説明

性能評価システム

【課題】測位補強システムの性能評価を短時間で効率良く行う。
【解決手段】SBAS受信機24にてSBAS衛星25から受信され、ファイルサーバ22に格納されたSBASメッセージデータファイル23を用いてSBASの性能評価のシミュレーション計算を行う複数の利用者PC10−1〜10−4を有し、複数の利用者PC10−1〜10−4を用いることにより、SBASの性能評価のシミュレーション計算を分散して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SBAS(Satellite Based Augmentation System)等といった測位補強システムの性能をシミュレーション評価する性能評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、増大する航空交通需要に対応するため、国土交通省航空局において、次世代航空保安システムの中核をなす運輸多目的衛星:Multi-functional Transport Satellite(以下、MTSATと称する)を利用した衛星航法システムとして、運輸多目的衛星用衛星航法補強システム:MTSAT Satellite-based Augmentation System(以下、MSASと称する)が整備されている。MSASは、GPS衛星から測位情報を受信して航行しようとする航空機に対し、GPSの精度や信頼性を向上させるための補強情報を、MTSATを中継して提供する。つまり、MSASはMTSATを用いたSBASであり、SBASについては近年様々な検討が進められている(例えば、特許文献1,2参照。)。SBASは、民間航空機の運航に必要な性能を有する衛星航法システムの1つであり、文献AERONAUTICAL TELECOMMUNICATIONS ANNEX10 VOLUME I, ICAO July 1996にて定義されている。MSASの整備と平行し、将来のMSASの性能向上に必要な最適システムの評価、検討を行うため、SVM(Service Value Model)を用いたMSASの評価が行われている。なお、SVMは、文献SERVICE VOLUME MODEL SIMULATION ASSUMPTIONS FOR SBAS PERFORMANCES, IWG Document IWG/SVM/2.0 June-30-2000にて定義されている。
【0003】
図4は、従来のSBAS性能評価システムの一構成例を示す図である。
【0004】
本従来例は図4に示すように、SBAS衛星125からのSBASメッセージを受信するSBAS受信機124と、SBAS受信機124にて受信されたSBASメッセージデータファイル123を格納するファイルサーバ122と、ファイルサーバ122に格納されたSBASメッセージデータファイル123を用いてSVMの計算を実施するSUNワークステーション101と、SUNワークステーション101の計算結果を保存するためのディスクアレイ102及びバックアップ用テープドライブ103と、SUNワークステーション101の計算結果を印刷するプリンタ121とから構成されている。
【0005】
上記のように構成されたSBAS性能評価システムにおいては、SBAS受信機124にて受信されたSBASメッセージデータファイル123を用いてSUNワークステーション101にてSVMの計算が実行され、その計算結果が、ディスクアレイ102またはバックアップ用テープドライブ103にてテープに保存されることになる。
【特許文献1】特開2000−214244号公報
【特許文献2】特開2003−18061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の評価システムにおいては、以下に記載するような問題点がある。
【0007】
(1)SVMはシミュレーションの計算に膨大な時間がかかる(現状、24時間の期間をシミュレーションするのに約24時間必要である)。SVMは主に、将来のSBASの研究のために用いられ、研究では様々なパターンのシミュレーションが必要とされる。できるだけ多くのシミュレーションを短時間で実行できるようにすることが望まれている。
【0008】
(2)現状のSVMは、計算条件を設定した後、計算処理を行い、結果を出力するバッチ処理型、かつ集中処理型のデータ処理方式となっている。このため、計算処理中は待ち時間となり(現状、24時間の期間をシミュレーションするのに約24時間の待ち時間が必要となる)、作業効率が非常に悪い。将来のSBASの研究では長期間のシミュレーションを評価する必要が有り、作業効率の向上が求められている。
【0009】
(3)現状のSVMはワークステーション上で動作している。ワークステーションは、処理速度は速いが高価である。高価であるがゆえに、容易に最新機種へ乗り換えることができず、何年も同じシステムを継続して使い続けなければならないのが実状である。今やハードウェアの処理速度は数年で数倍に向上する時代であり、常に最新のハードウェア上でSVMを動作させ、できるだけ多くのシミュレーションを高速に処理できるようにすることが望まれている。常に最新のハードウェア上でSVMを動作させるためには、導入が容易な安価なハードウェア上でSVMを動作させることが必要である。
【0010】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、測位補強システムの性能評価を短時間で効率良く行うことができる性能評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、
測位補強システムの性能をシミュレーション評価する評価システムであって、
衛星から測位補強メッセージを受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信された測位補強メッセージを格納する格納手段と、
前記格納手段にアクセス可能に構成され、前記格納手段に格納された測位補強メッセージを取得し、該測位補強メッセージを用いて前記測位補強システムの性能評価のシミュレーション計算を行う複数の端末とを有し、
前記複数の端末を用いることにより、前記性能評価のシミュレーション計算を分散して行う。
【0012】
上記のように構成された本発明においては、衛星からの測位補強メッセージが受信手段にて受信されると、受信された測位補強メッセージは格納手段に格納される。そして、格納手段にアクセス可能に構成された複数の端末にて、格納手段に格納された測位補強メッセージが取得され、取得された測位補強メッセージを用いて測位補強システムの性能評価のシミュレーション計算が分散して行われる。
【0013】
本発明においては、ハードウェアとソフトウェアの依存度を少なくし、複数のハードウェア端末へ性能評価ソフトウェアを自由にインストールできるようにすることで、様々なパターンのシミュレーションを同時に実行可能とする。利用可能な端末数に上限はなく、端末数に応じて同時に実行できるシミュレーションの量を増やすことができ、多くのシミュレーションを短時間で実行可能とする。
【0014】
また、性能評価の1つとしてSVMのシミュレーションではシミュレーション条件に、必ず計算期間と計算領域を指定する。計算期間または計算領域の増減は、シミュレーションにかかる処理時間に比例するというSVMの性質から、本発明では、計算期間または計算領域を小分けに分割し、並列して計算を実施し、後から計算結果を合成できるようにすることで、シミュレーションの分散・並列処理を行い、大規模計算を効率的に実施することを可能とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように構成されているので、測位補強システムの性能評価を短時間で効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第1の実施の形態を示す図である。
【0018】
本形態は図1に示すように、SBAS衛星25からの測位補強メッセージであるSBASメッセージを受信するSBAS受信機24と、SBAS受信機24にて受信されたSBASメッセージデータファイル23を格納する格納手段であるファイルサーバ22と、LAN27を介してファイルサーバ22にアクセス可能に構成され、ファイルサーバ22に格納されたSBASメッセージデータファイル123を用いてSVMの計算を実施し、計算結果を表示する複数の端末である利用者PC(Personal Computer)10−1〜10−4と、利用者PC10−1〜10−4における計算結果を印刷するプリンタ21とから構成されている。なお、本形態においては、4台の利用者PC10−1〜10−4が設けられているが、利用者PCの追加・増設は自由に可能である。
【0019】
利用者PC10−1〜10−4は、LAN27を介してファイルサーバ22と通信でき、ファイルサーバ22に格納されたSBASメッセージデータファイル23にアクセスできる。また、LAN27を介してプリンタ21と通信でき、プリンタ21にて印刷出力できる。また、SVMソフトウェアがインストールされている。
【0020】
利用者PC10−1〜10−4にインストールされたSVMソフトウェアは、SVMのシミュレーションを行うための計算条件に「計算期間」及び「計算領域」を指定することができる。SVMソフトウェアは、計算処理後、計算結果ファイル11−1〜11−3を生成する。さらに、SVMソフトウェアは各利用者PC10−1〜10−4に格納されている複数の計算結果ファイル11−1〜11−3を用いて「計算期間」又は「計算領域」を合成した計算結果合成ファイル12を作成できる機能を有する。ここで、SVMのシミュレーションでは、シミュレーション範囲を分けたものを元へ戻す必要はなく、分割した結果それのみで成り立つ性質がある。それを可能とする分割要素がSVMシミュレーションの計算条件に含まれる「期間」と「領域」である。この性質を用いることにより、分散範囲と合成範囲を同じにする必要がなく、分散と合成とを独立した処理で実行することができる。
【0021】
以下に、上記のように構成されたSBAS性能評価用SVMシステムの動作について説明する。
【0022】
SBAS衛星25からのSBASメッセージデータがSBAS受信機24にて受信されると、受信されたSBASメッセージデータは、SBASメッセージデータファイル23としてファイルサーバ22に格納される。
【0023】
その後、利用者PC10−1〜10−4において、ファイルサーバ22にアクセスが行われ、ファイルサーバ22に格納されたSBASメッセージデータファイル23が利用者PC10−1〜10−4に読み込まれる。
【0024】
利用者PC10−1〜10−4においては、シミュレーション計算条件が設定され、読み込まれたSBASメッセージデータを用いてSVMのシミュレーション計算が実行される。
【0025】
SVMのシミュレーション計算を実行した結果は、利用者PC10−1〜10−4内に計算結果ファイル11−1〜11−3として格納される。
【0026】
利用者PC10−1〜10−4が複数存在する場合は、1台の利用者PC毎に異なる計算条件が設定され、異なるSVMのシミュレーション計算が実行されることで、分散・並列処理が可能となる。計算結果は、計算結果ファイル11−1〜11−3を用いて、利用者PC10−1〜10−4の画面に表示出力されたり、プリンタ21にて印字出力されたりする。
【0027】
さらにその後、計算期間または計算領域について計算結果を合成する場合は、任意の利用者PCにおいて、各利用者PC10−1〜10−4に格納されている計算結果ファイル11−1〜11−3がLAN27を介して読み込まれて合成され、計算結果合成ファイル12が生成される。合成された計算結果は、計算結果合成ファイル12を用いて、利用者PC10−1〜10−4の画面に表示出力されたり、プリンタ21にて印字出力されたりする。
【0028】
上述したSBAS性能評価用SVMシステムにおいては、以下に記載するような効果を奏する。
【0029】
複数の利用者PC10−1〜10−4を使用し、異なるシミュレーションを同時に実行することができる。
【0030】
計算期間または計算領域を小分けに指定してシミュレーションを実施し、後から計算結果を合成できることから、計算期間の長いものや計算領域が広い大規模なシミュレーション計算を複数の利用者PC10−1〜10−4を用いて効率的に実行することができる。
【0031】
SVMソフトウェアを利用者PC10−1〜10−4上で動作可能とすることで、ハードウェアを安価に導入することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第2の実施の形態を示す図である。
【0033】
本形態は図2に示すように、第1の実施の形態にて示したものに対して、利用者PC10−1〜10−4がLAN27を介してファイルサーバ22及びプリンタ21と接続されているのではなく、インターネット28を介して接続されている点のみが異なるものである。
【0034】
上記のように構成されたSBAS性能評価用SVMシステムにおいては、利用者PC10−1〜10−4がインターネット28を介してファイルサーバ22及びプリンタ21と接続されているため、利用者の行動範囲を限定することなくSVMシステムを利用することができる。
【0035】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第3の実施の形態を示す図である。
【0036】
本形態は図3に示すように、SBAS衛星25からのSBASメッセージを受信するSBAS受信機24と、SBAS受信機24にて受信されたSBASメッセージデータファイル23を用いてSVMの計算を実施するSVM計算端末15と、インターネット28に接続可能なインターネット端末14と、シミュレーション計算のアルゴリズムの変更を行うアルゴリズム変更装置30とがベンダー1側に設けられ、また、インターネット28に接続可能なインターネット端末13が顧客2側に設けられて構成されている。ベンダー1側のインターネット端末14と顧客2側のインターネット端末13とは、インターネット28を介して接続されており、顧客2はベンダー1が作成したSVMホームページをWebブラウザで閲覧することができ、電子メールを介してベンダー1と連絡をとりあうことができる。また、顧客2はベンダー1より、計算結果CD−ROM31を郵送にて受領する。
【0037】
以下に、上記のように構成されたSBAS性能評価用SVMシステムの動作について説明する。
【0038】
まず、顧客2は、インターネット端末13にて、ベンダー1側で作成したSVMホームページを閲覧し、利用可能なSVMのシミュレーション計算について確認した上で、電子メールで必要な計算条件を指定し、ベンダー1へシミュレーション計算の発注を行う。
【0039】
ベンダー1側は、インターネット端末14にてそれを受け、SBAS受信機24を用いて必要なSBASメッセージデータファイル23を収集し、SVM計算端末15を用いて計算条件に従ったSVMのシミュレーション計算を実行する。
【0040】
なお、計算の価格は、必要な入力データ量及び計算量に応じて決定する。また、顧客2のリクエストに応じてアルゴリズム変更装置30を用いてSVMのシミュレーション計算のアルゴリズムを変更したり、新規作成を行い、アルゴリズムファイル29を作成し、SVM計算端末15へ入力し、新しいアルゴリズムを用いたSVMのシミュレーション計算を実行する。
【0041】
ベンダー1側は、アルゴリズムの複雑さ(例えば、プログラムのライン数)に応じて価格を決定する。SVMのシミュレーション結果は、計算結果CD−ROM31に格納して郵送で顧客2へ発送する。
【0042】
上述したように本形態においては、第1の実施の形態を利用し、付加価値を付けたビジネスモデルであり、利用者の行動範囲及びコンピュータ資源を限定することなくSVMを利用することができる。さらに、本形態においては、利用者はSVMソフトウェア及びハードウェアの改修や保守を意識することなく、SVMを利用したSBASの性能評価及びアルゴリズムの評価に専念することができる。
【0043】
なお、上述した3つの実施の形態においては、測位補強システムとしてSBASを例に挙げ、このSBASの性能をシミュレーション評価するSVMシステムについて説明したが、本発明はこれに限らず、準天頂衛星システムやGBAS(Ground Based Augmentation System)の性能評価にも適用することができる。なお、GBASは、文献AERONAUTICAL TELECOMMUNICATIONS ANNEX10 VOLUME I, ICAO July 1996にて定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第2の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の性能評価システムとなるSBAS性能評価用SVMシステムの第3の実施の形態を示す図である。
【図4】従来のSBAS性能評価システムの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ベンダー
2 顧客
10−1〜10−4 利用者PC
11−1〜11−3 計算結果ファイル
12 計算結果合成ファイル
13,14 インターネット端末
15 SVM計算機
21 プリンタ
22 ファイルサーバ
23 SBASメッセージデータファイル
24 SBAS受信機
25 SBAS衛星
26 GPS衛星
27 LAN
28 インターネット
29 アルゴリズムファイル
30 アルゴリズム変更装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位補強システムの性能をシミュレーション評価する評価システムであって、
衛星から測位補強メッセージを受信する受信手段と、
前記受信手段にて受信された測位補強メッセージを格納する格納手段と、
前記格納手段にアクセス可能に構成され、前記格納手段に格納された測位補強メッセージを取得し、該測位補強メッセージを用いて前記測位補強システムの性能評価のシミュレーション計算を行う複数の端末とを有し、
前記複数の端末を用いることにより、前記性能評価のシミュレーション計算を分散して行う性能評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の性能評価システムにおいて、
前記複数の端末は、前記格納手段に格納された測位補強メッセージについて、指定された期間についてのシミュレーション計算を行うことを特徴とする性能評価システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の性能評価システムにおいて、
前記複数の端末は、前記格納手段に格納された測位補強メッセージについて、指定された領域についてのシミュレーション計算を行うことを特徴とする性能評価システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の性能評価システムにおいて、
前記複数の端末は、分散して行われたシミュレーション計算の結果を合成することを特徴とする性能評価システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の性能評価システムにおいて、
前記複数の端末は、インターネットを介して前記格納手段にアクセス可能であることを特徴とする性能評価システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の性能評価システムにおいて、
前記複数の端末は、パーソナルコンピュータであることを特徴とする性能評価システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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