微細流路装置
【課題】 流動体がリークすることがない、シール性が良い微細流路装置を提供する。
【解決手段】 微細流路装置においては、弾性部材(パッキン)200が基板100に接合され、弾性部材200の裏面に形成された第1の溝202により基板100上に流路が定められる。弾性部材200は、パッキン100の主面に対して垂直に延出された送入ポート208及び送出ポート210が設けられ、送入ポート208及び送出ポート210の夫々の先端が開口され、これら開口から第1の溝202に連通する貫通孔212及び214が形成される。弾性部材200には、この裏面に第1の溝202と連通しない第2の溝204が第1の溝202と所定の間隔だけ離間して形成され、弾性部材200と基板100との密着面の面積が低減される。
【解決手段】 微細流路装置においては、弾性部材(パッキン)200が基板100に接合され、弾性部材200の裏面に形成された第1の溝202により基板100上に流路が定められる。弾性部材200は、パッキン100の主面に対して垂直に延出された送入ポート208及び送出ポート210が設けられ、送入ポート208及び送出ポート210の夫々の先端が開口され、これら開口から第1の溝202に連通する貫通孔212及び214が形成される。弾性部材200には、この裏面に第1の溝202と連通しない第2の溝204が第1の溝202と所定の間隔だけ離間して形成され、弾性部材200と基板100との密着面の面積が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動体を流通させる為の微細な流路が形成されている微細流路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では、細胞中の核に含まれる遺伝子配列による病気の診断或いは予防が実現されつつある。このような診断は、遺伝子診断と称される。遺伝子診断では、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥或いは変異を検出して病気の発症前若しくは極めて初期の段階で病気を診断する、或いは、病気が発症する時期等を予測することができる。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病や薬剤応答性等といった体質との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)が実現されつつある。
【0003】
また、バイオテロと称されるウイルスや細菌類を使用した犯罪が増加して社会的な脅威になっている。このような犯罪で使用されたウイルスや細菌類の遺伝子配列を特定することは、人命救助の観点から必須である。
【0004】
サンプル中の核酸を検出するシステムとして、DNAチップを用いた核酸検出装置の提案がなされている(特許文献1)。特許文献1に記載された核酸検出装置では、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて形成された流路にサンプルが流通され、流路内でDNAチップ上の核酸プローブと試料中の標的核酸とのハイブリダイゼーション反応及びその検出等が実施される。基板と弾性部材との接合では、弾性部材が基板に押付けられ、弾性部材の自己粘着性を利用して接合面におけるシール性が確保されている。しかしながら、このような接合方法では、基板及び弾性部材間の接合部からサンプルが流路外へ漏れ出す可能性がある。これは、サンプルに高い浸透性を有する界面活性剤が含有されている場合には、特に顕著となる。サンプルが外部に漏れ出すと、検出精度が低下する或いは周囲環境が汚染されることにより、その後の検出に対する信頼性を損ねる等の問題が生じる。
【0005】
基板と弾性部材とを、接着剤で接着して互いに接合する方法も考えられる。しかしながら、接着剤による接合では、サンプルに接着剤の成分が溶出することで核酸の検出を阻害し、精度が低下する問題がある。
【0006】
また、基板と弾性部材との接合部におけるシール性を向上する為により大きな押付け力で弾性部材を基板に接触させる構造も考えられる。このような構造では、基板の強度を充分に確保する必要があるが、装置の小型化や温度制御の必要性から、基板は、ガラスやシリコン等で薄肉に形成されることが望ましく、この大きな押付け力を与える接合方法でシール性を向上させるのは、困難である。
【0007】
このような問題は、上記のような核酸検出装置に限らず、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて基板上に形成された微細な流路に流動体を流通させ、流動体、即ち、液体或いは気体を取り扱う微細流路装置全般(特許文献2)に関わることである。
【0008】
上述のように、微細流路装置においては、流動体、即ち、液体又は気体が装置外に流出することがないように基板と弾性部材とが良好なシール性を備えて接合されることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−125777号公報
【特許文献2】特許第3877572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、流路を流れる流動体、即ち、液体又は気体が装置外に流出することがないように基板と弾性部材とが良好なシール性を備えて接合される微細流路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
基板と、
第1及び第2の面と、当該第2の面に設けられた第1の溝及び第2の溝と、を有し、かつ、前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第1の溝が前記基板上に物質流通のための流路を形成する弾性部材と、
前記弾性部材を前記基板に固定する固定具と、
を具備することを特徴とする微細流路装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板と弾性部材との接合におけるシール性を向上し、装置外への流動体の流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る微細流路装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示したパッキンを示す斜視図である。
【図3A】図1に示したパッキンを示す断面図である。
【図3B】図3Aに示したパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3C】図1に示したパッキンを示す底面図である。
【図4A】図3Aに示したパッキンにおける第1及び第2の溝の形状を説明する断面図である。
【図4B】図4Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】図3Aから図3Cに示したパッキンの変形例を一部拡大して示す拡大断面図である。
【図6A】本発明の実施の形態の比較例1に係る基板及びパッキンを示す断面図である。
【図6B】図6Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図6C】図6Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図7】図6Aに示した基板とパッキンとの接合面においてサンプルが流出する様子を説明する説明図である。
【図8A】本発明の実施の形態の比較例2に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図8B】図8Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図8C】図8Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図9A】本発明の実施の形態の比較例3に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図9B】図9Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図9C】図9Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図10A】本発明の実施の形態の比較例4に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図10B】図10Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図10C】図10Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図11A】本発明の他の実施の形態に係るパッキンを模式的に示す断面図である。
【図11B】図11Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図11C】図11Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図12】図1に示した微細流路装置が適用される核酸検出装置を概略的に示すブロック図である。
【図13】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す断面図である。
【図14A】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す分解組立図である。
【図14B】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る微細流路装置を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る微細流路装置の概略構成を示している。この微細流路装置は、基板100を備え、この基板100上に弾性部材、例えば、シリコンゴム等で形成されるパッキン200が載置されている。これら基板100及びパッキン200は、互いに対向配置された状態で、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着固定されている。パッキン200の裏面、即ち、基板100に接合される側の面には、第1の溝202及び第1の溝202に連通されず、第1の溝202から独立している第2の溝204が形成されている。パッキン200の裏面が基板100の表面に気密接合されることにより第1の溝202及び基板100の表面で形成される空間が流路に定められる。第2の溝204は、パッキン200と基板100との間の接合面、即ち、密着面の面積を低減するために設けられている。パッキン200には、流動体、即ち、液体又は気体を導入する送入ポート208及び導出する送出ポート210が設けられている。送入ポート208及び送出ポート210の各々は、パッキン200の主面に対して略垂直に延出された形状に形成されている。送入ポート208及び送出ポート210の各々には、先端に開口部216及び218が設けられており、開口部216及び218から第1の溝202に連通する貫通孔212及び214が形成されている。これら第1の溝202並びに貫通孔212及び214は、断面積が略等しくなるように形成されている。
【0016】
基板100とパッキン200との接合は、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に狭着され、パッキン200が基板100に押圧されて実現される。即ち、パッキン200の裏面と基板100の主表面とが圧接されて基板100及びパッキン200が固定されている。パッキン200は、弾性部材で形成されており、基板100とパッキン200との接合面では、弾性部材の自己粘着性を利用して基板100の主表面とパッキン200の裏面とが密着して接合され、流路に流通される流動体、即ち、液体又は気体に対してシール性が確保されている。基板100とパッキン200との接合面におけるシール性は、接合面に加わる圧力に応じて定まる。接合面における圧力は、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着されることによる基板100及びパッキン200間に印加される押付け力を接合面の面積で除算することで定められる。図1に示したパッキン200においては、パッキン200の裏面に第2の溝204が設けられることから、接合面、即ち、密着面の面積が低減されている。従って、基板100とパッキン200とは、比較的大きな圧力により密着接合され、接合面には高いシール性を与えることができる。
【0017】
カセット上蓋302及びカセット下蓋304からカセット本体300が構成される。このカセット本体300は、基板100とパッキン200とを接合して固定することができれば、いかなる形状に形成されてもよい。
【0018】
パッキン200の裏面であって第1の溝202及び第2の溝204が形成されている部分以外の他の部分(領域)は、平坦な面に形成され、基板100の主表面であってパッキンが配置される部分(領域)も平坦な面に形成されている。従って、基板100及びパッキン200がカセット本体に狭着固定される際には、基板100及びパッキン200は、平面同士が密着した状態で接合される。流路を定める溝は、パッキン200の裏面のみに形成される場合に限らず、基板100の主表面にも溝が形成されて流路が形成されてもよい。
【0019】
流動体、即ち、液体又は気体の流通は、図1に示した流路に送入ポート208を通って供給され、送出ポート210を通って排出される。このため、ノズル(図示せず)がカセット上蓋302に設けられたノズル差込孔306及び308の夫々に挿着される。これらノズルは、夫々送入ポート208及び送出ポート210に接合される。これらノズルは、例えば、流動体を供給及び排出するポンプ(図示せず)に接続され、送入ポート208を介して流路に流動体が送入され、送出ポートを介して流路から流動体が送出される。
【0020】
このような微細流路装置は、後に説明するように、例えば、複数のDNAプローブを固定化したDNAチップを用いた核酸検出装置で利用される。しかしながら、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて基板上に形成された微細な流路に流動体を流通させ、流動体、即ち、液体或いは気体を取り扱う微細流路装置全般にて利用可能である。核酸検出装置では、微細流路装置に形成される流路に検査の対象となる核酸を含む試料(検体溶液)が導入され、流路内に配置される作用極に固定化された核酸プローブと試料内の核酸との間において、温度制御下でハイブリダイゼーションを生じさせている。ハイブリダイゼーション後には、流路から試料が排出され、エア及び薬液(緩衝液や純水等)が適切な順序で導入されて流路が洗浄されたり、反応の制御が行われたりされる。その洗浄後に流路に挿入剤溶液が導入されて電気化学反応により生じた電流を検出して核酸検出工程が実施される。但し、基板100及びパッキン200は、着脱可能に接合されているため、ハイブリダイゼーション反応や洗浄工程後に基板100からパッキンを剥離して基板100が取り出されて外部装置で核酸を検出することもできる。
【0021】
図2は、パッキン200の一例を概略的に示している。図2では、流路を構成する第1の溝202並びに貫通孔212及び214が破線で示されている。パッキン200は、図2に示されるように、パッキン本体206並びに送入ポート208及び送出ポート210から構成される。パッキン本体206は、略長方形状の所定の厚さを有するプレートである。送入ポート208及び送出ポート210の各々は、パッキン200の主面上であって長手方向の両端付近に配置され、パッキン200の主面に対して略垂直に延出された略円筒形状に形成されている。送入ポート208及び送出ポート210の各々の先端は、開口され、各々の軸心には、貫通孔212及び214が設けられている。パッキン200の裏面には、送入ポート208の他方の開口、即ち、パッキン内の開口から送出ポート210の他方の開口、即ち、パッキン内の開口に亘ってジグザグに蛇行して延出されるように第1の溝202が形成されている。従って、この第1の溝202は、貫通孔212及び214に連通されている。
【0022】
より詳細には、この第1の溝202は、送入ポート208の基部側から送出ポート210の基部側に向けて延出され、送出ポート210の基部付近において所定の曲率で折り返されて再び送出ポート210の基部側から送入ポート208の基部側に向けて延出される。このように、第1の溝202は、送入ポート208の基部及び送出ポート210の基部間、即ち、パッキン200の長手方向に複数回蛇行した形状に形成されている。第1の溝202の折り返しには、所定の曲率が与えられていることから折り返しの部分或いは領域における流動体、即ち、液体又は気体の滞留を抑制することができる。
【0023】
図3Aは、パッキン200を短手方向に切断した断面を示している。また、図3Bは、図3Aに示される断面図の一部を拡大して示し、図3Cは、パッキン200の裏面を示している。パッキン200は、図3A及び図3Bに示されるように、その断面内において、第1の溝202の複数の断面部が所定の間隔だけ離間して配置形成され、隣接する第1の溝202の断面部間及び第1の溝202の形成領域の周囲には、第2の溝204が形成されている。第1の溝202は、その断面が略長方形状もしくは略台形状に形成され、第2の溝204は、その断面が略台形状に形成されている。図3Aにおいて、右側に位置する第1の溝202Aの断面では、手前側から奥側に、即ち、送入ポート208の形成位置側から送出ポートの形成位置側に向けて薬液が流通される場合、第1の溝202Aの左隣に位置する第1の溝202Bでは、第1の溝202Aとは逆方向、即ち、奥側から手前側に薬液が流通されることになる。同様に、第1の溝202C及び202Eでは、手前側から奥側に向けて薬液が流通され、第1の溝202Dでは、奥側から手前側に薬液が流通される。このように、図3Aに示したような流路に交差する方向に切断した断面において、隣接する第1の溝202同士では、薬液の流通方向は、逆向きになる。薬液の流通方向に対して垂直に切断された断面が流路の折り返し位置においても略一定の断面形状を有するように第1の溝202は、形成されている。このように、第1の溝202が流路に対して垂直に切断した断面がいずれの流路上でも略一定の断面形状を有するように形成されると、流動体の流通が均一になり、例えば、流路内での電気化学反応によって発生される電流等の検出における信頼性を向上することができる。
【0024】
第1の溝202の側壁は、基板上に形成される流路の流路壁として機能する。以下の説明においては、第1の溝202の側壁を流路壁と称する。図3Aにおいて、ある第1の溝202と隣り合う他の第1の溝202との間に位置する流路壁の厚さは、第1の溝202の溝幅と略同一に形成されている。この流路壁には、第1の溝202に連通しない第2の溝204が形成されている。第2の溝204の深さ(高さ)は、第1の溝202の深さに比較して小さく設定されることが望ましい。この第2の溝204は、図3Bに拡大して示されるように、その内壁がパッキン200の裏側から主面側にかけて先細りとなるテーパ形状に、第1の溝202に沿って延出されて形成されていることが望ましい。また、第2の溝204は、図3Cに示されるように、蛇行する第1の溝202間の領域のみならず、蛇行する第1の溝202が形成される領域の周囲に相当するパッキン200の裏面の周縁部においても第2の溝204が形成されていることが望ましい。このように、第2の溝204は、第1の溝202の周囲を所定の間隔だけ縁取るようにパッキン200の裏面全体に形成されている。このため、パッキン200は、その第1の溝202に沿って形成される所定の幅を有する平坦部分(図3Cにおいて斜線で示す領域)のみが基板100の主表面に接触されることになる。
【0025】
パッキン200の材質は、シリコンゴムのみならず、エラストマー、ウレタンゴム、フッ素系ゴム、その他ゴム・樹脂等でもよい。また、基板100は、ガラス基板に限らず、シリコン基板、セラミック基板、ガラスエポキシ基板等であってもよい。
【0026】
図4Aは、パッキン200が基板100に密着して接合された状態を示し、図4Bは、図4Aに示される断面図の一部を拡大して示している。第2の溝204は、図4A及び図4Bに示されるように、その溝高(溝の深さ)H2が第1の溝202の溝高H1よりも小さく、即ち、不等式H1>H2を満たすように設定される。流路方向に垂直に切断されたパッキン200の断面において、流路壁の壁幅L2は、第1の溝202の溝幅L1と略同一に設定される。第1の溝202及び第2の溝204間に形成される側壁は、裏面において常に所定の壁幅L23を有する。即ち、パッキン100を流路に対して垂直に切断したいずれの断面でも第1の溝202は、第2の溝204と所定の間隔だけ離間して形成されている。流路壁内に形成される第2の溝204においては、パッキン200の裏面側の溝幅L21は、主面側の溝幅L22よりも大きく設定される。第2の溝204を、隣接する第1の溝202間の中央に、しかも左右対称になるように配置した場合、基板100の主表面と接触する部分の距離L23は、流路壁の壁幅L2に対して、明らかに不等式L2>2×L23を満たす。流路壁内に第2の溝204が形成されない場合には、パッキン200と基板100との接合面の面積は、図4Aに示した断面付近を局所的に限定して考えた場合、第一次近似的には壁幅L2に比例した値を有する。一方、図4Aに示されるような流路壁に第2の溝204が形成される場合には、パッキン200と基板100との接合面の面積は、図4Aに示した断面付近を局所的に限定して考えた場合、第一次近似的には距離L23の2倍に比例した値を有する。従って、第2の溝204が形成される場合には、接合面の面積を大幅に低減することができる。
【0027】
また、第2の溝204の溝高H2は、比較的小さく設定されることが好ましい。流路壁の自立性は、第1の溝202及び第2の溝204間の壁幅L23並びに溝高H2の比、即ち、アスペクト比H2/L23に依存する。このアスペクト比は、値が小さいほど流路壁の自立性が高いことを示している。即ち、溝高H2が小さく設定されるほど流路壁の自立性が高くなる。従って、基板100とパッキン200との接合面の面積を低減しながら流路壁の自立性を保持するには、壁幅L23に応じて溝高H2を小さく設定すればよい。但し、この溝高H2は、基板100とパッキン200とが狭着固定された際にパッキン200が変形されて第2の溝204の上面が基板100に接触することがないように設定される必要がある。
【0028】
第1の溝202側の流路壁面が基板100の主表面(又は、パッキン200の裏面)となす角度θ1は、図4Bに示されるように、第2の溝204側の流路壁面が基板100の主表面(又は、パッキン200の裏面)となす角度θ2に対して、不等式θ1>θ2を満たすように設定されることが好ましい。この不等式を満たすように第1の溝202及び第2の溝204が形成されると、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着固定される際に、流路壁が流路側に湾曲するように変形されるのを防止することができる。即ち、パッキン200が基板100に対して押圧された際に、流路壁は、角度θ1が減少する方向に変形されにくくなる。例えば、θ1=90°に設定した状態で、パッキン200を基板100に押付ける場合、θ1が減少される方向に流路壁が変形されると、流路壁が基板100と接触する接触部の付近には、非常に小さい空間が形成される。このため、流路に試料及び薬液等の溶液が流通される際にエアがこの空間に滞留する、或いは、この微小空間に毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する等の現象が生じ、微細流路装置における核酸等の検出における検出の精度が低下される虞がある。このため、流路に垂直な断面における流路の断面形状が単純な形状に保持されるように、第1の溝202側の流路壁面が基板100の主表面となす角度θ1が第2の溝204側の流路壁が基板となす角度θ2よりも大きく設定される。
【0029】
図5には、図3Aから図3Cに示されるパッキン200の変形例として、第1の溝232及び第2の溝234の断面が、台形状ではなく、湾曲した形状に形成されるパッキン230が一部拡大されて示されている。このパッキン230では、流路壁の壁面が曲面状に形成されている。この場合、図5に示されるように、第1の溝232側の壁面が基板100の主表面となす角度θ1は、第1の溝232の壁面が基板100の主表面に接する部分における仮想的な接面236と基板100の主表面とがなす角度を示す。また、同様に、第2の溝232側の流路壁が基板100となす角度θ2は、第2の溝234の壁面が基板100の主表面に接する部分における仮想的な接面238と基板100の主表面とがなす角度を示す。このようなパッキン230においても、θ1>θ2の関係が保持される。
【0030】
図1から図3Cに示したパッキン100は、例えば、パッキン寸法として第1の溝202の溝高H1を0.7mm、第2の溝204の溝高H2を0.2mm、第1の溝202の溝幅L1を1mm、第1の溝202間の流路壁の壁幅L2を1mm、基板100の主表面と接触する部分の距離L23を0.3mm、第1の溝202側の流路壁が基板100となす角度θ1を90°、第2の溝204側の流路壁が基板100となす角度θ2を60°に設定し、硬度70°のシリコンゴムで作製される。但し、このパッキン寸法は、一例であり、パッキン200は、この寸法に限定されず、上記の各種条件を満たせばいかなる寸法に形成されてもよい。但し、角度θ1は、45°から90°の範囲で設定されるのが好ましいが、必ずしも限定される訳ではない。
【0031】
次に、本発明の実施の形態の比較例としていくつかのパッキンを例示して以下に説明する。図6Aから図11Cにおいて、図1から図3Cに示した符号と同一符号は、同一箇所或いは同一構成を示すものとして、その詳細な説明は省略する。
【0032】
図6Aは、比較例1として、従来から知られているパッキン250の断面を示している。また、図6Bは、図6Aのパッキン250の断面図の一部を拡大して示し、図6Cは、このパッキン250の裏面を示している。このパッキン250は、図6Aから図6Cに示されるように、第2の溝204が形成されないこと以外は、図3Aから図3Cに示したパッキン200と同一に構成されている。比較例1に係るパッキン250の典型的な断面寸法は、図6Bに示されるように、第1の溝高h1は0.7mmに、第1の溝の溝幅w1並びに流路壁の壁幅l1は1mmに設定される。このパッキン250は、平坦に形成される裏面が基板100の表面にある押付け力を印加されて接合される。前述したように、パッキン250と基板100との接合面に加わる圧力は、パッキン250が基板100に押付けられる押付け力を接合面の面積で除算して定められることから、図6Aに示したパッキン250は、図3Aに示したパッキン200に比較してシール性が弱い。このようなパッキン250では、流路内に溶液等が充填され、加熱保持されると、図7に示されるように、パッキン250と基板100との接合部分から矢印方向に薬液等の溶液が漏れ出す虞がある。特に、高い浸透性を有する界面活性剤を含有する溶液が流路に流通される場合には、溶液が漏れ出しやすくなる。
【0033】
パッキン250と基板100との接合部分からの溶液の漏れを回避する為のいくつかの対策を説明する。第1の対策としては、パッキン250と基板100とを接着剤等にて接着する方法が考えられる。しかしながら、接着剤を構成する成分が溶液中に溶出する虞がある。例えば、核酸検出装置では、正確な核酸検出の為には、厳密な試料及び試薬の組成管理が必須となる。従って、この方法は、検出精度の観点から好ましくない。
【0034】
また、第2の対策としては、パッキン250を基板100に押付ける力を増加させる方法が挙げられる。核酸検出カセットように、図1に示した微細流路装置を使い捨てにする必要がある場合には、コストを抑える為に、カセット上蓋302及びカセット下蓋304は、プラスチック材料で形成され、基板100は、ガラス基板が使用される。基板100及びパッキン250に印加される押付け力は、カセット上蓋302及びカセット下蓋304が係合されてパッキン250及びガラス基板100を挟み込むことによって生じる。従って、押付け力を増加させるには、カセット上蓋302、カセット下蓋304及びガラス基板100に充分に高い強度を確保する必要がある。これは、カセット上蓋302及びカセット下蓋304の構造を強固する、及び、ガラス基板100を厚肉に形成することで実現されることができる。しかしながら、核酸検出装置のように、流路内の液体を充填し、この液体の温度を制御するような場合、ガラス基板100を厚肉に形成すると、温度制御の精度が低下する虞がある。即ち、温度制御の観点から、基板100は、薄肉に形成されることが好ましく、温度制御の精度を維持したまま基板100の充分な強度を確保することは困難である。
【0035】
さらに、第3の対策としては、カセット上蓋302とカセット下蓋304との止着による押付け力を変えることなく、パッキン250及び基板100の接合面における圧力を増加させる方法が挙げられる。この方法では、上述したように、パッキン250及び基板100の接合面における圧力を増加する為に接合面の面積を縮小すればよい。図8Aから図8Cには、本発明の比較例2に係るパッキン260が示されている。このパッキン260では、図8Aから図8Cに示されるように、比較例1と比較して、流路壁の壁幅l2が縮小され、第1の溝の溝高h2及び溝幅w2が同一に保たれている。パッキン260は、図6Aから図6Cに示したパッキン250と比較して細長く、即ち、パッキン260の短手方向の幅が狭く形成されている。流路壁の壁幅l2が低減されると、パッキン260と基板100との接合面の面積が縮小され、この面積に反比例して接合面における圧力が増加される。従って、シール性を向上することができる。しかしながら、パッキン260は、シリコンゴム等の弾性部材で形成されることから、流路壁の壁幅が小さく設定されると、流路壁が自立することが困難である。従って、流路壁の壁幅が単純に縮小されたパッキン260では、流路壁が変形されて流路の断面形状を略一定の形状に保持することができない。その場合、上記に記述したように、パッキン260が基板100に対して押圧された際に、θ1が減少される方向に流路壁が変形されると、流路壁が基板100と接触する接触部の付近には、非常に小さい空間が形成される。このため、流路に試料及び薬液等の溶液が流通される際にエアがこの空間に滞留する、或いは、この微小空間に毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する等の現象が生じ、微細流路装置における核酸等の検出における検出の精度が低下される虞がある。
【0036】
さらにまた、第4の対策として、溝間の壁部分の自立性を確保する為に、比較例2に係るパッキン260における溝高h2を小さくする方法が挙げられる。図9Aから図9Cには、本発明の実施の形態の比較例3に係るパッキン270が示されている。比較例3では、図9Aから図9Cに示されるように、比較例2に係るパッキン260と比較して、溝高h3が縮小され、第1の溝202の溝幅w3及び流路壁の壁幅l3が同一に保たれている。流路壁のアスペクト比が低減され、流路壁の強度が増加されている。これにより、パッキン270と基板100との接合面の面積を低減し、流路を形成する壁部分の強度が充分に保持されたパッキン270が実現される。しかしながら、このような構成では、流路を定める溝の断面積が低減され、流路内に流通される試料中の核酸濃度又は試薬中の成分濃度の濃度分布に影響が顕著に現れ、検出精度(検出信号の均一性)が低下する。
【0037】
また、第5の対策としては、パッキンと基板100との接触を面接触から線接触に変更する方法が考えられる。この方法は、比較例1に係るパッキン250の裏面に凸形状(略半円形状)のシール部282が設けられて実現される。図10Aから図10Cには、比較例4として、第1の溝202の側壁における基板100との接合面の両端部に小型のシール部282が形成されたパッキン280が示されている。シール部282は、図10Aから図10Cに示されるように、第2の溝204を定め、パッキン280に一体形成されている。このような構成では、パッキン280は、基板100に線接触されることからシール性が向上される。しかしながら、流路であってシール部282及び基板100の主表面で定められる領域284に非常に小さい空間が形成される。これにより、流路に溶液が流通される際に、この微小空間部分に微細な気泡が滞留し、流路内に満たされた溶液の温度制御が実施され、流路内の温度が上昇されると、このような気泡が集合して大きな気泡になり、この気泡により検出精度が低下される虞がある。もしくは、毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する虞もある。このように、基板100とパッキン200との接合面におけるシール性能を向上させる為であっても、流路の断面形状に微小領域が形成されることは、検出精度の観点から好ましくない。
【0038】
本発明の実施の形態に係る微細流路装置では、上述した比較例1から比較例4に示した問題を回避することができ、基板100とパッキン200との接合に接着剤を不使用で、且つ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304による押付け力を増加させることなく、流路を形成する基板100及びパッキン200間においてシール性の高い接合が実現されている。本発明の実施の形態に係るパッキン200は、図3Aから図3Cに示されるように、パッキン200の裏面に流路を定める第1の溝202の周囲にこの第1の溝202から所定の幅だけ残して第2の溝204が形成される。パッキン200が基板100に押付け固定された際に、基板100及びパッキン200の接合面でのシールが確保される。また、流路に沿って垂直な断面において、流路が単純な断面形状に保持され、断面形状が常に略一定に保持される。
【0039】
以上のように、本発明の実施の形態に係る微細流路装置においては、基板100とパッキン200との接合におけるシール性能が良く、試料及び薬液等が装置外への漏れ出しを防止することができる。
【0040】
尚、パッキン200に設けられる第1の溝202は、基板100上に蛇行して1つの流路を定めるように形成される場合に限らず、複数の流路を定めるように複数個形成されてもよい。また、第1の溝202は、流路を分岐するように、或いは、流路が循環するように形成されてもよく、用途に応じてその形状を適切に変更することができる。これらの場合にも、第2の溝204は、第1の溝202及び第2の溝204間の流路壁が自立性を有するように形成される。
【0041】
また、貫通孔212及び214並びに第1の溝202は、断面形状、断面積が略等しい場合を説明したがこれに限定されない。例えば、核酸検出装置では、貫通孔212及び214並びに第1の溝202にかけて最も細い部分の断面積に対して最も太い部分の断面積が約2倍程度以内に形成されることが好ましい。
【0042】
また、送入ポート208及び送出ポート210は、必ずしもパッキン本体206の主面に対して垂直に形成されている必要はなく、例えば、主面に対して所定の角度だけ傾斜させて形成されていてもよい。また、パッキン本体206主表面に対して垂直に設けられ、その形成位置途中で折れ曲がり、パッキン本体206主表面に対して垂直でない方向に延出されて形成されてもよい。
【0043】
図11Aから図11Cには、本発明の他の実施の形態に係るパッキン220が示されている。このパッキン220には、図3Aから図3Cに示したパッキン200の裏面の外周部に土手状のシール部222がさらに設けられている。シール部222は、図11A及び図11Bに示されるように、パッキン220の裏面の外周部に形成された第2の溝204から基板100側に向かって凸形状に、流路壁と同一の高さに形成されている。即ち、図11A及び図11Bに示した断面においては、シール部222は、第2の溝204から基板100側に向けて湾曲した形状に形成され、基板100に点接触される。また、シール部222は、図11Cに示されるように、パッキン220の裏面の外周部に環状に形成されている。従って、基板100及び弾性部材220が接合される際には、シール部222が基板100の主表面に環状に線接触される。パッキン220がこのような形状に形成されると、流路は、流路壁による面シールに加え、基板100に形成される流路の周囲において線シールで封止される。これにより、第2の溝204及びパッキン100の表面で規定される空間は、閉空間となる。この場合、万一溶液が流路壁と基板100との接合部からリークしたとしても、溶液を閉空間内に留めることができる。従って、基板100とパッキン220との接合におけるシール性能をさらに向上することができる。
【0044】
また、このシール部222は、微細流路装置を組み立てる際に、基板100に対するパッキン220の傾きを補正するガイドとして機能し、従って、組み立てを容易にすることができる。
【0045】
図1に示した微細流路装置は、例えば、核酸検出装置に装着される核酸検出カセットに適用される。以下に、本発明の実施の形態に係る微細流路装置の一例として、図12から図14Bを参照して核酸検出装置を説明する。図12から図14Bにおいて、図1から図3Cに示した符号と同様の符号を同一部分、同一箇所に付してその説明を省略する。
【0046】
図12は、本発明の実施の形態に係る核酸検出カセット(微細流路装置)11を装着した核酸検出装置の概略構成を示している。この核酸検出装置は、図12に示されるように、核酸を検出するセンサ領域としての流路が形成される核酸検出カセット11を装着して使用される。また、この核酸検出装置は、核酸検出カセット11に電気的に接続される測定部12、核酸検出カセット11に設けられた流路に物理的に接続される送液部13、及び核酸検出カセット11の温度を制御する温度制御部14を備えている。
【0047】
これら測定部12、送液部13及び温度調整部14は、制御部15により制御される。制御部15は、コンピュータ16に電気的に接続され、コンピュータ16に格納されたプログラムに従って制御される。
【0048】
送液部13は、核酸検出カセット11に供給する緩衝液、純水及び挿入剤溶液等の薬液を保持する複数の供給源、エアを供給するエア供給源を備える。さらに、核酸検出カセットから排出される試料及び薬液等を保持する廃液チャンバを備えている。また、エアや溶液を核酸検出カセット11に供給し、試料及び溶液、エアを核酸検出カセット11から排出するためのポンプ、複数の溶液やエアを切り替えるためのバルブ等も備えている。
【0049】
図12に示した核酸検出装置は、核酸検出カセット11において、試料(液体検体)に含まれる核酸をハイブリダイゼーションさせ、この反応の有無を緩衝液及び挿入剤溶液導入後にモニタリングすることにより、試料中に検出の対象となる標的核酸が含まれているか否かを判断する。
【0050】
この核酸検出カセットは、図13に示されるように、基板100及びパッキン200を備え、基板100及びパッキン200が接合されて基板上に流路が形成される。図13に示されるパッキン200は、図1から図3Cに示したパッキン200と同一の構成に形成されている。基板100上には、パッキン200に設けられた第1の溝202及び基板100の主表面で流路が定められ、パッキン200に第2の溝204が設けられ、基板100とパッキン200との接合面の面積が低減されている。標的核酸を含む試料は、ピペット等の器具を用いて、手動で核酸検出カセットに注入する。その際、試料は、開口部218にピペット等を装着し、貫通孔214を通して第1の溝202に注入する。薬液の送液は、次の手順により、核酸検出装置内で自動的に行う。送入ポート208は、ノズル400を介して送液部13の上流側に接続され、送出ポート210は、ノズル402を介して送液部13の下流側に接続されている。送液部13の上流側から薬液及びエア等がパッキン200内に送入される。薬液は、開口部216、貫通孔212、第1の溝202、貫通孔214、開口部218の順に流通されて送液部13の下流側に送出される。
【0051】
カセット下蓋304には、その外表面から内表面にかけて温度調整用窓部310が貫通して形成されている。温度調整用窓部310には、そのカセット下蓋304の内表面側に基板100が配置されている。この温度調整用窓部310を介して温度制御部16が基板100裏面に接して配置され、流路内の試料が基板100を介してカセット下蓋304側から温度調整される。流路内に満たされる試料が温度制御部16によって温度制御されるため、基板100は、例えば、ガラス等の材料で薄肉に形成される。
【0052】
図14A及び図14Bは、夫々カセット上蓋302側及びカセット下蓋304側から見た核酸検出カセット11を分解して示している。カセット上蓋302及びカセット下蓋304は、図14A及び図14Bに示されるように、互いの内表面を対向し、且つ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に基板100及びパッキン200を挟んだ状態で固定される。
【0053】
カセット上蓋302には、外表面から内表面にかけて断面が略円形のノズル差込孔306及び308が貫通して形成されている。このノズル差込孔306及び308は、パッキン200の送入ポート208及び送出ポート210の外径よりも若干大きく設定されている。また、カセット上蓋302には、外表面から内表面にかけて断面が略長方形の電気コネクタ用ポート312及び314が貫通して形成されている。この電気コネクタ用ポート312及び314の各々には、電気コネクタ(図示せず)が装着されて測定部12に接続される。
【0054】
カセット上蓋302の内表面側には、図14Bに示されるように、所定の深さで且つ基板100の断面形状と略同一の断面形状を有する基板位置決め溝316が設けられている。この基板位置決め溝316の周囲は、内表面で囲まれている。また、この基板位置決め溝316は、ノズル差込孔306及び308、並びに電気コネクタ用ポート312及び314にオーバーラップして形成されている。基板100は、基板位置決め溝316に合わせて嵌め込まれ、カセット上蓋302に位置決め配置される。基板位置決め溝316の深さは、基板100の厚さと略同一となるように形成されている。
【0055】
また、カセット上蓋302の内表面側には、基板位置決め溝316にオーバーラップして、基板位置決め溝316よりもさらに深いパッキン位置決め溝318が設けられている。このパッキン位置決め溝318の周囲は、基板位置決め溝316で囲まれている。パッキン位置決め溝318は、ノズル差込孔306及び308にオーバーラップして形成されている。パッキン200は、パッキン位置決め溝318に合わせて嵌め込まれ、カセット上蓋302に位置決め配置される。パッキン位置決め溝318の基板位置決め溝316に対する深さは、カセット係合後、パッキン200と基板100とが密着接合される際のパッキンの「潰し代」を勘案した上で、パッキン本体206の厚さと略同一にもしくは若干浅くなるように形成されている。従って、パッキン位置決め溝318の内表面に対する深さは、パッキン本体206の厚さに基板100の厚さを加算した厚さと略同一にもしくは若干浅くなるように形成されている。
【0056】
カセット上蓋302には、その両側部にその内壁から外壁にかけて3つずつ計6つ係着用孔320が貫通形成されている。一方、カセット下蓋304には、その両側部の内表面上に爪状の係着用部材322が3つずつ計6つ突設されている。基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304の所定位置に配置された状態で係着用部材322は、係着用孔320に係着される。カセット上蓋302及びカセット下蓋304が係止されると、パッキン200及び基板100が所定位置に位置決め配置された状態で固定される。これにより、基板100及びパッキン200は、適切な押付け力で接合され、基板100とパッキン200との接合面においてシールされる。
【0057】
尚、確実に係止することが出来れば、係着用部材の個数は6つに限定されることはない。また、カセット上蓋302及びカセット下蓋304の止着方法は、パッキン200を基板100に圧接固定することができれば、図1に示したようなカセット下蓋304に形成された係着用部材がカセット上蓋302に形成された係着用孔に係着される場合に限定されない。例えば、カセット上蓋302の周縁部に複数のねじ孔が設けられ、これらカセット上蓋302のねじ孔に対応してカセット下蓋304に複数のねじ孔が設けられ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304が重ね合わさった状態でこれらねじ孔にねじが螺挿されてカセット上蓋302及びカセット下蓋304が止着されてもよい。
【0058】
基板100の主表面上には、核酸プローブが固定化される作用極を含む電極系102がマトリックス状に配置されている。作用極には、検出の目的とする核酸と選択的に反応する相補核酸を含む核酸プローブが固定化される。また、電極系102は、基板100とパッキン200とが接合された際に基板100上に定められる流路に沿って配列されている。これにより、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に位置決めされた状態で狭着固定された際には、第1の溝202及び基板100主表面により流路が形成され、且つその流路表面には、電極系102が露出した構成となる。
【0059】
電極系102は、作用極に固定化された核酸プローブに相補的に結合した核酸を電気化学反応により生じる電流を検出できるように構成される。基板100上に電極系102を設けずに核酸プローブが基板上に固定されてもよい。この場合、例えば、ハイブリダイゼーション等の工程の後に核酸検出カセットから基板100を取り出し、核酸プローブに結合した蛍光標識された核酸を光学的に検出することができる。
【0060】
この電極系102は、図示しない配線によりパッド104及び106の夫々に接続されている。このパッド104及び106は、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に狭着固定された際に、電気コネクタ用ポート312及び314の位置に配置されるように基板100の主表面上に設けられている。パッド104及び106には、電気コネクタ用ポートを介して電気コネクタ(図示せず)が接触配置される。これにより、電極系102は、パッド104及び106を介して電気コネクタに接続される。
【0061】
基板100において、電極系102が配列される領域は、電気化学反応によりハイブリダイゼーションの有無を検出するセンサ領域として機能し、パッド104及び106が配置される領域は、基板100から核酸検出カセット11外部に電気信号を取り出す為の電気的接触領域として機能する。これらセンサ領域及び電気的接触領域は、離間して配置されている。
【0062】
上述した核酸検出装置における核酸検出工程は、例えば、以下のように実施される。先ず、ピペット等の器具を用いて手動で、核酸検出カセット11に形成される流路に検査の対象となる核酸を含む試料が導入される。流路内において、作用極上に固定化された核酸プローブと試料中の標的核酸とがハイブリダイゼーションされる。ハイブリダイゼーション反応は、例えば、基板100の底面が50℃程度になるように温度制御部14が制御され、この状態を30分間保持されて実行される。ハイブリダイゼーション後には、基板の温度が25℃程度に保持され、試料が流路から導出され、エア、純水及び緩衝液を適宜切換ながら導入し、最終的には流路内を緩衝液にて充填した状態で、例えば、45℃程度で10分間放置されて核酸プローブに非特異的に吸着した不要な標的核酸の洗浄が実施される。流路から緩衝液が導出され、再度エア、純水、緩衝液及び挿入剤溶液を適宜切換ながら導入された後に、流路に挿入剤溶液が充填されて測定が実施される。
【0063】
このように、核酸検出カセット11には、試料、エア及び薬液の置換が次々に実施される。この際に、基板100及びパッキン200との接合部におけるシール性が悪い場合には、カセット内の送液精度が低下する。不要な試料が洗浄後にも接合部に残り、検出に悪影響を与え、また、薬液等が漏れ出して電気コネクタを短絡させ、装置が破壊される。さらに、サンプルが装置外に流出して周囲環境が汚染される。
【0064】
図13に示した核酸検出カセット11では、パッキン200に第2の溝204が設けられることから、基板100とパッキン200との接合において充分なシール性を保持することができる。
【0065】
また、本発明に係る微細流路装置は、上記構成例に限定されず、基板に弾性部材を接合して流路を形成するいかなる装置にも適応されることができる。また、特願2007−77915に開示されるように、核酸検出の前処理工程、例えば、抽出及び増幅工程からデータ解析までを一貫して実施する核酸検出装置等に適用することができる。この場合には、増幅後の核酸の流出を抑止する効果があるため、更に効果が顕著である。
【符号の説明】
【0066】
11…核酸検出カセット、12…測定部、13…送液部、14…温度調整部、15…制御部、16…コンピュータ、100…基板、102…電極系、104,106…パッド、200,220,230…パッキン、222…シール部、202,232…第1の溝、204,234…第2の溝、206…パッキン本体、208…送入ポート、210…送出ポート、212,214…貫通孔、216,218…開口部、300…カセット本体、302…カセット上蓋、304…カセット下蓋、306,308…ノズル差込孔、310…温度調整用窓部、312,314…コネクタ用ポート、316…基板位置決め溝、318…パッキン位置決め溝、320…係着用孔、322…係着用部材、400,402…ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動体を流通させる為の微細な流路が形成されている微細流路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では、細胞中の核に含まれる遺伝子配列による病気の診断或いは予防が実現されつつある。このような診断は、遺伝子診断と称される。遺伝子診断では、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥或いは変異を検出して病気の発症前若しくは極めて初期の段階で病気を診断する、或いは、病気が発症する時期等を予測することができる。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病や薬剤応答性等といった体質との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)が実現されつつある。
【0003】
また、バイオテロと称されるウイルスや細菌類を使用した犯罪が増加して社会的な脅威になっている。このような犯罪で使用されたウイルスや細菌類の遺伝子配列を特定することは、人命救助の観点から必須である。
【0004】
サンプル中の核酸を検出するシステムとして、DNAチップを用いた核酸検出装置の提案がなされている(特許文献1)。特許文献1に記載された核酸検出装置では、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて形成された流路にサンプルが流通され、流路内でDNAチップ上の核酸プローブと試料中の標的核酸とのハイブリダイゼーション反応及びその検出等が実施される。基板と弾性部材との接合では、弾性部材が基板に押付けられ、弾性部材の自己粘着性を利用して接合面におけるシール性が確保されている。しかしながら、このような接合方法では、基板及び弾性部材間の接合部からサンプルが流路外へ漏れ出す可能性がある。これは、サンプルに高い浸透性を有する界面活性剤が含有されている場合には、特に顕著となる。サンプルが外部に漏れ出すと、検出精度が低下する或いは周囲環境が汚染されることにより、その後の検出に対する信頼性を損ねる等の問題が生じる。
【0005】
基板と弾性部材とを、接着剤で接着して互いに接合する方法も考えられる。しかしながら、接着剤による接合では、サンプルに接着剤の成分が溶出することで核酸の検出を阻害し、精度が低下する問題がある。
【0006】
また、基板と弾性部材との接合部におけるシール性を向上する為により大きな押付け力で弾性部材を基板に接触させる構造も考えられる。このような構造では、基板の強度を充分に確保する必要があるが、装置の小型化や温度制御の必要性から、基板は、ガラスやシリコン等で薄肉に形成されることが望ましく、この大きな押付け力を与える接合方法でシール性を向上させるのは、困難である。
【0007】
このような問題は、上記のような核酸検出装置に限らず、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて基板上に形成された微細な流路に流動体を流通させ、流動体、即ち、液体或いは気体を取り扱う微細流路装置全般(特許文献2)に関わることである。
【0008】
上述のように、微細流路装置においては、流動体、即ち、液体又は気体が装置外に流出することがないように基板と弾性部材とが良好なシール性を備えて接合されることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−125777号公報
【特許文献2】特許第3877572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、流路を流れる流動体、即ち、液体又は気体が装置外に流出することがないように基板と弾性部材とが良好なシール性を備えて接合される微細流路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
基板と、
第1及び第2の面と、当該第2の面に設けられた第1の溝及び第2の溝と、を有し、かつ、前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第1の溝が前記基板上に物質流通のための流路を形成する弾性部材と、
前記弾性部材を前記基板に固定する固定具と、
を具備することを特徴とする微細流路装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板と弾性部材との接合におけるシール性を向上し、装置外への流動体の流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る微細流路装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示したパッキンを示す斜視図である。
【図3A】図1に示したパッキンを示す断面図である。
【図3B】図3Aに示したパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3C】図1に示したパッキンを示す底面図である。
【図4A】図3Aに示したパッキンにおける第1及び第2の溝の形状を説明する断面図である。
【図4B】図4Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】図3Aから図3Cに示したパッキンの変形例を一部拡大して示す拡大断面図である。
【図6A】本発明の実施の形態の比較例1に係る基板及びパッキンを示す断面図である。
【図6B】図6Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図6C】図6Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図7】図6Aに示した基板とパッキンとの接合面においてサンプルが流出する様子を説明する説明図である。
【図8A】本発明の実施の形態の比較例2に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図8B】図8Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図8C】図8Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図9A】本発明の実施の形態の比較例3に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図9B】図9Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図9C】図9Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図10A】本発明の実施の形態の比較例4に係る基板及びパッキンを模式的に示す断面図である。
【図10B】図10Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図10C】図10Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図11A】本発明の他の実施の形態に係るパッキンを模式的に示す断面図である。
【図11B】図11Aに示した基板及びパッキンの断面図の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図11C】図11Aに示したパッキンを模式的に示す底面図である。
【図12】図1に示した微細流路装置が適用される核酸検出装置を概略的に示すブロック図である。
【図13】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す断面図である。
【図14A】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す分解組立図である。
【図14B】図12に示した核酸検出カセットを模式的に示す分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る微細流路装置を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る微細流路装置の概略構成を示している。この微細流路装置は、基板100を備え、この基板100上に弾性部材、例えば、シリコンゴム等で形成されるパッキン200が載置されている。これら基板100及びパッキン200は、互いに対向配置された状態で、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着固定されている。パッキン200の裏面、即ち、基板100に接合される側の面には、第1の溝202及び第1の溝202に連通されず、第1の溝202から独立している第2の溝204が形成されている。パッキン200の裏面が基板100の表面に気密接合されることにより第1の溝202及び基板100の表面で形成される空間が流路に定められる。第2の溝204は、パッキン200と基板100との間の接合面、即ち、密着面の面積を低減するために設けられている。パッキン200には、流動体、即ち、液体又は気体を導入する送入ポート208及び導出する送出ポート210が設けられている。送入ポート208及び送出ポート210の各々は、パッキン200の主面に対して略垂直に延出された形状に形成されている。送入ポート208及び送出ポート210の各々には、先端に開口部216及び218が設けられており、開口部216及び218から第1の溝202に連通する貫通孔212及び214が形成されている。これら第1の溝202並びに貫通孔212及び214は、断面積が略等しくなるように形成されている。
【0016】
基板100とパッキン200との接合は、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に狭着され、パッキン200が基板100に押圧されて実現される。即ち、パッキン200の裏面と基板100の主表面とが圧接されて基板100及びパッキン200が固定されている。パッキン200は、弾性部材で形成されており、基板100とパッキン200との接合面では、弾性部材の自己粘着性を利用して基板100の主表面とパッキン200の裏面とが密着して接合され、流路に流通される流動体、即ち、液体又は気体に対してシール性が確保されている。基板100とパッキン200との接合面におけるシール性は、接合面に加わる圧力に応じて定まる。接合面における圧力は、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着されることによる基板100及びパッキン200間に印加される押付け力を接合面の面積で除算することで定められる。図1に示したパッキン200においては、パッキン200の裏面に第2の溝204が設けられることから、接合面、即ち、密着面の面積が低減されている。従って、基板100とパッキン200とは、比較的大きな圧力により密着接合され、接合面には高いシール性を与えることができる。
【0017】
カセット上蓋302及びカセット下蓋304からカセット本体300が構成される。このカセット本体300は、基板100とパッキン200とを接合して固定することができれば、いかなる形状に形成されてもよい。
【0018】
パッキン200の裏面であって第1の溝202及び第2の溝204が形成されている部分以外の他の部分(領域)は、平坦な面に形成され、基板100の主表面であってパッキンが配置される部分(領域)も平坦な面に形成されている。従って、基板100及びパッキン200がカセット本体に狭着固定される際には、基板100及びパッキン200は、平面同士が密着した状態で接合される。流路を定める溝は、パッキン200の裏面のみに形成される場合に限らず、基板100の主表面にも溝が形成されて流路が形成されてもよい。
【0019】
流動体、即ち、液体又は気体の流通は、図1に示した流路に送入ポート208を通って供給され、送出ポート210を通って排出される。このため、ノズル(図示せず)がカセット上蓋302に設けられたノズル差込孔306及び308の夫々に挿着される。これらノズルは、夫々送入ポート208及び送出ポート210に接合される。これらノズルは、例えば、流動体を供給及び排出するポンプ(図示せず)に接続され、送入ポート208を介して流路に流動体が送入され、送出ポートを介して流路から流動体が送出される。
【0020】
このような微細流路装置は、後に説明するように、例えば、複数のDNAプローブを固定化したDNAチップを用いた核酸検出装置で利用される。しかしながら、溝が設けられた弾性部材が基板に接合されて基板上に形成された微細な流路に流動体を流通させ、流動体、即ち、液体或いは気体を取り扱う微細流路装置全般にて利用可能である。核酸検出装置では、微細流路装置に形成される流路に検査の対象となる核酸を含む試料(検体溶液)が導入され、流路内に配置される作用極に固定化された核酸プローブと試料内の核酸との間において、温度制御下でハイブリダイゼーションを生じさせている。ハイブリダイゼーション後には、流路から試料が排出され、エア及び薬液(緩衝液や純水等)が適切な順序で導入されて流路が洗浄されたり、反応の制御が行われたりされる。その洗浄後に流路に挿入剤溶液が導入されて電気化学反応により生じた電流を検出して核酸検出工程が実施される。但し、基板100及びパッキン200は、着脱可能に接合されているため、ハイブリダイゼーション反応や洗浄工程後に基板100からパッキンを剥離して基板100が取り出されて外部装置で核酸を検出することもできる。
【0021】
図2は、パッキン200の一例を概略的に示している。図2では、流路を構成する第1の溝202並びに貫通孔212及び214が破線で示されている。パッキン200は、図2に示されるように、パッキン本体206並びに送入ポート208及び送出ポート210から構成される。パッキン本体206は、略長方形状の所定の厚さを有するプレートである。送入ポート208及び送出ポート210の各々は、パッキン200の主面上であって長手方向の両端付近に配置され、パッキン200の主面に対して略垂直に延出された略円筒形状に形成されている。送入ポート208及び送出ポート210の各々の先端は、開口され、各々の軸心には、貫通孔212及び214が設けられている。パッキン200の裏面には、送入ポート208の他方の開口、即ち、パッキン内の開口から送出ポート210の他方の開口、即ち、パッキン内の開口に亘ってジグザグに蛇行して延出されるように第1の溝202が形成されている。従って、この第1の溝202は、貫通孔212及び214に連通されている。
【0022】
より詳細には、この第1の溝202は、送入ポート208の基部側から送出ポート210の基部側に向けて延出され、送出ポート210の基部付近において所定の曲率で折り返されて再び送出ポート210の基部側から送入ポート208の基部側に向けて延出される。このように、第1の溝202は、送入ポート208の基部及び送出ポート210の基部間、即ち、パッキン200の長手方向に複数回蛇行した形状に形成されている。第1の溝202の折り返しには、所定の曲率が与えられていることから折り返しの部分或いは領域における流動体、即ち、液体又は気体の滞留を抑制することができる。
【0023】
図3Aは、パッキン200を短手方向に切断した断面を示している。また、図3Bは、図3Aに示される断面図の一部を拡大して示し、図3Cは、パッキン200の裏面を示している。パッキン200は、図3A及び図3Bに示されるように、その断面内において、第1の溝202の複数の断面部が所定の間隔だけ離間して配置形成され、隣接する第1の溝202の断面部間及び第1の溝202の形成領域の周囲には、第2の溝204が形成されている。第1の溝202は、その断面が略長方形状もしくは略台形状に形成され、第2の溝204は、その断面が略台形状に形成されている。図3Aにおいて、右側に位置する第1の溝202Aの断面では、手前側から奥側に、即ち、送入ポート208の形成位置側から送出ポートの形成位置側に向けて薬液が流通される場合、第1の溝202Aの左隣に位置する第1の溝202Bでは、第1の溝202Aとは逆方向、即ち、奥側から手前側に薬液が流通されることになる。同様に、第1の溝202C及び202Eでは、手前側から奥側に向けて薬液が流通され、第1の溝202Dでは、奥側から手前側に薬液が流通される。このように、図3Aに示したような流路に交差する方向に切断した断面において、隣接する第1の溝202同士では、薬液の流通方向は、逆向きになる。薬液の流通方向に対して垂直に切断された断面が流路の折り返し位置においても略一定の断面形状を有するように第1の溝202は、形成されている。このように、第1の溝202が流路に対して垂直に切断した断面がいずれの流路上でも略一定の断面形状を有するように形成されると、流動体の流通が均一になり、例えば、流路内での電気化学反応によって発生される電流等の検出における信頼性を向上することができる。
【0024】
第1の溝202の側壁は、基板上に形成される流路の流路壁として機能する。以下の説明においては、第1の溝202の側壁を流路壁と称する。図3Aにおいて、ある第1の溝202と隣り合う他の第1の溝202との間に位置する流路壁の厚さは、第1の溝202の溝幅と略同一に形成されている。この流路壁には、第1の溝202に連通しない第2の溝204が形成されている。第2の溝204の深さ(高さ)は、第1の溝202の深さに比較して小さく設定されることが望ましい。この第2の溝204は、図3Bに拡大して示されるように、その内壁がパッキン200の裏側から主面側にかけて先細りとなるテーパ形状に、第1の溝202に沿って延出されて形成されていることが望ましい。また、第2の溝204は、図3Cに示されるように、蛇行する第1の溝202間の領域のみならず、蛇行する第1の溝202が形成される領域の周囲に相当するパッキン200の裏面の周縁部においても第2の溝204が形成されていることが望ましい。このように、第2の溝204は、第1の溝202の周囲を所定の間隔だけ縁取るようにパッキン200の裏面全体に形成されている。このため、パッキン200は、その第1の溝202に沿って形成される所定の幅を有する平坦部分(図3Cにおいて斜線で示す領域)のみが基板100の主表面に接触されることになる。
【0025】
パッキン200の材質は、シリコンゴムのみならず、エラストマー、ウレタンゴム、フッ素系ゴム、その他ゴム・樹脂等でもよい。また、基板100は、ガラス基板に限らず、シリコン基板、セラミック基板、ガラスエポキシ基板等であってもよい。
【0026】
図4Aは、パッキン200が基板100に密着して接合された状態を示し、図4Bは、図4Aに示される断面図の一部を拡大して示している。第2の溝204は、図4A及び図4Bに示されるように、その溝高(溝の深さ)H2が第1の溝202の溝高H1よりも小さく、即ち、不等式H1>H2を満たすように設定される。流路方向に垂直に切断されたパッキン200の断面において、流路壁の壁幅L2は、第1の溝202の溝幅L1と略同一に設定される。第1の溝202及び第2の溝204間に形成される側壁は、裏面において常に所定の壁幅L23を有する。即ち、パッキン100を流路に対して垂直に切断したいずれの断面でも第1の溝202は、第2の溝204と所定の間隔だけ離間して形成されている。流路壁内に形成される第2の溝204においては、パッキン200の裏面側の溝幅L21は、主面側の溝幅L22よりも大きく設定される。第2の溝204を、隣接する第1の溝202間の中央に、しかも左右対称になるように配置した場合、基板100の主表面と接触する部分の距離L23は、流路壁の壁幅L2に対して、明らかに不等式L2>2×L23を満たす。流路壁内に第2の溝204が形成されない場合には、パッキン200と基板100との接合面の面積は、図4Aに示した断面付近を局所的に限定して考えた場合、第一次近似的には壁幅L2に比例した値を有する。一方、図4Aに示されるような流路壁に第2の溝204が形成される場合には、パッキン200と基板100との接合面の面積は、図4Aに示した断面付近を局所的に限定して考えた場合、第一次近似的には距離L23の2倍に比例した値を有する。従って、第2の溝204が形成される場合には、接合面の面積を大幅に低減することができる。
【0027】
また、第2の溝204の溝高H2は、比較的小さく設定されることが好ましい。流路壁の自立性は、第1の溝202及び第2の溝204間の壁幅L23並びに溝高H2の比、即ち、アスペクト比H2/L23に依存する。このアスペクト比は、値が小さいほど流路壁の自立性が高いことを示している。即ち、溝高H2が小さく設定されるほど流路壁の自立性が高くなる。従って、基板100とパッキン200との接合面の面積を低減しながら流路壁の自立性を保持するには、壁幅L23に応じて溝高H2を小さく設定すればよい。但し、この溝高H2は、基板100とパッキン200とが狭着固定された際にパッキン200が変形されて第2の溝204の上面が基板100に接触することがないように設定される必要がある。
【0028】
第1の溝202側の流路壁面が基板100の主表面(又は、パッキン200の裏面)となす角度θ1は、図4Bに示されるように、第2の溝204側の流路壁面が基板100の主表面(又は、パッキン200の裏面)となす角度θ2に対して、不等式θ1>θ2を満たすように設定されることが好ましい。この不等式を満たすように第1の溝202及び第2の溝204が形成されると、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に狭着固定される際に、流路壁が流路側に湾曲するように変形されるのを防止することができる。即ち、パッキン200が基板100に対して押圧された際に、流路壁は、角度θ1が減少する方向に変形されにくくなる。例えば、θ1=90°に設定した状態で、パッキン200を基板100に押付ける場合、θ1が減少される方向に流路壁が変形されると、流路壁が基板100と接触する接触部の付近には、非常に小さい空間が形成される。このため、流路に試料及び薬液等の溶液が流通される際にエアがこの空間に滞留する、或いは、この微小空間に毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する等の現象が生じ、微細流路装置における核酸等の検出における検出の精度が低下される虞がある。このため、流路に垂直な断面における流路の断面形状が単純な形状に保持されるように、第1の溝202側の流路壁面が基板100の主表面となす角度θ1が第2の溝204側の流路壁が基板となす角度θ2よりも大きく設定される。
【0029】
図5には、図3Aから図3Cに示されるパッキン200の変形例として、第1の溝232及び第2の溝234の断面が、台形状ではなく、湾曲した形状に形成されるパッキン230が一部拡大されて示されている。このパッキン230では、流路壁の壁面が曲面状に形成されている。この場合、図5に示されるように、第1の溝232側の壁面が基板100の主表面となす角度θ1は、第1の溝232の壁面が基板100の主表面に接する部分における仮想的な接面236と基板100の主表面とがなす角度を示す。また、同様に、第2の溝232側の流路壁が基板100となす角度θ2は、第2の溝234の壁面が基板100の主表面に接する部分における仮想的な接面238と基板100の主表面とがなす角度を示す。このようなパッキン230においても、θ1>θ2の関係が保持される。
【0030】
図1から図3Cに示したパッキン100は、例えば、パッキン寸法として第1の溝202の溝高H1を0.7mm、第2の溝204の溝高H2を0.2mm、第1の溝202の溝幅L1を1mm、第1の溝202間の流路壁の壁幅L2を1mm、基板100の主表面と接触する部分の距離L23を0.3mm、第1の溝202側の流路壁が基板100となす角度θ1を90°、第2の溝204側の流路壁が基板100となす角度θ2を60°に設定し、硬度70°のシリコンゴムで作製される。但し、このパッキン寸法は、一例であり、パッキン200は、この寸法に限定されず、上記の各種条件を満たせばいかなる寸法に形成されてもよい。但し、角度θ1は、45°から90°の範囲で設定されるのが好ましいが、必ずしも限定される訳ではない。
【0031】
次に、本発明の実施の形態の比較例としていくつかのパッキンを例示して以下に説明する。図6Aから図11Cにおいて、図1から図3Cに示した符号と同一符号は、同一箇所或いは同一構成を示すものとして、その詳細な説明は省略する。
【0032】
図6Aは、比較例1として、従来から知られているパッキン250の断面を示している。また、図6Bは、図6Aのパッキン250の断面図の一部を拡大して示し、図6Cは、このパッキン250の裏面を示している。このパッキン250は、図6Aから図6Cに示されるように、第2の溝204が形成されないこと以外は、図3Aから図3Cに示したパッキン200と同一に構成されている。比較例1に係るパッキン250の典型的な断面寸法は、図6Bに示されるように、第1の溝高h1は0.7mmに、第1の溝の溝幅w1並びに流路壁の壁幅l1は1mmに設定される。このパッキン250は、平坦に形成される裏面が基板100の表面にある押付け力を印加されて接合される。前述したように、パッキン250と基板100との接合面に加わる圧力は、パッキン250が基板100に押付けられる押付け力を接合面の面積で除算して定められることから、図6Aに示したパッキン250は、図3Aに示したパッキン200に比較してシール性が弱い。このようなパッキン250では、流路内に溶液等が充填され、加熱保持されると、図7に示されるように、パッキン250と基板100との接合部分から矢印方向に薬液等の溶液が漏れ出す虞がある。特に、高い浸透性を有する界面活性剤を含有する溶液が流路に流通される場合には、溶液が漏れ出しやすくなる。
【0033】
パッキン250と基板100との接合部分からの溶液の漏れを回避する為のいくつかの対策を説明する。第1の対策としては、パッキン250と基板100とを接着剤等にて接着する方法が考えられる。しかしながら、接着剤を構成する成分が溶液中に溶出する虞がある。例えば、核酸検出装置では、正確な核酸検出の為には、厳密な試料及び試薬の組成管理が必須となる。従って、この方法は、検出精度の観点から好ましくない。
【0034】
また、第2の対策としては、パッキン250を基板100に押付ける力を増加させる方法が挙げられる。核酸検出カセットように、図1に示した微細流路装置を使い捨てにする必要がある場合には、コストを抑える為に、カセット上蓋302及びカセット下蓋304は、プラスチック材料で形成され、基板100は、ガラス基板が使用される。基板100及びパッキン250に印加される押付け力は、カセット上蓋302及びカセット下蓋304が係合されてパッキン250及びガラス基板100を挟み込むことによって生じる。従って、押付け力を増加させるには、カセット上蓋302、カセット下蓋304及びガラス基板100に充分に高い強度を確保する必要がある。これは、カセット上蓋302及びカセット下蓋304の構造を強固する、及び、ガラス基板100を厚肉に形成することで実現されることができる。しかしながら、核酸検出装置のように、流路内の液体を充填し、この液体の温度を制御するような場合、ガラス基板100を厚肉に形成すると、温度制御の精度が低下する虞がある。即ち、温度制御の観点から、基板100は、薄肉に形成されることが好ましく、温度制御の精度を維持したまま基板100の充分な強度を確保することは困難である。
【0035】
さらに、第3の対策としては、カセット上蓋302とカセット下蓋304との止着による押付け力を変えることなく、パッキン250及び基板100の接合面における圧力を増加させる方法が挙げられる。この方法では、上述したように、パッキン250及び基板100の接合面における圧力を増加する為に接合面の面積を縮小すればよい。図8Aから図8Cには、本発明の比較例2に係るパッキン260が示されている。このパッキン260では、図8Aから図8Cに示されるように、比較例1と比較して、流路壁の壁幅l2が縮小され、第1の溝の溝高h2及び溝幅w2が同一に保たれている。パッキン260は、図6Aから図6Cに示したパッキン250と比較して細長く、即ち、パッキン260の短手方向の幅が狭く形成されている。流路壁の壁幅l2が低減されると、パッキン260と基板100との接合面の面積が縮小され、この面積に反比例して接合面における圧力が増加される。従って、シール性を向上することができる。しかしながら、パッキン260は、シリコンゴム等の弾性部材で形成されることから、流路壁の壁幅が小さく設定されると、流路壁が自立することが困難である。従って、流路壁の壁幅が単純に縮小されたパッキン260では、流路壁が変形されて流路の断面形状を略一定の形状に保持することができない。その場合、上記に記述したように、パッキン260が基板100に対して押圧された際に、θ1が減少される方向に流路壁が変形されると、流路壁が基板100と接触する接触部の付近には、非常に小さい空間が形成される。このため、流路に試料及び薬液等の溶液が流通される際にエアがこの空間に滞留する、或いは、この微小空間に毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する等の現象が生じ、微細流路装置における核酸等の検出における検出の精度が低下される虞がある。
【0036】
さらにまた、第4の対策として、溝間の壁部分の自立性を確保する為に、比較例2に係るパッキン260における溝高h2を小さくする方法が挙げられる。図9Aから図9Cには、本発明の実施の形態の比較例3に係るパッキン270が示されている。比較例3では、図9Aから図9Cに示されるように、比較例2に係るパッキン260と比較して、溝高h3が縮小され、第1の溝202の溝幅w3及び流路壁の壁幅l3が同一に保たれている。流路壁のアスペクト比が低減され、流路壁の強度が増加されている。これにより、パッキン270と基板100との接合面の面積を低減し、流路を形成する壁部分の強度が充分に保持されたパッキン270が実現される。しかしながら、このような構成では、流路を定める溝の断面積が低減され、流路内に流通される試料中の核酸濃度又は試薬中の成分濃度の濃度分布に影響が顕著に現れ、検出精度(検出信号の均一性)が低下する。
【0037】
また、第5の対策としては、パッキンと基板100との接触を面接触から線接触に変更する方法が考えられる。この方法は、比較例1に係るパッキン250の裏面に凸形状(略半円形状)のシール部282が設けられて実現される。図10Aから図10Cには、比較例4として、第1の溝202の側壁における基板100との接合面の両端部に小型のシール部282が形成されたパッキン280が示されている。シール部282は、図10Aから図10Cに示されるように、第2の溝204を定め、パッキン280に一体形成されている。このような構成では、パッキン280は、基板100に線接触されることからシール性が向上される。しかしながら、流路であってシール部282及び基板100の主表面で定められる領域284に非常に小さい空間が形成される。これにより、流路に溶液が流通される際に、この微小空間部分に微細な気泡が滞留し、流路内に満たされた溶液の温度制御が実施され、流路内の温度が上昇されると、このような気泡が集合して大きな気泡になり、この気泡により検出精度が低下される虞がある。もしくは、毛細管現象による不本意な溶液の移動が発生する虞もある。このように、基板100とパッキン200との接合面におけるシール性能を向上させる為であっても、流路の断面形状に微小領域が形成されることは、検出精度の観点から好ましくない。
【0038】
本発明の実施の形態に係る微細流路装置では、上述した比較例1から比較例4に示した問題を回避することができ、基板100とパッキン200との接合に接着剤を不使用で、且つ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304による押付け力を増加させることなく、流路を形成する基板100及びパッキン200間においてシール性の高い接合が実現されている。本発明の実施の形態に係るパッキン200は、図3Aから図3Cに示されるように、パッキン200の裏面に流路を定める第1の溝202の周囲にこの第1の溝202から所定の幅だけ残して第2の溝204が形成される。パッキン200が基板100に押付け固定された際に、基板100及びパッキン200の接合面でのシールが確保される。また、流路に沿って垂直な断面において、流路が単純な断面形状に保持され、断面形状が常に略一定に保持される。
【0039】
以上のように、本発明の実施の形態に係る微細流路装置においては、基板100とパッキン200との接合におけるシール性能が良く、試料及び薬液等が装置外への漏れ出しを防止することができる。
【0040】
尚、パッキン200に設けられる第1の溝202は、基板100上に蛇行して1つの流路を定めるように形成される場合に限らず、複数の流路を定めるように複数個形成されてもよい。また、第1の溝202は、流路を分岐するように、或いは、流路が循環するように形成されてもよく、用途に応じてその形状を適切に変更することができる。これらの場合にも、第2の溝204は、第1の溝202及び第2の溝204間の流路壁が自立性を有するように形成される。
【0041】
また、貫通孔212及び214並びに第1の溝202は、断面形状、断面積が略等しい場合を説明したがこれに限定されない。例えば、核酸検出装置では、貫通孔212及び214並びに第1の溝202にかけて最も細い部分の断面積に対して最も太い部分の断面積が約2倍程度以内に形成されることが好ましい。
【0042】
また、送入ポート208及び送出ポート210は、必ずしもパッキン本体206の主面に対して垂直に形成されている必要はなく、例えば、主面に対して所定の角度だけ傾斜させて形成されていてもよい。また、パッキン本体206主表面に対して垂直に設けられ、その形成位置途中で折れ曲がり、パッキン本体206主表面に対して垂直でない方向に延出されて形成されてもよい。
【0043】
図11Aから図11Cには、本発明の他の実施の形態に係るパッキン220が示されている。このパッキン220には、図3Aから図3Cに示したパッキン200の裏面の外周部に土手状のシール部222がさらに設けられている。シール部222は、図11A及び図11Bに示されるように、パッキン220の裏面の外周部に形成された第2の溝204から基板100側に向かって凸形状に、流路壁と同一の高さに形成されている。即ち、図11A及び図11Bに示した断面においては、シール部222は、第2の溝204から基板100側に向けて湾曲した形状に形成され、基板100に点接触される。また、シール部222は、図11Cに示されるように、パッキン220の裏面の外周部に環状に形成されている。従って、基板100及び弾性部材220が接合される際には、シール部222が基板100の主表面に環状に線接触される。パッキン220がこのような形状に形成されると、流路は、流路壁による面シールに加え、基板100に形成される流路の周囲において線シールで封止される。これにより、第2の溝204及びパッキン100の表面で規定される空間は、閉空間となる。この場合、万一溶液が流路壁と基板100との接合部からリークしたとしても、溶液を閉空間内に留めることができる。従って、基板100とパッキン220との接合におけるシール性能をさらに向上することができる。
【0044】
また、このシール部222は、微細流路装置を組み立てる際に、基板100に対するパッキン220の傾きを補正するガイドとして機能し、従って、組み立てを容易にすることができる。
【0045】
図1に示した微細流路装置は、例えば、核酸検出装置に装着される核酸検出カセットに適用される。以下に、本発明の実施の形態に係る微細流路装置の一例として、図12から図14Bを参照して核酸検出装置を説明する。図12から図14Bにおいて、図1から図3Cに示した符号と同様の符号を同一部分、同一箇所に付してその説明を省略する。
【0046】
図12は、本発明の実施の形態に係る核酸検出カセット(微細流路装置)11を装着した核酸検出装置の概略構成を示している。この核酸検出装置は、図12に示されるように、核酸を検出するセンサ領域としての流路が形成される核酸検出カセット11を装着して使用される。また、この核酸検出装置は、核酸検出カセット11に電気的に接続される測定部12、核酸検出カセット11に設けられた流路に物理的に接続される送液部13、及び核酸検出カセット11の温度を制御する温度制御部14を備えている。
【0047】
これら測定部12、送液部13及び温度調整部14は、制御部15により制御される。制御部15は、コンピュータ16に電気的に接続され、コンピュータ16に格納されたプログラムに従って制御される。
【0048】
送液部13は、核酸検出カセット11に供給する緩衝液、純水及び挿入剤溶液等の薬液を保持する複数の供給源、エアを供給するエア供給源を備える。さらに、核酸検出カセットから排出される試料及び薬液等を保持する廃液チャンバを備えている。また、エアや溶液を核酸検出カセット11に供給し、試料及び溶液、エアを核酸検出カセット11から排出するためのポンプ、複数の溶液やエアを切り替えるためのバルブ等も備えている。
【0049】
図12に示した核酸検出装置は、核酸検出カセット11において、試料(液体検体)に含まれる核酸をハイブリダイゼーションさせ、この反応の有無を緩衝液及び挿入剤溶液導入後にモニタリングすることにより、試料中に検出の対象となる標的核酸が含まれているか否かを判断する。
【0050】
この核酸検出カセットは、図13に示されるように、基板100及びパッキン200を備え、基板100及びパッキン200が接合されて基板上に流路が形成される。図13に示されるパッキン200は、図1から図3Cに示したパッキン200と同一の構成に形成されている。基板100上には、パッキン200に設けられた第1の溝202及び基板100の主表面で流路が定められ、パッキン200に第2の溝204が設けられ、基板100とパッキン200との接合面の面積が低減されている。標的核酸を含む試料は、ピペット等の器具を用いて、手動で核酸検出カセットに注入する。その際、試料は、開口部218にピペット等を装着し、貫通孔214を通して第1の溝202に注入する。薬液の送液は、次の手順により、核酸検出装置内で自動的に行う。送入ポート208は、ノズル400を介して送液部13の上流側に接続され、送出ポート210は、ノズル402を介して送液部13の下流側に接続されている。送液部13の上流側から薬液及びエア等がパッキン200内に送入される。薬液は、開口部216、貫通孔212、第1の溝202、貫通孔214、開口部218の順に流通されて送液部13の下流側に送出される。
【0051】
カセット下蓋304には、その外表面から内表面にかけて温度調整用窓部310が貫通して形成されている。温度調整用窓部310には、そのカセット下蓋304の内表面側に基板100が配置されている。この温度調整用窓部310を介して温度制御部16が基板100裏面に接して配置され、流路内の試料が基板100を介してカセット下蓋304側から温度調整される。流路内に満たされる試料が温度制御部16によって温度制御されるため、基板100は、例えば、ガラス等の材料で薄肉に形成される。
【0052】
図14A及び図14Bは、夫々カセット上蓋302側及びカセット下蓋304側から見た核酸検出カセット11を分解して示している。カセット上蓋302及びカセット下蓋304は、図14A及び図14Bに示されるように、互いの内表面を対向し、且つ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304間に基板100及びパッキン200を挟んだ状態で固定される。
【0053】
カセット上蓋302には、外表面から内表面にかけて断面が略円形のノズル差込孔306及び308が貫通して形成されている。このノズル差込孔306及び308は、パッキン200の送入ポート208及び送出ポート210の外径よりも若干大きく設定されている。また、カセット上蓋302には、外表面から内表面にかけて断面が略長方形の電気コネクタ用ポート312及び314が貫通して形成されている。この電気コネクタ用ポート312及び314の各々には、電気コネクタ(図示せず)が装着されて測定部12に接続される。
【0054】
カセット上蓋302の内表面側には、図14Bに示されるように、所定の深さで且つ基板100の断面形状と略同一の断面形状を有する基板位置決め溝316が設けられている。この基板位置決め溝316の周囲は、内表面で囲まれている。また、この基板位置決め溝316は、ノズル差込孔306及び308、並びに電気コネクタ用ポート312及び314にオーバーラップして形成されている。基板100は、基板位置決め溝316に合わせて嵌め込まれ、カセット上蓋302に位置決め配置される。基板位置決め溝316の深さは、基板100の厚さと略同一となるように形成されている。
【0055】
また、カセット上蓋302の内表面側には、基板位置決め溝316にオーバーラップして、基板位置決め溝316よりもさらに深いパッキン位置決め溝318が設けられている。このパッキン位置決め溝318の周囲は、基板位置決め溝316で囲まれている。パッキン位置決め溝318は、ノズル差込孔306及び308にオーバーラップして形成されている。パッキン200は、パッキン位置決め溝318に合わせて嵌め込まれ、カセット上蓋302に位置決め配置される。パッキン位置決め溝318の基板位置決め溝316に対する深さは、カセット係合後、パッキン200と基板100とが密着接合される際のパッキンの「潰し代」を勘案した上で、パッキン本体206の厚さと略同一にもしくは若干浅くなるように形成されている。従って、パッキン位置決め溝318の内表面に対する深さは、パッキン本体206の厚さに基板100の厚さを加算した厚さと略同一にもしくは若干浅くなるように形成されている。
【0056】
カセット上蓋302には、その両側部にその内壁から外壁にかけて3つずつ計6つ係着用孔320が貫通形成されている。一方、カセット下蓋304には、その両側部の内表面上に爪状の係着用部材322が3つずつ計6つ突設されている。基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304の所定位置に配置された状態で係着用部材322は、係着用孔320に係着される。カセット上蓋302及びカセット下蓋304が係止されると、パッキン200及び基板100が所定位置に位置決め配置された状態で固定される。これにより、基板100及びパッキン200は、適切な押付け力で接合され、基板100とパッキン200との接合面においてシールされる。
【0057】
尚、確実に係止することが出来れば、係着用部材の個数は6つに限定されることはない。また、カセット上蓋302及びカセット下蓋304の止着方法は、パッキン200を基板100に圧接固定することができれば、図1に示したようなカセット下蓋304に形成された係着用部材がカセット上蓋302に形成された係着用孔に係着される場合に限定されない。例えば、カセット上蓋302の周縁部に複数のねじ孔が設けられ、これらカセット上蓋302のねじ孔に対応してカセット下蓋304に複数のねじ孔が設けられ、カセット上蓋302及びカセット下蓋304が重ね合わさった状態でこれらねじ孔にねじが螺挿されてカセット上蓋302及びカセット下蓋304が止着されてもよい。
【0058】
基板100の主表面上には、核酸プローブが固定化される作用極を含む電極系102がマトリックス状に配置されている。作用極には、検出の目的とする核酸と選択的に反応する相補核酸を含む核酸プローブが固定化される。また、電極系102は、基板100とパッキン200とが接合された際に基板100上に定められる流路に沿って配列されている。これにより、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に位置決めされた状態で狭着固定された際には、第1の溝202及び基板100主表面により流路が形成され、且つその流路表面には、電極系102が露出した構成となる。
【0059】
電極系102は、作用極に固定化された核酸プローブに相補的に結合した核酸を電気化学反応により生じる電流を検出できるように構成される。基板100上に電極系102を設けずに核酸プローブが基板上に固定されてもよい。この場合、例えば、ハイブリダイゼーション等の工程の後に核酸検出カセットから基板100を取り出し、核酸プローブに結合した蛍光標識された核酸を光学的に検出することができる。
【0060】
この電極系102は、図示しない配線によりパッド104及び106の夫々に接続されている。このパッド104及び106は、基板100及びパッキン200がカセット上蓋302及びカセット下蓋304に狭着固定された際に、電気コネクタ用ポート312及び314の位置に配置されるように基板100の主表面上に設けられている。パッド104及び106には、電気コネクタ用ポートを介して電気コネクタ(図示せず)が接触配置される。これにより、電極系102は、パッド104及び106を介して電気コネクタに接続される。
【0061】
基板100において、電極系102が配列される領域は、電気化学反応によりハイブリダイゼーションの有無を検出するセンサ領域として機能し、パッド104及び106が配置される領域は、基板100から核酸検出カセット11外部に電気信号を取り出す為の電気的接触領域として機能する。これらセンサ領域及び電気的接触領域は、離間して配置されている。
【0062】
上述した核酸検出装置における核酸検出工程は、例えば、以下のように実施される。先ず、ピペット等の器具を用いて手動で、核酸検出カセット11に形成される流路に検査の対象となる核酸を含む試料が導入される。流路内において、作用極上に固定化された核酸プローブと試料中の標的核酸とがハイブリダイゼーションされる。ハイブリダイゼーション反応は、例えば、基板100の底面が50℃程度になるように温度制御部14が制御され、この状態を30分間保持されて実行される。ハイブリダイゼーション後には、基板の温度が25℃程度に保持され、試料が流路から導出され、エア、純水及び緩衝液を適宜切換ながら導入し、最終的には流路内を緩衝液にて充填した状態で、例えば、45℃程度で10分間放置されて核酸プローブに非特異的に吸着した不要な標的核酸の洗浄が実施される。流路から緩衝液が導出され、再度エア、純水、緩衝液及び挿入剤溶液を適宜切換ながら導入された後に、流路に挿入剤溶液が充填されて測定が実施される。
【0063】
このように、核酸検出カセット11には、試料、エア及び薬液の置換が次々に実施される。この際に、基板100及びパッキン200との接合部におけるシール性が悪い場合には、カセット内の送液精度が低下する。不要な試料が洗浄後にも接合部に残り、検出に悪影響を与え、また、薬液等が漏れ出して電気コネクタを短絡させ、装置が破壊される。さらに、サンプルが装置外に流出して周囲環境が汚染される。
【0064】
図13に示した核酸検出カセット11では、パッキン200に第2の溝204が設けられることから、基板100とパッキン200との接合において充分なシール性を保持することができる。
【0065】
また、本発明に係る微細流路装置は、上記構成例に限定されず、基板に弾性部材を接合して流路を形成するいかなる装置にも適応されることができる。また、特願2007−77915に開示されるように、核酸検出の前処理工程、例えば、抽出及び増幅工程からデータ解析までを一貫して実施する核酸検出装置等に適用することができる。この場合には、増幅後の核酸の流出を抑止する効果があるため、更に効果が顕著である。
【符号の説明】
【0066】
11…核酸検出カセット、12…測定部、13…送液部、14…温度調整部、15…制御部、16…コンピュータ、100…基板、102…電極系、104,106…パッド、200,220,230…パッキン、222…シール部、202,232…第1の溝、204,234…第2の溝、206…パッキン本体、208…送入ポート、210…送出ポート、212,214…貫通孔、216,218…開口部、300…カセット本体、302…カセット上蓋、304…カセット下蓋、306,308…ノズル差込孔、310…温度調整用窓部、312,314…コネクタ用ポート、316…基板位置決め溝、318…パッキン位置決め溝、320…係着用孔、322…係着用部材、400,402…ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1及び第2の面と、当該第2の面に設けられた第1の溝及び第2の溝と、を有し、かつ、前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第1の溝が前記基板上に物質流通のための流路を形成する弾性部材と、
前記弾性部材を前記基板に固定する固定具と、
を具備することを特徴とする微細流路装置。
【請求項2】
前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第2の溝が前記基板上に前記流路とは連通しない空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第1の面と第2の面と貫通する第1の貫通孔及び第2の貫通孔を有し、前記第1及び第2の貫通孔は各々前記流路に連通し、物質の出口及び/又は入口として機能することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細流路装置。
【請求項4】
前記第1の溝は、前記第2の面から第1の面に向かう第1の溝高を有し、前記第2の溝は、前記第2の面から第1の面に向かう第2の溝高を有し、前記第2の溝高が前記第1の溝高より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の微細流路装置。
【請求項5】
前記第1の溝は、第1の壁面を有し、前記第2の溝は、第2の壁面を有し、前記第1の壁面と前記第2の面とがなす前記第1の溝側の第1の傾斜角度が前記第2の側壁と前記第2の面とがなす前記第2の溝側の第2の傾斜角度より大きいことを特徴とする請求項2又は請求項5に記載の微細流路装置。
【請求項6】
前記弾性部材を前記流路に交差する方向に切断した断面内における隣接する前記流路では互いに逆方向に流動体が流通されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の微細流路装置。
【請求項7】
前記第1の溝は、前記流路に対して垂直に切断した断面がいずれの前記流路上でも略同一の断面形状に形成されることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の微細流路装置。
【請求項8】
前記断面形状は、略台形状であることを特徴とする請求項7に記載の微細流路装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記第2の面の外周部の前記第2の溝の周辺領域にシール部が一体形成され、前記基板及び前記弾性部材が固定される際には、前記シール部が前記基板に環状に線接触されることを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【請求項10】
前記第2の溝は、前記第1の溝と所定間隔だけ離間して形成されることを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【請求項1】
基板と、
第1及び第2の面と、当該第2の面に設けられた第1の溝及び第2の溝と、を有し、かつ、前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第1の溝が前記基板上に物質流通のための流路を形成する弾性部材と、
前記弾性部材を前記基板に固定する固定具と、
を具備することを特徴とする微細流路装置。
【請求項2】
前記第2の面が前記基板上に接触して配置されて、前記第2の溝が前記基板上に前記流路とは連通しない空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第1の面と第2の面と貫通する第1の貫通孔及び第2の貫通孔を有し、前記第1及び第2の貫通孔は各々前記流路に連通し、物質の出口及び/又は入口として機能することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微細流路装置。
【請求項4】
前記第1の溝は、前記第2の面から第1の面に向かう第1の溝高を有し、前記第2の溝は、前記第2の面から第1の面に向かう第2の溝高を有し、前記第2の溝高が前記第1の溝高より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の微細流路装置。
【請求項5】
前記第1の溝は、第1の壁面を有し、前記第2の溝は、第2の壁面を有し、前記第1の壁面と前記第2の面とがなす前記第1の溝側の第1の傾斜角度が前記第2の側壁と前記第2の面とがなす前記第2の溝側の第2の傾斜角度より大きいことを特徴とする請求項2又は請求項5に記載の微細流路装置。
【請求項6】
前記弾性部材を前記流路に交差する方向に切断した断面内における隣接する前記流路では互いに逆方向に流動体が流通されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の微細流路装置。
【請求項7】
前記第1の溝は、前記流路に対して垂直に切断した断面がいずれの前記流路上でも略同一の断面形状に形成されることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の微細流路装置。
【請求項8】
前記断面形状は、略台形状であることを特徴とする請求項7に記載の微細流路装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記第2の面の外周部の前記第2の溝の周辺領域にシール部が一体形成され、前記基板及び前記弾性部材が固定される際には、前記シール部が前記基板に環状に線接触されることを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【請求項10】
前記第2の溝は、前記第1の溝と所定間隔だけ離間して形成されることを特徴とする請求項1に記載の微細流路装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公開番号】特開2010−223716(P2010−223716A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70581(P2009−70581)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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