説明

心筋障害抑制剤

【課題】本発明は、心筋梗塞を代表とする種々の心筋障害を抑制し、心筋再生を含む心臓全体としての機能回復を促進することもできる心筋障害抑制剤及びその用途の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、CXCL10に対する中和剤を有効成分とする心筋障害抑制剤を提供する。ケモカインCXCL10に対する中和剤の治療有効量を投与する事によって、被験体の心臓組織の総合的な再生を促進するという新規機序に基づいた、障害心筋の組織的かつ機能的な修復のための治療技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋機能を保護する新規な心筋障害抑制剤に関し、特に心筋傷害(障害)の治療の目的のために、ケモカインCXCL10の中和によって心筋組織構築の保護ならびに心機能の回復を促進するための心筋障害抑制剤並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
〔心筋梗塞について〕
急性心筋梗塞とは、冠動脈が閉塞して心筋に酸素や栄養が供給できなくなる事により心筋壊死に陥ってしまう状態である。心筋梗塞の罹患者のかなりの割合に、一般に左心室再構築、すなわち心筋非薄化、拡張、機能低下を伴うプロセスの結果、うっ血性心不全が発症し、最終的に死に至る。
【0003】
急性心筋梗塞に於いては、従来、狭窄した冠動脈に対してPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)などの手法により、狭窄部を順行性灌流で修復する事を主な標的とした治療が施されている。しかしながら、このような冠動脈に対する対症的療法の便益には限界があり、術後再狭窄、不整脈、うっ血性心不全、心原性ショック、心室中隔穿孔、心破裂などの合併症は、心筋梗塞罹患者の死亡原因としても未だ上位を占める。また、死を免れた患者においても、これらの合併症によって術後のQOL(生活の質)が著しく阻害される事が多い。
【0004】
〔特発性拡張型心筋症について〕
特発性心筋症は原因不明の心筋疾患であり、著明な心筋の肥大を形成する肥大型心筋症と、心内腔の著明な拡大と高度な収縮不全を呈する拡張型心筋症に大別される。とりわけ特発性拡張型心筋症は、重篤なうっ血性心不全や不整脈を起こす予後不良の疾患であり、組織学的には心筋細胞の障害、ならびに間質の炎症細胞浸潤を伴う線維化を呈する。人口10万人に対して米国では36.5人、日本では10人以上と報告されており、厚労省の特定疾患として認定される難病である。根治療法はなく、心不全に対する対症療法に頼らざるを得ない状況であり、利尿剤、強心剤、ACE阻害剤、β遮断剤などが用いられるが、5年生存率は50%とされ、治療法の確立が真に望まれている疾患である。
【0005】
〔左心室再構築と慢性心不全について〕
心筋梗塞に代表される虚血性心疾患、弁膜疾患、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患など多くの心疾患は、進行すると慢性心不全に陥る。慢性心不全では基礎心疾患の進行がなくても徐々に左心室再構築(LV remodeling)が進み、心機能が低下し、うっ血性心不全や重症心室性不整脈の頻度が増加する。その病態は、1)基礎心疾患による心筋細胞の脱落と置換性線維化および残存心筋の絶対的不足、2)残存心筋に生じる肥大と形質変換(「不全心筋」)、3)反応性間質線維化(「心筋細胞の脱落を伴わない領域に徐々に進行する線維増生」)、である。左心室再構築はまた、臨床的に、心筋梗塞の合併症あるいは終末像として極めて重要な課題である。
【0006】
したがって、左心室再構築の予防とその改善が治療目標となっており、残存心筋の絶対的不足に対して心筋の再生を図り、かつ、反応性間質線維化の抑制を図ることが重要である。従来、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(ACEI:Angiotensin−converting enzyme inhibitor)、アンギオテンシンII受容体阻害剤(ARB:Angiotensin II type 1 receptor blocker)、β遮断剤(βアドレナリン受容体阻害剤)などが治療に用いられてきた。また、抗線維化療法、中でもとりわけ、細胞外マトリックス(ECM:extracellular matrix)を標的とした治療法の開発も注目されつつある。それにもかかわらず決定的な治療法はなく、慢性心不全のためにQOL(quality of life)が著しく低下し死亡する症例は多いため新たな治療薬が模索されている。
【0007】
とりわけ、心筋再生を図る方法として、骨髄由来の幹細胞を移植する事により、心筋の再生と心機能改善効果を狙うという、新しい治療方法の可能性が検討され始めている。しかしながら、このような幹細胞を移植する再生療法も、実際には幹細胞のソース、品質管理、投与方法、移植後の管理など、様々な課題が立ちはだかっている。
【0008】
〔ケモカインと心筋障害について〕
ケモカイン(chemokine)は、生体内で産生される、白血球遊走・活性化作用を有する塩基性の、ヘパリン結合性タンパク質の総称である。一次構造上保存された部位に4つのシステイン残基があり、最初の2つのシステイン残基の部位により、CXC、CC、C、CX3Cと4つのサブファミリーに分類されている。その受容体もCXCR1−6、CCR1−10、CR1−2、CXC3CR1と現在まで19種類報告されている。各受容体は特定の細胞上に特異的に発現しており、免疫担当細胞の特定の場所への遊走・定着が、ケモカインとケモカイン受容体によって制御されている。さらに、例えば受容体CXCR3のリガンドには、CXCL9、CXCL10、CXCL11の3種類が報告されているが、これら3種類のケモカインの作用が必ずしも同一ではないことも明らかになっている。したがって、同じケモカインファミリーであっても個々の役割は極めて多様性があるため一括して考える事は不可能であり、生体内で実際にどのような機能を果たしているかという点については未だ十分解明されていない。
【0009】
心筋梗塞、心筋症、左心室再構築に対するケモカインの役割に関して、その全貌は未だ明らかになっていないが、単球・マクロファージに対する遊走活性を示すケモカインMCP−1/CCL2とその受容体CCR2に関しては、いくつかの報告がある(非特許文献1)。CCL2もしくはCCR2の機能を阻害することによって、心筋梗塞に伴うマクロファージの浸潤ならびに過剰なMMP活性を抑制し、疾患の程度ならびに左心室再構築を抑制することが報告されている。一方、IP−10/CXCL10に関しては、CXCL10の機能として考えられている血管新生阻害機能から、心筋梗塞においても血管新生を抑制しているのではないかと推測されているものの(非特許文献2)、その機能阻害実験等の報告は皆無であり、生体内ことに心臓内での役割に関しては全く不明のままである。
【0010】
【非特許文献1】Kaikita K et al.Am J Pathol.165:439−447,2004,Dewald O et al.Circ.Res.96:881−889,2005
【非特許文献2】Frangogiannis NG et al.FASEB J express article 10.1096/fj.00−0745,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
心筋損傷に関連する、不全心筋とその機能障害を修復する事は、現代の移植療法や細胞療法を擁しても未だに困難で、かつ限界がある。したがって、被験体の心臓組織の総合的な再生を図る事は、虚血性心疾患、心筋症、慢性心不全における心室再構築に対する効果的な治療を実現させる上で極めて重要な課題である。本発明は、従来の問題点に鑑み、心筋梗塞を代表とする種々の心筋障害を抑制し、心筋再生を含む心臓全体としての機能回復を促進することもできる心筋障害抑制剤及びその用途の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、心筋梗塞を罹患する被験体に、ケモカインの一種であるCXCL10に対する中和剤を投与する事によって、該中和剤が、生体内で心筋障害を回避するという、予想外の作用を発揮することを見出した。具体的には、疾患モデル動物、すなわち心筋梗塞モデルにおいて、CXCL10に対する中和抗体を投与し、CXCL10の活性を阻害する事によって、生存率の向上、心破裂を含む心筋障害の軽減、肺うっ血の改善、組織学的所見の改善、心筋梗塞の終末像としての左室拡張の抑制、ならびに心臓細胞の再生促進に基づく、病態の改善を認めた。
係る知見に基づき、ケモカインCXCL10に対する中和剤の治療有効量を投与する事によって、被験体の心臓組織の総合的な再生を促進するという新規機序に基づいた、障害心筋の組織的かつ機能的な修復のための治療技術が提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
〔1〕 CXCL10に対する中和剤を有効成分とする心筋障害抑制剤。
〔2〕 少なくとも心筋細胞の増殖を促進することを特徴とする、〔1〕に記載の心筋障害抑制剤。
〔3〕 心筋障害を呈する病態の治療または予防に用いられる、〔1〕または〔2〕に記載の心筋障害抑制剤。
〔4〕 前記心筋障害を呈する病態が、急性心筋梗塞、術後再狭窄、不整脈、うっ血性心不全、心原性ショック、心室中隔穿孔、心破裂、肺うっ血、心負荷、左心室再構築、特発性心筋症、虚血性心疾患、弁膜疾患、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患、及び慢性心不全から選ばれる心疾患である、〔3〕に記載の心筋障害抑制剤。
〔5〕 前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に特異的に結合し、CXCL10の活性を抑制する因子である〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
〔6〕 前記CXCL10に対する中和剤が、抗CXCL10抗体である〔5〕に記載の心筋障害抑制剤。
〔7〕 前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10の発現を抑制する因子である〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
〔8〕 前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に対する受容体の拮抗剤である〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
【0014】
〔9〕 CXCL10に対する中和剤の有効量を、心筋細胞に投与する工程を含む、心筋の再生促進方法。
〔10〕前記心筋細胞が哺乳動物の心筋細胞である、上記〔9〕に記載の心筋の再生促進方法。
〔11〕前記哺乳動物がヒトである、上記〔10〕に記載の心筋の再生促進方法。
〔12〕心筋組織に前記中和剤を投与して、心筋障害を呈する病態を治療または予防する上記〔9〕から〔11〕のいずれか一項に記載の心筋の再生促進方法。
〔13〕前記心筋障害を呈する病態が、急性心筋梗塞、術後再狭窄、不整脈、うっ血性心不全、心原性ショック、心室中隔穿孔、心破裂、肺うっ血、心負荷、左心室再構築、特発性心筋症、虚血性心疾患、弁膜疾患、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患、及び慢性心不全から選ばれる心疾患よりなる群から選択される、上記〔12〕に記載の心筋の再生促進方法。
〔14〕前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に特異的に結合し、CXCL10の活性を抑制する因子である、上記〔9〕から〔13〕のいずれか一項に記載の心筋の再生促進方法。
〔15〕前記活性を抑制する因子が、抗CXCL10抗体である、上記〔14〕に記載の心筋の再生促進方法。
〔16〕前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10の発現を抑制する因子である、上記〔9〕から〔13〕のいずれか一項に記載の心筋の再生促進方法。
〔17〕前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に対する受容体の拮抗剤である上記〔9〕から〔13〕のいずれか一項に記載の心筋の再生促進方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、心筋が保護され、その障害が効果的に抑制され、心疾患や心筋細胞の組織的かつ機能的な修復のために有用な心筋障害抑制剤およびその用途が提供される。
【0016】
本発明は、急性心筋梗塞に罹患する患者に対し、幹細胞移植療法なしに心筋障害を軽減する治療法の確立に利用する事ができる。また、心筋梗塞の合併症に伴う症状、特に死に至る合併症を予防するための治療法の確立に利用できる。さらに、急性心筋梗塞の他にも心筋障害を呈する病態、例えば特発性拡張型心筋症などの治療法への応用も期待できる。したがって本発明により、重症の虚血性心疾患や心筋症、心不全に陥った患者に対し、心再生を促進しながら機能的にも改善させるという、新規の生体内作用機転を有する治療法開発への道が拓かれたと言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は限られた数の実施形態に関して記載されたが、本発明の多くのバリエーション、改変及び他の適応を行う事ができる点を理解されたい。
【0018】
本発明の心筋障害抑制剤は、ケモカインの一種であるCXCL10に対する中和剤を有効成分とする。ケモカインは白血球遊走・活性化作用を有する生理活性物質であることは、上述の通り従来から知られているが、生体外から投与したCXCL10に対する中和剤が不全心筋に寄与することは全く知られておらず、実際に心筋障害に伴う左心室再構築を抑制するという作用は、本発明者によって初めて発見された事である。すなわち、本発明は、ケモカインの生体内機能として従来全く報告の無かった、心筋障害抑制に関わる新機能の発見に基づくものである。
【0019】
本発明においてCXCL10に対する中和剤とは、CXCL10の生理的機能の活性を抑制させる作用を有する薬剤のことをいい。CXCL10に対する活性阻害剤と言い換えることもできる。CXCL10の生理的機能とは、CXCL10に起因して発揮される機能を意味し、例えばCXCL10が受容体、具体的には例えばCXR3に結合して発揮される機能が挙げられる。CXCL10に対する中和剤の好ましい一形態としては、CXCL10の活性を抑制し、少なくとも心筋障害の抑制を導く因子を挙げることができる。また、中和剤としては、CXCL10に特異的に結合し、CXCL10の生理的機能の活性を抑制する因子、およびCXCL10の発現を抑制する(例えば、発現の程度、量または速度を低下させる)因子が例示される。
【0020】
本発明において、CXCL10に対する中和剤は、CXCL10の生理的機能の活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10に結合する任意の分子(結合分子)であり得る。このような結合分子として好ましくは、CXCL10に対する抗体(抗CXCL10抗体)が例示される。また、CXCL10に対する中和剤としては、CXCR3受容体のフラグメントまたはそのペプチド模倣物であって、CXCL10の生理的機能の活性を低下させるのに十分な親和性でCXCL10に結合するものも、例示される。さらに、CXCL10を特異的に分解する酵素なども例示される。
【0021】
そして、CXCL10に対する中和剤としては、CXCL10に直接的に作用して活性を低下させる物質だけでなく、CXCL10以外の物質に作用することにより間接的にCXCL10の活性を阻害する物質も例示される。このような中和剤の例としては、CXCL10に対する受容体の拮抗剤(アンタゴニスト)が示される。CXCL10に対する受容体としては、心筋細胞に存在する受容体、例えばCXCR3−A、CXCR3−BなどのCXCR3を挙げることができる。
【0022】
抗CXCL10抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体や、ヒト化抗体などの組換え抗体等の各種の形態を取り得る。
【0023】
ポリクローナル抗体を、例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物において惹起するための方法は当該分野で周知である。哺乳動物としては通常抗ペプチド抗体の産生の際宿主動物として用いられる動物が挙げられ、通常、必要とされる抗血清の量に基づいて選択される。例えば、ウサギ、マウス、モルモット、ラット等が使用される。多量の血清が必要な場合には、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタまたはロバのようなより大きな動物を使用してもよい。適切な動物としては、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターが挙げられる。これらの動物から得られる血清の量は、通常1回の採血につきウサギの場合で最大で25mL程度、マウスの場合で100〜200μL、その他の動物の場合で1〜2mLの血清を産生する。例えば、フロイント完全アジュバントのような適切なアジュバント中にある15〜50μgの抗原を、2〜4週間の間隔をあけて2回動物に注射した後で、血液が収集され得、そして抗血清の分析がなされ得る。
【0024】
さらに、モノクローナル抗体は、当該分野で周知でありかつ慣用的である方法を使用して入手され得る。免疫原として使用するためのタンパク質(例えば、CXCL10)のペプチド部分は、当該分野で周知の方法によって決定され得る。CXCL10で免疫されたマウスに由来する脾臓細胞を、適切な骨髄腫細胞株と融合させることにより、ハイブリドーマ細胞を生成し得る。クローン化されたハイブリドーマ細胞株の中から抗CXCL10を分泌するクローンを同定するために、標識化CXCL10タンパク質を用いてスクリーニングすると、所望の特異性および親和性を有する抗CXCL10モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマが単離され得る。係るハイブリドーマは、抗体中和剤の持続的供給源として利用され得る。
【0025】
組換え抗体、例えば、キメラおよびヒト化抗体は、この分野において知られている方法により得ることができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体フレームワークに本質的に任意の抗原結合特異性を付与することによって構築され得る。ヒト化抗体は、本発明を実施するため、特に本発明を治療的に利用する場合に抗体中和剤に対する宿主の免疫応答を回避することができる点で有用である。
【0026】
一方、CXCL10に対する中和剤の一例としては、前記したように、CXCL10の発現を抑制する因子も挙げられる。例えば、CXCL10の遺伝子領域の機能を阻害また促進し、そして、CXCL10発現の程度、量または速度、あるいはその活性の減少を与える調節分子、調節タンパク質、或いはそれらの任意のフラグメント、または前記遺伝子領域に結合する任意の分子、アンチセンス核酸やその他の転写阻害剤などが挙げられ得る。
【0027】
アンチセンス核酸、すなわち例えばCXCL10のコード核酸に対するアンチセンス配列を含むポリヌクレオチド分子をCXCL10に対する中和剤として使用した場合には、前記コード核酸に対応するmRNAの転写または翻訳をブロックし得る。詳細には、CXCL10をコードする核酸の塩基配列に対して相補的な配列を有するポリペプチドにより、細胞を形質転換する方法である。このような方法は当該分野で周知であり、CXCL10をコードする核酸のセンスまたはアンチセンスのポリヌクレオチドは、CXCL10をコードする配列のコード領域または制御領域に沿って種々の位置から設計され得る。このようにして得られるアンチセンス分子を使用して、CXCL10活性を中和し得るか、または遺伝子機能の調節を達成し得る。また、本発明においては、中和剤として、CXCL10に対し特異的なリボザイム、RNAi活性分子(siRNA)などを用いてもよい。
【0028】
本発明において、心筋障害抑制剤の投与条件には特に制限はない。一般には、処置される心筋細胞傷害(障害)の重篤度;傷害(障害)の速度または量;被験体の体重、性別、年齢および健康状態;特定の化合物の生化学的性質、生物活性、バイアビリティおよび副作用;ならびに併用する処置レジメンに適合する様式において適切な様式、剤形および量で、当業者により処方され、投与され得る。適切な投薬量および処方は、当該分野で公知の特定の障害に関する信頼性ある動物モデルから推定され得る。本発明の心筋障害抑制剤の投薬量は、その有効成分であるCXCL10に対するその中和剤のCXCL10に対する結合親和性に基づいて調整することができ、結合親和性が高いほど少量とすることができる。また、適切な投薬量は、有効成分であるCXCL10に対する中和剤が治療学的有効量となるような量とすることができ、特定の処置に応じて、および所望される処置の期間に応じて調整され得る。治療的処置のために有用な投薬量は、通常、1日あたり体重1kgあたり、約10μg〜約1mgとの間で調整することができる。代表的な例を挙げると、約0.1μg/ml〜約100μg/ml、約1.0μg/ml〜約50μg/ml、中でも約2μg/ml〜約50μg/mlそして特に、52μg/ml〜10μg/mlの血漿濃度を達成するようにCXCL10に対する中和剤を調製し、該中和剤を生理的に受容可能な組成物とした上で投与することができる。
【0029】
本発明の心筋障害抑制剤の有効成分たる中和剤は、当該分野で公知の多数の経路により被検体に投与され得る(例えば、全身投与(例えば、静脈内投与))。本発明の心筋障害抑制剤は、例えばCXCL10に対する中和剤が、任意の方法で単離され実質的に精製されたポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントの形態を取る場合、当業者に公知の処方により調製された薬学的に受容可能な処方物として提供され得る。このような処方物の投与経路は多様であり、例えば、標準的経路(局所経路、経皮経路、腹腔内経路、経口経路、直腸経路、または非経口経路(例えば、静脈内経路、皮下経路、もしくは冠動脈内経路)を含む)が挙げられる。このうち静脈内投与が、本発明を実施するために特に適切な経路である。冠動脈内経路は、損傷部位または外傷部位に上記中和剤の送達を標的化するために実施され得る。さらに、CXCL10に対する中和剤の改変体が、生分解性ポリマー中に組み込まれ得、これにより、心筋障害を軽減するために有用な化合物の徐放が可能になる。
【0030】
本発明の心筋障害抑制剤は、CXCL10に対する中和剤および薬学的に受容可能なキャリアを含有する製剤とし得る。薬学的に受容可能な媒体(キャリア)を含有する製剤とすることができる。すなわち、CXCL10に対する中和剤は、薬学的に受容可能な媒体(キャリア)と一緒に溶液または懸濁物として投与され得る。そのような薬学的に受容可能な媒体は、例えば、滅菌水性溶媒(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水、通常生理食塩水もしくはリンゲル溶液、または他の生理学的緩衝化生理食塩水)または他の溶媒もしくはビヒクル(例えば、グリコール、グリセロール、油(例えば、オリーブ油)もしくは注射可能な有機エステル)であり得る。薬学的に受容可能な媒体としては、さらに、生理学的に受容可能な化合物(例えば、中和剤を安定化する化合物、その溶解度を増加する化合物、もしくはその吸収度を増加する化合物)も例示される。また上記生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、糖質(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン);キレート剤(例えば、EDTA)(これは、微生物膜を破壊する);二価金属イオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム);低分子量タンパク質;脂質またはリポソーム;または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられる。、薬学的に受容可能なキャリアは、CXCL10に対する中和剤、それを含む組成物の投与経路、ならびにその特定の物理的特徴および化学的特徴に鑑みて適宜選択することができる。
【0031】
本発明の心筋障害抑制剤は、投与経路に応じた処方物として調製することができる。非経口投与に適切な処方物としては、水性および非水性の滅菌注射溶液(例えば、上記の薬学的に受容可能な媒体の中から適宜選択された化合物から調製される。)が挙げられる。係る滅菌注射溶液は、さらに、例えば、緩衝剤、静菌剤、および、得られる処方物が意図されるレシピエントの血液に対し等張となるように調整するための溶質を含み得る。その他の処方物としては、例えば水性および非水性の滅菌懸濁物が挙げられる。該滅菌懸濁物は、懸濁剤および濃化剤を含み得る。これらの処方物は、単位用量容器または多用量容器(例えば、密封アンプルおよび密封バイアル)中に適宜収容され、そして使用直前に例えば滅菌液体キャリアの添加を必要とする凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即時注射溶液および即時注射懸濁物は、公知の各種滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0032】
本発明の心筋障害抑制剤は、生体に投与されることにより、心筋障害抑制作用を発揮することから、治療目的、学術的目的などその目的によらず、心筋梗塞を代表とする心筋障害を抑制しようとするあらゆる場面において適用可能である。心筋障害抑制作用とは、心筋障害を抑制する作用すべてを含む意味であり、心筋細胞の増殖促進、心筋再生の促進のほか、心筋障害の未然予防などを指す。すなわち、心筋障害を呈する病態の治療または予防、具体的には、心筋障害を呈する病態からの心筋組織構築の保護、障害部分の心筋再生・修復促進、損なわれた心機能の回復、心破裂の予防などの各種作用を含む包括的な意味である。心筋障害を呈する病態としては、急性心筋梗塞、その合併症(術後再狭窄、不整脈、うっ血性心不全、心原性ショック、心室中隔穿孔、心破裂、肺うっ血、心負荷、左心室再構築など)、特発性心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症)、虚血性心疾患、弁膜疾患、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患、慢性心不全等の各種心疾患が例示される。また、初回梗塞、広範囲前壁梗塞、持続高血圧等の危険因子(リスクファクター)を持つ患者において急性期に本発明の心筋障害抑制剤を投与することにより、重篤な組織・機能障害を未然に予防することができ、有用である。
【0033】
上述のように本発明は、各種心疾患による心筋障害抑制作用を発揮するため、各種の治療目的、学術的目的で利用することができ、特に臨床的に有用である。本発明の心筋障害抑制剤の適用対象は、心筋組織損傷に関連する、心筋細胞の損失と心不全などの機能障害を有する被験体、またはそれを発症する可能性のある被験体であり、例えばヒトの場合には、上記心疾患患者やリスクファクター保持者とすることができる。ヒト以外の各種哺乳類、例えば実験動物、家畜、愛玩動物等にも適用可能である。
【0034】
また、本発明の心筋再生促進方法は、CXCL10に対する中和剤の有効量を、心筋細胞に投与する工程を含むものである。
【0035】
CXCL10に対する中和剤の有効量を、生体、或いは生体から採取した心筋細胞に投与することにより、該中和剤の心筋障害抑制作用が発揮されることから、本発明の心筋障害抑制方法は、心筋に対する障害を抑制しようとするあらゆる場面において適用可能である。本発明の心筋障害抑制方法の好ましい形態の一つとして、心筋に障害を有する被験者、例えば各種心疾患の治療・予防が挙げられる。また、本発明の方法は、心筋細胞の動態観察など学術的目的においても利用することができる。
【0036】
一方、本発明の心筋障害抑制剤は、心筋障害抑制のための治療システムとしての応用も可能である。例えば、CXCL10に対する中和剤を含む、心筋障害抑制キットの形態で提供される。CXCL10に対する中和剤は、既に本発明の心筋障害抑制剤の項で説明したとおりであり、その代表的なものとして抗CXCL10抗体を挙げることができる。
【0037】
例えば、少なくとも1回の治療適用に十分な量のCXCL10に対する中和剤を個別に包装し、この包装体を少なくとも1つ含むキットとすることができる。また、キットには、必要に応じて、該キットを心筋障害抑制の目的において使用するための指示書を同封することができる。更にキットには、CXCL10に対する中和剤を心筋障害の抑制に用いる際に適切な緩衝液および溶液を組み込むこともできる。
【実施例】
【0038】
非限定的実施例により、本発明をさらに例示する。以下の実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。
【0039】
実施例1
心筋梗塞のマウスモデルとして、世界標準化されている(総説:Jugdutt BI.circulation 108:1395−1403,2003、Kaikita K et al.Am J Pathol 165:439−447)、冠動脈結紮法により急性心筋梗塞を惹起したマウスを準備した。C57BL/6Jマウス(雌、8〜12週齢、Jackson Laboratory社製)に対し、ペントバルビタール(50mg/kg)を腹腔内に投与して麻酔を施した。気管内挿管後、人工呼吸器(島野社製)を用いて換気量0.3ml、呼吸回数110回/分の陽圧換気を施し、実体顕微鏡(オリンパス製)下に手術を行った。右側臥位にて肋間を切開し、心臓を露出した後、左前下行枝上を左房下縁1mm下の部位で8−0のポリプロピレン糸で結紮した。心筋虚血部位は心筋の色調変化、ならびに心電図におけるST部分の上昇で確認した。その後、肋間を6−0のポリプロピレン糸にて閉胸し、5−0の絹糸にて皮膚縫合を行った。抜管後、マウスが覚醒するまで37℃の温熱シート上で安静を保たせた。
【0040】
心筋梗塞惹起前ならびに惹起後の6、12、24、48、72時間でマウスを屠殺、心臓を採取した。ただちに液体窒素で凍結し、全RNAを、RNAzol試薬(BIOTECX LAB社製)を用いて抽出し、cDNAまで逆転写した。CXCL10ならびにその受容体CXCR3の発現は、ABI7700 sequence detector system(PE Applied Biosystems社製)を用い、50℃2分、95℃15秒、60℃1分という増幅サイクルを40回行うリアルタイム定量PCR法にて解析した。各々のサンプルのCXCL10ならびにCXCR3の発現量は、内因性コントロールである18SリポソーマルRNAの発現量で補正した後に、相対的発現量の経時的推移で示す。
【0041】
定量的PCRの結果を図1−1及び図1−2に示す。恒常時の心臓においてはCXCL10の発現はわずかにしか検出されなかったが、心筋梗塞後6時間という早期よりその発現は劇的に増強し、24時間以降減弱した(図1−1)。一方、CXCR3の発現は、CXCL10とは逆に早期に発現レベルが低下し、48時間以降に有意に増強した(図1−2)。
【0042】
実施例2
CXCL10の発現増強が、心臓にとって有益なのか、あるいは有害な現象なのかを解析する目的で、実施例1と同じ条件で心筋梗塞を惹起し、下記の試験を行った。C57BL6/Jマウス(8週齢、雌、Jackson社製)に心筋梗塞を惹起する前日に、200μgのモノクローナルCXCL10抗体(IP−10antibody。200μLの滅菌PBS中に懸濁した)の尾静脈注射を1回与えた。以後、第14病日まで同量を隔日で投与した(抗CXCL10投与群)。本実施例において使用したモノクローナル抗体は、CXCL10に特異的であり、その受容体CXCR3の他のリガンドであるCXCL9およびCXCL11とは免疫学的に交差しない。また中和活性としては、CXCR3陽性活性化Tリンパ球の走化性を抑制する。経時的にマウスを屠殺し、生存率を対照群(モノクローナルCXCL10抗体に代えて滅菌PBSを投与したほかは、上記抗CXCL10投与群と同様に処理した群)と比較検討した。
【0043】
図2に生存率を示す。抗CXCL10抗体投与群では全例(n=10)生存したのに対し、対照群では30%のマウスが死亡した(n=13)。死因は全例心破裂であった。したがって、本結果により、抗CXCL10抗体投与により、心筋梗塞による心破裂が抑制できることが示された。
【0044】
実施例3
心筋梗塞後の左心室再構築の指標として心重量/体重比を、また心負荷の指標として肺うっ血の程度、すなわち肺重量/体重比を測定した。測定対象は、実施例2の抗CXCL10投与群及び対照群のうち、心筋梗塞惹起1日後及び7日後(1週間後)のものとし、屠殺後の各個体から各臓器を採取し測定した。急性心筋梗塞における心重量/体重比、肺重量/体重比と抗CXCL10抗体による修飾結果を表1に示す。心筋梗塞1週間後において、抗CXCL10抗体投与群で肺重量/体重比の有意な減少を認めた(p<0.01、t検定)。これは、抗CXCL10抗体によって心筋梗塞に伴う肺うっ血ならびに心負荷が軽減されることを示している。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例4
心筋梗塞後の左心室再構築に関与する炎症細胞、とりわけマクロファージと好中球の浸潤を、免疫組織学的に検討した。実施例2の抗CXCL10投与群及び対照群のうち、心筋梗塞惹起1日後、3日後、5日後、7日後及び14日後のものを対象とし、屠殺後の各個体から心臓を採取した。心臓をOCTコンパウンド(Miles社製)に包埋し、液体窒素で凍結ブロックを作成した。クライオスタット(Microm社製)で6μmの切片を作成し、抗CD68抗体(クローンFA−11;ラットモノクローナル抗体;Serotec社製)、抗好中球抗体(クローンGr−1;ラットモノクローナル抗体;Southern Biotechnology社製)を用い4℃で1晩反応させた後、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(ニチレイ社製)で反応させ、発色基質DAB(ニチレイ社製)を使用して陽性細胞を光学顕微鏡下で観察した。切片mm2あたりの陽性細胞数をカウントした。結果を図3−1及び3−2に示す。抗CXCL10抗体投与群及び対照群間で、CD68陽性マクロファージならびにGr−1陽性好中球のそれぞれの浸潤数とも有意差を認めなかった。これは、抗CXCL10抗体の心破裂抑制作用が、マクロファージや好中球浸潤とは異なる機序で発揮されていることを示唆する。
【0047】
実施例5
次に、心筋細胞の脱落を調べる目的で、アポトーシスに陥った細胞数を組織学的に検討した。実施例4と同様の方法で心臓組織切片を作成し、TUNEL染色(TRVIGEN社製)を行った。組織上の定量も、実施例4に記載のごとく行った。TUNEL陽性死細胞数の経時的推移を図4に示す。抗CXCL10抗体投与群、対照群間で、TUNEL陽性の死細胞数に有意差を認めなかった。この結果は、抗CXCL10抗体投与においても、心筋細胞の脱落に関しては同程度に起こることを示唆する。
【0048】
実施例6
残存心筋の絶対的不足を補うための心筋再生がどの程度生じてくるかを調べる目的で、増殖細胞の指標となるBrdU(5−ブロモ−2'−デオキシウリジン/臭化デオキシウリジン)の取込みを解析した。BrdUはチミジン類似体であり、細胞周期のS期の間にDNA中に取り込まれる。BrdUで組織を標識するため、実施例2の抗CXCL10投与群及び対照群のうち、心筋梗塞惹起1日後、3日後、5日後、7日後及び14日後のものを対象とし、各マウスにBrdU(Sigma社製;500μgを100μL中の滅菌PBSで懸濁した)を尾静脈注射した。1時間後に屠殺、心臓を採取し、実施例4の方法で凍結切片を作成した後、抗BrdU抗体を用いた免疫染色(BrdU染色キット;Zymed社製)を追加して実施し、S期核を特異的に検出した。組織上の定量も、実施例4に記載のごとく行った。結果を図5に示す。抗CXCL10投与群および対照群のいずれも、心筋脱落(図5で心筋梗塞1日後)に遅れて、3日目よりBrdU陽性細胞が増加する。しかし抗CXCL10抗体投与群では、BrdU陽性細胞数が対照群に比べて有意に増加し、かつ1週間後まで多数のBrdU陽性細胞を認めた(p<0.005;3日目、p<0.001;7日目、t検定)。これは、心筋梗塞後の増殖すなわち、心再生機構が、抗CXCL10抗体投与により、劇的に促進されていることを示唆する。
【0049】
実施例7
心筋の非薄化、ならびに線維化の程度を形態・組織学的に評価するために、心筋梗塞7日後、14日後でマッソン・トリクローム染色を試行した。すなわち、実施例2の抗CXCL10投与群及び対照群のうち、心筋梗塞惹起7日後及び14日後のものを対象とし、実施例4と同様に心臓組織切片を作成し、マッソン・トリクローム染色を行った。その結果、対照群では、梗塞部心筋の非薄化ならびに反応性間質線維化が認められるのに対し、抗CXCL10抗体投与群では、いずれの所見も抑制されていた。したがって、抗CXCL10抗体投与によって、心筋梗塞後の左心室再構築が抑制されていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1−1】図1−1は、急性心筋梗塞におけるCXCL10 mRNA発現の推移を示す図である。
【図1−2】図1−2は、急性心筋梗塞におけるCXCR3 mRNA発現の推移を示す図である。
【図2】図2は、急性心筋梗塞における生存率と抗CXCL10抗体による修飾を示す図である。
【図3−1】図3−1は、急性心筋梗塞におけるマクロファージの浸潤と抗CXCL10抗体による修飾を示す図である。
【図3−2】図3−2は、急性心筋梗塞における好中球の浸潤と抗CXCL10抗体による修飾を示す図である。
【図4】図4は、急性心筋梗塞における心内TUNEL陽性死細胞数と抗CXCL10抗体による修飾を示す図である。
【図5】図5は、急性心筋梗塞における心内BrdU陽性増殖細胞数と抗CXCL10抗体による修飾を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CXCL10に対する中和剤を有効成分とする心筋障害抑制剤。
【請求項2】
少なくとも心筋細胞の増殖を促進することを特徴とする、請求項1に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項3】
心筋障害を呈する病態の治療または予防に用いられる、請求項1または2に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項4】
前記心筋障害を呈する病態が、急性心筋梗塞、術後再狭窄、不整脈、うっ血性心不全、心原性ショック、心室中隔穿孔、心破裂、肺うっ血、心負荷、左心室再構築、特発性心筋症、虚血性心疾患、弁膜疾患、心筋症、心筋炎、高血圧性心疾患、及び慢性心不全から選ばれる心疾患である、請求項3に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項5】
前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に特異的に結合し、CXCL10の活性を抑制する因子である請求項1から4のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項6】
前記CXCL10に対する中和剤が、抗CXCL10抗体である請求項5に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項7】
前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10の発現を抑制する因子である請求項1から4のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項8】
前記CXCL10に対する中和剤が、CXCL10に対する受容体の拮抗剤である請求項1から4のいずれか一項に記載の心筋障害抑制剤。
【請求項9】
CXCL10に対する中和剤の有効量を、心筋細胞に投与する工程を含む、心筋の再生促進方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−13355(P2010−13355A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285377(P2006−285377)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(505156709)株式会社ステリック再生医科学研究所 (16)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】