説明

心不全患者管理用の複数センサ方式

装置は複数のセンサとプロセッサとを含む。各センサは生理学的情報を含むセンサ信号を提供し、少なくとも1つのセンサが植込み可能である。プロセッサは、センサ信号から生理学的変化事象を検出し、1つまたはそれ以上の検出された生理学的変化事象の発生の指標を生成する生理学的変化事象検出モジュールと、心不全検出モジュールとを含む。心不全検出モジュールは、第1のルールを用いて、検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、第2のルールを用いて、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定し、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権の主張)
本願は、2008年10月10日に出願された米国仮特許出願第61/104,648号に米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張し、同出願の明細書は参照により全文が本文書に組み込まれている。
【0002】
植込み型医療装置(IMD)は、患者または被験者に植え込まれるように設計される装置を含む。これらの装置のいくつかの例には、植込み型ペースメーカ、植込み型電気除細動器(ICD)、心臓再同期治療装置(CRT)、そのような機能の組み合わせを含む装置などが挙げられる。これらの装置は、電気療法またはその他の療法を使用する患者を治療する、あるいは患者の状態の内部モニタリングを通じて患者の診断において医師や介護者を補助するために使用することができる。これらの装置には、患者の心臓の電気的活動を監視するために1つまたはそれ以上の感度増幅器と通信する1つまたはそれ以上の電極が含まれてもよく、1つまたはそれ以上の他の患者パラメータを監視する1つまたはそれ以上のセンサをさらに含むことが多い。植込み型医療装置の他の例としては、植込み型診断装置、植込み型薬物送達システム、または神経刺激機能を有する植込み型装置などがある。
【0003】
さらに、いくつかのIMDには、電気的心活動信号の監視によって事象を検出するものもある。いくつかのIMDは、センサによって提供される電気信号からの室の膨張および収縮と関連する血行動態パラメータの測定値を引き出す。IMDを植え込んだ患者が、心不全(HF)代償不全や心不全の悪化と関連するその他の事象を繰り返し経験することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心不全の悪化と関連する症状には、肺水腫および/または末梢性浮腫、拡張心筋症、または心室拡張などがある。心不全代償不全の兆候や症状に早く着目することが、患者の健康にとって必要であり、早期の治療開始を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本文書は、概して患者または被験者の血行動態パラメータを監視するシステム、装置、および方法に関連する。実施例1では、装置は複数のセンサとプロセッサとを備える。各センサは生理学的情報を含むセンサ信号を提供し、少なくとも1つのセンサが植込み可能である。プロセッサは、センサ信号から生理学的変化事象を検出し、1つまたはそれ以上の検出された生理学的変化事象の発生の指標を生成する生理学的変化事象検出モジュールと、心不全検出モジュールとを含む。心不全検出モジュールは、第1のルールを用いて、検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、第2のルールを用いて、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定し、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示す。
【0006】
実施例2では、実施例1の第1のルールは、1組の検出可能な生理学的変化事象の過半数が検出されたときに心不全状態の変化を示すことを任意に含む。
実施例3では、実施例1および2の第2のルールは、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。
【0007】
実施例4では、実施例1〜3の第2のルールは、S3心音の条件が心音信号において満たされた場合に陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。
実施例5では、実施例1〜4の第2のルールは、生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。
【0008】
実施例6では、実施例1〜5の第2のルールは、患者活動に対する生理学的反応における条件が満たされたとき、陽性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。 実施例7では、実施例1〜6の心不全検出モジュールは任意に、第1のルールでの心不全判定よりも第2のルールでの心不全判定に大きな重み付けを行う。
【0009】
実施例8では、実施例1〜7の生理学的変化事象検出モジュールは任意に、センサ信号に従って検出された生理学的変化事象に重み付けを行うように構成され、心不全検出モジュールは任意に、生理学的変化事象の重みを使用して、心不全状態に変化が生じる可能性を判定し、示された心不全事象に基づいて、心不全状態に変化が生じる可能性の指標を含む警告を提供するように構成されている。
【0010】
実施例9では、実施例1〜8の心不全検出モジュールは任意に、第1および第2のルールに従って警告の緊急度を判定するように構成されている。
実施例10では、実施例1〜9の複数のセンサは、植込み型心音センサと、植込み型インピーダンスセンサと、植込み型活動センサと、植込み型呼吸センサと、植込み型血圧センサと、植込み型心電図センサと、植込み型酸素飽和度センサと、植込み型血流センサと、植込み型温度センサと、植込み型胸腔内総インピーダンス(ITTI)センサと、のうちの少なくとも1つを任意に含む。
【0011】
実施例11では、システムは複数のセンサと、植込み型装置と、外部装置とを備える。各センサは、生理学的情報を含むセンサ信号を提供するように構成されている。植込み型装置は、少なくとも1つのセンサと、植込み型センサと通信可能に接続され、サンプリングされたセンサ信号を提供するように構成されたサンプリング回路と、サンプリング回路と通信可能に接続され、サンプリングされたセンサ信号を第2の装置と通信するように構成された第1の通信回路とを備える。外部装置は、植込み型装置と通信するように構成された第2の通信回路と、第2の通信回路と通信可能に接続されるプロセッサとを備える。プロセッサは、植込み型装置から通信される少なくとも1つのサンプリングされたセンサ信号を含むセンサ信号から生理学的変化事象を検出し、1つまたはそれ以上の生理学的変化事象の発生の指標を生成するように構成された生理学的変化事象検出モジュールを含む。プロセッサは、第1のルールを使用して、検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効とするかどうかを判定し、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示すように構成された心不全検出モジュールも含む。
【0012】
実施例12では、実施例11の第1のルールは、1組の検出可能な生理学的変化事象の過半数が検出されたときに心不全状態の変化を示すことを任意に含む。
実施例13では、実施例11および12の第2のルールは、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすること、生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを任意に含む。
【0013】
実施例14では、方法は、医療装置を使用して、複数の生理学的センサ信号を感知することであって、各センサ信号が生理学的情報を含み、少なくとも1つのセンサが植込み可能であること、センサ信号を使用して、もし存在している場合は1組の特定された生理学的変化事象のうちいずれの生理学的変化事象が発生しているかを検出すること、第1のルールを使用して、検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定すること、第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定すること、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示すことを含む。
【0014】
実施例15では、実施例15の第1のルールを使用して、検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定することは、検出された生理学的変化事象の数が、心不全状態の変化を示し前記医療装置によって検出可能である1組の生理学的変化事象の過半数であるときに、検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すと判定することを任意に含む。
【0015】
実施例16では、実施例14および15の第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することは、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。
【0016】
実施例17では、実施例14〜16の第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することは、S3心音に関する条件が心音信号において満たされたときに陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを任意に含む。
【0017】
実施例18では、実施例14〜17の第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、検出された生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを任意に含む。
【0018】
実施例19では、実施例14〜18の第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することは、患者活動に対する生理学的反応における条件が満たされたときに陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを任意に含む。
【0019】
実施例20では、実施例14〜19の第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することは、第1のルールでの心不全判定よりも第2のルールでの心不全判定に大きな重み付けを行うことを任意に含む。
【0020】
実施例21では、実施例14〜20のいずれの生理学的変化事象が発生しているかを判定することは、該センサ信号に従って検出された生理学的変化事象に重み付けを行うことを任意に含み、示された心不全状態の変化に基づいて警告を提供することをさらに含み、警告は心不全状態に変化が生じる可能性の指標を含む。
【0021】
実施例22では、実施例21の方法は、第1および第2のルールに従って警告の緊急度を判定することを任意に含む。
実施例23では、実施例14〜22の複数の生理学的センサ信号を検知することは、植込み型心音センサと、植込み型インピーダンスセンサと、植込み型活動センサと、植込み型呼吸センサと、植込み型血圧センサと、植込み型心電図センサと、植込み型酸素飽和度センサと、植込み型血流センサと、植込み型温度センサと、植込み型胸腔内総インピーダンス(ITTI)センサのうち少なくとも1つを感知することを任意に含む。
【0022】
実施例24では、実施例14〜23の方法は、植込み型装置を使用して少なくとも1つの生理学的センサ信号をサンプリングすることは、植込み型装置から外部装置にサンプリングされた生理学的センサ信号を伝達すること、外部装置を使用して、サンプリングされた信号から生理学的変化事象を検出し、検出された事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示すことを任意に含む。
【0023】
このセクションは、本特許出願の主題に関する概要を提供することを目的とする。本発明の排他的または網羅的な説明を提供することを目的としていない。本特許出願に関する追加情報を提供するために詳細な説明が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】IMDを使用するシステムの一部を示す。
【図2】被験者の心不全を監視する装置の一例のブロック図である。
【図3】被験者の心不全を監視する方法の流れ図である。
【図4】被験者の心不全状態に変化が生じているかどうかを判定する方法例の流れ図である。
【図5】被験者の心不全状態に変化が生じているのかどうかを判定する別の方法例の流れ図である。
【図6】IMDのパラメータをプログラムするために使用される外部装置を含むシステムを示す。
【図7】被験者の心不全を監視するシステムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は必ずしも一律の尺度に従って描かれる必要はなく、異なる図面において類似の符号は同様の構成要素を示す場合がある。異なる接尾語を付した類似の符号は、同様の構成要素の異なる例を表す場合がある。図面は概して、限定なものではなく例示のために、本文書に記載される各種実施形態を示す。
【0026】
植込み型医療装置(IMD)は、本文書に記載の特徴、構造、方法、またはそれらの組み合わせのうち1つまたはそれ以上を含んでもよい。後述の有益な特徴または工程のうち1つまたはそれ以上を含むように、例えば、心臓モニタまたは心臓刺激器を実装してもよい。上記モニタ、刺激器、またはその他の植込み型または部分植込み型装置は本文書に記載のすべての特徴を含む必要はなく、独自の構造または機能を提供する選択された特徴を含むように実装してもよいことが意図される。このような装置は、幅広い治療または診断機能を提供するために実装することができる。IMDは、既に心不全を起こしている、あるいは心不全を起こすリスクを有する患者において心不全を監視することが望ましいであろう。
【0027】
図1は、IMD105を使用するシステム100の一部を示す。IMD105は例えば、制限なく、ペースメーカ、心臓除細動器、除細動器、心臓再同期治療(CRT)装置、および、1つまたはそれ以上の神経刺激装置、薬物、薬物送達システム、またはその他の治療を含む、あるいはそれらと協調して動作する心臓装置を含むその他の心臓監視・治療送達装置などである。一例として、図示されるシステム100は不整脈の治療に使用される。IMD105は通常、1つまたはそれ以上の心臓リード110、115、125によって患者または被験者の心臓に接続される電子機器ユニットを含む。IMD105の電子機器ユニットは、密封キャニスタまたは「缶」に封入される部品を含む。さらに、システム100は典型的には、例えば無線周波数(RF)または1つまたはそれ以上の他の遠隔測定方法を用いて、IMD105に1つまたはそれ以上の無線信号185を伝達するIMDプログラマまたはその他の種類の外部システム190を含む。図示される例は、近位端111および遠位端113を有する右心房(RA)リード110を含む。近位端111はIMD105のヘッダコネクタ107に接続される。遠位端113は、心房中隔内またはその近傍のRAに配置されるように構成されている。RAリード110は、RAチップ電極114AおよびRAリング電極114Bなどの一対の双極電極を含んでもよい。RA電極114Aおよび114Bは、RA内またはその近傍に配置するために遠位端113でリード本体に組み込まれ、各々が、リード本体内に延在する導体を通じてIMD105に電気的に接続される。図示されるRAリードは心房中隔に配置されているが、RAリードは心耳、心房自由壁、またはそれ以外の場所またはその近傍に配置してもよい。
【0028】
図示される例は、近位端117および遠位端119を有する右心室(RV)リード115も含む。近位端117はヘッダコネクタ107に接続される。遠位端119はRV内に配置されるように構成されている。RVリード115は、近位の除細動電極116、遠位除細動電極118、RVチップ電極120A、およびRVリング電極120Bのうち1つまたはそれ以上を含んでもよい。除細動電極116は通常、例えばRAおよび/または上大静脈内の上室配置に適した位置で、リード本体に組み込まれる。除細動電極118は、例えばRV内での配置のために遠位端119の近傍でリード本体に組み込まれる。RV電極120Aおよび120Bは双極電極対を形成してもよく、通常は遠位端119でリード本体に組み込まれる。電極116、118、120A、および120Bはそれぞれ、例えばリード本体内に延在する1つまたはそれ以上の導体を通じてIMD105に電気的に接続される。近位の除細動電極116、遠位除細動電極118、またはIMD105の缶上に形成される電極によって、電気除細動または除細動のパルスを心臓に送達することができる。
【0029】
RVチップ電極120A、RVリング電極120B、またはIMD105の缶上に形成される電極によって、RV脱分極を表すRV電位図信号を感知し、RVペーシングパルスを送達することができる。いくつかの例では、IMDは、感知された信号の増幅および/またはフィルタリングを提供する感度増幅器回路を含む。RAチップ電極114A、RAリング電極114B、またはIMD105の缶上に形成される電極によって、RA脱分極を表すRA電位図信号を感知し、RAペーシングパルスを送達することができる。感知とペーシングとにより、IMD105は心室収縮のタイミングを調節することができる。いくつかの例では、IMD105は、RAの電気信号を感知し、所望の房室(AV)遅延時間でRVのペースを調節することによって、心房脱分極のタイミングに対する心室脱分極のタイミングを調節することができる。
【0030】
左心室(LV)リード125は、近位端121および遠位端123を有する細長リード本体を含むリードの冠血管のペーシングまたは感知を行うリードを含むことができる。近位端121はヘッダコネクタ107に接続される。遠位端123は、冠状静脈内に配置または挿入されるように構成されている。LVリード125はLVチップ電極128AおよびLVリング電極128Bを含んでもよい。LV電極128Aおよび128Bが冠状静脈内に配置されるように、LVリード125の遠位部は冠状静脈洞および冠状静脈内に配置されるように構成されている。LV電極128Aおよび128Bは双極電極対を形成してもよく、典型的には遠位端123でリード本体に組み込まれる。各電極は、例えばリード本体内に延在する1つまたはそれ以上の導体を通じてIMD105に電気的に接続することができる。LVチップ電極128A、LVリング電極128B、またはIMD105の缶上に形成される電極によって、LV脱分極を表すLV電位図信号を感知し、LVペーシングパルスを送達することができる。IMDは、静脈経由の心外膜電極(すなわち、胸腔内電極)、および/または缶電極、ヘッダ電極、不関電極、および皮下アレイまたはリード電極などの皮下の非胸腔内電極(すなわち、非胸腔内電極)等の様々な電極構造で構成してもよい。いくつかのIMDは、リードなしの電極を使用して心臓の脱分極を表す信号を感知することが可能である。上述したように、心不全代償不全の兆候や症状に早期に着目することは、患者の最善の健康にとって必要である。心不全状態の変化(例えば、悪化)を検出する際の課題の1つは、状態の実際のまたは真の変化が正確に検出されるように確保しつつ誤警告を低減することである。後述のシステムおよび方法は、患者を監視し、切迫した心不全事象が検出される際に臨床医に警告を発する。警告は、臨床医が患者関連の情報を適時に検討して、何が警告のトリガとなったかを判定し適切な対応を特定するように要求するため、誤警告は医療財源からの不要な支出を招くことになる。さらに、誤警告が多すぎると、臨床医が正しい検出を含めてすべての警告を「迷惑な警告」として無視することによって、システムの恩恵を無効にする場合がある。
【0031】
図2は、患者または被験者の心不全を監視する装置200の一例のブロック図である。装置200はプロセッサ205と、プロセッサ205と通信可能に接続される複数のセンサ210とを含む。センサ210のうちの少なくとも1つは植込み型センサである。プロセッサ205は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、または他の種類のプロセッサを含み、ソフトウェアまたはファームウェアの指示を解釈または実行してもよい。各センサ210は、生理学的情報を含むセンサ信号を提供する。通信可能な接続によって、プロセッサ205とセンサ210とは、プロセッサ205とセンサ210間に介在する回路があったとしても、通信を行ってもよい。
【0032】
いくつかの例では、センサ210は植込み型心音センサを含む。心音は、患者の心臓の活動と心臓を通る血流からの機械的振動と関連する。心音は心周期毎に繰り返され、上記振動と関連する活動に従って分離および分類される。第1の心音(S1)は、僧帽弁の伸張中に心臓によって発せられる振動音である。第2の心音(S2)は、大動脈弁の閉鎖と心拡張期の開始とを表す。第3の心音(S3)および第4の心音(S4)は、心拡張期の左心室の充満圧と関連する。心音センサは、患者の心臓の機械的活動を表す電気信号を生成する。心音センサは心臓内、心臓の近傍、または音響エネルギーを感知可能なその他の場所に配置される。いくつかの例では、心音センサは心臓内またはその近傍に配置される加速度計を含む。別の例では、心音センサはIMD内に配置される加速度計を含む。別の例では、心音センサは心臓内またはその近傍に配置されるマイクロフォンを含む。
【0033】
多くの種類の生理学的情報は、心音センサによって提供される信号に含めることができる。例えば、S3心音の存在は、充満圧の上昇の指標としてもよい。よって、S3心音の発生または変化は、被験者の心不全状態の変化を示してもよい。心音を監視するアプローチは、2002年12月30日に出願されたSiejkoらの米国特許出願公開第2004/0127792号「拡張期血行動態を監視する方法および装置」に見られ、参照によりその全文が本文書に組み込まれている。
【0034】
いくつかの例では、センサ210は呼吸センサを含む。植込み型呼吸センサの一例が胸腔内総インピーダンスセンサITTIである。ITTIセンサによって提供される信号は、呼吸数、一回呼吸量、分時呼吸量などの呼吸パラメータ、および一回呼吸量に対する呼吸数の割合などのそこから得られるパラメータを測定するために使用可能な生理学的情報を提供する。胸部インピーダンスを測定するアプローチは、1998年2月27日に出願されたHartleyらの米国特許第6,076,015号「経胸郭インピーダンスを使用する速度適合心律動管理装置」に記載されており、参照によりその全文が本文書に組み込まれている。呼吸パラメータの測定は、異常呼吸の検出に有効となり得る。
【0035】
ITTIセンサによって提供されるセンサ信号は、被験者の胸郭領域における流体蓄積の変化と関連する情報も提供することができる。インピーダンスの減少は、肺水腫による組織内流体の蓄積の変化を示してもよい。
【0036】
いくつかの例では、センサ210は植込み型患者活動センサを含む。植込み型患者活動センサの一例が加速度計である。
呼吸センサと活動センサの組み合わせ、および/または心拍数センサと活動センサの組み合わせは、例えば活動による異常な呼吸と交感神経反射の活性化との一方または両方を検出するために、患者の活動への生理学的反応(PRA)を監視するのに有益である。装置200は、本文書で後述するような他の種類のセンサを含んでもよい。
【0037】
プロセッサ205は生理学的変化事象検出モジュール215を含む。モジュールはソフトウェア、ハードウェア、またはその任意の組み合わせとすることができる。
所望に応じて、複数の機能を1つまたはそれ以上のモジュールで実行することができる。生理学的変化事象検出モジュール215は生理学的変化事象をセンサ信号から検出する。生理学的変化事象とは、被験者の生理機能の検出された変化を指す。ある一定の例では、生理学的変化事象検出モジュール215は、充満圧の上昇を心音センサ信号から検出する。ある一定の例では、生理学的変化事象検出モジュール215は胸郭の流体をITTIセンサ信号から検出する。ある一定の例では、生理学的変化事象検出モジュール215は、心電図センサを使用して、心拍数の変化を検出する。ある一定の例では、生理学的変化事象検出モジュール215は、頻呼吸、速くて浅い呼吸、無呼吸、減呼吸、または過呼吸などの異常呼吸を呼吸センサ信号から検出する。ある一定の例では、生理学的変化事象検出モジュール215は、呼吸センサ信号、心電図信号、および患者活動センサ信号を使用して、患者の活動中の異常呼吸および異常な反射神経活性化の一方または両方を検出する。さらに、生理学的変化事象検出モジュール215は、1つまたはそれ以上の検出された生理学的変化事象の発生の指標を生成する。
【0038】
プロセッサ205は心不全検出モジュール220を含む。心不全検出モジュール220は、検出された生理学的変化事象が患者の心不全状態の変化を示しているかどうかを判定する。判定を行うため、心不全検出モジュール220は、生理学的変化事象検出モジュール215からの標示を混合するのに使用されるセンサ融合アルゴリズムを含む。該アルゴリズムは2つのルールの適用を含む。心不全検出モジュール220は、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているのかどうかを示す。
【0039】
第1のルールは検出された生理学的変化事象に適用されて、それらの事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定する。いくつかの例では、心不全検出モジュール220は、各センサから受信した情報に基づいて心不全を個々に評価する。いくつかの例では、第1のルールは過半数ルールを含み、心不全を示す1組の検出可能な生理学的変化事象の過半数が検出されたとき(例えば、心不全を示す事象が、心不全を示さない、あるいは心不全の禁忌である事象よりも多い)に、患者の心不全状態の変化を表示する。
【0040】
第2のルールは、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定する。いくつかの例では、第2のルールは、検出された生理学的変化事象の特異性に従って、陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む。例えば、第1のルールを適用して、患者の心不全状態に変化がないと表示される場合がある。しかしながら、センサのうちの1つが、第1ルールの心不全判定を無効とすべきであるという強力な心不全の指標を提供する場合がある。心不全状態の変化の強力な指標の一例が、以前は存在していなかったS3心音の発生である。第2のルールは、S3心音に関する条件が心音センサ信号において満たされたときに陰性の第1のルールでの心不全判定を無効としてもよい。ある一定の例では、心不全検出モジュール220は第1のルールでの心不全判定よりも第2のルールでの心不全判定に大きな重み付けを行って、無効にさせる、あるいは無効にすることを禁止する。これは、無効になり得る事象の等級付け方法を提供する。
【0041】
いくつかの例では、第2のルールは生理学的変化事象の陰性予測値に従って、陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを含む。例えば、第1のルールの適用では患者の心不全状態の変化が表示される場合があるが、センサの1つが、状態に変化はなく第1のルールでの心不全判定は無効にされるべきであるという強力な指標を提供する場合がある。心不全状態の変化がないという強力な指標の一例は、患者の活動に対する生理学的反応における条件が満たされたとき、例えば心拍数センサ(例えば、植込み型心電図センサ)が、患者の心拍数は活動センサによって示される患者の活動の増加に対する適切な反応であることを示すときである。このような場合、第2のルールは陽性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含んでもよい。いくつかの例では、心不全検出モジュール220は、示された心不全事象に基づいて警告を発する。
【0042】
図3は、被験者の心不全を監視する方法300の流れ図である。ブロック305では、複数の生理学的センサ信号が医療装置を使用して感知され、少なくとも1つセンサが植込み可能である。各センサ信号は異なるセンサから検出され、生理学的情報を含む。ブロック310では、センサ信号は、(もし存在している場合は)1組の特定された生理学的変化事象のうちいずれの生理学的変化事象が発生しているかを判定するために示される。ブロック315では、第1のルールを使用して、検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定する。ブロック320では、第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかが判定される。ブロック325では、第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているのかどうかが示される。
【0043】
表1は、心不全状態の変化を判定するためのセンサ融合の一例を示す。S3心音を検出する心音センサ、ITTIセンサ、呼吸センサ、および活動への生理学的反応(PRA)センサから成る4つのセンサが含まれる。個々のセンサからの表示を判定するために2値論理が使用される。例えば、センサは、センサ出力が心不全を示す閾値条件を満たす場合には心不全(「Y」)を表示し、そうでない場合には心不全(「N」)を表示すると考えられる。
【0044】
【表1】

1説明例として、心臓センサ(例えば、加速度計)は、心音センサ信号が閾値よりも大きな振幅(例えば、5mg(加速度g’s)または15mg)を有するS3心音、および100%の振幅変化(例えば、2倍)を示す場合、心不全の悪化を示すとみなされる。ITTIセンサは、インピーダンスセンサ信号が10%超で変化する場合に心不全の悪化を示すとみなされる。呼吸センサは、呼吸センサ信号が所定の呼吸数から1分間に5回を超える変化を示す場合、あるいは所定の呼吸数が1分30回を超える場合に心不全の悪化を示すとみなされる。PRAセンサは、センサ信号が生理学的活動に対する患者の反応が20%超の増加を示す場合、あるいは活動に対する呼吸量(例えば1分間あたりの量)の正規化比が閾値比を超える場合に心不全の悪化を示すとみなされる。心不全状態に変化が生じているのかどうか、および警告を生成すべきであるかどうかを判定するために過半数ルールが使用される。通常、少なくとも2つのセンサの出力が閾値条件を満たすとき、警告が生成される。これは、第1のルールによって生成される警告の例であろう。しかしながら、この表に示されるように、過半数ルールを無効にしてもよい例外がある。同表の第10行は、ITTIセンサおよび呼吸センサの心不全の変化を示すために通常であれば警告を生成する。しかしながら、PRAセンサからの陰性の表示は、陰性のPRA表示が過半数ルールに優先するという強力な陰性の予測値(NPV)を有する。これは、第1の心不全ルール(過半数ルール)を無効にする第2の心不全ルール(PRAのNPV)の例である。閾値基準を満たすS3心音の変化は、高い特異性を有する心不全の悪化を示す。S3心音は、陽性のS3表示が陰性のPRA表示を無効にするという強力な陽性の予測値(PPV)を有する(表1の2行目および6行目に記載)。
【0045】
図4は、被験者の心不全状態に変化が生じているかどうかを判定する方法400の一例の流れ図である。方法400では、2値の意思決定がセンサ出力に適用される。ブロック405では、心音センサ信号が心不全の陽性の指標、例えばS3心音の振幅の増加を提供するかどうかが判定される。提供される場合、ブロック410で、別のセンサが心不全の陽性の指標を提供するかどうかが判定される。イエスであれば、ブロック415で警告が生成される。ノーであれば、ブロック420で警告が生成されない。
【0046】
S3心音がセンサ信号に含まれない場合、ブロック425で、インピーダンスセンサ(例えば、ITTI)が心不全の陽性の指標を提供するかどうかが判定される。提供されない場合、ブロック430で警告が生成されない。インピーダンスセンサが心不全の陽性の指標を提供する場合、ブロック435で、呼吸センサまたはPRAセンサのいずれかが心不全の陽性の指標を提供するかどうかが判定される。提供されない場合、ブロック440に示されるように警告が生成されない。提供される場合、ブロック415で警告が生成される。
【0047】
図5は、被験者に心不全状態の変化が生じているかどうかを判定する別の方法の一例を示す流れ図である。ここで、方法500は、センサ出力に2値または3値の意思決定を適用する。ブロック505では、センサ出力が、心不全に関する基本的な第1のセンサ融合条件ルール(例えば、過半数ルール)を満たすかどうかが判定される。満たさない場合、フローはブロック510の警告なしに移る。基本条件が満たされる場合、基本センサ融合条件出力を変更する第2の条件が存在するかどうかが判定される。ブロック515では、例えば被験者が呼吸困難であり、かつ被験者がS3心音を有することを示すセンサ表示などの、心不全状態の変化をルールに入れる条件(ルール−イン条件)が存在するかどうかが判定される。ルール−イン条件が満たされる場合、警告が520で生成される。ブロック525では、例えば被験者は呼吸困難であるが労作性呼吸困難ではないなどの、心不全の変化をルールから排除し、心不全の基本条件ルールを無効にする条件(ルール−アウト条件)が存在するかどうかが判定される。ルール−アウト条件が満たされない場合、警告がブロック520で生成される。ルール−アウト条件が満たされる場合、フローがブロック510の警告なしに移る。
【0048】
いくつかの例によると、個々のセンサからの出力に重み付けを行うために、2値よりも詳細な論理を使用することができる。表2は、心不全状態の変化を判定するセンサ融合の別の例を示す。ここで、心音センサ、ITTIセンサ、呼吸センサ、およびPRAセンサから成る4つのセンサについて例示する。個々のセンサからの表示を判定するために、2値論理の代わりに3値論理が使用される。センサからの単純な陽性または陰性の表示の代わりに、生理学的変化事象検出モジュール215は、1つまたはそれ以上の閾値との比較によって、センサ信号によりセンサ出力に低、中、または高として重み付けを行う。次に、心不全検出モジュールは重み付けが行われたセンサ出力を使用して、心不全の変化の指標の強度に重み付けを行う。
【0049】
【表2】



表3は、各センサからの心不全悪化の表示例を示す。センサ出力は、低、中、または高の表示を示す3つの範囲に数量化または分類される。追加のビンまたは範囲を追加することによって、より精密な等級を実現することができる。この例では、心音センサ出力は、S3心音の測定された振幅に応じて数量化される。ITTIセンサ出力は、測定されたインピーダンスの変化に応じて数量化される。呼吸センサ出力は、分時呼吸数として測定された呼吸変化に応じて数量化される。PRAセンサは患者のPRAの変化に応じて数量化される。
【0050】
【表3】

いくつかの例では、出力には、センサ信号が心不全の悪化を示す可能性に従って重み付けが行われる。センサ出力に重み付けが行われると、心不全検出モジュール220は重み付けが行われた生理学的変化事象に第1のルールを適用して、センサ出力を混合し、心不全状態の変化の可能性を判定する。
【0051】
表2の例では、第1のルールに基づいて、i)2つまたはそれ以上のセンサが心不全の高い可能性を表示する、あるいはii)1つのセンサが高い可能性を表示し、2つのセンサが中の可能性を表示する、あるいはiii)3つまたはそれ以上のセンサが中の可能性を表示するときに、心不全の悪化の強力なまたは高い可能性が存在する。表2は、これらの条件のうち1つが発生したときに赤色の警告が表示されることを示す。よって、警告は、心不全状態に変化が生じる可能性の指標を示し、「赤」が最も強力な指標である。i)1つのセンサが心不全の高い可能性を表示し、1つのセンサが中の可能性を表示する、ii)1つのセンサが高い可能性を表示する、あるいはiii)、2つのセンサが中の可能性を表示するとき心不全の悪化の中の表示が存在する。表2は、これら条件のうちの1つが発生して心不全の悪化の中の可能性を示すときに黄色の警告が表示されることを示す。i)1つのみのセンサが中の可能性を表示し、他のセンサが低の可能性を表示する、あるいはii)すべてのセンサが低の可能性を表示するときに悪化の低の表示が存在する。この第1のルールの論理は例示的なものであって、論理は医師の選択傾向または患者独自の要件に従って調節することができる。
【0052】
次に、第2のルールが第1のルールの判定を無効にしてもよい。例えば、PRAセンサの低の表示は、表2の第69行に示されるようにITTIセンサおよび呼吸センサの一方または両方の中の表示を無効にしてもよい、あるいは表2の第48行に示されるようにITTIセンサまたは呼吸センサの高の表示を無効にしてもよい。別の例では、心音センサによって表示されるS3心音の中または高の表示は、表2の第15行に示されるようにPRAセンサの低の表示を無効にすることができる。
【0053】
いくつかの例では、心不全検出モジュール220は心不全悪化の高、中、または低の表示が存在するかどうかを示し、示された心不全事象に基づいて警告を発する。よって、心不全検出モジュールは第1および第2のルールに従って、警告の緊急度を判定する。
【0054】
上述の複数センサ融合論理は、装置200に含まれる診断センサアレイによって心不全悪化の陽性予測を向上させる。上述したセンサの代わりに、あるいは上述したセンサに加えて、心不全を監視するために図2の装置200において、その他植込み型または外部のいずれかのセンサを使用することができる。いくつかの例では、装置200は、左心室圧を測定する植込み型心圧センサを含む。室圧の低下は心不全の悪化の指標となる場合がある。
【0055】
一例では、圧力センサは、冠状血管圧の直接測定によって左心室圧を判定するために冠状血管に埋め込まれる。上記植込み型圧力センサを使用するシステムおよび方法は、2002年1月4日に出願されたSaloらの米国特許第6,666,826号「左心室圧を測定する方法および装置」に記載されており、参照によりその全文が本文書に組み込まれている。その他の心圧センサの例としては、右心室(RV)圧センサ、肺動脈圧センサ、および左心室圧センサなどがある。心室圧の変化は心音でも明白となる場合があるため、圧力変化を推定するために心音センサを使用することができる。
【0056】
いくつかの例では、センサ210は植込み型心拍数センサを含む。ある一定の例では、心拍数センサは、心臓脱分極を表す電位図信号を感知するために上述の回路と電極を含む。
【0057】
心音センサは例えば、S2心音間の間隔を測定するなどによって、心拍数を感知するために使用してもよい。
いくつかの例では、センサ210は植込み型酸素飽和度センサを含む。酸素飽和度センサは、血中酸素飽和度に比例する電気センサ信号を生成するが、血中酸素飽和度は、肺うっ血と組織への酸素供給低下との一方または両方が存在する場合にガス交換が不十分になるため、心不全の悪化に伴い低下する可能性がある。血中酸素飽和度を測定するために植込み型センサを使用するアプローチは、1992年10月7日に出願されたThompsonの米国特許第5,342,406号「ペーシング装置用の酸素センサベースの捕獲検出」に見られ、参照によりその全文が本文書に組み込まれている。
【0058】
いくつかの例では、センサ210は植込み型心臓温度センサを含む。いくつかの例では、植込み型心臓温度センサは、患者の冠状静脈洞に植え込まれるリードシステムに含まれる。植込み型心臓温度センサは、心筋組織を通過した後、冠状静脈洞を通って戻る血液の温度を測定する。正常な心臓機能の副産物として、心臓は熱を生成する。この熱は血液を潅流させることによって取り出される。血液は、右心房および右心室を通過する前に冠状静脈を通って冠状静脈洞に至る。次に、血液は肺を通って圧送され、そこで過剰な熱は除去されて、呼気とともに体外に排出される。
【0059】
左心室によって実行される有効負荷(Wu)は心室を通って移動する血液量と関連し、左心室からの熱出力は総負荷(WT)と関連する。左心室に入る血液と冠状静脈内の血液との温度差は、左心室負荷と関連する。活動増加または患者の労作の他の指標を伴わない、WTの増加、または代理測定としての心臓温度の上昇は、心不全悪化による患者の血行動態系の効率の低下を示す場合がある。冠状静脈内の温度を感知するアプローチは、2001年12月31日に出願されたSaloの特許出願公開第2003/0125774号「左心室の負荷または能力を監視する方法および装置」に見られ、参照により全文が本文書に組み込まれている。
【0060】
いくつかの例では、センサ210は血流センサを含む。血流センサの例には心臓出力センサ回路または脈拍量センサ回路がある。脈拍量の感知の例は、1982年3月29日に出願されたSaloらの米国特許第4,686,987号「生理学的要求の変化に応答する患者治療の管理を制御する生物医学的方法および装置」と、1991年5月13日に出願されたHauckらの米国特許第5,284,136号「デュアル不関電極ペースメーカ」とに記載されており、参照により全文が本文書に組み込まれている。
【0061】
いくつかの例では、センサ210とプロセッサ205はIMDベースシステムに含められる。図6は、IMD635のパラメータをプログラムするために使用される外部装置630を含むシステム600を示す。外部装置630は、ディスプレイ640および/またはキーボード645またはコンピュータマウスなどのプログラミングインタフェースを含む。外部装置630はIMD635と無線で通信する。IMD635は、警告をユーザに提示するために警告を外部装置630に伝達する。いくつかの例では、外部装置630は、高、中、または低警告をそれぞれ赤、黄、または緑の警告として表示することによって、警告の緊急度をユーザに伝達する。いくつかの例では、少なくとも1つセンサは外部にあり、情報を無線でIMD635に伝達する。
【0062】
図7は、被験者の心不全を監視するシステム700の一例を示す。システム700は複数のセンサ710A、710B、710Cを含む。センサ710A、710B、710Cはそれぞれ、生理学的情報を含むセンサ信号を提供する。センサは、本文書に記載の任意のセンサの組み合わせを含んでもよい。
【0063】
システム700は、センサ710Aの少なくとも1つを含むIMD735も含む。IMD735は、例えばセンサ出力を表すデジタル値を生成するために、センサ信号をサンプリングするサンプリング回路750を含む。IMD735は、サンプリングされたセンサ信号を第2の装置に伝達する第1の通信回路755も含む。
【0064】
システムは外部装置730をさらに含む。外部装置は、IMD735と無線で通信する第2の通信回路760と、プロセッサ705とを含む。プロセッサ705は生理学的変化事象検出モジュール715と心不全検出モジュール720とを含む。IMD735はサンプリングされたセンサ信号を外部装置730に伝達する。いくつかの例では、サンプリングされたセンサ信号は、中継器などの第3の装置を介して外部装置730に伝達される。中継器を例えば患者と同じ部屋に置いてIMD735と近距離とすることにより、外部装置730を患者から遠ざけることができる。生理学的変化事象検出モジュール715は、センサ710A、710B、710Cのうちの一部または全部によって提供されるセンサ信号から事象を検出し、検出された事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定する。心不全検出モジュールは第1および第2のルールに従って、心不全状態に変化が生じているのかどうかを示す。
【0065】
センサ表示を混合するために1組のセンサと複数センサ融合論理とを含む医療装置システムは、心不全悪化の陽性予測および検出を向上させる
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を成す添付図面の参照を含む。図面は例示により、本発明を実施可能な特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、本文書では「実施例」とも称される。本文書で言及される公開物、特許、および特許文書は、個々に参照により組み込まれているのと同様に、参照により本明細書に全文が組み込まれている。本文書と参照により組み込まれた文書との間で矛盾する使用法がある場合、組み込まれた参考文献における使用法は、本文書の使用法を補完するものとみなすべきである。相容れない不一致に関しては、本文書の使用法が優先される。本文書において、「または」という語は非排他性を指すために使用されるため、「AまたはB」は特に他の指定がない限り「AであるBではない」、「BであるAではない」、および「AおよびB」を含む。以下の請求項において「第1」、「第2」、および「第3」などは単に標記として使用され、対象物に数値的要件を課すことを目的としていない。
【0066】
本文書に記載の方法例は、少なくとも部分的には機械またはコンピュータによって実行可能である。いくつかの例は、上記実施例に記載される方法を実行する電子装置を構成するように動作可能な指示ととともに符号化されたコンピュータ読取可能媒体または機械読取可能媒体を含むことができる。上記方法の実施は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高位言語コードなどのコードを含むことができる。このようなコードは、各種方法を実行するためのコンピュータ読取可能指示を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を成すことができる。さらに、コードは実行中または他の時点で、1つまたはそれ以上の揮発性または不揮発性コンピュータ読取可能媒体に有形に記憶させることができる。これらのコンピュータ読取可能媒体は、ハードディスク、取外し可能磁気ディスク、取外し可能光ディスク(例えば、コンパクトディスクやデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)などを含むことができるが、これらに限定されるものでない。
【0067】
上記の説明は、限定的ではなく例示的であることを目的とする。例えば、上記の実施例(または1つまたはそれ以上のそれらの態様)は、互いに組み合わせて使用してもよい。その他の実施形態も、例えば、上記説明を検討する当業者によって使用することができる。読者が技術的開示の本質を迅速に認識できるように米国特許法施行規則第1.72条(b)項を遵守した要約が提供される。要約は、請求項の範囲または意味を解釈する、あるいは限定するために使用されるものでないという理解の下に提示される。また、上記の詳細な説明では、開示を簡素化するために様々な特徴を共にグループ分けを行ってもよい。このことから、請求項にない開示された特徴がいずれの請求項にとっても必須であると解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、具体的に開示された実施例の必ずしもすべての特徴に存在していなくともよい。よって、以下の請求項は、本明細書において詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態として独立している。本発明の範囲は、添付の請求項が権利を与える均等物の範囲全体と共に、請求項を参照して決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
複数のセンサであって、各センサが生理学的情報を含むセンサ信号を提供するように構成され、少なくとも1つのセンサが植込み可能である、前記複数のセンサと、
前記複数のセンサと通信可能に接続されるプロセッサと、
を備え、前記プロセッサが、
センサ信号から生理学的変化事象を検出し、1つまたはそれ以上の検出された生理学的変化事象の発生の指標を生成するように構成された生理学的変化事象検出モジュールと、
第1のルールを使用して、検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、
第2のルールを使用して、第1のルールでの心不全判定を無効とするかどうかを判定し、
第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示す、
心不全(HF)検出モジュールと、
を含む装置。
【請求項2】
前記第1のルールが、1組の検出可能な生理学的変化事象の過半数が検出されたときに心不全状態の変化を示すことを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のルールが、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のルールが、心音信号においてS3心音の条件が満たされた場合に、陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2のルールが、生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のルールが、患者活動に対する生理学的反応における条件が満たされたとき、陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記心不全検出モジュールが、前記第1のルールでの心不全判定よりも前記第2のルールでの心不全判定に大きな重み付けを行う、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記生理学的変化事象検出モジュールが、前記センサ信号に従って前記検出された生理学的変化事象に重み付けを行うように構成され、
前記心不全検出モジュールが、
前記生理学的変化事象の重みを使用して、心不全状態に変化が生じる可能性を判定し、
前記示された心不全事象に基づいて、心不全状態に変化が生じる可能性の指標を含む警告を提供する、
ように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記心不全検出モジュールが、前記第1および第2のルールに従って前記警告の緊急度を判定するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のセンサが、
植込み型心音センサと、
植込み型インピーダンスセンサと、
植込み型活動センサと、
植込み型呼吸センサと、
植込み型血圧センサと、
植込み型心電図センサと、
植込み型酸素飽和度センサと、
植込み型血流センサと、
植込み型温度センサと、
植込み型胸腔内総インピーダンス(ITTI)センサと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
システムであって、
複数のセンサであって、各センサが生理学的情報を含むセンサ信号を提供するように構成されている、前記複数のセンサと、
植込み型装置であって、
前記センサの少なくとも1つと、
前記植込み型センサと通信可能に接続され、サンプリングされたセンサ信号を提供するように構成されたサンプリング回路と、
前記サンプリング回路と通信可能に接続され、前記サンプリングされたセンサ信号を第2の装置に通信するように構成された第1の通信回路と、を備える前記植込み型装置と、
前記植込み型装置と通信するように構成された第2の通信回路と、前記第2の通信回路と通信可能に接続されるプロセッサとを備える外部装置と、
を備え、前記プロセッサが、
前記植込み型装置から伝達される少なくとも1つのサンプリングされたセンサ信号を含むセンサ信号から生理学的変化事象を検出し、
1つまたはそれ以上の生理学的変化事象の発生の指標を生成する
ように構成された生理学的変化事象検出モジュールと、
第1のルールを使用して、前記検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効とするかどうかを判定し、
前記第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示す
ように構成された心不全検出モジュールと、
を含む、システム。
【請求項12】
前記第1のルールが、1組の検出可能な生理学的変化事象の過半数が検出されたときに心不全状態の変化を示すことを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のルールが、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすること、生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの判定を無効にすることとを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
方法であって、
医療装置を使用して、複数の生理学的センサ信号を感知することであって、各センサ信号が固有の生理学的情報を含み、少なくとも1つのセンサが植込み可能である、前記感知すること、
前記センサ信号を使用して、1組の特定された生理学的変化事象のうちいずれの生理学的変化事象が発生しているかを検出すること、
第1のルールを使用して、前記検出された生理学的変化事象が被験者の心不全状態の変化を示すかどうかを判定すること、
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定すること、
前記第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示すこと、
を備える方法。
【請求項15】
第1のルールを使用して、前記検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定することが、検出された生理学的変化事象の数が、心不全状態の変化を示し前記医療装置によって検出可能である1組の生理学的変化事象の過半数であるときに、前記検出された生理学的変化事象が心不全状態の変化を示すと判定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、検出された生理学的変化事象の特異性に従って陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、S3心音に関する条件が心音信号において満たされたときに前記陰性の第1のルールでの心不全判定を無効にすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、検出された生理学的変化事象の陰性予測値に従って陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、患者活動に対する生理学的反応における条件が満たされたときに陽性の第1のルールでの判定を無効にすることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2のルールを使用して、前記第1のルールでの心不全判定を無効にするかどうかを判定することが、前記第1のルールでの心不全判定よりも前記第2のルールでの心不全判定に大きな重み付けを行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
いずれの生理学的変化事象が発生しているかを判定することが、前記センサ信号に従って前記検出された生理学的変化事象に重み付けを行うことを含み、前記示された心不全状態の変化に基づいて警告を提供することをさらに含み、前記警告は心不全状態に変化が生じる可能性の指標を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
第1および第2のルールに従って前記警告の緊急度を判定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の生理学的センサ信号を検知することが、植込み型心音センサと、植込み型インピーダンスセンサと、植込み型活動センサと、植込み型呼吸センサと、植込み型血圧センサと、植込み型心電図センサと、植込み型酸素飽和度センサと、植込み型血流センサと、植込み型温度センサと、植込み型胸腔内総インピーダンス(ITTI)センサのうち少なくとも1つを感知することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
植込み型装置を使用して少なくとも1つの生理学的センサ信号をサンプリングすることが、前記植込み型装置から外部装置に前記サンプリングされた生理学的センサ信号を伝達すること、前記外部装置を使用して、前記サンプリングされた信号から生理学的変化事象を検出し、検出された事象が心不全状態の変化を示すかどうかを判定し、前記第1および第2のルールに従って心不全状態に変化が生じているかどうかを示すことを含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−504478(P2012−504478A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530308(P2011−530308)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060118
【国際公開番号】WO2010/042790
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】