説明

急激なMIT素子を利用したプログラム可能なMITセンサ及びそのMITセンサを備えた警報機及び二次電池の爆発防止回路

急激なMITを起こす転移温度または転移電圧を要求される特定温度または特定電圧で可変となりうる急激なMIT素子、その急激なMIT素子を利用したMITセンサ、及びそのMITセンサを備えた警報機及び二次電池の爆発防止回路を提供する。該急激なMIT素子は、転移温度または転移電圧で急激な金属−絶縁体転移(MIT)を起こす急激なMIT薄膜と、急激なMIT薄膜にコンタクトする少なくとも2層の電極薄膜とを有し、電極薄膜に印加される電圧、急激なMIT薄膜に影響を及ぼす電磁波、圧力及びガス濃度変化のうち少なくともいずれか1つの因子の変化によって転移温度または転移電圧が可変される。該MITセンサは、急激なMIT素子を利用して形成され、温度センサ、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ及びスイッチなどになりうる。また、該警報機はMITセンサと、MITセンサに直列に連結された警報信号機と備え、該二次電池の爆発防止回路は、二次電池と、二次電池に付着されて二次電池の温度を感知して二次電池の爆発を防止するMITセンサと、二次電池によって電力を供給される回路本体とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ及び警報機に係り、特に転移温度または転移電圧で急激なMIT(Metal-Insulator Transition)を起こす急激なMIT素子、該急激なMIT素子を利用した温度センサ、圧力センサ、化学ガス濃度センサのようなMITセンサ及び該センサを備えた警報機及び二次電池の爆発防止回路に関する。プログラム可能なMITセンサは、MIT転移温度またはMIT転移電圧がプログラム方式でコントロールされうるということを意味する。
【背景技術】
【0002】
産業全般にわたって、温度の正確な測定と管理は、非常に重要である。かような温度の測定と管理は、センサを介してなされるが、センサのうち温度を感知するセンサがまさに温度センサである。特定温度を感知する温度センサにはさまざまな種類があるが、廉価でありつつ使用しやすい温度センサとしては、サーミスタ(thermistor)を例として挙げることができる。
【0003】
サーミスタは、コバルト、銅、マンガン、鉄、ニッケル、チタンなどの酸化物を、適切な抵抗率と温度係数とを有するように混合して焼結した半導体であり、周囲の温度変化によって導電率が変化する特性を有する。サーミスタは、一般的な金属とは異なり、温度が高まれば、抵抗値が減少する負抵抗温度係数の特性を有するが、これをNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタという。かかるサーミスタは、温度を感知する装置に主に使われる。
【0004】
図1は、従来のサーミスタを利用した警報機を示す回路図である。
図1を参照すれば、警報機は、センサ部分(長方形の点線)と警報信号機部分とを備える。センサ部分は、サーミスタ10、増幅器20及びトランジスタ30を有する。警報信号機の部分は、ブザー50及び発光ダイオード60を有する。センサ部分と警報信号機部分は、リレイスイッチ40を介して連結される。
【0005】
警報機の作用について簡単に説明すれば、サーミスタ10が温度によって抵抗が変わることによって、増幅器20のマイナス入力側の電圧が変化することになり、それによって増幅器20の出力電圧が変わることになる。出力電圧は、トランジスタ30のベースに入力されるが、特定温度以上の出力電圧で、トランジスタ30はターンオンされる。それによってリレイスイッチ40もターンオンされ、ブザー50及び発光ダイオード60が作動することになる。
【0006】
かようなサーミスタを利用した警報機が普遍的に広く使われているが、図示されているように、増幅器、トランジスタ及び多数の抵抗を含んで回路が複雑であるという短所と共に、いったん設計されたサーミスタの抵抗変化率によってセンシングしうる温度が特定温度として固定されるという短所がある。
【0007】
温度センサの他の例として、バイメタルを利用した温度センサがあるが、バイメタルもまた、低廉でありつつ広く使われているが、特定温度の範囲が広すぎるという短所を有し、それによって所望の特定温度のみを正確にセンシングし難いという短所がある。
【0008】
一方、他の温度センサとして、二酸化バナジウム(VO)を利用したものがある。VOは、68℃近くで単斜晶系から正方晶系の構造に構造の相転移が起こり(以下、構造の相転移が起きる温度を「臨界温度」とする)、それによって電気的に抵抗変化が起きる。かかる現象を利用してVOを温度センサとして利用するが、大きい電流が流れれば、セラミック温度センサが壊れてしまう現象が頻繁に発生し、また一定温度、すなわち臨界温度しか測定できないという短所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明がなそうとする技術的課題は、急激なMITを起こす転移温度または転移電圧を要求される特定温度または特定電圧で可変となりうる急激なMIT素子、その急激なMIT素子を利用して温度、圧力、化学ガス濃度をセンシングしうるMITセンサ、及びそのMITセンサを備えた警報機及び二次電池の爆発防止回路を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、転移温度または転移電圧で急激な金属−絶縁体転移(MIT)を起こす急激なMIT薄膜と、前記急激なMIT薄膜にコンタクトする少なくとも2層の電極薄膜とを有し、前記電極薄膜に印加される電圧、前記急激なMIT薄膜に影響を及ぼす電磁波、圧力及びガス濃度変化のうち少なくともいずれか1つの因子の変化によって、前記転移温度または転移電圧が可変する急激なMIT素子を提供する。
【0011】
本発明において、前記急激なMIT素子は、前記MIT薄膜を挟んで前記電極薄膜2層が上下に積層された積層型であるか、または前記MIT薄膜両端に前記電極薄膜2層が形成された平面型に形成されうる。
【0012】
前記急激なMIT薄膜は、低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された有機物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された半導体、及び低濃度の正孔が添加された酸化物半導体または絶縁体のうち少なくともいずれか一つを含み、前記低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体または絶縁体、前記低濃度の正孔が添加された有機物半導体または絶縁体、前記低濃度の正孔が添加された半導体、前記及び低濃度の正孔が添加された酸化物半導体または絶縁体は、酸素、炭素、半導体元素(III−V族、II−VI族)、遷移金属元素、希土類元素、ランタン系元素のうち少なくともいずれか一つ以上を含んで形成される。例えば、前記急激なMIT薄膜は、二酸化バナジウム(VO)、または低濃度の正孔が添加されたガリウムヒ素(GaAs)から形成されうる。
【0013】
一方、前記電磁波は紫外線を含み、前記MIT素子の転移温度または転移電圧は、前記電磁波を前記急激なMIT薄膜に照射することによって可変させることができ、前記急激なMIT素子は、温度センサ、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ及びスイッチのうち少なくともいずれか一つに利用されうる。
【0014】
本発明はまた、前記技術的課題を達成するために、前記急激なMIT素子を利用して製作されたMITセンサを提供する。
【0015】
本発明において、前記MITセンサは、温度センサ、電磁波検出器、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ、粒子検出器(電子、イオン、宇宙線)及びスイッチのうち少なくともいずれか一つであり、前記MITセンサは、前記急激なMIT素子が直列、並列または直列及び並列に連結されるか(アレイ構造センサ)、アレイまたはマトリックスの構造に配列されて形成されうる(アレイ構造センサ)。
【0016】
前記MITセンサの前記急激なMIT素子は、前記急激なMIT薄膜及び電極薄膜が密封材で密封されたディップ(dip)型、または前記急激なMIT薄膜の一定部分が露出されたカン型に形成され、前記急激なMIT素子が前記カン型に製作された場合、前記カン型の開口部には、電磁波を前記急激なMIT薄膜に集光させるためのレンズが形成されうる。このように、カン型に形成された急激なMIT素子の前記急激なMIT薄膜に電磁波が照射されることによって、前記急激なMIT素子の転移温度または転移電圧が可変となりうる(すなわち、転移温度や電圧がプログラムされうる)。
【0017】
また前記MITセンサは、警報信号伝達のために、リレイスイッチを介して、または直ちに警報信号機と電気的に連結され、前記MITセンサが温度、圧力、ガス濃度及び電磁波強度のうち少なくともいずれか一つを感知し、基準温度、基準圧力、基準ガス濃度または基準電磁波強度以上である場合に、前記警報信号機を介して警報を発することができる。ここで、前記ガス濃度は、酸素、炭素、水素、窒素、塩素、硫黄元素の濃度のうち少なくともいずれか1つのガス濃度でありうる。
【0018】
一方、前記MITセンサは、前記急激なMIT薄膜の熱を外部に放出するための放熱板を有することができ、前記急激なMIT素子に印加される電圧を調節するために、前記急激なMIT素子に直列に連結された可変抵抗を備えることができる。
【0019】
さらに本発明は、前記技術的課題を達成するために、前記MITセンサと、前記MITセンサに直列に連結された警報信号機とを備える警報機を提供する。
【0020】
本発明において、前記MITセンサは、温度センサ、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ及びスイッチのうち少なくともいずれか一つでありうる。前記電磁波は紫外線を含み、前記MIT素子の転移温度または転移電圧は、前記電磁波を前記急激なMIT薄膜に照射することによって可変させることができる。
【0021】
前記MITセンサは、前記急激なMIT素子が直列、並列または直列及び並列に連結されるか、またはアレイまたはマトリックスの構造に配列されて形成されうるが、前記MITセンサが前記アレイまたはマトリックスの構造に形成された場合、前記MITセンサが赤外線を含んだ電磁波を感知し、映像信号を含んだ警報信号を前記警報信号機に伝達できる。
【0022】
さらに本発明は、前記技術的課題を達成するために、二次電池と、前記二次電池に付着され、前記二次電池の温度を感知して前記二次電池の爆発を防止する前記MITセンサと、前記二次電池によって電力を供給される回路本体とを備える二次電池の爆発防止回路を提供する。
【0023】
本発明において、前記二次電池の一端子は、前記MITセンサの急激なMIT素子の一電極薄膜、四端子リレイスイッチの第1端子及び前記回路本体の一端子に連結され、前記二次電池の他端子は、前記リレイスイッチの第2端子及び第3端子、及び前記回路本体の他端子に連結され、前記急激なMIT素子の他電極薄膜は、前記リレイスイッチの第4端子に連結され、前記二次電池の温度上昇による前記急激なMIT素子の急激なMITによって、前記リレイスイッチの前記第3端子と第4端子との間に急激な電流変化が発生し、前記急激な電流変化によって、前記リレイスイッチの第1端子と第2端子とがターンオンされることにより、前記二次電池の爆発が防止されうる。
【0024】
また、前記二次電池の一端子と前記急激なMIT素子の一電極薄膜との間に、前記急激なMIT素子の保護または転移温度変更のための可変抵抗が連結され、前記二次電池の一端子と前記リレイスイッチの第1端子との間に、前記爆発防止回路の短絡防止のためのリレイ抵抗が連結され、前記二次電池の一端子と前記回路本体の一端子との間に過電流防止素子(PTC:Positive Temperature Coefficient Thermistor)が連結されることもある。
【0025】
前記リレイスイッチは、二次電池及び保護回路本体と直列に連結され、そのリレイを動作するMIT素子またはセンサは、電池に付着されうる。また、リレイの代わりに、トランジスタスイッチが使われうる。トランジスタは、充電と放電とによって方向性を有するように、二次電池と保護回路本体との間に直列に連結されうる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による急激なMIT素子は、印加される電圧または電場を変化させることによって、転移温度を可変させることができる。
【0027】
また、かかる急激なMIT素子を利用してMITセンサを製作することによって、要求される特定温度でセンシング温度を制御できる温度センサ、電磁波感知のための磁場センサ、イメージセンサのような多様な電磁波感知センサ、及び圧力、ガス濃度センサなどの化学及び物理的特性変化を感知するためのセンサなどの具現を可能にする。
【0028】
さらに、かような温度センサを有して警報機を製作することによって、センシング温度を可変でき、小型化及び経済的な警報機を具現できる。
【0029】
一方、本発明のMITセンサ、特に温度センサは、二次電池に付着され、二次電池の過度な温度上昇による二次電池の爆発を防止できる二次電池の爆発防止回路に利用されることによって、携帯電話、ノート型パソコン、ハイブリッド自動車などの二次電池を使用するさまざまな電子、電気及び機械装置に有用に活用されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明では、特定温度で急激な金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)を起こす急激なMIT素子、特に前記急激なMITが起きる特定温度を可変させうる急激なMIT素子、その急激なMIT素子を利用した温度センサ、及びその温度センサを備えた警報機を提案する。以下で、前記急激なMIT素子が急激なMITを起こす前記特定温度を「転移温度」とする。
【0031】
以下、添付した図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例について詳細に説明する。以下の説明で、どんな構成要素が他の構成要素の上部に存在すると記述されるとき、それは、他の構成要素のすぐ上に存在することもあり、その間に第3の構成要素が介在することも可能である。また図面で、各構成要素の厚さや大きさは、説明の便宜及び明確性のために誇張され、説明と関係ない部分は省略された。一方、図面上で同一参照符号は、同じ構成要素を指す。
【0032】
急激なMIT素子は、急激なMIT薄膜及び少なくとも2層の電極薄膜を有する。急激なMIT素子は、転移薄膜及び電極薄膜の位置によって、積層型(または垂直型)構造と平面型構造を有することができる。
【0033】
図2は、積層型構造を有する急激なMIT素子に係る断面図である。
図2を参照すれば、積層型構造を有する急激なMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200の上部に形成された第1電極薄膜410、急激なMIT薄膜300、及び第2電極薄膜420を備える。
【0034】
バッファ層200は、基板100と第1電極薄膜410と間に格子不整合を緩和させる役割を行う。基板100と第1電極薄膜410との間に、格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200なしに第1電極薄膜410を基板100上に形成できる。かかるバッファ層200は、SiOまたはSi膜を含んで形成できる。
【0035】
急激なMIT薄膜300は、酸素、炭素、半導体元素(III−V族、II−VI族)、遷移金属元素、希土類元素、ランタン系元素を含む低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された有機物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された半導体、及び低濃度の正孔が添加された酸化物半導体または絶縁体のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。また、急激なMIT薄膜300はn型でありつつ、非常に大きい抵抗を有する半導体または絶縁体を含んで形成されることもある。ここで、添加された正孔の濃度は、3×1016cm−3ほどである。
【0036】
一方、電極薄膜400は、W、Mo、W/Au、Mo/Au、Cr/Au、Ti/W、Ti/Al/N、Ni/Cr、Al/Au、Pt、Cr/Mo/Au、YBaCu7−d、Ni/Au、Ni/Mo、Ni/Mo/Au、Ni/Mo/Ag、Ni/Mo/Al、Ni/W、Ni/W/Au、Ni/W/Ag及びNi/W/Alのうち、少なくともいずれか1つの物質を含んで形成されうる。かかる電極薄膜400は、スパッタリング蒸着法、真空蒸着法及び電子ビーム(E−beam)蒸着法のうち少なくともいずれか1つの蒸着法を利用して形成できる。
【0037】
基板100の場合、Si、SiO、GaAs、Al、プラスチック、ガラス、V、PrBaCu、YBaCu、MgO、SrTiO、NbがドーピングされたSrTiO及び絶縁薄膜上のシリコン(SOI)のうち少なくともいずれか1つの物質を含んで形成できる。
【0038】
本発明に適用される急激なMIT素子は、温度によって電気的特性が急激に変わる。すなわち、転移温度以下で急激なMIT素子は、絶縁体の特性を示し、転移温度以上で急激な転移が発生し、金属性物質の性質を帯びることになる。
【0039】
図3Aは、平面型構造を有する急激なMIT素子に係る断面図である。
図3Aを参照すれば、平面型構造を有する急激なMIT素子は、基板100、基板100上に形成されたバッファ層200、バッファ層200の上面一部に形成された急激なMIT薄膜300a、及びバッファ層200の上部に、急激なMIT薄膜300aの側面と上面とに互いに対向しつつ形成された第1電極薄膜410a及び第2電極薄膜420aを備える。すなわち、第1電極薄膜410aと第2電極薄膜420aは、急激なMIT薄膜300aを挟んで互いに分離されている。
【0040】
バッファ層200は、急激なMIT薄膜300aと基板100との間で格子不整合を緩和させる。基板100と急激なMIT薄膜300aとの間に格子不整合が非常に小さいときは、バッファ層200なしに急激なMIT薄膜300aを基板100上に形成できる。
【0041】
バッファ層200、急激なMIT薄膜300a、電極薄膜400及び基板100が図2の説明で述べた材質から形成可能であることはいうまでもない。一方、積層型及び平面型の急激なMIT素子は、ミクロン(μm)単位の小型に作ることができ、経済的な側面でも非常に低廉に製作できる。
【0042】
図3Bは、図3Aで説明した平面型急激なMIT素子に係る平面図である。図3Bを参照すれば、急激なMIT素子のバッファ層200、急激なMIT薄膜300a及び第1電極薄膜410a及び第2電極薄膜420aが図示されている。一般的に、急激なMIT素子は、特定電圧(以下、「転移電圧」とする)で急激なMITを起こすが、かかる転移電圧は、素子の構成要素の構造によって変わりうる。例えば、2つの電極薄膜410a,420aの距離dの変化や電極薄膜の幅wの変化を与えることにより、転移電圧を変化させることができる。かかる転移電圧の変化はまた、転移温度の変化をもたらすことができる。これに係る説明は、図6ないし図8についての説明部分で詳細に説明する。
【0043】
図4は、転移温度で急激なMIT現象を起こす二酸化バナジウム(VO)で製造された急激なMIT素子を利用した温度センサの温度に係る抵抗のグラフである。
【0044】
図4を参照すれば、グラフの横軸は絶対温度を示し、単位はKであり、縦軸は抵抗を示して単位はオーム(Ω)である。温度センサは、絶対温度およそ338K以下では105Ω以上の高い抵抗を示し、ほぼ絶縁体としての特性を有する。しかし、338Kほど、すなわち65℃ほど(A)で抵抗が急激に低くなり、およそ数十Ωほどの抵抗を有した金属としての性質を表す。温度センサが急激な抵抗の変化を見せる理由は、前述した通り急激なMIT素子がおよそ65℃ほどで急激なMIT現象を起こすためである。従って、本実験例の温度センサとして使われる急激なMIT素子の転移温度は、およそ65℃ほどである。
【0045】
本実験例で、VOで製作された温度センサは、65℃で急激なMITが起きるが、適切な物質をドーピングすることによって転移温度を変更できる。また、急激なMIT素子を構成する構成要素の材質や構造を変化させても、転移温度を変更させることができる。このように、転移温度で急激なMIT現象を起こす急激なMIT素子を利用し、温度センサを作ることができる。
【0046】
一方、本発明の温度センサは、転移温度以上の温度を感知し、外部にかような状態を知らせるために、温度センサに電気または電子の素子などが連結されることになる。また、温度センサは、転移温度で電気的特性、すなわち抵抗が急激に変化するので、かような変化を測定するためには、所定の特定電圧が電極薄膜を介して急激なMIT薄膜に持続的に印加されなければならない。
【0047】
本発明の温度センサは、急激なMIT素子を利用することによって、急激なMIT素子の転移温度に該当する特定温度以上の温度を正確に感知でき、小型及び経済的な価格で製作できる。
【0048】
しかし、かかる急激なMIT素子は、はじめに設計された構成要素の材質や構造によって転移温度が特定され、それによってかかる急激なMIT素子を利用した温度センサも、特定温度以上しかセンシングできないという短所を有する。従って、時によって転移温度を可変させることができる急激なMIT素子が要求される。以下、転移温度を可変させうる急激なMIT素子について説明する。かかる急激なMIT素子は、ホール・ドリブンMIT理論を基に発明され、該理論は、Physica C341−348(2000)729;http//xxx.Lanl.gov/abs/cond-mat/0110112;New J.Phys.6(2004)52に公開されている。
【0049】
図5は、特定電圧で電流の不連続ジャンプを起こす図4の急激なMIT素子の電圧−電流グラフであり、特に図3Aの平板型急激なMIT素子で、急激なMIT薄膜がVOから形成され、電極間隔dが20μmであり、電極幅wが50μmである場合に測定された電流−電圧特性曲線である。図5を参照すれば、21.5Vで不連続MIT(B)が起こるので、急激なMIT素子の転移電圧は、およそ21.5Vとすることができる。
【0050】
図6は、図4の急激なMIT素子に電圧を加えつつ測定した電流の温度依存性を示すグラフであり、やはり急激なMIT薄膜がVOから形成され、電極間隔dが20μmであり、電極幅wが50μmである平面型急激なMIT素子で測定したグラフである。一方、本グラフは、MIT素子の転移温度が電圧を印加することによって制御されうることを示している。すなわち、MIT素子の転移温度がプログラム可能であるということを示す。
【0051】
図6を参照すれば、急激なMIT素子に1Vの電圧を加えたときには、VOの典型的な電流曲線を示す。すなわち、これを温度に対する抵抗で表示すれば、図4のグラフとなる。また、電圧が増加するほど、温度による急激なMIT素子の転移温度が低温度に移動することを示す。加えた電圧が、急激なMIT素子の転移電圧、すなわち21.5Vに近くなるほど転移温度がほぼ常温に近接して行く。22Vを加えたときは、オームの法則のみを示し、転移温度は示されない。すなわち、転移電圧以上の電圧を加えれば、電圧だけによる急激なMITが発生するので、温度による急激なMITが発生する余地がない。
【0052】
一方、印加された各電圧による転移温度で電流ジャンプ後には、オームの法則とそれによる電流の変化とを確認することができる。68℃近辺での電流変化は、電圧が増加するほど若干減少するが、それは、斜方晶系から正方晶系に構造が変化(Cライン付近)することを意味する。すなわち、VOは、68℃付近で斜方晶系構造から正方晶系構造に構造の相転移が起き、それによって、MITが起きて電気的に抵抗変化が発生するためである。結局、本グラフを介して、本発明の急激なMIT素子の各電圧による転移温度で発生する急激なMITは、臨界温度による構造の相転移と関係がないということが明確に分かる。
【0053】
本発明の急激なMIT素子は、印加される電圧を変化させることによって、転移温度を変化させることができる。かような転移温度が可変される急激なMIT素子を利用し、感知しようとする特定温度でのセンシング温度を調節できる温度センサの製作が可能である。また前述の通り、急激なMIT素子を小型及び経済的に製作できるので、やはりセンシング温度が可変される温度センサを小型及び経済的に製作できる。
【0054】
急激なMIT素子に印加される電圧を可変させる手軽な方法として、急激なMIT素子に可変抵抗を直列とする方法が利用できる。一方、急激なMIT素子を温度センサとして利用する場合、正確な温度をセンシングするために、急激なMIT薄膜に発生した熱を迅速に外部に放出することが望ましく、それによって、急激なMIT素子は、急激なMIT薄膜に連結されて素子外郭部分に形成された放熱板を有することができる。
【0055】
一方、急激なMIT素子の構成要素の材質や構造が変わって転移電圧が変更される場合には、印加される電圧の変化による転移温度の可変範囲が変わりうることはいうまでもない。ここで、急激なMIT薄膜に印加される電圧は、電磁気学的な概念で、電場または電磁波としても解釈可能である。
【0056】
図7は、低濃度正孔が添加されたガリウムヒ素(GaAs)で製造された急激なMIT素子で、電圧を加えつつ測定した電流の温度依存性を示すグラフである。
【0057】
一般的に、半導体ガリウムヒ素(GaAs)は、臨界温度がないと知られている。すなわち、構造の相転移が発生しない。しかし、本グラフを介して、低濃度の正孔が添加された半導体GaAsで製造された急激なMIT素子でも急激なMITは発生し、また図6のように印加される電圧によって、転移温度が変化しうるということが分かる。
【0058】
結局、VOだけではなく、さまざまな半導体材料を利用し、可変される転移温度を有する急激なMIT素子を製作でき、またその急激なMIT素子を利用し、センシング温度を可変させうる温度センサを製作できる。
【0059】
図8は、急激なMIT素子の急激なMIT薄膜に照射される電磁波の強度によって、転移電圧が変化することを示す電圧−電流グラフであり、特に波長1.55μmである電磁波を急激なMIT素子の急激なMIT薄膜に照射して電流−電圧特性を測定したグラフである。
【0060】
図8を参照すれば、転移電圧が加えられる電磁波の光パワーを増大させることによって低くなるということを確認することができる。すなわち、−30dBmの光パワーに比べて20dBmの光パワーで電磁波を照射したとき、転移電圧は、ほぼ12Vから7Vほどに低下するということを確認することができる。ここでdBmは、パワー単位のようなエネルギー単位である。結局、電磁波によって、急激なMIT素子の転移電圧を可変させることができる。また、かかる電磁波によって転移電圧を可変させうるという概念は、赤外線熱線のような輻射波によって転移電圧を可変させうるという概念にも解釈できる。また、圧力、磁場、化学ガス濃度などによる物理及び化学作用によっても、転移温度または転移電圧の可変のような急激なMIT素子の急激なMIT特性を可変させることができる。ここで、化学ガスとしては、酸素、炭素、水素、硫黄、塩素元素などを挙げることができる。
【0061】
一方、かかる結果を利用して電磁波を感知できる。すなわち、急激なMIT素子で電流が急激にジャンプする電圧を測定することによって、当該電磁波のパワーを感知できる。従って、かかる急激なMIT素子は、電磁波などを感知するセンサ、例えば温度センサ、赤外線センサ、イメージセンサ、及びスイッチなどに有用に利用され、また前述の物理及び化学作用などを感知できる圧力センサ、化学ガス濃度センサなどにも利用できる。
【0062】
以下では、急激なMIT素子を利用した温度センサを備えた警報機について説明する。
図9は、本発明の警報機に係る一実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサを備えた警報機に係る回路図である。
【0063】
図9を参照すれば、警報機は、急激なMIT素子を利用した温度センサ700、温度センサ700に連結されたリレイスイッチ800、リレイスイッチに連結されたブザー500、及び発光ダイオード600を有する。リレイスイッチ800、ブザー500及び発光ダイオード600には、各々電源電圧Vccが印加される。
【0064】
温度センサ700は、前述の通りに転移温度で急激なMITを起こす急激なMIT素子710、及び急激なMIT素子710の印加電圧を可変させるための可変抵抗720を備える。従って、温度センサ700は、可変抵抗720を介して急激なMIT素子710に印加される電圧を調節し、急激なMIT素子710の転移温度を可変させることができ、それによって、要求される適切な温度にセンシング温度を調節できる。
【0065】
ここで、ブザー500及び発光ダイオード600は、温度センサ700によって感知されたセンシング温度以上の温度状態を知らせる警報信号機である。すなわち、センシング温度以上になれば、ブザー500は音を発生させ、発光ダイオード600は光を発光する。ブザー500及び発光ダイオード600は、警報信号機の一例示に過ぎず、電気信号、光、音などを発生させることができる多様な電気または電子の素子が警報信号機として使われうる。一方、本実施例では、ブザー500と発光ダイオード600とを共に使用しているが、そのうち一つのみが利用されうることはいうまでもない。
【0066】
一方、図示したように、発光ダイオード600は、直列連結されたダイオード保護用抵抗Rを備えることができる。また、回路上で温度センサ700近くに警報信号機500,600が表現されているが、遠距離の管制所などに警報信号機500,600を設け、電線を介して温度センサ700と連結させることができることはいうまでもない。このとき、温度センサ700は、温度変化を測定しようとするところに設けられることは当然である。
【0067】
本実施例による警報機の作用について簡単に説明すれば、外部の温度がセンシング温度、すなわち、転移温度以上になれば、温度センサ700の急激なMIT素子710は、急激なMITを起こして電流が突然に増加する。増加した電流は、リレイスイッチ800をターンオンさせ、それによってブザー500及び発光ダイオード600に電流が流れ、音及び光の信号を発生させる。
【0068】
本実施例は、図1の従来警報機のセンサ部分の数多くの回路の構成部分を、ただ1つの急激なMIT素子を利用した温度センサに代替する。従って、回路的な面で、非常に簡単に警報機を製作できる。また、本発明の温度センサは、可変抵抗を変更することによって、容易にセンシング温度を変更でき、それによって、所望のセンシング温度で警報機が作動できるように設計できる。また、前述の通り、センサを小型及び経済的に製作できるので、それにより、本実施例の警報機も小型及び経済的に製作できる。
【0069】
図10は、本発明の警報機に係る他の実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサを備えた警報機についての回路図である。
【0070】
図10を参照すれば、警報機は、図8の警報機と類似しているが、リレイスイッチが省略されている。従って、リレイスイッチに印加される電源電圧Vccも省略される。
【0071】
本実施例の警報機の作用について説明すれば、センシング温度、すなわち転移温度で温度センサ700の急激なMIT素子710が急激なMITを起こし、多量の電流が流れ、それによって、ブザー500及び発光ダイオード600にも電流が流れ、音及び光の信号が発生することになる。もちろん、転移温度以下でも少量の電流が流れることになるが、かような電流は、ブザー500を作動するには微弱である。また、発光ダイオード600も、ほとんどの電圧が温度センサ700に印加されることによって、発光ダイオード600の両端の電圧は、発光ダイオード600をターンオンさせることは、微弱な電圧になる。
【0072】
本実施例でも、警報信号機としてブザー500及び発光ダイオード600だけではなく、多様な電気信号、光、音などを発生させることができる電気または電子の素子が利用されうることはいうまでもない。また、ブザー500及び発光ダイオード600の二つのうち、一つのみ警報信号機として使用でき、それら警報信号機500,600が温度センサ700から遠距離にある官制所などに設けられうるのも当然のことである。
【0073】
本実施例では、リレイスイッチまで省略することによって、警報機の内部回路をさらに単純化させることができ、それによって、警報機をさらに小型化及び経済的に製作できる。
【0074】
図11は、図10の警報機回路を基に製作された警報機に係る写真であり、ディップ(dip)型急激なMIT素子を利用して製作された警報機についての写真である。
【0075】
図11を参照すれば、赤色円で表示された部分がDIP型急激なMIT素子710aであり、青色部分が可変抵抗720である。ここで、DIP型というのは、一般半導体チップと同様に急激なMIT素子がエポキシのような密封材で完全に密閉された形態に製作されたものをいう。
【0076】
図12も、図10の警報機回路を基に製作された警報機に係る写真であり、カン型急激なMIT素子を利用して製作された警報機についての写真である。
【0077】
図12を参照すれば、赤色円で表示された部分がカン型急激なMIT素子710bであり、青色部分は、図11と同様に可変抵抗720である。ここで、カン型というのは、DIP型と異なり、急激なMIT素子の急激なMIT薄膜の一部が外部に露出されるように、上部面が開放された形態に製作されたものをいう。カン型急激なMIT素子は、かかる開放部分を介して電磁波が照射されることによって、電磁波感知センサ、例えば赤外線検出器などに有用に利用されうる。一方、急激なMIT素子がカン型に製作された場合、開放部にはレンズが形成できるが、かかるレンズを形成することによって、急激なMIT薄膜に光を集光させられ、また急激なMIT素子を外部と遮断し、汚染などを予防できる。
【0078】
図13は、本発明の一実施例による急激なMIT素子を利用した二次電池爆発防止用回路図である。
【0079】
図13を参照すれば、本実施例の二次電池の爆発防止回路は、二次電池900、二次電池900に付着されて二次電池900の温度を感知して二次電池900の爆発を防止するMITセンサ710、及び二次電池900によって電力を供給される保護回路本体950を備える。ここで二次電池は、充放電の可能な電池であり、例えばリチウムイオン二次電池などになり、MITセンサ710は、二次電池900の温度上昇による爆発を防止するために、二次電池900の温度を感知できる温度センサである。
【0080】
二次電池の爆発防止回路についてさらに詳細に説明すれば、二次電池900の一端子は、MITセンサ710の急激なMIT素子の一電極薄膜、四端子リレイスイッチ800の第1端子及び保護回路本体950の一端子に連結される。また、二次電池900の他端子は、リレイスイッチ800の第2端子及び第3端子、及び前記保護回路本体950の他端子に連結され、急激なMIT素子の他電極薄膜は、リレイスイッチ800の第4端子に連結される。このように連結されることによって、二次電池900の温度上昇による急激なMIT素子の急激なMITによって、リレイスイッチ800の第3端子と第4端子との間に急激な電流変化が発生し、急激な電流変化によって、リレイスイッチ800の第1端子と第2端子とがターンオンされることにより、二次電池900の爆発が防止されうる。
【0081】
一方、図示されているように、二次電池900の一端子と急激なMIT素子の一電極薄膜との間に、急激なMIT素子の転移温度変化または急激なMIT素子保護のための可変抵抗720が連結され、二次電池900の一端子とリレイスイッチ800の第1端子との間に、短絡防止のためのリレイ抵抗820が連結されうる。また、二次電池900の一端子と前記保護回路本体950の一端子との間に、前記保護回路本体950の保護のための過電流防止素子850(PTC:Positive Temperature Coefficient Thermistor)が連結されることもある。ここで、リレイ抵抗820は、数Ωほどの短絡を防止するほどの値を有し、可変抵抗720は、リレイ抵抗820よりは大きくするのが望ましい。
【0082】
図14は、図13の変形例を示す二次電池爆発防止用回路図であり、リレイスイッチ800が二次電池900と本体950との間に直列連結されている。正常動作時にリレイスイッチ800は、二次電池900と本体950とを連結し、単純な導電機能を果たす。ところで、二次電池900の充放電時に、二次電池900の温度が上がれば、二次電池900に付着しているbMITセンサ713が作動されてリレイスイッチ800を短絡させ、二次電池900の他のMITセンサ710が作動されて二次電池の電荷量を放電させて爆発を防止する。二次電池900の温度が低くなれば、再び正常動作を行う。ここで、図面上で、MITセンサ713が二次電池900と分離されて図示されているが、実際には、MITセンサ710と同様に二次電池900に付着されて動作する。
【0083】
図15は、図13の他の変形例を示す二次電池爆発防止用回路図であり、図14と同じ動作原理で作動するが、リレイの代わりにトランジスタを使用する。ここでもやはり、各MITセンサ710,715は二次電池に付着されている。二次電池900の充電と放電とのときに電流の方向が変わるので、充電用と放電用とのトランジスタ835を使用する。充電する場合に、電池に付着されたMITセンサ715がMITが起きる前であるから、電流はトランジスタ835を介して導電し、充電時に電池で発熱が起これば、MITセンサ715が動作され、トランジスタの導電電流を遮断する。そして、MITセンサ710が動作され、二次電池の電荷量を放電させて爆発を防止する。放電する場合は、他のトランジスタ835が正常動作を行っていて電池で発熱が起これば、MITセンサ715が動作され、トランジスタに流れる電流を遮断する。そして、MITセンサ710が動作され、二次電池900の電荷量を放電させて電池の爆発を防止する。トランジスタ835は、ゲートに電流が流れるときに両端の電流を遮断させ、ゲートに電流が流れないときに電流が導電するトランジスタとして使用される。
【0084】
結局、本実施例の二次電池の爆発防止回路は、転移温度、例えば68℃以上で二次電池の大きい電流がリレイスイッチ側に流れて放電が起こり、それによって、二次電池の内部電圧が降下して二次電池の爆発が予防される。従って、本実施例の二次電池の爆発防止回路は、携帯電話、ノート型パソコン、ハイブリッド自動車のような、二次電池を使用するさまざまな電子、電気及び機械装置などに有用に活用できる。
【0085】
急激なMIT素子に影響を及ぼす変数として温度及び赤外線のような電磁波を例として挙げて主に先に説明したが、他の外部変数、例えば、圧力、磁場、電磁波、または酸素、炭素、水素、窒素、塩素、硫黄元素を含む化学ガスなどによっても急激なMITが可能であるので、本実施例のMITセンサは、多様な用途でさまざまな産業分野に活用されうる。一方、MITセンサは、急激なMIT素子を直列、並列、または直列及び並列に連結されたり、アレイまたはマトリックスの形態に配列して電磁波をセンシングして映像信号を伝達できるイメージセンサにも活用できる。
【0086】
以上、本発明について、図面に図示された実施例を参考にして説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的史上によってのみ決まるのである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、センサ及び警報機に係り、特に急激なMITを起こす急激なMIT素子、該急激なMIT素子を利用したMITセンサ及び該センサを備えた警報機及び二次電池の爆発防止回路に関する。本発明による急激なMIT素子は、温度センサ、電磁波感知のための磁場センサ、イメージセンサのような多様な電磁波感知センサ、及び圧力、ガス濃度センサなどの化学及び物理的特性変化を感知するためのセンサなどの具現を可能にする。また、本発明のMITセンサは、二次電池に付着され、二次電池の過度な温度上昇による二次電池の爆発を防止できる二次電池の爆発防止回路に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】従来のサーミスタ温度センサを利用した警報機ついての回路図である。
【図2】積層型急激なMIT素子を示す断面図である。
【図3A】平面型急激なMIT素子を示す断面図である。
【図3B】平面型急激なMIT素子を示す平面図である。
【図4】特定温度で急激なMIT現象を起こす二酸化バナジウム(VO)で製造された急激なMIT素子の温度に対する抵抗のグラフである。
【図5】特定電圧で電流の不連続ジャンプを起こす図4の急激なMIT素子の電圧−電流グラフである。
【図6】図4の急激なMIT素子に電圧を加えつつ測定した電流の温度依存性を示すグラフであり、MIT素子の転移温度は、電圧を印加して制御され、すなわち、プログラム可能であるということを示すグラフである。
【図7】低濃度正孔が添加されたガリウムヒ素(GaAs)で製造された急激なMIT素子で、電圧を加えつつ測定した電流の温度依存性を示すグラフである。
【図8】急激なMIT素子の急激なMIT薄膜に照射される電磁波の強度によって転移電圧が変化することを示す電圧−電流グラフである。
【図9】本発明の一実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサを備えた警報機を示す回路図である。
【図10】本発明の他の実施例による急激なMIT素子を利用した温度センサを備えた警報機を示す回路図である。
【図11】ディップ(DIP)型MIT素子を利用して製作された警報機に係る写真である。
【図12】カン型MIT素子を利用して製作された警報機に係る写真である。
【図13】本発明の一実施例による急激なMIT素子を利用した二次電池爆発防止用回路図である。
【図14】図13の変形例を示す二次電池爆発防止用回路図である。
【図15】図13の他の変形例を示す二次電池爆発防止用回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転移温度または転移電圧で急激な金属−絶縁体転移(MIT:Metal-Insulator Transition)を起こす急激なMIT薄膜と、
前記急激なMIT薄膜にコンタクトする少なくとも2層の電極薄膜とを有し、
前記電極薄膜に印加される電圧、前記急激なMIT薄膜に影響を及ぼす温度、電磁波、圧力及びガス濃度変化のうち少なくともいずれか1つの因子の変化によって前記転移温度または転移電圧が可変する急激なMIT素子。
【請求項2】
前記急激なMIT素子は、前記MIT薄膜を挟んで前記電極薄膜2層が上下に積層された積層型であるか、または前記MIT薄膜両端に前記電極薄膜2層が形成された平面型であることを特徴とする請求項1に記載の急激なMIT素子。
【請求項3】
前記急激なMIT薄膜は、
低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された有機物半導体または絶縁体、低濃度の正孔が添加された半導体、及び低濃度の正孔が添加された酸化物半導体または絶縁体のうち少なくともいずれか一つを含み、前記低濃度の正孔が添加された無機物化合物半導体または絶縁体、前記低濃度の正孔が添加された有機物半導体または絶縁体、前記低濃度の正孔が添加された半導体、前記及び低濃度の正孔が添加された酸化物半導体または絶縁体は、酸素、炭素、半導体元素(III−V族、II−VI族)、遷移金属元素、希土類元素、ランタン系元素のうち少なくともいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の急激なMIT素子。
【請求項4】
前記急激なMIT薄膜は、
二酸化バナジウム(VO)、または低濃度正孔が添加されたガリウムヒ素(GaAs)から形成されたことを特徴とする請求項3に記載の急激なMIT素子。
【請求項5】
前記電磁波は紫外線を含み、
前記MIT素子の転移温度または転移電圧は、前記電磁波を前記急激なMIT薄膜に照射することによって可変させることができることを特徴とする請求項1に記載の急激なMIT素子。
【請求項6】
前記急激なMIT素子は、温度センサ、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ及びスイッチのうち少なくともいずれか一つに利用できることを特徴とする請求項1に記載の急激なMIT素子。
【請求項7】
請求項1に記載の急激なMIT素子を利用して製作されたMITセンサ。
【請求項8】
前記MITセンサは、温度センサ、電磁波検出器、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ、粒子検出器(電子、イオン、宇宙線)及びスイッチのうち少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項9】
前記MITセンサは、前記急激なMIT素子が直列、並列または直列及び並列に連結されるか(アレイセンサ)、
アレイまたはマトリックスの構造に配列されて(アレイセンサ)形成されたことを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項10】
前記MITセンサの前記急激なMIT素子は、
前記急激なMIT薄膜及び電極薄膜が密封材で密封されたディップ(dip)型、または前記急激なMIT薄膜の一定部分が露出されたカン型に形成されたことを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項11】
前記急激なMIT素子は、
前記カン型に製作されるが、前記カン型の開口部には、電磁波を前記急激なMIT薄膜に集光させるためのレンズが形成されていることを特徴とする請求項10に記載のMITセンサ。
【請求項12】
前記電磁波が前記急激なMIT薄膜に照射されることによって、前記急激なMIT素子の転移温度または転移電圧が可変となりうることを特徴とする請求項11に記載のMITセンサ。
【請求項13】
前記MITセンサは、警報信号伝達のために、リレイスイッチを介して、または直ちに警報信号機と電気的に連結されており、
前記MITセンサが温度、圧力、ガス濃度及び電磁波強度のうち少なくともいずれか一つを感知し、基準温度、基準圧力、基準ガス濃度または基準電磁波強度以上である場合に、前記警報信号機を介して警報を発することを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項14】
前記ガス濃度は、酸素、炭素、水素、窒素、塩素及び硫黄元素が含まれたガスのうち少なくともいずれか1つのガス濃度であることを特徴とする請求項13に記載のMITセンサ。
【請求項15】
前記MITセンサは、
前記急激なMIT薄膜の熱を外部に放出するための放熱板を有することを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項16】
前記MITセンサは、
前記急激なMIT素子に印加される電圧を調節するために、前記急激なMIT素子に直列に連結された可変抵抗を備えることを特徴とする請求項7に記載のMITセンサ。
【請求項17】
請求項7に記載のMITセンサと、
前記MITセンサに直列に連結された警報信号機とを備える警報機。
【請求項18】
前記MITセンサは、温度センサ、電磁波検出器、赤外線センサ、イメージセンサ、圧力センサ、及びガス濃度センサ、粒子検出器及びスイッチのうち少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項17に記載の警報機。
【請求項19】
前記MITセンサは、前記急激なMIT素子が直列、並列または直列及び並列に連結されるか、
アレイまたはマトリックスの構造に配列されて形成されたことを特徴とする請求項17に記載の警報機。
【請求項20】
前記MITセンサは、前記アレイまたはマトリックスの構造を介して赤外線を含んだ電磁波を感知し、映像信号を含んだ警報信号を前記警報信号機に伝達することを特徴とする請求項19に記載の警報機。
【請求項21】
二次電池と、
前記二次電池に付着され、前記二次電池の温度を感知して前記二次電池の爆発を防止する請求項7に記載のMITセンサと、
前記二次電池によって電力を供給される回路本体とを備える二次電池の爆発防止回路。
【請求項22】
前記二次電池の一端子は、前記MITセンサの急激なMIT素子の一電極薄膜、四端子リレイスイッチの第1端子及び前記回路本体の一端子に連結され、
前記二次電池の他端子は、前記リレイスイッチの第2端子及び第3端子、及び前記回路本体の他端子に連結され、
前記急激なMIT素子の他電極薄膜は、前記リレイスイッチの第4端子に連結され、
前記二次電池の温度上昇による前記急激なMIT素子の急激なMITによって、前記リレイスイッチの前記第3端子と第4端子との間に急激な電流変化が発生し、前記急激な電流変化によって、前記リレイスイッチの第1端子と第2端子とがターンオンされることにより、前記二次電池の爆発が防止されることを特徴とする請求項21に記載の二次電池の爆発防止回路。
【請求項23】
前記二次電池の一端子と前記急激なMIT素子の一電極薄膜との間に、前記急激なMIT素子の保護または転移温度変更のための可変抵抗が連結され、
前記二次電池の一端子と前記リレイスイッチの第1端子との間に、前記爆発防止回路の短絡防止のためのリレイ抵抗が連結されることを特徴とする請求項22に記載の二次電池の爆発防止回路。
【請求項24】
前記MITセンサは、第1MITセンサ及び第2MITセンサを備え、
前記二次電池の一端子は、前記第1MITセンサの一端子に連結され、前記第1MITセンサの他端子は、前記二次電池の他端子に連結され、四端子リレイスイッチは、前記二次電池と回路本体との間に直列に連結され、前記リレイスイッチを制御する前記第2MITセンサの一端子は、前記二次電池の他端子及びリレイスイッチの第1端子に連結され、前記第2MITセンサの他端子は、前記リレイスイッチの制御入力端子の第2端子に連結され、前記リレイスイッチの第3端子は、グラウンドと連結され、第4端子は、回路本体に連結され、
前記二次電池の温度上昇による前記第2MIT素子の動作によってリレイに流れる電流が遮断されると同時に、第1MIT素子の動作によって電池が放電され、前記二次電池の爆発が防止されることを特徴とする請求項21に記載の二次電池の爆発防止回路。
【請求項25】
前記MITセンサは、第1MITセンサ、第2MITセンサ、及び第3MITセンサを備え、
前記二次電池の一端子は、前記第1MITセンサの一端子に連結され、前記第1MITセンサの他端子は、前記二次電池の他端子に連結され、2個の並列トランジスタが前記二次電池の一端子と回路本体との間に直列に連結され、前記第2MITセンサは、前記2個のトランジスタのうち第1トランジスタのゲート端子と二次電池との間に連結され(放電)、第3MITセンサは、前記2個のトランジスタのうち第2トランジスタのゲート端子と回路本体端子との間に連結され(充電)、
前記二次電池の温度上昇による前記第2MITセンサ、第3MITセンサの動作によってトランジスタに流れる電流が遮断されると同時に、第1MIT素子の動作によって電池が放電されることにより、前記二次電池の爆発が防止されることを特徴とする請求項21に記載の二次電池の爆発防止回路。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−539103(P2009−539103A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513058(P2009−513058)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002614
【国際公開番号】WO2007/142423
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】