説明

微細金属粉末の製造方法及びこれを用いて製造した微細金属粉末

【課題】薄片状の微細金属粉末の製造方法及びこれを用いて製造した微細金属粉末を提供する。
【解決手段】ガラスまたは高分子物質よりなるベース基材上に所定の大きさ及び形状を有するパターン部を形成する段階と、パターン部に溶剤により溶解する高分子物質の分離層を形成する段階と、1層以上の金属膜を形成する段階と、分離層の溶解によりパターン部から金属膜を分離して所定の大きさ及び形状を有する、個別化された金属粒子を得る段階を経て薄片状の微細金属粉末を製造する。得られた金属粉30は金属層31、32が単層あるいは複層に、さらに金属酸化物層33を含め積層された多層構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細金属粉末の製造方法及びこれを用いて製造した微細金属粉末に関し、より詳細には、粒度分布が均一な薄片状の微細金属粉末の製造方法及びこれを用いて製造した微細金属粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の高機能化及び小型化傾向に伴い、電子製品に用いられる各種電子部品及び材料の軽薄短小化も急速に進んでいる。電子部品と電気的回路を構成する核心素材である導電性電極材料が、薄型、かつ電極接続性と伝導性に優れた電極材料である必要性が増加している。
【0003】
特に、セラミックとの同時焼成が要求されるチップ部品用内部電極の場合、セラミック層の薄層化及び高積層化により電極接続性が低下する問題が発生している。セラミックとの同時焼成過程におけるセラミックと電極材料との収縮率の差により、内部欠陥が増加し、電極接続性が低下して静電容量などの特性が低減する問題が発生している。
【0004】
最近、高機能性の電子部品を実現するために、既存の導電性電極材料の主成分として用いられている球状の金属粉末を、薄片状の金属粉末に変更しようとする試みがある。これは、薄片状の金属粉末を利用することにより、内部電極層の薄層化と電極の焼結収縮率を制御して電子部品の機能を向上させるためである。
【0005】
球状の金属粉末は、湿式法または気相法などで製造される。特に、電極材料用球状金属粉末の場合、液相還元法、水熱合成法、電気化学法、CVD法、及びRF−プラズマ法などを用いて製造される。
【0006】
しかし、金属粉末がさらに微粒化されることにより、粒子サイズ及び粒度分布が制御しにくくなっている。また、微粒の金属粉末を電極材料に用いる場合、セラミック材料との同時焼成時、焼結温度の低下と急激な焼結収縮が発生する虞がある。これらの問題点を解決するために、電極内に焼結を遅延させることができる微粒のセラミック粉末を分散するか、金属粒子の表面をコーティングする方法などが検討されている。
【0007】
また、上述したように、薄片状の金属粉末を使用すると、電極層の薄層化が可能になり、電極の接続性を向上させることができる。
【0008】
薄片状の金属粉末は、ミーリング工法による機械的粉砕方法により製造されている。ミーリング工法とは、一定の粒度分布を有する球状の金属粉末に機械的エネルギーを加えて球状の粉末をフレーク化することである。しかし、ミーリング工法により製造されたフレーク状の金属粉末はその形状及びサイズが不均一で、縦横比(aspect ratio)を大きくすることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2008−0003919号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0008068号明細書
【特許文献3】特開2004−084055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、粒度分布が均一な薄片状の微細金属粉末の製造方法及びこれを用いて製造した微細金属粉末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、ベース基材上に所定の大きさ及び形状を有するパターン部を形成する段階と、上記パターン部に金属膜を形成する段階と、上記パターン部から金属膜を分離して所定の大きさ及び形状を有する、個別化された金属粒子を得る段階と、を含む微細金属粉末の製造方法を提供する。
【0012】
上記微細金属粉末の製造方法は、上記金属膜を形成する段階の前に上記パターン部上に分離層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0013】
上記分離層は、上記金属膜の厚さよりも厚く形成され、上記分離層は、上記ベース基材のパターン部を変形させず、上記金属膜との反応性が低い物質で形成されることができる。
【0014】
上記分離層は、高分子物質で形成されることができる。
【0015】
上記金属膜を分離する段階は、上記分離層が溶解される溶媒を用いて上記分離層を除去して行われる。
【0016】
上記微細金属粉末の製造方法は、上記金属膜上に分離層を形成する段階及び上記分離層上に金属膜を形成する段階をさらに含み、上記分離層及び上記金属膜の形成工程は1回以上行われてもよい。
【0017】
上記微細金属粉末の製造方法は、上記金属膜上に他の金属膜を1層以上形成する段階をさらに含み、上記個別化された金属粒子は多層構造を有することができる。
【0018】
上記微細金属粉末の製造方法は、上記金属膜上に金属酸化物層を形成する段階をさらに含み、上記個別化された金属粒子は多層構造を有することができる。
【0019】
上記ベース基材は、ガラスまたは高分子物質からなり、上記パターン部は、所定の大きさ及び形状を有する凹部及び凸部で構成されることができる。
【0020】
上記微細金属粉末の製造方法において、上記微細金属粉末は、粒度分布が平均粒径(D50)の±20%範囲になるように製造されることができる。
【0021】
上記微細金属粉末の製造方法において、上記金属粒子は、厚さに対する粒径の比(粒径/厚さ)を20〜100であることができる。
【0022】
本発明の他の実施形態は、所定の大きさ及び形状を有する金属粒子が集合されたものであって、粒度分布が平均粒径(D50)の±20%範囲にある微細金属粉末を提供する。
【0023】
上記金属粒子は、厚さに対する粒径の比(粒径/厚さ)が20〜100であることができる。
【0024】
上記金属粒子は、粒径が1〜10μmであることができる。
【0025】
上記金属粒子は、厚さが10〜100nmであることができる。
【0026】
上記金属粒子は、多面体または円盤状の形状を有することができる。
【0027】
上記金属粒子は、複数の金属層が積層された多層構造であるか、複数の金属層及び複数の金属酸化物層が積層された多層構造であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明による微細金属粉末は、均一な形状及び均一な粒度分布を有し、厚さに対する粒径の比が大きい薄片形状を有する。したがって、本発明による微細金属粉末を用いて導電性ペーストや電磁波遮蔽材を製造する場合、電極接続性の高い電極膜を形成することができる。そのため、同時焼成が要求される積層セラミックキャパシタ、積層セラミックインダクタにおいて、内部電極をさらに薄く形成することができる。また、高温収縮により電極の接続性が低下する問題を最小化することができる。
【0029】
本発明による微細金属粉末の製造方法は、パターンを用いて微細金属粉末を形成するため、微細金属粉末の形状及び大きさを自由に制御することができる。したがって、特殊な形状の金属粉末も容易に製造することができる。
【0030】
また、パターンから個別化された金属粒子を分離する方法を使用することにより、金属粒子同士が塊まって凝集体を形成することなく、金属粒子の大きさや形状を均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による微細金属粉末を撮影した電子走査顕微鏡写真(SEM、scanning electron microscope)である。
【図3】本発明の他の実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明のまた他の実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図である。
【図5a】本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。
【図5b】本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。
【図5c】本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。
【図6】本発明の他の実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が以下で説明する実施形態により限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該分野で通常の知識を有する者に、本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。従って、図面に示された構成要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することがあり、図面において同一の符号で表示される構成要素は同一の構成要素を指す。
【0033】
図1は、本発明の一実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施例による微細金属粉末を撮影した電子走査顕微鏡写真(SEM、scanning electron microscope)である。
【0034】
図1及び図2を参照すると、本実施例による微細金属粉末は薄片の金属粒子30からなる。
【0035】
本実施例で各金属粒子30は直方体形状を有するものとして示されているが、本発明は、これに限定されず、円盤形、多面体形など多様な形状を有してもよい。
【0036】
本実施例によれば、微細金属粉末は、所定の大きさ及び形状を有する金属粒子30が集合されたものであって、微細金属粉末をなす金属粒子は、その形状及び大きさが均一であるという特徴を有する。これについては後述する微細金属粉末の製造方法で詳細に説明する。
【0037】
本実施例で金属粒子30の粒径wは1〜10μmであることができる。金属粒子の粒径は、表面積が最も大きい面における最も長い長さを基準とする。
【0038】
上記金属粒子30は、厚さtに対する粒径wの比が大きい薄片状であることができる。上記厚さに対する粒径の比(w/t)は20〜100であることができる。上記金属粒子30の厚さtは10〜100nmであることができる。
【0039】
本発明によれば、金属粒子の大きさの制御が可能で、微細金属粉末の粒度分布を均一にすることができる。本実施例によれば、微細金属粉末の粒度分布は平均粒径(D50)の±20%の範囲であることができる。上記微細金属粉末の平均粒径(D50)は1〜10μmであることができる。
【0040】
本実施例による微細金属粉末は、Ni、Cu、Ag、Au、Alなどの金属であることができる。
【0041】
本実施例による微細金属粉末は、導電性ペーストの製造に使用されることができる。上記導電性ペーストは、電子回路の配線材料や電磁波遮蔽材として使用されることができる。また、積層セラミックキャパシタ(MLCC、Multilayer Ceramic Capacitor)、積層セラミックインダクタなどの内部電極として使用されることができる。
【0042】
本実施例による微細金属粉末は、薄片状に形成できるため、伝導性が低下されず、電極の接続性に優れる。また、セラミック層との同時焼成が必要な電子部品に適用される場合、薄層の電極層を形成することができ、焼結収縮率の制御により電子部品の容量を確保することができる。
【0043】
図3は、本発明の他の実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図である。上述した実施例と異なる構成要素を中心に説明し、同一の構成要素に対する詳しい説明は省略する。
【0044】
図3を参照すると、金属粒子は、複数の金属膜が積層された多層構造を有するものであって、第1金属層31及び上記第1金属層上に積層された第2金属層32を含む。
【0045】
図3には、2つの金属層が積層された形態を示したが、これに制限されず、2つ以上の金属層が積層された形態であってもよい。
【0046】
上記第1金属層31または第2金属層32は、Ni、Cu、Ag、Au、Alなどの金属で形成されることができる。
【0047】
上記第1金属層31と第2金属層32は、互いに異なる金属で形成され、各金属層は1つ以上の金属を含む合金で形成されることができる。
【0048】
上述したように、本実施例による微細金属粉末は、所定の大きさ及び形状を有する金属粒子30が集合されたものであって、微細金属粉末をなす金属粒子はその形状及び大きさが均一であるという特徴を有する。
【0049】
本実施例によれば、微細金属粉末の粒度分布は、平均粒径(D50)の±20%の範囲にあることができる。上記微細金属粉末の平均粒径(D50)は1〜10μmであることができる。
【0050】
本実施例で金属粒子30の粒径は1〜10μmであることができる。上記第1金属層31及び第2金属層32のそれぞれの厚さは10〜100nmであることができる。上記第1金属層31及び第2金属層32の厚さを調節して金属粒子の厚さに対する粒径の比(粒径/厚さ)を調節することができる。上記金属粒子の厚さに対する粒径の比(粒径/厚さ)は20〜100であることができる。
【0051】
図4は、本発明のさらに他の実施例による微細金属粉末を概略的に示す斜視図である。上述した実施例と異なる構成要素を中心に説明し、同一の構成要素に対する詳しい説明は省略する。
【0052】
図4を参照すると、金属粒子30は多層構造を有するものであって、第1金属層31、上記第1金属層31上に積層された金属酸化物層33、及び上記金属酸化物層33上に積層された第2金属層32を含む。
【0053】
図4は、2つの金属層と1つの金属酸化物層が積層された形態を示しているが、本発明はこれに制限されず、2つ以上の金属層と2つ以上の金属酸化物層が積層された形態であってもよい。上記金属層と金属酸化物層の積層順序は特に制限されない。必要とする機能に応じて金属粒子の多層構造を適切に調節することができる。
【0054】
上述したように、上記第1金属層31または第2金属層32は、Ni、Cu、Ag、Au、Alなどの金属で形成されることができる。
【0055】
本実施例で金属粒子30の粒径は1〜10μmであることができる。上記第1金属層31、第2金属層32、及び金属酸化物層33のそれぞれの厚さは10〜100nmであることができる。上記第1金属層31、第2金属層32、及び金属酸化物層33の厚さを調節して金属粒子の厚さに対する粒径の比を調節することができる。上記金属粒子の厚さに対する粒径の比(粒径/厚さ)は20〜100であることができる。
【0056】
以下、本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法について説明する。微細金属粉末の製造方法に対する以下の説明により、上述した微細金属粉末の構成もより明確になる。
【0057】
図5aから図5cは本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。
【0058】
先ず、図5aに示すように、ベース基材10上に所定の大きさ及び形状を有するパターン部Pを形成する。
【0059】
上記ベース基材10は、パターンを容易に形成することができる材料であれば、特に制限されず、例えばガラスまたは高分子物質を使用することができる。
【0060】
上記高分子物質はこれに制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET、polyethylene terephthalate)、ポリカーボネート(PC、polycarbonate)、ポリプロピレン(PP、polypropylene)などを用いることができる。
【0061】
ベース基材10にパターン部Pを形成する方法は特に制限されず、ベース基材の材料に応じて適切に選択される。例えば、感光性レジン(Resin)を用いた光学的フォトリソグラフィー(Optical Lithography、Photolithography)技術を用いてもよく、紫外線硬化型レジンや熱硬化型レジンを用いたナノ・インプリント・リソグラフィ(NIL、Nano imprint Lithography)技術を用いてもよい。
【0062】
または、グラビア(Gravure)印刷方法、化学的エッチング方法、機械的加工方法などを用いてベース基材上にパターン部Pを形成することができる。
【0063】
本実施例でベース基材のパターン部Pは、凹部と凸部が交互に配置されるように構成される。本実施例によれば、上記凹部と凸部はそれぞれ所定の形状及び大きさを有するように形成され、上記凹部と凸部の上面を両方とも用いて所定の形状及び大きさを有する微細金属粉末を製造することができる。
【0064】
微細金属粉末の製造収率を高めるためには、有効パターンの比率を高くすることが好ましい。有効パターンとは、金属膜が形成され、上記金属膜の分離により金属粒子が形成される部分である。そのために、有効パターン間の間隔を狭めるか、本実施例のように凹部及び凸部に形成することができる。また、ベース基材の両面にパターン部を形成してもよい。
【0065】
次に、図5bに示すように、ベース基材のパターン部P上に分離層(strip layer)20を形成することができる。
【0066】
分離層20を形成せずに、ベース基材10のパターン部Pに金属膜30aを形成してもよいが、分離層20を形成する場合、金属膜30aをより容易に分離することができる。
【0067】
上記分離層20は、特に制限されないが、ベース基材のパターン部を変形させず、金属膜30aとの反応性の低い物質か、反応性のない物質で形成されることができる。また、容易に除去される物質で形成されることができる。
【0068】
これに制限されないが、例えば高分子物質で形成されてもよい。上記高分子物質は、これに制限されないが、特定溶媒内で容易に除去される物質であればよく、例えばエチルセルロース(ethylcellulose)などを用いることができる。
【0069】
エチルセルロースは、エタノール、IPA(Iso Propyl Alcohol)などのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK、Methyl Ethyl Ketone)などのケトン類などの溶媒内で容易に分解される特性を有する。
【0070】
また、上記分離層20は、ポリビニールアルコール(PVA、polyvinyl alcohol)のような水溶性レジンを用いてもよい。
【0071】
また、上記分離層20は、ポリビニールブチラール(PVB、polyvinyl butyral)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、ノボラックレジン(Novolac resin)などのフェノール系樹脂を用いてもよい。
【0072】
上記分離層20は、高分子物質が溶解された溶液をベース基材上に塗布して形成されることができる。上記溶液の溶媒は、上記高分子物質を容易に溶解させ、ベース基材10に形成されたパターン部Pを変形させない物質が利用される。
【0073】
本発明の一実施例で高分子溶液の形成方法は、高分子溶液の物性やパターン部Pの形状及び特性などに応じて適切に選択される。これに制限されないが、例えば、高分子溶液の粘度が比較的低くてベース基材のパターン部Pが微細な大きさで形成される場合、スプレーコーティング方法が利用されてもよい。この場合、高分子溶液の乾燥特性と共にスプレーノズルの大きさや圧力、空気圧などの変数に対する最適化された数値を実験的に導き出し、これを活用して均一な厚さの分離層20を形成することができる。
【0074】
また、分離層20の形成は、マイクログラビア(Micro−gravure)工程を用いる転写方式の塗布方法、バーコーター(bar−coater)やローラ(roller)などを用いた接触式塗布方法などの様々な塗布方法を利用することができる。
【0075】
上記分離層20の厚さは、製造される金属粒子の大きさに応じて適切に調節される。上記分離層の厚さは、形成される金属膜30aの厚さより厚く形成されてもよい。
【0076】
例えば、分離層20の厚さは0.1〜1μmであることができる。上記分離層の厚さが薄すぎると、溶媒の浸透が困難で、分離層を除去しにくくなることがある。また、分離層の厚さが厚すぎると、分離層の除去に多くの時間及びエネルギーがかかり、金属膜が損傷される虞がある。
【0077】
次に、図5bに示すように、分離層20上に金属膜30aを形成する。
【0078】
上記金属膜30aの形成方法は特に制限されず、当該分野で公知の方法により形成される。
【0079】
これに制限されないが、例えば熱蒸着(thermal evaporation)、電子ビーム蒸着(e−beam evaporation)、またはスパッタリング(sputtering)などの物理的蒸着方法を利用することができる。
【0080】
また、分離層20上にスパッタリング法などで金属シード層(seed layer)を形成した後、この金属シード層を基盤として電解メッキ工程を行って所望する厚さの金属膜30aを形成することができる。このような電解メッキ工程は、より厚い金属膜を形成するために用いられる。
【0081】
本発明の一実施形態で金属膜30aは10〜100nmの厚さで形成されることができる。
【0082】
その後、上記ベース基材のパターン部から金属膜を分離することで、パターン部の形状及び大きさに対応する所定の大きさ及び形状を有する、個別化された金属粒子を得ることができる。これは上記分離膜の除去により行われ、これに対する具体的な説明は後述する。
【0083】
本発明の他の実施形態によれば、図5cに示すように、上記金属膜30a及び分離膜20の形成工程をさらに1回行うことができる。分離層及び金属薄膜の形成方法は上述した通りである。
【0084】
上記金属膜及び分離膜の形成工程の回数及び順序は特に制限されない。分離膜及び金属膜の形成工程を繰り返し行う場合、より多い金属粒子を製造することができる。
【0085】
本発明の一実施例によれば、ベース基材10のパターン部Pから金属膜30aを分離して個別化された金属粒子を得ることができる。分離層を形成した場合、ベース基材10と金属膜30aとの間に形成された分離層20を除去することにより、個別化された金属粒子を得ることができる。
【0086】
より具体的に、分離層20を容易に溶解できる特定溶媒を用いて分離層20を除去することができる。
【0087】
例えば、分離層にエチルセルロースを用いた場合、エチルセルロースはエタノールやトルエンまたはこれらの混合溶媒などに優れた溶解度を有する。したがって、このような溶媒にベース基材を浸漬させると、エチルセルロースで形成された分離層20は容易に溶解される。これにより、金属膜30aは分離されて、図1に示すような個別化された金属粒子30が得られる。
【0088】
分離層を形成しない場合は、ベース基材のパターンから金属膜を分離して個別化された金属粒子を得ることができる。
【0089】
本発明によれば、金属粒子はパターン部の形状及び大きさに対応する所定の大きさ及び形状を有する、個別化された金属粒子を得ることができ、その形状及び大きさが一定の複数の金属粒子を容易に製造することができる。
【0090】
また、上記パターン部の形状及び大きさは、容易に調節することができるため、金属粒子を、設計した通りのパターン部の形状及び大きさで容易に製造することができる。
【0091】
図6は、本発明のさらに他の実施形態による微細金属粉末の製造方法を説明するための工程図である。上述した実施例と異なる構成要素を中心に説明し、同一の構成要素に対する詳しい説明は省略する。
【0092】
図6は、上述した図5bから続く工程であると理解できる。図5bに示す金属膜30aは、本実施例では第1金属膜31aと理解することができる。上記第1金属膜31aを形成した後、上記第1金属膜31a上に第2金属膜32aを形成することができる。上記第2金属膜32aの形成方法は、上述した金属膜の形成方法と同様である。
【0093】
また、図面に示していないが、上記第2金属膜32a上に、1層以上の金属膜をさらに形成して2層以上の多層構造を有する金属粒子を製造することができる。
【0094】
その後、上述したように、ベース基材のパターンから上記第1金属膜31a及び第2金属膜32aを分離し、図3に示すように、第1金属層31及び第2金属層32を有する、個別化された金属粒子30を得ることができる。
【0095】
また、図面に示していないが、本発明の他の実施形態によれば、第1金属膜上に金属酸化物層及び第2金属膜を形成することができる。
【0096】
その後、上述したように、ベース基材のパターンから分離して、図4に示すような第1金属層31、金属酸化物層33、及び第2金属層32を有する多層構造の個別化された金属粒子30を得ることができる。
【0097】
上記金属膜及び金属酸化物層の形成順序及び繰り返し回数は制限されず、これらを調節して金属粒子の多層構造を多様化することができる。
【0098】
以上のような方法により製造される微細金属粉末は多様に活用される。
【0099】
例えば、本発明の一実施例により製造された微細金属粉末、樹脂結合剤、及び有機溶剤を混合して導電性ペースト(paste)を製造することができる。
【0100】
この場合、樹脂結合剤としては、焼成過程で容易に消失される有機化合物であるアルキド樹脂やエチルセルロースなどが使用され、有機溶剤としてはペーストに適当な粘性を与え、グリーンシートに塗布した後に乾燥処理により容易に揮発される有機化合物であるテルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ケロシンなどが使用される。
【0101】
このように製造された導電性ペーストは、電子回路の配線、電子素子(例えば、MLCC、MLCI)の電極を形成するために用いることができる。
【0102】
本発明は、上述した実施形態及び添付した図面により限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲により限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者により多様な形態に置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0103】
10 ベース基材
P パターン部
20 分離層
30 金属粒子
30a、31a、32a 金属膜
31 第1金属層
32 第2金属層
33 金属酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上に所定の大きさ及び形状を有するパターン部を形成する段階と、
前記パターン部に金属膜を形成する段階と、
前記パターン部から金属膜を分離して所定の大きさ及び形状を有する、個別化された金属粒子を得る段階と、
を含む微細金属粉末の製造方法。
【請求項2】
前記金属膜を形成する段階の前に、前記パターン部上に分離層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項3】
前記分離層は、前記金属膜の厚さよりも厚く形成されることを特徴とする請求項2に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項4】
前記分離層は、前記ベース基材のパターン部を変形させず、前記金属膜との反応性が低い物質で形成されることを特徴とする請求項2に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項5】
前記分離層は、高分子物質で形成されることを特徴とする請求項2に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項6】
前記金属膜を分離する段階は、前記分離層が溶解される溶媒を用いて前記分離層を除去して行われることを特徴とする請求項2に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項7】
前記金属膜上に分離層を形成する段階及び前記分離層上に金属膜を形成する段階をさらに含み、前記分離層及び前記金属膜の形成工程は1回以上行われることを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜上に他の金属膜を1層以上形成する段階をさらに含み、前記個別化された金属粒子は多層構造を有することを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項9】
前記金属膜上に金属酸化物層を形成する段階をさらに含み、前記個別化された金属粒子は多層構造を有することを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項10】
前記ベース基材は、ガラスまたは高分子物質からなることを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項11】
前記パターン部は、所定の大きさ及び形状を有する凹部及び凸部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項12】
前記微細金属粉末は、粒度分布が平均粒径D50の±20%範囲になるように製造されることを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項13】
前記金属粒子は、厚さに対する粒径の比である粒径/厚さが20〜100であることを特徴とする請求項1に記載の微細金属粉末の製造方法。
【請求項14】
所定の大きさ及び形状を有する金属粒子が集合されたものであって、粒度分布が平均粒径D50の±20%範囲であることを特徴とする微細金属粉末。
【請求項15】
前記金属粒子は、厚さに対する粒径の比である粒径/厚さが20〜100であることを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。
【請求項16】
前記金属粒子は、粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。
【請求項17】
前記金属粒子は、厚さが10〜100nmであることを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。
【請求項18】
前記金属粒子は、多面体または円盤状の形状を有することを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。
【請求項19】
前記金属粒子は、複数の金属層が積層された多層構造であることを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。
【請求項20】
前記金属粒子は、複数の金属層及び複数の金属酸化物層が積層された多層構造であることを特徴とする請求項14に記載の微細金属粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−112030(P2012−112030A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104947(P2011−104947)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】