説明

微細構造パターンを有するウェブ製造方法

【課題】生産性良く低コストで良好な転写率にて微細パターンの連続形成を行うことが可能で薄型の微細構造パターンを有するウェブ製造方法を提供する
【解決手段】ウェブ上に放射線硬化性樹脂層を設ける工程と、
微細構造パターンを有するロール型モールドを前記放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程と、
前記放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程とを含む微細構造パターンを有するウェブ製造方法において、前記ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差が15°以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微細構造パターンを有するロール型モールドを用いた、微細構造パターンを有するウェブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光や電子線によるリソグラフィは、物体表面に微細な構造を作製する技術として用いられているが、その中でも近年ナノインプリントと呼ばれる構造転写方法が新しいナノメートルサイズの加工技術として提案されている。また、この技術は高密度で構造転写することが可能であるが、通常基体の厚さが大きいために、単位体積あたりの容量を大きくできず、情報記録メディアとしての応用は困難であった。ナノインプリントは、電子線、紫外線リソグラフィ等により加工された数十〜数百nmの凹凸構造パターンを有するモールドを、平坦な基板と、前記基板上に設け加熱されたレジストなどからなる被構造転写層とからなる被転写体の被構造転写層に加圧し押込み、その後冷却、モールドを剥離することにより凹凸構造パターンを形成している。ところが、この方法では、モールドとレジストの離型性が充分でない場合があり、モールドに汚れが付着したり、被構造転写層に形成されたパターンが乱れることがあった。また、この方法では、バッチ式なので大量生産に向かないうえに単位体積あたりの情報記録密度を高めるためには適切な手法とは言えない。
【0003】
特許文献1では、複数のロールにより形成される間隙中にポリマーを導き、間隙を介してポリマーを圧し、間隙の後にポリマーがフィルムの形態でロール上に置かれるようにし、ここで、ポリマーフィルム上に形成されるべきパターンが設けられた成形具がロールの回りに巻かれてあって、ポリマーフィルムのロール表面側がパターンに従って成形されるナノ構造及びマイクロ構造ポリマーフィルムの製造方法が開示されている。しかし、このようにロール型モールドを用いたインプリント技術を、ナノサイズのパターンに適用する際は、構造転写時のロール型モールドと被構造転写層との接着性が高すぎて、ポリマーがロール型モールドに粘着する場合があり、構造転写率(転写精度)の低下を招くという問題があり、さらに、ポリマーを直接押圧してフィルムを形成した上で、インプリントしてナノ構造及びマイクロ構造ポリマーフィルムを製造する方法であるために、薄型の転写体を製造するのは困難で、情報記録メディアとしての応用に必要な厚さ20μm以下の被転写体については何ら開示していなく、さらなる工夫が求められる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−200491
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のナノインプリント技術では、上述したようにモールドと被転写体の離型性が問題となっていた。特許文献1のような技術では、ポリマーフィルムに直接転写、ロール型モールドにより連続で構造転写を行うというものであり、ポリマーフィルムに直接転写するやり方であるために、生産性良くまた特にナノオーダ−において良好な転写率にて微細構造パターンを有するウェブを製造するのは非常に困難である。また、厚さ20μm以下の被転写体を得ることも困難である。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、ロール型モールドと被転写体との離型性を向上させ、生産性良く低コストで良好な転写率にて微細パターンの連続形成を行うことが可能で薄型の微細構造パターンを有するウェブ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは微細構造パターンを有するウェブ製造方法について鋭意検討した結果、下記の構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出した。すなわち、
ウェブ上に放射線硬化性樹脂層を設ける工程と、
微細構造パターンを有するロール型モールドを前記放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程と、
前記放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程とを含む微細構造パターンを有するウェブ製造方法において、前記ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差が15°以上であることを特徴とする。
【0008】
前記放射線硬化性樹脂層が、溶剤で希釈した放射線硬化性樹脂を、ウェブ上に塗工して設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウェブ製造方法よれば、ロール型モールドの対水接触角と樹脂層の対水接触角との差を特定の値以上に大きくしているので、インプリントの際の被転写体との離型性が良く、ロール型モールドを長時間良好な状態で保つことができる。さらに、溶剤により希釈した樹脂溶液を用いることにより、薄い被構造転写層を設けられるので、被転写体(ウェブ)のさらなる薄型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ウェブ上に放射線硬化性樹脂層を設ける工程と、微細構造パターンを有するロール型モールドを前記放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程と、前記放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程とを含む微細構造パターンを有するウェブ製造方法であるが、放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程は、放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程の前であっても、後ろであっても構わない。
【0011】
図1は本発明の微細構造パターンを有するウェブ製造方法の実施態様の一例である微細構造パターンを有するウェブ製造装置の概略図である。図1に示すウェブ製造装置は、不図示の基材フィルム3を供給する巻き出しロール(基材供給)、放射線硬化性樹脂層5を塗布する塗布手段1、基材フィルム3の走行をガイドするガイドロール2、放射線硬化性樹脂層5を乾燥させる乾燥手段4、表面に微細構造パターンを有するロール(ロール型モールド)6、加圧ロール7、放射線照射手段8、巻取りロール9から構成される。
【0012】
不図示の巻き出しロール(基材供給)から送られてきた基材フィルム3は、塗布手段1により放射線硬化性樹脂が塗布され、その後乾燥手段4により放射線硬化性樹脂層5が形成される。前記放射線硬化性樹脂層5が形成された基材フィルム3は、ロール型モールド6と加圧ロール7との間で加圧押し付けられ構造転写が行われ、その後放射線硬化性樹脂層5を放射線照射手段8により硬化させ、その後ウェブを巻取りロール9に巻き取る。
【0013】
塗布手段1としては、例えばグラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ブレードコート法、リバースロールコート法、スライドコート法、カーテンコート法など各種の方法を用いることができ、塗膜の厚さは、通常0.03〜10μm、好ましくは0.03〜8μmとすることができる。この範囲が好ましいのは、現行技術では0.03μm未満の均一な塗膜を得るのが困難なためである。また、10μmより厚い塗膜では媒体としての有意性が損なわれてしまうため前記のような塗膜の厚さ範囲を設けている。塗膜は塗工後溶剤を蒸発させて形成させるため溶剤による希釈は膜厚調整に有効であり、さらには媒体ならば高体積密度化、小型化などの機能性を付与することも可能である。
【0014】
乾燥手段4としては、熱風による通風乾燥、遠赤外線照射による乾燥、凝縮板による乾燥など従来公知の乾燥方法が用いられる。
【0015】
放射線照射手段8としては、紫外線もしくは電子線が代表的であり、紫外線として超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、クセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いた紫外線源から発するものを用いる。又、電子線として、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出された50〜1000keV、好ましくは100〜300keVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用いることができる。
【0016】
ウェブ上に放射線硬化性樹脂層を設ける工程と、微細構造パターンを有するロール型モールドを前記放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程と、前記放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程とを含む微細構造パターンを有するウェブ製造方法において、前記ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差が15°以上であることが好ましい。20°以上であることがより好ましく、25°以上であることがさらに好ましい。この範囲が好ましいのは、15°未満であるとロール型モールドと樹脂との離型性が不十分でロール型モールド表面に樹脂が汚れとなって付着する場合があるからである。ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差は、大きければ大きい方が好ましいが、通常50°以下である。前記ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角はいずれが大きくても構わない。
【0017】
より具体的にはロール型モールドの例としては酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化珪素、炭化珪素、酸化チタン等のセラミック製のもの、または鉄、クロム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ルテニウムまたは合金等の金属製のものなどが用いられるが機械強度が充分であり対水接触角が被構造転写層のそれと大きく異なればこれら材質に限定されるものではない。さらには転写構造をフラクタル構造にすることで撥水化効果を発現(対水接触角の増大)させることも可能である。また、ロール型モールドは、熱膨張係数の小さなものが好ましく、ニッケル合金やセラミックス製のロール型モールドがより好ましい。
【0018】
ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差が15°以上とするための、ロール型モールドの表面処理の例として、親水化処理(対水接触角の減少)としてはグラフト化、紫外線照射、プラズマ処理等による親水化が挙げられ、撥水化処理(対水接触角の増大)としては、プラズマ処理、珪素またはフッ素系試薬等による撥水化が挙げられる。
【0019】
これらの処理は通常構造転写前になされるものであるが、構造転写系内においてロール型モールドに表面処理を施してもよい。
【0020】
加圧ロールとしては、特に制限はないが、特に薄手の基材フイルムを用いる場合には、ある程度硬質な材質のものが好ましく、硬質ゴム、硬質樹脂、金属、合金、セラミックなどが用いられる。
【0021】
使用する基材フィルムの例としては、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ノルボルネン系高分子及びこれを混合した樹脂等をあげることができるがこれらに限定されるものではない。中でも機能性を考えると透明性、耐熱性、加工性、耐衝撃性、コストパフォーマンスのバランスの良いポリエステル系のフィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みは、1μm以上20μm以下が好ましく、更に好ましくは1μm以上15μm以下、最も好ましくは1μm以上10μm以下である。高分子フィルムシートの厚みが1μm未満であるとハンドリングが困難であり、20μmを越えると情報記録メディアとした場合の体積あたりの記録容量が小さくなる。
【0022】
被構造転写層を形成する放射線硬化性樹脂としては、主として電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂からなる。電子線(紫外線)硬化性組成物としては、分子中にエチレン性不飽和結合を有するプレポリマーまたはオリゴマー、たとえば、不飽和ポリエステル類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メタミンアクリレート、などの各種アクリレート類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどの各種メタクリレート類などの一種または二種以上と、分子中にエチレン性不飽和結合を有くるモノマー、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー類:アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類:アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド:アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミン)エチル、メタクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミン)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミン)エチル、メタクリル酸(N,N−ジメチルアミン)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類:エチレングリコールジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジオクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、等の多官能性化合物、および(または)分子中に二個以上のチオール基を有するポリオール化合物たとえばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチアプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレートなどを混合したものを使用することができる。上記の電子線(紫外線)硬化性組成物における各成分の混合割合については制限がなく、任意に混合して用いることができるが、通常のコーティング適性をもたせるために、前記プレポリマーまたはオリゴマーを5重量%以上、同じく前記モノマーおよび(または)ポリチオールを95重量%以下にすることが好ましい。放射線硬化性樹脂には、放射線照射以前に硬化するのを防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノンなどの重合禁止剤を安定剤として添加することもできる。 また硬化を紫外線で行う場合には、この中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0023】
更にこのような硬化性樹脂層が高い可撓性や耐収縮性が要求される場合には、上記の硬化性塗料中に適当量の熱可塑性樹脂、例えば、非反応性のアクリル樹脂や各種潤滑材等を添加することによってそれらの要求に応えることができる。未硬化の状態でも常温で固体であり、かつ、熱可塑性、溶剤溶解性を有していながら、塗装及び乾燥によって見かけ上、あるいは、手で触ったときにも非流動性であり、かつ非粘着性である塗膜を与える紫外線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂を単独または添加して材料として形成してもよい。このタイプの樹脂を使用すると、インプリントの際に放射線硬化性樹脂が見掛け上、および取扱い上も乾燥していてベタつきがないので、インプリント加工がより円滑に出来る。
【0024】
上記の、各種放射線硬化性樹脂を、要求される機械特性、熱的性質、溶剤溶解性、塗料化した時の流動特性などを考慮して、単独、複数、さらには熱可塑性樹脂と組み合わせて、被構造転写層を形成する樹脂として用いることができるが、前記ロール型モールドの対水接触角と前記被構造転写層の対水接触角との差が15°以上であることが好ましく、より好ましくは20°以上、さらに好ましくは25°以上となるように、被構造転写層を形成する樹脂を選択することが好ましい。
【0025】
図2は本発明の微細構造パターンを有するウェブ製造方法の実施態様の別の一例である微細構造パターンを有するウェブ製造装置の概略図である。図2に示すウェブ製造装置の構成は、図1に示したウェブ製造装置の構成と概ね同様であるが、図1で示したウェブ製造装置は、放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程が、微細構造パターンを有するロール型モールドを放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程の後に設けられるのに対し、図2に示すウェブ製造装置の構成は、放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程が、微細構造パターンを有するロール型モールドを放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程の前に設けられる点が異なる。
【0026】
図1で示したウェブ製造装置は、放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程が、微細構造パターンを有するロール型モールドを放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程の後に設けられるため、被構造転写層の硬化前に構造転写が行われるために、構造転写が行いやすいメリットがある反面、ロール型モールドが汚れ易い傾向がある。これに対し、図2に示すウェブ製造装置の構成は、放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程が、微細構造パターンを有するロール型モールドを放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程の前に設けられるため、ロール型モールドの汚れは少なくなるが、構造転写は行いにくい傾向がある。このため、これらの2つの方法は、被構造転写層の形成に用いる放射線硬化性樹脂の種類と性質により使い分けることが好ましい。
【0027】
また、ロール型モールドの汚れを少なくして、生産性を向上させる方法の一例として、図3(図示したのは放射線照射を二箇所にて行っているがこれに限らない)に示すウェブ製造装置を用い、ロール型モールドとして酸化チタン、または一定強度を持ったセラミック、金属表面などに酸化チタンをコーティングしたものを用い、放射線として紫外線を用いた場合には、被構造転写層の硬化後に構造転写が行われるために、ロール型モールドの汚れが少なく、さらにロール型モールドにも紫外線照射を行うと酸化チタンによる光触媒作用により、ロール型モールド表面の汚れが分解され除去し易くなるとともに、ロール型モールド表面が親水化されるために、ロール型モールドと樹脂との離型性が長時間に渡り維持されるので、生産性が向上する。
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例1として、図1に示した装置を用い、インプリントを行った。被構造転写層を形成する樹脂としてはKAYARAD DN−0075(日本化薬(株)社製放射線硬化性樹脂樹脂、粘度3000〜5000(m・Pa・s,25℃))とポリメチルアクリレートとを7:3の重量比で混合した樹脂溶液(硬化後の対水接触角θ=70°)を用いた。ロール型モールドは、SiCの材質のものを、純正化学(株)社製SilazanHMN(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)を用い撥水処理し用いた。ロール型モールドは、ロール径100mmで、ピッチ500nm、径100nm、高さ75nmの突起が六方格子に配列したものを用いた。
【0030】
基材フィルム(6μm厚さのPETフィルム)上に乾燥厚さが2μmとなるように、グラビアコート方式にて、前記樹脂の樹脂溶液(固形分濃度40Wt%のメチルエチルケトン/トルエン混合溶液)を塗工し、乾燥した。被構造転写層が形成されたウェブを、前記ロール型モールドと加圧ロールとの間に導き、線圧250kg/cm、ライン速度3m/min、室温にてインプリントを行った。転写深さは平均約20nmであった。ロール型モールド、加圧ロールの回転速度は周速差が出ないように制御した。
【0031】
電子線照射条件としては放射線源を加速電圧300keV、照射線量50kGy、ライン速度3m/minにて行った。
【0032】
実施例2〜5、および比較例1、2のインプリントを、表1に示した条件以外は実施例1と同様にして行った。実施例6のインプリントは、図2の装置を用い、溶媒を用いないKAYARAD DPHA−2c(日本化薬(株)社製放射線硬化性樹脂樹脂、硬化後の対水接触角θ=75°、粘度1500〜3500(m・Pa・s,25℃))樹脂溶液そのもので行い、樹脂液が粘調であるために、薄手のフィルムに、薄い被構造転写層を形成するのが困難で、厚さ10μmの基体フィルム上に乾燥厚さ8μmの被構造転写層を形成するにとどまった。これらの変更点以外は、実施例1と同様に行った。
【0033】
(対水接触角の測定方法)
本発明のロール型モールドまたは被転写体の対水接触角を下記の実験系を用いて評価した。
固体平面に液滴をのせたときに、その固体材質と液滴及び空気層の組み合わせによって、液滴が固体平面上半球状になる。接触角θ(°)は映像から直接求めることも可能であるが、本発明では、精度と求めやすさの点から、液滴の表面が固体面と交差する点と液滴の頂点を結ぶ線と、水面に引いた接線と平面のなす角度を接触角θ/2(°)として液滴の頂点の高さ(h)、液滴の半径(a)を直読し、θ=2arctan(h/a)より求めた(図4)。
【0034】
(転写率の評価方法)
転写率はロール型モールドの突起パターンによりインプリントされた被構造転写体のパターンをSEM観察(倍率10000倍)により1000点観察し、突起パターンに対応した形状をなしている個数を数え、転写精度(%)=(突起形状に対応したパターン数/1000)×100 として求めた。
【0035】
【表1】

【0036】
請求項1を満たす、対水接触角│θ−θ│≧15となる実施例1〜6においては、高い転写率が得られた。請求項1を満たさない、対水接触角│θ−θ│<15となる比較例1、2では転写率が低く充分な構造転写を行うことが出来なかった。
【0037】
また、請求項2を満たさない、実施例6においては、転写率は良好であるが、ウェブ全厚が18μmと他の実施例の8μmに比べて大幅に厚いために、情報記録媒体としての応用を行った際には、他の実施例よりも単位体積あたりの情報記録密度が低くなることが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】微細構造パターンを有するウェブ製造装置の一例の概略図である。
【図2】微細構造パターンを有するウェブ製造装置の別の一例の概略図である。
【図3】微細構造パターンを有するウェブ製造装置のさらに別の一例の概略図である。
【図4】対水接触角測定原理図である。
【符号の説明】
【0039】
1 塗布手段
2 ガイドロール
3 基材フィルム
4 乾燥手段
5 放射線硬化性樹脂層
6 ロール型モールド
7 加圧ロール
8 放射線照射手段
9 巻取りロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ上に放射線硬化性樹脂層を設ける工程と、
微細構造パターンを有するロール型モールドを前記放射線硬化性樹脂層に押圧して構造転写する工程と、
前記放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程とを含む微細構造パターンを有するウェブ製造方法において、前記ロール型モールドの対水接触角と前記放射線硬化性樹脂層の対水接触角との差が15°以上であることを特徴とする微細構造パターンを有するウェブ製造方法。
【請求項2】
前記放射線硬化性樹脂層が、溶剤で希釈した放射線硬化性樹脂を、ウェブ上に塗工して設けられることを特徴とする請求項1に記載の微細構造パターンを有するウェブ製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−327055(P2006−327055A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154770(P2005−154770)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】