説明

心臓血管疾患の治療のためのポリメトキシフラボン類およびトコトリエノール類のバイオアベイラビリティーを改善する組成物

本発明は、総リン脂質組成の少なくとも20重量%から90重量%に達する量において主にリン脂質類(商業的にレシチンとしても周知)を含有するまたはリン脂質類に富む固体組成物に関する。より詳細には、本発明は高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症などの疾病の治療、軽減ならびに/または予防のための機能成分の促進された生物活性を提供する固体リン脂質組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
用語、リン脂質は、陰性に荷電したリン酸基で2個の水不溶性非極性脂肪酸に結合した水溶性で陽性に荷電した極性基からなる両親媒性の分子の種類を通常意味する。脂肪酸は14から24個の炭素の基を有する。リン脂質の通例はホスファチジル−コリン(PC)、−イノシトール(PI)、−セリン(PS)および−エタノールアミン(PE)である。しかし本明細書で使用するリン脂質の用語は、限定はされないが、修飾、天然、合成、漂白、無漂白、粉末化、顆粒、液体、グリセロ−、ライソ−、ポリエニルPC、PPC成分、およびあらゆる付加価値リン脂質化合物を含むレシチンのいかなる分子種も含むことができる。フィトステロールの用語は、限定はされないが、植物油、および松油(トール油として周知)を含む原料由来の植物ステロール類、植物スタノール類およびこれらのエステル類を意味する。トコトリエノールの用語は、アルファ−、ベータ−、ガンマ−、およびデルタ−トコトリエノール類を含んで意味する。ポリメトキシル化フラボン類は柑橘類リモノイド類および柑橘類フラボノイド類由来の化合物を含んで意味する。
【0002】
当業者に周知の典型的な小胞組成物はリポソーム、ナノ粒子、ミクロスフェアなどから成り、治療薬および化粧品のための担体として役立つ。これらは優れた組織浸透能力を有するリン脂質類の主流を成す。このような小胞は薬剤担体として使用することができ、薬剤、タンパク質、ヌクレオチドなどの多種多様な分子をその溶解性、電荷、大きさまたは形状にかかわらず、リポソーム形成を妨げない限り含むことができる。小胞のこれらの異なる形態は、活性成分とリン脂質とを複合化する溶媒蒸発工程を使用し、次いで超音波処理および脱水することにより調製する。このような構造は治療薬のバイオアベイラビリティーを改善することが示されている。しかし、費用および溶媒の回収に伴う困難が重要でないわけではない。
【非特許文献1】The New Zealand Medical Journal(2004年10月8日)Vol 117 No 1203.
【特許文献1】米国特許第4684520号
【特許文献2】米国特許第4780456号
【特許文献3】米国特許第5043323号
【特許文献4】米国特許第6251400号
【非特許文献2】Kurowska EMら、J Agric Food Chem.(2004)52,2879〜86頁
【非特許文献3】Lee CH、Biochem Biophys Res Commun.(2001)284,681〜688頁
【非特許文献4】Theriault Aら、Clin Biochem(1999)32:309〜19頁
【非特許文献5】Theriault A、Atherosclerosis.(2002),160(1):21〜30.
【非特許文献6】Parker RAら、J Biol Chem(1993),268:11230〜8頁
【非特許文献7】Pearce BCら、J Med Chem(1992)35:3595〜606頁
【特許文献5】米国特許第4603142号
【特許文献6】WO 96/38047
【特許文献7】米国特許第6864280号
【非特許文献8】Tan D、Am.J.Clin.Nutr(1991)53:1027S〜1030S頁
【非特許文献9】Minhajuddin M、Food Chem Toxicol.(2005)43,747〜53頁
【非特許文献10】Jonesら、J Lipid Res(2003),44,1713〜1719頁
【特許文献8】米国特許第6063776号
【特許文献9】米国特許第5932562号
【特許文献10】WO特許第9956729号
【特許文献11】WO特許第9953925号
【特許文献12】米国特許第6136349号
【非特許文献11】Ostlund,REら、Am J of Clinical Nutrition(1999)70,826〜831頁
【特許文献13】米国特許第6773719号
【非特許文献12】Wilson,Tら、Atherosclerosis(1998)140:147〜153)頁
【非特許文献13】Wojcicki,J.ら、Phytotherapy Research(1995)9,597〜599頁
【非特許文献14】Hunt,Cら、British J.of Experimental Pathology(1985)66,35〜46頁
【非特許文献15】O’Brien,Bら、Lipids(1993)28,7〜12頁
【非特許文献16】Polichetti,Eら、J of Nutritional Biochemistry(1998)Nov,659〜664頁
【非特許文献17】Iwata,Tら、J Nutr.Sci.Vitaminol.(1993)39,63〜71頁
【非特許文献18】Simons,LAら、Aust.N.Z.J.of Medicine(1972),7,262〜266頁
【非特許文献19】Sugino,Hら、J Agric Food Chem.(1997)45,551〜554頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、1)栄養素、薬剤および/または医薬治療薬の担体として作用し、2)例えばヘキサン、クロロホルム、エーテル、アセトンなどの溶媒を使用すること無く生成され、3)栄養素、薬剤および/または医薬用剤を共溶解し、4)水和により小胞を形成し、ならびに5)高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症の治療に有用である栄養素、薬剤および/または医薬用剤のバイオアベイラビリティーを増大させる、リン脂質を主に含有する固体リン脂質組成物を得ることは望ましい。レシチンリン脂質担体の主な有利点は、他の脂質成分のバイオアベイラビリティーを増大させるとして周知であることである。コエンザイムQ処方物の高いバイオアベイラビリティーを論じている研究は非イオン性界面活性剤および天然界面活性剤レシチンの存在を示している。The New Zealand Medical Journal(2004年10月8日)Vol 117 No 1203.
【0004】
バイオフラノノイド類の小群が、コレステロール、LDLコレステロールおよびアポBタンパク質の合成を低減させることにより高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症を改善することが示されている。本発明は、以下でPMFsと称する特定の柑橘類ポリメトキシフラボン類、すなわちノビレチン、タンジェレチン、イソスクテラレインおよびシネンセチンを組み合わせて使用することによる心臓血管疾患の予防および治療に関する。これらのPMFsは、効率的な遊離基捕捉剤である抗酸化剤トコトリエノール類(T−3)と組み合わせることもできる。さらに、トコトリエノール類自体もコレステロール生合成経路の律速酵素−コエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素を阻害することが周知であることからコレステロール低減における重要な因子である。したがってバイオアベイラビリティーを改善し、コレステロール、LDLコレステロールおよびアポBタンパク質の低減のための前記PMF/T−3組合せの担体として作用する固体リン脂質組成物を得ることはさらに望ましい。
【0005】
前記有利点に加えて栄養素、薬剤、医薬用剤ならびにPMF/T−3を含有する心臓血管疾患の予防および/もしくは治療のための丸剤、錠剤、散剤、乳剤さらには/またはコロイド中に処方することができるリン脂質を主に含有する固体リン脂質組成物を得ることもさらに望ましい。Bertelliへの米国特許第4684520号は、アテローム性病変の形成阻害および大脳機能の回復のためのコエンザイムQ10およびリン脂質類の経口投与の有益な効果を記載している。Pistolesiへの米国特許第4780456号は、レシチンおよびエイコサペンタエン油を混合した治療であるアテローム性病状の治療のための食餌療法の組成を記載している。Bombardelliへの米国特許第5043323号は、植物性フラボノイド類を伴うレシチンの経口摂取は炎症、血小板凝集の変化および他の疾患に効果的な治療であることを教示している。参照されたこれらの化合物を、カプセル、錠剤、顆粒、ゲルまたはシロップとして摂取することもできる。しかしリン脂質の有益な効果は、リン脂質に対する栄養素の割合が高すぎる、または化合物を生成するために使用するリン脂質類の各フラクションの選択が最適でないことからこれらの特許の生成物においてごくわずかである。したがって、栄養素、薬剤、医薬用剤およびPMF/T−3を含有するCVDの治療もしくは予防のための丸剤、錠剤、散剤、乳剤ならびに/またはコロイドに製造できるリン脂質を主に含有する固体担体組成物を得ることは望ましい。
【0006】
栄養素および薬剤の担体としての使用に加えてレシチンリン脂質類は、例えばコレステロールおよび血管への脂質沈着を低減し、血管の弾性を増大させることを含む健康状態を改善させる周知の活性成分である。したがって、活性成分であるという追加的有利点を有するリン脂質を主に含有する栄養素担体組成物を得ることは望ましい。
【0007】
本発明のリン脂質は、一度臨界リン脂質濃度レベルに達すると水和により自発的にミセル小胞を形成する両親媒性化合物である。驚くべきことに、前記小胞がリン脂質と共溶解している脂質のバイオアベイラビリティーを改善することが見出された。したがって、CVDの治療または予防のための栄養素、薬剤、医薬用剤およびPMF/T−3のバイオアベイラビリティーを改善する固体リン脂質担体組成物を得ることはさらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リン脂質の量が総組成物の少なくとも20重量%に等しく、総組成物の90%重量程度の含有量を含むことができる組成物を対象とする。本発明の固体リン脂質組成物は、非常に高粘度の液体であるかまたは連続的な構造を有する液晶である。リン脂質組成物は、本明細書以下で活性物と称する栄養素、薬剤、および/または医薬用剤と共にある量のリン脂質を、活性物をリン脂質組成物中に共溶解するのに十分なせん断量で少なくとも約100ポンドpsigに等しい圧力、低くとも30℃に等しい温度において10〜90秒間、混合、圧縮および押し出すことにより形成される。
【0009】
本明細書の以下でマトリックスと称する、このように得られたリン脂質組成物は、活性物とリン脂質が化学的な方法以外では分離できないように活性物を共溶解することから有利である。形成されたマトリックスは活性物の改善されたバイオアベイラビリティーを示し、成形、粉砕、乳化、および/あるいは単独でまたは消化可能な固体もしくは液体食品中の成分としての摂取に適する投与形態に乾燥することもできる。リン脂質マトリックスは、とりわけ抗酸化剤としての作用、コリンの天然供給源、血小板凝集の低減、記憶保持の改善、身体持久力の強化、および肝臓の解毒その他を含む多数の恩恵を消費者に与える。固体リン脂質PMF/T−3マトリックスは、スタチン薬などのようなCVDの治療および予防に望ましい医薬成分を含むこともできる。
【0010】
圧縮および摂取後、PMF/T−3マトリックス組成物は、腸内の水環境により水和される。固体組成物は主にレシチンを含むことから水和によりリン脂質類の破裂が発生し、小胞を形成するために必要な臨界濃度に至る。したがって、本発明は、効率的にリン脂質小胞中に捕られることによりさらに生物学的に利用可能となる活性物を含有する固体リン脂質組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、栄養素、薬剤、医薬用剤およびPMF/T−3の送達に使用するための固体リン脂質組成物に関し、ここで前記活性物のバイオアベイラビリティーは増大している。組成物は、アセトン不溶性指数が90%に等しいもしくはそれを超えるリン脂質含有量を有し、リン脂質を強化したまたはしていない粉末あるいは顆粒リン脂質類から調製される。圧力をかけると、散剤または顆粒リン脂質類は、リン脂質マトリックスと称される新規で有用な特性を有する新たな形態に状態が変化する。この固体組成物において、リン脂質分子はお互いに結合して易溶性ワックス組成物と同様の実質的に均一で連続的な構造を形成する。しかしリン脂質類は易溶性組成物ではなく、70℃をわずかに超える温度での加熱で劣化または分解する。固体マトリックスは栄養素または栄養素、薬剤および/もしくは医薬用剤のための担体として使用することができる。
【0012】
リン脂質類は多数の望ましい健康上の恩恵を有する。それらは肝臓での脂質の蓄積を予防し、神経インパルスを制御し、記憶機能を補助し、脳領域間の電気的活動を統合するコリン、イノシトールおよびセリンの優れた源である。それらは、必須脂肪酸、リノール酸も非常に多く含む。EFAsは2つの群のポリ不飽和脂肪酸系列オメガ−3およびオメガ−6の前駆体である。EFAsは生殖および内分泌系の正常な機能ならびに動脈壁のコレステロール沈積物の分離に必要である。少量のレシチンが食品中に乳化剤としても使用されている。
【0013】
ポリメトキシル化フラボン類
フラボノイド類は、広範な生物活性を有する低分子ポリフェノール化合物群である。これらは黄色、赤、および紫に濃く色付いた果実、野菜、茶ならびにワインさらに木の実ならびに種子中に天然に存在する。食物の栄養上の作用の多くはそのフラボノイド含有量に直接関連している。遊離基捕捉剤としての作用に加えて、これらは抗炎症特性を示したりまたはいくつかの癌の発生を予防/遅延させたりすることもできる。本発明の目的のための天然に存在するポリメトキシフラボン類の例は、限定はされないが、ノビレチン、タンジェレチン、5−デスメチルノビレチン、テトラメチルスクテラレインおよびシネンセチンを含む。
【0014】
少なくとも1種のリモシトリン誘導体、1種のポリメトキシフラボン、および1種のトコトリエノールの混合物および使用は心臓血管疾患の治療用に周知である。Guthrie Nへの米国特許第6251400号は、LDLコレステロールを低下させ、肝臓でのコレステロールおよびアポB合成を阻害する柑橘類フラボノイド類の能力を論じている。Kurowska EMらは、ポリメトキシル化フラボン類がコレステロール−およびトリアシルグリセロールを低下させる能力を有する新規フラボノイド類であることを示している。J Agric Food Chem.(2004)52,2879〜86頁。Whitman SCらは、タンジェリンから単離された柑橘類フラボノイドである、ノビレチンがアセチル化LDL代謝を阻害(50〜72%)することを示した。これらの発見は、ポリメトキシフラボンのノビレチンが血漿コレステロール濃度を低減させることに加えてマクロファージ泡沫細胞形成を阻害することにより血管壁のレベルでアテローム性動脈硬化症を予防することを示唆している。Lee CHが実施した研究は柑橘類フラボノイド類、ナリンジンおよびナリンジェニンの抗アテローム効果は肝臓ACAT活性の低下に伴うことを示唆している。Biochem Biophys Res Commun.(2001)284,681〜688頁 コレステロールの低減およびアテローム性疾患のためのポリメトキシフラボン類などの活性物のバイオアベイラビリティーを改善する固体リン脂質マトリックス送達系が報告されたことはない。
【0015】
トコトリエノール類
トコトリエノール類は、血清コレステロールを低減し、アテローム性動脈硬化症を予防し、血管の血流を改善することが周知であるビタミンEの異性体である。Theriault Aらは、トコトリエノールはアテローム性アポリポタンパク質Bおよびリポタンパク質(a)の血漿レベルを低減させる能力と共に新規のコレステロール低下効果を有すると示されることを報告している(1999)Clin Biochem 32:309〜19頁。さらに近年、彼はアルファ−T3が細胞接着分子の発現および単球細胞の付着の低減において有力で効果的な薬剤であることを示唆した。Atherosclerosis.(2002),160(1):21〜30頁。Parker RAらは、トコトリエノール類がHGM−CoA還元酵素の活性を抑制することにより作用することを報告した。J Biol Chem(1993),268:11230〜8頁。およびPearce BCら、J Med Chem(1992)35:3595〜606頁。Burger Wへの米国特許第4603142号はコレステロールを低減させるためのアルファトコトリエノールの使用を開示している。WO 96/38047においてLievenseは血中コレステロールを低下させる、トコトリエノール、フィトステロールおよび/またはオリザノールを含有する脂肪を主要素とする食品を開示している。Igarashi Oへの米国特許第6864280号は、高血圧および心疾患を治療するためのガンマトコトリエノールの使用を教示している。Tan Dは、パーム油ビタミンE濃縮物がヒトで血清およびリポタンパク質の脂質類について肯定的な効果を有することを見出した。Am.J.Clin.Nutr(1991)53:1027S〜1030S頁。Minhajuddin Mは、トコトリエノールが高コレステロール血症においてアテローム性脂質プロフィールおよび抗酸化物質を制御していると報告している。Food Chem Toxicol.(2005)43,747〜53頁。コレステロールの低減およびアテローム性疾患のためのトコトリエノール類単独またはポリメトキシフラボン類との組合せのバイオアベイラビリティーを改善する固体リン脂質マトリックス送達系が報告されたことはない。
【0016】
植物ステロール類
フィトステロール類が血中コレステロールおよび心臓血管疾患のリスクを低下させることは周知である。これらの化合物は植物由来であるが動物組織に存在するコレステロールに非常に良く似た化学構造を有している。摂取されると、小腸の吸収部位に到達したステロール類の約10%だけが実際に消化吸収される。残る90%は吸収されないが、しかし長時間前記部位に残留しコレステロールの吸収に対する障壁として作用する。FDAによると、冠動脈心疾患のリスクを低減させるためにはフィトステロール類の最低投与量は400mgであり、ステロール類の摂取は少なくとも800mgでなければならない。フィトステロール類は疎水性であり、効果的であるためには脂肪に溶解しなければならない。従って、植物ステロール類、スタノール類、およびこれらのエステル類は典型的にはマーガリン、サラダ・ドレッシング、または他の脂肪性食品で送達される。これらのコレステロールを低下させる食品は、これらが食餌性脂肪により容易に溶解することから通常スタノール類の脂肪酸を含有する。健康の専門家および消費者団体は、脂肪摂取の必要性を含むコレステロール低減用食餌法に抵抗を示している。このイメージを改善するために脂肪基質を使用しない研究が実施された。Jonesらは、低脂肪飲料形態におけるフィトステロール類の食餌による摂取が脂質を低下させる調節には効果的でないことを示した。J Lipid Res(2003),44,1713〜1719頁。本発明は遊離フィトステロール類の脂質担体としてトリグリセリド類よりもコレステロール低下性リン脂質類を利用する。
【0017】
Ostlundへの米国特許第6063776号および第5932562号は、食餌性コレステロールの吸収を低減する植物スタノール類を含有する処方物を記載している。その方法はリポソーム形成の1種である。Sjoeberg,KへのWO特許第9956729号は、高分子量物質で送達されるステロール類のコレステロール低下用組成物を記載している。Stohler,EへのWO特許第9953925号は、レシチンを使用しリポソームを形成するミセル相でのフィトステロール類のコレステロール低下用組合せを記載している。Karppanenへの米国特許第6136349号は血清コレステロールを低下させるためのフィトステロール類およびある種のミネラル類の食物中への混合を教示している。Ostlund,REらはシトスタノールが、レシチンミセル中に含まれる場合においてのみ、それ以前の報告よりも低い投与量でコレステロールの吸収を低減させることを報告した。Am J of Clinical Nutrition(1999)70,826〜831頁。コレステロールの低減およびアテローム性疾患のためのポリメトキシフラボン類、トコトリエノール類およびフィトステロール類のバイオアベイラビリティーを改善する固体リン脂質マトリックス送達系が報告されたことはない。
【0018】
レシチン
レシチンリン脂質類を動物において血清コレステロールを低減させるための成分として使用することは周知である。Rodriguezaへの米国特許第6773719号は、脂質代謝異常の治療のために空のリン脂質リポソームを投与することによる抹消組織から肝臓へのコレステロールの逆輸送を提供している。Wilson,Tらは、アメリカ心臓協会(American Heart Association)ステップIダイエットに関連して投与した場合、レシチン類がサルにおいて血漿コレステロールおよびLDLの低減を促進し、リン脂質類が高コレステロール血症ハムスターにおいて総コレステロールおよびトリグリセリド類の低減に効果的であることを見出した。Atherosclerosis(1998)140:147〜153頁)。動脈プラークの低減におけるレシチンリン脂質類の肯定的効果は、LDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させることに加えて、Wojcicki,J.らにより示された。Phytotherapy Research(1995)9,597〜599頁。ウサギにおけるレシチンおよびコレステロール食の肯定的効果がHunt,Cらにより報告された、British J.of Experimental Pathology(1985)66,35〜46頁。FASEBはコリンおよびレシチンの神経学上および心臓血管系における効果について報告した(1981年8月)。O’Brien,Bらは大豆リン脂質類がヒトにおいてLDLコレステロールを低減することを見出した。Lipids(1993)28,7〜12頁。Polichetti,Eらは大豆レシチンリン脂質類がアポAI〜HDL系を刺激することを報告している。J of Nutritional Biochemistry(1998)Nov,659〜664頁。Iwata,Tらは大豆またはベニバナのリン脂質類がラットの腸において食餌性コレステロールの吸収を著しく阻害することを見出した。J Nutr.Sci.Vitaminol.(1993)39,63〜71頁。Simons,LAらはレシチンがリノール酸の供給源として作用することにより血清コレステロールを低減させる証拠を提示している。Aust.N.Z.J.of Medicine(1972),7,262〜266頁。
【0019】
したがって、本発明のリン脂質担体マトリックスそれ自体が抗高脂血症薬であることは有利である。またレシチンが、動脈壁の内層を損なう酸化LDL脂質類を中和するために使用する効果的な抗酸化物質であるビタミンE(トコトリエノールは異性体である)と相乗的であることは周知である、Sugino,Hら、J Agric Food Chem.(1997)45,551〜554頁。
【0020】
したがって、コレステロールの低減とアテローム性疾患のためにタンジェレチンを>15%、ノビレチンを>15%、シネンセチンを>1%、テトラメチルスクテラレインを>0.5%、デスメチルノビレチンを>2%、トコトリエノール類を>14%含むPMF/T−3中の活性物のバイオアベイラビリティーを改善する固体リン脂質マトリックス送達系が報告されたことは無い。
【0021】
本明細書に記載する全ての参考文献を全ての目的についてその全体を参照として本明細書に援用する。米国第11/135693号 2005年5月24日出願、米国第11/135675号 2005年5月24日出願および米国第11/135694号 2005年5月24日出願も全ての目的についてその全体を参照として本明細書に援用する。
【0022】
[実施例]
以下の実施例は、心臓血管疾患および障害の予防ならびに/または治療のための発明の使用を例示する。発明が以下の実施例に限定されないことは当業者に理解される。
【0023】
[実施例1]
体重310から340グラムの80匹のオスのスプラーグ・ドーリーラットはHarlan Teckladから供給された。研究の開始時に、ラットはベースラインとして2週間、精製低アルファトコフェロール餌を与えられた。天然由来α−トコフェロール(Covitol F1300)は、Henkel Corp.から供給され、1314IU/gで分析され、これは882mg/grに相当する。4種の餌は、対照:低α−トコフェロール餌(11.9mg/kg餌);群2:標準α−トコフェロール餌(71mg/kg);群3:リン脂質+標準α−トコフェロール(71mg/kg餌)マトリックス;群4:リン脂質+ポリソルベート+標準α−トコフェロール餌(71mg/kg)マトリックス、からなる。
【0024】
血液試料を0、2週間後に12時間絶食後で採取し、赤血球を低速度遠心分離で分離した。データを一方向性分散分析(one way ANOVA)で分析し、処置による差異をチューキー法(Tukeys)で同定した。各群のベースラインデータは血漿中濃度において有意差を示さなかった。血漿α−トコフェロール濃度は2週間後で、α−トコフェロール+リン脂質、およびα−トコフェロール+リン脂質+ポリソルベートにおいて、対照または標準α−トコフェロール群のどちらよりも有意に(P<0.05)高かった。ベースラインおよび2週間後の血清中濃度を以下の表に示す:
【表1】

14日後の標準α−トコフェロール群(群2)と比較したバイオアベイラビリティーの改善は:
群3 55%改善
群4 137%改善
統計学的にP<.05で異なる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメトキシフラボン類およびリン脂質類の組合せを含有する薬剤成分を含有する薬剤処方物であって、ポリメトキシフラボン類とリン脂質類の組合せがマトリックスの形態である薬剤処方物。
【請求項2】
薬剤成分がトコトリエノール類をさらに含有する、請求項1に記載の薬剤処方物。
【請求項3】
ポリメトキシフラボン類が、ノビレチン、タンジェレチン、シネンセチン、スクテラレインおよびこれらの任意の天然または合成誘導体からなる群から選択される、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項4】
リン脂質類が投与形態全体の約20重量%から約90重量%の量で存在する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項5】
薬剤成分がヒト患者に投与される場合に心臓血管疾患を治療するのに有効な量で存在する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項6】
錠剤、カプセルまたは散剤の形態である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項7】
タンジェレチンを少なくとも約15%w/w;ノビレチンを少なくとも約15%w/w;シネンセチンを少なくとも約1%;テトラメチルスクルラレインを少なくとも約0.5%w/w;デスメチルノビテチンを少なくとも約2%w/w;およびトコトリエノール類を少なくとも約14%w/w含有する薬剤成分を含有する薬剤処方物。
【請求項8】
ポリメトキシフラボン類およびリン脂質類の組合せを含有する薬剤成分の調製方法であって、薬剤成分がポリメトキシフラボン類をリン脂質類中に共溶解するために十分なせん断量で低くとも30℃において約10秒から約90秒圧力下で混合、圧縮および押し出される方法。
【請求項9】
リン脂質類が約90%以上のアセトン不溶性指数を有する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項10】
リン脂質分が約90%以上のアセトン不溶性指数を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ポリメトキシフラボン類とトコトリエノール類が約75:25から約95:5の割合であり、ポリメトキシフラボン類が柑橘類果実から単離される精油、柑橘類果実から単離される皮油、柑橘類果実から単離される皮、変性した柑橘類果実およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項12】
薬剤成分が少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含有する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項13】
心臓血管疾患が高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症である、請求項5に記載の薬剤処方物。
【請求項14】
薬剤成分の組合せがフラボノイド類とトコトリエノール類を約90:10の割合で含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項15】
薬剤成分の組合せがフラボノイド類とトコトリエノール類を約80:20の割合で含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項16】
活性剤組合せがフラボノイド類とトコトリエノール類を約95:5の割合で含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項17】
薬剤成分の組合せを約50%から約90%含有する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項18】
薬剤成分の組合せを約60%から約80%含有する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項19】
薬剤成分の組合せを約70%含有する、請求項1または2に記載の薬剤処方物。
【請求項20】
経口投与に適する、請求項6に記載の薬剤処方物。
【請求項21】
単位用量当たりトコトリエノールを約10mgから約80mgおよびフラボノイドを約150mgから約750mg含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項22】
単位用量当たりトコトリエノールを約30mgおよびフラボノイドを約270mg含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項23】
単位用量当たりトコトリエノールを約60mgおよびフラボノイドを約560mg含有する、請求項2に記載の薬剤処方物。
【請求項24】
総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項13に記載の薬剤処方物。
【請求項25】
一人の患者において総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項24に記載の薬剤処方物。
【請求項26】
一群の患者において総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項24に記載の薬剤処方物。
【請求項27】
単回用量投与後に総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項28】
複数回用量投与後に総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項29】
定常的な投与後に総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項30】
4週間の投与後に総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項29に記載の薬剤処方物。
【請求項31】
総コレステロールを少なくとも20%低下させる、請求項24乃至30のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項32】
総コレステロールを少なくとも30%低下させる、請求項24乃至30のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項33】
トリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項13に記載の薬剤処方物。
【請求項34】
一人の患者においてトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項33に記載の薬剤処方物。
【請求項35】
一群の患者においてトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項33に記載の薬剤処方物。
【請求項36】
単回用量投与後にトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項32乃至35のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項37】
複数回用量投与後にトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項32乃至35のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項38】
定常的な投与後にトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項32乃至35のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項39】
4週間の投与後にトリアシルグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項38に記載の薬剤処方物。
【請求項40】
トリアシルグリセロール類を少なくとも25%低下させる、請求項32乃至38のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項41】
トリアシルグリセロール類を少なくとも35%低下させる、請求項32乃至38のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項42】
LDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項13に記載の薬剤処方物。
【請求項43】
一人の患者においてLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項42に記載の薬剤処方物。
【請求項44】
一群の患者においてLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項42に記載の薬剤処方物。
【請求項45】
単回用量投与後にLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項42乃至44のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項46】
複数回用量投与後にLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項42乃至44のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項47】
定常的な投与後にLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項42乃至44のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項48】
4週間の投与後にLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項47に記載の薬剤処方物。
【請求項49】
LDLコレステロールを少なくとも20%低下させる、請求項42乃至47のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項50】
LDLコレステロールを少なくとも30%低下させる、請求項42乃至47のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項51】
アポBを少なくとも10%低下させる、請求項13に記載の薬剤処方物。
【請求項52】
一人の患者においてアポBを少なくとも10%低下させる、請求項51に記載の薬剤処方物。
【請求項53】
一群の患者においてアポBを少なくとも10%低下させる、請求項52に記載の薬剤処方物。
【請求項54】
単回用量投与後にアポBを少なくとも10%低下させる、請求項52乃至54のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項55】
複数回用量投与後にアポBを少なくとも10%低下させる、請求項52乃至54のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項56】
定常的な投与後にアポBを少なくとも10%低下させる、請求項52乃至55のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項57】
4週間の投与後にアポBを少なくとも10%低下させる、請求項56に記載の薬剤処方物。
【請求項58】
アポBを少なくとも20%低下させる、請求項52乃至56のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項59】
アポBを少なくとも30%低下させる、請求項52乃至56のいずれか1項に記載の薬剤処方物。
【請求項60】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の薬剤処方物の有効量を投与することを含む、心臓血管疾患のリスクがあるまたは心臓血管疾患に罹患しているヒト対象を治療する方法。
【請求項61】
心臓血管疾患が高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症である、請求項61に記載の方法。
【請求項62】
必要としている患者に請求項24乃至32のいずれか1項に記載の薬剤処方物を投与することを含む、患者において総コレステロールを低下させる方法。
【請求項63】
必要としている患者に請求項33乃至41のいずれか1項に記載の薬剤処方物を投与することを含む、患者においてトリアシルグリセロール類を低下させる方法。
【請求項64】
必要としている患者に請求項42乃至50のいずれか1項に記載の薬剤処方物を投与することを含む、患者においてLDLコレステロールを低下させる方法。
【請求項65】
必要としている患者に請求項51乃至59のいずれか1項に記載の薬剤処方物を投与することを含む、患者においてアポBを低下させる方法。
【請求項66】
トコトリエノール約10mg/日から約80mg/日およびフラボノイド約150mg/日から約750mg/日の日用量で当該組合せを投与する、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
トコトリエノール約30mg/日およびフラボノイド約270mg/日の日用量で当該組合せを投与する、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
トコトリエノール約60mg/日およびフラボノイド約560mg/日の日用量で当該組合せを投与する、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
投与が単回用量投与である、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
投与が複数回用量投与である、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
投与が定常状態を達成する、請求項60乃至65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
投与が少なくとも4週間にわたる、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
投与が総コレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項62に記載の方法。
【請求項74】
投与がトリアグリセロール類を少なくとも15%低下させる、請求項63に記載の方法。
【請求項75】
投与がLDLコレステロールを少なくとも10%低下させる、請求項64に記載の方法。
【請求項76】
投与がアポBを少なくとも10%低下させる、請求項65に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546845(P2008−546845A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519613(P2008−519613)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025588
【国際公開番号】WO2007/002897
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(508003767)ケージーケー シナガイズ インク. (1)
【Fターム(参考)】