説明

微細構造体、その製造方法および撮像装置

【課題】ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンをエッチングして形成された凸部の少なくとも頂上部に第1の絶縁層が設けられ、基板凹部に、下記の化学式(1)および化学式(2)(R、R、Rは、アルキル基)で表される基を含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層を形成して凹部の底部に金属を有するシード層を形成し、前記凹部に電気めっきにより金属を充填してめっき層を形成する微細構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比な金属からなる微細構造体、その製造方法および前記微細構造体を用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周期構造を有する微細構造体からなる回折格子は分光素子として様々な機器に利用されている。また、近年ではX線の吸収特性を利用した金からなる微細構造体は、工業的利用として物体の非破壊検査、医療的利用としてレントゲン撮影、等に用いられている。これらは、物体や生体内の構成元素や密度差によりX線透過時の吸収の違いを利用してコントラスト画像を形成するものであり、X線吸収コントラスト法と言われる。
【0003】
しかしながら、軽元素ではX線吸収が非常に小さいため、生体の構成元素である炭素、水素、酸素などからなる生体軟組織、あるいはソフトマテリアルをX線吸収コントラスト法により画像化することは困難である。
【0004】
これに対して、1990年代より、X線の位相差を用いた位相コントラスト法の研究が、放射光施設を中心に行なわれてきた。また、実験室でのX線管を用いた位相イメージングについても研究が行なわれ、伝播法やタルボ干渉法、等が原理的に可能となっている。タルボ干渉を実現するには、X線吸収の大きな周期構造の金からなる高アスペクト比(アスペクト比とは、構造体の高さまたは深さhと横幅wの比(h/w)である。)な吸収格子を使用する。周期構造の金からなる吸収格子の作製方法としては、モールドにめっきにて金を充填するのが好適な方法である。
【0005】
特許文献1には、シリコンに反応性イオンエッチングによって溝を形成し、溝の内部に金属をめっきにて析出させる方法が開示されている。この方法では誘導結合型プラズマ処理装置内に酸素ガスを導入しエッチングにて形成された溝の底面および側壁面にシリコン酸化膜(電気絶縁膜)を形成し、底面のシリコン酸化膜を反応性イオンエッチングで除去しシリコンを露出させる。その後、露出したシリコンを電気めっきのシード層として使用し、シリコン表面からめっきを析出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−185728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1においては、誘導結合型プラズマ処理装置内に酸素ガスを導入し、形成されるシリコン酸化膜の膜厚は2nm程度であり、電気めっきの絶縁層として十分な絶縁を維持することは必ずしも容易ではない。また、アルカリ性のめっき液を使用する場合は若干のシリコン酸化膜の溶解がある。
【0008】
さらにシリコンに直接金めっき核を面内均一に発生させることは必ずしも容易ではなく、めっき膜厚の不均一化を誘発する可能性がある。また、シリコンと金とは密着性が十分ではないため、シリコン上に発生しためっき核が欠落する可能性もあるため更なる改善が望まれる。
【0009】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体およびそれを用いた撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する微細構造体の製造方法は、シリコンをエッチングして形成された凹部および凸部のうち前記凸部の少なくとも頂上部に第1の絶縁層が設けられた基板を用意する工程と、前記凹部の少なくとも側壁及び底部に、下記の化学式(1)および化学式(2)
【0012】
【化1】

【0013】
(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層を形成する工程と、前記第2の絶縁層を形成した前記凹部の底部に金属を有するシード層を形成する工程と、前記シード層を形成した前記凹部に電気めっきにより金属を充填してめっき層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決する微細構造体は、凹部および凸部が形成されているシリコン基板と、前記凸部の少なくとも頂上部に設けられている第1の絶縁層と、前記凹部の少なくとも側壁及び底部に形成されており、下記の化学式(1)および化学式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層に形成されている前記凹部に充填されている金属を有する層と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決する撮像装置は、被検体を撮像する撮像装置であって、X線源からのX線を回折する回折格子と、前記回折格子によって回折された前記X線の一部を吸収する吸収格子と、前記吸収格子を経たX線を検出する検出器とを備え、前記吸収格子は上記の微細構造体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体の製造方法を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体およびそれを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の微細構造体の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例1の微細構造体の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例2の微細構造体の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の撮像装置の一実施態様を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明は、微細構造体の製造方法に係り、下記の各工程を有することを特徴とする。
【0023】
(1)シリコンをエッチングして形成された凹部および凸部のうち前記凸部の少なくとも頂上部に第1の絶縁層が設けられた基板を用意する第1工程。
(2)前記凹部の少なくとも側壁及び底部に、下記の化学式(1)および化学式(2)
【0024】
【化3】

【0025】
(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層を形成する第2工程。
【0026】
(3)前記第2の絶縁層を形成した前記凹部の底部に金属を有するシード層を形成する第3工程。
(4)前記シード層を形成した前記凹部に電気めっきにより金属を充填してめっき層を形成する第4工程。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の微細構造体の製造方法の一実施態様を示す工程図である。図中、1は基板、2はシリコン、3は凹部、4は頂上部、5は第1の絶縁層、6は側壁、7は底部、8は第2の絶縁層、9はめっき層、10はシード層、11は微細構造体、12は凸部を示す。
【0029】
(第1工程)
まず、図1(a)に示す様に、シリコン2をエッチングして形成された凹部3および凸部12のうち前記凸部12の少なくとも頂上部4に第1の絶縁層5が設けられた基板1を用意する第1工程について説明する。
【0030】
本発明では、基板1に用いるシリコン2のエッチング方法としては、シリコン2の結晶方位面のエッチング選択性を利用したアルカリ水溶液によるウェットエッチングを使用することができる。また、イオンスパッタや反応性ガスプラズマ等のドライエッチング法も使用することができる。反応性ガスプラズマによるドライエッチングの中でも、反応性イオンエッチング(RIE)が高アスペクト比の構造の形成に適している。RIEの中でも、SFガスによるエッチングとCガスによる側壁保護膜の堆積を交互に行うBoschプロセスRIEが、より高アスペクト比な構造の形成に適している。
【0031】
シリコン2をエッチングして、凹部3および凸部12を形成する。前記凸部12の頂上部4へ第1の絶縁層5を設ける方法としては、予めシリコン基板の表面に所望のピッチでパターニングされた絶縁層を形成する。前記パターニングされた絶縁層をマスクにしてシリコンをエッチングすることによって設けることができる。
【0032】
第1の絶縁層の材料としては、有機材料、無機材料または有機無機ハイブリッド材料を用いることができる。有機材料としてフォトレジストを用いれば半導体フォトリソグラフィにて容易に絶縁層のパターニングをすることができる。無機材料として、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を用いることができる。これらのパターニングはフォトレジストをコートし、半導体フォトリソグラフィとエッチングにて行うことができる。シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の形成はCVD(Chemical Vapor Deposition)、や真空スパッタや真空蒸着にて形成することができる。シリコン酸化膜はシリコン表面を熱酸化することによって形成することも可能である。
【0033】
また、シリコン2に凹部3および凸部12を形成した後に、前記凸部12の頂上部4へ第1の絶縁層5を形成しても良い。この場合においても真空スパッタや真空蒸着にて形成することができる。シリコン2の凸部12の少なくとも頂上部4に第1の絶縁層5を形成する方法はこれらに限定されない。
【0034】
本発明では、第1の絶縁層5がSiOであることが好ましい。SiOは電気めっきに使用する絶縁層として十分に機能する。また、前述のようにシリコン表面を熱酸化しパターニングすることによって形成することも可能である。本発明では、シリコン2の凸部12の頂上部4へ第1の絶縁層5が設けられた基板1を使用する。頂上部4へ第1の絶縁層5が存在することにより、電気めっきの際に電界が集中しやすくめっきが発生しやすい頂上部4を強固に絶縁しめっきの発生を抑制する。第1の絶縁層5が存在しない場合には、頂上部4にめっきが析出して凹部3上をめっき層9によって塞がれてしまい、凹部3内のめっき層9内にボイドが生じる。めっき層9をX線の吸収材料として使用する場合にはボイドは吸収ロスの要因になる。SiOを第1の絶縁層5として使用する場の膜厚としては5nm以上であることが好ましい。
【0035】
(第2工程)
次に、図1(b)に示す様に、前記凹部3の少なくとも側壁6及び底部7に、下記の化学式(1)および化学式(2)
【0036】
【化4】

【0037】
(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層8を形成する第2工程について説明する。
【0038】
本発明では、シリコン2の凹部3の少なくとも側壁6及び底部7に,オルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層8を形成する。シリコン2の凹部3の側壁6及び底7部に形成される第2の絶縁層8は、後述の電気めっきの際に、側壁6からめっき層9が析出することを抑制する絶縁層として機能する。側壁6からめっき層9が析出すると、底部7よりも頂上部4側の側壁6からのめっき成長が活発となりボイド(空隙)が発生する。
【0039】
本発明におけるオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層は、前記化学式(1)および化学式(2)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する層を表す。化学式(1)の基の場合には、下記構造式(1)に示すジアルキル構造のオルガノポリシロキサン(以降、ジアルキルポリシロキサンと記す。)が、シリコンの凹部3の側壁6及び底部7のシリコン上に繰り返し構造にて形成された層のことをいう。化学式(2)の基の場合には、下記構造式(2)に示すモノアルキル構造のオルガノポリシロキサン(以降、モノアルキルポリシロキサンと記す。)が、シリコンの凹部3の側壁6及び底部7のシリコン上に繰り返し構造にて形成された層のことをいう。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
、R、Rは、互いに同じかまたは異なる直鎖または分岐のアルキル基を表す。アルキル基は、炭素原子数が12以下、好ましくは1以上3以下のアルキル基が望ましい。
【0043】
本発明では、ジアルキルポリシロキサンまたはモノアルキルポリシロキサンからなる第2の絶縁層の形成は、気相にて行うことが好ましい。高アスペクト比なシリコン2の凹部3の場合、液相にて第2の絶縁層8を形成すると隣接する凹部3の側壁間でスティキングが発生し、ピッチズレを誘発する。本発明では、このようにウェットプロセスを経ずしてシリコン2の凹部3の側壁6及び底7部に第2の絶縁層8を形成することができる。
【0044】
本発明の高アスペクト比とは凹部3のシリコン2の高さhと横幅wの比(h/w)が5以上、好ましくは12以上60以下のことをいう。
【0045】
本発明において、ジアルキルポリシロキサンまたはモノアルキルポリシロキサンからなる第2の絶縁層の形成が、オルガノポリシロキサンの前駆体を気化させ、気相にて加水分解と重縮合によって形成されることが好ましい。具体的には、オルガノポリシロキサンの前駆体を気化させ、気相にてシリコン2の凹部3の表面で加水分解と重縮合によって形成させることが好ましい。シリコン2の凹部3の側壁6及び底部7には自然酸化膜が存在し、オルガノポリシロキサンの前駆体が気化したものがシリコン2の凹部3に侵入し、自然酸化膜表面のシラノール基(Si−OH)と加水分解し結合する。さらに、自然酸化膜表面のシラノール基と結合したオルガノポリシロキサンと、オルガノポリシロキサンの前駆体が気化したものと重縮合し、構造式(1)および構造式(2)に示す構造が繰り返された層を形成する。
【0046】
本発明では、RSi−(Rはアルキル基を示す。)で表されるトリアルキルシリル基の層は電気めっきを行う際の電気的な絶縁層としては不十分なため好ましくは用いない。トリアルキルシリル基はシラノール基をひとつしか有することができないため自然酸化膜のシラノール基と結合を形成するとそれ以上の結合が行われず終端する。したがってトリアルキルシリル基の層は自然酸化膜上に不完全な単層しか形成されないため絶縁性が不十分となる。
【0047】
一方、ジアルキルまたはモノアルキルシリルは2つ以上のシラノール基を形成することが可能なため、前述のように、構造式(1)および構造式(2)に示す構造が繰り返された層を形成することが可能になり絶縁性を保つことが可能になる。
【0048】
本発明では、オルガノポリシロキサンの前駆体としてシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤を用いれば容易に気相にて、ジアルキルポリシロキサンまたはモノアルキルポリシロキサンからなる第2の絶縁層8を形成することができる。
【0049】
本発明において、ジアルキルポリシロキサンを形成するのに使用できるシランカップリング剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジブロモシランを用いることができる。
【0050】
また、モノアルキルポリシロキサンを形成するのに使用できるシランカップリング剤としては、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリクロロメチルシラン、トリブロモメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリクロロエチルシラン、トリブロモエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリブロモプロピルシラン、トリメトキシブチルシラン、トリエトキシブチルシラン、トリクロロブチルシラン、トリブロモブチルシラン、デシルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシランを用いることができる。
【0051】
(第3工程)
次に、図1(c)に示す様に、前記第2の絶縁層8を形成した前記凹部3の底部7に金属を有するシード層10を形成する第3工程について説明する。
【0052】
本発明では、シリコン2の凹部3の底部7に金属からなるシード層10を形成する。凹部3の底部7には第2の絶縁層8が形成されている。そのためにシード層10は第2の絶縁層8上に形成される。
【0053】
シード層10の形成の方法としては指向性を有する形成方法を用いる。本発明の指向性を有する形成方法とは、凹部3の底面に対して垂直な方向にてシード層10を形成する方法である。指向性を有するシード層10の形成方法として電子ビーム蒸着や抵抗加熱蒸着を用いることができる。
【0054】
(第4工程)
次に、図1(d)に示す様に、前記シード層10を形成した前記凹部3に電気めっきにより金属を充填してめっき層9を形成する第4工程について説明する。
【0055】
本発明では、シリコン2の凹部3に金属を電気めっきにより充填する。電気めっきを行うための通電は凹部3の底部7上のシード層10から行う。この際、頂上部4の第1の絶縁層5上にも金属からシード層10が成膜されるが、底部7上のシード層10とは電気的に絶縁されているため頂上部4からはめっき層9は析出しない。
【0056】
本発明では、側壁6にはジアルキルポリシロキサンまたはモノアルキルポリシロキサンからなる第2の絶縁層8が形成され、、頂上部4にも第1の絶縁層5が形成されている。そのために、めっき層9は選択的に底部7のシード層10上から成長していくため、ボイドの発生は回避できる。これにより、高アスペクト比な微細構造体11を形成することができる。
【0057】
本発明では、めっきにて形成される金属が金もしくは金の合金が好ましい。凹部3に金もしくは金の合金を充填することにより狭ピッチで高アスペクト比な放射光の吸収格子を作製することができる。高アスペクト比な金の微細構造体はX線の吸収が大きいため、X線透過領域が小さく、空間的可干渉性が向上されたイメージングを可能にする放射線用吸収格子になる。
【0058】
以下に本発明の微細構造体の製造方法の特徴を説明する。
【0059】
本発明の微細構造体の製造方法によれば、シリコンの側壁からのめっきの析出を抑制することができる。このため高アスペクト比なめっきモールドを形成することが可能になるため、ピッチズレが抑制された狭ピッチで高アスペクト比な微細構造体を製造できる。
【0060】
第2の絶縁層は、前記オルガノポリシロキサンの前駆体を気化させ、気相にて加水分解と重縮合によって形成されるので、隣接するシリコンの格子同士のスティッキングを回避し、シリコンの側壁に絶縁層を形成することができる。
【0061】
オルガノポリシロキサンの前駆体にシランカップリング剤を用いるので、特別な装置を使うことなくシリコンの側壁に絶縁層を形成することができる。
【0062】
第1の絶縁層がSiOであるので、シリコン頂上部からのめっきの析出が回避できるためボイドの発生を抑制することができる。
【0063】
めっきにて形成される金属が金もしくは金の合金であるので、X線の高吸収材料からなる高アスペクト比な微細構造体が製造できる。
【0064】
本発明に係る微細構造体は、上記の製造方法により得られた微細構造体である。具体的には、凹部および凸部が形成されているシリコン基板と、前記凸部の少なくとも頂上部に設けられている第1の絶縁層を有する。また、前記凹部の少なくとも側壁及び底部に形成されており、前記化学式(1)および化学式(2)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層を有する。さらに、前記第2の絶縁層に形成されている前記凹部に充填されている金属を有する層を有する。
【0065】
本発明に係る撮像装置は、被検体を撮像する撮像装置である。X線源からのX線を回折する回折格子と、前記回折格子によって回折された前記X線の一部を吸収する吸収格子と、前記吸収格子を経たX線を検出する検出器とを備えている。前記吸収格子は上記の微細構造体を有することを特徴とする。
【実施例】
【0066】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0067】
(実施例1)
図2は、本発明の実施例1の微細構造体の製造方法を示す工程図である。本実施例は図2を用いて説明する。本実施例では両面ミラーの直径が100mm(4インチ)で厚さ525μmのシリコンウエハを用いる(図2(a))。第1の絶縁層5としてSiOを用い、1050℃で4時間のウェット熱酸化によって、シリコンウエハの表裏にそれぞれ1.0μm程度のSiO層を形成した(図2(b))。
【0068】
次にSiOの上に200nm厚のCr膜を電子ビーム蒸着法で成膜した。その上にポジ型レジストを塗布し、半導体フォトリソグラフィにて2μmφのパターンが4μmのピッチで2次元状に配置されたレジストパターンを形成した。その後、露出したCrをCrエッチング水溶液にてエッチングし、SiO層を露出させた。露出したSiO層をCHFプラズマによるドライエッチング法でSiOをエッチングし、シリコンを露出させた。レジストをジメチルホルムアミドで除去し、Crを前記エッチング液にて除去した(図2(c))。
【0069】
次にSiOをマスクにしてSFガスによるエッチングとCガスによる側壁保護膜の堆積を交互に行うBoschプロセスでRIEを行った。このRIEによって深さ65μmの凹部3および凸部12が形成された(図2(d))。これにより高さ約65μmで2μmφのシリコンの格子が4μmピッチで配置されたシリコンの構造体が得られた。本実施例ではこの基板を、シリコン2をエッチングすることによって形成された凸部12の頂上部4に第1の絶縁層5が設けられた基板1として用いた。
【0070】
次にトリメトキシメチルシランの入ったシャーレと純水の入ったシャーレと基板1を、100℃のホットプレート上に置き、これらを覆うようにシャーレの蓋を被せた。これによりトリメトキシメチルシランは気化し、シリコンの凹部内に侵入しモノメチルポリシロキサンからなる第2の絶縁8を形成する。ここで基板もホットプレート上で加熱されているため、気化したトリメトキシメチルシランは基板1上で結露することはなかった。4時間後、基板1を取り出し150℃のホットプレート上で30分間加熱した(図2(e))。
【0071】
次に電子ビーム蒸着装置にてシード層10のクロム、金の順番でそれぞれ約7.5nm、約50nm成膜した。これによりシリコン2の凹部3の底部7に第2の絶縁8を介してシード層10が形成された(図2(f))。
【0072】
本実施例では、凹部3に充填する金属として金を用いた。金めっき液としてミクロファブAu1101(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)を用いた。シード層10から通電し、めっき液温度60℃、電流密度0.1A/dmにて10時間のめっきを行い、厚さ50μmの金のめっき層9が形成された。基板1を金めっき液から取りだし純水にて洗浄し、窒素ブローにて乾燥させた。これにより幅2μm高さ50μmの高アスペクト比なメッシュ状の金の微細構造体11が得られた(図2(g))。
【0073】
このメッシュ状の金の微細構造体11を格子の頂上部4からX線顕微鏡にて観察するとシリコンの部分はX線が透過し、金のめっき層9部分はX線を吸収しコントラストが大きかった。
【0074】
(比較例1)
本比較例では、シリコンの凸部の頂上部に第1の絶縁層が設けられていないこと以外は実施例1と同様な高さ約65μmで2μmφのシリコンの格子が4μmピッチで配置されたシリコンの構造体を基板として用いた。実施例1と同様にモノメチルポリシロキサンからなる第2の絶縁を形成した。電子ビーム蒸着装置にてシード層のクロム、金の順番でそれぞれ約7.5nm、約50nm成膜した。これによりシリコンの凹部の底部に第2の絶縁を介してシード層が形成された。
【0075】
金めっき液としてミクロファブAu1101(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)を用いた。シード層から通電し、めっき液温度60℃、電流密度0.1A/dmにてめっきを行った。約2時間後に凸部の頂上部にめっき層が析出していることが確認された。その4時間後めっきを中止し断面を確認したところ凸部の頂上部から析出しためっきが凹部の上部を塞ぎボイドが確認された。
【0076】
(比較例2)
本比較例では、凹部の側壁及び底部にモノメチルポリシロキサンからなる第2の絶縁層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に金のめっきを行った。めっき開始から4時間後に停止し、断面を確認したところ、凹部の側壁からめっきが析出しておりボイドが確認された。
【0077】
(実施例2)
図3は、本発明の実施例2の微細構造体の製造方法を示す工程図である。本実施例は図3を用いて説明する。本実施例では両面ミラーの両面ミラーの直径が100mm(4インチ)で厚さ525μmのシリコンのウエハを用いる。シリコンウエハ上に200nm厚のCr膜を電子ビーム蒸着法で成膜する。その上にポジ型レジストを塗布し、半導体フォトリソグラフィにて2μmφのパターンが4μmのピッチで2次元状に配置されたレジストパターンを形成する。その後、露出したCrをCrエッチング水溶液にてエッチングし、シリコン表面を露出させる。
【0078】
次にCr膜をマスクにしてSFガスによるエッチングと、Cガスによる側壁保護膜の堆積を交互に行うBoschプロセスでRIEを行う。このRIEによって深さ65μmの凹部3と凸部12が形成される。酸素プラズマアッシングにてレジストとCrを除去する。これにより高さ約65μmで2μmφのシリコンの格子が4μmピッチで配置されたシリコンの構造体が得られる(図3(a))。
【0079】
次に、凸部12の頂上部4に第1の絶縁層5としてSiOを真空スパッタにて100nm成膜する。本実施例では、この基板1をシリコン2をエッチングすることによって形成された凸部12の頂上部4に第1の絶縁層5が設けられた基板1として用いる(図3(b))。
【0080】
次にジメトキシジメチルシランの入ったシャーレと純水の入ったシャーレと基板1を90℃のホットプレート上に置き、これらを覆うようにシャーレの蓋を被せる。これによりジメトキシジメチルシランは気化し、シリコン2の凹部3内に侵入し、ジメチルポリシロキサンからなる第2の絶縁8を形成する。ここで基板もホットプレート上で加熱されているため、気化したジメトキシジメチルシランは基板1上で結露しない。4時間後、基板1を取り出し150℃のホットプレート上で30分間加熱する(図3(c))。
【0081】
次に電子ビーム蒸着装置にてシード層10のクロム、金の順番でそれぞれ約7.5nm、約50nm成膜する。これによりシリコンの凹部の底部に第2の絶縁8を介してシード層10が形成される(図3(d))。
【0082】
本実施例では、凹部3に充填する金属として金を用いる。金めっき液としてミクロファブAu1101(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)を用いる。シード層10から通電し、めっき液温度60℃、電流密度0.1A/dmにて10時間のめっきを行うと厚さ50μmの金のめっき層9が形成される。基板1を金めっき液から取りだし純水にて洗浄し、窒素ブローにて乾燥させる。これにより幅2μm高さ50μmの高アスペクト比なメッシュ状の金の微細構造体11が得られる(図3(e))。
【0083】
このメッシュ状の金の微細構造体11を格子の頂上部4からX線顕微鏡にて観察するとシリコンの部分はX線が透過し、金のめっき層部分はX線を吸収しコントラストが大きくなる。
【0084】
(実施例3)
図1に示す製造方法で行った。本実施例では両面ミラーの直径が100mm(4インチ)で厚さ525μmのシリコンウエハを用いる。第1の絶縁層5としてフォトレジストを用い、シリコンウエハ上に半導体フォトリソグラフィにて2μmφのパターンが4μmのピッチで2次元状に配置された高さ7μmのレジストパターンを形成する。
【0085】
次にフォトレジストをマスクにしてSFガスによるエッチングとCガスによる側壁保護膜堆積を交互に行うBoschプロセスでRIEを行う。このRIEによって深さ65μmの凹部3および凸部12が形成される。これにより高さ約65μmで2μmφのシリコンの格子が4μmピッチで配置されたシリコンの構造体が得られる。凸部12の頂上部4にはフォトレジストが残り本実施例ではフォトレジストを第1の絶縁層5として用いる。本実施例ではこの基板をシリコン2をエッチングすることによって形成された凸部12の頂上部4に第1の絶縁層5が設けられた基板1として用いる。
【0086】
次にジメトキシジメチルシランの入ったシャーレと純水の入ったシャーレと基板1を90℃のホットプレート上に置き、これらを覆うようにシャーレの蓋を被せる。これによりジメトキシジメチルシランは気化し、シリコン2の凹部3内に侵入し、ジメチルポリシロキサンからなる第2の絶縁8を形成する。ここで基板もホットプレート上で加熱されているため、気化したジメトキシジメチルシランは基板1上で結露しない。4時間後、基板1を取り出し150℃のホットプレート上で30分間加熱する。
【0087】
次に電子ビーム蒸着装置にてシード層10のクロム、金の順番でそれぞれ約7.5nm、約50nm成膜する。これによりシリコンの凹部の底部に第2の絶縁8を介してシード層10が形成される。
【0088】
本実施例では、凹部3に充填する金属として金を用いる。金めっき液としてミクロファブAu1101(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)を用いる。シード層10から通電し、めっき液温度60℃、電流密度0.1A/dmにて10時間のめっきを行うと厚さ50μmの金のめっき層9が形成される。基板1を金めっき液から取りだし純水にて洗浄し、窒素ブローにて乾燥させる。これにより幅2μm高さ50μmの高アスペクト比なメッシュ状の金の微細構造体11が得られる。
【0089】
このメッシュ状の金の微細構造体11を格子の頂上部4からX線顕微鏡にて観察するとシリコンの部分はX線が透過し、金のめっき層部分はX線を吸収しコントラストが大きくなる。
【0090】
(実施例4)
次に、X線タルボ干渉法を用いた撮像装置について図4を用いて説明する。図4は、前述の実施形態または実施例で製造した微細構造体をX線吸収格子として用いた撮像装置の構成図である。
【0091】
本実施形態の撮像装置は、空間的に可干渉なX線を放出するX線源100、X線の位相を周期的に変調するための回折格子200、X線の吸収部(遮蔽部)と透過部が配列された吸収格子300、X線を検出する検出器400を備えている。吸収格子300は、前述の実施形態または実施例で製造した微細構造体である。
【0092】
X線源100と回折格子200の間に被検体500を配置すると、被検体500によるX線の位相シフト情報がモアレとして検出器に検出される。つまりこの撮像装置は被検体500の位相情報を持つモアレを撮像することで被検体500を撮像している。この検出結果に基づいてフーリエ変換等の位相回復処理を行うと、被検体の位相像を得ることができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の微細構造体の製造方法は、高アスペクト比な金属の微細構造体を高精度で容易に得ることができるので、X線吸収格子や、X線ビームスプリッターや、フォトニック結晶や、メタマテリアルや、透過電子顕微鏡用金属メッシュなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 基板
2 シリコン
3 凹部
4 頂上部
5 第1の絶縁層
6 側壁
7 底部
8 第2の絶縁層
9 めっき層
10 シード層
11 微細構造体
12 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造体の製造方法であって、シリコンをエッチングして形成された凹部および凸部のうち前記凸部の少なくとも頂上部に第1の絶縁層が設けられた基板を用意する工程と、前記凹部の少なくとも側壁及び底部に、下記の化学式(1)および化学式(2)
【化1】


(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層を形成する工程と、前記第2の絶縁層を形成した前記凹部の底部に金属を有するシード層を形成する工程と、前記シード層を形成した前記凹部に電気めっきにより金属を充填してめっき層を形成する工程と、を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の絶縁層は、前記オルガノポリシロキサンの前駆体を気化させ、気相にて加水分解と重縮合によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンの前駆体がシランカップリング剤であることを特徴とする請求項2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の絶縁層がSiOであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
前記金属が金もしくは金の合金であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記凹部のアスペクト比(高さh/横幅w)が5以上である請求項1乃至5のいずれかの項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項7】
凹部および凸部が形成されているシリコン基板と、前記凸部の少なくとも頂上部に設けられている第1の絶縁層と、前記凹部の少なくとも側壁及び底部に形成されており、下記の化学式(1)および化学式(2)
【化2】


(R、R、Rは、互いに同じかまたは異なるアルキル基を表す。)で表される基の少なくとも1つを含むオルガノポリシロキサンを有する第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層に形成されている前記凹部に充填されている金属を有する層と、を備えていることを特徴とする微細構造体。
【請求項8】
被検体を撮像する撮像装置であって、X線源からのX線を回折する回折格子と、前記回折格子によって回折された前記X線の一部を吸収する吸収格子と、前記吸収格子を経たX線を検出する検出器とを備え、前記吸収格子は請求項7に記載の微細構造体を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168397(P2012−168397A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30010(P2011−30010)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】