説明

心臓血管及び血栓性の危険性の決定のためのCLEC1Bの使用

試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおける、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための、CLEC1B遺伝子の一塩基多型(SNP)の使用;心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置において活性な物質を同定するためのCLEC1Bの使用、並びにそれを行うための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の増加した危険性を同定するための一塩基多型(SNP)及びタンパク質多型の使用、並びに上記使用に適したプライマー及び核酸に関する。さらに、本発明は、心臓血管障害及び血栓性疾患を予防及び処置する活性物質を発見するための、CLEC1B(C型レクチンドメインファミリー1、メンバーB、あるいはC型レクチン様レセプター2/CLEC−2、以下においてCLEC1Bと呼ぶ)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
西欧世界では、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患は、両性の間でとりわけ主要な死因の一つである。心臓血管障害には、心臓の機能に影響を及ぼす全ての障害が含まれ、そして特に心臓組織及び心血管の障害が含まれる。血栓性疾患は、血管閉塞の結果としての減少した血流、増大した出血傾向いずれかと関連した血流の病的な状態に影響を及ぼす全ての障害を含む。
【0003】
冠状動脈性心疾患、特に冠状動脈疾患は、心臓血管障害の主な原因の一つと考えることができる。アンギナ(狭心症とも呼ばれる)は、心筋が十分な酸素を供給されない場合に起こる一時的な胸部痛又は圧迫感である。冠動脈が狭くなるか又は閉塞されて、心筋への血流が酸素要求の増大を満たすように増加できない場合に、その結果として、前記疼痛(すなわち、前記の狭心症)を引き起こす虚血が起こり得る。通常、狭心症は冠状動脈疾患に起因するが、他の冠状動脈性心疾患によっても引き起こされ得る。全ての心筋の虚血が狭心症に関連した疼痛又は圧迫感を引き起こすわけではない。この種の心筋の虚血、すなわち狭心症を伴わないものは、無症候性虚血と呼ばれる。無症候性虚血の危険は、心筋に対する損傷が罹患している個体に気付かれないということにある。従って、患者又は担当医はしばしば、損傷が最終的に心筋梗塞をもたらすまで心臓組織に対して起こり得る損傷を認識することができない。この理由のために、診断を可能にし、したがってできるだけ早く治療的介入を可能にする、血管及び心臓の変性を認識するための診断方法及び手段に対する大きな需要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に伴う社会経済的及び個人の高負担に起因して、前記障害の早期診断及び処置に対する大きな必要性が存在する。
【0005】
従って、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を診断及び処置するための改善された方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおいて心臓血管障害及び血栓性疾患を同定するために、CLEC1B遺伝子の(or in)一塩基多型(SNP)又はCLEC1Bタンパク質の多型を使用することにより、この目的は達成される。
【0007】
これは、例えば、参照配列NM_016509に従ってCLEC1B核酸配列の位置250(又は(例えば配列番号NT_009714に従って)CLEC1Bゲノム配列における対応する位置)における一塩基多型チミジン(T)→シチジン(C)の存在についてCLEC1B核酸(すなわちRNA又はDNA(例えば、cDNA又はゲノムDNA))を解析することにより、及び/又は参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質の位置24におけるタンパク質多型セリン(Ser)→プロリン(Pro)の存在についてCLEC1Bタンパク質を解析することにより、又は採取されたサンプ
ル中に存在するCLEC1Bのタンパク質若しくはmRNAの量若しくは機能的特性を解析することにより、達成することができる。
【0008】
CLEC1B核酸又はタンパク質内の任意の関連した位置におけるヌクレオチド又はアミノ酸の型は、ここでは一般的な方法に基づいて決定することができる。特定の位置におけるヌクレオチド又はアミノ酸の型を知ることにより、当業者は、生物学的サンプルが由来する個体が属する心臓血管及び/又は血栓性の危険性群を容易に決定することができる。
【0009】
CLEC1Bは、膜貫通タンパク質のC型レクチンスーパーファミリーに属する(Kanazawa et al., 2007)。CLEC1Bは2000年にクローニングされており、そしてNK遺伝子複合体内のヒト第12染色体に位置する。CLEC1Bは229個のアミノ酸から構成され、そして27kDaの見かけの分子質量を有する(Colonna et al., 2000; Sobanov et al., 2001)。CLEC1Bは単球、顆粒球及び樹状細胞において発現される(Kanazawa et al., 2007)。最近では、血小板でのCLEC1Bの発現が記載されている(Suzuki-Inoue et al., 2006)。CLEC1Bは、ロドサイチン(rhodocytin)の新規な結合タンパク質として同定されており、その受容体がヘビ毒による血小板活性化に関与することが示唆されている。最近解明されたCLEC1Bの結晶構造は、ロドサイチンがこの受容体のリガンドであるという考え方をさらに支持する(Watson et al., 2007)。ロドサイチンに加えて、CLEC1Bに対する抗体もまた、血小板におけるチロシンキナーゼのリン酸化反応を引き起こすことができ、アゴニスト結合の際にその受容体が血小板活性化を仲介し得ることを指示している(Suzuki-Inoue et al., 2006; Fuller et al., 2007)。血小板に対するCLEC1Bの正確な機能は未だ解明されていないが、その受容体は感染患者におけるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の散在に関与すると思われる。付着因子CLEC1B及びレクチン樹状細胞特異的細胞内接着分子3−捕捉ノンインテグリン(grabbing nonintegrin)(DC-SIGN)(両方血小板で発現される)を介してHIV-1が血小板を占めていると思われる(Chaipan et al., 2006)。
【0010】
CLEC1B遺伝子の配列は当該分野で公知である。CLEC1B遺伝子は、染色体12p13.2に位置する。該遺伝子のコード核酸配列は、NCBIデータベースで番号NM_016509のもとで検索することができる。CLEC1B遺伝子の連続ゲノム配列(contiguous sequence)は、NCBIデータベースでヒト第12染色体ゲノムcontig NT_009714から得ることができる。誘導されるタンパク質配列は、NCBIヌクレオチドデータベースで番号NP_057593のもとで検索することができる。NCBIは、全米バイオテクノロジー情報センター(the National Center for Biotechnology Information)である(郵便あて先:National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, Bethesda, MD 20894, USA; ウェブアドレス:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0011】
本発明は、患者の臨床コホートにおける染色体レベルでのCLEC1B遺伝子の研究に関連し、これはCLEC1B遺伝子及び/又はタンパク質における変異の保有者の臨床的又は病態生理学的な表現型に対するこのような変異の影響を推定するために、本発明者らによって行われた。
【0012】
一塩基多型(SNP)は、個々の位置での置換を含む特定のヌクレオチド配列の変異体であり、当業者にはよく知られている。本明細書で使用されるタンパク質多型という用語は、タンパク質の一次構造(すなわち、アミノ酸配列)、二次構造(すなわちタンパク質折り畳み)及び/又は三次構造(すなわち、種々のポリペプチドサブユニットからのタンパク質の集合)のあらゆる変化を含み、そして好ましくは、タンパク質をコードする遺伝子の1つ又はそれ以上のSNPにより引き起こされる変化を含む;例は、例えばアミノ酸交換、アミノ酸欠失又はタンパク質のトランケーションである。
【0013】
CLEC1B遺伝子の種々の一塩基多型(SNP)は、先行技術において公知であり、そしてEnsemblデータベースで、例えば http://www.ensembl.org/Homo sapiens/genesnpview?db=core;gene=ENSG00000165682で公然とアクセス可能である。また、参照配列NM_016509に従ってCLEC1B核酸の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列におけるその対応位置、例えば配列番号3に関して位置201)で上の同定されたSNPは知られており(refSNP ID:rs2273986)、そしてNCBIデータベースからアクセッション番号rs_2273986のもとで検索することができ、そして特に以下のリンクを使用して検索することができる:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp ref.cgi?rs=2273986
このリンクは、また本発明SNPの周囲のゲノム配列の一部も公開している(配列番号3も参照のこと)。
【0014】
しかし、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を有するか経験することについての関連とCLEC1Bの前記多型との関連性はこれまで知られても、記載されてもおらず、全く驚くべきことである。
【0015】
本発明者らの実験により、CLEC1B遺伝子における一定の変異が、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているヒトにおいて統計的に有意な頻度で存在することが初めて実証された。CLEC1B遺伝子若しくはタンパク質内のSNP又はCLEC1B遺伝子若しくはタンパク質の変異と、疾患の発病(onset)及び発症との起こり得る関連を評価するために、CLEC1Bタンパク質の位置24における遺伝子変異セリン→プロリンを詳細に解析し、そして遺伝子型−表現型の関連性解析をうまく定義された患者コホートにおいて行った。結果は、該CLEC1B多型が心臓血管及び/又は血栓性の危険性又は障害と相関するという驚くべき発見である。CLEC1B遺伝子の多型とこの種の疾患の素因との相関は、以前に全く記載されておらず、そしてこれまでに公開されたCLEC1Bのデータを考慮しても全く驚くべきことと考えるべきである。
【0016】
本発明の種々の側面は、全ての動物又はヒトに適用可能である。好ましい実施態様は、哺乳動物及び/又はヒトへの適用に関係する。従って、用語CLEC1B(核酸、タンパク質、多型などに関して)は、任意の動物種又はヒト由来のCLEC1Bを指す。好ましい実施態様は、哺乳動物由来のCLEC1B及び/又はヒト(hs)CLEC1Bを包含する。
【0017】
従って、本発明の別の側面は、試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおける心臓血管及び/又は血栓性の危険性又は障害の同定のための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はその機能的フラグメントの使用に関する。
【0018】
以下において、CLEC1B遺伝子及び/若しくは核酸又はタンパク質内の所定の位置に存在する最も頻繁に存在するヌクレオチド又はアミノ酸は、最も高頻度の変異又は「野生型」と呼ぶ。
【0019】
CLEC1B−T250Tは、CLEC1B遺伝子の両方の対立遺伝子において参照配列NM_016509に対して位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にチミジン(T)を有する個体の群を表わす。この多型は、参照配列NP_057593に対して位置24にアミノ酸セリン(Ser又はS)を有する(Ser24)CLEC1Bタンパク質に導く。当該ヒトは該CLEC1B変異に関してホモ接合である。表2から分かるように、ヌクレオチドTはCLEC1B遺伝子の位置250における最も高頻度の変異であり、 そしてアミノ酸セリンは、CLEC1Bタンパク質の位置24における最も高頻度の変異である。
【0020】
CLEC1B−T250Cは、CLEC1B遺伝子の一方の対立遺伝子上の参照配列NM_016509に対して位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にチミジン(T)を有し、そしてCLEC1B遺伝子の他方の対立遺伝子上の参照配列NM_016509に対して位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にシチジン(C)を有する個体の群を表わす。この多型は、参照配列NP_057593に対して位置24にアミノ酸セリン(Ser又はS)を有するCLEC1Bタンパク質及び参照配列NP_057593に対して位置24にアミノ酸プロリン(Pro又はP)を有するCLEC1Bタンパク質に導く。このようなヒトは該CLEC1B変異に関してヘテロ接合である。
【0021】
CLEC1B−C250Cは、CLEC1B遺伝子の両方の対立遺伝子上の参照配列NM_016509に対して位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にシチジン(C)を有する個体の群を表わす。この多型は、参照配列NP_057593に対して位置24にアミノ酸プロリン(Pro又はP)を有するCLEC1Bタンパク質に導く。このようなヒトは、該CLEC1B変異に関してホモ接合である。
【0022】
CLEC1B遺伝子における遺伝子変異は、例えば:
a)前記の遺伝子変異を含み得るCLEC1B遺伝子の分子生物学的分析(ここでは特にCLEC1Bコード配列の参照配列NM_016509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)の前後の領域)により、染色体DNAレベルで遺伝子変異を直接検出することにより、
b)CLEC1B mRNA発現を測定することによる検出を介して、
c)CLEC1Bタンパク質内のタンパク質多型の検出(ここでは特に、CLEC1B ポリペプチド鎖の、参照配列NP_057593にしたがって位置24において)により、並びに
d)細胞、組織又は体液中に存在するCLEC1Bタンパク質の量及び/又は活性をタンパク質化学的方法により測定することによる間接的検出により、
検出され得る。
【0023】
CLEC1B遺伝子における核酸レベル(ここでは染色体DNA)での遺伝子変異又は多型の前記の参照配列における位置は、例えば
1)CLEC1B遺伝子の前記の領域の核酸配列の配列決定に基づく方法(例えば、パイロシーケンス(pyrosequencing)、放射標識若しくは蛍光色素標識したヌクレオチドを使用するか又は上記核酸配列の質量分光学的解析による配列決定);
2)CLEC1B遺伝子の上記領域の核酸配列のハイブリダイゼーションに基づく方法(例えば、「DNAマイクロアレイ」による);
3)CLEC1B遺伝子の上記領域の核酸配列の増幅産物の分析に基づく方法(例えば、TaqMan分析)、
により検出され得る。
【0024】
CLEC1B遺伝子における核酸レベル(ここでは染色体DNA)での遺伝子変異又は多型の前記参照配列に対する前記の位置はまた、例えば発現されたCLEC1B mRNAを、
1)CLEC1B遺伝子の核酸配列のハイブリダイゼーションに基づく方法(例えば「DNAマイクロアレイ」、ノーザンブロット分析による);
2)CLEC1B遺伝子の核酸配列の増幅産物の分析に基づく方法(例えば、「TaqMan」分析、ディファレンシャルRNAディスプレイ、発現差解析法(representational difference analysis))、
により測定することに基づいて検出され得る。
【0025】
参照配列NP_057593にしたがってタンパク質配列に対して位置24の1つ又は両方におけるCLEC1Bタンパク質内のタンパク質多型は、例えばCLEC1Bタンパク質内の位置24においてセリン若しくはプロリンを区別することができる特異的抗体を用いることにより、又は参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質配列の位置24におけるプロリン若しくはセリンのいずれかとCLEC1B変異との区別に適した代替の生化学的方法若しくは分子生物学的方法により検出することができる。
【0026】
さらに、上記参照配列の1つ中の前記位置における遺伝子変異又は多型は、CLEC1Bタンパク質の量及び/又は活性を分析することにより検出され得る。CLEC1Bタンパク質の量及び/又は活性は、例えば
1)CLEC1Bタンパク質の量の定量的検出に基づく方法(例えばウエスタンブロット分析、ELISA試験)、又は
2)インビトロ試験系、例えばヒト細胞、動物細胞、細菌及び/又は酵母細胞におけるCLEC1Bタンパク質の活性の機能的検出に基づく方法
に基づいて検出され得る。
【0027】
上記の位置の1つにおけるCLEC1B遺伝子中の遺伝子変異又は多型の検出は、例えば、(a)心臓血管障害及び/又は血栓性疾患(例えば:末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、早期(premature)心筋梗塞、心筋梗塞、及び/又は冠状動脈性心臓病)の危険性を評価するための遺伝マーカー、(b)対応する遺伝子変異の保持者における心臓血管障害及び/又は血栓性疾患(例えば:末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、早期心筋梗塞、心筋梗塞及び/又は冠状動脈性心臓病)の予防的処置のためのマーカー、(c)心臓血管障害及び/又は血栓性疾患(例えば:末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、早期心筋梗塞、心筋梗塞及び/又は冠状動脈性心臓病)のための薬学的に活性な物質の投与すべき用量を適合させるためのマーカー、(d)心臓血管障害及び/又は血栓性疾患(例えば:末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、早期心筋梗塞、心筋梗塞及び/又は冠状動脈性心臓病)のための薬学的に活性な物質を同定するためのハイスループットスクリーニングの方針を決定するためのマーカー、(e)心臓血管障害及び/又は血栓性疾患(例えば:末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、早期心筋梗塞、心筋梗塞及び/又は冠状動脈性心臓病)のための薬物の適合性、安全性及び有効性を試験するための臨床研究に関連する個体又は患者を同定するためのマーカー、並びに(f)DNA、RNA又はタンパク質レベルでのCLEC1B遺伝子中の遺伝子変異を解析するための試験システムを開発するための基礎として使用され得る。
【0028】
従って、本発明の別の側面は、試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおける、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はそのフラグメントの使用に関する。
【0029】
本発明のさらに別の側面は、個体における、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための方法に関係し、この方法は参照配列NM_016509に従ってCLEC1B遺伝子の1つ又は両方の対立遺伝子上の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列中の対応する位置)に存在するヌクレオチドの型について、個体から採取されたサンプルを試験することを含み、上記位置に存在するヌクレオチドの型は、上記個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する危険性を指示する。
【0030】
従って本発明はまた、個体における心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための方法に関し、この方法は、個体から採取されたサンプルをCLEC1Bタンパク質のポリペプチド鎖の位置24に存在するアミノ酸の型について試験することを含み、上記の1つ又はそれ以上の位置に存在するアミノ酸の型は、上記個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する危険性を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】NCBI参照番号NM_016509を有するCLEC1Bコード配列(配列番号1)の図である。位置250における多型に下線を付し、太字で示す。
【図2】NCBI参照番号NP_057593を有するCLEC1Bタンパク質配列(配列番号2)の図である。位置24における多型を太字で示す。
【図3】本発明に従うSNPを含む、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号rs_2273986で開示されているCLEC1BゲノムDNAの核酸フラグメント(配列番号3)の図である。PCRプライマー及び多型の位置を太字で示す。「Y」はC又はTを表す。
【図4】参照配列NM_016509に対して位置250又はゲノム配列の個別の位置に存在するヌクレオチドの型を解析するためのPCRプライマー(配列番号4及び5)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一実施態様によれば、本発明は、個体において心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性を同定する方法に関係し、この方法は、個体から採取されたサンプルを、上記サンプル中に存在するCLEC1B mRNAの量、及び/又はタンパク質の量若しくは機能的活性が 1つ又はそれ以上の参照サンプルと異なるか否かに関して試験することを含む。異なる量の存在は、前記個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する増加した危険性を指示する。
【0033】
CLEC1Bの量の変化、すなわちCLEC1Bレベルの変化は、ここではタンパク質若しくはプロタンパク質の発現(転写、翻訳、スプライシング)、翻訳後修飾、輸送の全てのレベルに影響を与えることにより、又はタンパク質安定性に対する影響により、さらにはCLEC1B発現に作用するシグナル伝達経路に起因する影響により引き起こされ得る。
【0034】
参照サンプルは、例えば以下のゲノム変異及び/又はタンパク質変異を有する1又はそれ以上の個体から採取されたサンプルであり得る:CLEC1B遺伝子の1つ又は両方の対立遺伝子上の、参照配列NM_016509に従ってCLEC1Bヌクレオチド配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列中の対応する位置)においてチミジン以外のヌクレオチド、及び好ましくはシチジン。
【0035】
本発明のさらに別の側面は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患している危険性を決定する方法に関係し、この方法は、個体の単離されたサンプルを、前述のSNP又はタンパク質多型の存在について解析すること、並びに患者の年齢、及び CLEC1Bコード配列の位置250又はCLEC1Bタンパク質の位置24に存在するヌクレオチド又はアミノ酸の型に基づいて推定の危険性を算出することを含む。危険性決定の根拠は、表3〜5に記載の結果である。
【0036】
本発明の種々の実施態様及び側面のいずれかにおける心臓血管障害及び/又は血栓性疾患は、例えば末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA、不安定アンギナ、心筋梗塞、早期(early)心筋梗塞、冠状動脈疾患、冠状動脈性心臓病及び冠動脈血管形成術を受けることを余儀なくされるあらゆる病理学的状態であり得る。
【0037】
本明細書において示されるヌクレオチドの位置は、参照配列NM_016509におけるヌクレオチドの位置(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)を参照する。
【0038】
CLEC1B アミノ酸配列に関して、アミノ酸位置は参照配列NP_057593を参照する。
【0039】
ヌクレオチド配列について、ヌクレオチドの番号の前に+又は−がある場合(この場合、ヌクレオチド位置は翻訳部位に対して示される)を除いて、その位置は参照配列の最初のアミノ酸又はヌクレオチドについて1から始まる。
【0040】
標準的な略号(すなわち、三文字コード又は一文字コード)は、以下の本明細書でヌクレオチド及びアミノ酸について同義語的に使用される。
【0041】
核酸は任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり得、用語「オリゴヌクレオチド」は2〜25個のヌクレオチドの核酸に関係し、そして用語「ポリヌクレオチド」は、26個及びそれ以上のヌクレオチドを有する核酸を指す。
【0042】
本願において、用語タンパク質配列、アミノ酸配列及びポリペプチド配列は同義語的に使用され得る。
【0043】
これまで、ヒトにおいて臨床効果とCLEC1B変異とを結びつけるデータは全く公開されていない。驚くべきことに、本発明者らによる研究は、CLEC1Bタンパク質の位置24におけるCLEC1B変異及び特にCLEC1Bタンパク質の位置24における変異Ser→Proの存在と心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の素因とを密接に関連付けることができた。
【0044】
CLEC1B遺伝子の遺伝的多型、特に参照配列NM_016509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるヌクレオチド交換T→Cの検出は、例えば(a)心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患(例えば末梢血管疾患、高血圧、脳卒中/PRIND/TIA (PRINDは長期の虚血性発作を表し; TIAは一時的な虚血性発作を表す)、不安定アンギナ、心筋梗塞、早期心筋梗塞、冠状動脈性心臓病及び冠動脈血管形成術を受けることを余儀なくされるあらゆる病理学的状態)の発現を遅延させるか若しくはさらに予防するため、若しくはより遅い経過(later course)の重症度及び病的続発症を軽減若しくは停止させるため、予防的処置及び予防対策(投薬、生活様式)のための遺伝マーカーとして、又は(b)薬剤の用量を調整するための遺伝マーカーとして、又は(c)薬剤のスクリーニングを設計するための遺伝マーカーとして、又は(d)特定の処置若しくは医学的研究において患者を同定するため、そして必要に応じて患者を選択するための遺伝マーカーとして、機能し得る。
【0045】
本発明の方法は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の素因を早期に同定すべきことを可能にし、それにより、組織損傷の結果としての痛覚のような古典的な症状が生じる前に予防的又は治療的処置対策の早期使用を可能にする:担当している当業者による、本発明の多型の同定又はCLEC1B mRNA若しくはタンパク質の変化した定常状態レベル若しくは機能の同定は、処置又は試験をする医師が、 血管若しくは心臓組織に対する既存の損傷についてスクリーニングするため、又は予防的薬剤を投与するため、又は対応する損傷若しくは疼痛が発生する前ですら生活様式の変更を提案するための明確な指標を与える。
【0046】
さらに、前記の変異と心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の素因間の関連の新規な知見により、特定の薬剤の用量の変更又はCLEC1Bコード配列又はタンパク質における前記多型を有する患者の処置を変更する必要性を示唆することによってより効果的な処置の使用が可能となる。
【0047】
従って、本発明はまた、
a)CLEC1B遺伝子における1つ若しくはそれ以上の一塩基多型(SNP)
b)CLEC1Bタンパク質における1つ若しくはそれ以上のタンパク質多型、及び/又は
c)CLEC1Bタンパク質若しくは核酸もしくはその機能的フラグメントの、
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の用量を適合させるための使用に関する。
【0048】
さらに、本発明は、個体における心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の用量を適合させるための方法に関し、この方法は、個体の採取されたサンプルを、
a)参照配列NM_016509に従ってCLEC1B遺伝子のいずれか1つ若しくは両方の対立遺伝子上の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)に存在するヌクレオチドの型、及び/又は
b)参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質の位置24に存在するアミノ酸の型
について試験することを含み、
上記用量は、上記の位置に存在するヌクレオチド又はアミノ酸の型に依存して適合される。
【0049】
一実施態様は、個体から採取されたサンプルを、CLEC1B遺伝子のいずれか1つ又は両方の対立遺伝子が以下のSNP:[参照配列NM_016509に従ってCLEC1Bコード配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるチミジン]、を有するか否かに関して試験することを含み、薬剤の用量は多型の存在下で低減又は増加される。
【0050】
別の実施態様は、個体から採取されたサンプルを、CLEC1B遺伝子のいずれか又は両方の対立遺伝子が、前記の列挙された位置において前記の列挙されたもの以外のヌクレオチドを有するか否かに関して試験することを含み、 薬剤の用量は、別のヌクレオチドの存在下で低減又は増加される。他のヌクレオチドは、好ましくは参照配列NM_016509にしたがってCLEC1B配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置において)におけるシチジンである。
【0051】
本発明の別の実施態様によれば、 個体の心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の処置及び/又は予防のための薬剤の用量を適合するための方法は、個体から採取されたサンプルを、上記サンプル中に存在するCLEC1B mRNA及び/又はタンパク質の量が1つ又はそれ以上の標準サンプル中のその量と異なるか否かに関して試験することを含む。標準サンプルは、以下のゲノム変異及び/又はタンパク質変異:[CLEC1B遺伝子の1つ又は両方の対立遺伝子上のCLEC1B配列NM_016509の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるチミジン以外のヌクレオチド、好ましくはシチジン]の1つ又はそれ以上を有する個体から採取されたサンプルであり得、前記用量は、個体の採取されたサンプル中のタンパク質及び/又はmRNAの量が、変異の1つ又はそれ以上を有する1又はそれ以上の個体由来の1つまたは複数の標準サンプルのその量と異なるか否かに依存して適合される。
【0052】
CLEC1B遺伝子変異の存在、特にCLEC1B-T250C変異又はCLEC1B-C250C変異の存在は、指標の機能を有する。先行技術では、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を処置又は予防するための非常の多くの薬剤が知られている。全ての薬剤が、同じ疾患を有する全ての患者に対して同じ効果を有するわけではないので、初めて心臓血管薬で処置された患者は、通常、後で「調整」されなければならず、すなわち、処置している医師は事実上、どの薬剤のどれだけの用量ができるだけ少ない副作用で所望の効果を有するかについて個々の患者において試験しなければならない。ここでの不利な点は、患者における症状が (所定の用量で)投与された薬剤により緩和又は停止されるか否かは事前に分からないということである。前記患者が望ましくない副作用に罹患するか否かを事前に正確に評価することも可能ではない。
【0053】
この文脈において、患者を特定のCLEC1B遺伝子変異を有するか又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患に罹患する一定の可能性を伴うCLEC1B核酸若しくはタンパク質の量を有する患者として処置の前に同定することは、特定の薬剤を用いた処置の成功の予測可能性を改善するかもしれない:CLEC1B遺伝子の特定の変異と心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の発生との関係は、この種のCLEC1B変異が、個体が他の個体より高いか又は低い心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患する可能性を有するという効果を最終的に有する該個体における生理学的変化と一致することを示唆する。異なる個体における各薬剤の異なる有効性は、このような個々の患者の異なる生理学的条件背景にして見られるはずである。個体を、特定の生理学的背景を有するこのような一群の患者に割り当てることは、特に活性であると臨床研究において証明されている特定の薬剤がここで好ましく使用されること、及び前記変異を有していない患者と比較して、この群の患者において活性が低いか、それどころか望ましくない副作用と関連している薬剤を最初から使用しないことを可能にするだろう。
【0054】
通常、処置前のこの種の個々の患者の分類は可能ではない。本発明が基づいている多型と心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の発生との間の関連性を知ることのみがこのことを可能にする。従って、臨床研究において同じ遺伝子変異を有する患者群の処置における良好な成功を示した薬剤は、CLEC1B遺伝子における変異を有する患者において好ましく使用され得、一方で、上記患者群であまり有効でないか異なる遺伝子変異を有する患者群よりも望ましくない副作用の高い可能性を有する薬剤は、最初から使用されないだろう。これにより、薬剤に対して「調整される」患者の危険性は低減され、そして処置の成功の可能性は増加するだろう。
【0055】
従って、本発明のさらなる側面は、
a)CLEC1B遺伝子における1つ若しくはそれ以上の一塩基多型(SNP)、
b)CLEC1Bタンパク質における1つ若しくはそれ以上の多型、及び/又は
c)CLEC1Bタンパク質若しくは核酸若しくはそのフラグメント
の、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の処置及び/又は予防のための薬剤に反応する個体を同定するための使用に関する。
【0056】
同定のための他の方法及び手順もあり得るが、このような同定は、例えば個体から採取されたサンプルを、(a) CLEC1B遺伝子のいずれか若しくは両方の対立遺伝子が以下の変異を有するか否か[上記ヌクレオチドの存在は、サンプルが由来する個体が薬剤に反応する指標である]:CLEC1B配列NM_016509の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるチミジン;(b) CLEC1B遺伝子のいずれか1つ若しくは両方の対立遺伝子が以下の変異の1つ若しくはそれ以上を有するか否か[この存在は、サンプルが由来する個体が薬剤に反応することの指標である]:CLEC1B配列NM_016509の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)においてチミジン以外のヌクレオチド、好ましくはシチジン;(c)サンプル中のCLEC1B mRNA及び/若しくはタンパク質の量が、例えばCLEC1B遺伝子に関する既知の遺伝的背景(例えば、(a)又は(b)に従う多型)を有する1若しくはそれ以上の標準個体由来の、1つ若しくはそれ以上の比較/標準サンプル中のその量と異なるか否か、[異なる量の存在は、サンプルが由来する個体が薬剤に反応することの指標である]、又は(d)CLEC1Bタンパク質がCLEC1Bタンパク質標準配列NP_057593の位置24において多型Ser→Proを有するか否か、に関して試験することにより行われ得る。
【0057】
本発明の種々の局面のためのヌクレオチドの型の決定は、当該分野で公知の方法にしたがって行うことができる。これは、例えば
a)ゲノムDNAを含む単離された生物学的サンプルを備えること、又は単離されたゲノムDNAを備えること;
b)CLEC1B配列NM_016509の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)を含む核酸を増幅できるプライマーを使用してPCR反応を行うことにより核酸を増幅すること;
c)核酸の配列決定
により達成することができる。
【0058】
ヌクレオチドの型を決定する別の可能性は、例えば
a)ゲノムDNAを含む単離された生物学的サンプルを備えること、又は単離されたゲノムDNAを備えること;
b)ゲノムDNAを適切な支持体上に固定すること;
c)標準的な条件下で(ゲノム)CLEC1B配列を有する核酸に特異的に結合することができ、そして参照配列NM_016509に従ってCLEC1B配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)における特定のヌクレオチドに対する特異性を有する、1つ又はそれ以上のプローブを固定されたDNAにハイブリダイズさせること、によるものである。
【0059】
別の可能性にしたがって、ヌクレオチドの型は、ゲノムDNAを使用する代わりにmRNAから生成されたcDNAを使用すること以外は上記の2つの方法に基づいて決定することもできる。
【0060】
mRNAの量は、例えば
a.mRNAを含む生物学的サンプルを備えること若しくはa)のサンプルから単離されたmRNAを備えること;
b.CLEC1B mRNAから誘導された核酸を増幅する能力を有するプライマーを使用してRT−PCRにより核酸を増幅すること;
c.増幅された核酸の量を定量し、そしてそれを少なくとも1つの参照サンプル(すなわち、ポジティブコントロールサンプル及び/又はネガティブコントロールサンプル)中の増幅された核酸の量と比較すること、
により決定することができる。
【0061】
任意の所定の分析(生物学的、生化学的又は化学的)反応の結果を検証するためのポジティブコントロール又はネガティブコントロールという考え方は、当業者によく知られている。それは例えば、いわゆる「バックグラウンド」シグナル(所定の分析方法により作出される人工的なシグナル)と上記実験の結果(outcome)である特定のシグナルを区別するために、1つ又はそれ以上の規定された成分を欠いている(例えば、CLEC1Bタンパク質若しくはmRNAを欠いているか又は特異的CLEC1B抗体を欠いているなど)こと以外は、元の分析実験と同じやり方で行われる反応を含む(ネガティブコントロール)。また、全体の作業における反応条件を検証するための既知のシグナルを生じる追加の成分を使用すること以外は、元の分析実験と同じやり方で行われる反応も含む(ポジティブコントロール)。
【0062】
mRNAの量を決定する別の可能性は、例えば
a.mRNAを含む生物学的サンプルを備えること、又は単離されたmRNAを備えること;
b.mRNAを適切な支持体に移すこと;
c.支持体上のCLEC1B mRNAを、少なくとも1つの適切なプローブを用いて検出及び定量すること;
d.1つ又はそれ以上の参照サンプル(例えばポジティブ及び/又はネガティブコントロールサンプル)からのCLEC1B mRNAの量と比較すること、
によるものである。
【0063】
さらに別の可能性は:
a.個体の組織学的サンプルを備えること;
b.適切なmRNAプローブとのハイブリダイゼーション反応によりCLEC1B mRNAの量を検出し、ハイブリダイズしたプローブを検出及び定量すること;
c.CLEC1B mRNAの量を、1つ又はそれ以上の参照サンプル(例えば、ポジティブ及び/又はネガティブコントロールサンプル)中の量と比較すること、
を含む方法である。
【0064】
タンパク質の量の決定又はタンパク質多型の同定は、例えば
a.タンパク質を含む、試験される個体の生物学的サンプルを備えること;
b.好ましくは、a.のサンプルからタンパク質を単離すること;
c.タンパク質を適切な支持体に移すこと;
d.CLEC1Bタンパク質に特異的か又は特定のCLEC1Bタンパク質多型に特異的な少なくとも1つの抗体を用いてタンパク質を検出すること;及び
e.シグナルを定量し、そしてそれを少なくとも1つの参照サンプル(すなわち、ネガティブコントロール及び/又はポジティブコントロールサンプル)から得られたシグナルと比較すること 、
により達成することができる。
【0065】
タンパク質の量を決定するか又は特定のタンパク質多型を同定する別の可能性は:
a.個体の組織学的サンプルを備えること;
b.適切なCLEC1B抗体との結合反応によりCLEC1Bタンパク質の量を検出し、上記量を検出及び定量すること;
c.CLEC1Bタンパク質の量を、1つ又はそれ以上の参照サンプル(例えばポジティブ及び/又はネガティブコントロールサンプル)における量と比較すること、
を含む方法である。
【0066】
特定のタンパク質多型の決定は、例えば、ポリペプチド鎖の位置24(参照配列NP_057593に従うアミノ酸の位置)において別のアミノ鎖、特にプロリンを含むCLEC1Bタンパク質よりも、ポリペプチド鎖の位置24にセリンを含むCLEC1Bタンパク質に対して検出可能に高い結合親和性を有するCLEC1Bタンパク質に対する抗体を使用することにより達成することができる。
【0067】
さらに、特定のタンパク質多型の決定は、ポリペプチド鎖の位置24にセリンを含むCLEC1Bタンパク質とポリペプチド鎖の位置24に別のアミノ酸、特にプロリンを含むCLEC1Bタンパク質とを区別して検出するために適した質量分析法のような当該分野で公知のあらゆる適切な別の分子生物学的方法又は生化学的方法を使用することにより達成することができる。
【0068】
これに関して、用語サンプル又は採取された若しくは単離されたサンプルは、患者から採取された生物学的材料を指す。生物学的材料としては、とりわけ:組織若しくは器官若しくは体液(例えば、リンパ液、唾液、血液、皮膚、結合組織)の細胞若しくは標本(prepation)若しくは部分、又は細胞、好ましくは取り出すのが容易な細胞、例えば粘膜細胞が挙げられ得る。この種の生物学的材料は、スワブの採取、血液サンプルの採取、組織穿刺又は外科技術(例えば生検)のような一般的な技術により入手できる。サンプルは好ましくは組織学的検体、細胞標本、細胞、例えば粘膜細胞、細胞組織、精製されたDNA、mRNA若しくはタンパク質、又は 唾液、リンパ液若しくは血液のような体液、又はその上記サンプルの抽出物若しくは標本である。細胞又は組織由来の天然に存在する分子の精製、及び細胞又は組織抽出物の調製は、当業者によく知られている(以下に列挙される標準的な文献の例も参照のこと)。DNA/RNA又はタンパク質の標本は、そこで一般的な技術を用いて得ることができる。
【0069】
CLEC1Bは本願で初めて心臓血管障害及び/又は血栓性疾患と関連付けられることが同定されたので、互いに関連している一群の本発明はまた、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を処置及び/又は予防するための活性物質を発見するための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はその機能的フラグメントの使用に関する。
【0070】
本発明の種々の側面の一実施態様によれば、CLEC1B、その誘導体又はフラグメントは、単離された分子として使用することができる。
【0071】
本発明の文脈において、特にCLEC1Bに関して「単離された分子」という用語は、天然の供給源(すなわち、それらの天然環境から取り出された)から精製されたCLEC1B核酸若しくはポリペプチド又はそのフラグメント、さらには精製された組み換え分子(ここで精製されたという用語は、完全な精製に加えて部分的な精製を含む)を指す。核酸の単離は当該分野でよく知られている(以下の標準的な実験手順に関する文献も参照のこと)。
【0072】
本発明に従う使用により、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための新規な物質の同定が可能となる。本発明に従う使用は、所望の特徴を有する物質の同定、そして心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置に有用であることが既に同定されている物質のさらなる特徴づけを含む。
【0073】
本発明の種々の側面に使用される物質は、精製、部分的に精製、合成、又は生化学的若しくは分子生物学的方法により製造された、あらゆる生物学的若しくは化学的物質又は天然産物抽出物であり得る。
【0074】
本発明の種々の側面の意味で心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性であるとみなされる物質は、CLEC1Bの機能の1つの影響又は生体系におけるCLEC1B
mRNA若しくはタンパク質の発現、量若しくは定常状態レベルに対する影響を有するあらゆる物質であり得る。
【0075】
このために、物質は、CLEC1Bの任意の機能(例えば前記で定義されるもの又は本明細書中の以下において定義されるもの)を調節することができる。CLEC1Bタンパク質活性は、例えばCLEC1Bポリペプチド/タンパク質又はそのフラグメントの機能との直接相互作用及び干渉によってその物質により調節され得る。物質はまた、CLEC1Bの発現を、例えば転写(開始、延長、終止)、転写プロセシング若しくは翻訳プロセシング(特にプレプロタンパク質又はプロタンパク質の活性形態への翻訳後プロセシング、これはプロペプチドドメインを欠く全長タンパク質のC末端トランケーションも含み得る)、転写産物若しくは翻訳産物の安定性又は翻訳のレベルで調節することもできる。さらに、それはCLEC1Bの翻訳後プロセシング、修飾、タンパク質折り畳みなどを調節することができる。物質は、前記作用を直接又は間接的に及ぼすことができる(間接的はすなわちCLEC1B機能/タンパク質活性/発現などに対する影響を有する天然のシグナル伝達カスケードと干渉する(ポジティブ又はネガティブに)ことによるものを意味する)。さらに、物質は、CLEC1B活性を模倣する(すなわち、その機能/役割を引き継ぐ(take over))こともできる。
【0076】
CLEC1Bのフラグメントは、対応する野生型よりも短い、例えばヒト(hs)CLEC1B又はポリペプチドよりも短い任意のポリペプチド又は核酸であり得る。CLEC1Bの機能的フラグメントは、CLEC1Bの機能のうち少なくとも1つを示す任意のフラグメント(ポリペプチド又は核酸のいずれか)である。
【0077】
CLEC1Bの誘導体又はCLEC1Bフラグメントの誘導体は、CLEC1B核酸、ポリペプチド又はそのフラグメントの任意の修飾であり得る。誘導体は、例えばアミノ酸若しくはヌクレオチド配列の修飾、又は任意の他の種類の修飾、例えば化学的もしくは生物学的な修飾、例えばポリペプチド若しくは核酸の安定化をもたらす修飾(例えば、ホスホロチオエート(phosphoorothioate)修飾又は核酸バックボーンの他の種類の修飾又はアミノ酸間の結合の交換など)、又は特定の細胞に対するポリペプチド若しくは核酸の特異的標的化を可能にする修飾、又は細胞へのその進入若しくは細胞による取り込みを容易にする修飾(例えば、細胞浸透性ホスホペプチド、細胞浸透性ペプチドベクター、アンテナペディア/ペネトラチン(penetratin)、TAT、及びシグナルペプチドベースの配列に基づく細胞浸透性ペプチドベクターへのオルトカップリング(ortho coupling);又は特定のトランスポーターもしくはインポーター(importers)のリガンドの一部へのカップリング)を含む。
【0078】
CLEC1Bの「機能的誘導体」という用語は、CLEC1Bの機能を少なくとも1つ有する、天然に存在する形態(ポリペプチド又は核酸)に関するCLEC1Bのあらゆる種類の修飾を含む。本発明は、CLEC1Bのフラグメントの機能的誘導体も含む。
【0079】
CLEC1B核酸又はそのフラグメントに関して、CLEC1B機能は、例えば他の分子(例えば特異的ハイブリダイゼーションプライマー又はプローブ)と相互作用する能力、下流コード配列の転写を制御する能力、CLEC1Bタンパク質をコードする能力などを含む。CLEC1Bの機能はまた、CLEC1B(タンパク質又は核酸)又はそのフラグメントの、他の分子(限定されないが、タンパク質又はタンパク質フラグメント、核酸(すなわち、CLEC1B核酸が他の核酸と特異的にハイブリダイズする)、合成分子(すなわち、CLEC1Bタンパク質又はフラグメントが合成薬物と特異的に相互作用する)を含む)と相互作用する能力も含む。
【0080】
活性物質の同定は、例えば本明細書以下で同定される方法の1つ又はそれ以上を用いて行うことができる、例えば:
a.CLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を、試験物質と接触させること;及び
b.試験物質がCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の活性を調節するか否かを決定すること、
を含む、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法。
【0081】
a.検出可能な量又は活性のCLEC1B又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を有する細胞を、試験物質と接触させること;
b.試験物質が、細胞中に存在するCLEC1B又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量又は活性を調節することができるか否かを決定すること、
を含む、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法。
【0082】
本発明の種々の側面に使用される物質/試験物質/活性物質は、精製されているか、部分的に精製されているか、合成されたか又は生化学的若しくは分子生物学的方法により製造された、あらゆる生物学的物質、又は化学的物質、又は天然産物抽出物であり得る。
【0083】
CLEC1Bの量又は活性を検出可能に調節し得る物質は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質と考えられる。CLEC1Bの検出可能な量は、検出可能な量のCLEC1B 核酸(mRNA、cDNA又はゲノムDNA)及び/又はタンパク質(プレプロ/プロ/成熟タンパク質)のいずれかを指し得る。検出可能な活性は、CLEC1B DNA/mRNA又はタンパク質の、転写及び/又は翻訳、及び/又はタンパク質活性のいずれかを指し得る。
【0084】
本発明の種々の側面及び実施態様中で、用語の調節は、活性化又は阻害を指す。
【0085】
別の例は:
a.CLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードする核酸を、転写活性系において試験物質と接触させること;
b.該物質の存在下で該系に存在するCLEC1Bタンパク質又は機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を決定すること;
c.上記物質が非存在下で該系に存在するCLEC1Bタンパク質又は機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を決定すること;
d.物質が、上記系に存在するCLEC1Bタンパク質又は機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を調節することができるか否かを決定すること、
を含む、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法である。
【0086】
前記系中に存在するCLEC1B mRNAの量を調節することができる物質は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質と考えられる。
【0087】
転写活性系は、少なくとも、転写単位の転写反応を行う能力を有する、任意の生化学的系又は細胞系である。このような系は、当該分野でよく知られており、そして細胞(例えば、通常の実験室株又は細胞株、さらには真核細胞又は原核細胞の初代培養物)、さらには市販もされているインビトロ転写系又はキット(例えば細胞抽出物に基づくもの)を含む。本発明の場合、これはCLEC1B mRNAを発現するか又は機能的CLEC1BフラグメントをコードするmRNAを発現する生化学的系又は細胞系であり得る。
【0088】
系中に存在するmRNAの量の決定は、当該分野の状況においてよく知られた技術にしたがって行うことができる(放射能標識若しくは蛍光標識を用いた産物の直接標識化又は特異的プライマー若しくはプローブの使用による産物検出など)。
【0089】
別の例は:
a.CLEC1Bタンパク質又はそのフラグメント若しくは誘導体をコードする核酸 を、翻訳活性系で試験物質と接触させること;
b.該物質の存在下で該系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量を決定すること;
c.上記物質が非存在下で該系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量を決定すること;
d.物質が、上記系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量を調節することができるか否かを決定すること
を含む、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法である。
【0090】
前記系に存在するCLEC1Bタンパク質、誘導体又はフラグメントの量を調節することができる物質は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置に活性な物質であると考えられる。
【0091】
翻訳活性系は、少なくとも、転写物の翻訳反応を行う能力を有する、任意の生化学的系又は細胞系である。このような系は、当該分野でよく知られており、そして細胞(例えば、通常の実験室株又は細胞株、さらには真核細胞又は原核細胞の初代培養物)、さらには(例えばキットとして市販もされている)インビトロ翻訳系を含む。核酸のインビトロ翻訳のために、核酸を適切なベクターでサブクローニングし、続いて適切な緩衝液及び細胞抽出物(例えば網状赤血球溶血液)中でポリペプチドを発現させる。ベクター、必要な試薬及び適切な条件を用いるプロトコルは、当該分野で公知であり、市販されている。
【0092】
本発明の文脈において、用語「ポリペプチド」は、互いにペプチド結合で結合したアミノ酸を含む分子を指し、そしてこれは線状の様式で互いにカップリングした少なくとも10のアミノ酸を含有する。この種のより短い分子は、ペプチドと呼ばれる。用語「タンパク質」は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子を指すが、互いに会合又は結合した2つ又はそれ以上のポリペプチド鎖を含む分子のことを指すこともできる。従って、用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」を含む。
【0093】
上記系に存在するCLEC1Bタンパク質の検出は、当該分野でよく知られた技術(例えば翻訳産物の直接的な放射能標識若しくは蛍光標識、又は特異的抗体、タンパク質のタギング(tagging)及びタグの検出など)に従って行われ得る。
【0094】
別の例は:
a.レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントに機能可能にカップリングされたCLEC1B遺伝子又はその機能的フラグメントのプロモーターを含む核酸ベクターでトランスフェクトされた細胞を備えること:
b.機能的CLEC1Bプロモーターに機能可能にカップリングされていないレポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含むコントロールベクターでトランスフェクトされた細胞を備えること;
c.試験物質の存在下でa)及びb)による細胞のレポター遺伝子活性を決定すること;
d.試験物質が非存在下でa)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を決定すること
を含む、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法に関する。
【0095】
ここで、b)のレポーター遺伝子活性を有意に調節することなくa)によるレポーター遺伝子活性を有意に調節する(すなわち増加又は低減する)ことができる物質(すなわち、CLEC1Bプロモーター活性を特異的に増加させることができる) は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質であると考えられる。
【0096】
有意な調節は、標準偏差よりも高いあらゆる調節(すなわち増加又は減少)であり;好ましくはそれは標準偏差の少なくとも2倍高い。
【0097】
本発明の上記の側面は、当該分野で一般的に知られる典型的なレポーター遺伝子アッセイに基づく。この目的のため、適切なプロモーターを、選択された宿主細胞の種類に適した発現ベクター中に、プロモーターが活性である場合にレポーター遺伝子の発現を可能にするような様式で適切なレポーター遺伝子の上流に挿入される。続いてこの構築物を適切な宿主細胞に導入する。形質転換又はトランスフェクションに適した方法は当該分野でよく知られており、細胞培養及びレポーター遺伝子発現の検出のための条件も同様である(以下に列挙される標準的な文献を参照のこと)。適切な条件は当該分野でよく知られており、ベクター、レポーター遺伝子及び必要な試薬も同様であり、市販もされている。
【0098】
ベクターは、環状又は線状の核酸分子、例えばDNAプラスミド、バクテリオファージ又はコスミドであり、これを用いてその核酸フラグメント(例えば他のベクターから切り取られるかPCRにより増幅され、そしてクローニングベクターに挿入される)は、適切な細胞又は生物において特異的に増幅され得る。発現ベクターは、宿主細胞又は生物において関心ある遺伝子(例えばレポーター遺伝子)の異種発現を可能にする。細胞又は生物の種類は、目的に大いに依存し、そしてその選択は当業者の知識の範囲内にある。核酸の増幅に適した生物は、例えば細菌又は酵母のような、例えば主として高い増殖速度を有する単細胞生物である。適切な生物はまた、例えば多様な生物から作成された細胞株(例えばヨトウガ(Spodoptera Frugiperda)由来のSF9細胞など)のような、多細胞組織から単離及び培養された細胞であり得る。適切なクローニングベクターは当該分野で公知であり、そして 例えばRoche Diagnostics、New England Biolabs、Promega、Stratageneのような及びさらに多くの多様なバイオ技術供給業者から市販されている。適切な細胞株は、例えばAmerican Type Culture Collection (ATCC)から市販されている。
【0099】
タンパク質又はポリペプチドの異種発現のためには、細胞は核酸ベクターでのトランスフェクション、及び目的の遺伝子(例えば、レポーター遺伝子)の発現に適した任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。その可能な例は、初代細胞又は培養された細胞、好ましくは真核細胞培養物であり、これは例えば多細胞生物又は組織を起源に得られており(例えば、HeLa、CHO、COS、SF9又は3T3)、又はこれはそれ自体が単細胞生物、例えば酵母細胞(例えばS.pombe又はS.cerevisiae)若しくは原核細胞の培養物、すなわちPichia若しくはE.coliである。組織由来の細胞及びサンプルは、従来技術の公知の技術により得ることができる(例えば血液サンプル採取、組織穿刺又は外科技術)。また、天然にCLEC1Bを産生する単離された細胞は、産生されるCLEC1Bの量を心臓血管薬が増加又は低減する能力を直接的に決定するため、CLEC1Bの本発明の発明性のある使用のための使用に適している。
【0100】
本願の文脈において、用語「トランスフェクション」は、(原核又は真核)宿主細胞中に核酸ベクターを導入することを指し、従って用語「形質転換」を含む。上記トランスフェクションは安定でも一時的でもよく、そして一般的な方法に基づいて行うことができる。
【0101】
CLEC1Bプロモーター領域はCLEC1B遺伝子の一部であり、これは関心ある遺伝子のコード配列がプロモーター/エンハンサーの機能的下流で適切なベクター中で、クローニングされ、そして適切な宿主細胞中にトランスフェクトされる場合に、関心ある遺伝子産物の転写を制御することができる。CLEC1B遺伝子の上流のヌクレオチド配列は、CLEC1Bプロモーター領域と考えられ得る。この領域は、配列番号NC_000012.10のヌクレオチド番号10043146の下流のヌクレオチド配列を含む。
【0102】
CLEC1Bプロモーターの機能的フラグメントは、所定の条件下で下流コード配列の転写を同様に制御することができるCLEC1Bプロモーターフラグメントである。適切なフラグメントの同定は、当業者(responsible artisan)の技術範囲内である。
【0103】
レポーター遺伝子は、その遺伝子産物の容易な定量を可能にする任意の遺伝子であり得る。真核又は原核宿主のための種々のレポーター遺伝子、さらには検出方法及び必要な試薬は、当該分野で公知であり、そして市販されている。これらには、例えばベータラクタマーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ、緑色若しくは青色蛍光タンパク質(GFP又はBFP)、DsRed、HIS3、URA3、TRP1若しくはLEU2又はベータガラクトシダーゼの遺伝子が含まれる。これらの遺伝子は、可視(色又は発光)反応により容易に検出することができるタンパク質(例えばlacZ、ルシフェラーゼ)をコードする。これらには、可視(色又は発光)反応を用いて容易に検出することができる遺伝子産物又は発現された場合にアンピシリン若しくはカナマイシンのような抗生物質に対する耐性を与える遺伝子産物が含まれる。他のレポーター遺伝子産物は、発現している細胞が例えば栄養要求性遺伝子のような特定の条件下で増殖することを可能にする。
【0104】
レポーター遺伝子の機能的フラグメントは、その遺伝子産物の容易な定量を可能にする、所定のレポーター遺伝子の任意のフラグメントである。
【0105】
本発明の上記側面の文脈内において、コントロールベクターは、レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含む任意の適切なベクターであり得るが、ここでレポーター遺伝子発現は(機能的)CLEC1Bプロモーターにより駆動されない。これは、例えばレポーター遺伝子又はその機能的フラグメントが機能的CLEC1Bプロモーターに機能可能にカップリングされていないことを意味し得る(すなわち、CLEC1Bプロモーター全体が欠けているか、非機能的CLEC1Bプロモーター若しくはプロモーターフラグメントを含むか、又はプロモーター及びレポーター遺伝子のカップリングが機能的でない)。これはまた、レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントがCLEC1Bプロモーターとは別のプロモーター(例えばSV40又は別の標準的なプロモーター)に作動可能にカップリングされていることも意味する。機能的ベクター及びコントロールベクターは、同じ細胞にトランスフェクトすることもできるが、その場合、レポーター遺伝子が異なるものである必要がある。
【0106】
本発明の別の側面は、活性な物質を同定するための前記の新規方法のうちの1つの従う方法に基づくハイスループットスクリーニングに関する(このような方法は「アッセイ」とも呼ばれる)。
【0107】
可能性がある薬用化合物の有効性についてのパラメータとして、規定された標的分子(いわゆるターゲット、主にタンパク質又は核酸)の活性又は濃度を測定するために使用される分析方法又は分析系(いわゆるアッセイ)は、当該分野の状況においてよく知られいている。アッセイは、例えば規定された空間及び時間内に、反応混合物に一緒に置かれる単離された成分又は部分的に単離された成分を使用する生化学的分析方法又は系を含み、ここで可能性がある薬用化合物の有効性が試験され得る(例えば前記の方法)。プロテアーゼ活性を測定するためには、これらは例えば標識されたメンバーと標識されていないメンバーとの相互作用(例えば、標識された基質と標識されていないプロテアーゼの相互作用、ここで基質が切断されると標識された基質の部分が遊離され;従ってプロテアーゼ活性は所定の時間に遊離した標識されたメンバーの量を検出及び定量することにより測定することができる)を測定するための放射性同位体又は蛍光のアッセイを包含する。アッセイの他の例は、細胞ベースのアッセイを含む(例えば、前記のレポーターアッセイ又は表現型アッセイ、ここで物質の活性は細胞の表現型の変化によりモニタリングすることができる)。
【0108】
種々の種類のアッセイが当該分野の状況で一般的に知られており、そして販売業者から市販されている。
【0109】
本発明の種々の側面のさらなる実施態様によれば、NM_016509の位置250を含むCLEC1B核酸が使用され、又はNP_057593の位置24を含むCLEC1Bポリペプチドが使用される。
【0110】
CLEC1B遺伝子変異及びタンパク質変異、参照配列NM_016509に従ってCLEC1Bの位置250(又はゲノム配列における対応する位置)におけるT→C又は参照配列NP_057593にしたがってCLEC1Bタンパク質の位置24におけるSer→Proは、心臓血管障害及び/又は血栓性血管障害の存在と最も有意に関連しているので、本発明の好ましい実施態様は、例えば本発明に従う利用の1つ又はそれ以上を行うための、上記多型の1つ又はそれ以上を有するCLEC1B核酸又はポリペプチドの使用に関する。
【0111】
通常は、試験しようとする遺伝子の野生型配列における個々のSNPは、 標的遺伝子を使用することによる活性化合物(「分子標的」)のスクリーニングにおいて考慮されない。本願は、CLEC1B変異が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の発生と関連するものとして同定しているので、この種の変異の使用(特に、これに伴う、細胞の特定の生理学的構成(makeup)の背景に対して)により、心臓血管障害及び/又は血栓性血管障害を処置及び/又は予防するために適した活性化合物を発見するより高い可能性がもたらされ得る。実際に、この種の遺伝的及び生理学的構成を有する個体はまた、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患している可能性が高い。従って、参照配列NM_016509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列の対応する位置)にシチジンを有するCLEC1B ヌクレオチド配列の使用は、この遺伝子又はタンパク質変異を有する特定の患者が反応する活性化合物の発見をもたらすはずである。参照配列NM_016509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にT又はCを有するCLEC1Bコード配列の使用は、本発明の別の実施態様に相当する。
【0112】
さらに、CLEC1B遺伝子におけるSNPは、CLEC1B自体以外の標的を使用する活性化合物スクリーニングにおける使用に適している:心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の処置及び/又は予防のための活性化合物を見いだすために細胞アッセイにおいて細胞を使用することは可能であり、これら化合物は、CLEC1B以外の標的、特にゲノムが参照配列NM_016509にしたがってヌクレオチド配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)に関してCLEC1B遺伝子の規定された変異を有する細胞、の機能及び/又は活性及び/又は量に影響を及ぼす能力を有する。このようにして、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な化合物を、好ましくは処置しようとする疾患と関連する遺伝的背景に対して変異した遺伝子以外の遺伝子の機能に干在するものでさえ、特異的にスクリーニングすることが可能である。
【0113】
本発明のさらなる側面は、試験しよとする個体の身体から採取された生物学的サンプルを解析することにより、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の素因を診断するための、CLEC1Bの検出のための手段の使用に関する。
【0114】
これに関して、以下の変異の存在は、好ましくは増加した危険性を示す:少なくとも1つの対立遺伝子上の、参照配列NM_016509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)にCを含むCLEC1Bコード領域 。
【0115】
CLEC1Bを検出するための手段は、生物学的サンプル中のCLEC1Bタンパク質又は核酸を検出するために適した任意の手段であり得る。
【0116】
検出のための手段は、例えばサンプル中のCLEC1B mRNA又はタンパク質を検出するための手段;例えばサンプル中のCLEC1B mRNA又はタンパク質の量を定量することができる手段であり得る(例えば適切なプライマー、プローブ、抗CLEC1B抗体など;例えば標準的な条件下でCLEC1B mRNA若しくはcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる、例えばノーザンブロット若しくはマイクロアレイにおける使用のための核酸プローブ、又は定量的な逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)のためのプライマーセット)。別の例は、参照配列NM_016509に従ってCLEC1B遺伝子の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるヌクレオチドの型を決定するための手段、例えばPCR配列決定などで使用すべき適切なPCRプライマーセット(例えばゲノム又はcDNAプライマー)、プローブ(例えばサザンブロット又はチップハイブリダイゼーション若しくはマイクロアレイハイブリダイゼーションにおいて使用すべきもの)、又は例えば当該分野で公知の免疫(組織)化学的な、蛍光若しくは放射化学技術において使用すべき特異的抗DNA抗体に関する。さらに別の例は、参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質の位置24に存在するアミノ酸の型を決定するための手段、例えば特定のタンパク質多型に特異的な抗体に関する。
【0117】
別の実施態様によれば、検出のための手段は、CLEC1B遺伝子の、参照配列NM_16509に従って位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)におけるヌクレオチドの型を決定するための手段であり、例えば配列番号XXXに従うプライマーの1つ又はそれ以上である。
【0118】
適切なプライマーの設計及び合成は、先行技術において知られており;このようなプライマーは市販でも入手し得る。好ましい実施態様によれば、これらは配列番号4及び/又は5に従うプライマーである。核酸は、従来の型どおりの方法を用いて、例えばApplied Biosystems、Bio-Radなどのような企業から販売されている従来の研究用ロボットを使用することにより配列決定される。
【0119】
適切なプローブの設計及び調製は、同様に従来技術において知られている(例えば、列挙される標準的な文献を参照のこと)。
【0120】
本発明の使用又は方法のうちの1つのさらなる好ましい実施態様において、タンパク質の量の変化、又はCLEC1Bタンパク質内の所定のタンパク質多型の決定は、少なくとも1つの抗体を用いて決定される。ここでの好ましい検出方法はELISA、ウェスタンブロット、タンパク質チップ及び分光方法である。
【0121】
適切な抗体又はその機能的フラグメントの調製は、従来技術において知られており、例えば哺乳動物(例えばウサギ)を、必要に応じて適切なアジュバント(フロイントアジュバント又は水酸化アルミニウムゲル、例えばDiamond, B.A. et al. (1981) The New England Journal of Medicine:1344-1349を参照のこと)の存在下でCLEC1Bタンパク質又はそのフラグメントで免疫することによる。免疫学的反応の結果として動物において産生されたポリクローナル抗体を、続いて公知の方法(例えばカラムクロマトグラフィー)により単離及び精製し得る。モノクローナル抗体は、例えばWinter及びMilsteinによる公知の方法 (Winter, G. & Milstein, C. (1991) Nature, 349, 293-299)に従って得られ得る。モノクローナル抗体を調製及び精製する適切な方法は、先行技術において知られている(標準的な文献を参照のこと)。CLEC1Bを検出するための公知の抗体の例は、Abnova Corporation(カタログ番号:H00051266-A01)製又はNovus Biologicals(カタログ番号:H00051266-A01)製のCLEC1B抗体を含む。CLEC1Bを検出するための抗体の使用は当該分野で公知であり、例えばFullerら又はSuzuki-Inoueらにおいても開示されている。
【0122】
関連した本発明の一群の文脈において、抗体又は抗体フラグメントという用語は、組み換えにより産生された抗体又はその抗原結合部位も意味し、これは必要に応じて改変されていてもよく、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異的若しくはオリゴ特異的(oligo-specific)抗体又はF(ab)若しくはF(ab)2フラグメントであってもよい。
【0123】
抗体反応を検出するための従来の免疫化学的又は免疫放射線学的(immunoradiological)方法は当業者によく知られている。一般的な方法は、例えば同定しようとする抗原に対する特異的な一次抗体の結合、通常は上記一次抗体上の種特異的エピトープを認識する二次抗体の結合に基づく。上記二次抗体の結合は、ここでは検出可能なシグナルを生成させるために利用される(例えば、放射標識された二次抗体が使用される場合の放射性シグナル、又は蛍光カップリング二次抗体が使用される場合の蛍光シグナル、又は例えば酵素カップリング二次抗体が使用される場合の比色分析で測定可能なシグナルなど)、標準的な方法に関しては以下に列挙される文献も参照のこと。
【0124】
互いに関連した本発明の一群はまた、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患についての素因を検出するための診断キットに関し、このキットは、生物学的サンプル中のCLEC1Bを検出するための少なくとも1つの手段を含む。
【0125】
本発明の文脈において、用語「キット」(キットオブパーツ(kit of parts))は、所定の課題(従って本明細書では、例えば心臓血管障害及び/又は血栓性疾患又は素因の診断のため)を行うための空間的及び機能的に関連付けられた単位を生じるように組み合わされた、本明細書において同定された構成要素の任意の組み合わせであって、さらなる部分をさらに含み得る組み合わせを意味する。
【0126】
本発明に従う診断キットは、生物学的サンプル中のCLEC1Bを検出するための少なくとも1つの手段を含む。適切には、これにはさらに、CLEC1Bを検出するため及び/若しくはサンプルの調製もしくはメソディング(methoding)のための適切な緩衝液及び/又はさら
なる試薬、並びに適切な場合には、特定の検出方法を行うための指示書も含まれ得る。
【0127】
本発明に従う使用又は方法の好ましい実施態様によれば、CLEC1B遺伝子における変異の1つ又はそれ以上の存在は、PCR、そして適切な場合には、その後の配列決定により、又は核酸プローブを使用することにより検出される。このようなプローブは、例えば50又はそれ以上、100又はそれ以上、150又はそれ以上、200又はそれ以上、250又はそれ以上、300又はそれ以上、350又はそれ以上、400又はそれ以上の配列番号3に従って連続したヌクレオチドを有する核酸フラグメントであり得、このフラグメントは配列番号3の位置201(本発明に従うSNPが位置する位置)を含む。
【0128】
例えば適切な支持体(例えば膜又はチップ)上に固定されたゲノムDNAに結合する適切なプローブを用いたPCR又はハイブリダイゼーションのための適切なプロトコル及び試薬は、先行技術においてよく知られている。
【0129】
両方の分子の一本鎖形態が、新しい二本鎖核酸分子を形成するために適切な反応条件(温度及び周囲の媒体のイオン濃度)下で互いに結合することができる場合、核酸分子は別の核酸分子と「ハイブリダイズ」し得る。ハイブリダイズするためには、互いに結合している核酸分子は相補配列を有していなければならないしかし、選択されたストリンジェンシー条件によって、結合を中断することなく塩基ミスマッチもあり得る。用語「ストリンジェンシー」は、2つの一本鎖核酸分子が互いに結合する場合に、ハイブリダイゼーションの特異性に影響を及ぼす反応条件を表わし、従ってこれはまた、いくつのミスマッチまたは2つの分子間のどれくらい強いミスマッチが結合の間に許容されるかを決定する。ストリンジェンシー、そして反応の特異性はまた、ここではとりわけ温度及び緩衝液条件に依存する。2つの所定の核酸をハイブリダイズさせるための適切な条件は、長さ、核酸分子の型及び相補性の程度に依存する。前記パラメーター及び所定の分析方法に適切な条件の決定は、当業者によく知られており、標準的な研究方法の文献にも見いだされ得る(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)。
【0130】
互いに関連した本発明の一群の好ましい実施態様によれば、個体は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患を有する患者である。心臓血管障害は、好ましくは冠状動脈疾患(>20%狭窄及び/又は>50%狭窄)、心筋梗塞、早期心筋梗塞、急性冠症候群又は狭心症(特に不安定アンギナ)である。
【0131】
本発明の方法、使用又は試験キットに使用される単離されたサンプルは、好ましくはヒトのサンプルであり、そして試験される個体は好ましくはヒトである。上記サンプルは、特に:組織学的サンプル、生検サンプル、細胞(例えば粘膜細胞)、細胞抽出物、細胞組織、体液、好ましくは血液、唾液、リンパ液又は尿である。
【0132】
本発明はさらに、単離されたCLEC1B核酸、例えばNM_016509に従う配列若しくは配列の一部、又はNT009714に従う配列若しくは配列の一部又は配列番号3に従う配列若しくは配列の一部、又はそれらのフラグメントを有するか含む核酸に関する。これら核酸又はフラグメントは、以下のSNP:
a. NM_016509に従ってCLEC1B配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置、例えば配列番号3の位置201)におけるシチジン、又は
b. NM_016509に従ってCLEC1B配列の位置250(又はCLEC1Bゲノム配列における対応する位置、例えば配列番号3の位置201)におけるチミジン
を含む。
【0133】
本発明はさらに、単離されたCLEC1Bタンパク質又はそのフラグメントの使用に関し、このタンパク質又はフラグメントは、以下のタンパク質多型:
a. 参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質のポリペプチド鎖の位置24におけるプロリン
b. 参照配列NP_057593に従ってCLEC1Bタンパク質のポリペプチド鎖の位置24におけるセリン、
を有する。
【0134】
本発明を、実施例(限定と考えるべきではない)に基づいて、図面及び表と組み合わせて以下でより詳細に説明する:
【0135】
参照文献:
Chaipan C, Soilleux EJ, Simpson P, Hofmann H, Gramberg T, Marzi A, Geier M, Stewart EA, Eisemann J, Steinkasserer A, Suzuki-Inoue K, Fuller GL, Pearce AC, Watson SP, Hoxie JA, Baribaud F, Pohlmann S. DC-SIGN and CLEC-2 mediate human immunodeficiency virus type 1 capture by platelets. J Virol 80:8951-8960, 2006.
Colonna M, Samaridis J, Angman L. Molecular characterization of two novel C-type lectin-like receptors, one of which is selectively expressed in human dendritic cells. Eur J Immunol 30:697-704, 2000.
Fuller GL, Williams JA, Tomlinson MG, Eble JA, Hanna SL, Pohlmann S, Suzuki-Inoue K, Ozaki Y, Watson SP, Pearce AC. The C-type lectin receptors CLEC-2 and Dectin-1, but not DC-SIGN, signal via a novel YXXL-dependent signaling cascade. J Biol Chem 282:12397-12409, 2007.
Kanazawa N. Dendritic cell immunoreceptors:C-type lectin receptors for pattern-recognition and signaling on antigen-presenting cells. J Dermatol Sci 45:77-86, 2007.
Sobanov Y, Bernreiter A, Derdak S, Mechtcheriakova D, Schweighofer B, Duchler M, Kalthoff F, Hofer E. A novel cluster of lectin-like receptor genes expressed
in monocytic, dendritic and endothelial cells maps close to the NK receptor genes in the human NK gene complex. Eur J Immunol 31:3493-3503, 2001.
Suzuki-Inoue K, Fuller GL, Garcia A, Eble JA, Pohlmann S, Inoue O, Gartner TK,
Hughan SC, Pearce AC, Laing GD, Theakston RD, Schweighoffer E, Zitzmann N, Morita T, Tybulewicz VL, Ozaki Y, Watson SP. A novel Syk-dependent mechanism of platelet activation by the C-type lectin receptor CLEC-2. Blood 107:542-549, 2006.
Watson AA, Brown J, Harlos K, Eble JA, Walter TS, O'Callaghan CA. The crystal
structure and mutational binding analysis of the extracellular domain of the platelet-activating receptor CLEC-2. J Biol Chem 282:3165-3172, 2007.
【0136】
研究方法の標準的文献:
(別に記載がなければ、本明細書において言及される研究方法は、以下に列挙される標準的文献にしたがって行われるか、行うことができる。)
Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual. Second edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY. 545 pp;
Current Protocols in Molecular Biology; regularly updated, e.g. Volume 2000; Wiley & Sons, Inc; Editors:Fred M. Ausubel, Roger Brent, Robert Eg. Kingston, David D. Moore, J.G. Seidman, John A. Smith, Kevin Struhl.
Current Protocols in Human Genetics; regularly updated; Wiley & Sons, Inc; Editors:Nicholas C. Dracopoli, Honathan L. Haines, Bruce R. Korf, Cynthia C. Morton, Christine E. Seidman, J.G. Seigman, Douglas R. Smith.
Current Protocols in Protein Science; regularly updated; Wiley & Sons, Inc; Editors:John E. Coligan, Ben M. Dunn, Hidde L. Ploegh, David W. Speicher, Paul T. Wingfield.
Molecular Biology of the Cell; third edition; Alberts, B., Bray, D., Lewis, J., Raff, M., Roberts, K., Watson, J.D.; Garland Publishing, Inc. New York & London, 1994;
Frederick M. Ausubel (編者)、Roger Brent(編者)、Robert E. Kingston(編者)、David D. Moore(編者)、J.G. Seidman (編者)、John A. Smith (編者)、Kevin Struhl (編者)によるShort Protocols in Molecular Biology, 5th edition、 October 2002, John Wiley & Sons, Inc., New York
Transgenic Animal Technology A Laboratory Handbook. C.A. Pinkert, editor; Academic Press Inc., San Diego, California, 1994 (ISBN:0125571658)
Gene targeting:A Practical Approach, 2nd Ed., Joyner AL, ed. 2000. IRL Press at Oxford University Press, New York;
Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual. Nagy, A, Gertsenstein, M.,
Vintersten, K., Behringer, R., 2003, Cold Spring Harbor Press, New York;
【実施例】
【0137】
1. 配列決定及び配列決定結果の解析によるSNP検出
1a)CLEC1B遺伝子におけるDNA領域の増幅
DNA増幅のためのオリゴヌクレオチド(プライマー):
参照配列NM_016509に従ってCLEC1B遺伝子の位置250(又はNT009714に従ってCLEC1Bゲノム配列における対応する位置)に存在するヌクレオチドの検出のため、以下のプライマーのうち1つ又は両方を使用できた:
プライマー1(順方向プライマー):5'−TGCCTGCTCCTTGATGTCTTTATT−3' (配列番号4)
プライマー2(逆方向プライマー):5'−TCAGCAGAATCAAAGCCATCACA−3’ (配列番号5)
増幅のためのPCRプロトコル:
使用した試薬は、Applied Biosystems (Foster City, USA)製であった:
ゲノムDNA 20ng; TaqGold DNAポリメラーゼ1単位; 1×Taqポリメラーゼ緩衝液; 500μM dNTPs; 2.5mM MgCl2; 200nMの各増幅プライマー対(1.A下の配列); H2Oで5μlにした。
遺伝子型決定のためのPCR増幅プログラム:
95℃10分間 ×1サイクル;
95℃30秒間
70℃30秒間 ×2サイクル;
95℃30秒間
65℃30秒間 ×2サイクル;
95℃30秒間
60℃30秒間 ×2サイクル;
95℃30秒間
56℃30秒間
72℃30秒間 ×40サイクル;
72℃10分間
4℃30秒間 ×1サイクル。
【0138】
1b)SNPの同定
SNPのミニ配列決定及び検出のためのプロトコル
全ての試薬はApplied Biosystems (Foster City, USA)製であった。2μlの精製されたPCR産物、1.5μlのBigDyeターミネーターキット、200nM配列決定プライマー(配列については1.A下を参照のこと)、H2Oで10μlにした。
配列決定のための増幅プログラム:
96℃2分間 ×1サイクル;
96℃10秒間
55℃10秒間
65℃4分間 ×30サイクル;
72℃7分間
4℃30秒間 ×1サイクル。
【0139】
実施例2:同定されたSNPの統計的解析
参照ヌクレオチド配列NM_016509、NT009714及び参照タンパク質配列NP_057593中の分析されたCLEC1B多型を、約1400人の個体における臨床パラメータとの関連について解析した。解析されたコホートの特徴を表1に掲記する。種々の同定された多型の頻度及び分布を表2に示す。参照配列NP_057593の位置24におけるCLEC2多型Ser→Proと、解析された患者群における臨床エンドポイントとの関連性は、表3、4及び5を参照。全ての統計的解析は、SASバージョン8.2(SAS Institute GmbH, Heidelberg, Germany)を用いて行った。
【0140】
p値は、観察された関連性の統計的有意性に関連するパラメータである。RR(リスク比)は、一定のCLEC1B多型を有する患者において指示される臨床エンドポイントの発生の増加した危険性に関するパラメータである。RRは、年齢、性別、喫煙者状態、血圧及び糖尿病状態に関して患者群を調整して算出した。
【0141】
表3に示されるように、CLEC1B-C250Cを有する個体(Pro25Proにとってホモ接合)は、CLEC1B-T250T (Ser24Ser)を有する個体よりも、>20%狭窄を伴う冠状動脈疾患(CAD)を経験するより高い危険性を有する。CADを有する頻度は個体におけるC対立遺伝子の数に伴って増加するので、CADの頻度のCLEC1Bヌクレオチド配列の位置250におけるC(シチジン)の存在に対する依存性が観察され得る。すなわち、CLEC1Bヌクレオチド配列の位置250において、C対立遺伝子を有していない個体についてCAD頻度76.89%、1つの対立遺伝子を有する個体についてCAD頻度84.24%、そして2つのC対立遺伝子を有する個体についてCAD頻度88.89%。さらに、CLEC1B-C250Cを有する個体(Pro25Proにとってホモ接合)は、CLEC1B-T250T(Ser24Ser)を有する個体よりも、>50%狭窄を伴う冠状動脈疾患(CAD)を経験するより高い危険性を有する。CADを有する頻度は、個体におけるC対立遺伝子の数に伴って増加するので、CADの頻度の、CLEC1Bヌクレオチド配列の位置250におけるC(シチジン)の存在に対する依存性が観察され得る。すなわち、CLEC1Bヌクレオチド配列の位置250において、C対立遺伝子を有していない個体についてCAD頻度66.35%、1つのC対立遺伝子を有する個体についてCAD頻度74.50%、そして2つのC対立遺伝子を有する個体についてCAD頻度83.33%。
【0142】
表4及び5においてまとめられているように、タンパク質の位置24(又はヌクレオチド配列の位置250)におけるCLEC1B多型と、冠状動脈疾患との関連性についての統計的有意性の結果は、性別、糖尿病及び喫煙者状態又は高血圧のような交絡因子とは独立している。CLEC1B−C250C(Pro24Pro)を有する個体は、>20%狭窄及び>50%狭窄を伴う冠状動脈疾患になるそれぞれ1.610倍(p値=0.0026)及び1.499倍(p値=0.0021)高い危険性を有する。
【0143】
上記研究の1つの結果(outcome)として、以下のことを一般的に述べることができる:
1つ又は両方の対立遺伝子上の参照配列NM_016509のCLEC1Bコード領域における位置250のシチジンは、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患、特に冠状動脈疾患を経験するか発症する危険性を有意に増加させ、参照配列NM_016509のCLEC1B ヌクレオチド配列における位置250にチミジンを有していない個体においては特に、潜在的に治療的介入が必要とされる。
【0144】
臨床エンドポイントとCLEC1B遺伝子及び/又はタンパク質における遺伝子変異との間の関連性は、血管管腔の>20%狭窄及び>50%狭窄を伴う冠状動脈疾患のような心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の発症に対するCLEC1Bタンパク質の位置24における遺伝子変異Ser→Proの影響の明確な示唆である。ここで初めて実証したCLEC1Bの変異と前記臨床エンドポイントとの間の統計的に有意な相関関係は、従って本発明の重要な基盤を与える。
【0145】
図面及び表の説明:
表:
略号:
Ser=セリン
Pro=プロリン
CAD=冠状動脈疾患
CAD20=20%又はそれ以上の可視狭窄
CAD50=50%又はそれ以上の可視狭窄
表1:患者コホートの基本的特徴
表2:LURICコホートにおけるCLEC1B多型Ser24Proの分布
表3:LURICコホートにおけるCLEC1B多型Ser24Proと冠状動脈疾患の関連性
表4:交絡因子を含む、LURICコホートにおけるCLEC1Bタンパク質の位置24における(Ser→Pro)多型の、20%又はそれ以上の狭窄を伴う冠状動脈疾患に対する影響の分析(ロジスティック回帰)。CAD20=20%又はそれ以上の可視狭窄、CAD50=50%又はそれ以上の可視狭窄。
【0146】
表:
略号:
Ser=セリン
Pro=プロリン
CAD=冠状動脈疾患
CAD20=20%又はそれ以上の可視狭窄
CAD50=50%又はそれ以上の可視狭窄
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおける、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の同定、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための、1つ若しくはそれ以上のCLEC1B一塩基多型(SNP)又はタンパク質多型の使用。
【請求項2】
試験しようとする個体から採取された生物学的サンプルにおける、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の同定、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はその機能的フラグメントの使用。
【請求項3】
個体における心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の同定、又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患を発症する増加した危険性の同定のための方法であって、個体から採取されたサンプルを、
a)CLEC1B遺伝子(NM_016509に従って)の一方又は両方の対立遺伝子上の位置250に存在するヌクレオチドの型について[上記位置に存在するヌクレオチドの型は、上記個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する危険性を指示する];又は
b)CLEC1Bタンパク質(NP_057593に従って)のポリペプチド鎖の位置24に存在するアミノ酸の型について[上記位置に存在するアミノ酸の型は、上記個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する危険性を指示する];又は
c)上記サンプル中に存在するCLEC1B mRNA及び/若しくはタンパク質の量が、1つ若しくはそれ以上の標準サンプルの量と異なるか否かに関して[異なる量の存在は、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか又は発症する増加した危険性を示す]、
試験することを含む、方法。
【請求項4】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患している危険性を決定する方法であって、個体の単離されたサンプルを、前述のSNP又はタンパク質多型の1つ又はそれ以上の存在について分析すること、並びに年齢及びCLEC1B遺伝子の位置250又はCLEC1Bタンパク質の位置24に存在するヌクレオチド又はアミノ酸の型に基づいて推定される危険性を計算することを含む、方法。
【請求項5】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の用量を適合させるための、CLEC1B一塩基多型(SNP)又はタンパク質多型の使用。
【請求項6】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の用量を適合させるための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はその機能的フラグメントの使用。
【請求項7】
個体における心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置のための薬剤の投薬量を適合させるための方法であって、個体の採取されたサンプルを、
a)CLEC1B遺伝子のいずれかの若しくは両方の対立遺伝子上の位置250に存在するヌクレオチドの型について[上記用量は、該位置の1つ又はそれ以上に存在するヌクレオチドの型に依存して適合される];又は
b)CLEC1Bタンパク質中の位置24に存在するアミノ酸の型について[上記用量は、該位置の一方又は両方に存在するアミノ酸の型に依存して適合される];又は
c)上記サンプル中に存在するCLEC1B mRNA及び/又はタンパク質の量が、1つ又はそれ以上の採取された標準サンプルの量と異なるか否かに関して[上記用量は、個体の採取されたサンプル中のタンパク質及び/又はmRNAの量が、1つ又は複数の標準サンプルの量と異なるか否かに依存して適合される]、
試験することを含む、方法。
【請求項8】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の処置及び/又は予防のための薬剤に反応する個体を同定するための、1つ又はそれ以上のCLEC1B一塩基多型(SNP)又はタンパク質多型の使用。
【請求項9】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の処置及び/又は予防のための薬剤に反応する個体を同定するための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はそのフラグメントの使用。
【請求項10】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防及び/又は処置において活性な物質を同定するための、CLEC1Bタンパク質若しくは核酸又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の使用。
【請求項11】
試験しようとする個体の身体から採取した生物学的サンプルを分析することにより、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の素因を診断するためのCLEC1Bの検出のための手段の使用。
【請求項12】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法であって:
a) CLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を、試験物質と接触させること;及び
b) 試験物質がCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の活性を調節するか否かを決定すること
を含む、方法。
【請求項13】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法であって:
a)検出可能な量又は活性のCLEC1B又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を有する細胞を、試験物質と接触させること;
b)試験物質が細胞中に存在するCLEC1B又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量または活性を調節することができるか否かを決定すること
を含む、方法。
【請求項14】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法であって:
a)CLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードする核酸を、転写活性系において試験物質と接触させること;
b)該物質の存在下で該系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を決定すること;
c)上記物質の非存在下で上記系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を決定すること;
d)物質が、上記系に存在するCLEC1Bタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を調節することができるか否かを決定すること
を含む、方法。
【請求項15】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患の予防又は処置において活性な物質を同定するための方法であって:
a)レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントに機能可能にカップリングされたCLEC1B遺伝子又はその機能的フラグメントのプロモーターを含む核酸ベクターでトランスフェクトされた細胞を備えること:
b)機能的CLEC1Bプロモーターに機能可能にカップリングされていないレポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含むコントロールベクターでトランスフェクトされた細胞を備えること;
c)試験物質の存在下でa)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を決定すること;
d)試験物質が非存在下でa)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を決定すること
を含む、方法。
【請求項16】
生物学的サンプル中のCLEC1Bの検出のための少なくとも1つの手段を含む、心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患又は心臓血管障害及び/若しくは血栓性疾患の素因を診断するための試験キット。
【請求項17】
CLEC1B遺伝子のいずれか又は両方の対立遺伝子が以下のゲノム変異[CLEC1B遺伝子配列の位置250にシチジン]を有するか否かに関して、採取したサンプルを試験することを含み;請求項3に記載の方法において該変異の1つ又はそれ以上の存在は、増加した危険性を指示し、そして請求項7に記載の方法において薬剤の用量は上記ゲノム変異の1つ又はそれ以上の存在下で適合される、請求項3又は7に記載の方法。
【請求項18】
採取されたサンプルを、それが以下のタンパク質変異[CLEC1Bタンパク質の位置24にプロリン]を有するCLEC1Bタンパク質を含むか否かに関して試験することを含み;
請求項3に記載の方法において該変異の存在は、その個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか発症する増加した危険性を指示し、そして請求項7に記載の方法において薬剤の用量は、ゲノム変異の1つ又はそれ以上の存在下で適合される、請求項3又は7に記載の方法。
【請求項19】
採取されたサンプルを、CLEC1B遺伝子のいずれか又は両方の対立遺伝子が以下のゲノム変異[CLEC1B配列(NM_16509に従って)の位置250にシチジン以外のヌクレオチド、好ましくはチミジン]を有するか否かに関して試験することを含み;請求項3に記載の方法において、該変異の存在は、その個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか発症する低下した危険性を指示し、そして請求項7に記載の方法において、1つ又はそれ以上の上記ゲノム変異の存在下で薬剤の用量が適合される、請求項3又は7に記載の方法。
【請求項20】
採取されたサンプルを、それが以下のタンパク質変異[CLEC1Bタンパク質(NP_057593に従って)の位置24にプロリン以外のアミノ酸、好ましくはセリン]の1つ又は両方を有するCLEC1Bタンパク質を含むか否かに関して試験することを含み;請求項3に記載の方法において、該変異の1つ又は両方の存在は、その個体が心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患しているか発症する低下した危険性を指示し、そして請求項7に記載の方法において、薬剤の用量は、ゲノム変異の1つ又はそれ以上の存在下で適合される、請求項3又は7に記載の方法。
【請求項21】
CLEC1Bが哺乳動物CLEC1B、好ましくはヒトCLEC1Bである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項22】
心臓血管障害及び/又は血栓性疾患が、狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞、早期心筋梗塞、末梢血管障害、冠状動脈性心臓疾患、高血圧、脳卒中、PRIND、TIA、又は冠動脈血管形成術を受けることを余儀なくされる障害である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項23】
個体の採取されたサンプルを分析することを含み、ここで採取されたサンプルを試験される個体は、グルコース代謝障害を有し、好ましくは糖尿病に罹患しており、そして特に好ましくはI型糖尿病に罹患している、請求項1〜22のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項24】
採取されたサンプルを試験される個体が、心臓血管障害及び/又は血栓性疾患に罹患している、請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項25】
サンプルが哺乳動物サンプル、好ましくはヒトサンプルである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項26】
サンプルが組織学的サンプル、生検サンプル、細胞抽出物、1種若しくはそれ以上の細胞、又は採取された体液である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項27】
CLEC1Bが単離された分子として使用される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項28】
CLEC1B遺伝子(NM_016509に従って)の位置250におけるSNPの1つ又はそれ以上が分析される、請求項1、2、5又は8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
核酸がCLEC1B遺伝子(NM_016509に従って)の位置250にSNPを含む、請求項6、9又は10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
SNPが:CLEC1B遺伝子(NM_016509に従って)の1つ又は両方の対立遺伝子上のCLEC1B配列の位置250でシチジン;である、請求項24又は25に記載の使用又は方法。
【請求項31】
以下のタンパク質多型[CLEC1Bタンパク質(NP_057593に従って)の位置24でプロリン]の1つ又は両方の同定が、疾患又は増加した危険性を指示する、請求項1、2若しくは4〜6のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3に記載の方法。
【請求項32】
CLEC1B遺伝子(NM_016509に従って)における位置250のヌクレオチドの型が、1つ又はそれ以上の適切なプライマー又はプローブを用いて決定される、請求項1、2、6、若しくは8〜11のいずれか1項に記載の使用、又は請求項3、7、14若しくは17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ヌクレオチドの型が、PCR、サザンブロット、アレイハイブリダイゼーション又はチップハイブリダイゼーションを用いて同定される、請求項30に記載の使用又は方法。
【請求項34】
検出のための手段が、CLEC1B DNAの検出のための手段である、請求項11に記載の使用、又は請求項12に記載の試験キット。
【請求項35】
手段が、プライマー若しくはプライマー群、適切なプローブ、又は配列特異的抗DNA抗体である、請求項30に記載の使用又は試験キット。
【請求項36】
標準的な条件で、CLEC1B cDNAの増幅に適した1つ若しくはそれ以上のプライマー、又はCLEC1BのcDNA若しくはmRNAのハイブリダイゼーションに適した1つ若しくはそれ以上のプローブを好ましくは使用して、mRNAの量の変化が分析される、請求項2、6、8若しくは9のいずれか1項に記載の使用又は請求項3又は7に記載の方法。
【請求項37】
mRNAの量が、PCR、ノーザンブロット、アレイハイブリダイゼーション又はチップハイブリダイゼーションを用いて分析される、請求項33に記載の使用又は方法。
【請求項38】
検出のための手段が、生物学的サンプル中に存在するCLEC1BのmRNA及び/又はタンパク質を検出するための手段である、請求項11に記載の使用又は請求項12に記載の試験キット。
【請求項39】
CLEC1Bタンパク質を検出するための手段が抗体である、請求項35に記載の使用又は試験キット。
【請求項40】
CLEC1Bタンパク質の量の変化が決定される、請求項2、6、8若しくは9のいずれか1項に記載の使用又は請求項3若しくは7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
タンパク質が、少なくとも1つの抗体を用いて検出される、請求項1、6又は37のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項42】
検出が、ELISA、ウエスタンブロット又はタンパク質チップにより行われる、請求項38に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項43】
検出が、免疫組織化学的検出方法又は免疫放射化学的検出方法により行われる、請求項37又は38に記載の使用、方法又は試験キット。
【請求項44】
ゲノムCLEC1B核酸配列が、配列番号1又は16で定義される配列であり、場合によりCLEC1B遺伝子配列(NM_016509に従って)の位置250のヌクレオチドに関して偏差を有する、請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法、使用又は試験キット。
【請求項45】
配列が1つ又はそれ以上の以下のSNP[CLEC1B遺伝子配列の位置250のシチジン]を有する、請求項41に記載の方法、使用又は試験キット。
【請求項46】
配列番号4及び5において定義される配列の1つ又は両方のプライマー、又は配列番号3において定義されるプローブを含むプライマーセットを特徴とする、請求項29〜34のいずれか1項に記載の方法、使用又は試験キット。
【請求項47】
CLEC1B核酸又はそのフラグメントが位置250を含み、そして好ましくは以下のSNP[CLEC1B遺伝子配列(NM_016509に対して)の位置250でシチジン]の1つ又はそれ以上も含む、請求項10に記載の使用。
【請求項48】
位置25のアミノ酸を含み、そして以下のタンパク質多型[CLEC1Bタンパク質の位置25でプロリン]を含む、CLEC1Bタンパク質又はそのフラグメントが使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項49】
配列番号4又は5に従う核酸配列を有する核酸プライマー。
【請求項50】
配列番号3に従う核酸配列を有する核酸プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−539891(P2010−539891A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525238(P2010−525238)
【出願日】平成20年9月13日(2008.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007593
【国際公開番号】WO2009/040002
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】