説明

悪性哺乳動物細胞および形質転換哺乳動物細胞に対して選択的に致死性を有するペプチド

【課題】膜貫通リーダー配列と融合する場合、悪性細胞および形質転換細胞に対し選択的致死性を有する、ヒトp53のアミノ酸残基12−26の全部または一部に対応するペプチドを含む組成物を提供する。該ペプチドは、動物、好ましくはヒトにおいて新生物疾患を処置するのに有用である。そのカルボキシ末端において膜貫通リーダー配列と融合した対象ペプチドを投与することにより、患者の新生物疾患を処置する方法をまた提供し、インビトロでの悪性細胞、形質転換細胞もしくは新生物細胞を殺すことにおける対象ペプチドの有効性レベルを評価する方法も提供する
【解決手段】対象ペプチドのタンパク質分解を減らすために、1つ以上のD−アミノ酸は、対象ペプチドのp53部分および/または膜貫通リーダー配列において、対応するL−アミノ酸と置換することができ、さらに、対象ペプチドがタンパク質分解を受けにくくするために、擬似ペプチド結合またはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合は、p53配列または膜貫通リーダー配列のいずれかまたは両方において、ペプチド結合と置換することができ、さらに、対象ペプチドの膜貫通リーダー配列およびp53部分は、レトロ−インベルソ異性体および部分修飾レトロ−インベルソ異性体を含むことができる。このような異性体は、タンパク質分解の影響をあまり受けず、従って半減期を長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生物疾患の処置のための治療モダリティに関する。より具体的には、本発明は、悪性細胞および形質転換細胞を選択的に破壊する合成ペプチド、およびそれに基づく新生物疾患の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p53タンパク質は、細胞サイクルの肝要なレギュレーターである。一部、有糸分裂を誘発するタンパク質の転写をブロックすることによって、および有糸分裂をブロックし、アポトーシスを促進するタンパク質の転写を誘発することによって、p53タンパク質は、有糸分裂を誘発する多くの腫瘍誘発遺伝子タンパク質の発ガン性効果をブロックする。p53タンパク質の欠如は、細胞形質転換および悪性疾患と関係する。[非特許文献1]。
【非特許文献1】Haffner,R & Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0003】
p53タンパク質分子は、393個のアミノ酸でできている。それは、残基93−313からなるDNA−結合ドメインにおけるDNAの特異的配列に結合するドメインを含んでいる。この領域の結晶構造は、X線結晶構造解析によって決定された。残基312−393は、p53タンパク質のホモテトラマーの形成に関与する。残基1−93は、活性の調節およびp53タンパク質の半減期に関与する。
【0004】
p53タンパク質は、別の重要な調節タンパク質MDM−2タンパク質に結合する。MDM−2タンパク質をコード化するMDM−遺伝子は、公知の腫瘍誘発遺伝子である。MDM−2タンパク質は、p53タンパク質と複合体を形成し、そしてそれはユビキネーション(ubiquination)経路によるp53タンパク質の分解をもたらす。p53タンパク質は、p53タンパク質の残基14−22を含むアミノ酸配列を使ってMDM−2タンパク質に結合し、そしてそれは不変である。p53タンパク質の全部のMDM−2タンパク質結合ドメインは、残基12−26に及ぶ。[非特許文献2]。
【非特許文献2】Haffner,R & Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90
【0005】
MDM−2タンパク質が、公知の腫瘍誘発遺伝子の発現生成物であることを考慮すれば、MDM−2タンパク質が非常に重要な調節タンパク質であることは驚くべきことではない。さらに、MDM−2タンパク質の過剰発現または増幅は、ヒトの胸腫瘍の50%を含めて、ヒトの悪性腫瘍の40〜60%に見いだされた。p53タンパク質とMDM−2タンパク質との間の複合体の形成は、p53タンパク質の活性ドメイン、またはそれの中のDNA結合部位の活性ドメインをブロックすることによって、p53タンパク質の転写活性の抑制およびそれによるその分子の抗腫瘍性効果の抑制をもたらし得ることが示唆されている。より一般的には、これらおよび他の実験的観察は、p53タンパク質の抗腫瘍性効果が、p53タンパク質にMDM−2タンパク質が結合することを妨害することができるペプチドによって促進することができることを示唆していると解釈されている。実際、多くの研究者が、MDM−2/p53複合体が合理的な薬剤デザインのための標的であり得ることを示唆している。例えば、[非特許文献3]、および[特許文献1](Picksleyら)を参照のこと。
【非特許文献3】Christine Wasylyk et al.,“p53 Mediated Death of Cells Overexpressing MDM2 by an Inhibitor of MDM2 Interaction with p53”,Oncogene,18,1921−34(1999)
【特許文献1】米国特許第5,770,377号
【0006】
進化は、天然に存在するタンパク質においてLアミノ酸がほとんど排他的に存在していることを確証している。従って、事実上、全てのプロテアーゼは、隣接したLアミノ酸の間のペプチド結合を切断する。そのため、D−アミノ酸で構成された人工のタンパク質またはペプチドは、タンパク分解性破壊に対して概して抵抗性を有する。例えば、[特許文献2]参照。血清プロテアーゼは、特異性基質要件を有する。プロテアーゼが切断するためには、基質は、Lアミノ酸およびペプチド結合の両方を有しなくてはならない([非特許文献4])。
【特許文献2】米国特許出願第10/399,127号
【非特許文献4】Power et al.,1993 Phermaceutical Res.10:1268−1273
【0007】
線形修飾レトロペプチド構造は、上記文献に見られ、そして用語「レトロ異性体」は、配列の方向が親ペプチドと比較して逆である異性体を包含すると規定されている。例えば、[非特許文献5]および[特許文献3](Bonny)を参照のこと。配列の方向が反対であり、そして各アミノ酸残基のキラリティーが逆であるレトロ−インベルソ異性体もまた、上記文献で見られる。
【非特許文献5】Goodman,M. et al.,“On the Concept of Linear Modified Retro−Peptide Structures”,Acc.of Chem.Res.,12(1),1−7(1979)
【特許文献3】米国特許出願第10/399,127号
【0008】
報告されるところによれば、Jamesonらは、最近、これらの2つの特性(逆合成およびキラリティー変更)を組み合わせることによって、CD4レセプターのヘアピンループのアナログを設計した。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献6]および[非特許文献7]。D−鏡像体および逆合成を組み合わせることの最終結果は、それぞれのアミド結合におけるカルボニル基およびアミノ基の位置が交換されるということであり、一方、それぞれのα炭素における側鎖基の位置は維持される。Jamesonらは、報告するところによれば、それらの逆Dペプチドに対する生体活性の増加を実証し、そのことは、タンパク質分解に対するその感受性に起因して、その従来の全−L鏡像体のインビボ活性を限定することと対照をなす。
【非特許文献6】Jameson et al.,“A rationally designed CD4 analogue inhibits experimental allergic encephalomyelitis”,Nature,368,744−746(1994)
【非特許文献7】Brady,L. et al.,“Reflections on a Peptide”,Nature,368,692−693(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続アミノ酸を含んでいるペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体を提供する。ここで、当該ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する。
【0010】
このようなペプチドの例としては、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)またはそのアナログもしくはその誘導体、PPLSQETFS(配列番号2)またはそのアナログもしくはその誘導体、およびETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログもしくはその誘導体が挙げられる。細胞膜を通って輸送され、そして悪性細胞または形質転換細胞を選択的に殺すために、リーダー配列は、好ましくは、ペプチド、そのアナログもしくはその誘導体のカルボキシル末端に置かれる。好ましくは、リーダー配列は、主に正帯電アミノ酸残基を含む。本発明に従って使われ得るリーダー配列の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ペネトラチン(KKWKMRRNQFWVKVQRG)(配列番号4);(Arg)(配列番号26)または(R)−(R)16(配列番号27)からの任意のpoly−R;HIV−1 TAT(47−60)(YGRKKRRQRRRPPQ)(配列番号5);D−TAT(GRKKRRQRRRPPQ)(配列番号6);R−TAT G(R)PPQ(配列番号7);SV40−NLS(PKKKRKV)(配列番号8);ヌクレオプラスミン−NLS(KRPAAIKKAGQAKKKK)(配列番号9);HIV REV(34−50)−(TRQARRNRRRRWRERQR)(配列番号10);FHV(35−49)コート−(RRRRNRTRRNRRRVR)(配列番号11);BMV GAG(7−25)−(KMTRAQRRAAARRNRWTAR)(配列番号12);HTLV−II REX4−16−(TRRQRTRRARRNR)(配列番号13);CCMV GAG(7−25)−(KLTRAQRRAAARKNKRNTR)(配列番号14);P22 N(14−30)(NAKTRRHERRRKLAIER)(配列番号15);LAMBDA N(1−22)(MDAQTRRRERRAEKQAQWKAAN)(配列番号16);Phi N(12−29)(TAKTRYKARRAELIAERR)(配列番号17);酵母PRP6(129−124)(TRRNKRNRIQEQLNRK)(配列番号18);ヒトU2AF(SQMTRQARRLYV)(配列番号19);ヒトC−FOS(139−164)KRRIRRERNKMAAAKSRNRRRELTDT(配列番号20);ヒトC−JUN(252−279)(RIKAERKRMRNRIAASKSRKRKLERIAR)(配列番号21);酵母GCN4(KRARNTEAARRSRARKLQRMKQ)(配列番号22);KLALKLALKALKAALKLA(配列番号23);p−vecLLIILRRRIRKQAKAHSK(配列番号24)。好ましくは、アンテナペディアタンパク質の貫通リーダー配列の正帯電リーダー配列が使われる。
【0011】
上述の対象ペプチドのいずれかが、それに対してなされる特異性変化を有し得、そしてその変化は、ペプチドをタンパク質分解に影響されないようにすることを、本発明はさらに意図している。例えば、対象ペプチドは、イソスター擬似ペプチド結合またはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換された1つ以上のペプチド結合を有し得る。本発明の別の実施形態においては、対象ペプチドは、天然p53タンパク質の対応する部分の方向ペプチド異性体であり得る。本発明のこの実施形態においては、エナンチオペプチド、レトロ−インベルソペプチド、そして部分修飾レトロ−インベルソペプチドが特に意図されている。
【0012】
よって本発明は、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する上述の対象ペプチド、そのアナログもしくはその誘導体を提供する。そのペプチドは、1つ以上のD−アミノ酸を含み、またはイソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換された少なくとも1つのペプチド結合を有している。
【0013】
例えば、D−アミノ酸は、対象ペプチドのN末端に位置することができる。N末端D−アミノ酸が存在することで、ペプチドの安定性は増す。これは、N末端残基に作用するエキソペプチダーゼは、D−アミノ酸を基質として利用することができないからである。別の実施形態においては、D−アミノ酸は、対象ペプチドのC末端に位置することができる。C末端D−アミノ酸が存在することでもまた、ペプチドを安定化させる。これは、C末端残基に作用するエキソペプチダーゼは、D−アミノ酸を基質として利用することができないからである。
【0014】
特に、アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の内の少なくとも6つの連続アミノ酸を含んでいるペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体が提供される。ここで、当該ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、膜貫通リーダー配列と融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する。そして少なくとも1つのアミノ酸がD型であるか、または1つ以上のペプチド結合が、イソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換される。その例としては、アミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)、ETFSDLWKLL(配列番号3)を含むペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体が挙げられる。
【0015】
別の実施形態においては、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する対象ペプチド、そのアナログまたはその誘導体は、p53タンパク質に見られる天然の配列と逆順序で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。このようなペプチドは、本明細書中においてレトロ−インベルソ(RI)ペプチドと呼ばれる。
【0016】
例えば、アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の逆順序で組み立てられる少なくとも6つの連続D−アミノ酸を含んでいるレトロ−インベルソ(RI)ペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体であって、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有するものが提供される。好ましい実施形態において、ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)の逆順序で組み立てられた少なくとも6つの連続D−アミノ酸を含んでいる。
【0017】
p53配列の一部のみが逆(retro−inverted)にされた部分修飾レトロ−インベルソ(PMRI)ペプチドもまた、提供される。例えば、D型のアミノ酸の一部のみを有して、そして配列番号1に示されたアミノ酸配列の逆順序で組み立てられた少なくとも6つのアミノ酸を含んでいるペプチドが提供される。好ましい実施形態においては、少なくとも6つのD−アミノ酸の一部は、配列PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログもしくはその誘導体の逆順序で組み立てられる。
【0018】
1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはインベルソ擬似ペプチド結合を含んでいる前述のペプチドの内のいずれかにおいて、または前述のレトロ−インベルソペプチドもしくは部分修飾レトロ−インベルソペプチドのいずれかにおいて、膜貫通リーダー配列もまた、1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはインベルソ擬似ペプチド結合を含むことができる。
【0019】
別の本発明の実施形態においては、膜貫通リーダー配列は、それ自身、レトロ−インベルソペプチド異性体、または部分修飾レトロ−インベルソペプチド異性体である。レトロ−インベルソ型の膜貫通リーダー配列は、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示される配列のいずれかと逆順序で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。部分修飾レトロ−インベルソ型の膜貫通リーダー配列は、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示される配列のいずれかと逆順序のD型アミノ酸残基の一部を有している。
【0020】
薬学上受容できる担体と混合される対象ペプチドの内の少なくとも1つを含んでいる薬剤組成物もまた提供される。このような薬剤組成物はまた、1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合を含有している対象ペプチドのいずれかを含むことができ、対象のレトロ−インベルソペプチドまたは部分修飾レトロ−インベルソペプチドのいずれかもまた含むことができる。さらに、被検体の新生物疾患を処置するための方法、すなわち、選択的に被検体の悪性腫瘍または新生物性細胞を殺す方法が提供される。1つの実施形態において、その方法は、アミノ酸の配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも1つの約6つの連続アミノ酸を含んでいる治療有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を被検体に投与することを含む。ここで、当該ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、そのカルボキシ末端において膜貫通リーダー配列と融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する。別の実施形態においては、その方法は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3に示される配列を有する治療有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を被検体に投与することを含む。ここで、膜貫通リーダー配列は、ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体のカルボキシ末端に融合する。
【0021】
その方法のさらなる実施形態では、1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合、またはレトロ−インベルソペプチドもしくは部分修飾レトロ−インベルソペプチド、を有している治療有効量の対象ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を被検体に投与することを含む。ここで、膜貫通リーダー配列は、ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体のカルボキシ末端に融合する。
【0022】
インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞を殺すことにおける対象ペプチドの有効性を評価する方法もまた提供される。その方法は、少なくとも1つの対象ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、ならびに生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいて、ペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない(通常)細胞の増殖へのその影響を評価する工程を含む。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、悪性細胞および形質転換細胞は、p53タンパク質内のアミノ酸配列および単一の連続したポリペプチド鎖としてのリーダー配列を含んでいる合成ペプチドを投与することによって、選択的に破壊されることが見いだされた。この作用のメカニズムは、MDM−2タンパク質に結合しているp53タンパク質からは独立していると考えられる。なぜなら、p53ペプチドは、p53タンパク質を全く生産しない形質転換細胞を選択的に殺すからである。p53ペプチドはまた、通常細胞を殺すことなしに、標準レベルまたは高いレベルのp53タンパク質を発現する悪性細胞および形質転換細胞を選択的に殺す。
【0024】
本発明によれば、ヒトp53のアミノ酸残基12−26の全部または一部に対応しているペプチドを含んでいる組成物が提供される。この領域は、mdm−2タンパク質と接触することが知られており、そしてmdm−2に結合されている場合、α−ヘリックス構造を取る。カルボキシ末端において膜貫通リーダー配列と融合する場合、対象ペプチドは、悪性ヒト細胞および形質転換ヒト細胞を選択的に殺す。
【0025】
本発明の第1の態様においては、次のアミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続アミノ酸を含んでいるペプチドが提供される。ここで、少なくとも約6つの連続アミノ酸を含んでいるペプチドは、リーダー配列に融合させられる。好ましくは、ペプチドは、少なくとも約8個から少なくとも約15個のアミノ酸残基を含んでいる。好ましい実施形態においては、配列番号1での配列の少なくとも約8個から少なくとも約15個のアミノ酸を含んでいるペプチドは、次のアミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)を有する。別の好ましい実施形態においては、配列番号1に示された配列の少なくとも約8個から少なくとも約15個のアミノ酸を含んでいるペプチドは、次のアミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)を有する。さらに別の好ましい実施形態においては、配列番号1で示された配列の少なくとも約8個から少なくとも約15個のアミノ酸を含んでいるペプチドは、次のアミノ酸配列:ETFSDLWKLL(配列番号3)を有する。
【0026】
本発明のペプチドを細胞の中に組み込むように機能するリーダー配列は、様々なソースから得ることができる。好ましくは、リーダー配列は、主に正帯電のアミノ酸残基を含んでいる。これは、正帯電リーダー配列は、対象ペプチドのα−ヘリックスを安定させるからである。本発明のペプチドと結合できるリーダー配列の例は、[非特許文献8]に記載されており、その例としては、以下に限定されないが、次の膜貫通リーダー配列(多くの場合、タンパク質のリーダー配列を構成しているアミノ酸残基の番号が、タンパク質の名前の直ぐ後に挿入して示される。)が挙げられる:
ペネトラチン(KKWKMRRNQFWVKVQRG)(配列番号4);(Arg)(配列番号26)もしくは(R)−(R)16からの任意のポリ−R(配列番号27);HIV−I TAT(47−60)(YGRKKRRQRRRPPQ)(配列番号5);D−TAT(GRKKRRQRRRPPQ)(配列番号6);R−TAT G(R)PPQ(配列番号7);SV40−NLS(PKKKRKV)(配列番号8);ヌクレオプラスミン−NLS(KRPAAIKKAGQAKKKK)(配列番号9);HIV REV(34−50)−(TRQARRNRRRRWRERQR)(配列番号10);FHV(35−49)コート−(RRRRNRTRRNRRRVR)(配列番号11);BMV GAG(7−25)−(KMTRAQRRAAARRNRWTAR)(配列番号12);HTLV−II REX 4−16−(TRRQRTRRARRNR)(配列番号13);CCMV GAG(7−25)−(KLTRAQRRAAARKNKRNTR)(配列番号14);P22 N(14−30)(NAKTRRHERRRKLAIER)(配列番号15);LAMBDA N(1−22)(MDAQTRRRERRAEKQAQWKAAN)(配列番号16);Phi N(12−29)(TAKTRYKARRAELIAERR)(配列番号17);酵母PRP6(129−124)(TRRNKRNRIQEQLNRK)(配列番号18);ヒトU2AF(SQMTRQARRLYV)(配列番号19);ヒトC−FOS(139−164)KRRIRRERNKMAAAKSRNRRRELTDT(配列番号20);ヒトC−JUN(252−279)(RIKAERKRMRNRIAASKSRKRKLERIAR)(配列番号21);酵母GCN4(KRARNTEAARRSRARKLQRMKQ)(配列番号22);KLALKLALKALKAALKLA(配列番号23);p−vec LLIILRRRIRKQAKAHSK(配列番号24)。他の膜貫通リーダー配列もまた、使用することができる。このような配列は、広く入手することが可能であり、例えば、以下に記載されている:[非特許文献9]および[非特許文献10]。
【非特許文献8】Futaki,S.ら(2001)Arginine−Rich Peptides,J.Biol.Chem.276,:5836−5840
【非特許文献9】Scheller et al.,(2000)Eur.J.Biochem.267:6043−6049
【非特許文献10】Elmquist et al.,(2001)Exp.Cell Res.269:237−244
【0027】
好ましくは、アンテナペディアタンパク質の貫通リーダー配列の正帯電リーダー配列が使用される。このリーダー配列は、次のアミノ酸配列:KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)を有する。好ましくは、このリーダー配列は、p53ペプチドのカルボキシル末端に結合させ、合成ペプチドが、形質転換細胞および悪性細胞を殺すことができるようにする。
【0028】
タンパク分解への感受性を減らすために、上述の対象ペプチド、すなわち配列番号1〜3(p53ペプチド)または配列番号4〜25もしくは26〜27(膜貫通リーダー配列)のいずれかは、1つ以上のD型アミノ酸を含むことができ、および/または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくは1つ以上のレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合を含むことができる。そのため、例えば、対象ペプチドの1つのみのアミノ酸または全てのアミノ酸までもがD型であることが可能である。好ましくは、D−アミノ酸は、対象ペプチドのN末端に位置する。このような位置は、ペプチドがN末端残基に作用するエキソペプチダーゼにさらに低感度となるようにする。なぜなら、このようなエキソペプチダーゼは、D−アミノ酸を基質として利用することができないからである。D−アミノ酸はまた、膜貫通リーダー配列のC末端に位置することもできる。そしてその配列は、そのカルボキシ末端においてp53ペプチドと融合する。このようなD−アミノ酸の位置は、ペプチドを安定させるのを助ける。これは、C末端残基に作用しているエキソペプチダーゼは、D−アミノ酸を基質として利用することができないからである。
【0029】
あるいは、本発明の対象ペプチドは、逆配列だけでなく、D−アミノ酸全ても含んでいるレトロ−インベルソペプチド(RI)として合成することができる。この実施形態においては、ペプチドは、逆配列および全ての不斉中心における逆の立体配置の両方を含んでいる。
【0030】
さらに別の実施形態においては、対象ペプチドは、p53の配列または膜貫通リーダー配列の一部のみが逆になっている部分修飾レトロ−インベルソペプチド(PMRI)として合成することができる。例えば、D型のアミノ酸の一部のみを有し、そして逆順序で組み立てられた少なくとも6つのアミノ酸を含んでいるペプチドが提供される。
【0031】
特に、アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも6つの連続アミノ酸を含んでいるペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体が提供される。ここで、当該ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有する。そして少なくとも1つのアミノ酸は、D型であり、または1つ以上のペプチド結合は、イソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換される。その例としては、アミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)、ETFSDLWKLL(配列番号3)を含むペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体が挙げられる。
【0032】
別の実施形態においては、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有するペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体は、p53タンパク質に見られる天然の配列と逆順序で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。このようなペプチドは、本明細書中においてレトロ−インベルソ(RI)ペプチドと呼ばれる。
【0033】
例えば、アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の逆順序で組み立てられる少なくとも6つの連続D−アミノ酸を含んでいるレトロ−インベルソ(RI)ペプチド、またはそのアナログもしくはその誘導体であって、膜貫通リーダー配列に融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有するものが提供される。好ましい実施形態において、ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、アミノ酸配列PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)の逆順序で組み立てられた少なくとも6つの連続D−アミノ酸を含んでいる。
【0034】
p53配列の一部のみが逆にされた部分修飾レトロ−インベルソ(PMRI)ペプチドもまた、提供される。例えば、D型のアミノ酸の一部のみを有して、そして配列番号1に示されたアミノ酸配列の逆順序で組み立てられた少なくとも6つのアミノ酸を含んでいるペプチドが提供される。好ましい実施形態においては、少なくとも6つのD−アミノ酸の一部は、配列PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)またはそのアナログもしくはその誘導体の逆順序で組み立てられる。
【0035】
1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはインベルソ擬似ペプチド結合を含んでいる前述のペプチドの内のいずれかにおいて、または前述のレトロ−インベルソペプチドもしくは部分修飾レトロ−インベルソペプチドのいずれかにおいて、膜貫通リーダー配列は、細胞膜を通り抜け、そして特に、悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を殺すために、ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体のカルボキシル末端の終端に位置している。しかし、p53ペプチドのN末端に膜貫通リーダー配列を有しているペプチドは、本明細書中で記述されたインビトロ実験のような種々の実験におけるコントロールペプチドとして有用である。さらに、膜貫通リーダー配列はまた、1つ以上のD−アミノ酸または1つ以上のイソスター擬似ペプチド結合もしくはインベルソ擬似ペプチド結合を含むことができる。
【0036】
別の本発明の実施形態においては、膜貫通リーダー配列は、それ自身、レトロ−インベルソペプチド異性体、または部分修飾レトロ−インベルソペプチド異性体である。レトロ−インベルソ型の膜貫通リーダー配列は、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示される配列のいずれかと逆順序で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。部分修飾レトロ−インベルソ型の膜貫通リーダー配列は、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示される配列のいずれかと逆順序のD型アミノ酸残基の一部を有している。
【0037】
RIペプチドおよびPMRIペプチドの合成は、結果として2つの非アミノ酸残基を新たに形成した異性体に導入することをもたらす。その残基は、それぞれ形質転換配列のアミノ側およびカルボキシ側におけるgem−ジアミノアルキル(gXaa)残基および2−アルキルマロニル(mXaa)残基である。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献11],(この全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる)。[非特許文献12]に記載されているように、方向変換残基を含まない立体化学ペプチド異性体および方向ペプチド異性体は、合成が困難であることを示さない。このようなペプチドは、適切なNα−および側鎖保護されたLアミノ酸およびDアミノ酸を使った固相ペプチド合成方法を用いて得ることができる。[非特許文献13]を参照のこと。[非特許文献12]Fischer,P.M.(2003)および[非特許文献13]Chanら(2000)の両方は、その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【非特許文献11】Scheibler,L. & Chorev,M.(2003)In Synthesis of Peptides and Peptidomimetics(Houben−Weyl Methods of Organic Chemistry,第4版,Vol.22C)(Goodman,M.,編),528−551頁,Thieme,Stuttgart
【非特許文献12】Fischer,P.M.(2003)“The Design,Synthesis and Application of Stereochemical and Directional Peptide Isomers:A Critical Review”Current Protein and Peptide Sequence 4:339−356
【非特許文献13】Chan et al.,(2000)Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis:a Practical Approach,Oxford University Press
【0038】
しかし、PMRIペプチドの合成は、方向反転するgXaa残基およびmXaa残基の側面に位置する様々なタイプおよび数のアミノ酸残基のためにいっそう困難である。ただし、Fischer,P.M.(2003)は、本発明のPMRIペプチドを合成することにおいて使用するためのペプチドアセンプリだけでなく、gXaaモノマーおよびmXaaモノマーの調製のための応用スキームも提供している。
【0039】
構造上関係するアミノ酸配列は、本発明の実施において配列番号1、2、3、または4で示される開示された配列と置換することができる。そのアナログまたは誘導体を含めた配列番号1、2または3に示された配列のいずれかが、リーダー配列(例として、配列番号4が挙げられるが、これに限定されない。)と結合する場合、本明細書中において「合成ペプチド」と記される。これらの合成ペプチドの3次元構造を模倣する堅固な分子は、ペプチドミメティックスと呼ばれ、そして本発明の範囲の中にまた含まれている。p53ペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシル端末のいずれかもしくは両方におけるαヘリックス安定化アミノ酸残基は、それがMDM−2タンパク質に結合している場合、p53タンパク質のこの領域の構造であることが知られているαヘリックス構造を安定させるために加えることができる。αヘリックス安定化アミノ酸残基の例としては、Leu、Glu(特にヘリックスのアミノ末端の上において)、Met、およびPheが挙げられる。
【0040】
本発明のペプチドのアミノ酸挿入誘導体は、単一または多数のアミノ酸配列内の挿入だけでなく、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合を含んでいる。挿入アミノ酸配列変異体は、1つ以上のアミノ酸残基が、対象ペプチド中の所定の部位に導入されるものである。しかし、ランダムな挿入もまた、得られた生成物の適切なスクリーニングで可能である。欠損変異体は、1つ以上のアミノ酸を対象ペプチドの配列から取り除くことによって作ることができる。置換アミノ酸変異体は、配列中の少なくとも1つの残基が取り除かれ、その場所に異なった残基が挿入されたものである。一般的な置換は、以下の表1のとおりに作られたものである。
【0041】
【表1】

【0042】
合成ペプチドがアミノ酸置換によって誘導体化される場合、アミノ酸は、一般に、疎水性、親水性、電気陰性度、大きい側鎖などのような同様の特性を有する他のアミノ酸によって置換される。本明細書中で使われる用語「誘導体」、「類似体」、「アナログ」、「フラグメント」、「部分」および「同様の分子」は、配列番号1、2、3、または4に示したアミノ酸配列を有し、当該の誘導体、アナログ、部分、または同様の分子が、形質転換細胞または新生物細胞に浸入し、選択的に殺す能力を維持する限り、アミノ酸の置換、挿入、付加または除去を伴う対象ペプチドを意味する。
【0043】
本発明の合成ペプチドは、多くの公知の技法により合成することができる。例えば、ペプチドは、最初にMerrifield(1963年)によって[非特許文献14]において記述された固相技法を使って調製することができる。他のペプチド合成技法は、[非特許文献15]および当業者が容易に入手できる他の参考文献に見出すことができる。ペプチド合成技法の概説は、[非特許文献16]に見出すことができる。ペプチドはまた、[非特許文献17]に記載されている溶液法によって合成することもできる。様々なペプチド合成における使用に適した保護基は、上記の文献ならびに[非特許文献18]に記載されている。本発明のペプチドはまた、p53タンパク質のより大きい部分から、またはp53タンパク質の全長から化学的切断または酵素切断によって調製することができる。同様に、本発明の合成ペプチドにおける使用のためのリーダー配列は、このようなリーダー配列がそれから得られるタンパク質の全長またはより大きい部分から化学的切断または酵素切断によって調製することができる。
【非特許文献14】Merrifield(1963年)、J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154
【非特許文献15】M.Bodanszky et al., Peptide Synthesis,John Wiley and Sons,第2版,(1976)
【非特許文献16】J.Sturart & J.S.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Company,Rockford,III,(1984)
【非特許文献17】The Proteins,Vol.II,第3版,Neurath,H. et al.,編,105−237頁,Academic Press,ニューヨーク,N.Y.(1976)
【非特許文献18】J.F.W.McOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,ニューヨーク,N.Y.(1973)
【0044】
さらに、本発明のペプチドはまた、組換えDNA技法によって調製することができる。タンパク質を構築するために使われる大部分のアミノ酸に関して、1以上のコード化ヌクレオチドのトリプレット(コドン)は、特定のアミノ酸残基に対しコード化することができる。遺伝情報のこの特性は、冗長性として公知である。従って、多くの様々な異なったヌクレオチド配列は、悪性哺乳動物細胞、形質転換哺乳動物細胞に選択的に致死性を有する特定の対象ペプチドに対してコード化することができる。本発明はまた、遺伝子コード化を規定するデオキシリボ核酸(DNA)分子、すなわち、そこから本発明のペプチドを酵素で、または化学的に切断することができる対象ペプチドまたはキメラペプチドを発現することができるDNA分子もまた意図されている。
【0045】
1つ以上のD型アミノ酸を有している対象ペプチドは、天然Lアミノ酸の代わりに1つ以上のD−アミノ酸をペプチド鎖に組み込むことによって合成することができる。線形D型ペプチドの合成は、自動手順による合成を含めたペプチド合成の従来のプロトコルを使って調製することができる。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献19]。
【非特許文献19】Scheibler,L. & Chorev,J.(2003)In Synthesis of Peptides and Peptidomimetrics(Houben−Weyl Methods of Organic Chemistry,第4版,Vol.22C)(Goodman,M.,編),528−551頁,Thieme,Stuttgart
【0046】
還元されたイソスター擬似ペプチド結合は、わずかな生体活性の損失で、または全く生体活性を損失しないで、タンパク分解切断に対する安定性を向上させる擬似ペプチド結合である。そのため、対象ペプチドは、1つ以上のペプチド結合がイソスター擬似ペプチド結合で置換されていることを除いて、配列番号1〜3(p53ペプチド)のいずれか、または配列番号4〜24もしくは26〜27(膜貫通リーダー配列)のいずれかに示されたアミノ酸配列を有するLアミノ酸ペプチドと同一であり得る。1つ以上の還元イソスター擬似ペプチド結合でペプチドを合成する方法は、当技術分野で周知である。以下を参照のこと:[非特許文献20](その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。)。
【非特許文献20】Couder et al.,(1993)Int.J.Peptide Protein Res.41:181−184
【0047】
ペプチド結合はまた、レトロインベルソ擬似ペプチド結合で置換することができる。そのため、対象ペプチドは、1つ以上のレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合がペプチド結合と置換していることを除いて、配列番号1〜3(p53ペプチド)または配列番号4〜24もしくは26〜27(膜貫通リーダー配列)のいずれかに示されるアミノ酸配列を有しているLアミノ酸ペプチドと同一であり得る。1つ以上のレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合を有するペプチドを合成するための手順は、既存の文献から得ることができる。例えば、以下を参照のこと:
[非特許文献21](その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。)。
【非特許文献21】Dalpozzo et al.,(1993)In.J.Peptide Protein Res.41:561−566
【0048】
対象RIペプチドは、D−アミノ酸を使って、そしてレトロ−インベルソペプチドアナログにおけるアミノ酸配列が、モデルの役割をする選択されたペプチドの配列と正反対であるように、ペプチド鎖の中にアミノ酸を結合させることで、合成することができる。よって、配列番号1に示されるペプチドのレトロ−インベルソペプチドは、次の配列:LLKWLDSFTEQSLPP(配列番号28)で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。配列番号2に示されるペプチドのレトロ−インベルソペプチドは、次の配列:SFTEQSLPP(配列番号29)で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。配列番号3に示されるペプチドのレトロ−インベルソペプチドは、次の配列:LLKWLDSFTE(配列番号30)で組み立てられたD−アミノ酸全てを含んでいる。
【0049】
レトロ−インベルソペプチドは、Fmoc−2,4−ジメチルオキシ−4’&(カルボキシメチルオキシ)−ベンズヒドリルアミン樹脂におけるFmoc化学によって合成することができる。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献22](その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。)。
【非特許文献22】Briand,J.P. et al.,(1995)“Retro−Inverso peptidomimetics as a new immunological probe:validation and application to the detection of autoantibodies in rheumatic diseases”.J.Biol Chem.270,11921−11926
【0050】
レトロ−インベルソのペプチドのNH−末端は、アセチル化することができる。酸切断の後に、粗ペプチドは、分取HPLC装置を使ったカラムクロマトグラフィーのような標準的な方法によって精製することができる。レトロ−インベルソのペプチドの純度は、分析用HPLCまたは当技術分野で周知の他の方法により決定することができる。
【0051】
RIペプチド(およびPRMIペプチドの中のRI配列)におけるL−IleおよびL−Thrの適切な立体異性体は、これらのアミノ酸において2つの不斉中心が存在するために、D−アロIleおよびD−アロThrである。
【0052】
対象PMRI−ペプチドの合成に関しては、溶液ベースの方法が好ましい。溶液ベースの化学により、種々の周知の反応によってPMRI−ペプチドの合成のために必要とされる適切に保護されたgem−ジアミノアルキル部分および2−アルキルマロニル部分を生成することができる。次いで、生成された粗構築ブロックおよび擬似ペプチドユニットは、精製および特性評価にかけることができる。
HO−Ala−(RS)−mPhe−(R)−Lys(N−Boc)−NHまたはHO−mGly−(R)−Phe−NHのような前駆体を組み込んで樹脂上にPMRIユニットを生成させること、または前もって形成させたPMRI単位PG−XaaΨ[NHCO]Xaa−OH(Ψ=擬似ペプチド結合)を構築ブロックとして組み込むことのいずれかによる固相合成によってもまた、PMRI−ペプチドを作製することができる。しかし、遅い反応速度、副反応、および反応条件と固体支持体との間の適合性の欠如が、PMRI−ペプチドの固相合成を複雑にし、それが選択すべき方法とはならない。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献23]。本明細書中で引用された全ての特許、論文および書籍の章の開示は、その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【非特許文献23】Scheibler,L. & Chorev,M.(2003)In Synthesis of Peptides and Peptidomimetics(Houben−Weyl Methods of Organic Chemistry,第4版,Vol.22C)(Goodman,M.,編),528−551頁,Thieme,Stuttgart
【0053】
培養で増殖した細胞に適用される場合、合成ペプチドは、悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有し、細胞数の用量依存減少をもたらす。この効果は、一般に2〜3時間以内、最大でも48時間で観察することができる。培養で増殖したラット膵臓腺房細胞(BMRPA7430)の細胞株は、K−rasで形質転換された。通常の培養細胞株は、膵臓腺房細胞に特有の構造を示す;形質転換細胞(TUC−3)は、一般的な膵臓ガン細胞として現われて、腺房細胞の分化モルフォロジーを欠いている。BMRPA.430細胞が、リーダー配列の配列番号4とカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドで50μg/mlの用量において処理された場合、その細胞は影響を受けなかった。しかし、TUC−3細胞が、リーダー配列の配列番号4とカップリングした配列番号1の一次構造を有するペプチドで100μg/mlの用量において処理された場合、その細胞は、3から4日以内に死んだ。配列番号1を配列番号2または配列番号3のいずれかと置き換えた以外は同じ実験を行った場合も、同様の結果が得られた。さらに、形質転換細胞および悪性細胞の細胞死は、リーダー配列の配列番号4とカップリングした配列番号1の一次構造を有する合成ペプチドで100μg/mlの用量において処理されたヒトの乳ガン細胞株および黒色腫およびヒーラ細胞で観察された。それと対照的に、同じ用量における同じ合成ペプチドは、悪性でない、そして形質転換していないヒトの胸細胞株もしくは線維芽細胞株に対しては影響を与えなかった。
【0054】
配列番号4に示されたリーダー配列が、PNC29(次のアミノ酸の配列:MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有しているコントロールタンパク質)のカルボキシ末端に位置する場合、悪性細胞または通常細胞に対する影響はなかった。
【0055】
さらに、配列番号4に示されたリーダー配列にカルボキシ末端において融合する配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、成長因子の存在下でhematopoietic細胞株に分化するヒト幹細胞の能力に影響を与えない。このことは、化学療法薬として投与されるとき、このペプチドが骨髄細胞に有害ではないことを示す。以下を参照のこと:[非特許文献24](この開示は、その全体が記載されているものとして参照により本明細書に組み込まれる。)。
【非特許文献24】Kanovsky et al.,(2001年10月23日)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 98(22);12438−12443
【0056】
培養されたガン細胞が、リーダー配列と結合していない配列番号1の一次構造を有するペプチドで100μg/mlの用量において処理された場合、細胞は影響を受けなかった。同様に、培養されたガン細胞が、リーダー配列の配列番号4(現在のところ好ましいリーダー配列)で同じ用量において処理された場合も、細胞はまた影響されなかった。これらの結果は、合成ペプチドのリーダー配列が処理される細胞の細胞膜を合成ペプチドが通り抜けることを可能にし、そして合成ペプチドの効果は細胞内である必要があることを示す。
【0057】
合成ペプチドが、p53タンパク質とMDM−2タンパク質との結合を妨害することにより作用するかどうか決定するために、合成ペプチドを、同種接合欠失によりp53タンパク質を作る能力をなくされた形質転換結腸直腸腺ガン細胞に対してテストした。驚くべきことに、合成ペプチドは、選択的に形質転換細胞を殺したが、普通の細胞に影響を有しなかった。これらの結果は、作用機構がMDM−2タンパク質に結合するp53タンパク質から独立しているように考えられることを示す。これは、p53ペプチドは、p53タンパク質を全く生産しない形質転換細胞を選択的に殺すからである。これらの結果は、MDM−2タンパク質へのp53タンパク質の結合を妨害することが、合成ペプチドが悪性細胞および形質転換細胞の選択的な死を引き起こすメカニズムではないかもしれないことを示す。本明細書中で開示された合成ペプチド、それらの誘導体、アナログ、そしてペプチド模倣分子は、ガンのような新生物疾患の処置に有用であるけれども、形質転換細胞および悪性細胞に対する作用に関するメカニズムは、見いだされていない。
【0058】
本発明のペプチドは、インビボにおける新生物細胞に対して有効である。例えば、膵臓ガン細胞BMRPAl.TUC−3を異種移植され、約3〜6ミリの発達した腫瘍の大きさを有するマウスは、対象合成ペプチド(例えば、カルボキシ末端においてリーダー配列と融合した配列番号3で示したアミノ酸配列を有しているペプチド)の投与の後に腫瘍の大きさが劇的に減少した。
【0059】
本発明のペプチドの観察された特性と一致して、対象ペプチドは、新生物細胞または悪性細胞、すなわち、動物、特にヒトにおけるガン細胞を選択的に殺す。そのため、本発明の合成ペプチドは、被検体の動物またはヒトにおける新生物細胞を殺すために有効な量で投与される。
【0060】
本発明の合成ペプチドは、薬学上受容できる担体と共に、治療有効用量の本発明の少なくとも1つの合成ペプチドを含んでいる薬剤組成物として好ましくはヒトの患者に投与することができる。用語「治療有効量」または「薬学的有効量」は、新生物細胞または悪性細胞、すなわち、ガン細胞を選択的に殺すことを含めた増殖抑制を個体においてもたらすのに必要とされる用量を意味する。
【0061】
好ましくは、1つ以上の本発明のペプチドを含有する組成物は、選択的に新生物性細胞を殺し、それにより、ガンのような新生物疾患または悪性疾患を処置
する目的のために、静脈内に投与される。1つ以上の本発明のペプチドを使って効果的に処置することができる種々のガンの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:乳ガン、前立腺ガン、肺ガン、子宮頸管ガン、大腸ガン、黒色腫、膵臓ガンおよび全ての固体の組織腫瘍(上皮細胞腫瘍)、ならびに血液のガン(リンパ腫および白血病が例とされるがそれらに限定されない)。
【0062】
本発明の合成ペプチドの投与は、経口、静脈内、鼻腔内、坐薬、筋肉内、腹腔内、皮内投与もしくは皮下投与、または注入もしくは移植によって可能である。このような方法で投与される場合、本発明の合成ペプチドは、担体および/またはアジュバントのような他の成分と組み合わせることができる。それらが薬学上受容できて、それらの意図される投与のために有効である必要があり、組成物の活性成分の活性を劣化する可能性がなく、そして細胞の中に対象ペプチドを導入することを妨げる可能性がないことを除いて、他の成分の性質については制限がない。このペプチド組成物はまた、経皮パッチの中に浸み込ませるか、または好ましくは液体状または半液体状の皮下挿入物に含ませることができ、そのパッチまたは挿入物は、治療有効量の1つ以上の対象合成ペプチドを時限放出する。
【0063】
注射に適した製薬の形態としては、無菌注射用の溶液または分散液を即座に調製するための無菌水溶液もしくは無菌分散液および無菌粉末が挙げられる。いかなる場合であっても、最終的な溶液形態は、無菌で、そして流動性である必要がある。一般的な担体としては、例えば、以下のものを含有する溶媒もしくは分散媒が挙げられる:水緩衝水溶液、すなわち、生体適合性緩衝液、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、界面活性剤または植物油。殺菌法は、当技術分野で認められる任意の技法を利用して達成することができ、例としては、濾過または抗菌剤もしくは抗カビ剤の添加が挙げられるが、それらに限定されない。このような添加剤の例としては、パラベン、クロロブタノール(chlorbutanol)、フェノール、ソルビン酸またはチメロサールが挙げられる。糖類または塩化ナトリウムのような等張剤もまた、対象組成物に組み入れることができる。
【0064】
本明細書中で使われる「薬学上受容できる担体」としては、任意の、および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤薬および抗カビ剤、等張剤などが挙げられる。このような媒体および添加剤の使用は、当技術分野で周知である。
【0065】
対象合成ペプチドを含んでいる無菌注射用溶液の作製は、必要とされる量の1つ以上の上記の主題合成ペプチドを、1つ以上の上記に列挙された種々の成分と共に適切な溶媒に溶かし込み、必要に応じて殺菌、好ましくは濾過殺菌を続けることにより達成される。無菌粉末を得るためには、必要に応じて上記の溶液を真空乾燥または凍結乾燥する。
【0066】
不活性希釈剤および/または吸収可能な食用担体などは、ペプチドが経口投与される場合、薬剤組成物の一部であり得る。薬剤組成物は、硬いまたは柔らかい殻ゼラチンカプセルの中にあってもよく、錠剤に圧縮することができ、またはエリキシル剤、懸濁液、シロップなどの形であってもよい。
【0067】
そのため、対象合成ペプチドは、便利および効果的に薬学的有効量で投与するために、治療有効用量の適切な薬学上受容できる担体と混合される。薬学的有効量の例としては、少なくとも約25ug/mlから少なくとも約300ug/mlの範囲にあるペプチド濃度が挙げられる。
【0068】
ヒトに適用される本発明の方法で使われる合成ペプチドの正確な治療有効量は、新生物疾患の段階の変化、腫瘍の大きさおよび悪性度、転移の存在または程度などのために一概に述べることができない。さらに、個人の体重、性別および全体的な健康状態は、考慮されなくてはならず、用量に影響するであろう。しかし、本発明の合成ペプチドを、1服用あたり少なくとも約10mg、より好ましくは1服用あたり1000mgまでの量で投与することが、一般に言える。本発明のペプチド組成物は、最終的に血流から除去されるから、薬剤組成物の再投与が指示され、そしてそれが好ましい。
【0069】
本発明の合成ペプチドは、服用調剤と適合性のある手法で、治療に有効である量で投与することができる。全身への用量は、患者の年齢、体重および体調、ならびに投与経路に依存する。成人への投与のための例示的な適切用量は、体重1キログラムあたり約0.1〜約20mgの範囲である。好ましくは、その用量は、体重1キログラムあたり約0.1〜約10mgである。
【0070】
本発明に従って、新生物疾患を処置する方法もまた提供される。その方法は、治療有効量の上述の合成ペプチド(そのアナログと誘導体を含む。)を、このような処置を必要としている被検体に投与することを含む。そのため、例えば、1つの実施形態において、そのカルボキシ末端においてリーダー配列と融合した、配列番号1で示した少なくとも約6つの連続アミノ酸を含む有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、被検体に投与することができる。別の実施形態においては、そのカルボキシ末端においてリーダー配列と融合した、配列番号1に示した少なくとも約8個から少なくとも約10個の連続アミノ酸を含んでいる有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することができる。例えば、そのカルボキシ末端においてリーダー配列と融合した、配列番号1に示したアミノ酸配列を含んでいる有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することができる。そのカルボキシ末端においてリーダー配列と融合した、配列番号2に示したアミノ酸配列を含んでいる有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体もまた、被検体に投与することができる。さらに別の実施形態においては、そのカルボキシ末端においてリーダー配列と融合した、配列番号3に示したアミノ酸配列を含んでいる有効量のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することができる。1つ以上のD−アミノ酸またはイソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合を含んでいる対象ペプチドのいずれか、またはカルボキシル末端において膜貫通リーダー配列と融合している前述のRIペプチドまたはPMRIペプチドのいずれかもまた、被検体における悪性細胞または新生物細胞を殺す方法において使用することができる。
【0071】
処置方法に従って、合成ペプチドの混合物を投与することができる。そのため、例えば、有効量の上述のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体の内の1つを投与することに加えて、2つ以上の上述のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体の混合物を被検体に投与することもまたできる。
【0072】
本発明により、インビトロでの悪性細胞、形質転換細胞、または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法もまた提供される。その方法は、悪性細胞、形質転換細胞、または新生物細胞を上述のペプチドのいずれかと接触させる工程、生きている細胞と比べた死んだ細胞の割合またはパーセンテージに基づいて有効性レベルを評価する工程、およびそして培養中の形質転換していない(通常)細胞の増殖に対するペプチドの効果を評価する工程を含んでいる。従って、インビトロにおける悪性細胞、形質転換細胞、または新生物細胞を殺すが、培養中の形質転換していない細胞または通常細胞に対しては悪影響を与えないようなペプチドは、新生物疾患で苦しんでいる患者を処置するのに使用するための価値ある候補であると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するものであり、その範囲を限定することは意図していない。
【実施例1】
【0074】
アミノ末端に結合しているリーダー配列を有する対象ペプチドの有効性を比較するために、以下の実験を行った。上述のように、カルボキシル末端上におけるリーダー配列で合成されたペプチドは、MDM−2に結合されている場合に、このペプチドのp53部分の活性構造であるペプチド中のα−ヘリックス形成を促進した。上述されるように、配列番号1、2、および3に示されたアミノ酸配列を有する対象ペプチドは、同型接合でp53遺伝子−欠損されたものを含めて、多種多様なヒトのガン細胞に、強く毒性を有する。配列番号1〜3に示された配列を有している各ペプチドに対するα−ヘリックス確率分析を、2つの異なる方法を使って行った。一つは、タンパク質データベース[非特許文献25]からヘリックス確率を使ったものである。そしてもう一つは、ヘリックスの核生成(σ)および成長(s)に基づいたイジングモデルを使ったものである。それは、20個の天然Lアミノ酸の各々に対するブロックコポリマーから実験的に決定された平衡定数であり、[非特許文献26]および[非特許文献27]に記述されるこれらのパラメータに対する帯電の効果を包含することにより修正されている。確率分析は、リーダー配列がアミノ末端上にある場合、ペプチドが細胞膜を通り抜けたとしても、α−へリックス構造の含有量は、ずっと低いことを示した。
【非特許文献25】Karplus,K. et al.,(1998)Bioinformatics 14:846−856
【非特許文献26】Vasquez,M. et al.,(1987)Biopolymers(26:351−372)
【非特許文献27】Vasquez,M. et al.,(1987)Biopolymers(26:373−393)
【0075】
配列番号3で示した配列を有しているペプチドを、アミノ末端と結合しているリーダー配列により固相合成によって合成した。このペプチドは、下の表2でPNC28’と記される。PNC28’ペプチドを、3つの異なった濃度、すなわち、25、50および100μg/mlにおいて形質転換した膵臓がん(TUC−3)細胞と共にインキュベートした。2週間のインキュベーションの後に、ペプチドの最も高い用量において、細胞死が起こらず、そして細胞の約半分が腺房を形成するのが見られ、そして形質転換していないモルフォロジー表現型を示した。同じ現象は、50μg/mlにおいても観察され、そして25μg/mlにおいては非常に少しの細胞が元の状態に戻ることが見られた。それとは対照的に、リーダー配列がペプチドのカルボキシル末端に結合している場合(表2でのPNC28)、50および100μg/mlの用量において100%の細胞死が約4日以内に起こった。
【0076】
これらの結果は、リーダー配列を優先的にp53ペプチドのMDM−2部分のカルボキシル末端に加えれば、ペプチドが細胞膜を通り抜け、特に悪性細胞を殺すことができることを示す。表2において、リーダー配列は、KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号4)である。
【0077】
【表2】

【0078】
これらの結果は、対象ペプチドの特異性を示す。すなわち、正帯電残基のリーダーまたはクラスターは、ガン細胞毒性のためには、任意のエフェクターペプチドのカルボキシ末端に置かれなければならない。
【実施例2】
【0079】
20〜22gの重さのNu/Nuマウス(Harlan Laboratories、インディアナポリス、インディアナ州、n=10)に、生の膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x10細胞/マウス)を左の後ろ足部分の皮下(s.c.)に異種移植した。腫瘍が発達して増大することを可能にし、そして毎日の試験の間に、全てのマウスが非常に類似の成長速度で腫瘍を発達させたことを観察した。
【0080】
12日後、腫瘍は、直径3〜6mmの大きさに達していた。そしてマウスをそれぞれ5匹の2つのグループに分けた。各グループは、Alzet(登録商標)浸透圧ポンプの皮下移植を行い、20mg/マウスの濃度で各ペプチドを含んでいる全体容量0.095mlの通常生理食塩溶液を一定の割合で14日の規定期間にわたって送達した。マウスの1つのグループには、そのカルボキシ末端においてペネトラチンリーダー配列(配列番号4)と融合しているPNC−28(配列番号3に示されるアミノ酸を有しているペプチド)を与えた。そしてもう一つのグループには、次のアミノ酸の配列:MPFSTGKRIMLGE(配列番号25)を有する同様の大きさのコントロールペプチドを与えた。ポンプを、製造業者のガイドラインに従い、そして無菌条件下で充填した。マウスの皮下に微小ポンプを差し込むポケットを作ることによって、麻酔されたネズミの左側面にポンプを皮下移植した。各ポケットを簡単な縫合で閉じた。それらの内部チャンバーから、ポンプはそれぞれのマウスの中に連続的に0.25μl/時間の量を送達した。マウスが動物施設の隔離区域に返されたときに、外科手術から回復するまでマウスを観察した。その動物はNu/Nuマウスであり、そのため免疫性欠陥であったから、病原体に曝された場合、それらは大いに感染しやすい。従って、外科手術および全ての術前および術後の処置は、無菌のボンネット環境で行った。
【0081】
図1に明らかに示されるように、48〜72時間の期間以内のマウスへの送達で、PNC−28は、効果的に腫瘍成長を抑制する。それと対照的に、コントロールペプチドPNC−29は、通常細胞または腫瘍細胞に影響を与えなかった。PNC−29によって処理されたマウスにおいては、腫瘍は一定の割合で増大し続け、結果として、2週間の処置の期間およびポンプがそれ以上のペプチド溶液を放出することを停止したそれ以後の期間に、直径10〜16mmの腫瘍をもたらした。マウスの両方のグループにおける腫瘍の大きさの測定結果の統計上分析により、p<0.001というそれらの間の有意性を得た。
【実施例3】
【0082】
実施例2と同じ方法を使って、生きている膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x10細胞/ネズミ)をマウス(n=10)の中に移植するのと同時に、ポンプを始動させた。5匹のマウスにPNC28を投与し、そして5匹のネズミは、まったく処置しなかった(擬似処置)。結果を以下の表にした。
【0083】
【表3】

【実施例4】
【0084】
実施例2と同じ方法を使って、生きている膵臓ガン細胞BMRPA1.TUC−3(1x10細胞/ネズミ)を5匹のマウスの腹腔に移植した。腫瘍細胞移植と同時に、ポンプを右の肩部分に配置した。5匹全てのマウスにおいて、3週間後に目に見える腫瘍はなかった。
【実施例5】
【0085】
配列番号2または3に示したアミノ酸配列を有しているペプチドを、カルボキシ末端と結合している膜貫通リーダー配列との固相合成によって、1つ以上のD型アミノ酸で合成した。固相ペプチド合成法は、C末端アミドを有するペプチドを生じさせるジシクロヘキシルカルボジミドによる活性化により、それぞれの保護されたアミノ酸残基を、樹脂支持体、好ましくは4−メチル−ベンズヒドリルアミン樹脂にカップリングさせることを伴う。側鎖官能基を、以下のようにして保護した:セリン、トレオニン、グルタミン酸およびアスパラギン酸に対してベンジル;ヒスチジンおよびアルギニンに対してトシル;リシンに対して2−クロロベンジルオキシカルボニル、ならびにチロシンに対して2,6−ジクロロベンジル。カップリングの後に、加えられたアミノ酸のαアミノ基におけるt−ブチルオキシカルボニル保護基を、トリフルオロ酢酸による処理によって除去し、続いてジイソプロピルエチルアミンで中和する。次いで、次の保護された残基を、ペプチド鎖を増殖させて、遊離アミノ基にカップリングさせる。最後の残基を結合させた後、保護されたペプチド樹脂をフッ化水素で処理し、樹脂からペプチドを切断し、そして側鎖官能基を脱保護する。粗生成物は、逆相HPLCによってさらに精製することができる。ペプチドを、3つの異なった濃度、すなわち25、50、および100μl/mlにおいて膵臓ガン細胞(TUC3)のような悪性細胞、形質転換細胞もしくは新生物細胞とインキュベーションして、これらの濃度においてこのような細胞を殺すことの有効性レベルを評価することができる。
【実施例6】
【0086】
配列番号2または配列番号3に示されたアミノ酸配列の逆順序で組み立てられたD−アミノ酸を全て有しているレトロ−インベルソ(RI)ペプチドを、D−アミノ酸を使って合成する。レトロ−インベルソ型は、ABI 433Aペプチドシンセサイザー(Applied Biosystems、Foster City、カリフォルニア、米国)を使った標準的なFmoc化学によって合成する。以下を参照のこと:[非特許文献28]。粗生成物を、C18分取カラム(Varian、Palo Alto、カリフォルニア、米国)による逆相HPLCによってさらに精製する。ペプチドの識別を質量分析により確認する。ペプチドをそのカルボキシ末端において膜貫通リーダー配列と融合させ、そして3つの異なった濃度、すなわち25、50、および100μl/mlにおいて膵臓ガン細胞(TUC3)のような悪性細胞、形質転換細胞もしくは新生物細胞とインキュベーションして、これらの濃度においてこのような細胞を殺すことの有効性レベルを評価することができる。
【非特許文献28】Ben−Yedida et al.,(2002)Molecular Immunology,39:323−331
【実施例7】
【0087】
アミノ酸の全てがD型ではない部分および配列番号2または3に示された配列の逆順序ではない部分を有する部分修飾レトロ−インベルソ(PMRI)ペプチドを、PMRI−ペプチドの合成のために必要とされる、適切に保護されたgem−ジアミノアルキル部分および2−アルキルマロニル部分を生成するための溶液ベースの化学を使って合成する。例えば、以下を参照のこと:[非特許文献29]。アシルアジドおよびアシルアミドのクルチウス転位およびホフマン転位をPMRI−ペプチドの合成のために利用する。転位基は、転移の間その構造を維持し、トポグラフィー的に補足的なgem−ジアミノアルキル誘導体に光学的に純粋なアミノ酸を変換するための手段を与える。イソシアネート中間体を、過剰のカルボン酸によるGoldschmidt−Wick型反応においてトラップし、N,N’−ジアシル化gem−ジアミノアルキル残基との付加体を得る。イソシアネートをN−保護アミノ酸でトラップすることにより、レトロ−インベルソ擬似ペプチドユニットを得る。生成した粗構築ブロックおよび擬似ペプチドユニットを精製および特性評価にかける。ペプチドを、そのカルボキシ末端において膜貫通リーダー配列と融合させ、そして3つの異なった濃度、すなわち25、50、および100μl/mlにおいて膵臓ガン細胞(TUC3)のような悪性細胞、形質転換細胞もしくは新生物細胞とインキュベーションし、これらの濃度においてこのような細胞を殺すことの有効性レベルを評価することができる。
【非特許文献29】Scheibler,L.およびChorev,M(2003)In Synthesis of Peptides and Peptidomimetics(Houben−Weyl) Methods of Organic Chemistry,第4版,Vol.22C)(Goodman,M.,編),528−551頁,Thieme,Stuttgart
【0088】
前述の明細書およびその中で報告された実験結果は、例示的なものであり、本出願人の発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本出願人の発明から外れないで、種々の改変ができることは認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】膵臓ガン細胞を異種移植された同種接合NU/NUマウスにおけるPNC−28(そのカルボキシ末端において配列番号4に融合された配列番号3)のインビボ腫瘍抑制効果を図式的に示す。星印の付いた矢印は、腫瘍増殖期間の13日目(正確には13.5日)における皮下ポンプ移植の時点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の少なくとも約6つの連続アミノ酸を含むペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体であって、ここで、前記ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体は、そのカルボキシル末端において膜貫通リーダー配列と融合し、そして悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有し、その中の少なくとも1つのアミノ酸がD−アミノ酸であるか、または少なくとも1つのペプチド結合がイソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合であるペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項2】
アミノ酸配列:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号1)の逆順序で組み立てられた少なくとも6つの連続的なD−アミノ酸を含むレトロ−インベルソ(RI)ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体であって、ここで、前記RIペプチドは、そのカルボキシル末端において膜貫通リーダー配列と融合し、そして前記ペプチドは、悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有するRIペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項3】
少なくとも6つの連続アミノ酸を含む部分修飾レトロ−インベルソ(PMRI)ペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体であって、ここで、前記少なくとも6つの連続アミノ酸の一部が、配列番号1で示されるアミノ酸配列の逆順序で組み立てられたD−アミノ酸であり、前記PMRIペプチドは、そのカルボキシル末端において膜貫通リーダー配列と融合し、悪性細胞または形質転換細胞に対し選択的に致死性を有するPMRIペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項4】
アミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)を含む、請求項1に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項5】
アミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)の逆順序で組み立てられた少なくとも6つの連続的なD−アミノ酸を含む、請求項2に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項6】
前記少なくとも6つのD−アミノ酸が、アミノ酸配列:PPLSQETFS(配列番号2)またはETFSDLWKLL(配列番号3)の逆順序で組み立てられた、請求項3に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項7】
前記ペプチドのN−末端アミノ酸が、D−アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項8】
前記膜貫通リーダー配列のカルボキシ末端アミノ酸が、D−アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項9】
前記ペプチドのN−末端ペプチド結合が、イソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
前記膜貫通リーダー配列が、以下に示すものの内の少なくとも1つである、請求項1から請求項9に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体:ペネトラチン(配列番号4)、Arg(配列番号26)、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリ−R、HIV−1のTAT(配列番号5)、D−TAT(配列番号6)、R−TAT(配列番号7)、SV40−NLS(配列番号8)、ヌクレオプラスミン−NLS(配列番号9)、HIV REV(配列番号10)、FHVコート(配列番号11)、BMV GAG(配列番号12);HTLV−II(REX)(配列番号13)、CCMV GAG(配列番号14)、P22N(配列番号15);Lambda N(配列番号16)、Phi N(配列番号17)、酵母PRP6(配列番号18);ヒトU2AF(配列番号19)、ヒトC−FOS(配列番号20)、ヒトC−JUN(配列番号21)、酵母GCN4(配列番号22)、KLALKLALKALKAALKLA(配列番号23)、またはp−vec(配列番号24)。
【請求項11】
前記膜貫通リーダー配列がD−アミノ酸を含むか、または少なくとも1つのペプチド結合が、イソスター擬似ペプチド結合もしくはレトロ−インベルソ擬似ペプチド結合で置換されている、請求項10に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項12】
前記膜貫通リーダー配列が、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示された配列のいずれかと逆順序で組み立てられたD−アミノ酸全てを含む、請求項11に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項13】
前記膜貫通リーダー配列が、配列番号4〜24または配列番号26〜27に示された配列のいずれかと逆順序で組み立てられたD−アミノ酸の一部を含む、請求項11に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体。
【請求項14】
薬学上受容できる担体と混合された、少なくとも1つの請求項1から請求項9に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を含む薬剤組成物。
【請求項15】
薬学上受容できる担体と混合された、少なくとも1つの請求項10に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を含む薬剤組成物。
【請求項16】
薬学上受容できる担体と混合された、少なくとも1つの請求項11に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を含む薬剤組成物。
【請求項17】
薬学上受容できる担体と混合された、少なくとも1つの請求項12に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を含む薬剤組成物。
【請求項18】
薬学上受容できる担体と混合された、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を含む薬剤組成物。
【請求項19】
治療有効量の、少なくとも1つの請求項1から請求項9に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することを含む、被検体の悪性細胞、新生物細胞を選択的に殺す方法。
【請求項20】
治療有効量の、少なくとも1つの請求項10に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することを含む、被検体の悪性細胞、新生物細胞を選択的に殺す方法。
【請求項21】
治療有効量の、少なくとも1つの請求項11に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することを含む、被検体の悪性細胞、新生物細胞を選択的に殺す方法。
【請求項22】
治療有効量の、少なくとも1つの請求項12に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することを含む、被検体の悪性細胞、新生物細胞を選択的に殺す方法。
【請求項23】
治療有効量の、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体を、被検体に投与することを含む、被検体の悪性細胞、新生物細胞を選択的に殺す方法。
【請求項24】
悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法であって、
請求項1から請求項9に記載のいずれかにペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、
生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいたペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない細胞の増殖へのその影響を評価する工程、
を含む方法。
【請求項25】
悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法であって、
請求項10に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、
生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいたペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない細胞の増殖へのその影響を評価する工程、
を含む方法。
【請求項26】
悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法であって、
請求項11に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、
生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいたペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない細胞の増殖へのその影響を評価する工程、
を含む方法。
【請求項27】
悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法であって、
請求項12に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、
生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいたペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない細胞の増殖へのその影響を評価する工程、
を含む方法。
【請求項28】
悪性細胞、形質転換細胞または新生物細胞を選択的に殺すことにおけるペプチドの有効性レベルを評価する方法であって、
請求項13に記載のペプチドまたはそのアナログもしくはその誘導体と、インビトロにおける悪性細胞、新生物細胞または形質転換細胞とを接触させる工程、
生きている細胞と比較した死んだ細胞の比率もしくは百分率に基づいたペプチドの有効性レベル、および培養中の形質転換されていない細胞の増殖へのその影響を評価する工程、
を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−505846(P2008−505846A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549329(P2006−549329)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/044073
【国際公開番号】WO2006/006954
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504344842)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (8)
【Fターム(参考)】