説明

微細構造転写用スタンパ及びこれを搭載した微細構造転写装置

【課題】複数の領域のそれぞれに微細構造体を高い精度で低コストかつ高スループットにて形成することができる微細構造転写用スタンパ及びこれを搭載した微細構造転写装置を提供する。
【解決手段】表面に微細構造が形成された微細構造形成層を有するスタンパ2を、被転写基板6上に形成した樹脂薄膜に押し付けた状態でこの樹脂薄膜を硬化させ、前記被転写基板6上に微細構造体を形成する微細構造転写装置1において、支持部材23a上に複数の前記スタンパ2を有するマルチヘッド23を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体に押し付けてその表面に微細構造体を形成するための微細構造転写用スタンパ及びこれを搭載した微細構造転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス等で必要とされる微細構造体を加工する技術として、フォトリソグラフィが多く用いられてきた。しかし、構造体の微細化が進み、要求される加工寸法が露光に用いられる光の波長程度まで小さくなるとフォトリソグラフィでの対応が困難となってきた。そのため、これに代わり、荷電粒子線装置の一種である電子線描画装置が用いられるようになった。
【0003】
この電子線を用いた微細構造体の形成には、i線、エキシマレーザ等の光源を用いた一括露光方法と異なり、マスクパターンを直接描画する方法を採る。よって、描画する微細構造体が多いほど露光(描画)時間が増加し、微細構造体の完成までに時間が掛かるという欠点がある。そのため、半導体集積回路の集積度が高まるにつれて、微細構造体の形成に必要な時間が増大して、スループットが低下することが懸念される。
そこで、電子線描画装置の高速化を図るために各種形状のマスクを組み合わせて、それらに一括して電子ビームを照射することによって、複雑な形状のパターンを形成する一括図形照射法の開発が進められている。しかしながら、構造体の微細化が進む一方で、電子線描画装置の大型化や、高い精度でのマスク位置の制御の必要性等によって装置のコストが非常に高くなるという欠点があった。
【0004】
これに対し、微細構造体の形成を高精度及び低コストで行う技術として、ナノインプリント技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このナノインプリント技術は、形成しようとする微細構造体の凹凸に対応する凹凸(表面形状)を有する、例えば石英、樹脂等からなるスタンパを、所定の基板上に形成された樹脂層に型押しするものである。このようなナノインプリント技術によれば、微細構造体を低コストかつ高スループットで製造することができる。そのため、ナノインプリント技術は、発光ダイオード(LED)の高輝度化を可能にする微細構造体や、大容量記録媒体(ハードディスクドライブ等)における記録ビットとしての微細構造体、燃料電池・太陽電池の高効率化を可能にする微細構造体等への応用が検討されている。
【0005】
ちなみに、特許文献1には、光硬化性樹脂層を形成した基板に対してモールド(スタンパ)を位置決めするアライメント工程と、基板の光硬化性樹脂層に対してモールドを型押しするプレス工程と、モールドを押し付けた状態で光硬化性樹脂層に紫外線を照射して光硬化性樹脂層を硬化するUV照射工程と、硬化した光硬化性樹脂層からモールドを剥離する離型工程と、を実施してモールドの微細構造を基板上の光硬化性樹脂層に転写する微細構造転写装置(インプリント装置ともいう)が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、アライメント工程で基板に対してテンプレート(スタンパ)を駆動するアクチュエータを備える微細構造転写装置が開示されている。ちなみに、特許文献2では、テンプレート(スタンパ)の微細構造が転写された基板上の光硬化性樹脂層(レジスト層)をマスクとして基板にエッチングを施すことで、基板に微細構造を形成するナノインプリントリソグラフィに係る技術が開示されている。このようなナノインプリントリソグラフィによれば、ナノインプリント技術を半導体デバイスの製造に応用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−265187号公報
【特許文献2】特開2010−114473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、半導体デバイスの製造工程においては、ウエハ(基板)上に、チップのサイズに対応するサイズで区画した複数の領域に微細構造を形成する必要がある。その一方で、従来の微細構造転写装置(例えば、特許文献1及び2参照)を使用して所定の精度で半導体デバイスを製造しようとすると、複数の領域ごとに個別に前記したアライメント工程、プレス工程、UV照射工程及び離型工程を行う必要がある。そのため、従来の微細構造転写装置を使用して半導体デバイスを製造しようとすると、従来の光リソグラフィ技術によって半導体デバイスを製造するときよりもスループットが低下することとなる。
したがって、このようなナノインプリント技術においては、例えば半導体デバイスの製造工程のように、複数の領域のそれぞれに、微細構造体を高い精度で低コストかつ高スループットにて形成することができる微細構造転写装置が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明の課題は、複数の領域のそれぞれに微細構造体を高い精度で低コストかつ高スループットにて形成することができる微細構造転写用スタンパ及びこれを搭載した微細構造転写装置を提供することにある。なお、本発明における微細構造体とはナノメートルからマイクロメートルのサイズの構造体を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する本発明は、表面に微細構造が形成された微細構造形成層を有するスタンパを、被転写基板上に形成した樹脂薄膜に押し付けた状態でこの樹脂薄膜を硬化させ、前記被転写基板上に微細構造体を形成する微細構造転写装置において、支持部材上に複数の前記スタンパを有するマルチヘッドを備えることを特徴とする微細構造転写装置である。
【0011】
また、前記課題を解決する本発明は、表面に微細構造が形成された微細構造形成層を有し、被転写基板上に形成した樹脂薄膜に押し付けた状態でこの樹脂薄膜を硬化させてこの被転写基板に前記微細構造を転写するスタンパを、支持部材上に複数有するマルチヘッドであることを特徴とする微細構造転写用スタンパである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の領域のそれぞれに微細構造体を高い精度で低コストかつ高スループットにて形成することができる微細構造転写用スタンパ及びこれを搭載した微細構造転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る微細構造転写装置の構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る微細構造転写用スタンパ(マルチヘッド)を模式的に示す構成説明図であり、(a)は、微細構造転写用スタンパの側面図、(b)は、微細構造転写用スタンパを微細構造体部側から見た平面図である。
【図3】図2のマルチヘッドを構成するスタンパを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のIIIb−IIIb断面図、(c)は、(a)のスタンパを微細構造体部側から見た平面図である。
【図4】図3のスタンパの模式的断面図であり、図3(b)のIV−IV断面図である。
【図5】スタンパの転写制御部を構成する位置制御機構の断面図であり、(a)は、図4のVa−Va断面を模式的に示す図、(b)は、図4のVb−Vb断面を模式的に示す図、(c)は、図4のVc−Vc断面を模式的に示す図である。
【図6】スタンパの転写制御部を構成する角度補正機構の断面図であり、図4のVIa−VIa断面を模式的に示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る微細構造転写用スタンパとしてのマルチヘッドを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、マルチヘッドの側面図、(b)は、マルチヘッドを微細構造体部側から見た平面図である。
【図8】図7のマルチヘッドを構成するスタンパを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のVIIIb−VIIIb断面図である。
【図9】図7のマルチヘッドを使用して被転写基板上に微細構造体を形成する際の工程説明図である。
【図10】図3のスタンパの変形例を示す図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のXb−Xb断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る微細構造転写用スタンパとしてのマルチヘッドを模式的に示す構成説明図であり、マルチヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る微細構造転写用スタンパは、被転写基板に微細構造を転写するスタンパを、支持部材上に複数有するマルチヘッドであることを主な特徴とし、本実施形態に係る微細構造転写装置は、この微細構造転写用スタンパ(マルチヘッド)を搭載したことを主な特徴とする。以下では、微細構造転写装置及び微細構造転写用スタンパをこの順番で説明する。
【0015】
<微細構造転写装置>
図1に示すように、本実施形態に係る微細構造転写装置1は、被転写基板6上に後記する樹脂薄膜7(図9(a)参照)を形成するための樹脂塗布機構10と、樹脂薄膜7を形成した被転写基板6を樹脂塗布機構10から微細構造転写機構20に向けて搬送する被転写基板搬送機構14と、マルチヘッド23(スタンパ2)の微細構造Sを樹脂薄膜7に転写する微細構造転写機構20と、を備えている。
なお、微細構造Sとしては、ナノメートルからマイクロメートルのサイズの微細パターンからなるもので、微細パターンは、用途に応じて前記した微細サイズのピラーが規則的に配列したものや、これとは逆に微細サイズのピットが配列されたもの、微細サイズのレール状突起が配列されたもの(ラインアンドスペース)等の様々なものが挙げられる。
【0016】
本実施形態での樹脂塗布機構10は、図1に示すように、スピンドルモータ11と、被転写基板6を支持すると共に被転写基板6にスピンドルモータ11の回転力を伝達するスピンドルチャック12と、高速回転する被転写基板6の表面に光硬化性樹脂を供給する樹脂供給ノズル13と、を備えるスピンコート装置で構成されている。このようなスピンコート装置は、被転写基板6の略全面にわたって、樹脂薄膜7(図9(a)参照)を均一に形成することができるので好ましい。また、スピンコート装置は、光硬化性樹脂を樹脂供給ノズル13から供給する際のタイミングや、被転写基板6に対する光硬化性樹脂の供給位置、光硬化性樹脂の供給量の制御が容易である点でも好ましい。特に、被転写基板6の回転速度(スピン回転速度)、スピン保持時間、及び予め設定したスピン回転速度に至るまでの時間が制御可能なスピンコート装置は、より好ましい。このようなスピンコート装置によれば、樹脂薄膜7の厚さを精度よく制御することができる。
なお、本発明における樹脂塗布機構10は、このスピンコート装置に限定されるものではなく、例えば、ディスペンス法、インクジェット法、スプレー法等のスピンコート法以外の塗工法を採用する装置も使用することができる。
【0017】
本実施形態での被転写基板搬送機構14は、図1に示すように、水平方向に延設される水平ハンドリングアーム14aと、垂直方向(鉛直方向)に延設されると共に水平ハンドリングアーム14aの一端を支持する垂直ハンドリングアーム14bと、垂直ハンドリングアーム14bを垂直方向(鉛直方向)に移動すると共に垂直ハンドリングアーム14bの軸線を中心に垂直ハンドリングアーム14bを回転させる駆動部14cと、被転写基板6を把持可能となっている共に水平ハンドリングアーム14aの延設方向に沿って移動可能なチャックヘッド14dと、このチャックヘッド14dが把持した被転写基板6を受け取って、微細構造転写機構20に移送する移送ステージ31と、を備えて構成されている。
【0018】
この被転写基板搬送機構14は、樹脂塗布機構10によって樹脂薄膜7(図9(a)参照)が塗布された被転写基板6を、チャックヘッド14d、水平ハンドリングアーム14a及び垂直ハンドリングアーム14b並びに駆動部14cが連動することで移送ステージ31に受け渡すようになっている。そして、移送ステージ31は、この被転写基板6をマルチヘッド23の下方に移送して水平に支持するようになっている。なお、移送ステージ31は、後記するように、被転写基板6に対するマルチヘッド23のアライメント工程、及び離型工程で、マルチヘッド23に対して被転写基板6を接近及び離反させる昇降機構(図示省略)を更に有する構成とすることもできる。また、移送ステージ31は、被転写基板6の板面を水平に維持しつつ、その板面を水平面内で回転することで被転写基板6を所定の回転角度に位置決めする回転角度調節機構(図示省略)を更に有する構成とすることもできる。
本発明における被転写基板搬送機構14は、このような構成に限定されずに、樹脂薄膜7(図9(a)参照)が塗布された被転写基板6を、微細構造転写機構20に向けて搬送可能であればどのような構成であってもよく、その搬送経路は問わない。
また、被転写基板搬送機構14としては、光硬化性樹脂を塗布した樹脂塗布機構10が被転写基板6をそのまま微細構造転写機構20に向けて移動するものを含めることができる。
【0019】
本実施形態での微細構造転写機構20は、支持部材23aに複数のスタンパ2を有するマルチヘッド23と、支持部材23aの位置を制御する支持部材駆動機構23bと、を備えている。
【0020】
支持部材駆動機構23bは、被転写基板搬送機構14によって搬送された樹脂薄膜7付き被転写基板6に対して、微細構造転写機構20のマルチヘッド23を誘導及び接近させる機構である。
本実施形態での支持部材駆動機構23bは、予め配置された所定のレールに沿って移動可能な直動モータ機構でマルチヘッド23の支持部材23aをX−Y−Z方向(三次元方向)に移動させる構成となっている。
【0021】
なお、本発明における他の支持部材駆動機構23bとしては、被転写基板6に対してマルチヘッド23を誘導及び接近させる機構であれば特に制限は無く、ピエゾ素子や回転モータ等の駆動要素と他の機械的要素とを適宜に組み合わせて構成することもできる。
【0022】
また、支持部材駆動機構23bは、支持部材23aを前記したX−Y−Z方向(三次元方向)に移動させると共に、更にX−Y面(水平面)内で支持部材23aの回転角度(θ)を調節可能な構成とすることもできる。
なお、支持部材駆動機構23bによって支持部材23aを移動させる距離の範囲は、後記するスタンパ2を構成する粗調位置制御機構25(図4参照)や微調位置制御機構27(図4参照)がスタンパ2の微細構造体部24a(図4参照)を移動させる距離の範囲と異なって、ナノメートル乃至マイクロメートルの極微小な範囲で設定される必要はなく、センチメートル以上のオーダで設定することができる。
【0023】
<マルチヘッド>
次に、マルチヘッド23について説明する。
マルチヘッド23は、複数の小スタンパが集合したスタンパヘッドであって、図1に示すように、この小スタンパに相当するスタンパ2が支持部材23aの板面に沿って複数並設されたものである。次に参照する図2は、本発明の実施形態に係る微細構造転写用スタンパ(マルチヘッド)を模式的に示す構成説明図であり、(a)は、微細構造転写用スタンパの側面図、(b)は、微細構造転写用スタンパを微細構造体部側から見た平面図である。なお、図2(a)に示す微細構造体部24aに形成される微細構造S(微細パターン)は、作図の便宜上、模式的に示すものであり、その形状及びサイズは、現実の形状及びサイズと相違している。また、図2(b)に示す微細構造体部24aにおいては微細構造S(微細パターン)の記載を省略している。
【0024】
図2(a)及び(b)に示すように、支持部材23aは、平面視で正方形の板体で形成されている。なお、本発明での支持部材23aの平面形状としては、複数のスタンパ2を配置できれば特に制限されるものではなく、例えば、正方形以外の多角形、円形、楕円形等のものを選択することができる。
【0025】
このような支持部材23aの平面形状は、後記する被転写基板6(図1参照)の平面形状と異なるものが好ましく、これに加えて支持部材23aの平面サイズが、被転写基板6の平面サイズと異なるものが更に好ましい。このような支持部材23aによれば、後記する離型工程において、図9(d)に示すように、樹脂薄膜7からスタンパ2を引き剥がす際に、支持部材23aの縁部、又は被転写基板6の縁部に、必要に応じて使用されることがある引き剥がし用の剥離爪(図示省略)を掛け易くすることができる。
【0026】
このような支持部材23aの材質としては、次に説明するスタンパ2を後記するように支持することができるものであれば特に制限はなく、例えば、ガラス、石英、シリコンウェハ、金属板、樹脂板等が挙げられる。
【0027】
スタンパ2は、前記したように、このような支持部材23aの片面に複数並設される。具体的には、図2(b)に示すように、正方形の支持部材23aの四隅を除いて、縦横に等間隔に整列するように配置され、本実施形態では21個のスタンパ2が配置されている。つまり、縦横に隣接し合うスタンパ2同士の隙間d1及びd2の長さ(後記する微細構造体部24a同士の隙間d1及びd2の長さ)は、等しくなるように設定されている。なお、微細構造体部24a同士の隙間d1及びd2の長さは、このマルチヘッド23を使用して被転写基板6に転写される微細構造S(図2(a)参照)の種類に応じて適宜に設定することができ、この際、隙間d1及びd2同士は相互に異なっていてもよいし、複数の隙間d1同士が相互に異なっていても、また、複数の隙間d2同士が相互に異なっていてもよい。
【0028】
前記したマルチヘッドを構成する小スタンパである、図2(a)及び(b)に示すスタンパ2は、表面に微細構造Sが形成された微細構造形成層29cを有する微細構造体部24aと、この微細構造体部24aと支持部材23aとの間に介在してこれら同士を接続することで、微細構造体部24aを支持部材23aに支持させる転写制御部24bとを備えている。また、この転写制御部24bは、後に詳しく説明するように、樹脂薄膜7(図9(a)参照)に対する微細構造Sの転写状態を制御するように機能する。
【0029】
次に参照する図3は、図2のマルチヘッドを構成するスタンパを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のIIIb−IIIb断面図、(c)は、(a)のスタンパを微細構造体部側から見た平面図である。
【0030】
スタンパ2の微細構造体部24aは、図3(a)及び(b)に示すように、正方形の上下面を有し、その高さの比較的に低い直方体で構成されている。そして、図3(a)に示す微細構造体部24aの下面Uには、図示しないが、微細構造S(図2(a)参照)を有する微細構造形成層29c(図2(a)参照)が形成されている。なお、この下面Uは、特許請求の範囲にいう「微細構造形成層の表面」に相当する。
【0031】
そして、微細構造体部24aの下面Uの面積は、この下面Uと平行な、転写制御部24bの断面積(図3(b)のハッチング部)よりも大きくなるように設定されている。ちなみに、本発明においては、微細構造体部24aの下面Uの面積が転写制御部24bの断面積以上となっていればよい。
【0032】
また、微細構造体部24aの下面Uには、図3(c)に示すように、この下面Uの一辺の両端のそれぞれに、アライメントマークMが設けられている。このアライメントマークMは、後記するアライメント工程において(図9(b)参照)、被転写基板6(図9(b)参照)に対してスタンパ2を位置決めする際に使用される。
ちなみに、被転写基板6(図9(b)参照)に対するスタンパ2(図9(b)参照)の位置決め(アライメント)は、被転写基板6に設けられた図示しないアライメントマークに、図3(c)に示す微細構造体部24aのアライメントマークMを重ね合わせることで行われる。
【0033】
このような微細構造体部24aのアライメントマークMと被転写基板6のアライメントマーク(図示省略)とが重なって、被転写基板6に対して微細構造体部24aが位置合わせされたことの確認手法(位置決め手法)としては、後記する透明な微細構造形成層29cを見通してCCDカメラ等の撮像手段でアライメントマークMの重なりを撮像画像で確認するもの、反射型ファイバーセンサ等でアライメントマークMの重なりを、検知される反射光量の変化に基づいて確認するもの等が挙げられる。
なお、位置決め手法として反射型ファイバーセンサを使用する場合には、スタンパ2のサイズを考慮すると、径の細い反射型ファイバーセンサが好ましい。
また、アライメントマークMの形状としては、特に制限はなく、図3(c)に示す円形と十文字を重ね合わせたものの他、同心円状に複数の円形が重ね合わされたもの、格子状のもの等が挙げられる。
【0034】
スタンパ2の転写制御部24bは、図3(a)及び(b)に示すように、正方形の上下面を有し、その高さが微細構造体部24aの高さよりも高い直方体で構成されている。そして、この転写制御部24bの微細構造体部24aの下面Uと平行な断面積は、前記したように、下面Uの面積よりも小さくなっている。
なお、転写制御部24bと微細構造体部24aとは分離可能となっており、アプリケーションに応じて、異なる微細構造S(図2(a)参照)を有する他の微細構造体部24aと取り換えて用いることができるようになっている。
【0035】
また、転写制御部24bと微細構造体部24aとの接続は、ボルト等の締結具や所定の治具による機械的接続であってもよいし、転写制御部24bの内部に形成された吸引孔(図示省略)を介して微細構造体部24aを真空引きする吸引接続であってもよい。
転写制御部24bと支持部材23a(図2(a)参照)との接続手段は、転写制御部24b及び支持部材23aの材質に応じて適宜に選択することができ、ボルト等の締結具や所定の治具による機械的接続や、接着剤、融着剤等による固着であっても構わない。
【0036】
次に、微細構造体部24aと転写制御部24bとについて更に詳しく説明する。
参照する図4は、図3のスタンパの模式的断面図であり、図3(b)のIV−IV断面図である。
【0037】
(微細構造体部)
図4に示すように、微細構造体部24aは、支持基材29aに、緩衝層29bを介して前記した微細構造形成層29cを積層した多層構成となっている。そして、支持基材29a、緩衝層29b及び微細構造形成層29cからなる積層体の周囲(図3(a)に示す微細構造体部24aの四方の側面)を覆うように、遮光層29dが形成されている。
なお、この遮光層29dは、特許請求の範囲にいう「遮光機構」に相当する。
【0038】
≪支持基材≫
支持基材29aとしては、緩衝層29b及び微細構造形成層29cを支持する機能を有するものであれば、その材質、サイズ、形状、作製方法は特に限定されない。
本実施形態での支持基材29aの形状は、平面視で正方形の板体を想定しているが、その形状は、円形、長方形等の他の平面形状を有する板体であっても構わない。
【0039】
支持基材29aの材料としては、例えば、ガラス、石英、AlTiC、各種樹脂材料等のように強度と加工性を有し、光硬化性樹脂からなる本実施形態での樹脂薄膜7(図9(a)参照)を硬化させる光(一般的には波長365nmの紫外線であるが、その他の波長の光でもよい)を透過するものであれば特に制限はない。中でも石英やガラスは透明性が高いので好ましい。このような透明性が高い材料で支持基材29aを形成すると、緩衝層29bや微細構造形成層29cを光硬化性樹脂で形成する場合に、この光硬化性樹脂に光が効率的に照射されることとなる。
支持基材29aの弾性率は、所定の強度を維持するために10GPa以上であることが好ましい。特にスタンパ2の耐久性や転写精度の観点からは50GPa以上であることが更に好ましい。
【0040】
また、支持基材29aは、弾性率の異なる2種以上の層で構成することもできる。このような支持基材29aにおいては、弾性率の高い層と低い層との積層順や、各層の組み合わせ、及び層数等について特に制限はない。
このような2種以上の層を有する支持基材29aとしては、例えば、前記した材料を2種以上選択して各層を形成したものや、前記した材料からなる層と樹脂材料からなる層とを組み合わせたもの、樹脂材料からなる層同士を組み合わせたもの等が挙げられる。
【0041】
前記した樹脂材料の具体例としては、例えば、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PUR)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィンポリマ、ポリ乳酸、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらのいずれかを単独で用いても、異なる樹脂を複数混合して用いてもよい。また、無機フィラーや有機フィラー等の充填剤を含んでいてもよい。
【0042】
≪緩衝層≫
緩衝層29bの形成材料としては、前記した緩衝機能を発揮するものであれば特に制限はないが、具体的には、例えば、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PUR)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィンポリマ、ポリ乳酸、ジアリルフタレート樹脂等の柔軟な樹脂材料が挙げられる。
【0043】
緩衝層29bの形成方法としては、支持基材29aの表面に供給した前記形成材料に対して、光硬化処理、熱硬化処理、熱圧着処理等を施す方法が挙げられる。この際、支持基材29aの表面には、緩衝層29bとの接着力を高めるシランカップリング剤を施すことができる。
【0044】
このような緩衝層29bは、スタンパ2を被転写基板6(図9(a)参照)に形成した樹脂薄膜7(図9(a)参照)に押し当ててその微細構造S(図2(a)参照)を転写する際に、被転写基板6の反りや、うねり、被転写基板6上に付着した異物等に対して追従するように弾性変形する機能、つまり、緩衝機能を発揮する。その結果、緩衝層29bは、被転写基板6の反り等に起因する転写不良を最小限に抑制する。
【0045】
また、緩衝層29bは、次に説明する微細構造形成層29cが硬質材料で形成されている場合には、特に好適に使用される。なお、本実施形態での微細構造体部24aとしては、微細構造形成層29cの形成材料が硬質であるか、又は柔軟性を有するものであるかに関わらずに緩衝層29bを有するものを想定しているが、微細構造形成層29cの形成材料が柔軟性を有するものである場合には、緩衝層29bを省略することもできる。
【0046】
≪微細構造形成層≫
微細構造形成層29cの形成材料としては、その表面(図3(a)に示す下面U)に微細構造S(図2(a)参照)を形成することができると共に、樹脂薄膜7(図9(a)参照)を形成する光硬化性樹脂を硬化する光(一般的には波長365nmの紫外線であるがその他の波長の光でもよい)を透過できるものであれば特に制限されることはない。
【0047】
微細構造形成層29cの硬質の形成材料としては、例えば、ガラス、石英等が挙げられる。また、柔軟な(弾性を有する)形成材料としては、例えば、フェノール樹脂(PF)、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂(EP)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PUR)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド、シクロオレフィンポリマ、ポリ乳酸、ジアリルフタレート樹脂、ポリシルセスキオキサン等の樹脂材料が挙げられる。
【0048】
中でも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)やパーフルオロポリエーテル(PFPE)等からなる微細構造形成層29cは、後記する樹脂薄膜7(図9(a)参照)に対する離型性に富むので好ましい。また、ポリシルセスキオキサン(その誘導体を含む)からなる微細構造形成層29cは、耐久性に優れるので好ましい。
【0049】
また、前記した柔軟な樹脂材料からなる微細構造形成層29cは、被転写基板6(図9(a)参照)上の樹脂薄膜7(図9(a)参照)に微細構造S(図2(a)参照)を転写する際に、被転写基板6の反りや、うねり、被転写基板6上に付着した異物等に対して追従するように弾性変形する機能、つまり緩衝機能を発揮する。その結果、このような微細構造形成層29cによれば、この緩衝機能により転写不良を最小限に抑制することができる。また、この緩衝機能により、微細構造Sに重ねて新たな微細構造Sを形成する場合にも、元の微細構造Sの直近まで新たな微細構造Sを重ねて配置することが可能となるので、重ねる微細構造S同士の積層厚さを低減することができる。
【0050】
このような樹脂材料からなる微細構造形成層29cの形成方法としては、緩衝層29bの表面に供給した樹脂材料に対して、光硬化処理、熱硬化処理、熱圧着処理等を施す方法が挙げられる。この際、緩衝層29bの表面には、微細構造形成層29cとの接着力を高めるシランカップリング剤を施すことができる。
また、ガラス、石英等の硬質材料からなる微細構造形成層29cの形成方法としては、例えば、緩衝層29bの表面に接着剤層(図示省略)を介して微細構造形成層29cを接着する方法が挙げられる。
【0051】
微細構造S(図2(a)参照)は、微細構造形成層29cが石英等からなる場合には、電子線描画法や光リソグラフィ法で形成することができる。また、微細構造形成層29cがガラス、柔軟な樹脂材料で形成される場合には、熱ナノインプリント法、ナノインプリント法(ナノインプリントリソグラフィを含む)で形成することができる。特に、樹脂材料のナノインプリント法による微細構造Sの形成は、簡便で好ましい。
【0052】
≪遮光層≫
遮光層29dは、後記するUV照射工程において(図9(c)参照)、一つのスタンパ2の周囲に存在する樹脂薄膜7(図9(c)参照)のうち、硬化させる予定のない樹脂薄膜7に光(UV)が照射されて当該樹脂薄膜7が硬化するのを防止するものである。つまり、遮光層29dは、各スタンパ2の直下のみに存在する樹脂薄膜7に光(UV)が照射されるように各スタンパ2で遮光することによって、微細構造Sを転写しない部分に対応する樹脂薄膜7を未硬化(未露光)のまま残存させることができる。その結果、未硬化(未露光)の樹脂薄膜7を除去する、後の現像工程を効率よく行うことができる。
【0053】
この遮光層29dとしては、少なくとも微細構造体部24aの側面から出射される光を遮断できるものであれば特に制限はなく、例えば、光を透過しない金属や樹脂(遮光材料)からなる板体、フィルム等を微細構造体部24aの側面に張り付けたもの、その側面に蒸着したもの等が挙げられる。
なお、本実施形態での遮光層29dは、微細構造体部24aの側面のみに設けたものを想定しているが、微細構造体部24aからこの微細構造体部24a寄りの転写制御部24bの側面にまで跨って形成されていても構わない。
【0054】
(転写制御部)
次に、転写制御部24bについて説明する。
図4に示すように、本実施形態での転写制御部24bは、微細構造体部24aの支持基材29aと隣接する側から順番に、露光機構28、微調位置制御機構27、角度補正機構26及び粗調位置制御機構25とを備えている。これらは、微細構造体部24a上で層状に相互に重ねられるように形成されることで、図3(a)に示す角柱状の転写制御部24bの外形を形成している。
以下では、図4に示す粗調位置制御機構25、角度補正機構26、微調位置制御機構27及び露光機構28の順番で説明する。なお、粗調位置制御機構25及び微調位置制御機構27は共に特許請求の範囲にいう「位置制御機構」を構成している。
【0055】
≪粗調位置制御機構≫
図4に示すように、本実施形態での粗調位置制御機構25は、微細構造体部24aに対して遠い方から、近い方に向かって、第1水平面内位置調整部25a、垂直方向位置調整部25b及び第2水平面内位置調整部25cがこの順番で積層されている。
第1水平面内位置調整部25aには、水平方向に沿って圧電素子D(ピエゾ素子)が延設されている。そして、この圧電素子Dの両端部に設けられた端子T,Tのうち、一方の端子T(図4の紙面の左側の端子T)は、第1水平面内位置調整部25aの上下を仕切る境界面のうちの上面に接続され、他方の端子T(図4の紙面の右側の端子)は、第1水平面内位置調整部25aの上下を仕切る境界面のうちの下面に接続されている。
ちなみに、本実施形態での第1水平面内位置調整部25aの上下面のそれぞれは、圧電素子Dを第1水平面内位置調整部25a内で装填する絶縁性の弾性樹脂層(ゲル層)を、その上下にて挟持する導電性薄膜で形成されている。なお、上下面の導電性薄膜のそれぞれには、図示しない電位印加用のリード線(図示省略)が接続されている。
【0056】
図4のVa−Va断面図である図5(a)に示すように、本実施形態での圧電素子Dは、第1水平面内位置調整部25a内で相互に並列するように複数(3つ)設けられている。そして、この第1水平面内位置調整部25aにおいては、端子T,Tに印加される電位の極性及び大きさに応じて圧電素子Dがその延設方向に沿うように(図5(a)の矢印に示すように)伸縮動作を行うこととなる。つまり、図4に示す第1水平面内位置調整部25aの上面に対してその下面は、図4の紙面の左右方向に相対的にスライド移動することとなる。
【0057】
垂直方向位置調整部25bは、図4に示すように、その内部に圧電素子Dを装填する絶縁性の弾性樹脂層(ゲル層)を、その上下にて挟持する導電性薄膜でそれぞれ形成される上下面を有している。
なお、前記した第1水平面内位置調整部25aの下面と、この垂直方向位置調整部25bの上面とは、図示しない絶縁層を介して一体となっている。
そして、圧電素子Dの一方の端子T(図4の紙面の上側の端子T)は、上面に接続され、他方の端子T(図4の紙面の下側の端子T)は、下面に接続されている。
図4のVb−Vb断面図である図5(b)に示すように、圧電素子Dは、垂直方向位置調整部25bの略中央に配置されている。
【0058】
また、図示しないが、垂直方向位置調整部25b(図4参照)の上下面をそれぞれ構成する導電性薄膜には、電位印加用のリード線(図示省略)が接続されており、このリード線を介して端子T,T(図4参照)に印加される電位の極性及び大きさに応じて圧電素子D(図4参照)がその上下方向に沿うように(図4の紙面の上下方向に)伸縮動作を行うこととなる。つまり、垂直方向位置調整部25bの上面に対してその下面は、近接・離反移動することとなる。
【0059】
第2水平面内位置調整部25cは、図4に示すように、その内部に圧電素子Dを装填する絶縁性の弾性樹脂層(ゲル層)を、その上下にて挟持する導電性薄膜でそれぞれ形成される上下面を有している。
なお、前記した垂直方向位置調整部25bの下面と、この第2水平面内位置調整部25cの上面とは、図示しない絶縁層を介して一体となっている。
【0060】
そして、本実施形態での第2水平面内位置調整部25cは、図4のVc−Vc断面図である図5(c)に示すように、圧電素子Dの延設方向を、図5(a)に示す第1水平面内位置調整部25aにおける圧電素子Dの延設方向に対して直交する方向とした以外は、この第1水平面内位置調整部25aと同様に形成されている。
【0061】
つまり、第2水平面内位置調整部25c内で相互に並列するように複数(3つ)設けられる圧電素子Dのそれぞれは、端子T,T(図4参照)に印加される電位の極性及び大きさに応じてその延設方向に沿うように(図5(c)の矢印に示すように)伸縮動作を行うこととなる。したがって、図5(c)に示す第2水平面内位置調整部25cの圧電素子Dの伸縮方向は、図5(a)に示す第1水平面内位置調整部25aの圧電素子Dの伸縮方向に対して、水平面内で直交する方向となる。
【0062】
以上のような粗調位置制御機構25によれば、このような第1水平面内位置調整部25a、垂直方向位置調整部25b及び第2水平面内位置調整部25cが協働することによって、図2(a)に示す支持部材23aに転写制御部24bを介して接続される微細構造体部24aの位置を、X−Y−Z方向(三次元方向)に移動させて調整することができる。ちなみに、この粗調位置制御機構25による微細構造体部24aの位置の調整は、主に、被転写基板6(図9(a)参照)の樹脂薄膜7(図9(a)参照)に対して、大まかなレンジで微細構造体部24aを接近させる、アライメント工程(図9(b)参照)での比較的に初期の段階で行われる。
【0063】
つまり、粗調位置制御機構25による位置調整のレンジは、図1に示す支持部材駆動機構23bによる支持部材23aの位置調整のレンジよりも細かく、後記する微調位置制御機構27による位置調整のレンジよりも大きい。
なお、本実施形態での粗調位置制御機構25は、圧電素子D(図4参照)をその駆動部として使用しているが、本発明は、微小駆動が可能であれば駆動部の種類に特に制限はなく、例えば導電性高分子を用いたポリマアクチュエータ等をも使用することができる。
また、本実施形態での粗調位置制御機構25は、支持部材23aに対して水平面内で微細構造体部24aを回転させて所定の回転角度(θ)となるように調節する回転角度調整機構(図示省略)を更に備えることもできる。
【0064】
≪角度補正機構≫
図4に示すように、角度補正機構26は、水平面内に並設される3つの圧電素子Dを装填する絶縁性の弾性樹脂層(ゲル層)と、この弾性樹脂層を上下で挟持する絶縁性薄膜とで形成されている。なお、前記した第2水平面内位置調整部25cの下面と、この角度補正機構26の上面とは、一体となっている。
そして、各圧電素子Dの一方の端子T(図4の紙面の上側の端子T)は、上面に接続され、他方の端子T(図4の紙面の下側の端子T)は、下面に接続されている。
【0065】
3つの圧電素子Dは、図4のVIa−VIa断面図である図6に示すように、水平面内に描かれる正三角形の頂点に位置するように配置されている。また、各圧電素子Dは、それぞれが独立して駆動するように、各圧電素子Dの端子T(図4参照)には個別にリード線が配設されている。そして、端子Tに印加される電位の極性及び大きさに応じて各圧電素子Dは、その上下方向に沿うように(図4の紙面の上下方向に)伸縮動作を行うこととなる。つまり、各圧電素子Dの上下方向の長さを個別に変更することによって、角度補正機構26の上面に対してその下面が成す角度が変化することとなる。
以上のような角度補正機構26によれば、図2(a)に示す支持部材23aに転写制御部24bを介して接続される微細構造体部24aの、水平面に対する角度を調整することができる。
【0066】
≪微調位置制御機構≫
図4に示すように、本実施形態での微調位置制御機構27は、微細構造体部24aに対して遠い方から、近い方に向かって、第1水平面内位置調整部27a、垂直方向位置調整部27b及び第2水平面内位置調整部27cがこの順番で積層されている。
【0067】
この微調位置制御機構27は、前記した粗調位置制御機構25と比較して、微細構造体部24aの位置調整のレンジが異なる以外は同様に構成されている。つまり、第1水平面内位置調整部27a、垂直方向位置調整部27b及び第2水平面内位置調整部27cは、前記した粗調位置制御機構25の第1水平面内位置調整部25a、垂直方向位置調整部25b及び第2水平面内位置調整部25cと同様に構成されている。
ちなみに、微調位置制御機構27では、数10nm〜数μmの極微細なレンジで微細構造体部24aの位置の調整を行うこととなる。
図4中、微調位置制御機構27における符号Dは圧電素子であり、符号Tは、圧電素子Dの端子である。
そして、この微調位置制御機構27においては、粗調位置制御機構25と同様に、導電性高分子を用いたポリマアクチュエータ等も使用することができるし、回転角度調整機構(図示省略)を更に備えることもできる。
【0068】
≪露光機構≫
図4に示すように、本実施形態での露光機構28は、その内部に、LED等で構成される紫外線を照射可能な光源Lを装填する光透過性樹脂層28aと、微細構造体部24a側でこの光透過性樹脂層28aに積層される光拡散層28bと、を備えている。
光透過性樹脂層28aの形成材料としては、前記した微細構造形成層29cの形成材料と同様のものを使用することができる。
光拡散層28bは、光源Lから照射される紫外線を散乱させて、後記するUV照射工程(図9(c)参照)で、樹脂薄膜7に照射される紫外線を均一化するように、露光機構28を面光源化するものである。
【0069】
このような露光機構28によれば、UV照射工程で樹脂薄膜7に近い位置に光源Lを配置しながらも、樹脂薄膜7に対して充分な光量で均一に紫外線を照射することができる。つまり、樹脂薄膜7を効率よく均一に硬化させることができる。
ちなみに、本実施形態での露光機構28は、LED等からなる光源Lを光透過性樹脂層28a内に均一に多く配置することで、光拡散層28bを省略することもできる。
【0070】
(転写方法)
次に、本発明の微細構造転写用スタンパとしてのマルチヘッド23(図1参照)を使用した微細構造の転写方法について説明する。なお、この転写方法で使用するマルチヘッド23は次のように構成されている。参照する図7は、次に説明する転写方法で使用する、本発明の他の実施形態に係るマルチヘッドを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、マルチヘッドの側面図、(b)は、マルチヘッドを微細構造体部側から見た平面図である。図8は、図7のマルチヘッドを構成するスタンパを模式的に示す構成説明図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のVIIIb−VIIIb断面図である。
【0071】
次に説明する転写方法で使用するマルチヘッド23は、図7(a)及び(b)に示すように、図2(a)及び(b)に示すマルチヘッド23と異なって、その支持部材23aが平面視で円形を呈する板体で形成されている。また、小スタンパとしてのスタンパ2の配列は、図2(a)及び(b)に示すマルチヘッド23のスタンパ2の配列と同様になっている。
なお、図7(a)及び(b)中、符号24aは、次に説明するスタンパ2の微細構造体部であり、符号24bは、スタンパ2の転写制御部である。図7(b)中、符号Mは、アライメントマークである。
【0072】
図8(a)及び(b)に示すスタンパ2は、図3(a)及び(b)に示すスタンパ2と異なって、微細構造形成層29cと転写制御部24bとの間に介在する支持基材29a及び緩衝層29bからなる積層部分の外形が四角錐台形状を呈していると共に、転写制御部24bの幅が、図3(a)及び(b)に示す転写制御部24bの幅よりも狭くなっている。言い換えれば、転写制御部24bの断面積(図8(b)のハッチング部)が、図3(b)に示す転写制御部24bの断面積(図3(b)のハッチング部)よりも更に狭くなっている。
【0073】
次に参照する図9は、図7の微細構造転写用スタンパとしてのマルチヘッドを使用して被転写基板上に微細構造体を形成する際の工程説明図である。
ちなみに、この転写方法で使用される微細構造転写装置1は、図1に示すマルチヘッド23に代えて図7(a)及び(b)に示すマルチヘッド23を搭載する構成となっている。
【0074】
この転写方法では、図9(a)に示すように、その表面に樹脂薄膜7が形成された被転写基板6が、マルチヘッド23の下方に配置される。ちなみに、樹脂薄膜7は、前記したように、樹脂塗布機構10(図1参照)によって被転写基板6上に形成され、その後、被転写基板搬送機構14(図1参照)によってマルチヘッド23の下方に配置される。
次いで、この転写方法では、微細構造体部24aを、被転写基板6に向けて大まかなレンジでアプローチさせる。この際、図1に示す微細構造転写装置1の支持部材駆動機構23b、並びに図4に示す転写制御部24bの、少なくとも粗調位置制御機構25及び角度補正機構26のいずれかが使用される。
【0075】
図9(b)は、被転写基板6に対して微細構造体部24aの微細構造Sを位置決めするアライメント工程を模式的に表している。
ちなみに、本実施形態でのアライメント工程では、図9(b)に示すように、微細構造体部24aが被転写基板6には接触しないが、樹脂薄膜7には接触する状態で行う。
なお、アライメント工程は、微細構造体部24aが樹脂薄膜7に接触しない状態で行うことができる。ちなみに、樹脂薄膜7に接触しない状態でアライメント工程を行うと、微細構造体部24aと樹脂薄膜7との接触時間を短くすることができ、微細構造体部24aが樹脂薄膜7の化学的性状の影響を受け難いので微細構造体部24aの形成材料の選択の幅を広げることができる。
【0076】
次に、本実施形態でのアライメント工程は、微細構造体部24a及び被転写基板6にそれぞれ設けられたアライメントマーク(図示省略)同士の重なりを確認することで行う。そして、この図9(b)に示すアライメント工程における最終的な微細構造体部24aと被転写基板6との位置決めは、転写制御部24bに含まれる微調位置制御機構27(図4参照)によって行う。ちなみに、本実施形態での微調位置制御機構27は、X−Y−Z方向(三次元方向)における微細構造体部24aの移動距離、及び必要に応じてX−Y水平面内における微細構造体部24aの回転角度(θ)を制御することで微細構造体部24aと被転写基板6との位置決めを行う。この際、微調位置制御機構27は、Z方向(垂直方向)の下向きに微細構造体部24aを移動させることで、樹脂薄膜7を加圧することとなる。
【0077】
次に、この転写方法では、図9(c)に示すように、UV照射工程が実施される。このUV照射工程では、図4に示す露光機構28の光源Lから紫外線UVを照射することにより樹脂薄膜7を硬化させる。
なお、本実施形態では、前記したアライメント工程が終了したと同時にUV照射工程が実施されるが、この際、位置決めされた微細構造体部24aが樹脂薄膜7を加圧している状態で紫外線UVが照射される。
【0078】
そして、本実施形態においては、複数のスタンパ2の微細構造体部24aを、予め定められた順番で被転写基板6に対して位置決めしていく場合に、アライメント工程が終了した順番で各スタンパ2がそれぞれUV照射工程を実施して樹脂薄膜7を硬化させていく。つまり、各スタンパ2は、予め定められた被転写基板6の所定の領域に、その微細構造Sを高い精度で転写することとなる。
この際、各スタンパ2の露光機構28(図4参照)は、遮光層29d(図4参照)により、各スタンパ2の直下のみに存在する樹脂薄膜7に光(UV)を照射するので、その後に他のスタンパ2で転写する予定のある樹脂薄膜7部分を不用意に硬化させることがない。
【0079】
次に、この転写方法では、図9(d)に示すように、硬化した樹脂薄膜7から各スタンパ2を剥離する剥離工程が行われる。ちなみに、この剥離工程は、全てのスタンパ2において、UV照射工程が終了してから実施される。言い換えれば、複数のスタンパ2のうち、UV照射工程が終了していないスタンパ2があると、全てのスタンパ2において、この剥離工程が実施されないこととなる。
【0080】
ちなみに、この剥離工程は、スタンパ2の微細構造形成層29c(図2(a)参照)を被転写基板6に対して傾斜するように持ち上げる一次剥離工程と、この一次剥離工程の後に、スタンパ2全体を上方に向けて引き上げる二次剥離工程と、で構成することができる。この際、一次剥離工程は、図4に示す転写制御部24bの角度補正機構26、並びに粗調位置制御機構25の垂直方向位置調整部25b及び微調位置制御機構27の垂直方向位置調整部27bのうちの少なくとも1つを駆動することにより行うことができる。また、二次剥離工程は、図1に示す支持部材駆動機構23b、並びに図4に示す角度補正機構26、粗調位置制御機構25の垂直方向位置調整部25b及び微調位置制御機構27の垂直方向位置調整部27bのうちの少なくとも1つを駆動することにより行うことができる。
なお、本実施形態での剥離工程によれば、前記した一次剥離工程を含むことで、剥離時に各スタンパ2に掛かる力を最小限にすることができ、スタンパ2の耐久性(寿命)を高めることができる。
【0081】
図9(e)は、洗浄工程を行った後の被転写基板6を示している。この洗浄工程においては、図9(c)のUV照射工程、及び図9(d)の剥離工程を経た後の被転写基板6に残存する未硬化(未露光)の樹脂薄膜7が有機溶媒(例えばアセトン等)によって除去される。なお、図9(d)中、符号Rは、樹脂薄膜7の未硬化部分であり、図9(e)では、この未硬化部分Rが消失している様子を示している。
そして、図9(e)中、符号Bは微細構造体である。
なお、以上のような転写工程では、微細構造体Bが、被転写基板6の樹脂薄膜7に微細構造S(図2(a)参照)を転写することで形成されるが、微細構造体Bはこれに限定されるものではなく、樹脂薄膜7からなる微細構造体Bをレジスト膜として使用し、この微細構造体Bに対応する微細構造体(図示省略)をリソグラフィ技術により被転写基板6自体にエッチングしたものであってもよい。
【0082】
次に、本実施形態に係るマルチヘッド23(微細構造転写用スタンパ)及び微細構造転写装置1の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、形成しようとする微細構造Sの凹凸に対応する凹凸(表面形状)を有するスタンパ2を、所定の被転写基板6上に形成された樹脂薄膜7に型押しするナノインプリント技術によって微細構造体を製造するので、低コストかつ高スループットにて微細構造体B(図9(e)参照)を製造することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、支持部材23a上に複数のスタンパ2を有しているので、例えば、半導体チップサイズのような微細サイズの転写領域を複数有する被転写基板6に対しても、各転写領域のそれぞれに、微細構造Sを高い精度で転写することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、各スタンパ2は、被転写基板6に対する微細構造Sの転写状態を制御する転写制御部24bを有しているので、各転写領域のそれぞれに、微細構造Sを、より高い精度で転写することができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、微細構造形成層29cの表面の面積が、この表面と平行な転写制御部24bの断面積以上となっているので、互いに隣接し合うスタンパ2の転写制御部24b同士が接触し合って互いに干渉することを防止することができる。特に、半導体チップの形成パターンのように、微細サイズの転写領域が50μm程度の狭いピッチで複数並存する被転写基板6に対して微細構造Sを転写する場合に、隣接するスタンパ2同士のピッチを転写領域のピッチに合わせる必要がある。これに対して、本実施形態によれば、このような狭いピッチで複数のスタンパ2を配置した場合においても、スタンパ2の転写制御部24b同士がアライメント工程の実施時に干渉し合うのを、より確実に防止することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、微細構造体部24a(微細構造形成層29c)の位置制御機構が、粗調位置制御機構25と微調位置制御機構27とをそれぞれ独立して備えるので、被転写基板6に対する微細構造体部24aの位置決めを、より迅速に、より高い精度で行うことができる。
【0087】
また、本実施形態では、各スタンパ2が、支持部材23a側から粗調位置制御機構25、微調位置制御機構27及び微細構造形成層29cの順番で有することで、その粗調位置制御機構25が、被転写基板6に対して微細構造形成層29cを位置決めする際に、微細構造形成層29cから離れた位置で微細構造形成層29cを駆動する。そのため、本実施形態によれば、その粗調位置制御機構25は、より大きく(より速く)微細構造形成層29cを移動させることができる。また、その微調位置制御機構27が、被転写基板6に対して微細構造形成層29cを位置決めする際に、微細構造形成層29cと近接した位置で微細構造形成層29cを駆動する。そのため、実施形態によれば、微調位置制御機構27が、微細構造形成層29cの移動距離を繊細にかつ精度よく調節することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
次に参照する図10は、図3のスタンパの変形例を示す図であり、(a)は、スタンパの外形を示す斜視図、(b)は、(a)のXb−Xb断面図である。図11は、本発明の他の実施形態に係る微細構造転写用スタンパとしてのマルチヘッドを模式的に示す構成説明図であり、微細構造転写用スタンパの側面図である。
【0089】
前記実施形態では、スタンパ2(図3参照)の転写制御部24bが、微細構造体部24aの略中央に配置されていたが、本発明は、図10(a)及び(b)に示すように、転写制御部24bが微細構造体部24aの中央からその外側に偏って配置される構成であってもよい。
また、前記実施形態での転写制御部24bの形状は、正四角柱(直方体)の外形を有しているが、転写制御部24bの形状は、四角柱以外の多角柱、円柱、楕円柱等であってもよい。
また、前記実施形態では、スタンパ2の転写制御部24bが、その高さ方向に断面形状が変化しない柱状の外形を有しているが、図11に示すように、微細構造形成層29cから支持部材23aに向かって、転写制御部24bの断面積が徐々に減少する柱状(例えば、円錐台、角錐台等)であってもよい。
【0090】
また、本発明においては、マルチヘッド23は、各スタンパ2のそれぞれに、倍率補正機構を備えることができる。この倍率補正機構は、スタンパを変形できるように構成されている。なお、変形させる機構ためには、機械的な力、熱などが用いられる。そのため、このマルチヘッド23によれば、スタンパの変形させることで、極微小なパターンのサイズやピッチを制御することができる。
【0091】
本発明の前記実施形態で被転写基板6に微細構造Sが転写されて得られた微細構造体B(図9(e)参照)は、磁気記録媒体や光記録媒体等の情報記録媒体に適用可能である。また、この微細構造体Bは、大規模集積回路部品やレンズ、偏光板、波長フィルタ、発光素子、光集積回路等の光学部品、免疫分析、DNA分離、細胞培養等のバイオデバイスへの適用が可能である。
また、本発明は、被転写基板6の上の複数個所に同時に、微細構造体Bを形成できるので、特に半導体製造の分野(フラッシュメモリ等の製造分野)で好適に使用することができる。
【実施例】
【0092】
次に、実施例を示しながら本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例では、複数のスタンパを有するマルチヘッド(微細構造体転写用スタンパ)を搭載する微細構造転写装置を使用することで、被転写基板の複数の微細な転写領域に、スタンパの微細構造を転写した。
本実施形態で使用したマルチヘッドは、平面視で円形の板体からなる支持部材23a(図7(b)参照)上に、微細構造体部24a(図7(b)参照)の平面形状が矩形(20mm×20mm)のスタンパ2(図7(b)参照)を、合計で200個縦横に整列配置させたものを使用した。なお、微細構造体部24a同士の間の距離は、縦横でそれぞれ等距離となるように、50μmに設定した。微細構造体部24aの微細構造Sは、ラインアンドスペースで構成した。
そして、微細構造転写装置としては、図1の微細構造転写装置1に、前記した200個のスタンパ2を有するマルチヘッド23を搭載し、樹脂塗布機構10として、光硬化性樹脂をインクジェット式で供給する印刷機を備える装置を使用した。
【0093】
被転写基板6(図9(a)参照)としては、平面視で円形の板体に、マルチヘッド23の各スタンパ2の配置に略合わせるように、20mm角の正方形のチップを200個配置したものを使用した。
そして、この被転写基板6上に前記した樹脂塗布機構10により光硬化性樹脂を塗布することで、前記した各チップ上に樹脂薄膜7(図9(a)参照)を形成した。
次に、図1に示す被転写基板搬送機構14により、この被転写基板6を図1に示す微細構造転写機構20に向けて搬送して、これをマルチヘッド23の直下に配置した。
その後、図9(a)から(e)に示す前記した各工程を経ることで、マルチヘッド23(スタンパ2)の微細構造Sを、被転写基板6に配置した各チップ上の樹脂薄膜7に転写することで、微細構造体Bを作製した。
【0094】
<チップ上に形成した微細構造体Bの寸法評価>
チップ上に形成した微細構造体Bを走査型電子顕微鏡(SEM)にて評価した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0095】
(実施例2)
本実施例では、図7(b)に示すスタンパ2に代えて、図3(a)に示すスタンパ2を有する他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0096】
(実施例3)
本実施例では、図7(b)に示すスタンパ2に代えて、図10(a)に示すスタンパ2を有する他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0097】
(実施例4)
本実施例では、図4に示すスタンパ2の露光機構28として、光拡散層28bを有しない代わりに、光源Lとして面発光可能なLED光源を用いた以外は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0098】
(実施例5)
本実施例では、スタンパ2の配置間隔を100imとする他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0099】
(実施例6)
本実施例では、スタンパ2の配置間隔を30imとする他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0100】
(実施例7)
本実施例では、スタンパ2の配置個数を300個とする他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0101】
(実施例8)
本実施例では、光硬化性樹脂の塗布方法をスピンコート法とする他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【0102】
(実施例9)
本実施例では、光硬化性樹脂の塗布方法をディスペンス法とする他は、実施例1と同様のマルチヘッド23を備える微細構造転写機構20にて実施例1と同様に微細構造体B(図9(e)参照)を作製した。
SEM観察より、チップ上にはスタンパ2の微細構造Sと同様のラインアンドスペース構造が確認できた。また、そのサイズもスタンパ2の微細構造Sと同等であった。
また、各スタンパ2により同時に転写したその他全てのチップ上にも同様な形状、同等なサイズで微細構造Sが転写されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0103】
1 微細構造転写装置
2 スタンパ
6 被転写基板
7 樹脂薄膜
10 樹脂塗布機構
13 樹脂供給ノズル
14 被転写基板搬送機構
20 微細構造転写機構
23 マルチヘッド(微細構造転写用スタンパ)
23a 支持部材
23b 支持部材駆動機構
24a 微細構造体部
24b 転写制御部
25 粗調位置制御機構
25a 第1水平面内位置調整部
25b 垂直方向位置調整部
25c 第2水平面内位置調整部
26 角度補正機構
27 微調位置制御機構
27a 第1水平面内位置調整部
27b 垂直方向位置調整部
27c 第2水平面内位置調整部
28 露光機構
28a 光透過性樹脂層
28b 光拡散層
29a 支持基材
29b 緩衝層
29c 微細構造形成層
29d 遮光層
S 微細構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細構造が形成された微細構造形成層を有するスタンパを、被転写基板上に形成した樹脂薄膜に押し付けた状態でこの樹脂薄膜を硬化させ、前記被転写基板上に微細構造体を形成する微細構造転写装置において、
支持部材上に複数の前記スタンパを有するマルチヘッドを備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細構造転写装置において、
前記マルチヘッドを構成する各スタンパは、前記微細構造形成層を含む微細構造体部と、前記樹脂薄膜に対する前記スタンパの前記微細構造の転写状態を制御する転写制御部とを有し、前記微細構造体部が前記転写制御部を介して前記支持部材上に並設されていることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の微細構造転写装置において、
前記微細構造形成層の前記表面の面積は、この表面と平行な前記転写制御部の断面積以上であることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項4】
請求項2に記載の微細構造転写装置において、
前記微細構造体部は、前記微細構造形成層、緩衝層、支持基材、及び遮光機構を有することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項5】
請求項2に記載の微細構造転写装置において、
前記転写制御部は、前記被転写基板に対する前記微細構造形成層の角度補正機構及び位置制御機構並びに前記樹脂薄膜を硬化させる露光機構を有することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微細構造転写装置において、
前記微細構造形成層の前記位置制御機構は、粗調位置制御機構と微調位置制御機構とをそれぞれ独立して備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項7】
請求項6に記載の微細構造転写装置において、
前記マルチヘッドの前記スタンパのそれぞれは、前記支持部材側から前記粗調位置制御機構、前記微調位置制御機構及び前記微細構造形成層の順番で有することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項8】
請求項1に記載の微細構造転写装置において、
前記マルチヘッドの前記スタンパのそれぞれは、アライメント機構を有することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項9】
請求項1に記載の微細構造転写装置において、
前記支持部材の位置を制御する支持部材駆動機構を有することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項10】
請求項1に記載の微細構造転写装置において、
前記被転写基板上に前記樹脂薄膜を形成するための樹脂塗布機構と、前記スタンパの微細構造を前記樹脂薄膜に転写する微細構造転写機構と、前記樹脂薄膜を形成した前記被転写基板を前記樹脂塗布機構から微細構造転写機構に向けて搬送する被転写基板搬送機構と、を備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項11】
表面に微細構造が形成された微細構造形成層を有し、被転写基板上に形成した樹脂薄膜に押し付けた状態でこの樹脂薄膜を硬化させてこの被転写基板に前記微細構造を転写するスタンパを、支持部材上に複数有するマルチヘッドであることを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項12】
請求項11に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記マルチヘッドを構成する各スタンパは、前記微細構造形成層を含む微細構造体部と、前記樹脂薄膜に対する前記スタンパの前記微細構造の転写状態を制御する転写制御部とを有し、前記微細構造体部が前記転写制御部を介して前記支持部材上に並設されていることを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項13】
請求項12に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記微細構造形成層の前記表面の面積は、この表面と平行な前記転写制御部の断面積以上であることを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項14】
請求項12に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記微細構造体部は、前記微細構造形成層、緩衝層、支持基材、及び遮光機構を有することを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項15】
請求項12に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記転写制御部は、前記被転写基板に対する前記微細構造形成層の角度補正機構及び位置制御機構並びに前記樹脂薄膜を硬化させる露光機構を有することを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項16】
請求項15に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記微細構造形成層の前記位置制御機構は、粗調位置制御機構と微調位置制御機構とをそれぞれ独立して備えることを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項17】
請求項16に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記マルチヘッドの前記スタンパのそれぞれは、前記支持部材側から前記粗調位置制御機構、前記微調位置制御機構及び前記微細構造形成層の順番で有することを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項18】
請求項11に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記マルチヘッドの前記スタンパのそれぞれは、アライメント機構を有することを特徴とする微細構造転写用スタンパ。
【請求項19】
請求項11に記載の微細構造転写用スタンパにおいて、
前記支持部材の位置を制御する支持部材駆動機構を有することを特徴とする微細構造転写用スタンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−253303(P2012−253303A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127085(P2011−127085)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】