説明

心無し研削盤

【課題】小型のカバーによってクーラントの飛散を確実に防ぐことができる心無し研削盤を提供することを課題とする。
【解決手段】ベッド10と、ベッド10に設けられた駆動装置20,30と、第一駆動装置20から延設された回転軸22に取り付けられた調整車40と、第二駆動装置30から延設された回転軸32に取り付けられ、調整車32の外周面に対向して外周面が配置された砥石車50と、調整車40と砥石車50との間に配置されたブレード60と、調整車40および砥石車50が収容されたカバー70と、を備え、調整車40とブレード60との間でワークWを回転支持しながら、砥石車50でワークWを研削する心無し研削盤1であって、調整車40および砥石車50と、ベッド10および駆動装置20,30とが、カバー1によって仕切られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整車とブレードとの間でワークを回転支持しながら、砥石車でワークを研削する心無し研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
心無し研削盤は、調整車と、調整車に対向して配置された砥石車と、調整車と砥石車との間に配置されたブレードと、を備え、調整車とブレードとの間でワークを回転支持しながら、砥石車でワークを研削するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−069574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の心無し研削盤では、砥石車に供給したクーラントの飛散を防ぐために、研削盤全体が大型のカバーで覆われている。この構成では、調整車や砥石車を交換するときに、大型のカバーを取り外す必要があるため、メンテナンスが煩雑になるという問題がある。
また、砥石車とワークとが接触する局所をカバーで覆うように構成した場合には、クーラントの飛散を十分に防ぐことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、小型のカバーによってクーラントの飛散を確実に防ぐことができる心無し研削盤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ベッドと、前記ベッドの上面に設けられた駆動装置と、前記駆動装置から延設された一方の回転軸に取り付けられた調整車と、前記駆動装置から延設された他方の回転軸に取り付けられ、前記調整車の外周面に対向して外周面が配置された砥石車と、前記調整車と前記砥石車との間に配置されたブレードと、前記調整車および前記砥石車が収容された箱状のカバーと、を備え、前記調整車と前記ブレードとの間で前記ワークを回転支持しながら、前記砥石車で前記ワークを研削する心無し研削盤であって、前記調整車および前記砥石車と、前記ベッドおよび前記駆動装置とが、前記カバーによって仕切られている。
【0007】
この構成では、調整車および砥石車が配置される加工室のみをカバーで覆う構成であるため、クーラントの飛散を確実に防ぎつつ、カバーを小型化することができる。そして、カバーを小型化することで、カバーを簡単に着脱させることができるため、メンテナンス性を向上させることができる。
また、加工室と駆動装置とがカバーによって仕切られているため、駆動装置がカバー内の熱の影響を受けるのを防ぐことができ、ワークの加工精度を高めることができる。
また、カバー内に供給されたクーラントがベッドに流れないため、ベッドがクーラントの熱の影響を受けるのを防ぐことができ、ワークの加工精度を高めることができるとともに、ベッド内に切粉が溜まるのを防ぐことができる。
【0008】
前記した心無し研削盤において、前記調整車および前記砥石車は、前記各回転軸の先端部に取り付けることが好ましい。
このように、調整車および砥石車を回転軸に片持ちに支持させた場合には、カバー内で調整車および砥石車を回転軸に着脱し易くなるため、調整車や砥石車を簡単に交換することができる。
【0009】
前記した心無し研削盤において、前記カバー内の底面に、前記カバーの外部に通じている排出溝を形成した場合には、カバー内に供給されたクーラントを排出溝からスムーズに排出させることができる。
【0010】
前記した心無し研削盤において、前記調整車を前記カバー内に固定し、前記砥石車を前記カバー内で移動可能なように構成した場合には、調整車を収容するための空間を小さくすることができるため、カバーをより小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の心無し研削盤では、クーラントの飛散を確実に防ぎつつ、カバーを小型化することができ、カバーを簡単に着脱させることができるため、メンテナンス性を向上させることができる。また、カバーを小型化することで、製造コストを低減することができる。
また、駆動装置やベッドが熱の影響を受けるのを防ぐことができるため、ワークの加工精度を高めることができる。
また、ベッド内に切粉が溜まるのを防ぐことができるため、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の心無し研削盤を示した斜視図である。
【図2】本実施形態のカバーを示した正面図である。
【図3】本実施形態のカバーを示した平面断面図である。
【図4】本実施形態のカバーを示した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明において、前後左右方向とは各図に示した方向である。この各方向は心無し研削盤の構造を分かり易く説明するために、便宜上設定したものであり、本実施形態の心無し研削盤の構造を特定するものではない。
【0014】
心無し研削盤1は、図1に示すように、ベッド10と、二つの駆動装置20,30と、調整車40と、砥石車50と、調整車40と砥石車50との間に配置されたブレード60と、調整車40および砥石車50が収容されたカバー70と、を備えている。
この心無し研削盤1は、図2に示すように、調整車40とブレード60との間でワークWを回転支持しながら、砥石車50でワークWを研削するように構成されている。
【0015】
ベッド10は、図1に示すように、心無し研削盤1のベースとなる板状の部材であり、平面視で長方形に形成されている。
【0016】
第一駆動装置20は、調整車40を回転させるための装置である。第一駆動装置20は、ベッド10の上面左側に取り付けられており、モータ21の駆動力によって、第一回転軸22を回転させるように構成されている。
【0017】
第一回転軸22は、軸方向が前後に配置された円形断面の部材であり、後端部が第一駆動装置20に連結されている。つまり、第一回転軸22は第一駆動装置20から前方に向けて延設されている。
【0018】
調整車40は、円板状の部材であり、外周部にゴム層が形成されている。図3に示すように、調整車40の中心穴41には、第一回転軸22の前端部が取り付けられている。
図2に示すように、第一回転軸22および調整車40は、正面視で反時計回り(左回り)に回転するように設定されている。
【0019】
第二駆動装置30は、図1に示すように、砥石車50を回転させるための装置である。第二駆動装置30は、ベッド10の上面右側に取り付けられており、モータ31の駆動力によって、第二回転軸32を回転させるように構成されている。また、第二駆動装置30は、ベッド10に対して左右に移動可能となっている。
【0020】
第二回転軸32は、第一回転軸22と平行かつ同じ高さで、軸方向が前後方向に配置された円形断面の部材であり(図3参照)、後端部が第二駆動装置30に連結されている。つまり、第二回転軸32は第二駆動装置30から前方に向けて延設されている。
【0021】
砥石車50は、円板状の研削砥石であり、図3に示すように、砥石車50の中心穴51には、第二回転軸32の前端部が取り付けられている。
砥石車50と調整車40とは、左右に間隔を空けて並設されており、砥石車50の外周面は、調整車40の外周面に対向して配置されている。
図2に示すように、第二回転軸32および砥石車50は、正面視で反時計回り(左回り)に回転するように設定されている。
【0022】
ブレード60は、図1に示すように、調整車40と砥石車50との間でベッド10の上面に立設された板状の部材である。ブレード60は、図2に示すように、両平面を左右に向けて配置されている。
ブレード60は、下部61よりも上部62が薄く形成されており、上部62は調整車40の外周面に対して左右に間隔を空けて配置されている。また、ブレード60の上端面63は、調整車40側が下がるように傾斜している。
【0023】
心無し研削盤1では、図2に示すように、調整車40と砥石車50との間にワークWを挿入してブレード60の上端面に載置すると、ワークWはブレード60の上端面63の傾斜に沿って調整車40側に移動して、ワークWが調整車40の外周面に接触する。
そして、調整車40および砥石車50を正面視で反時計回り(左回り)に回転させると、調整車40の外周面に接触しているワークWは、正面視で時計回り(右回り)に回転する。
これにより、調整車40の外周面とブレード60の上端面63との間にワークWが回転支持され、さらに、ワークWの外周面に砥石車50の外周面が接触することで、ワークWが砥石車50によって研削される。
【0024】
本実施形態の心無し研削盤1では、図1に示すように、調整車40および砥石車50は、箱状のカバー70内に収容されている。
カバー70は、上板71、下板72、前板73、後板74、右板75および左板76によって構成された中空な六面体である。
前板73は、上板71、下板72、右板75および左板76の前縁部に対して、ボルト等の固定手段によって着脱自在となっている。
【0025】
カバー70の内部は、図2に示すように、調整車40、砥石車50およびブレード60が配置されており、ワークWを研削するための加工室70aとなっている。
心無し研削盤1では、図1に示すように、調整車40および砥石車50が配置される加工室70aと、ベッド10および駆動装置20,30が配置される空間とが、カバー70によって仕切られている。
【0026】
カバー70では、調整車40を収容するための空間(図2の左側の空間)よりも、砥石車50を収容するための空間(図2の右側の空間)が左右に大きく形成されている。このように、カバー70内には、砥石車50が第二駆動装置30(図1参照)に連動して左右に移動するための空間が確保されている。
【0027】
カバー70の後板74には、図3に示すように、第一回転軸22が挿通された第一挿通穴74aと、第二回転軸32が挿通された第二挿通穴74bとが形成されている。
第二挿通穴74bは、左右に延ばされた長穴であり、第二回転軸32が左右に移動可能となっている(図4参照)。
【0028】
カバー70の後板74の後面には、第二挿通穴74bを覆っているフレキシブルカバー77が取り付けられている。
フレキシブルカバー77は、筒状の布の一方の開口部を第二挿通穴74bの周囲に取り付け、他方の開口部を第二回転軸32に外嵌させたものある。
【0029】
フレキシブルカバー77には、蛇腹が形成されており、第二回転軸32の左右への移動に追従して、蛇腹が伸縮するように構成されている。
これにより、第二挿通穴74bをフレキシブルカバー77によって塞いで、カバー70内(加工室70a)の密閉状態を保ちつつ、第二回転軸32を第二挿通穴74b内で左右に移動させ、砥石車50をカバー70内で左右に移動させることができる。
なお、本実施形態では、蛇腹が形成されたフレキシブルカバー77を用いているが、フレシキブルカバーの構成は限定されるものではない。例えば、複数のシャッターを左右に重ねてフレシキブルカバーを構成し、第二回転軸32の左右への移動に追従して、各シャッターがスライドすることで、カバー70内の密閉状態を保つように構成してもよい。
【0030】
図2に示すように、カバー70内の底面72aにおいて、調整車40と砥石車50との間に対応する位置には、前後に延設された排出溝72bが形成されている。
カバー70内の底面72aは、左右の側縁部から排出溝72bに向かうに従って下がるように、排出溝72bの左右両側の部位が傾斜している。
【0031】
排出溝72bは、図1に示すように、カバー70内に供給されたクーラントを排出するための流路であり、前板73に形成された排出口73aおよび後板74に形成された排出口74c(図4参照)に連通している。
カバー70内に供給されたクーラントは、底面72a上を流れて、排出溝72bに流れ込み、各排出口73a,74cから排出管(図示せず)を通じてタンク(図示せず)に貯留される。
【0032】
以上のような心無し研削盤1では、図1に示すように、調整車40および砥石車50が配置される加工室70aのみをカバー70で覆う構成であるため、クーラントの飛散を確実に防ぎつつ、カバー70を小型化することができる。そして、カバー70を小型化することで、カバー70を簡単に着脱させることができるため、メンテナンス性を向上させることができる。
また、カバー70を小型化することで、装置全体を小型化するとともに、製造コストを低減することができる。
【0033】
本実施形態の心無し研削盤1では、加工室70aと駆動装置20,30とがカバー70によって仕切られているため、駆動装置20,30がワークWの研削時に生じるカバー70内の熱の影響を受けるのを防ぐことができる。
また、カバー70内に供給されたクーラントがベッド10に流れないため、ベッド10がワークWの研削時に加熱されたクーラントの熱の影響を受けるのを防ぐことができる。
このように、駆動装置20,30およびベッド10を構成する部品が熱膨張するのを防ぐことができるため、ワークWの加工精度を高めることができる。
【0034】
本実施形態の心無し研削盤1では、カバー70内に供給されたクーラントがベッド10に流れないため、ベッド10内に切粉が溜まるのを防ぐことができ、作業性を向上させることができる。
さらに、図2に示すように、カバー70内の底面72aにクーラントを排出するための排出溝72bが形成されているため、カバー70内のクーラントを排出溝72bからスムーズに排出させることができる。
【0035】
本実施形態の心無し研削盤1では、図3に示すように、調整車40および砥石車50が各回転軸22,32の前端部に片持ちに支持されており、カバー70の前板73を取り外すことで、カバー70内の調整車40全体および砥石車50全体を露出させることができる。したがって、調整車40および砥石車50を各回転軸22,32の前端部に着脱することができ、調整車40や砥石車50を簡単に交換することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図3に示すように、調整車40および砥石車50が各回転軸22,32の前端部に片持ちに支持されているが、調整車40または砥石車50が各回転軸22,32に両持ちに支持されるように構成してもよい。この構成では、カバー70の後板74と同様に、前板73にも各回転軸22,32を挿通させるための挿通穴を形成する必要がある。
【0037】
また、本実施形態では、砥石車50が左右に移動可能となっているが、砥石車50がカバー70内に固定されるように構成してもよく、さらには、調整車40および砥石車50の両方がカバー70で左右に移動するように構成してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、二つの駆動装置20,30にそれぞれ設けられたモータ21,31によって二つの回転軸22,32を回転させているが、一つのモータを有する駆動装置によって二つの回転軸22,32を回転させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 心無し研削盤
10 ベッド
20 第一駆動装置
22 第一回転軸
30 第二駆動装置
32 第二回転軸
40 調整車
50 砥石車
60 ブレード
63 上端面
70 カバー
72a 底面
72b 排出溝
73 前板
74 後板
74a 第一挿通穴
74b 第二挿通穴
77 フレキシブルカバー
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
前記ベッドの上面に設けられた駆動装置と、
前記駆動装置から延設された一方の回転軸に取り付けられた調整車と、
前記駆動装置から延設された他方の回転軸に取り付けられ、前記調整車の外周面に対向して外周面が配置された砥石車と、
前記調整車と前記砥石車との間に配置されたブレードと、
前記調整車および前記砥石車が収容された箱状のカバーと、を備え、
前記調整車と前記ブレードとの間で前記ワークを回転支持しながら、前記砥石車で前記ワークを研削する心無し研削盤であって、
前記調整車および前記砥石車と、前記ベッドおよび前記駆動装置とが、前記カバーによって仕切られていることを特徴とする心無し研削盤。
【請求項2】
前記調整車および前記砥石車は、前記各回転軸の先端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の心無し研削盤。
【請求項3】
前記カバー内の底面には、前記カバーの外部に通じている排出溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の心無し研削盤。
【請求項4】
前記調整車は前記カバー内に固定され、前記砥石車は前記カバー内で移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の心無し研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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