70mLのガラス製の瓶に得られた微細化顔料2.6部を秤量し、さらに、ソルスパース5000を顔料中10重量%、アジスパーPB821Fを対顔料重量50%、バナレジンPSY−C1を固形分換算で対顔料20重量%になるよう添加し、顔料濃度が全組成物に対して13重量%になるように溶剤PMAを加えた。
【0085】
0.5mmφのジルコニアビーズ80gを加えてPCで分散処理して、ジルコニアビーズを除去してCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF4−1と、60分間分散後のものをCF4−2と称する。
【0086】
(実施例3)
<微細化工程>
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150(P.Y.150と略称する場合がある。)、LANXESS製、イエローE4GN−GT)18g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)360g、高分子分散剤(川研ファインケミカル(株)製、「ヒノアクトT−8000」)14g(対顔料70重量%)、黄色顔料誘導体(山陽色素(株)製、特願2007−305680に記載の誘導体)3g(顔料中の14重量%)、アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製、「バナレジンPSY−C1」)6g(固形分換算、対顔料30重量%)、分散安定化溶剤としてPMA134gを実験用サンドグラインダーミル(山陽色素(株)製。以下、SGMと略す。)に添加し、SGM中の混練物の温度が30℃になるように温度コントロールして2時間混練摩砕した。以上により微細化工程が終了した。
【0087】
尚、前記組成物のうち中性無水芒硝を含めず、PMAを用いて顔料分10重量%に濃度調整した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−Y−1と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果より、低ヘイズかつ低粘度であり、TI値が1.5以下であることから、分散安定系組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0088】
<含水ペーストの調製>
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水5Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。水洗された水分を多く含んだ微細化顔料組成物である顔料水ペーストは、顔料濃度が21.3重量%であった。
【0089】
<溶剤転相>
微細化後の顔料水ペースト(固形分41.4重量%)45g(顔料純分で9.5gに相当)を、実験用自動乳鉢に投入し、撹拌運転しながら溶剤PMA18gを加えて10分間混練した。その後、デカンテーションにより分離水を取り除いて、PMAを主体に多く含む微細化顔料のペーストを得た。
【0090】
次にPMAを加えて顔料濃度が約9重量%になるまで希釈し、60℃の減圧蒸留により残留する水を1.0%以下まで脱水した。この段階で顔料濃度約11重量%の顔料分散体を得た。
【0091】
<分散体調製>
次いで、得られた顔料分散体から顔料純分で2gを秤量し、70mLのガラス製の瓶に入れ、顔料濃度が全組成物に対して8重量%になるようにPMAを加えた。0.5mmφのジルコニアビーズ80gを加えてPCで分散処理して、ジルコニアビーズを除去してCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF5−1と、60分間分散後のものをCF5−2と称する。
【0092】
(比較例3)
<微細化工程>
黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 150、LANXESS製、イエローE4GN−GT)320g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)3200g、溶剤としてエチレングリコール(EG)((株)日本触媒製)820gを5Lニーダーに添加し、混練物の温度が50℃になるように温度コントロールして10時間混練摩砕した。以上により微細化工程が終了した。
【0093】
尚、前記組成物のうち中性無水芒硝を含めず、EGを用いて顔料分10%に濃度調整した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−Y−2と略称する。)のヘイズおよび粘度測定の結果から、色分かれし、全く分散が不可能な組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0094】
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水30Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。
【0095】
水洗後の顔料水ペーストを取り出し、乾燥用棚(材質、SUS304)に採り、乾燥機に移して105℃で20時間乾燥させた(乾燥後の微細化顔料を乾燥ブロックと称する。)。乾燥ブロックを粉砕機(協立理工(株)製、小型粉砕機、サンプルミルSK−M2)で粉砕した。
【0096】
<分散体調製>
70mLのガラス製の瓶に得られた微細化顔料1.8gを秤量し、さらに、ヒノアクトT−8000を固形分換算で対顔料70重量%、黄色顔料誘導体(山陽色素(株)製、特願2007−305680記載の誘導体)を対顔料14重量%、アクリル系樹脂(バナレジンPSY−C1)を顔料中の30重量%になるよう添加し、顔料濃度が全組成物に対して8重量%になるようにPMAを加えた。
【0097】
0.5mmφのジルコニアビーズ80gを加えてPCで分散処理して、ジルコニアピーズを除去してCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF6−1と、60分間分散後のものをCF6−2と称する。
【0098】
(実施例4)
<微細化工程>
赤色顔料(C.I.Pigment Red 254(P.R.254と略称する場合がある。)、Ciba社製、イルガホア レッド BT−CF)18g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)360g、高分子分散剤(味の素ファインテック(株)製、「アジスパーPB821F」)10g(対顔料50重量%)、赤色顔料誘導体(山陽色素(株)製、特開2007−186681号公報記載の誘導体)2g(顔料中の10重量%)、分散安定化溶剤としてPMA170gをSGMに添加し、SGM中の混練物の温度が30℃になるように温度コントロールして2時間混練摩砕した。以上により微細化工程が終了した。
【0099】
尚、前記組成物のうち中性無水芒硝を含めず、PMAを用いて顔料分10%に濃度調整した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−R−1と略称する。)のヘイズ及び粘度測定の結果より、低ヘイズかつ低粘度であり、TI値が1.5以下であることから、分散安定系組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0100】
<含水ペーストの調製>
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水5Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。水洗された水分を多く含んだ微細化顔料組成物である顔料水ペーストは、顔料濃度が25.0重量%であった。
【0101】
<溶剤転相(フラッシング)>
微細化後の顔料水ペースト(固形分37.3重量%)60g(顔料純分で15gに相当)を、実験用自動乳鉢に投入し、撹拌運転しながら溶剤PMA15gを加えて5分間混練した。その後、デカンテーションにより分離水を取り除いて、PMAを主体に多く含む微細化顔料のペーストを得た。
【0102】
次にPMAを加えて顔料濃度が約12重量%になるまで希釈し、60℃の減圧蒸留により残留する水を1.0%以下まで脱水した。この段階で顔料濃度約14重量%の顔料分散体を得た。
【0103】
<分散体調製>
次いで、得られた顔料分散体から顔料純分で3.0gを秤量し、70mLのガラス製の瓶に入れ、更に、顔料濃度が全組成物に対して12重量%になるようにPMAを加えた。0.3mmφのジルコニアビーズ100gを加えてPCで分散処理して、ジルコニアビーズを除去してCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF7−1と、60分間分散後のものをCF7−2と称する。
【0104】
(比較例4)
<微細化工程>
赤色顔料(C.I.Pigment Red 254、Ciba社製、イルガホア レッド BT−CF)320g、中性無水芒硝(平均粒径約20μm、三田尻化学工業(株)製)3200g、溶剤としてジエチレングリコール(DEG)((株)日本触媒製)690gを5Lニーダーに添加し、混練物の温度が50℃になるように温度コントロールして9時間混練摩砕した。以上により微細化工程が終了した。
【0105】
尚、前記組成物のうち中性無水芒硝を含めず、DEGを用いて顔料分10%に濃度調整した系で、別途PCで分散調製して得られる分散体(以下、PC−R−2と略称する。)のヘイズ及び粘度測定の結果より、流動性がなく、また非常に高ヘイズであり分散不可能な組成であることを予め確認した。これらの確認方法等は後述のとおりである。
【0106】
微細化工程が終了したマグマを取り出し、40℃の温水30Lに撹拌分散し、その後ヌッチェに移してろ過し、芒硝が完全に取り除けるまで水洗を繰り返し、顔料水ペーストを得た。
【0107】
水洗後の顔料水ペーストを取り出し、乾燥用棚(材質、SUS304)に採り、乾燥機に移して105℃で20時間乾燥させた(乾燥後の微細化顔料を乾燥ブロックと称する。)。乾燥ブロックを粉砕機(協立理工(株)製、小型粉砕機、サンプルミルSK−M2)で粉砕した。
【0108】
<分散体調製>
70mLのガラス製の瓶に得られた微細化顔料2.6gを秤量し、さらに、高分子分散剤(味の素ファインテック(株)製、「アジスパーPB821F」)を対顔料50重量%になるよう添加し、赤色顔料誘導体(山陽色素(株)製、特開2007−186681号公報記載の誘導体)を顔料中の10重量%となるように添加し、顔料濃度が全組成物に対して13重量%になるようにPMAを加えた。
【0109】
0.3mmφのジルコニアビーズ100gを加えてPCで分散処理した後、ジルコニアビーズを除去してCF評価用分散体2種を得た。尚、5分間分散後の顔料分散体をCF8−1と、60分間分散後のものをCF8−2と称する。
【0110】
(分散安定系確認用分散体の評価)
<分散安定系確認用分散体の調製>
≪P.B.15:6の分散安定組成確認用分散体の調製≫
[PC−B−1の調製]
35mLのガラス製の瓶に、リオノールブルーEを0.9g、ソルスパース5000を0.1g(顔料中の10重量%)、アジスパーPB821Fを0.5g、溶剤としてPMAを8.5g、組成中の顔料分が10重量%となるように加えた。0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−B−1を得た。尚、前記顔料分には、リオノールブルーEとソルスパース5000が含まれる。
【0111】
[PC−B−2、PC−B−3の調製]
また、溶剤をPMAに替えて、それぞれEDGACおよびEGを用いたことを除き、PC−B−1の調製と同様にして、それぞれPC−B−2およびPC−B−3を調製した。
【0112】
[PC−B−4の調製]
35mLのガラス製の瓶に、リオノールブルーE0.9g、溶剤としてEG8.1gを添加し、組成中の顔料分を10重量%とした。さらに、0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−B−4を得た。
【0113】
≪P.Y.150の分散安定組成確認用分散体の調製≫
[PC−Y−1の調製]
35mLのガラス製の瓶に、イエローE4GN−GTを0.9g、黄色顔料誘導体を0.1g(顔料中の10重量%)、ヒノアクトT−8000を0.5g、バナレジンPSY−C1を0.15g(固形分換算、対顔料15重量%)、溶剤としてPMAを8.35g添加し、組成中の顔料分を10重量%とした。さらに、0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−Y−1を得た。尚、前記顔料分には、イエローE4GN−GTと黄色顔料誘導体が含まれる。
【0114】
[PC−Y−2の調製]
35mLのガラス製の瓶に、イエローE4GN−GTを0.9g、溶剤としてEG8.1gを添加し、組成中の顔料分を10重量%とした。さらに、0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−Y−2を得た。
【0115】
≪P.R.254の分散安定組成確認用分散体の調製≫
[PC−R−1の調製]
35mLのガラス製の瓶に、イルガホア レッド BT−CFを0.9g、赤色顔料誘導体を0.1g(顔料中の10重量%)、ヒノアクトT−8000を0.5g、バナレジンPSY−C1を0.30g(固形分換算、対顔料30重量%)、溶剤としてPMAを8.2g添加し、組成中の顔料分を10重量%とした。さらに、0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−R−1を得た。尚、前記顔料分には、イルガホア レッド BT−CFと赤色顔料誘導体が含まれる。
【0116】
[PC−R−2の調製]
35mLのガラス製の瓶に、イルガホア レッド BT−CFを0.9g、溶剤としてDEG8.1gを添加し、組成中の顔料分を10重量%とした。さらに、0.5mmφのジルコニアビーズ40gを加えてPCで60分間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して分散安定組成確認用分散体であるPC−R−2を得た。
【0117】
<分散安定系確認用分散体の物性測定>
得られた各分散安定組成確認用分散体について、剪断速度が10[1/s]の時の粘度と100[1/s]の時の粘度を粘度計(TV―22形粘度計、東機産業(株)製)を用いて測定し、さらにTI値を算出した。
また、バーコーター(バーコーターNo.6(0.5mm))を用いて上記各分散体をPETフィルム上に展色し、80℃で乾燥して塗膜を作成した。得られた塗膜のヘイズを、ヘイズメーター(NDH 2000、日本電色工業(株)製)にて測定した。
粘度およびヘイズの測定結果並びにTI値の算出結果を表1に示す。尚、表1中、測定不可と表記したものは、顔料と溶剤が完全に色別れし、分散体が得られなかったことによるものである。
【0118】
【表1】

【0119】
(実施例および比較例の評価)
<透過型電子顕微鏡による顔料の一次粒子径の測定>
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた顔料分散体に含まれる微細化顔料の一次粒子径を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEM−1011型透過型電子顕微鏡)で観察し、6万倍の画像から、任意の粒子を目視により選択し、画像中に記された計測尺をもとにその縦横寸法を測定した。6万倍の画像では粒子の輪郭が必ずしも鮮明でないため、その誤差を見込んで概略表記とした。測定結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
<分散液物性の測定、およびコントラスト評価用カラーフィルターの作製>
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた分散体(CF1−1〜CF8−2)について、剪断速度が10[1/s]の時の粘度と100[1/s]の時の粘度を粘弾性測定装置(アントンパール社製、「Physica MCR−1000」)で測定した。測定結果を表3、4に示す。
【0122】
さらに、コントラスト比測定のために各分散体を用いてスピンコート液(以下、SPC液という。)を調製した。SPC液中の顔料以外の固形分が顔料に対して1:1になるようにバインダー樹脂(新中村化学(株)製、バナレジンPSY−C1)を加えて調製した。SPC液を厚さ1mm、100mm角のガラス板にスピンコーター(ミカサ(株)製、スピンコーターMS−150A)で回転数3段階に設定して個々に塗布し、エアバス内で90℃、2.5分間乾燥させた(プリベイクエ程)。このようにして、各試料につき、3枚のガラス塗板を作製した。
【0123】
<コントラストの測定>
続いてプリベイク工程後の3枚のガラス塗板を分光測色計(コニカミノルタセンシング(株)製、分光測色計 CM−3700d)で測色した。
次に、ガラス塗板の輝度を色彩輝度計(コニカミノルタセンシング(株)製、LS−100)で測定した。バックライト上に偏光板を設置し、偏光板とガラス塗板の間隔が1mmになるように設置した。バックライトの輝度が十分安定したことを確認した後、ガラス塗板の輝度を測定した。偏光板をクロスニコルの位置に調節して輝度を測定し、次いで90°回転させ、パラレルの位置で輝度を測定した。ある色度の位置でYxy色度と各々の輝度を解析ソフトを用いて解析する。標準品のコントラストの測定値を基準に、評価対象の本発明の顔料分散体を用いて作製したCFのコントラストの相対比を求め比較した。その結果を表3、4に示す。尚、実施例1および2並びに比較例1および2では、CF4−2を標準品とし、実施例3および比較例3では、CF6−2を標準品とし、実施例4および比較例4ではCF8−2を標準品とした。これら標準品が従来の製造方法による顔料分散体である。
【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
表2に示すように、本発明の微細化顔料組成物は、10nm以下の一次粒子径を有するものであることが分かる。また、表3、4に示すように、本発明の製造方法により得られた顔料分散体は、粘度、コントラストの相対比を分散時間60分後(PC60分)と5分後のもの(PC5分)について、何れも把握可能であるのに対して、従来の製造方法によるものについては、比較例1を除き把握できないものであり、非常に安定した分散状態を形成していることが分かる。特にコントラストの相対比(PC60分)についてみれば、本発明の製造方法により得られた分散体は、カラーフィルターとして優れたものであることが分かる。
また、実施例、比較例何れの場合も、PC5分とPC60分とで各評価項目において相違はあるものの、従来の製法による比較例のようにPC5分では評価可能な分散体が全く得られなかったのに対して、実施例では評価可能な分散体が得られているように、省力製造が可能となることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の微細化顔料組成物および顔料分散体の製造方法によれば、極めて微細化された微細化顔料を含む微細化顔料組成物を容易に提供することができ、しかも、乾燥工程等を経ないで顔料水ペーストの状態で顔料分散体の調整に使用できるため、再凝集することなく、微細化顔料の分散安定性に優れた顔料分散体を小さい動力で、即ち安価に提供することができる。
従って、本発明は、溶剤系分散体を用いて得られる顔料分散体に広く使用可能であり、カラーフィルター、インクジェットインク、その他特に優れた光透過性を必要としたり、高着色力を求められる分野など、安定して分散した微細化顔料が要請される用途に極めて有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料、分散安定化溶剤、分散剤および水溶性無機塩を含む混合物を摩砕混練した後、水洗し、脱水して得られる、前記水溶性無機塩を除去してなる微細化顔料組成物であって、前記有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤の組合せが、前記微細化顔料組成物を用いて調製される顔料分散体の有機顔料、溶剤および分散剤の組合せと同じか、またはそれと同等の機能を有する組合せであることを特徴とする微細化顔料組成物。
【請求項2】
前記有機顔料が、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、および縮合多環系顔料から選択される少なくとも一種である請求項1記載の微細化顔料組成物。
【請求項3】
前記縮合多環系顔料が、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、金属錯体顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料から選択される少なくとも一種である請求項2記載の微細化顔料組成物。
【請求項4】
前記分散剤が、結晶安定化、易分散化、および/または分散安定化の機能を有する請求項1に記載の微細化顔料組成物。
【請求項5】
前記有機顔料が、有機顔料の誘導体を含有する請求項1記載の微細化顔料組成物。
【請求項6】
前記水溶性無機塩が、芒硝または食塩である請求項1の微細化顔料組成物。
【請求項7】
顔料濃度が10〜70重量%の顔料水ペーストである請求項1記載の微細化顔料組成物。
【請求項8】
前記分散安定化溶剤が、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤から選択される少なくとも一種である請求項1記載の微細化顔料組成物。
【請求項9】
前記エーテル系溶剤が、アルキレングリコール低級アルキルエーテルアセテートである請求項8記載の微細化顔料組成物。
【請求項10】
前記微細化顔料組成物がカラーフィルター用である請求項9に記載の微細化顔料組成物。
【請求項11】
有機顔料、分散安定化溶剤および分散剤から成る分散安定化顔料組成物、および水溶性無機塩を含む混合物を混練摩砕した後、洗浄し、脱水して、微細化顔料組成物を得る微細化工程、該微細化顔料組成物と溶剤をフラッシャーに仕込み、顔料を水相から油相に転送相した後、水をデカンテーションして除去する溶剤転相工程を有し、前記微細化工程における混合物に含まれる分散安定化溶剤および分散剤が、前記溶剤転相工程において使用される溶剤および分散剤と同一、または同等の機能を有することを特徴とする顔料分散体の製造方法。
【請求項12】
前記溶剤転相工程において、水をデカンテーションして除去した後、更に減圧蒸留する請求項11記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項13】
減圧蒸留により顔料分散体中の残留水分を1.0重量%以下にする請求項11記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項14】
前記有機顔料が、有機顔料の誘導体を含有する請求項11記載の顔料分散体の製造方法。



【公開番号】特開2010−106260(P2010−106260A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223276(P2009−223276)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、中小企業庁、戦略的基盤技術高度化支援事業「機能性材料に対応した高機能化学合成技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000180058)山陽色素株式会社 (30)
【Fターム(参考)】