説明

心肺バイパスを用いた心臓手術のためのモニタリング・システム及び方法

【課題】手術中の酸素送出DO及び炭酸ガス生成VCO値及び患者の代謝の必要性に関して酸素送出DOの適切さについての適切で連続的及びオンラインの情報を提供する。
【解決手段】ポンプ流量検出装置42が、ポンプ流量値Qpを連続的に測定し、それをプロセッサに送る。ヘマトクリット読み取り装置43が、血液のヘマトクリット値を連続的に測定し、それをプロセッサに送る。データ入力装置50を介して動脈酸素飽和度及び動脈酸素張力についてのデータが入力される。プロセッサは、酸素送出値をポンプ流量値、ヘマトクリット値、動脈酸素飽和度値及び動脈酸素張力値に基づいて計算する。その計算された酸素送出値がリアルタイムでディスプレイ11により表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺バイパス(CPB)を必要とする心臓手術中に適用されるモニタリング・システム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
体外循環及びCPBを用いた心臓手術中に、心臓及び肺の機能が、人工心肺装置により人工的に置換される。この人工心肺装置は、患者の静脈血を受け取って、それを(ローラ式又は遠心力式ポンプを介して)酸素付加装置へ送出し、その酸素付加装置は、炭酸ガス(CO)クリアランス及び酸素(O)供給を患者に、血液とガス流(可変濃度の酸素及び空気)との間のトランスメンブラン交換(transmembrane exchange)により与える。
【0003】
患者のための適切なポンプ流量は、通常、体表面積、及びCPBが実施される温度を考慮した特定の表に基づいて決定される。温度が低ければ低いほど、必要とされるポンプ流量は低い(それは、代謝の必要性が低減されるからである。)。例えば、24℃と37℃との温度範囲において、流量は、2.0L/min/mと3.0L/min/mとの間で変わり得る。ポンプ流量の目標は、代謝の必要性を支えるため適切な酸素量を様々な器官に与えることにある。これは、ポンプ流量に依存するばかりでなく、血液酸素含有量に従ってヘモグロビン(Hb)濃度にも依存する。CPB中に、血液希釈の貧血状態(Hb濃度が正常な15g/100mlから5−10g/100mlまで落ちる場合には、時に深刻である。)があるので、不十分な酸素送出(DO)を提供する可能性が現実にありそして相当頻繁にあることが明らかである。
【0004】
最近、多くの科学論文が、過度の貧血か、低い流量、あるいはその両方に起因した不十分な酸素送出が術後合併症及び外科手術上の死亡率の増加の原因であることを立証している(参考文献1−8)。
【0005】
現在、CPB中にDOにより導出されたパラメータの入手可能な唯一の連続的モニタリングは、静脈酸素飽和度(SvO)の連続的モニタリングである。このモニタリングは、酸素消費量(VO)、即ち代謝必要性のマーカと、血液流量と、末梢酸素抽出(動脈−静脈差(artero−venous difference))との関係、即ち
VO=流量×(動脈−静脈O差)
に基づいている。
【0006】
ポンプ流量が必要とされるVOを維持するのに不適切である場合、より多くの酸素を末梢から抽出することが必要であり、従って、静脈血は、低飽和となるであろう(飽和度が正常の75%から60%以下に低減し得る。)。
【0007】
現在、3つの静脈酸素飽和度(SvO)システムが商業的に利用可能である(DataMaster Dideco(登録商標)、CDI Terumo(登録商標)及びOSat Spectrum Medical(登録商標))。最後の1つのシステムを除いて、これらのシステムは全て、非常に高価な使い捨てセルにより他の変数(ヘマトクリット、電解質等)を測定する。従って、これらのモニタリング・システムは、日常的には用いられなく、そしてそれらの応用は、通常、特定の高リスク・カテゴリの患者(即ち、先天性小児心臓外科手術患者)のため確保されている。
【0008】
更に、SvO測定は、適切なポンプ流量を保証するものではない。実際には、SvOは、非常に重大なDO低減のためにのみ低減する。これは、SvOが患者から生じる全静脈血の状態を表すことに起因する。この血液は、更にそして大いに、様々な器官及び区域(筋肉、皮膚、皮下組織等)から来ており、その様々な器官及び区域は、麻酔状態で、ゼロに近いVOを有し、従って全静脈血に寄与し、患者自身の静脈血は、100%に近いSvOを有する。従って、非常に重要な器官(腎臓、脳、腸、及び心臓自体)の中の1又はそれより多くの器官への低い潅流の場合(それは、静脈血不飽和が60%まで低下したと決定する。)、合計の混合は、まだ正常な範囲(70−75%)におけるグローバルSvOをもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術を克服し、そして心臓手術中の酸素送出(DO)及び炭酸ガス生成(VCO)値について、及び患者の代謝の必要性に関して酸素送出(DO)の適切さについての適切で連続的及びオンラインの情報を提供するモニタリング・システムを提供することにある。
【0010】
本発明の別の課題は、信頼性があり、正確で、且つ同時に適用するのに安価で容易であるモニタリング・システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題は、特徴が添付の特許請求の範囲の中のいわゆる独立形式の請求項にそれぞれ記載された装置及び方法により達成される。本発明の有利な実施形態は、添付の特許請求の範囲のいわゆる従属形式の請求項に記載のものから明らかである。
【0012】
本発明に従ったモニタリング・システムを構築するため用いられる病理生理学的基礎は、次の通りである。
【0013】
定義及び略語
HCT:ヘマトクリット(%)
Hb:ヘモグロビン(g/dL)
CPB:心肺バイパス
T:温度(℃)
VO=酸素消費量(mL/min)
VO2i=インデックスされた酸素消費量(oxygen consumption indexed)(mL/min/m
DO=酸素送出量(mL/min)
DO2i=インデックスされた酸素送出量(oxygen delivery indexed)(mL/min/m
ER=酸素抽出率(%)
VCO=炭酸ガス生成量(mL/min)
VCO2i=インデックスされた炭酸ガス生成量(mL/min/m
Ve=換気量(L/min)
eCO=呼気された炭酸ガス(mmHg)
AT=無酸素スレッショルド(anaerobic threshold)
LAC=乳酸塩
Qc=心臓送出量(mL/min)
IC=心係数(Qc/m),(mL/min/m
Qp=ポンプ流量(mL/min)
IP=インデックスされたポンプ流量(Qp/m),(mL/min/m
CaO=動脈酸素含有量(mL/dL)
CvO=静脈酸素含有量(mL/dL)
PaO=動脈酸素張力(mmHg)
PvO=静脈酸素張力(mmHg)
a=動脈
v=静脈
Sat=Hb飽和度(%)。
【0014】
以下の方程式が、本発明に従ったモニタリング・システムを実現するため適用される。
【0015】
(1) VO=Qc×(CaO−CvO) (正常な循環において)
(2) VO=Qp×(CaO−CvO) (CPB中において)
(3) DO=Qc×CaO (正常な循環において)
(4) DO=Qp×CaO (CPB中において)
(5) O ER=VO/DO(%)
(6) Hb=HCT/3
(7) CaO=Hb×1.36×Sat(a)+PaO×0.003
(8) CvO=Hb×1.36×Sat(v)+PvO×0.003
(9) VCO=Ve×eCO×1.15
【0016】
例えば、体重70kgの正常な被験者は、次の生理学的パラメータを有する。
Hb=15g/dL
PaO=90mmHg
Sat(a)Hb=99%=0.99
PvO=40mmHg
Sat(v)Hb=75%=0.75
Qc=5000mL/min
CaO=15×1.36×0.99+90×0.003=20.4mL/dL
CvO=15×1.36×0.75+40×0.003=15.4mL/dL
VO=5L/min×(20.4mL/dL−15.4mL/dL)
=5L/min×5mL/dL=5L/min×50mL/L
=250mL/min
DO=5L/min×20.4mL/dL=5L/min×200mL/L
=1000mL/min
ER=250/1000=25%
VCO=200mL/min
LAC≦1.5mMol/L
【0017】
酸素消費量(VO)は、全器官の代謝の必要量を表す。それは、各特定器官の代謝必要量の和である。基底の条件(安静時)下で、それは、体重70kgの被験者に対して約3−4mL/min/kg、即ち約250ml/minである。方程式(3)及び(7)を適用すると、酸素送出量(DO)が計算され、約1000mL/minである。従って、DOがVOより約4倍大きいので、相当の機能上の予備が存在する。VOは、(基本的に、身体の運動下で、しかし敗血症性ショックのような病理学的条件においてすら)代謝必要量に依存して増大し得る。トップ・レベルの持久力のあるアスリート(運動選手)は、約5000mL/minの最大VOに達し得る。
【0018】
勿論、これらの増大する酸素要求量に適合するため、DOは、同様に増大しなければならず、それは、運動中のアスリートにおいて、6000mL/minの値(Qc:30L/minであり、20mL/dLの不変の動脈酸素含有量を有する。)に達する。その結果、OERは、最大75%まで増大し得る。
【0019】
図1は、運動中のアスリートにおけるDOとVOとの関係を示す図である。アスリート(例えば、マラソンを走っている。)が暗い三角形ゾーン(このゾーンでは、DOがVOをサポートすることができない。)の中に入る場合、このアスリートは、機械的エネルギを発生するため強制的に他の代謝メカニズムを用いるになる。実際には、アスリートは、無酸素性乳酸代謝(anaerobic lactacid metabolism)を用いるであろう。その無酸素性乳酸代謝は、エネルギを発生するが、しかし乳酸形成、局所的及び系統的アシドーシスを犠牲にしてであり、そして最終的に運動は、通常2分以内に停止する。換言すると、VOは、DOに生理学的に依存する。
【0020】
医療分野では、勿論、状況が異なる。DOは、貧血症に起因した動脈酸素含有量の低下、低酸素状態に起因した動脈酸素含有量の低下、及び心送出量の低下のケースにおいて病理学的に低減し得る。
【0021】
しかしながら、上記の生理学的予備(physiological reserve)が存在することに起因して、VOは、OERの増大に起因して約600mL/minまで低下したDO(DO2iが320mL/min/m)に対してさえ維持され得る。
【0022】
図2は、医療状態(即ち、心臓手術)中に観測された範囲におけるDOとVOとの関係を示す図である。DOが600mL/minより下では、VOは、減少し始める。患者は、アスリートのように正確に、乳酸塩(lactates)(LAC)生成を伴った乳酸性アシドーシスを被る。換言すると、その患者は、ショックを経験する。
【0023】
そのより下ではVOが低下し始めそして病理学的にDOに依存するDOレベルは、臨界的DO(DO2crit)と呼ばれる。DOをこのスレッショルドより上に維持することは、アシドーシス−ショック状態を避けるため多くの病理学的条件において非常に重要である。DO2critは、敗血症性ショック中には一層高い。
【0024】
1994年以降、「Perfusion(潅流)」に発表された論文において、Ranucci及び共同研究者は、CPBを用いた心筋血管再生を受けた一連の300人の連続した患者において厳しい血液希釈の存在が術後の急性腎不全(ARF)に対する独立の危険因子であることを立証した。特に、遮断値(cut−off value)は、HCT<25%で特定された。
【0025】
引き続き、他の著者は、CPB中の最低のHCTが心臓手術における多くの「不利な転帰」に対する独立の危険因子であることを立証した。Stanford−Smith及び共同研究者は、1998年(Anesth Analg)に血液希釈とARFとの関係を確定した。
【0026】
より最近には、Fang及び共同研究者(「血液循環(Circulation)」1997年)により、CPB上の最低のヘマトクリットが術後の低心送血量及び院内死亡率に対する独立の危険因子と確認され、そしてCPB上の最低のヘマトクリットがHabib及び共同研究者により2003年(「胸部心臓外科誌(J Thorac Cardiovasc Surg.)」)に印象的な一連の術後の悪影響事象に対する独立の危険因子と確認された。続いて、血液希釈とARFとの関係は、Swaminathan及び共同研究者により2003年(「胸部外科年報(Ann Thorac Surg.)」)により、またRanucci及び共同研究者により2004年及び2005年(「胸部外科年報」)により確認された。それより下ではARF危険率が著しく増大する臨界的HCT値は、23%と26%との間に位置する。
【0027】
殆ど全ての著者は、この関係が様々な器官への不十分な酸素供給(DO)に帰すると考えている。腎臓は、特に、低酸素潅流の生理学的条件のため高い危険にさらされているようにみえる。
【0028】
驚くべきことに、HCTとARF又は他の器官の損傷との関係を立証する全ての研究は、HCTがCPB中のDOの2つの決定因子のうちの唯1つのものであることを考慮し損なった。なお、2つの決定因子のうちの他方の決定因子は、ポンプ流量(Qp)である。これは、Qpが一定である場合影響を与えないであろうが、しかしこれは、そのケースでない。全ての研究において、ポンプ流量(Qp)は、2.0L/min/mのQpiから3.0L/min/mのQpiまで変わり、そしてその変動は、潅流圧力に依存した。24%のHCTは、Qpiが2.0L/min/mである場合230ml/min/mのDO2iを、そしてQpiが3.0L/min/mである場合344ml/min/mのDO2iをもたらす。
【0029】
本出願の優先日にまだ発行されていなかった胸部外科年報(The Annals of Thoracic Surgery)の科学論文において、Ranucci及び共同研究者は、HCTよりむしろDO2iがARFの最良の予測指標(predictor)であることを実際に立証した。更に、手術中の輸血の存在下で、DO2iは、ARFの唯一の決定因子に留まっている。この論文で特定されたDO2critは、272ml/min/mであり、そしてそれは、それより下ではVOがDOに病理学的に依存するようになるDO2iとして前に定義されたDO2critと非常に近い。換言すると、DO2iをこのスレッショルドより上に維持することにより、低酸素性器官機能不全の低減、又は低酸素性器官機能不全の排除が可能になり、低いHCTの存在下で、Qpの適切な増大が、低酸素血の有害な影響を最小にし得る。その結果、DOの連続的モニタリングは、術後の合併症、即ち腎臓の合併症を制限するため最も重要である。
【0030】
低いHCTを測定することは、唯一可能な(そして議論の余地のある)防護措置が輸血であるので、低い臨床的価値しかない。他方、DOは、ポンプ流量を増大することにより変調され得る。
【0031】
それより下ではLAC生成が始まるDO2critのレベルは、「無酸素スレッショルド」(AT)の概念により特定される。アスリートでは、それは、そのレベルでLAC生成が始まる表された機械的パワーのレベルであり、患者では、それは、それより下でLAC生成が始まるDO2critのレベルである。
【0032】
CPB中のLAC値が術後の合併症に対して予測的であることが立証された。問題は、LAC値がオンラインで利用可能でなく、そしてほんの幾つかの装置(血液ガス分析器)がそれを提供することである。しかしながら、ATの「間接」評価をすることは可能である。実際のところ、定常条件下で、VO/VCO比は一定であり、一方無酸素性乳酸代謝下で、VCOは、VOより増大する。これは、乳酸が次の変換式

HLAC+NaHCO=LAC Na+HCO

に従うので起こり、そしてHCOは、HOとCOとに分解され、従って更にCOが生成される。
【0033】
図3は、VOとVCOとの関係を示す図である。VCOとLAC生成との関係は、本発明者自身により実施された実験でCPB下での15人の連続した患者で立証された。図4において、VCOとLAC生成との間の図的関係が報告されている。この関係から、60ml/min/mのVCO2i値が乳酸性アシドーシスの感度の良い予測指標であるように見える。
【0034】
前の実験情報に基づき、且つ本発明に従って、CPBを用いた心臓手術のためのモニタリング・システムが開発された。このモニタリング・システムは、
人工心肺装置に動作的に接続されたプロセッサと、
前記人工心肺装置のポンプに接続されて、ポンプ流量を連続的に測定し、そのポンプ流量データを前記プロセッサに送るポンプ流量読み取り装置と、
動脈又は静脈ライン内部に挿入されて、ヘマトクリット値を連続的に測定し、それを前記プロセッサに送るヘマトクリット値読み取り装置と、
オペレータが動脈酸素飽和度(Sat(a))及び動脈酸素張力(PaO)についてのデータを手動で入力するのを可能にするデータ入力装置と、
前記プロセッサに統合化されて、酸素送出(DO2i)値を前記の測定されたポンプ流量(Qp)、前記の測定されたヘマトクリット(HCT)、動脈酸素飽和度(Sat(a))のプリセット値、及び動脈酸素張力(PaO)のプリセット値に基づいて計算する計算手段と、
前記プロセッサに接続されて、前記の計算されたDO2i値をリアルタイムで表示するディスプレイとを含む。
【0035】
このシステムは、人工心肺装置の酸素付加装置のガス排出口で呼出CO(eCO)を連続的に検出するため、CO読み取り装置と一緒に実行され得ることが有利である。データ入力装置は、オペレータがガス流量値(Ve)を挿入することを可能にし、計算手段は、プリセットされたガス流量(Ve)値と検出された呼出CO(eCO)とに基づいてCO生成量(VCO2i)を計算し、そしてディスプレイは、その計算されたCO生成(VCO2i)値を表示する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、上記酸素送出(DO2i)値を酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)と比較する比較手段と、上記酸素送出(DO2i)値が酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)より下に落ちるとき起動される警報装置とを更に備えるモニタリング・システムを提供する。一実施形態において、酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)が、オペレータにより約270ml/min/mにプリセットされる。一実施形態において、モニタリング・システムは更に、患者の体温(T)を連続的に測定し、且つ上記ディスプレイにより表示されるよう当該体温値を上記プロセッサに送ることが可能である温度検出装置(40)を備える。モニタリング・システムは更に、入力として検出された患者の体温(T)値を受け取る酸素送出スレッショルド計算手段を備える。
【0037】
モニタリング・システムの一実施形態において、上記プロセッサが、上記の検出されたヘマトクリット(HCT)値からヘモグロビン(Hb)値を計算し、且つ上記ディスプレイにより表示されるよう当該ヘモグロビン(Hb)値を上記酸素送出計算手段に送ることが可能であるヘモグロビン値計算手段を含む。モニタリング・システムの別の実施形態において、上記プロセッサが、ポンプ流量(Qp)及び患者の体表面積(BSA)の値からインデックスされたポンプ流量(Qpi)を計算することが可能である計算手段を含む。モニタリング・システムの一実施形態において、上記データ入力装置は、オペレータが患者の体重及び身長についてのデータを手動で入力することを可能にし、それにより上記計算手段が、前記患者の体表面積(BSA)を計算することが可能である。一実施形態において、上記ポンプ流量検出装置が、ドップラー読み取りセルを含む。
【0038】
本発明は、心肺バイパスを用いた心臓手術のためのモニタリング・システムであって、人工心肺装置に動作的に接続されたプロセッサと;前記人工心肺装置の酸素付加装置に配置されて、呼出CO(eCO)値を連続的に検出し、且つそれを前記プロセッサに送るCO検出装置と、;オペレータが前記人工心肺装置のガス流量(Ve)についてのデータを手動で入力することを可能にするデータ入力装置と;プリセットされたガス流量(Ve)及び検出された呼出CO(eCO)からCO生成量(VCO2i)を計算することが可能である計算手段と;前記プロセッサに接続されて、計算された前記のCO生成量(VCO2i)をリアルタイムで表示するディスプレイとを備えるモニタリング・システムを提供する。一実施形態において、モニタリング・システムは更に、計算された上記のCO生成(VCO2i)値をCO生成スレッショルド値(VCO2icrit)と比較する比較手段と、前記のCO生成(VCO2i)値がCO生成スレッショルド値(VCO2icrit)を超えるときに常に起動される警報装置とを備える。
【0039】
本発明は、心肺バイパス及び人工心肺装置を用いた心臓手術中に患者のパラメータをモニタリングする方法であって、前記人工心肺装置のポンプからポンプ流量(Qp)を連続的に検出するステップと;前記人工心肺装置の動脈又は静脈ラインからヘマトクリット(HCT)値を連続的に検出するステップと;患者の動脈血から導出された動脈酸素飽和度(Sat(a))値を設定するステップと;患者の動脈血から導出された動脈酸素張力(PaO)値を設定するステップと;前記の検出され設定された値から患者の酸素送出量(DO2i)を計算するステップと;前記の計算された酸素送出量(DO2i)を表示するステップとを備える方法を提供する。一実施形態において、本方法は更に、酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値を設定するステップと、上記の計算された酸素送出(DO2i)値を前記酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値と比較するステップと、上記の計算された酸素送出(DO2i)値が前記の設定された酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値より下に落ちるときは常に起動される警報信号を起動するステップとを備える。一実施形態において、前記警報信号は、前記の計算された酸素送出(DO2i)値が前記の設定された酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値より下にプリセット期間より短い期間落ちるときは起動されない。一実施形態において、本方法は更に、患者の体温(T)の連続的な検出及び表示を備える。一実施形態において、本方法は、上記の検出された体温(T)から酸素送出スレッショルド(DO2icrit)を計算するステップを備える。
【0040】
本発明は、心肺バイパス及び人工心肺装置を用いた心臓手術中に患者のパラメータをモニタリングする方法であって、前記人工心肺装置のポンプから呼出CO(eCO)値を連続的に検出するステップと;前記人工心肺装置のガス流量(Ve)を設定するステップと;呼出炭酸ガス(eCO)の前記の検出された値及びガス流量(Ve)の設定値から炭酸ガス生成量(VCO2i)を計算するステップと;前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値を表示するステップとを備える方法を提供する。一実施形態において、本方法は更に、炭酸ガス生成スレッショルド(VCO2icrit)値を設定するステップと、前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値を前記の設定された炭酸ガス生成スレッショルド(VCO2icrit)値と比較するステップと、前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値が前記の設定された炭酸ガス生成スレッショルド(DO2icrit)値を超えたとき常に警報信号を起動するステップとを備える。
【0041】
本発明は、心臓手術のためのモニタリング・システムであって、人工心肺装置に接続されたプロセッサと;人工心肺装置のポンプに接続され、ポンプ流量の値(Qp)を測定し且つそれをプロセッサに送るポンプ流量読み取り装置と;人工心肺装置の回路に接続され、HCT値を測定し且つそれをプロセッサに送る血液ヘマトクリット(HCT)値読み取り装置と;酸素付加装置のガス排出口で呼出CO(eCO)を検出するCO検出装置と;動脈酸素飽和度(Sat(a))、動脈酸素張力(PaO)及びガス流量(Ve)に関するデータを手動で入力するデータ入力装置と;酸素送出値(DO2i)及びCO生成値(VCO2i)を、前記の検出され且つ設定された値に基づいて計算する計算手段と;プロセッサに接続され、DO2i及びVCO2iの上記の計算された値を表示するディスプレイとを備えるモニタリング・システムを提供する。
【0042】
本発明の更なる特徴は、添付の図面に示された本発明の非限定的実施形態を参照した以下の詳細な説明により明瞭にされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下の記載においては、図5、図6、図7及び図8を参照して、本発明に従った心肺バイパスを用いた心臓手術のためのモニタリング・システムが、説明される。
【0044】
図5は、患者1が手術台2上に横たわっているところを示す。参照番号3で包括的に特定される人工心肺装置が、患者1に接続されている。当該技術で既に知られているように、人工心肺装置3は、血液を患者1の静脈系から収集する静脈体外循環回路を備える。ローラ式又は遠心式の機械式ポンプ4は、静脈血を静脈体外循環回路から酸素付加装置5に向けて送り、その役割は、COを静脈血から除去し且つ酸素(O)を供給することにある。酸素付加装置5により酸素付加された血液は、再び、同じローラ式又は遠心式ポンプ4により、患者1の動脈系に接続された動脈体外循環回路に送られ、従って、患者1の心臓及び肺の全体的バイパスを生成する。
【0045】
参照番号10で包括的に特定された本発明に従ったモニタリング・システムは、人工心肺装置3に動作的に接続される。モニタリング・システム10は、以下で説明されるように計算を実行することができるプロセッサと、オペレータとのインターフェースとして働くモニタ・スクリーン又はディスプレイ11とを備える。
【0046】
オペレータからの手動データ入力
モニタリング・システム10の全面部分に配置されたノブ50(図7及び図8)を用いて、オペレータは、データを入力し得て、当該データは、モニタリング・システム10のプロセッサ・メモリにより格納されるであろう。オペレータにより手動で挿入されるデータは、次のとおりである。
【0047】
(1)患者の身長及び体重
(2)動脈酸素飽和度(Sat(a))。CPB処置中のこの値は、通常100%である。しかしながら、酸素付加装置の機能不全のような異常事象の場合には、酸素飽和度(Sat(a))の値は、低減し得る。この場合、オペレータは、ノブ50を用いてこの値を手動で変え得る。
【0048】
(3)動脈酸素張力(PaO)値。このPaO値は、適切な特定の装置を用いて、血液ガス分析器により患者の動脈血についてパーヒュージョニスト(perfusionist)(潅流技師)により測定される。
【0049】
(4)ガス流量値(Ve)。この値Veは、人工心肺装置3を動作させるパーヒュージョニストにより確立される。一般的に、Veは、流量計を用いて、患者のパラメータに従って1L/minと5L/minの範囲に調整される。このVe値は、CPB処置中めったに変えられず、従ってオペレータにより手動で挿入されることができる。しかしながら、代替として、モニタリング・システム10は、人工心肺装置3に接続されてVe値を連続的に検出する電子式流量計を含み得る。
【0050】
人工心肺装置にインターフェースされるデータ
モニタリング・システム10は、人工心肺装置3の特定の位置に配置された適切なセンサにより収集されたデータを連続的に受け取るように人工心肺装置3への或る電気的接続手段が設けられている。これらの連続的に収集されたデータは、次のとおりである。
【0051】
(1)患者の体温(T)。この体温Tは、患者の食道又は直腸の内部に挿入された温度プローブにより連続的に測定される。温度プローブ40は、体温の電子信号を、リアルタイムで体温値を視覚的に見せる人工心肺装置のモニタへ送る。この場合、それは、体温値Tの連続的入力のため、人工心肺装置3のモニタをモニタリング装置10と電気的に接続する手段とインターフェースすることで十分である。
【0052】
(2)呼出された炭酸ガス(eCO)。この呼出炭酸ガスeCO値は、酸素付加装置5から放出(呼出)された副流COを検出するため酸素付加装置5のガス排出口に配置されたCO検出器41を介して測定される。CO検出器41は、様々な商業的に入手可能で再使用可能なカプノグラフの中のいずれの種類のCO検出器であってよい。
【0053】
(3)ヘマトクリット(HCT)。HCT値は、人工心肺装置3の動脈又は静脈回路の内部に配置されたヘマトクリット読み取りセル42を介して連続的に測定される。例えば、図5において、ヘマトクリット読み取りセル42は、ポンプ4と酸素付加装置5との間の動脈ラインの内部に配置される。ヘマトクリット読み取りセル42は、商業的に入手可能であり、そして使い捨て可能である。
【0054】
(4)ポンプ流量(Qp)。Qp値は、人工心肺装置3の動脈ライン上に配置されたドップラー読み取りセル43を介して連続的に測定される。この種のドップラー読み取りセル43は、血液流量をドップラーの原理(赤血球速度)に基づいて測定する。
【0055】
体外循環回路のポンプ4が遠心式ポンプである場合、それは、既にドップラー読み取りセル43に装着されている。逆に、ポンプ4がローラ式ポンプである場合、ドップラー読み取りセル43は追加され得る。代替実施形態においては、ドップラー読み取りセル43は、ローラ式ポンプ・ヘッドが流量測定システムに設けられているので省略され得る。この場合、ポンプ流量Qpについてのデータは、モニタリング装置10に直接送られる。
【0056】
図6を特に参照して、モニタリング・システム10の動作が、以下で説明される。モニタリング・システム10のプロセッサは、第1の計算プログラム12を含み、当該第1の計算プログラム12は、オペレータにより入力された患者の体重及び身長に基づいて、事前定義された表に従って、患者の体表面積(BSA)を計算する。
【0057】
BSA値は、第2の計算プログラム13に送られ、当該第2の計算プログラム13は、人工心肺装置3のポンプ4により検出されたポンプ流量Qpの入力値を受け取る。第2の計算プログラム13は、関係式QpI=Qp/BSAに従ってインデックスされたポンプ流量Qpiを計算する。
【0058】
第3の計算プログラム14は、人工心肺装置3の静脈又は動脈ラインの内部に配置されたヘマトクリット読み取りセル43により検出された入力値HCTを受け取る。第3の計算プログラム14は、方程式(6)に基づいて、ヘモグロビン値Hbを計算する。Hb値は、ディスプレイ11に送られ、そしてディスプレイ11の窓51の中に表示される(図7)。
【0059】
第2の計算プログラム13により計算されたインデックスされたポンプ流量Qpi、及び第3の計算プログラム14により計算されたヘモグロビン値Hbは、第4の計算プログラム15に送られ、当該第4の計算プログラム15は、入力値として、オペレータにより手動で入力された動脈酸素飽和度(Sat(a))及び動脈酸素張力(PaO)の値を受け取る。第4の計算プログラム15は、方程式(4)に従って、インデックスされた酸素送出値(DO2i)を計算する。
【0060】
図7に示されるように、DO2i値は、ディスプレイ11の窓53の中にリアルタイムで、そしてグラフィカル・パターン52として(時間の関数として)視覚化されて見える。ディスプレイ11には、CPBの始めから経過した時間を示すクロノメータ窓56が設けられている。
【0061】
図6に示されるように、DO2i値は、比較器18に送られ、当該比較器18は、それをDO2icritのスレッショルド値と比較し、当該DO2icritのスレッショルド値は、ディスプレイ11の窓54(図7)に表示される。このスレッショルド値は、34℃と37℃の間の温度において270ml/min/mに設定され、そして温度の関数として線形で低減する。
【0062】
従って、DO2icritのスレッショルド値は、オペレータによりプリセットされ、又は計算プログラム17により、温度プローブ40により決定された温度値Tに依存して計算され得る。温度プローブ40により決定された温度Tは、ディスプレイ11に送られて、窓55の中に表示される。
【0063】
DO2i値がDO2icritより下に落ちるとき、比較装置16は、制御信号を警報器16に送り、当該警報器16が、起動して、オペレータに可能性のある危険条件を警報する。
【0064】
警報器16は、ポンプ流量Qpの短時間の低減によっては起動されない(多くの場合CPB中に必要である。)。従って、警報器16は、DO2iがDO2icritより下であることの連続的検出の5分後に作動されるよう設定されることができるであろう。しかしながら、低い流量の全ての期間を記録することを行って、低い流量の多くの短い期間が追加の効果を生成し得る可能性を分析し回避することができる。約90分継続する正常なCPB中にDO2iがDO2icritより下である時間が20分以下(合計として)であることを考慮することは合理的である。モニタリング装置10には、計算プログラム19が設けられ、当該計算プログラム19は、入力値として、CO検出器41により検出された呼出炭酸ガスeCOと、オペレータにより設定されたガス流量Veとを受け取る。これらの入力データに従って、計算プログラム19は、方程式(9)を適用して、インデックスされた炭酸ガス生成量VCO2iを計算する。
【0065】
計算プログラム19により計算されたVCO2i値は、ディスプレイ11に送られ、そして窓57(図7)の中にリアルタイムで、そしてそのグラフィック関係58の中に時間の関数として表示される。
【0066】
VCO2i値は、第2の比較器20に送られ、当該第2の比較器20は、それを、オペレータにより設定された無酸素スレッショルド値VCO2icritと比較する。なお、デフォルトにより、VCO2icritは、60ml/min/mにプリセットされる。図7に示されるように、ディスプレイ11には、オペレータにより設定された無酸素スレッショルド値VCO2icritの値を示す窓59が設けられている。
【0067】
図6に戻ると、VCO2iがVCO2icritを超えたとき、警報信号が、第2の警報器21に送られ、当該第2の警報器21は、起動されたとき、オペレータに警報条件を警報する。更に、図7に示されるように、ディスプレイ11には、窓60が設けられ、当該窓60には、オペレータにより設定されたガス流量値Veが表示される。また、ディスプレイ11には窓61が設けられ、当該窓61には、計算プログラム13から到着されたインデックスされたポンプ流量値Qpiが表示される。更に、ディスプレイ11には窓62が設けられ、当該窓62には、計算プログラム12により計算された患者の体表面積が、表示される。
【0068】
モニタリング・システム10には、データ記録システム、プリンタ・インターフェース、及び/又はディジタル・データ記録システムを設けることができる。ディスプレイ11は、2つの形態、即ち、図7に示される形態のような完全な形態と、図8に示されるようなDOパラメータのみを考慮した縮小された形態とを含むことができるであろう。
【0069】
上記の記載及び添付の図面は、本発明の実施形態を説明するために提供され、いずれにしても本発明の範囲を限定する意図ではない。様々な変更及び変化が、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなしに心臓手術のためのシステム及び方法において行われることができることが当業者には明らかであろう。従って、本発明の変更及び変化が添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物内に入る場合、本発明が、この発明の変更及び変化をカバーすることを意図するものである。
【0070】
参考文献
1.Ranucci M、Pavesi M、MazzaE他:心冠手術後の腎臓機能不全の危険因子;心肺バイパス技術の役割(Perfusion、1994年、9:319−26)
2.Stanfford−Smith M、Conlon PJ、WhiteWD他:CPB中の潅流圧でなく低ヘマトクリットがCABG手術に続く腎臓不全を予測する(要約)(Anesth Analg、1998年、86:SCA11−124)
3.Fang WC、Helm RE、KriegerKH他:冠動脈手術を受けている患者死因別死亡率に対する心肺バイパス中の最小ヘマトクリットの影響(Circulation、1997年;96(supplII):194−9)
4.Habib RH、Zacharias A、Schwann TA、Riordan CJ、Durham SJ、Shah A:成人における心肺バイパス中の低ヘマトクリットの悪影響:現在の実施は変えるべきか?(J Thorac Cardiovasac Surg、2003年;125:1438−50)
5.Swaminathan M、Phillips−Bute BG、Conlon PJ、Smith PK、NewmanMF、Stanfford−Smith M:心肺バイパス中の最低ヘマトクリットと冠動脈バイパス手術後の急性腎臓損傷との関連性(AnnThorac Surg、2003年;76:784−92)
6.Karkouti K、Beattie WS、WijeysunderaDN他:心肺バイパス中の血液希釈は、成人の心臓手術における急性腎臓不全に対する独立危険因子である。(J Thorac Cardiovasac Surg、2005年;129:391−400)
7.Ranucci M、Romitti F、IsgroG他:心肺バイパス中の酸素供給、及び冠動脈手術に続く急性腎臓不全(Ann Thorac Surg、2005年、印刷中)
8.Ranucci M、Menicanti L、Frigiola A:心肺バイパス中の急性腎臓損傷及び最低ヘマトクリット:細胞の低酸素血の事項のみでなく。(Ann Thorac Surg、2004年;78:1880−1)
9.Demers P、Elkouri S、MartimeauR他:「成人の心臓手術における心肺バイパス中の高い血液乳酸レベルによる結果(Ann Thorac Surg、2000年;70:2082−6)
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、身体の運動下にあるアスリートのVOとDOとの関係を示すグラフである。
【図2】図2は、心臓手術下の患者のVOとDOとの関係を示すグラフである。
【図3】図3は、VOとDOとの間関係を示すグラフである。
【図4】図4は、LACとVCO2iとの関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明による患者に接続された人工心肺装置の概略図及びモニタリング・システムのブロック図である。
【図6】図6は、本発明に従ったモニタリング・システムをより詳細に示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明に従ったモニタリング装置の正面図であってディスプレイのスクリーンの表示を示す図である。
【図8】図8は、図7に類似した本発明による最小形態のモニタリング装置を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 患者
2 手術台
3 人工心肺装置
4 ポンプ
5 酸素付加装置
10 モニタリング・システム
11 ディスプレイ
12、13、14、15、17、19 計算プログラム
18、20 比較器
40 温度プローブ
41 CO検出器
42 ヘマトクリット読み取りセル
43 ドップラー読み取りセル
51、53、54、55、56、57、59、61、62 窓
52 グラフィカル・パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心肺バイパスを用いた心臓手術のためのモニタリング・システム(10)であって、
人工心肺装置(3)に動作的に接続されたプロセッサと、
前記人工心肺装置(3)のポンプ(6)に接続されて、ポンプ流量値(Qp)を連続的に測定し、それを前記プロセッサに送るポンプ流量検出装置(42)と、
前記人工心肺装置(3)の動脈又は静脈ライン内部に挿入されて、血液のヘマトクリット(HCT)値を連続的に測定し、それを前記プロセッサに送るヘマトクリット読み取り装置(43)と、
オペレータが動脈酸素飽和度(Sat(a))及び動脈酸素張力(PaO)についてのデータを手動で入力するのを可能にするデータ入力装置(50)と、
前記プロセッサに統合化されて、酸素送出(DO2i)値を前記の測定されたポンプ流量値(Qp)、前記の測定されたヘマトクリット(HCT)値、動脈酸素飽和度(Sat(a))のプリセット値、及び動脈酸素張力(PaO)のプリセット値に基づいて計算する計算手段(15)と、
前記プロセッサに接続されて、前記の計算された酸素送出(DO2i)値をリアルタイムで表示するディスプレイ(11)と
を備えるモニタリング・システム(10)。
【請求項2】
前記酸素送出(DO2i)値を酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)と比較する比較手段(16)と、
前記酸素送出(DO2i)値が酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)より下に落ちるとき起動される警報装置(18)と
を更に備える請求項1記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項3】
前記酸素送出のスレッショルド値(DO2icrit)が、前記オペレータにより約270ml/min/mにプリセットされる請求項2記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項4】
患者の体温(T)を連続的に測定し、前記ディスプレイ(11)により表示されるよう当該体温値を前記プロセッサに送ることが可能である温度検出装置(40)を更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項5】
検出された患者の体温(T)値を入力として受け取る酸素送出スレッショルド計算手段(17)を更に備える請求項2から4のいずれか一項に記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記の検出されたヘマトクリット(HCT)値からヘモグロビン(Hb)値を計算し、前記ディスプレイ(11)により表示されるよう当該ヘモグロビン(Hb)値を前記酸素送出計算手段(15)に送ることが可能であるヘモグロビン値計算手段(14)を含む請求項1から5のいずれか一項に記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項7】
前記プロセッサが、ポンプ流量(Qp)及び患者の体表面積(BSA)の値からインデックスされたポンプ流量(Qpi)を計算することが可能である計算手段(13)を含む請求項1から6のいずれか一項に記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項8】
前記データ入力装置(50)は、オペレータが患者の体重及び身長についてのデータを手動で入力することを可能にし、それにより前記計算手段(12)が、前記患者の体表面積(BSA)を計算することが可能である請求項2記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項9】
前記ポンプ流量検出装置(42)が、ドップラー読み取りセルを含む請求項1から8のいずれか一項に記載のモニタリング・システム(10)。
【請求項10】
心肺バイパスを用いた心臓手術のためのモニタリング・システム(10)であって、
人工心肺装置(3)に動作的に接続されたプロセッサと、
前記人工心肺装置(3)の酸素付加装置(5)に配置されて、呼出されたCO(eCO)値を連続的に検出し、それを前記プロセッサに送るCO検出装置(41)と、
オペレータが前記人工心肺装置(3)のガス流量(Ve)についてのデータを手動で入力することを可能にするデータ入力装置(50)と、
プリセットされたガス流量(Ve)及び検出された呼出CO(eCO)からCO生成量(VCO2i)を計算することが可能である計算手段(19)と、
前記プロセッサに接続されて、前記の計算されたCO生成量(VCO2i)をリアルタイムで表示するディスプレイ(11)と
を備えるモニタリング・システム(10)。
【請求項11】
前記の計算されたCO生成(VCO2i)値をCO生成スレッショルド値(VCO2icrit)と比較する比較手段(20)と、
前記のCO生成(VCO2i)値がCO生成スレッショルド値(VCO2icrit)を超えるとき常に起動される警報装置(21)と
を更に備えるモニタリング・システム(10)。
【請求項12】
心肺バイパス及び人工心肺装置(3)を用いた心臓手術中に患者のパラメータをモニタリングする方法であって、
前記人工心肺装置(3)のポンプ(4)からポンプ流量(Qp)を連続的に検出するステップと、
前記人工心肺装置(3)の動脈又は静脈ラインからヘマトクリット(HCT)値を連続的に検出するステップと、
患者の動脈血から導出された動脈酸素飽和度(Sat(a))値を設定するステップと、
患者の動脈血から導出された動脈酸素張力(PaO)値を設定するステップと、
前記の検出及び設定された値から患者の酸素送出量(DO2i)を計算するステップと、
前記の計算された酸素送出量(DO2i)を表示するステップと
を備える方法。
【請求項13】
酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値を設定するステップと、
前記の計算された酸素送出(DO2i)値を前記酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値と比較するステップと、
前記の計算された酸素送出(DO2i)値が前記酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値より下に落ちるとき常に警報信号を起動するステップと
を更に備える請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記警報信号は、前記の計算された酸素送出(DO2i)値が前記の設定された酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値より下に、プリセット期間より短い期間落ちているときは起動されない請求項13記載の方法。
【請求項15】
患者の体温(T)の連続的な検出及び表示を更に備える請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記の検出された体温(T)から酸素送出スレッショルド(DO2icrit)値を計算するステップを更に備える請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
心肺バイパス及び人工心肺装置(3)を用いた心臓手術中に患者のパラメータをモニタリングする方法であって、
前記人工心肺装置(3)の酸素付加装置(5)から、呼出された炭酸ガスCO(eCO)値を連続的に検出するステップと、
前記人工心肺装置(3)のガス流量(Ve)を設定するステップと、
前記呼出された炭酸ガスCO(eCO)の検出された値及びガス流量(Ve)の設定値から炭酸ガス生成量(VCO2i)を計算するステップと、
前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値を表示するステップと
を備える方法。
【請求項18】
炭酸ガス生成スレッショルド(VCO2icrit)値を設定するステップと、
前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値を前記の設定された炭酸ガス生成スレッショルド(VCO2icrit)値と比較するステップと、
前記の計算された炭酸ガス生成量(VCO2i)値が前記の設定された炭酸ガス生成スレッショルド(DO2icrit)値を超えるとき常に警報信号を起動するステップと
を更に備える請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−314800(P2006−314800A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−133190(P2006−133190)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(506161186)ソリン・グループ・イタリア・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (6)
【Fターム(参考)】