説明

悪性脳腫瘍マーカー遺伝子およびその用途

【課題】悪性脳腫瘍の指標となるマーカー遺伝子およびその用途を提供する。
【解決手段】提示した特定の塩基配列を有することを特徴とする脳腫瘍マーカー遺伝子、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有することを特徴とする脳腫瘍マーカータンパク質、これらの発現を指標とする悪性脳腫瘍の診断方法、これらの発現を抑制する物質のスクリーニング方法、及びこれらを利用する悪性脳腫瘍の診断キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性脳腫瘍の指標となるマーカー遺伝子およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞は自己の遺伝子異常により厳密なプログラムが破綻し、秩序を失って増殖するものであり、本来これらの細胞の分子生物学的特性に基づいて治療法が選択されるのが理想である。腫瘍細胞の病理学的な特徴が同じでも、その進展形態、治療に関する感受性、予後などが大きく異なることは、日常臨床の場でしばしば遭遇する大きな問題点である。一方、腫瘍細胞の遺伝子異常は複数の遺伝子の異常が関与していることは言うまでもなく、それぞれの腫瘍細胞の分子生物学的特長を把握するには、多くの遺伝子の変化を同時に観察することが不可欠である。マイクロアレイ法は腫瘍細胞の転写レベルでの変化を同時にかつ大量にとらえるアプローチであり、腫瘍細胞の個性診断、治療に対する感受性、薬剤に対する耐性、副作用予測、新規標的分子同定などに応用可能と考えられる。これまで、さまざまなヒト癌種において、治療の選択を行うのに有用な分子マーカーを得るため、マイクロアレイを用いた分子発現プロファイルが用いられてきた。マイクロアレイ技術を用いて遺伝子発現プロファイルを調べることにより、多くの遺伝子が腫瘍の組織学的な型およびグレードにおいて、異なって発現されていることが確認されている。
【0003】
各癌種に対しては、このような包括的遺伝子発現情報をもとにした治療標的遺伝子、マーカー遺伝子の選択は試みられているが、脳腫瘍に関して類似するような研究はまだ少ない(非特許文献1〜5)。
【非特許文献1】Freije WA, Castro-Vargas FE, Fang Z, Horvath S, Cloughesy T, Liau LM, Mischel PS, Nelson SF. Cancer Res. 2004 Sep 15;64(18):6503-10.
【非特許文献2】Rickman DS, Bobek MP, Misek DE, Kuick R, Blaivas M, Kurnit DM, Taylor J, Hanash SM. Cancer Res. 2001 Sep 15;61(18):6885-91.
【非特許文献3】Sallinen SL, Sallinen PK, Haapasalo HK, Helin HJ, Helen PT, Schraml P, Kallioniemi OP, Kononen J. Cancer Res. 2000 Dec 1;60(23):6617-22.
【非特許文献4】Kim S, Dougherty ER, Shmulevich I, Hess KR, Hamilton SR, Trent JM, Fuller GN, Zhang W. Mol Cancer Ther. 2002 Nov;1(13):1229-36.
【非特許文献5】van den Boom J, Wolter M, Kuick R, Misek DE, Youkilis AS, Wechsler DS, Sommer C, Reifenberger G, Hanash SM. Am J Pathol. 2003 Sep;163(3):1033-43.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
治療法の未だに確立されていない悪性脳腫瘍に対する、新たなる分子標的の探索は体系的遺伝子発現情報解析であるマイクロアレイ法により発展するものと期待される。また、この成果は悪性脳腫瘍に対する新たな治療法、診断学の開発に応用されることが期待される。本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、新たな治療法、診断学の開発のために悪性脳腫瘍の指標となるマーカー遺伝子およびその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、良性神経膠腫と悪性神経膠腫の遺伝子プロファイルを比較することにより、悪性神経膠腫のみに高発現する以下の表1に示す17の脳腫瘍遺伝子を同定して、本発明を完成するに至った。
【0006】
【表1】

本発明は、以下の通りである。
【0007】
本発明の請求項1は、配列番号1〜17のいずれか1記載の塩基配列を有することを特徴とする脳腫瘍マーカー遺伝子である。
【0008】
本発明の請求項2は、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有することを特徴とする脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブである。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続した脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーである。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1を固定化させたことを特徴とするDNAチップである。
【0011】
本発明の請求項5は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断方法である:(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドにおける、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【0012】
本発明の請求項6は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法である:(a)被験物質と、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量と比較する工程、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0013】
本発明の請求項7は、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断キットである。:(a)請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1、(b)請求項3記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーの少なくとも1、(c)請求項4記載のDNAチップ。
【0014】
本発明の請求項8は、配列番号18〜34のいずれか1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有することを特徴とする脳腫瘍マーカータンパク質である。
【0015】
本発明の請求項9は、請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質のいずれか1を特異的に認識することを特徴とする脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体である。
【0016】
本発明の請求項10は、請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体から選択された少なくとも1の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体を固定化させたことを特徴とするプロテインチップである。
【0017】
本発明の請求項11は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断方法である:(a)被験者の生体試料から調製されるタンパク質における、請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1の脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【0018】
本発明の請求項12は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の発現を抑制する物質のスクリーニング方法である:(a)被験物質と、請請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカータンパク質の発現量と比較する工程、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0019】
本発明の請求項13は、以下の(a)〜(b)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断キットである:(a)請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体の少なくとも1、(b)請求項10記載のプロテインチップ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、悪性脳腫瘍に対する腫瘍マーカーとなる脳腫瘍マーカー遺伝子が提供される。また、この脳腫瘍マーカー遺伝子に関わる各種の分子生物学的材料が提供され、これらを使用することによって、腫瘍マーカーとしての診断応用の他に、新規抗癌剤など創薬への応用が可能となる。脳腫瘍マーカー遺伝子に対する検出用プローブ等を作製することにより、脳腫瘍マーカー遺伝子を検出し、脳腫瘍の診断を広範囲にかつ確実に行うことができる。また、脳腫瘍を抑制する物質のスクリーニングを行い、新規抗癌剤の開発を進展させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の「脳腫瘍」は、頭蓋内に発生するすべての腫瘍をいう。このような脳腫瘍の中でも、発生頻度の高い代表的なものが神経膠腫であり、これはさらに、星細胞腫、神経膠芽腫等を含む。脳腫瘍には、この他、下垂体腺腫、神経鞘腫などがある。
【0022】
本発明における「遺伝子」は、DNAおよびRNAが含まれる。DNAには、例えば、クローニング、化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖DNAは、センス鎖となるコードDNAであっても、アンチセンス鎖となるアンチコード鎖であってもよい。
【0023】
本明細書における「ポリヌクレオチド」は、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、トータルRNA、mRNA、rRNAおよび合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
本発明者らは、良性神経膠腫と悪性神経膠腫の遺伝子プロファイルを比較することにより、悪性神経膠腫のみに高発現する上記の表1に示す17の脳腫瘍マーカー遺伝子を同定した。
【0026】
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子とは、良性脳腫瘍若しくは正常脳組織ではほとんど又は全く発現せず、悪性脳腫瘍のみに高発現する遺伝子を言う。本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子は、配列番号1〜17のいずれか1記載の塩基配列を有することを特徴とする。また、NCBIの遺伝子データーベースにおいて、表1のGene Accession numberによりアプローチすることができる。本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子は、公知の遺伝子操作の手法により、取得することができる。
【0027】
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブは、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有することを特徴とするである。これらの脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブは、脳腫瘍マーカー遺伝子の塩基配列の全体又は部分配列を選択することによって、公知の方法を用いて適宜作製することができる。選択される部分配列はどの部分であってもよいが、脳腫瘍マーカー遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であることを特徴とする。また、脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブは、放射標識、蛍光標識等で標識してもよい。上記脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブは、選択された部分配列に基づいて、その配列に相補的なDNA又はRNAとすることができる。例えば、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子の塩基配列から適宜の長さのDNAプローブを作成し、適宜蛍光標識等の標識を付与しておき、これを被検体とハイブリダイズすることにより、脳腫瘍マーカー遺伝子の発現の多寡を検出し、脳腫瘍の検出を行う。
【0028】
なお、上記脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの作製に際して、本発明の塩基配列において、「脳腫瘍マーカー遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC(0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム)、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。
【0029】
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーは、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続した脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーである。脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーを用いることにより、PCR等の公知の方法に基づいて目的の脳腫瘍マーカー遺伝子を増幅できる。プライマーは、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子の塩基配列(配列番号1〜17)に基づき、市販のプライマー設計ソフトを用いる等、常法により容易に設計し、増幅することができる。また、プライマーは、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよく、また、ビオチン、リン酸、アミン等により修飾されていてもよい。
【0030】
本発明のDNAチップは、請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1を固定化させたことを特徴とする。DNAチップの作製方法は、当業者には公知である。DNAチップを用いることにより、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現レベルを検出、測定することができる。
【0031】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする:(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドにおける、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【0032】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法において、「被験者」は、例えばMRI検査等によって脳腫瘍の疑いがあると診察されて患者であり、その「生体試料」とは患者脳からの切除組織あるいは血液等である。評価対象の生体試料は、マーカー遺伝子を含む任意の試料であり得る。患者脳からの切除組織あるいは血液等から常法に従って、生体試料からRNAを調製することができる。また、患者脳からの切除組織あるいは血液等から常法に従って、該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを調製することができる。例えば、被験者の細胞から単離したmRNAを鋳型として、cDNAを合成し、PCR増幅する。その際に、標識dNTPを取り込ませて標識cDNAとすることができる。
【0033】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、前記生体試料における本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれかの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。健常者の生体試料における請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を基準とし、被験者の生体試料における請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量が前記基準より高いと悪性脳腫瘍とする。具体的には、本発明の検出方法は、RT−PCR法、ノーザンブロット法、DNAマイクロアレイ解析法、in situ ハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法により前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する。このとき、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブや脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーを適宜用いることができる。また、本発明のDNAチップを用いてもよい。
【0034】
本発明の請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、本発明の請求項6は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする:(a)被験物質と、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量と比較する工程、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0035】
本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を低下させる物質を探索することによって、悪性脳腫瘍を抑制する候補物質を提供するものである。
【0036】
本発明のスクリーニングに用いられる細胞としては、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子を発現する培養細胞全般を挙げることができる。培養細胞においてこれら脳腫瘍マーカー遺伝子が発現しているか否かは、公知のウェスタンブロット法などにて検出することにより、容易に確認することができる。培養細胞としては、具体的には、例えば癌患者より単離、調製した生体組織や血球由来の細胞、または本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれかを導入した細胞等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明のスクリーニング方法に際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0038】
脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1を発現している細胞からRNAを調製して、脳腫瘍マーカー遺伝子を測定する。また、該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを調製して、脳腫瘍マーカー遺伝子を測定してもよい。具体的には、RT−PCR法、ノーザンブロット法、DNAマイクロアレイ解析法、in situ ハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法により前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する。このとき、本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブや脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーを適宜用いることができる。また、本発明のDNAチップを用いてもよい。
【0039】
本発明の悪性脳腫瘍の診断キットは、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする:(a)請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1、(b)請求項3記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーの少なくとも1、(c)請求項4記載のDNAチップ。悪性脳腫瘍の診断キットを構成する(a)〜(c)を上記のように用いることにより、悪性脳腫瘍の診断が可能となる。
【0040】
本発明の脳腫瘍マーカータンパク質とは、良性脳腫瘍若しくは正常脳組織ではほとんど又は全く発現せず、悪性脳腫瘍のみに高発現するタンパク質を言う。本発明の脳腫瘍マーカータンパク質は、配列番号18〜34のいずれか1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有することを特徴とする。また、NCBIの遺伝子データーベースにおいて、表1のGene Accession Numberによりアプローチすることができる。
【0041】
本発明の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体は、請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質のいずれか1を特異的に認識することを特徴とする。本発明の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体は前記脳腫瘍マーカータンパク質に特異的に結合する性質を有することから、前記脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体を利用することによって、被験者の組織内に発現した上記脳腫瘍マーカータンパク質を特異的に検出することができる。
【0042】
抗体の製造方法は公知であり、本発明の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体も常法に従って製造することができる。具体的には、本発明の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明の脳腫瘍マーカータンパク質を用いて、あるいは常法に従ってこれら本発明の脳腫瘍マーカータンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製した本発明の脳腫瘍マーカータンパク質またはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる。該抗体は、適当な標識によりラベル(例えば、酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)されていてもよいし、ビオチン等により適当に修飾されていてもよい。
【0043】
脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体の作製に免疫抗原として使用される脳腫瘍マーカータンパク質は、本発明により提供される遺伝子の配列情報(配列番号1〜17)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法に準じて行うことができる。
【0044】
本発明のプロテインチップは、請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体の少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とする。プロテインチップの作製方法は、当業者には公知である。
【0045】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする:(a)被験者の生体試料から調整されるタンパク質における、請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1の脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定する工程、(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【0046】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法において、「被験者」は、例えばMRI検査等によって脳腫瘍の疑いがあると診察されて患者であり、その「生体試料」とは患者脳からの切除組織あるいは血液等である。患者脳からの切除組織あるいは血液等から常法に従って、生体試料からタンパク質を調製することができる。
【0047】
本発明の悪性脳腫瘍の診断方法は、前記生体試料における脳腫瘍マーカータンパク質のいずれかの発現レベルを検出し、測定することによって実施される。健常者の生体試料における請求項1記載の脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を基準とし、被験者の生体試料における請求項1記載の脳腫瘍マーカータンパク質の発現量が前記基準より高いと悪性脳腫瘍とする。具体的には、公知の方法に基づいて、患者の組織の一部を採取し、そこから常法に従ってタンパク質を調製する。その後、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法、蛍光抗体法など公知の検出方法に基づいて、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を検出することができる。このとき、上記脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体を適宜用いることができる。また、上記プロテインチップを用いることにより、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を検出してもよい。
【0048】
本発明の請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする:(a)被験物質と、請請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカータンパク質の発現量と比較する工程、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【0049】
本発明の脳腫瘍マーカータンパク質の発現を抑制する物質のスクリーニング方法は、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を低下させる物質を探索することによって、悪性脳腫瘍を抑制する候補物質を提供するものである。
【0050】
本発明のスクリーニングに用いられる細胞としては、請請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質を発現する培養細胞全般を挙げることができる。培養細胞においてこれら脳腫瘍マーカータンパク質が発現しているか否かは、公知のウェスタンブロット法などにて検出することにより、容易に確認することができる。培養細胞としては、具体的には、例えば癌患者より単離、調製した生体組織や血球由来の細胞、または本発明の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれかを導入した細胞等を挙げることができる。
【0051】
また、本発明のスクリーニング方法に際して、被験物質と細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つ本発明の脳腫瘍マーカータンパク質を発現できる培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0052】
脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1を発現している細胞からタンパク質を調製して、脳腫瘍マーカー遺伝子を測定する。具体的には、ウェスタンブロット法、ELISA法、タンパク質マイクロアレイ解析法などの公知の方法により前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する。このとき、上記脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体を適宜用いることができる。また、上記プロテインチップを用いることにより、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を検出してもよい。
【0053】
本発明の悪性脳腫瘍の診断キットは、以下の(a)〜(b)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする:(a)請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体の少なくとも1、(b)請求項10記載のプロテインチップ。悪性脳腫瘍の診断キットを構成する(a)〜(b)を上記のように用いることにより、悪性脳腫瘍の診断が可能となる。
【0054】
以下、具体的な実施例について説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
1. 対象症例
新潟大学脳研究所脳神経外科にて手術摘出された神経膠腫52例 (WHO gradeII:16例、III:14例、IV:22例)を対象とした。高悪性度のものは術後、放射線治療(腫瘍局所40Gy、全脳照射20Gy)ならびにニトロソウレアを中心とした化学療法を施行した。生存期間は診断確定日より患者の死亡日、もしくは最終受診日とした。組織診断はWHO脳腫瘍組織分類に基づいて行った。なお、本明細書に記載の実験は、新潟大学倫理委員会の規定に則り、全ての対象患者からインフォームドコンセントを得ている。
【0056】
2. RNAの抽出
凍結組織片はISOGEN(ニッポンジーン)中でポリトロンにより破砕された(最高速度で5秒間×2回)。クロロホルムを添加後、15,000×gで10分間遠心し、RNAを含んだ水層を採取した。イソプロピルアルコールを用いトータルRNAを沈殿させ、70%エタノールで1度洗浄し、それをDEPC処理H2Oに溶解した。トータルRNAは1.5ユニットのDNase Iで処理し、再度、クロロホルム抽出を行った後に、エタノール沈殿し、DEPC処理H2Oに懸濁した。その後、Rneasy Mini Kitを使い、低分子の核酸を除去した。トータルRNAの質はBioanalyzer2100(Agilent)にてrRNA ratio[28s/18s]を計測した。精製したトータルRNAは70%エタノール中で−80℃に使用まで保存した。また、ヒト正常脳、副腎、骨髄、大腸、胎児肝、心臓、腎臓、肝臓、肺、乳腺、前立腺、だ液線、骨格筋、小腸、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、気管、甲状腺、子宮組織の各mRNAはclontech社のものを使用した。
3. Cy3−、Cy5−標識化cDNAの合成
cDNAの合成はagilent fluorescent direct label kitを用いて行った。10μgの精製したトータルRNAとT7プロモーター配列を有するオリゴdTプライマーを用いて、1.25μの1mMのFluoroLink dCTP(Cy3−dCTP又はCy5−dCTP)、200ユニットのSuperScriptII逆転写酵素で42℃1時間反応させ、第一鎖cDNAを合成した後に第二鎖cDNAを合成し、フェノール/クロロホルムで抽出し、Phase Lock Gelにて精製した。尚、腫瘍のRNAはCy5、正常脳組織のRNAはCy3を用いて標識した。得られたcDNAはエタノール沈殿により回収し、使用まで70%エタノール中で−80℃で保存した。
4. agilentマイクロアレイ解析
脳腫瘍患者の原発癌の遺伝子発現はagilentマイクロアレイを用いて試験した。ハイブリダイゼーションは、2×デポジションコントロールバッファー 12.5μl、Cot−1DNA 2.5μl、ヌクレアーゼフリーの水 7.5μl、cDNA 2.5μlを含む25μlの溶液中で65℃、17時間行った。チップを0.5%SSC/0.1%SDS溶液で洗浄後、各ピクセルの蛍光強度はHP社製レーザースキャナーにて測定し、画像化、さらに各遺伝子の正常脳組織に対する腫瘍組織での発現比に関して数値化を行った。この実験により、ヒト脳腫瘍患者の約12729遺伝子の発現を測定した。
5. 統計解析
悪性神経膠腫と良性神経膠腫において異なる(発現をする)遺伝子群を同定するため、agilentマイクロアレイ解析を行った。遺伝子毎に16検体の良性神経膠腫のaverage differenceの平均を求め、求めた平均の値と各々36検体の悪性神経膠腫のaverage differenceを比較し、Student t−検定でp<0.01を示した遺伝子を選び出した。さらに、ヒト正常副腎、骨髄、大腸、胎児肝、心臓、腎臓、肝臓、肺、乳腺、前立腺、だ液線、骨格筋、小腸、脊髄、脾臓、胃、睾丸、胸腺、気管、甲状腺、子宮組織でいずれも1.5以下の発現比の遺伝子を選択した。その結果、表1に示すように、Human mRNA for stac, complete cds、pituitary tumor-transforming 1(PTTG1)、RAS guanyl releasing protein 2 (calcium and DAG-regulated)、KIAA0561 protein (microtubule associated serine/threonine kinase 3)、KIAA0537 gene product ( AMP-activated protein kinase family member 5)、EphB6、EphA4、EphA5、kinesin family member 1C (KIF1C)、kinesin 2 (60-70kD)、kinesin family member 3C (KIF3C)、KIAA0449 protein (kinesin family member 21B)、serologically defined colon cancer antigen 31、sperm associated antigen 7、spermine synthase、Human mRNA for endosialin protein、Human ERGIC-53 mRNAの17個の遺伝子を選び出した。
6. 免疫組織解析
対象症例について検討を行った。5ミクロン切片を作成し、脱パラフィン化の後に10mM クエン酸ナトリウム(pH 6.0)中にて121℃、10分間加温した。0.3%H22にて内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害を行った。10%ヤギ又はウサギ血清にてブロッキング後、各抗体(KIF1Cヤギポリクローナル抗体、1:20希釈;KIF3Cヤギポリクローナル抗体、1:20希釈;PTTGヤギポリクロール抗体、1:20希釈;EphA4 ウサギポリクローナル抗体、1:20希釈;EphB6ヤギポリクローナル抗体、1:20希釈)(いずれもSanta Cruz Biotechnology社)と4℃12時間反応させた。洗浄後のAvidine−biotin−peroxidase system(Vectasin elite ABC kit, Vector Labs, Burlingame, CA)を反応させ、0.01% 3,3−ジアミノベンジジン(DAB)(Sigma)とPBS0.1%過酸化水素にて発色させた。
【0057】
図1に示すようにこれらの遺伝子産物は症例によって様々な程度に染色された。任意の3視野での各タンパクの発現強度を0−3、および発現面積を0、0.25、0.5、0.75、1.0と表示し、それらの積の平均値を求め発現レベルとした(図1)。各タンパクの発現レベルをネガティブ(negative)とポジティブ(positive)の2群に分け、各群の生存曲線を描き、ログランク検定にて2群間の有為差を検討した(図2)。KIF1C, KIF3C, PTTG1, EphA4, EphB6はいずれも各タンパクが高発現すると予後が悪い結果であった。
7. SiRNAの細胞導入
各遺伝子に対する特異的なsiRNAはAMBION社およびQIAGEN社のものを用いた。KIF3C、ID#11118; PTTG、ID#41900; ARK5、ID#964; STAC、ID#12720; RASGRP2、ID#16857(いずれもAMBION社)、またKIF1Cに対するsiRNAはYAMA−1(センス: GGAGAAUCAGUACCGGAAA;アンチセンス: UUUCCGGUACUGAUUCUCC、QIAGEN社)を用いた。非サイレンシング コントロール(non−silencing control)を含めたこれらトランスフェクションにはRNAiHuman/Mouse Control kit(Qiagen)を用い、プロトコールに従って実験を行った。細胞株を96ウェルプレート(100μl/well)に培養し80%コンフレントに達した時点で培地を交換(75μl/well)し、SiRNA100nM/25μlを混和、トランスフェクションさせた。48時間の培養後、Tetra color one(Seikagaku社,Tokyo)を用いて発色し、MTTアッセイにより生存率(viability)を評価した。これらの値は非サイレンシングsiRNAによるネガティブコントロールと比較検討した。全て増殖試験は3回以上行い、結果は平均±標準偏差で表現した。
【0058】
ARK5, RASGRP2, PTTG1, STAC, KIF1C, KIF3CのSiRNAの細胞導入によりグリオーマ細胞株U251の増殖がコントロールsiRNAに比し40−60%に抑制される事が示された(図3)。
8. 定量PCR法
RNAは凍結組織よりIsogen(Nippongene, Toyama, Japan)を用いて抽出した。第一鎖cDNAは試料から得られたmRNAから、オリゴ(dT)プライマー、逆転写酵素(Super ScriptII RNaseH, Life Technologies, Grand Island, NY)を用いて作成した。定量PCRはLight Cycler(Idaho Technology, Salt Lake City, UT)によるリアルタイムPCRで行った。PCR試薬の組成は1×LightCycler DNA Master SYBR Green I(Rosche Moleculer Biochemicals, Mannheim, Germany)、各プライマー0.5μM、3mM MgCl2、2μl cDNAテンプレートにて行った。PCRは95℃10分間でdenature後、95℃15分、55℃5分、72℃10分の各サイクルを40サイクル行った。反応産物はpost−PCR melting cycleを経て各サイクルで蛍光強度を測定した。PCR増幅の為のプライマーは以下のものを用いた。
KIF1C,Hs01034140-g1.;KIF3C,Hs00158482-m1: PTTG1,Hs00851754-g1,;ARK5,Hs00934230-m1,;STAC,Hs01070510-m1,;RASGRP2,Hs01057113-m1,;(いずれもApplied Biosystems Japan社)。
【0059】
定量PCR法による検討ではsiRNAの導入により、ARK5, RAS, PTTG1, STAC, KIF1C, KIF3Cの各mRNAの発現をコントロールsiRNAに比し20〜30%に抑制できることが定量PCR法を用いて示された(図4)。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】選択された遺伝子の神経膠腫組織におけるタンパク質レベルでの発現を免疫組織学的に解析した結果を示した図である。
【図2】タンパク質発現レベルと患者の生存期間との相関を示した図である。
【図3】グリオーマ細胞株に各遺伝子に対するsiRNAを導入し、細胞増殖をTetra color oneを用いて分析した結果を示した図である。
【図4】グリオーマ細胞株に各遺伝子に対するsiRNAを導入し、各遺伝子の発現レベルを定量PCR法で分析した結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜17のいずれか1記載の塩基配列を有することを特徴とする脳腫瘍マーカー遺伝子。
【請求項2】
請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有することを特徴とする脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブ。
【請求項3】
請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子のいずれか1を特異的に増幅するための、15〜30塩基長の連続した脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマー。
【請求項4】
請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1を固定化させたことを特徴とするDNAチップ。
【請求項5】
下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断方法:
(a)被験者の生体試料から調製されたRNAまたは該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドにおける、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定する工程、
(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【請求項6】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質と、請求項1記載の脳腫瘍マーカー遺伝子の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカー遺伝子の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【請求項7】
以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断キット:
(a)請求項2記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プローブの少なくとも1、
(b)請求項3記載の脳腫瘍マーカー遺伝子検出用プライマーの少なくとも1、
(c)請求項4記載のDNAチップ。
【請求項8】
配列番号18〜34のいずれか1記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを有することを特徴とする脳腫瘍マーカータンパク質。
【請求項9】
請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質のいずれか1を特異的に認識することを特徴とする脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体。
【請求項10】
請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体から選択された少なくとも1の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体を固定化させたことを特徴とするプロテインチップ。
【請求項11】
下記の工程(a)及び(b)を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断方法:
(a)被験者の生体試料から調製されるタンパク質における、請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1の脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定する工程、
(b)前記発現量が健常者のそれと比較して多い被験者を悪性脳腫瘍と診断する工程。
【請求項12】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含むことを特徴とする請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の発現を抑制する物質のスクリーニング方法:
(a)被験物質と、請請求項8記載の脳腫瘍マーカータンパク質の少なくとも1を発現している細胞とを接触させる工程、
(b)被験物質を接触させた細胞における前記脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を測定し、被験物質を接触させない対照細胞における上記に対応する脳腫瘍マーカータンパク質の発現量と比較する工程、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、脳腫瘍マーカータンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程。
【請求項13】
以下の(a)〜(b)からなる群から選ばれる少なくとも1以上を含むことを特徴とする悪性脳腫瘍の診断キット:
(a)請求項9記載の脳腫瘍マーカータンパク質検出用抗体の少なくとも1、
(b)請求項10記載のプロテインチップ。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−82433(P2007−82433A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272764(P2005−272764)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【Fターム(参考)】