説明

心血管障害の処置および/または予防のためのラパマイシン誘導体の使用

本発明はラパマイシン誘導体化合物を投与することを含む、心血管障害の処置および/または予防法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心血管障害、とりわけ心不全の処置および/または予防のためのラパマイシン誘導体の使用に関する。
【0002】
ラパマイシンはストレプトマイセス・ハイグロスコピクス(Streptomvces hyngroscopicus)から生産される既知のマクロライド抗生物質であり、式I
【化1】

の構造を有する。
【背景技術】
【0003】
例えばMcAlpine. J. B., et al., J. Antibiotics (1991) 44: 688; Schreiber. S. L., et al., J. Am. Chem. Soc. (1991) 113: 7433;米国特許第3,929,992号参照。ラパマイシンは極めて強力な免疫抑制剤であり、抗腫瘍および抗真菌活性も示す。しかし、その医薬としての実用性は、その極めて低く変動しやすいバイオアベイラビリティー、ならびにその高い毒性によって制限されている。さらに、ラパマイシンは高度に不溶性であり、安定なガレヌス組成物を製剤することが困難である。心血管疾患はもっとも一般的な疾患の一つであるため、心血管疾患の処置および/または予防に適した活性剤に対する強い必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この必要性に従って、本発明は新規な使用、とりわけ遊離形もしくは薬学的に許容される塩形、または複合形のラパマイシンの誘導体を含む化合物群についての新規な使用に関する。好適なラパマイシンの誘導体には、例えば式I
〔式中、
Xは(H、H)またはOであり;
Yは(H、OH)またはOであり;
およびRは独立して、H、アルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシカルボニルアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アシルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アシルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、ジアルキル−ジオキソラニルアルキル、ジ(アルコキシカルボニル)−トリアゾリル−アルキルおよびヒドロキシ−アルコキシ−アルキルから選択され;ここで「アルコ−」または「アルキル」は分枝状または直鎖状C1−6アルキルであり;「アリール」はフェニルまたはトリルであり;そしてアシルはカルボン酸由来の基であり;そして
はメチルであるか、または
とRは一体となってC2−6アルキルを形成し;
ただしRおよびRは両方Hではなく;そしてヒドロキシアルコキシアルキルがヒドロキシアルコキシメチル以外である〕
の化合物が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる化合物は、1997年9月9日公開の米国特許第5,665,772号に記載されており、その内容を、とりわけ化合物に関して、全体が本明細書に記載されているかのように、出典明示により本明細書の一部とする。
【0006】
またはRに存在し得るアシルは、好ましくはR CO−−〔式中、RはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−6シクロアルキル、アリール、アリールC1−6アルキル(ここで、アリールは上記定義のとおりである)またはヘテロアリール、例えばN、SまたはOをヘテロ原子として、そして所望により1個以上のNを更なるヘテロ原子として含む5または6員ヘテロ環由来の残基である〕である。好適なヘテロアリールには、例えばピリジル、モルホリノ、ピペラジニルおよびイミダゾリルが含まれる。
【0007】
かかる化合物の例には:
1. 40−O−ベンジル−ラパマイシン
2. 40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン
3. 40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン
4. 40−O−アリル−ラパマイシン
5. 40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル)−プロプ−2’−エン−1’−イル]−ラパマイシン
6. (2’E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペント−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン
7. 40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン
8. 40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
9. 40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン
10. 40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン
11. 40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン
12. 40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシン
13. 40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロプ−1−イル]−ラパマイシン
14. 40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン
15. 40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン
16. 40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン
17. 40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン
18. 40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシン
19. 39−O−デスメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン
20. (26R)−26−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
21. 28−O−メチル−ラパマイシン
22. 40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン
23. 40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン
24. 40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン
25. 40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボキサミド)エチル)−ラパマイシン
26. 40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン
27. 40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン
28. 40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−1’−イル)−エチル]−ラパマイシン
が含まれる。
【0008】
好ましい化合物は、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(以後化合物Aと称する)である。
【0009】
観察された活性、例えばマクロフィリン−12(FK−506結合タンパク質またはFKBP−12として知られる)との結合、例えば米国特許第5,665,772号に記載のような活性に基づいて、式Iの化合物は例えば急性同種移植片拒絶反応の処置において、例えば免疫抑制剤として有用であることを見出した。
【0010】
さらに、好適なラパマイシンの誘導体には、例えば米国特許第5,352,671および第5,912,238号に記載のような式IIの化合物が含まれる(これらの内容を、とりわけ化合物に関して、出典明示により本明細書の一部とする)。式IIの化合物は遊離形またはそのような形が存在するならば塩形の下記一般構造:
【化2】

〔式中、
は式
【化3】

(式中、Rはクロロ、ブロモ、ヨードまたはアジドであり、そしてRはヒドロキシまたはメトキシである)
の基(a)であり;
は、オキソであり、そして23、24位に単結合が存在するか;所望により保護されたヒドロキシであり、23、24位に単結合または二重結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;そして
はヒドロキシであり、そして10、11位に単結合が存在するか;または存在せず、そして10、11位に二重結合が存在するか;あるいは
は式
【化4】

(式中、Rは上記定義のとおりである)
の基(b)または(d)であり;
は上記定義のとおりであり;そして
はヒドロキシであり、そして10、11位に単結合が存在するか;あるいは
は式
【化5】

(式中、Rは上記定義のとおりであり;そして
はオキソ;所望により保護されたヒドロキシ;メトキシ;メチルチオメトキシ;イソブタノイルオキシ;アミノオキサリルオキシ;R CHCOO−−(ここで、Rは所望により保護されたヒドロキシまたは所望により保護されたアミノであり、そしてRは水素もしくはメチルである);またはp−トリルオキシチオカルボニルオキシである)
の基(c)であり;
は、オキソであり、そして23、24位に単結合が存在するか;存在せず、そして23、24位に二重結合が存在するか;または所望により保護されたヒドロキシ、メトキシ、メチルチオメトキシ、イソブタノイルオキシ、アミノオキサリルオキシまたはR CHCOO−−(ここで、RおよびRは上記定義のとおりである)であり、23、24位に単結合または二重結合が存在する;
ここで、基(c)に関して、1)Rがオキソ、保護されていないヒドロキシまたはメトキシであるとき、Rは不存在以外であり、保護されていないヒドロキシまたはメトキシ以外であり、そして23、24位に単結合が存在する;2)Rがメトキシであり、そしてRがメチルチオメトキシであるとき、Rは不存在以外であり、保護されていないヒドロキシ以外である;3)Rがメトキシであり、Rが保護されたヒドロキシであるとき、Rは所望により保護されたヒドロキシ以外である;そして4)Rがヒドロキシであるとき、Rは所望により保護されたヒドロキシ以外であり;そしてRはヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRはメチル、エチル、n−プロピルまたはアリルである〕
によって表され、以後これを「本発明の化合物」と称する。
【0011】
式IIおよび置換基の定義から明らかなとおり、10、11位に二重結合が存在するとき、11位のメチル基が結合している炭素原子はベータ立体配置を有し、そして11位において炭素原子と結合し、アルファ立体配置を有する水素原子が存在し;10、11位に二重結合が存在するとき、このメチル基は紙の平面に存在し、11位に水素原子は存在しない。Rがオキソであるとき、水素原子は24位において炭素原子と結合していない。Rがオキソであるとき、基(c)に示されている、同じ炭素原子と結合している水素原子は存在しない。
【0012】
は好ましくは、基(c)または(d)である。Rは好ましくは保護されていないヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在する。Rは好ましくはエチルまたはアリルである。Rは好ましくはヒドロキシである。Rは好ましくはクロロである。Rは好ましくはメトキシである。Rは好ましくは、イソブタノイルオキシ、アミノオキサリルオキシまたはR CHCOO−−である。Rは好ましくは保護されていないヒドロキシまたは保護されていないアミノ、とりわけ保護されていないヒドロキシである。Rは好ましくは水素である。Rが水素以外であるとき、それと結合している炭素原子は好ましくは(S)立体配置を有する。
【0013】
保護されたヒドロキシは好ましくは、常套のヒドロキシ保護基、例えばホルミル、tert−ブトキシカルボニル、またはトリアルキルシリル;とりわけtert−ブチルジメチルシリルオキシによって保護されたヒドロキシである。
【0014】
式IにおいてRおよびRについて上記定義の所望により保護されたヒドロキシは、他に記載がない限り、RまたはRの基、例えばアミノオキサリルオキシまたはR CHCOO−−を含むものと理解するべきでない。
【0015】
保護されたアミノは好ましくは、常套のアミノ保護基、例えばベンジルオキシカルボニルまたはトリアルキルシリル;とりわけtert−ブトキシカルボニルによって保護されたアミノである。
【0016】
本発明の化合物は好ましくは、遊離形である。好ましくは保護された形態である。
【0017】
本発明の化合物のサブグループは、化合物Ip、すなわちRが基(a)(ここで、Rはメトキシであり、Rはクロロまたはブロモであり、そしてRがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在するか、あるいはRがアジドであり、Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在するか、または存在せず、そして10、11位に二重結合が存在する)であり;Rが所望により保護されたヒドロキシであり、23、24位に単結合または二重結合が存在し;そしてRが式IIにおいて上記定義のとおりである;遊離形およびそのような形が存在するならば塩形の式IIの化合物である。
【0018】
本発明の化合物のさらなるサブグループは、化合物Ip、すなわちRが基(c)(ここで、Rがメトキシであり、そしてRがオキソ;所望により保護されたヒドロキシ;メトキシ;メチルチオメトキシ;アミノオキサリルオキシ;R CHCOO−−(ここで、Rが所望により保護されたアミノである);またはp−トリルオキシチオカルボニルオキシである);Rが存在せず、そして23、24位に二重結合が存在するか;または所望により保護されたヒドロキシ、メトキシ、メチルチオメトキシもしくはアミノオキサリルオキシであり、そして23、24位に単結合または二重結合が存在する、式IIの化合物であって;
ここで1)Rがオキソ、保護されていないヒドロキシまたはメトキシであるとき、Rが不存在以外であり、保護されていないヒドロキシまたはメトキシ以外であり、そして23、24位に単結合が存在する;2)Rがメチルチオメトキシであるとき、Rが不存在以外であり、保護されていないヒドロキシ以外である;3)Rが保護されたヒドロキシであるとき、Rが所望により保護されたヒドロキシ以外である;そしてRが所望により保護されたヒドロキシ以外であり;そしてRがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRが上記式IIにおいて定義のとおりである;遊離形およびそのような形が存在するならば塩形の化合物である。
【0019】
本発明の化合物のさらなるサブグループは、化合物Ip、すなわちRが基(b)(ここで、Rがメトキシである)であり、Rが所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRが上記式IIにおいて定義のとおりである;遊離形およびそのような形が存在するならば塩形の式IIの化合物である。
【0020】
本発明の化合物のさらなるサブグループは、化合物Ip、すなわちRが基(d)であり、Rが所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRが上記式IIにおいて定義のとおりである;遊離形およびそのような形が存在するならば塩形の式IIの化合物である。
【0021】
本発明の化合物の好ましいサブグループは、Rが基(a)(ここで、Rが上記式IIにおいて定義のとおりであり、そしてRがメトキシである)であり;Rが所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRがエチルまたはアリルである;式IIの化合物である。
【0022】
本発明の化合物のさらに好ましいグループは、Rが基(b)(ここで、Rがメトキシである)であり;Rが所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRがエチルまたはアリルである;式IIの化合物である。
【0023】
本発明の化合物のさらに好ましいグループは、Rが基(c)(ここで、Rがメトキシであり、そしてRが上記式IIにおいて定義のとおりである)であり;Rがオキソであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または所望により保護されたヒドロキシ、メチルチオメトキシ、アミノオキサリルオキシ、R CHCOO−−(ここで、Rが所望により保護されたアミノである)、そして23、24位に単結合または二重結合が存在する;式IIの化合物であって、
ここで1)Rがオキソ、保護されていないヒドロキシまたはメトキシであるとき、Rが保護されていないヒドロキシまたはメトキシ以外であり、そして23、24位に単結合が存在する;2)Rがメチルチオメトキシであるとき、Rが保護されていないヒドロキシ以外である;3)Rが保護されたヒドロキシであるとき、Rが所望により保護されたヒドロキシ以外である;そしてRがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRがエチルまたはアリルである;化合物である。
【0024】
本発明の化合物のさらに好ましいサブグループは、Rが基(d)であり、Rが所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRがエチルまたはアリルである、式IIの化合物である。
【0025】
とりわけ好ましい化合物には、米国特許第5,912,238号の実施例1から71に記載の化合物が含まれる。
【0026】
さらに、好適なラパマイシンの誘導体には、例えば米国特許第5,985,890号に記載の式IIIの化合物が含まれる(その内容を、とりわけ化合物に関して、出典明示により本明細書の一部とする)。式IIIの化合物は下記一般構造
【化6】

〔式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ベンジル、アルコキシベンジルまたはクロロベンジルであり;
は式IVまたは式V
【化7】

(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、チオアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、カルボアルコキシアルキルおよびアルキルシリルから選択され;
はH、メチルであるかまたは、Rと一体となってC2−6アルキレンを形成し;
は、RO−−CH−−(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミル、チオアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリルおよびカルボアルコキシアルキルから選択される);
CO−−(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノ酸残基、またはN,N−2置換−アミノ(ここで置換基は、(a)アルキル、アリールもしくはアリールアルキルから選択されるか、または(b)ヘテロ環式構造を形成する)から選択される);
NCH−−(式中、Rはアルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである);
−−O−−CH−−O−−;または
置換ジオキシメチレンである)
であり;
YはO (H、OH)および(H、OR)から選択され、ここでRはC1−4アルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミルまたはアリールから選択され;そして
XはOHまたはHであり;ここで「アルコ」または「アルキル」は所望によりオキシ結合で中断されているC1−10脂肪族置換基を意味し;そして「アラ」または「アリール」は単環式、所望によりヘテロ環式、所望により置換された、C4−14芳香族性置換基を意味し、ただしXがOHであり、RがアルキルでありそしてRが式IVの残基であるとき、RはH以外である〕
によって示される。
【0027】
式IIIの化合物において、下記意味が独立して、または任意の組合せで、またはサブコンビネーションで、好ましい:
1. XがOHであり、そしてRがC3−10−アルキニルまたはC3−10ヒドロキシアルキニル、好ましくはC3−10アルコ−2−イニルまたはC3−10ヒドロキシアルコ−2−イニル、より好ましくはC3−6アルコ−2−イニルである;
2. XがHであり、そしてR,がC1−10アルキル、C3−10アルコ−2−エニル、C3−10ヒドロキシアルコ−2−エニル、C3−10アルコ−2−イニル、C3−10ヒドロキシアルコ−2−イニルまたはC1−10アルコキシC1−10アルキル、好ましくはC1−6アルキルまたはC3−6アルコ−2−イニル、より好ましくはC1−4アルキル、もっとも好ましくはメチルである;
3. RのC3−6アルキニルが2−プロピニルまたはペント−2−イニル、好ましくはペント−2−イニルである;
4. YがO、(H、OH)または(H、C1−4アルコキシ)、好ましくはOである;
5. Rが式IVの残基である;
6. 式IVの残基において、RがH、C1−6ヒドロキシアルキル、ヒドロキシ−C1−6アルコキシ−C1−6アルキル、(C1−6アルキル)−カルボニル−アミノ−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルコキシまたはアミノ−C1−6アルキル、好ましくはH、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシエトキシエチル、メトキシエチルまたはアセチルアミノエチル;XがHであるとき、またはXがOHであり、R1がアルキニルであるとき、とりわけH;
7. 式IVの残基において、Rがメチルである;
8. Rが式V
〔式中、RがR OCH−−(式中、RがH、C1−6アルキル、C3−6アルコ−2−エニル、C3−6アルコ−2−イニル、アリール、C1−6アルキル−カルボニル、アリールカルボニル、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルまたはアミノC1−6アルキルから選択される);RCO−−(ここで、RがH、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アミノ酸の残基、N,N−2置換アミノ(式中、置換基が(a)C1−6アルキルまたはアリールから選択されるか、または(b)ヘテロ環式構造を形成する);RNCH−−(ここで、Rがアルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである);−−O−−CH−−O−−;または置換ジオキシメチレンである〕の残基である。
【0028】
好ましい化合物は式IIIa:
【化8】

〔式中、R、RおよびYは上記定義のとおりであり、好ましくは上記1および3から8のいずれかの好ましい意味を有する〕;および式IIIb:
【化9】

〔式中、R、RおよびYは上記定義のとおりであり、好ましくは上記2〜8のいずれかの好ましい意味を有する〕
の化合物である。
【0029】
とりわけ好ましい化合物には、(i)32−デオキソ−ラパマイシン;(ii)16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ−ラパマイシン;(iii)16−O−ペント−2−イニル−32−デオキソ40−O−(2−ヒドロキシ−エチル)−ラパマイシン(iv)16−O−ペント−2−イニル−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン;(v)16−O−ペント−2−イニル−32(S)−ジヒドロ40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン;(vi)32(S)−ジヒドロ40−O−(2−メトキシエチル−ラパマイシン;(vii)32(S)−ジヒドロ40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンが含まれる。
【発明の効果】
【0030】
驚くべきことに、式I〜IIIの化合物は心血管障害の処置および/または予防に有用であることを見出した。本発明の化合物は、とりわけ心血管障害の処置および/または予防に有効な医薬組成物における活性薬剤として適している。医薬組成物は薬学的に有効量の本発明の活性薬剤を、他の薬学的に許容される賦形剤、担体、増量剤、希釈剤等と共に有する。本明細書において使用するとき、薬学的に有効量のなる用語は、治療結果を得るために宿主に投与する必要のある量を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
上記化合物は、しばしば薬学的に許容される塩の形態で使用される。薬学的に許容される塩には、適当なとき、薬学的に許容される塩基付加塩および酸付加塩、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のような金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩およびアミノ酸付加塩、およびスルホン酸塩が含まれる。酸付加塩には無機酸付加塩、例えば塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩、ならびに有機酸付加塩、例えばアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩および乳酸塩が含まれる。金属塩の例は、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩およびカルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩である。アンモニウム塩の例は、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩である。有機アミン付加塩の例は、モルホリンおよびピペリジンとの塩である。アミノ酸付加塩の例は、グリシン、フェニルアラニン、グルタミン酸およびリジンとの塩である。スルホン酸塩には、メシル酸塩、トシル酸塩およびベンゼンスルホン酸塩が含まれる。
【0032】
当業者には明らかであるが、多くの本発明の化合物は不斉炭素原子を含む。したがって、個々の立体異性体が本発明の範囲に含まれるものと理解するべきである。
【0033】
本発明の化合物は米国特許第5,665,772号、米国特許第5,352,671号、米国特許第5,985,890号、および米国特許第5,912,238号に記載されている既知の有機合成法に従って製造することができる。
【0034】
本発明はさらに、薬学的に有効量の1種以上の上記化合物を有効成分として含む医薬組成物を含む。本発明の医薬組成物は、病的心臓肥大および心不全の処置のため、単独または1種以上の薬学的に許容される担体との組合せで、ヒトを含む哺乳類へ経腸、例えば経口または直腸、および非経腸投与に適している。
【0035】
化合物は、有効量の化合物を経腸もしくは非経腸適用に適した賦形剤または担体と組合せまたは混合で有する医薬組成物の製造に有用である。有効成分と共に(a)希釈剤;(b)滑沢剤、(c)結合剤(錠剤);所望により(d)崩壊剤;および/または(e)吸収剤、着色剤、芳香剤および甘味剤を含む錠剤およびゼラチンカプセル剤が好ましい。注射用組成物は、好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、そして座薬は有利には脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造される。組成物は滅菌され、および/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解プロモーター、浸透圧を制御するためのバッファー、および/またはバッファーを含む。さらに、組成物はまた、他の治療上有益な物質を含み得る。組成物は常套の混合、造粒またはコーティング法に従ってそれぞれ製造し、好ましくは約1〜50%の有効成分を含む。
【0036】
好適な製剤にはまた、非経腸投与用製剤を含み、抗酸化剤、バッファー、抗菌剤および意図される受容者の血液と等張な製剤とするための溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。製剤は単位投与または複数投与容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に存在することができ、そして使用の直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を加えることのみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)条件で貯蔵することができる。即時使用型注射用溶液および懸濁液を上記のような滅菌粉末、顆粒および錠剤から製造することができる。
【0037】
他の態様において、本発明の化合物を他の治療様式と組み合わせて使用することが見込まれる。したがって、上記治療に加えて、患者により「標準的な」薬学的心臓治療を提供することもできる。標準的な治療の例には、限定されないが、所謂「ベータブロッカー」、抗高血圧剤、強心剤、抗血栓剤、血管拡張剤、ホルモンアンタゴニスト、イオントロープ、利尿剤、エンドセリンアンタゴニスト、カルシウムチャネルブロッカー、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン2型レセプターアンタゴニストおよびサイトカインブロッカー/阻害剤が含まれる。
【0038】
心臓細胞を両方の薬剤を含む一つの組成物または薬理製剤と接触させることによって、あるいは細胞を別々の2つの組成物または製剤(ここで、一つの組成物は発現構築物を含み、他方は薬剤を含む)と、同時に接触させることによって、組合せを達成することができる。あるいは、化合物治療を他の薬剤の投与より数分から数週間の間隔で先行してまたは後で行うことができる。他の薬剤および発現構築物が別々に細胞に適用される態様において、これは一般的に、各送達の時間に、顕著な時間失効せず、薬剤および発現構築物が有利な組合せ効果を細胞に示すことができることを保証するであろう。かかる例において、典型的には細胞を両治療と互いに約12〜24時間、より好ましくは互いに約6〜12時間、もっとも好ましくは遅延時間が約12時間のみであるように接触させる。しかしいくつかの状況では、処置の時間を顕著に、各投与の間が数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)、延長され得る。
【0039】
上記のとおり、本発明の化合物は心血管障害の処置および/または予防に有用である。本明細書において使用される心血管障害なる用語には、限定されないが、(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、収縮期性、または他の二次的タイプの)高血圧、鬱血性心不全のような心不全、(安定または不安定)狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性心筋症前または後狭窄、心臓肥大、心線維症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大のような左心室機能障害、認知機能障害(例えばアルツハイマー症など)、血圧に関連した脳血管疾患、卒中、肺疾患または肺高血圧および頭痛、腎臓および心臓を含む末端器官の保護、例えば肺高血圧に関する例えば左心室肥大、右心室肥大等に対する保護、心筋障害、血管障害および神経障害ならびに冠状血管の疾患が含まれる。
【実施例】
【0040】
下記実施例は本発明を説明することを意図しており、それを限定するものとして構成していない。
【0041】
実施例1
上行大動脈または横行大動脈結索マウスモデルを圧力過負荷モデルとして使用して本発明の薬剤(試験薬剤)の病的心臓肥大に対する有利な効果を確認する。Tarnavski et al. (2004) or Ogita et al. (2004)に記載の方法を、この目的のために使用した。簡潔に述べると、麻酔したC57BL/6雄マウス(11〜12週齢)を上行大動脈または横行大動脈結索の外科的手段に供する。シャム手術されたマウスを動脈の結索なしの同様の外科的手段に供する。
【0042】
血圧および心拍数をテイル−カフ(tail-cuff)プレチスモグラフィー法によって手術の前および後定期的に、意識動物において非侵襲的に測定する。軽度の麻酔下で、2次元ガイドMモード心エコーを行う。左心室分別短縮の割合を、[(LVDD−LVSD)/LVDD]×100(%)として、Ogita et al. (2004)に記載のとおりに計算する。LVDDおよびLVSDは、それぞれ左心室末端拡張径および室収縮末期径を意味する。左心室の体積を、1.055[(LVDD+PWTD+VSTD)3−(LVDD)3](mg)(ここで、PWTDは心臓拡張後壁厚を示し、VSTDは心臓拡張心室中隔厚を示す)として計算した。
【0043】
上記評価の後、動物をランダムに、動脈結索またはシャム手術群に分ける。動脈結索手術の後、動物を対照(ビークル処置)群または試験(薬剤処置)群に割り当てる。全ての群を、データ分析に使用する前に少なくとも4週間置く。
【0044】
マウスを麻酔薬の過剰投与によって安楽死させた後、心臓を摘出する。体重に対する心臓重量の比を確認する。心臓切片をTarnavski et al. (2004)に記載のとおりに製造し、ヘマトキシリン−エオシンおよびマッソン・トリクロームで染色し、光学顕微鏡で観察する。
【0045】
実施例2
本発明の薬剤の心臓肥大に対する有利な効果を、アドレノレセプターアゴニストで慢性的に輸液(infurion)に供されたマウスにおいて確認する。これらの試験において、雄C57B1/6マウス(22〜26g)に外科的に浸透ミニポンプを埋め込んで、イソプロテレノール(30mg/kg/日)を少なくとも14日間、心臓肥大を誘導するために送達する。対照動物はビークルミニポンプを受ける。
【0046】
血圧および心拍数をテイル−カフ(tail-cuff)プレチスモグラフィー法によって手術の前および後定期的に、意識動物において非侵襲的に測定する。軽度の麻酔下で、2次元ガイドMモード心エコーを行う。左心室分別短縮の割合を、[(LVDD−LVSD)/LVDD]×100(%)として、Ogita et al. (2004)に記載のとおりに計算する。LVDDおよびLVSDは、それぞれ左心室末端拡張径および室収縮末期径を意味する。左心室の体積を、1.055[(LVDD+PWTD+VSTD)3−(LVDD)3](mg)(ここで、PWTDは心臓拡張後壁厚を示し、VSTDは心臓拡張心室中隔厚を示す)として計算した。
【0047】
上記評価の後、動物をランダムに、ミニポンプ埋め込み(ビークル/薬剤)群またはシャム手術群に分ける。全ての群を、データ分析に使用する前に少なくとも14日間置く。
【0048】
マウスを麻酔薬の過剰投与によって安楽死させた後、心臓を摘出する。体重に対する心臓重量の比を確認する。心臓の横断切片をTarnavski et al. (2004)に記載のとおりに製造し、ヘマトキシリン−エオシンおよびマッソン・トリクロームで染色し、光学顕微鏡で観察する。
【0049】
実施例3
本発明の化合物の心臓肥大および心不全に対する有利な効果を心筋梗塞および心不全のマウスモデルにおいて確認する。心筋梗塞を、左前下行枝(LAD)冠状動脈を麻酔下で、Tarnavski et al. (2004)に記載のように結索することによって、マウス(11〜12週齢)に誘導する。シャム手術動物は冠状動脈結索なしの同じ実験方法を行う。
【0050】
血圧および心拍数をテイル−カフ(tail-cuff)プレチスモグラフィー法によって手術の前および後定期的に、意識動物において非侵襲的に測定する。軽度の麻酔下で、2次元ガイドMモード心エコーを行う。左心室分別短縮の割合を、[(LVDD−LVSD)/LVDD]×100(%)として、Ogita et al. (2004)に記載のとおりに計算する。LVDDおよびLVSDは、それぞれ左心室末端拡張径および室収縮末期径を意味する。左心室の体積を、1.055[(LVDD+PWTD+VSTD)3−(LVDD)3](mg)(ここで、PWTDは心臓拡張後壁厚を示し、VSTDは心臓拡張心室中隔厚を示す)として計算した。
【0051】
血圧測定のための侵襲的方法を、動物を屠殺する前に使用する。Millarカテーテル付属のマイクロマノメーター(1.4 French)を右頸動脈に挿入し、LV室に進めて、LV圧を測定する。
【0052】
上記評価の後、(結索、シャム手術)動物を2つの群に分け、本発明の化合物または対応するビークルで処置する。全ての群を、データ分析に使用する前に少なくとも14日間置く。
【0053】
マウスを麻酔薬の過剰投与によって安楽死させた後、心臓を摘出する。体重に対する心臓重量の比を確認する。心臓の横断切片をTarnavski et al. (2004)に記載のとおりに製造し、ヘマトキシリン−エオシンおよびマッソン・トリクロームで染色し、光学顕微鏡で観察する。
【0054】
実施例4
イヌの頻脈によって誘導される心臓肥大に対する本発明の化合物の有利な効果を確認する。わずかな修飾を施したMotte et al. (2003)に記載の技術をこれらの研究に使用する。簡潔に述べると、二極ペースメーカーリードを外科的に、右頸静脈を通じて進め、麻酔雑種犬の右心室心尖部に埋め込む。プログラム可能なパルス発生器を表皮下子宮頸部ポケットに挿入し、ペースメーカーリードと接続する。
【0055】
動物にMotte et al. (2003)に記載のように刺激頻度の漸増を伴うペースプロトコルを行う。ペースは、パルス発生器を180ビート/分に活性化することから始めて、1週間続け、その後200ビート/分で第2週を、220ビート/分で第3週を、そして最後に240ビート/分で最後の2週間を行う。ベースライン(0週)およびペース期間(すなわち、第1週から第5週)に亘って1週間に1回調査を行う。ペースの3日目に、試験薬剤または対応するプラセボを投与し、同じ日用量で第5週の試験の終わりまで継続する。
【0056】
体重、直腸温度、心拍数(HR)、呼吸数(RR)および血圧をモニターする。ドップラー心エコーを、3.5〜5MHzメカニカルセクタープローブでモニターしながら行う。左心室内拡張終期(LVIDd)および収縮期径(LVIDs)、ならびに左心室収縮期および拡張期自由壁(LVFWsおよびLVFWd)および心室中隔厚(IVSsおよびIVSd)を測定する。大動脈流の画像をパルスウェーブドップラーによって得る。速度スペクトルを使用して前駆出期(PEP)および左心室駆出時間(LVET)を測定する。これらのデータから、左心室拡張終期(EDV)および収縮期体積(ESV)、左心室駆出率(LVEF)、および平均左室円周方向心筋線維短縮速度(MVCF)を計算する。
【0057】
本発明はある好ましい態様について詳細に本明細書に記載されているが、他の形態は本明細書に含まれる好ましい形態の精神および範囲から離れることなく可能である。
【0058】
本明細書において言及した、そして添付の参照のページにおいて記載した全ての文献は、その全体について参照により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的心臓障害の処置および/または予防法であって、哺乳類に式(I)
【化1】

〔式中、
Xは(H、H)またはOであり;
Yは(H、OH)またはOであり;
およびRは独立して、H、アルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシカルボニルアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アシルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アシルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、ジアルキル−ジオキソラニルアルキル、ジ(アルコキシカルボニル)−トリアゾリル−アルキルおよびヒドロキシ−アルコキシ−アルキルから選択され;ここで、「アルコ」または「アルキル」は分枝状または直鎖状のC1−6アルキルであり;「アリール」はフェニルまたはトリルであり;そしてアシルはカルボン酸由来の基であり;そして
はメチルであるかまたは
とRが一体となってC2−6アルキルを形成し;
ただしRおよびRは両方がHではなく;そしてヒドロキシアルコキシアルキルはヒドロキシアルコキシメチル以外である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
式Iの化合物が40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンである、請求項1の方法。
【請求項3】
治療上有効量の40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンをそれを必要とする対象に投与することを含む、心血管障害の処置および/または予防法。
【請求項4】
心血管障害が高血圧、心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、心筋症、心臓肥大、心線維症、腎不全、末梢血管障害、左心室機能障害、認知機能障害、血圧に関連した脳血管疾患、卒中、肺疾患、頭痛、末端器官傷害、血管障害、神経障害および冠状血管の疾患からなる群から選択される、請求項3の方法。
【請求項5】
病的心臓障害の処置および/または予防法であって、哺乳類に遊離形またはそのような形が存在するならば塩形の式(II)
【化2】

〔式中、
は式:
【化3】

(式中、Rはクロロ、ブロモ、ヨードまたはアジドであり、そしてRはヒドロキシまたはメトキシである)の基(a)であり;
は、オキソであり、そして23、24位に単結合が存在するか;所望により保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合または二重結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;そして
は、ヒドロキシであり、そして10、11位に単結合が存在するか;または存在せず、そして10、11位に二重結合が存在し;
はメチル、エチル、n−プロピルまたはアリルである〕
の化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項6】
遊離形の式(II)の化合物において、Rがクロロまたはブロモであり;Rがメトキシであり;そしてRがヒドロキシであり、10、11位に単結合が存在し;Rがヒドロキシまたはホルミル、tert−ブトキシカルボニルもしくはtert−ブチルジメチルシリルから選択される基で保護されたヒドロキシであり、23、24位に単結合または二重結合が存在し;そしてRがメチル、エチル、n−プロピルまたはアリルである、請求項5の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物が33−エピ−33−クロロ−FR520(実施例66aの化合物)である、請求項5の方法。
【請求項8】
病的心臓障害の処置および/または予防法であって、哺乳類に遊離形またはそのような形が存在するならば塩形の式(II)
【化4】

〔式中、
は式
【化5】

(Rは上記定義のとおりである)の基(b)または(d)であり;
は上記定義のとおりであり;そして
はヒドロキシルであり、そして10、11位に単結合が存在し;
はメチル、エチル、n−プロピルまたはアリルである〕
の化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項9】
遊離形またはそのような形が存在するならば塩形の式(II)の化合物において、RがRがメトキシである基(b)であり;Rがtert−ブチルジメチルシリルオキシで保護されたヒドロキシであり、そして23、24位に単結合が存在するか;または存在せず、そして23、24位に二重結合が存在し;Rがヒドロキシであり、そして10、11位に二重結合が存在し;そしてRがエチルまたはアリルである、請求項8の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物が29−デス−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−29−(3−ホルミルシクロペンチル)−FR520である、請求項8の方法。
【請求項11】
心血管障害が高血圧、心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、心筋症、心臓肥大、心線維症、腎不全、末梢血管障害、左心室機能障害、認知機能障害、血圧に関連した脳血管疾患、卒中、肺疾患、頭痛、末端器官傷害、血管障害、神経障害および冠状血管の疾患からなる群から選択される、請求項5または8の方法。
【請求項12】
病的心臓障害の処置および/または予防法であって、哺乳類に式(III)
【化6】

〔式中、
はアルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ベンジル、アルコキシベンジルまたはクロロベンジルであり;
は式IVまたは式V
【化7】

(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、チオアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリル、カルボアルコキシアルキルおよびアルキルシリルから選択され;
はH、メチルであるかまたは、Rと一体となってC2−6アルキレンを形成し;
は、RO−−CH−−(式中、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミル、チオアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシアリールアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルアリールアルキル、ジヒドロキシアルキルアリールアルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アルコキシカルボニルアミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールスルホンアミドアルキル、アリル、ジヒドロキシアルキルアリル、ジオキソラニルアリルおよびカルボアルコキシアルキルから選択される);
CO−−(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミノ酸残基、またはN,N−2置換−アミノ(ここで置換基は、(a)アルキル、アリールもしくはアリールアルキルから選択されるか、または(b)ヘテロ環式構造を形成する)から選択される);
NCH−−(式中、Rはアルキル、アリール、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールスルホニルアミノである);
−−O−−CH−−O−−;または
置換ジオキシメチレンである)
であり;
YはO (H、OH)および(H、OR)から選択され、ここでRはC1−4アルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヒドロキシアルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、ホルミルまたはアリールから選択され;そして
XはOHまたはHであり;ここで「アルコ」または「アルキル」は所望によりオキシ結合で中断されているC1−10脂肪族置換基を意味し;そして「アラ」または「アリール」は単環式、所望によりヘテロ環式、所望により置換された、C4−14芳香族性置換基を意味し、ただしXがOHであり、RがアルキルでありそしてRが式IVの残基であるとき、RはH以外である〕
の化合物を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
式(II)の化合物が16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシンまたは16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンである、請求項12の方法。
【請求項14】
式(II)の化合物が32−デオキソ−ラパマイシンまたは16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソ−ラパマイシンである、請求項12の方法。
【請求項15】
心血管障害が高血圧、心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、心筋症、心臓肥大、心線維症、腎不全、末梢血管障害、左心室機能障害、認知機能障害、血圧に関連した脳血管疾患、卒中、肺疾患、頭痛、末端器官傷害、血管障害、神経障害および冠状血管の疾患からなる群から選択される、請求項12の方法。

【公表番号】特表2008−540659(P2008−540659A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512392(P2008−512392)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/018656
【国際公開番号】WO2006/124739
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】