説明

悪液質の予防および処置のための組成物および方法

悪液質および食欲不振のような消耗障害を予防および処置するための組成物および方法が提供される。一局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、このような哺乳動物にマクロライド系薬物とβアドレナリン作用性アゴニストとを組み合わせて投与する工程を包含し、マクロライド系薬物および上記βアゴニストは、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法§119(e)の下で、米国仮特許出願第60/753,118号(2005年12月22日出願);および、同第60/772,752号(2006年2月13日出願)からの優先権を主張する。これらの出願の開示は、その全体が、あらゆる目的のために、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(2.1 発明の分野)
本発明は、代謝障害、特に、食欲の病理的喪失、脂肪組織、および痩せた体重によって特徴付けられる障害を予防および処置するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、悪液質、特に、癌および慢性腎不全(CRI)に伴う悪液質を予防および処置するための組成物および方法に関する。本発明は、生物学、内科学、腫瘍学および薬理学の分野に関連性をもつ。
【背景技術】
【0003】
(2.2 関連技術)
異化作用による消耗、すなわち悪液質は、脂肪および骨格筋の両方の不随意かつ進行性の減損、栄養摂取の増加に対する体重減少の抵抗性、安静時エネルギー消費(REE)の上昇、タンパク質合成の減少、炭水化物代謝の変化(Coriサイクル活性の増加)、タンパク質分解のATP−ユビキチン依存性のプロテアソーム経路を介した筋肉の過剰な異化作用、および、脂肪分解を介した脂肪組織の過剰な異化作用により特徴付けられる症候群である(非特許文献1、非特許文献2)。代表的には、患者が悪液質と診断される前には、疾病前の体重の少なくとも5%または5ポンドが減損していなければならない。全癌患者のおよそ半数が、ある程度の異化作用による消耗を経験し、そして、肺、膵臓および消化管の悪性腫瘍の症例において、より高い頻度で見られる(非特許文献3)。この症候群はまた、AIDSのような免疫不全障害を有する患者、ならびに、細菌および寄生虫による疾患、慢性関節リウマチ、ならびに、小腸、肝臓、腎臓、肺および心臓の慢性疾患を罹患する患者においても見られる。悪液質はまた、食欲不振にも関連しており、そして、加齢における状態として、または、身体的外傷および火傷による傷害の結果として発現し得る。悪液質症候群は、患者の機能的な能力および生活の質を低下させ、根底にある状態を悪化させ、そして、医薬に対する耐性を低下させる。悪液質の程度は、患者の生存時間と逆相関し、そして、常に乏しい予後を伴う。近年、加齢に関連する疾患および障害は、主要な健康上の関心事および重要な問題となってきている。
【0004】
食欲減衰に対する医学用語である食欲不振は、多くの悪性腫瘍の弱化した発現であり、そして、癌、感染症、慢性臓器不全および外傷をもつ患者において観察される。食欲不振は、深刻な症候群である。なぜならば、食欲不振は、カロリー摂取の減少および栄養失調につながるからである。食欲不振の発現としては、食物の味覚および嗅覚の低下、早期の満腹、空腹感の低下、および、食物に対する依然として明らかな嫌悪感が挙げられる。むかつきおよび嘔吐もまた、症状となり得る。食欲不振の病因は、理解が不十分であり;そして、有効な治療の選択肢が限定されている。いくつかの研究は、ホルモン上の理由、社会的理由および精神的理由の組み合わせが、この症候群の発症および進行における重要な要因であり得ることを示唆する。
【0005】
しばしば、悪液質は癌に付随するという事実にもかかわらず、悪液質の発症と、腫瘍サイズ、疾患の段階および悪性腫瘍のタイプもしくは持続期間との間には、一貫した関係性は実証されていない。しかし、癌性の悪液質は、一般に、カロリー摂取の減少、安静時エネルギー消費の増加、ならびに、タンパク質、脂肪および炭水化物の代謝における変化を伴う。例えば、炭水化物代謝におけるいくつかの顕著な異常としては、異化が挙げられる:総グルコースターンオーバー率の増加、肝臓の糖新生の増加、グルコース不耐性およびグルコースレベルの上昇。脂肪分解の増加、遊離脂肪酸およびグリセロールターンオーバーの増加、脂質異常症およびリポタンパク質リパーゼ活性の低下もまた、顕著であることが頻繁である。重要なことには、癌性の悪液質に伴う体重の減少は、体内の脂肪貯蔵量の減少によってのみ引き起こされるのではなく、体内の総タンパク質質量の減少および過剰な骨格筋の消耗によっても引き起こされる。タンパク質ターンオーバーの増加およびアミノ酸酸化の不十分な調節もまた、症候群の進行における重要な要因であり得る。さらに、癌に応答して生成される特定の宿主に由来する因子(例えば、炎症促進性サイトカイン(腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−1、インターロイキン−6およびγ−インターフェロン)、急性期タンパク質(例えば、C反応性タンパク質)および特定のプロスタグランジン類)もまた、癌性の悪液質に伴うようである。
【0006】
腎機能不全に伴う悪液質に関して、基礎的な病態生理学は、理解が不十分である。慢性腎不全(CRI)は、腎機能不全のあらゆる主要な原因から生じ得る。末期段階の腎疾患の最も一般的な原因は、糖尿病性腎症と、その後の、高血圧性腎血管硬化症、ならびに、種々の原発性および続発性の糸球体症である。透析を受けていない、進行した慢性腎不全をもつ患者と、維持血液透析または慢性腹膜透析療法を受けている、末期段階の腎疾患をもつ個体との両方において、タンパク質−エネルギー栄養失調の高い有病率が存在する。悪液質および栄養失調の高い有病率は、主要な関心事である。なぜなら、タンパク質−エネルギー栄養失調のマーカーは、罹患率および死亡率を強く予言するものであるからである。報告によると、血液透析または長期にわたる腹膜透析を必要とする慢性腎不全をもつ患者の40%までが、体重の減少を示し、そして、罹患率および死亡率の増加を伴う。窒素の貯蔵量および体重のレベルの減少、ならびに、アルブミンおよびトランスフェリンの内臓タンパク質貯蔵の枯渇が観察される。栄養失調の原因は多因性であり、その原因としては、血液の損失、透析中のタンパク質および他の栄養分の損失、慢性疾患に起因する異化作用、ならびに、味覚の変化に起因する食欲不振、最適水準未満の経口摂取、ならびに、抑うつが挙げられる(非特許文献4)。
【0007】
悪液質および食欲不振を処置するための現在の方法は、せいぜい、制限された利益を有するだけである。Yavusen(非特許文献5)により要約されるように、否定的、混合型、または、不確定な結果をもたらした無作為化管理臨床治験(randomized controlled clinical trial)の例として、ヒドラジン硫酸塩、シプロヘプタジン、ペントキシフィリン、メラトニン、エリスロポエチン(インドメタシン有り無し)、エイコサペンタエン酸、アンドロゲン作用性ステロイド、Ghrelin、インターフェロンおよびドロナビノール(Dronabinol)を用いた治験が挙げられる。これら総説された全ての薬物のうち、コルチコステロイドおよびプロゲスチンの2つのタイプのみが、複数の無作為化管理臨床治験において、一貫して肯定的な結果を示した。
【0008】
特に、プロゲステロン誘導体である酢酸メゲストロールは、癌性の悪液質患者において、食欲および体重を増加する(が、生活の質、生存率、または、機能的な能力は増加させない)ことが示された。酢酸メゲストロールおよび/またはその代謝産物は、直接的または間接的のいずれかで食欲を刺激して体重の増加をもたらしても、腫瘍壊死因子αのようなメディエーターの産生もしくは作用と干渉することによって、代謝経路を変更してもよい。臨床研究からの証拠は、酢酸メゲストロール治療の間に観察された体重の増加が、その糖質コルチコイド様作用または浮腫の生成ではなく、薬物による食欲刺激作用または代謝作用に関連することを示唆する。
【0009】
βアドレナリン作用性アゴニスト(βアゴニスト)の投与は、ヒトにおける同化作用と関連することが知られる(非特許文献6)。βアゴニストは、タンパク質合成を増加することによって、そして、ATP依存性のユビキチン−プロテアソーム経路を干渉することによって、最低水準の体重を増加させる(非特許文献7)。臨床治験は、βアゴニストが健康なアスリート(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)、および筋ジストロフィーを罹患する患者(非特許文献11)において最低水準の体重を増加させ得ることを示した。高度に悪液質の腫瘍をもつラットおよびマウスに注射により投与したβアゴニストは、報告によれば、筋肉の消耗を減少または逆転させる(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。しかしながら、驚くべきことに、βアゴニストは、癌またはCRIにおける悪液質の予防または処置について、ヒトにおいて研究されていない。さらに、βアゴニストであるフマル酸ホルモテロール(formoterol fumarate)は、特に、経口摂取により投与されるとき、癌、CRIまたは加齢性の筋肉減少症(sarcopenia)における悪液質の予防または処置について、動物においてもヒトにおいても研究されていない。フマル酸ホルモテロールが、経口的に生体利用可能であることが公知であり、そして、患者の利便性およびコンプライアンスの観点で、経口の投与経路が、他の投与経路(例えば、腹腔内注入または吸入)を上回る有意な利益を提供する限りにおいて、この後者の所見は、驚くべきことである。また、フマル酸ホルモテロールが、哺乳動物またはヒトのいずれかにおける抗悪液質性の予防手段として研究されたことがないことも驚くべきことである。というのも、薬物の同化作用は、悪液質の危険がある個体または「前悪液質性(pre−cachectic)」の代謝不均衡を患っているが、まだ著しい不随意の消耗を患っていない個体の痩せた体重および体力を増加させることに有効であるはずだからである。
【0010】
癌性の悪液質は、炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IL6、CRPなど)のレベルの上昇を伴うので、前臨床研究は、イブプロフェン(非特許文献16)およびインドメタシン(非特許文献17)のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が、有益な作用を有し得ることを示唆した。エリスロマイシンに構造的に関連するマクロライド系抗生物質もまた、抗炎症特性を有することが知られる(非特許文献18)。抗炎症性のマクロライド系薬物としては、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシンおよびアジスロマイシンが挙げられる。小規模で、無作為化されておらず、かつ、管理されていない臨床研究において、Sakamotoおよび共同研究者(非特許文献19、非特許文献20)は、クラリスロマイシンを用いた非小細胞肺癌患者の処置が、生存時間のメジアンを増加させ、IL6の血清レベルを減少させ、そして、体重を増加させたことを報告した。しかし、癌性の悪液質患者におけるマクロライド系薬物を用いた無作為化管理臨床治験は行われておらず、癌性の悪液質患者におけるパフォーマンスステータス、クオリティオブライフおよび機能的な性能に対するマクロライド系薬物の作用は報告されていない。
【0011】
CRIの症例において、Kalantar−Zadeh(非特許文献21)は、患者が高い心臓血管性の死亡率を有し、そして、タンパク質−エネルギー栄養失調および炎症が、これらの患者における悪液質および高い死亡率の両方の主要な要因として暗示されていることを示した。これらの研究者は、この医療分野において、CRI患者における栄養失調および炎症を治す方法としての総意はなく、そして、この疾患の複雑さは、複数のインターベンション様式を必要とする可能性があることを注記している。Basaria Sによる総説(非特許文献22)は、慢性腎疾患に関連する重篤な体重の減少のための、同化作用性アンドロゲン作用性ステロイドを用いた処置を提案する。
【0012】
したがって、悪液質および食欲不振は、医師および患者をがっかりさせ、かつ致命的な問題のままである。動物およびヒトの両方の研究は、栄養によるサポートのみでは、癌を有する宿主における痩せた体重を埋め合わせるには概ね無効であることを示唆する。細胞傷害性の抗新生物治療に対する補助治療としての、高カロリー輸液サポートの有用性を調べる無作為化された治験は、処置結果においてほとんど改善を示さない。例えば、非特許文献23を参照のこと。このことは、高カロリー輸液が動物における腫瘍増殖を刺激し得るということを明らかに示すと共に、癌治療における高カロリー輸液の慣用的な使用が支持されないということを示唆する(非特許文献24)。
【0013】
過去15年間に行われた癌性の悪液質の研究・治験のこの全体的に満足のいかない結果と、有意な体重の減少が明らかになる前に腫瘍および/または宿主により駆動される分子レベルでの代謝不均衡が重要であり得るという理解の増加は、組み合わさって、悪液質/食欲不振のインターベンションが、患者が初期に顕著な体重の減少を呈するかどうかにかかわらず、進行性の癌患者において初期の診断時になされるべきであることを示唆する。Muscaritoliら(非特許文献2)は、以下のような点を検討する:「現在悪液質の表現型特徴を代表するものとして考えられている、代謝、生化学および分子レベルの変化のいくつかは、顕著な体重の減少がない場合でさえも、最初の癌の診断時にすでに存在している。したがって、癌性の悪液質が「早期の現象」として考慮されるべきであるという見通しが強化される。患者の死亡率だけでなく、第一選択および第二選択の化学療法/放射線療法に応じた外科手術の危険性、そして、最終的ではなくクオリティオブライフに否定的な影響を与えることにおける、癌性の悪液質の関連性は、近年、前進的に明らかになってきている。不運なことに、癌性の悪液質の目立った特徴、すなわち、筋肉の質量および機能の絶え間のない進行性の喪失は、現在利用可能な栄養学、代謝、または薬理学的な手法では、最低限に復帰可能であることが示されている。その結果、最終的に筋肉の消耗および悪液質につながる代謝摂動を復帰させるのではなく、防止することを意図した、早期かつ効果的なインターベンションの開発が、科学的社会による無視できない要求として現在理解されている」。
【非特許文献1】Body JJ,Curr Opin Oncol 11:255−60,1999
【非特許文献2】Muscaritoli M,et al:Eur J Cancer 42:31−41,2006
【非特許文献3】Dewys WD,et al:Am J Med 69:491−7,1980
【非特許文献4】Kalantar−Zadeh K:Semin Dial 18:365−9,2005
【非特許文献5】Yavuzsen T,et al:J Clin Oncol 23:8500−11,2005
【非特許文献6】Choo JJ,Horan MA,Little RA,et al,Am J Physiol 263:E50−6,1992
【非特許文献7】Lambert CP,Uc EY,Evans WJ:Pharmacotherapy of Cachexia:311−324,2005
【非特許文献8】Caruso J,Hamill J,Yamauchi M,et al:J Appl Physiol 98:1705−11,2005
【非特許文献9】Caruso JF,et al:Med Sci Sports Exerc 27:1471−6,1995
【非特許文献10】Martineau L,et al:Clin Sci(Lond)83:615−21,1992
【非特許文献11】Kissel JT,et al:Neurology 57:1434−40,2001
【非特許文献12】Busquets S et al.,Cancer Res 64:6725−31(2004)
【非特許文献13】Carbo N et al.,Cancer Lett 115:113−8(1997)
【非特許文献14】Costelli P et al.,J Clin Invest 95:2367−72(1995)
【非特許文献15】Piffar PM et al.,Cancer Lett 201:139−48(2003)
【非特許文献16】McMillan DC,et al:Br J Cancer 79:495−500,1999
【非特許文献17】Lundholm K,et al:Cancer Res 54:5602−6,1994
【非特許文献18】Amsden GW:J Antimicrob Chemother 55:10−21,2005
【非特許文献19】Mikasa K,et al:Chemotherapy 43:288−96,1997
【非特許文献20】Sakamoto M et al.,Chemotherapy 47:444−51 2001
【非特許文献21】Kalantar−Zadeh K,Stenvinkel P,Bross R,et al:Kidney insufficiency and nutrient−based modulation of inflammation.Curr Opin Clin Nutr Metab Care 8:388−96,2005
【非特許文献22】Basaria S,Wahlstrom JT,Dobs AS.Clinical review 138:Anabolic−androgenic steroid therapy in the treatment of chronic diseases.J Clin Endocrinol Metab.2001 Nov;86(11):5108−17
【非特許文献23】Brennan,M.F.,and Burt,M.E.,1981,Cancer Treatment Reports 65(Suppl.5):67−68
【非特許文献24】Visner,D.L.,1981,Cancer Treatment Reports 65(Suppl 5):1−2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、悪液質および食欲不振に苦しむ人々を救済するための、より良い処置の選択肢に対する必要性が残っている。また、悪液質に伴う代謝不均衡に苦しんでいるが、まだ顕著な不随意の体重の損失を経験していない個体において、食欲不振および悪液質の臨床上の発現が顕著になることを防止する必要性が存在する。本発明は、これらおよび他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(3.発明の要旨)
本発明は、哺乳動物において、悪液質、食欲不振および他の消耗障害を予防および処置するための方法および組成物を提供する。任意の特定の作用理論に拘束されることなく、本発明の方法および組成物は、病人の炎症促進性サイトカイン(IL6およびTNF)および急性期タンパク質(C反応性タンパク質)のレベルを低下させる一方で、また、タンパク質合成を増加させ、かつ、異化作用によるタンパク質分解を干渉することにより、痩せた体重を増加させることによって、悪液質、食欲不振および他の消耗障害を罹患する人々、または、これらの消耗障害を罹患する危険がある人々の健康を改善することが期待される。本発明はまた、幸福感の増大、食欲増進、疲労の減少、ならびに、体力、忍耐力、臨床上のパフォーマンスステータスおよび医薬に対する耐性の改善の観点から、このような状態に苦しむ患者にクオリティオブライフの改善を提供する。
【0016】
第一の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗を予防または処置するための方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、このような哺乳動物に、マクロライド系薬物およびβアゴニストが、組み合わせて投与されたときに、消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で投与されるように、マクロライド系薬物よびβアゴニストを組み合わせて投与する工程を包含する。別の実施形態において、本発明の方法は、マクロライド系薬物およびβアゴニストに加えて、薬学的に有効な量の非ステロイド性抗炎症剤を投与する工程を包含する。これらの実施形態のいくつかにおいて、非ステロイド性抗炎症剤は、非選択的シクロオキシゲナーゼインヒビター(例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ナプロキセンまたはインドメタシンまたはイブプロフェン);または、選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)インヒビター(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブまたはメロキシカム)である。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、食欲刺激剤に対する補助治療として投与される、抗炎症性剤および同化作用剤の組み合わせを提供し、哺乳動物が、適切な栄養摂取を受けるのを補助する。
【0017】
より具体的な一実施形態において、本発明の方法はさらに、薬学的に有効な量の食欲を刺激するステロイドを投与する工程を包含する。本明細書において使用される場合、「食欲を刺激するステロイド」は、食欲を増強する天然のホルモンの合成バージョンである。いくつかの実施形態において、食欲を刺激するステロイドのA環は、非芳香族性のA環と、ステロイドの炭素骨格の3位にあるケト基とを有する。このようなステロイドは、経口、経皮パッチ、頬、または、鼻腔内での送達による送達を容易にするように改変され得る。より具体的な実施形態において、食欲を刺激するステロイドは酢酸メゲストロールである。いくつかの実施形態において、酢酸メゲストロールは、約100mg/日と約1200mg/日の間の用量;より具体的には、約100mg/日と約1000mg/日との間の用量;なおより具体的には、約400mg/日と約1200mg/日との間の用量で投与される。
【0018】
いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物とβアゴニストとは、実質的な薬理学的相互作用をもたない。より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、約70%未満、約50%未満、および約30%未満だけ異なる血清半減期を有する。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物とβアゴニストとは、実質的に異なる浄化機構を有する。マクロライド系薬物およびβアゴニストは、同じまたは異なる薬学的キャリア中で投与され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物は、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンである。より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンである。なおより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約25mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される。他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約50mg/日と約300mg/日との間の用量で投与される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約50mg/日と約200mg/日との間の用量で投与される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約150mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロール、バムブテロール(bambuterol)またはアルブテロール(albuterol)である。より具体的な実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロールである。βアゴニストがフマル酸ホルモテロールである実施形態の中でも、本発明のいくつかの実施形態には、フマル酸ホルモテロールが約5μg/日と約500μg/日との間の用量、および約5μg/日と約240μg/日との間の用量で投与される実施形態が含まれる。
【0021】
第二の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための薬学的組成物を提供し、この組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に、マクロライド系薬物およびβアゴニストを組み合わせて含有する。マクロライド系薬物およびβアゴニストは、組み合わせて投与されたときに、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で提供される。
【0022】
いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物とβアゴニストとは、実質的な薬理学的相互作用を持たない。より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、約70%未満、約50%未満、および約30%未満だけ異なる血清半減期を有する。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、実質的に異なる浄化機構を有する。マクロライド系薬物およびβアゴニストは、同じまたは異なる薬学的キャリア中で投与され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物は、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンである。より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンである。なおより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約25mg/日と約750mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約50mg/日と約300mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約50mg/日と約200mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約150mg/日と約750mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。
【0024】
いくつかの実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロール、バムブテロールまたはアルブテロールである。より具体的な実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロールである。βアゴニストがフマル酸ホルモテロールである実施形態の中でも、本発明のいくつかの実施形態には、フマル酸ホルモテロールが、このような哺乳動物に約5μg/日と約500μg/日との間の用量、および約5μg/日と約240μg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される実施形態が含まれる。
【0025】
第三の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法を提供し、この方法は、このような哺乳動物に、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量の、マクロライド系薬物(例えば、ロキシスロマイシン)を投与する工程を包含する。
【0026】
第四の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法および組成物を提供し、この方法は、このような哺乳動物に、経口投与のために適切な投薬形態で、かつ、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で処方された、βアゴニスト(例えば、フマル酸ホルモテロール)を投与する工程を包含する。
【0027】
これらおよび他の局面および利点は、以下の説明を添付の図面と組み合わせて読むと、明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(5.本発明のいくつかの実施形態の説明)
第一の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法を提供し、この方法は、このような哺乳動物に、マクロライド系薬物およびβアゴニストを組み合わせて投与する工程を包含する。マクロライド系薬物およびβアゴニストは、組み合わせて投与されるときに、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で投与される。たった今挙げた方法のいくつかの実施形態において、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、別々の薬学的に受容可能なキャリア中で投与される。たった今挙げた方法の他の実施形態においては、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、同じ薬学的に受容可能なキャリア中で投与される。2つの薬剤が別々にかまたは組み合わせて投与される、本発明における使用に適切な薬学的組成物の選択および調製は、当業者に公知である。
【0029】
別の実施形態において、本発明の方法は、マクロライド系薬物およびβアゴニストに加えて、薬学的に有効な量の非ステロイド性抗炎症剤を投与する工程を包含する。これらの実施形態のいくつかにおいて、非ステロイド性抗炎症剤は、非選択的シクロオキシゲナーゼインヒビター(例えば、アスピリン、ジクロフェナク、ナプロキセンまたはインドメタシンまたはイブプロフェン);または、選択的シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)インヒビター(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブまたはメロキシカム)である。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、食欲刺激剤に対する補助治療として投与される、抗炎症性剤および同化作用剤の組み合わせを提供し、哺乳動物が、適切な栄養摂取を受けるのを補助する。
【0030】
適切なマクロライド系薬物としては、有用な抗炎症性特性を有することが知られる薬物が挙げられる。適切なマクロライド系薬物の例としては、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンが挙げられる。1つの特定の例は、ロキシスロマイシンである。本発明のいくつかの実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約25mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される。他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約50mg/日と約300mg/日との間の用量で投与される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約50mg/日と約200mg/日との間の用量で投与される。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、約150mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される。本発明の方法において使用されるマクロライド系薬物についての適切な投薬形態を同定、獲得および調製するための供給源および方法は、当業者に明らかである。
【0031】
適切なβアゴニストとしては、バムブテロール、アルブテロール、ビトルテロール(bitolterol)、フマル酸ホルモテロール、イソエタリン(isoetharine)、イソプロテレノール、メタプロテレノール、ピルブテロール(pirbuterol)、リトドリン、サルメテロール、ベンゼンジメタノールおよびテルブタリンが挙げられる。いくつかの実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロール、バムブテロールまたはアルブテロールである。より具体的な実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロールである。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストは、約5μg/日と約500μg/日との間の用量で投与されるフマル酸ホルモテロールである。なお他のより具体的な実施形態において、βアゴニストは、約5μg/日と約240μg/日との間の用量で投与されるフマル酸ホルモテロールである。本発明の方法において使用されるβアゴニストについての適切な投薬形態を同定、獲得および調製するための供給源および方法は、当業者に明らかである。
【0032】
いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物とβアゴニストとは、実質的な薬理学的相互作用を持たない。より具体的な実施形態において、これらの2つの成分は、約70%未満だけ異なる血清半減期を有する。他のより具体的な実施形態において、これらの2つの成分は、約50%未満だけ異なる血清半減期を有する。なお他のより具体的な実施形態において、これらの2つの成分は、約30%未満だけ異なる血清半減期を有する。なお他のより具体的な実施形態において、これらの2つの成分は、実質的に異なる浄化機構を有する。適切な血清半減期および浄化機構の決定は、当業者により行われ得る。
【0033】
他の実施形態において、本発明の方法は、薬学的に有効な量の食欲を刺激するステロイドを投与する工程と組み合わせて、上記の組み合わせのいずれか1つを投与する工程を包含する。より具体的な実施形態において、本発明の方法は、薬学的に有効な量の酢酸メゲストロールを投与する工程を組み合わせて、上記の組み合わせのいずれか1つを投与する工程を包含する。酢酸メゲストロールと組み合わせて上記の組み合わせのいずれか1つを投与する工程を包含する実施形態のいくつかにおいて、酢酸メゲストロールは、約100mg/日と約1200mg/日の間の用量で投与される。酢酸メゲストロールと組み合わせて上記の組み合わせのいずれか1つを投与する工程を包含する他の実施形態において、酢酸メゲストロールは、約100mg/日と約1000mg/日との間の用量で投与される。酢酸メゲストロールと組み合わせて上記の組み合わせのいずれか1つを投与する工程を包含するなお他の実施形態において、酢酸メゲストロールは、約400mg/日と約1200mg/日との間の用量で投与される。酢酸メゲストロール、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、単一の薬学的に受容可能なキャリア中の組み合わせとして投与されても、個々に別々の薬学的キャリア中で同時に投与されてもよい。
【0034】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において消耗障害を予防および処置するための薬学的組成物を提供し、この組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中に、マクロライド系薬物とβアゴニストとを組み合わせて含有する。マクロライド系薬物およびβアゴニストは、組み合わせて投与されたときに、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量で提供される。
【0035】
マクロライド系薬物およびβアゴニストは、上に提供される考慮に従って選択される。いくつかの実施形態において、マクロライド系薬物とβアゴニストとは、実質的な薬理学的相互作用を持たない。より具体的な実施形態としては、マクロライド系薬物およびβアゴニストが、約70%未満だけ異なる血清半減期を有する実施形態が含まれる。他の実施形態としては、マクロライド系薬物およびβアゴニストが、約50%未満だけ異なる血清半減期を有する実施形態が含まれる。なお他の実施形態としては、マクロライド系薬物およびβアゴニストが、約30%未満だけ異なる血清半減期を有する実施形態が含まれる。なお他の実施形態において、マクロライド系薬物およびβアゴニストは、実質的に異なる浄化機構を有する。本発明の方法において使用されるマクロライド系薬物およびβアゴニストについての適切な投薬形態を同定、獲得および調製するための供給源および方法は、当業者に明らかである。
【0036】
本発明の組成物のいくつかの実施形態において、マクロライド系薬物は、ロキシスロマイシン、アジスロマイシンまたはクラリスロマイシンである。より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物は、ロキシスロマイシンである。なおより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約50mg/日と約750mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。他のより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約50mg/日と約300mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。なお他のより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約50mg/日と約200mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。なお他のより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物はロキシスロマイシンであり、そして、ロキシスロマイシンは、このような哺乳動物に約150mg/日と約750mg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。適切な投薬形態を同定、獲得および調製するための供給源および方法は、当業者に明らかである。
【0037】
適切なβアゴニストとしては、アルブテロール、ビトルテロール、フマル酸ホルモテロール、イソエタリン、イソプロテレノール、メタプロテレノール、ピルブテロール、リドドリン、サルメテロール、ベンゼンジメタノールおよびテルブタリンが挙げられる。本発明の組成物のいくつかの実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロール、バムブテロールまたはアルブテロールである。しかし、βブロッカーは、適切な薬剤としては含められない。より具体的な実施形態において、βアゴニストは、フマル酸ホルモテロールである。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストはフマル酸ホルモテロールであり、フマル酸ホルモテロールは、このような哺乳動物に約5μg/日と約240μg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。他のより具体的な実施形態において、βアゴニストはフマル酸ホルモテロールであり、そして、フマル酸ホルモテロールは、このような哺乳動物に約5μg/日と約40μg/日との間の用量を送達するのに十分な量で提供される。適切な投薬形態を同定、獲得および調製するための供給源および方法は、当業者に明らかである。
【0038】
第三の局面において、本発明は、哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法を提供し、この方法は、このような哺乳動物に、上記消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに有効な量の、ロキシスロマイシンを投与する工程を包含する。
【0039】
本明細書中に記載される方法および組成物は、成熟であっても未成熟であっても(すなわち、成人であっても子供であっても)ヒトおよび動物、特に、経済的または感情的な価値の高い動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌなど)の両方に適切である。
【0040】
本明細書中に記載される組成物および方法は、消耗障害を予防または少なくとも緩和するのに十分な量および頻度で投与される。一実施形態において、消耗障害を罹患するか、または消耗障害を発症する危険のある患者が、1日1回、本明細書中に記載される方法および組成物を用いて処置される。別の実施形態において、消耗障害を罹患するか、または消耗障害を発症する危険のある患者が、1日2回、本明細書中に記載される方法および組成物を用いて処置される。投薬形態は、治療的に有効な用量(すなわち、消耗障害を少なくとも緩和するのに十分な用量(本明細書中に記載される活性な薬学的成分の量を含む))を送達するのに適した任意の形態であり得る。
【0041】
患者の疾患の進行度は、患者の外観(例えば、体重の目に見える変化および測定可能な変化)、身体の組成(例えば、痩せた体重)、(例えば、体力および忍耐力の運動試験における)患者の機能における関連の変化を測定および観察することによって、ならびに、関連の臨床上マーカーを決定することによって決定され得る。このようなマーカーの例としては、炎症促進性サイトカイン(IL−6およびTNF)および急性期タンパク質(C反応性タンパク質)のレベル、痩せた体重、人間工学的な性能、体力、臨床上のパフォーマンスステータスおよびクオリティオブライフが挙げられるがこれらに限定されない。臨床上の進行に関連するこのような特徴およびマーカーの決定、測定および評価は、当業者に公知である。
【0042】
別の局面において、本発明はまた、根底にある病理(癌、AIDS、CRIなど)に起因して、または、代謝プロセスの変更(例えば、筋肉の超異化作用)もしくは炎症状態(例えば、IL6、TNFまたはCRPレベルの上昇)に起因して、悪液質および/または食欲不振の状態に陥る危険のある哺乳動物において、顕著な体重の減少を予防するための方法を提供する。これらの実施形態において、本発明により提供される組成物および投薬レジメンのいずれかが、悪液質または食欲不振の状態に関連する代謝および炎症の不均衡に陥るか、またはこれを経験しやすい哺乳動物に投与されて、それにより、悪液質または食欲不振の症状の開始を遅延するか、あるいは、個体における悪液質または食欲不振の状態の進行を遅らせる。これらの状態のいずれかの決定は、当業者に利用可能な知識、例えば、個体における顕著な体重の減少(例えば、平均的な正常体重の約5%を超える減少)、正常レベルを上回る炎症マーカー(例えば、IL6、TNFα、C反応性タンパク質)、または、ユビキチン−プロテアソームタンパク質分解またはこれらのいくつかの組み合わせの検出を用いて決定され得る。これらの実施形態において、本発明により提供される方法および組成物を用いた処置を受ける患者は、悪液質または食欲不振の状態の根底にある原因(例えば、化学療法、放射線療法、骨髄移植など)に対処するために使用される処置レジメンをもっと十分に許容することが期待され、このような当業者が認識する処置レジメンは、最大の治療効果を達成するために、厳密なスケジュールに従って投与されなければならない。
【0043】
いくつかの実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物は、別々の薬学的キャリア中で同時に投与される。βアゴニストが別々に投与される実施形態の中で、薬学的キャリアは、経口摂取または鼻腔栄養チューブを用いた経腸投与に適した液体(溶液、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、βアゴニストの非経口注入に適した液体(溶液、懸濁液またはエマルジョン)である。なお他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にβアゴニストの即時放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(例えば、散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にβアゴニストの延長放出、制御放出または持続放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。マクロライド系薬物が別個に投与される実施形態の中で、薬学的キャリアは、経口摂取または鼻腔栄養チューブを用いた経腸投与に適した液体(溶液、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、マクロライド系薬物の非経口注入に適した液体(溶液、懸濁液またはエマルジョン)である。なお他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にマクロライド系薬物の即時放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(例えば、散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にマクロライド系薬物の延長放出、制御放出または持続放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。このような処方物を達成するための方法および材料は、当業者に公知である。
【0044】
より具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する液体経口投薬形態のための薬学的キャリアは、pH4とpH7との間に調整され、3%〜6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)および約0.01%〜約1%の抗菌性保存料(例えば、安息香酸ナトリウムまたはソルビン酸カリウム)、ならびに、当該分野で公知の種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有し、かつ、約0.001mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりβアゴニストを溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する経口溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールおよび約0.05%〜約0.2%のソルビン酸カリウム、ならびに、種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0045】
なおより具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する非経口注入投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約4とpH約7との間に調整され、約3%〜約6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)を含有し、かつ、約0.001mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりβアゴニストを溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する非経口用溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールを含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0046】
より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物を含有する経口液体投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約4とpH約7との間に調整され、約3%〜約6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)および約0.01%〜約1%の抗菌性保存料(例えば、安息香酸ナトリウムまたはソルビン酸カリウム)、ならびに、当該分野で公知の種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有し、かつ、約0.5mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりマクロライド系薬物を溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物を含有する経口溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールおよび約0.05%〜約0.2%のソルビン酸カリウム、ならびに、種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0047】
より具体的な実施形態において、マクロライド系薬物を含有する非経口注入投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約4とpH約7との間に調整され、約3%〜約6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)を含有し、かつ、約0.5mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりマクロライド系薬物を溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、マクロライド系薬物を含有する非経口用溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールを含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0048】
なおより具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する固形経口投薬形態のための薬学的キャリアは、βアゴニストと、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなポリマーからなる結合剤とでコーティングされ、胃内容物へのβアゴニストの本質的に即時の放出(約60分以内に全体が溶解する)をもたらすHPMCのようなポリマーでさらにコーティングされた、スクロースまたは微結晶性セルロース(MCC)の微粒子である。βアゴニストを含有する即時放出微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。即時放出βアゴニスト粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0049】
別の具体的な実施形態において、βアゴニストを含有する固形経口投薬形態のための薬学的キャリアは、βアゴニストと、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなポリマーからなる結合剤とでコーティングされ、胃内容物へのβアゴニストの持続放出または延長放出または制御放出をもたらすHPMCのようなポリマーで必要に応じてさらにコーティングされた、スクロースまたは微結晶性セルロース(MCC)の微粒子である。βアゴニストを含有する制御放出または持続放出または延長放出の微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。持続放出または延長放出または制御放出のβアゴニスト粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0050】
別の実施形態において、マクロライド系薬物を含有する固形経口投薬形態のための薬学的組成物は、MCCおよびポリマー性結合剤(例えば、HPMC)と共に同時に押し出し成形された、約50%〜約90%のマクロライド系薬物を含有する微粒子であり、胃内容物へのマクロライド系薬物の即時放出をもたらす。マクロライド系薬物を含有する即時放出微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。持続放出または延長放出または制御放出のβアゴニスト粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0051】
別の具体的な実施形態において、マクロライド系薬物を含有する固形経口投薬形態のための薬学的組成物は、MCCおよびポリマー性結合剤(例えば、HPMC)と共に同時に押し出し成形され、胃内容物へのマクロライド系薬物の持続放出または延長放出または制御放出をもたらす適切なポリマーでさらにコーティングされた、約50%〜約90%のマクロライド系薬物を含有する微粒子である。マクロライド系薬物を含有する制御放出、持続放出または延長放出の微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。持続放出または延長放出または制御放出のβアゴニスト粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0052】
いくつかの実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物は、単一の薬学的キャリア内に組み合わされる。βアゴニストおよびマクロライド系薬物が組み合わせて投与される実施形態の中で、薬学的キャリアは、経口摂取または鼻腔栄養チューブを用いた経腸投与に適した液体(溶液、シロップ、懸濁液またはエマルジョン)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、マクロライド系薬物と組み合わせたβアゴニストの非経口注入に適した液体(溶液、懸濁液またはエマルジョン)である。なお他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にβアゴニストおよびマクロライド系薬物の即時放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(例えば、散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。他の実施形態において、薬学的キャリアは、胃の区画にβアゴニストおよびマクロライド系薬物の延長放出、制御放出または持続放出を提供する、経口摂取に適した固形または半固形の投薬形態(散剤、サシェ剤、錠剤またはカプセル剤)である。このような処方物を達成するための方法および材料は、当業者に公知である。
【0053】
より具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物の両方を含有する経口液体投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約4とpH約7との間に調整され、約3%〜約6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)および約0.01%〜約1%の抗菌性保存料(例えば、安息香酸ナトリウムまたはソルビン酸カリウム)、ならびに、当該分野で公知の種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有し、かつ、約0.001mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりβアゴニストを溶解し得、さらに、約0.5mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりマクロライド系薬物を溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物を含有する経口溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールおよび約0.05%〜約0.2%のソルビン酸カリウム、ならびに、種々の矯味矯臭および/または甘味の成分を含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0054】
なおより具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物の両方を含有する非経口注入投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約4とpH約7との間に調整され、約3%〜約6%の糖(例えば、ソルビトール、スクロース、デキストロース、ラクトースまたはマンニトール)を含有し、かつ、約0.001mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりβアゴニストを溶解し得、さらに、約0.5mg/mL〜約10mg/mLの濃度範囲にわたりマクロライド系薬物を溶解し得る、約5mM〜約200mMの緩衝液(酢酸、クエン酸、リン酸またはコハク酸)の水溶液である。なおより具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物を含有する非経口溶液投薬形態のための薬学的キャリアは、pH約5.5とpH約6.5との間に調整され、約4%〜約5%のマンニトールを含有する、約10mM〜約30mMのクエン酸緩衝液水溶液である。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0055】
より具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物の両方を含有する固形経口投薬形態のための薬学的キャリアは、βアゴニストを含有する即時放出微粒子(上記のもの)を含有し、そしてまた、マクロライド系薬物を含有する即時放出微粒子(上記のもの)を含有する、カプセルまたは錠剤である。βアゴニストまたはマクロライド系薬物を含有する即時放出微粒子の割合および量は、各カプセルまたは錠剤中に各薬物の所望される用量を与えるように調節され得る。即時放出微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。即時放出βアゴニスト粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0056】
別のより具体的な実施形態において、βアゴニストおよびマクロライド系薬物の両方を含有する固形経口投薬形態のための薬学的キャリアは、βアゴニストを含有する制御放出または持続放出または延長放出の微粒子(上記のもの)を含有し、そしてまた、マクロライド系薬物を含有する制御放出または持続放出または延長放出の微粒子(上記のもの)を含有する、カプセルまたは錠剤である。βアゴニストまたはマクロライド系薬物を含有する制御放出または持続放出または延長放出の微粒子の割合および量は、各カプセルまたは錠剤中に各薬物の所望される用量を与えるように調節され得る。持続放出または延長放出または制御放出の微粒子は、当業者に公知の方法を用いて、カプセル内に充填されても、錠剤へと圧縮されてもよい。持続放出または延長放出または制御放出粒子を含有する錠剤およびカプセル剤はまた、当業者に公知の、他の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得、この賦形剤としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):ラクトース、デンプン、滑石またはステアリン酸マグネシウム。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0057】
薬学的キャリアを記載する全ての実施形態において、投薬形態は、当業者に公知の方法および技術を用いて調製され得る。代表的な方法および技術としては、以下が挙げられ得る(が必ずしもこれらに限定されない):混合(ブレンド、撹拌、超音波処理、湿式粉砕、乳化、均質化)、乾式粉砕、製粉、加熱/冷却、濾過、充填(液体または粉末)、コーティング(スプレーまたは流動床)、乾燥(空気、熱、スプレー、流動床または真空)、押出し成形、球状化(spheronization)および圧縮。このような処方物を達成するための方法および材料は当業者に公知である。
【0058】
本発明の方法および組成物の作用の任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、骨格筋のタンパク質の分解は、ユビキチン−プロテアソーム系を関与させることが実証されている。ユビキチン−プロテアソーム経路は、タンパク質の半減期を支配するATP依存性の調節システムとして、細胞周期の調節、シグナル伝達、免疫系の応答、アポトーシスおよび腫瘍形成に関与する(Camps C,Iranzo V,et al.,Support Care Cancer.2006 Dec;14(12):1173−83.Epub 2006 Jul 4)。これは、筋肉減少症としても知られる筋肉の消耗(老人集団のクオリティオブライフを低下させ、罹患率を増加させ、そして、平均余命を短くする)に特に有効である(Inui A.「Feeding−related disorders in medicine,with special reference to cancer anorexia−cachexia syndrome」,Rinsho Byori.2006 Oct;54(10):1044−51;Argiles JM,Busquets S,et al.,Int J Biochem Cell Biol.2005 May;37(5):1084−104.Epub 2004 Dec 30)。したがって、生化学および代謝の徴候を鑑みて、当業者は、本発明により提供される方法および組成物はまた、ユビキチン−プロテアソーム系の調節不全に関連する筋肉減少症および他の障害を処置するために使用され得ることを期待する。
【実施例】
【0059】
(6.実施例)
以下の実施例は、本発明の特定の局面を例示するため、そして、当業者が本発明を実施するのを補助するために提供される。これらの実施例は、いかなる様式においても、決して本発明の範囲を制限するものとしてみなされるべきでない。
【0060】
(6.1 実施例1:進行性の癌を有する患者における悪液質の予防および処置において、本発明の安全性および効果をプラシーボと比較する、無作為化二重盲検予備研究)
以下に対するフマル酸ホルモテロール+ロキシスロマイシンの組み合わせの影響を決定するための研究を行う:
・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス
・体重
・二重X線吸収骨塩定量法(DEXA)および生体電気性インピーダンス解析(BIA)により決定した身体の組成
・質問票を用いて評価したクオリティオブライフ(QoL)
・握り強度、握り強度による疲労、階段の昇降時間および6分間の歩行時間の決定により評価した体力および忍耐力、ならびに
・C反応性タンパク質、IL6およびTNFの血清レベル、ならびに
・種々の安全性パラメーター(例えば、血液化学、ECGおよび臨床化学)。
【0061】
研究の被験者は、進行性かつ不知の非小細胞肺癌を有するいずれかの性別の成人でなければならない。被験者は、調査員による最初の臨床評価により、6ヶ月以上の平均余命を有さなければならない。被験者はまた、腎機能または肝機能が正常な範囲外であるという徴候を示した場合、研究から除外する。
【0062】
本研究は、一腕あたり30人の被験者の、18週にわたる二腕(two−arm)盲検プラシーボ管理治験である。被験者を、2つのコホートにグループ分けする:
・コホート1:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシン+フマル酸ホルモテロール;
・コホート2:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシンのプラシーボ+フマル酸ホルモテロールのプラシーボ;
ロキシスロマイシンは、1日2回80mgで経口投与し、そして、ホルモテロールは、1日2回経口投与する。
【0063】
(6.2 実施例2:進行性の癌を有する患者における悪液質の予防および処置において、ロキシスロマイシン単独、ホルモテロール単独、ロキシスロマイシンおよびホルモテロールの組み合わせ、の安全性および効果を比較する、無作為化二重盲検予備研究)
以下に対するフマル酸ホルモテロール+ロキシスロマイシンの組み合わせの影響を決定するための研究を行う:
・Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス
・体重
・二重X線吸収骨塩定量法(DEXA)および生体電気性インピーダンス解析(BIA)により決定した身体の組成
・質問票を用いて評価したクオリティオブライフ(QoL)
・握り強度、握り強度による疲労、階段の昇降時間および6分間の歩行時間の決定により評価した体力および忍耐力、ならびに
・C反応性タンパク質、IL6およびTNFの血清レベル、ならびに
・種々の安全性パラメーター(例えば、血液化学、ECGおよび臨床化学)。
【0064】
研究の被験者は、進行性かつ不知の非小細胞肺癌を有するいずれかの性別の成人でなければならない。被験者は、調査員による最初の臨床評価により、6ヶ月以上の平均余命を有さなければならない。被験者はまた、腎機能または肝機能が正常な範囲外であるという徴候を示した場合、研究から除外する。
【0065】
本研究は、一腕あたり30人の被験者の、18週にわたる四腕盲検プラシーボ管理治験である。被験者を、4つのコホートにグループ分けする:
・コホート1:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシン+フマル酸ホルモテロール;
・コホート2:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシン+フマル酸ホルモテロールのプラシーボ;
・コホート3:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシンのプラシーボ+フマル酸ホルモテロール;
・コホート4:標準的な治療であるカルボプラチンの二重化学療法+栄養学的なカウンセリング+ロキシスロマイシンのプラシーボ+フマル酸ホルモテロールのプラシーボ;
ロキシスロマイシンは、1日2回150mgで経口投与し、そして、ホルモテロールは、その最大耐用量で1日2回経口投与する。
【0066】
(6.3 実施例3:癌性の悪液質の動物モデルにおける、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールの筋肉節約作用(Muscle−Sparing Effect))
Busquetsら(Busquets S,et al:Cancer Res 64:6725−31,2004)の方法に従って、雌性のWistarラットに、2×10細胞/動物のYoshida AH−130腹水肝細胞癌(AH)細胞を腹腔内(i.p.)接種した(0日目)。コントロールの動物には、等量の無菌生理食塩水溶液を接種した。1日目に開始し、動物に、フマル酸ホルモテロール(i.p.)、ロキシスロマイシン(i.p.)またはマッチングさせた不活性ビヒクルの1日1回の投薬を与えた。これらの動物を5日目に屠殺した。屠殺時、心臓および腓腹筋の湿重量を測定した。(腓腹筋、心臓および腹水を除去した後の)死体の重量もまた、屠殺時に測定した。
【0067】
【表1】

表2は、実験1についての重量測定結果を示す。表3は、実験2についての重量測定結果を示す。表4は、実験3についての重量測定結果を示す。表5は実験4についての重量測定結果を示す。後段で、処置群を以下の取り決めにより設計する:
処置群=接種型/ビヒクル または 処置群=接種型/F(x)R(y)
ここで、接種型は、AHまたは生理食塩水であり、Fはフマル酸ホルモテロールであり、Rはロキシスロマイシンであり、そして、( )内の値は、フマル酸ホルモテロールおよびロキシスロマイシンの用量(i.p.、mg/kg)である。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

実施例1(表2を参照のこと)において、腓腹筋の喪失は、生理食塩水/ビヒクル群よりも、AH/ビヒクル群で有意に高く、腹水肝細胞癌の高度に悪液質の性質を示唆した。AH/F(1)R(0)群の動物は、AH/ビヒクル群の動物よりも有意に少ない腓腹筋を喪失した。AH/F(0)R(5)群の動物は、AH/ビヒクル群の動物とほぼ同じ量の腓腹筋を喪失した。種々の処置群における腓腹筋の重量変化について観察された傾向は、心臓および死体の重量について観察された傾向(表3〜6を参照のこと)と大まかに対応しており、AHの接種および処置の効果が全身性のものであり、腓腹筋に限定されないことが示唆された。
【0072】
実施例2における腓腹筋重量に対するAHおよびフマル酸ホルモテロール処置の効果は、実施例1において見られた効果と同様であった。実施例2において、AH/F(1)R(5)群の動物についての腓腹筋の重量は、AH/F(1)R(0)群の動物についての筋肉の重量と有意には異ならなかった。生理食塩水/F(0)R(5)群および生理食塩水/F(1)R(0)群におけるラットは、生理食塩水/ビヒクル群におけるラットとほぼ同じ腓腹筋重量を有した。
【0073】
実施例3における腓腹筋重量に対するAHおよびフマル酸ホルモテロールの処置の効果は、実施例1において見られた効果と同様であった。実施例3において、AH/F(1)R(40)群におけるラットは、AH/F(1)R(0)群におけるラットよりもかなり大きい腓腹筋重量を有した。驚くべきことに、AH/F(1)R(0)群の動物に関して、腓腹筋の重量は、生理食塩水/ビヒクルコントロール群の動物についての筋肉の重量と有意に異ならなかった。腓腹筋の重量はまた、生理食塩水/ビヒクルコントロール群と比較して、生理食塩水/F(0)R(40)群においても異ならなかった。
【0074】
実施例4における腓腹筋の重量に対するAHおよびフマル酸ホルモテロールの処置の効果は、実施例1において見られた効果と同様であった。実施例4において、AH/F(1)R(25)群におけるラットについての腓腹筋重量は、AH/F(1)R(0)群におけるラットについての腓腹筋重量と有意に異ならなかった。AH/F(1)R(50)群の動物に関して、腓腹筋の重量は、AH/F(1)R(0)群の動物についての筋肉の重量よりも重かった。AH/F(0)R(50)群の動物は、AH/ビヒクル群の動物よりもかなり重い腓腹筋の重量を示した。また、AH/F(0)R(50)群のラットに関して、腓腹筋の重量は、AH/F(1)R(0)群のラットについての筋肉の重量と本質的に同一であり、そして、AH/F(1)R(50)に群のラットについての筋肉の重量よりもわずかに少なかった。
【0075】
図1は、AHを接種したラットにおける腓腹筋に対する40mg/kgおよび50mg/kgのロキシスロマイシン(1mg/kgのフマル酸ホルモテロール有、なし)の効果を示す。
【0076】
まとめると、科学技術文献は、筋肉の喪失がラットの腹水肝細胞癌の癌性悪液質モデルにおいて非常に急速であること、そして、腹腔内注射により投与したフマル酸ホルモテロールが癌性の悪液質に拮抗することを確立する。驚くべきことに、本発明者らはロキシスロマイシンもまた、AHラットモデルに関連する筋肉の消耗を防止することを見出した。実際、本発明者らは、単独で投与したロキシスロマイシンは、AH誘導性の腓腹筋の喪失の予防において、フマル酸ホルモテロール単独と同様に有効であったことを示した。フマル酸ホルモテロールと組み合わせたロキシスロマイシンの筋肉節約効果は、いずれかの薬物を同じ用量で個々に与えた場合の効果よりも大きかった。これらのデータは、ロキシスロマイシンとフマル酸ホルモテロールとが協調してはたらき、悪液質を拮抗し、そして、タンパク質合成を増加することを示す。任意の作用機構に束縛されることなく、データは、ユビキチン−プロテアソーム経路を介してタンパク質分解を減少することによるフマル酸ホルモテロールが悪液質を防止する作用機構と一致しており、そして、ロキシスロマイシンの作用機構は、IL−6およびTNFのような炎症促進性サイトカインの抑制に関連する。したがって、フマル酸ホルモテロールおよびロキシスロマイシンの組み合わせは、悪液質および食欲不振の危険性がある患者、または、これらに苦しむ患者に、有効で、かつ実に多様式の治療法の見込みを提供する。
【0077】
(6.4 実施例4:ロキシスロマイシンの水溶性に対するpHおよび緩衝強度の作用)
10mg/mL相当のロキシスロマイシンの量を種々の溶液に加え、そして、25℃にて24時間撹拌した。この溶液をシリンジを通して濾過し、そして、[ロキシスロマイシン]についてHPLCで分析した。ロキシスロマイシンの効能を、ロキシスロマイシンについてのEuropean Pharmacopeia(EP)Monographの要件を満たす逆相HPLC法により評価した。溶液のpH値を、USP<791>に従って決定し、そして、溶液の重量オスモル濃度値を、USP<785>に従って決定した。緩衝液のタイプ(リン酸緩衝液vsクエン酸緩衝液)、緩衝液の濃度、pHおよび加えた共溶媒(エタノール)の関数として、ロキシスロマイシンについての水への溶解度の限界を決定した。
【0078】
表6は、エタノールを加えていないリン酸緩衝液におけるロキシスロマイシンの溶解度についての結果を示す。表7、表8および表9は、0%、5%および10%のエタノール共溶媒を加えたリン酸緩衝液(それぞれ10mM、20mMおよび50mM)におけるロキシスロマイシンの溶解度についての結果を示す。共に、これらの表は、研究した範囲にわたり、pHを低下させるにつれ、リン酸濃度を上昇させるにつれ、そして、エタノール%を増加させるにつれ、ロキシスロマイシンの溶解度が増加することを示す。
【0079】
【表6】

【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

表10は、pHおよびクエン酸イオン濃度の関数としての、クエン酸緩衝液中のロキシスロマイシンの溶解度および溶液の重量オスモル濃度についてのデータをまとめる。この表は、研究した範囲にわたって[クエン酸イオン]が増加するにつれ、そして、pHが上昇するにつれ、重量オスモル濃度が増加することを示す。ロキシスロマイシンの溶解度は、リン酸緩衝液を用いた研究について上述したように、pHが上昇するにつれ減少した。クエン酸緩衝溶液に関して、ロキシスロマイシンの溶解度は、クエン酸イオン濃度に対する複雑な依存性を示す。
【0083】
【表10】

まとめると、この実施例は、pHが低下するにつれ(4〜7の範囲)、エタノール共溶媒の濃度が上昇するにつれ(0%〜10%の範囲)、そして、クエン酸イオンの濃度が上昇するにつれ(20mM〜200mMの範囲)、ロキシスロマイシンの溶解度が増加することを示す。
【0084】
(6.5 実施例5:ロキシスロマイシンの水溶性に対するpHおよび緩衝強度の作用)
ロキシスロマイシンの安定性を、pHおよび緩衝液(クエン酸)の濃度の関数として、5℃、25℃および40℃において2mg/mL[ロキシスロマイシン]について決定した。EP Monographの要件を満たす逆相HPLC法を用いた面積正規化(area normalization)により、ロキシスロマイシンの純度(%)を決定した。溶液のpH値を、USP<791>に従って決定した。
【0085】
表11は、40℃に維持したロキシスロマイシン2mg/mL溶液についての保存期間(月)に対する純度(%)の値を示す。表12および表13は、それぞれ、25℃および5℃に維持したロキシスロマイシン溶液についての純度(%)のデータを示す。
【0086】
【表11】

【0087】
【表12】

【0088】
【表13】

まとめると、この実施例は、pHが上昇するにつれ(4〜6の範囲)、そして、クエン酸イオンの濃度が上昇するにつれ(20mM〜100mMの範囲)、ロキシスロマイシンの安定性が増加することを示す。2mg/mLのロキシスロマイシンおよび20mMのクエン酸緩衝液を含有する水性処方物(pH6)は、満足のいく安定性を示した。
【0089】
(6.6 実施例6:フマル酸ホルモテロールの水溶性に対するpHおよび緩衝強度の作用)
10mg/mL相当のフマル酸ホルモテロールの量を種々の溶液に加えた。この溶液を25℃にて24時間撹拌し、シリンジを通して濾過し、そして、フマル酸ホルモテロール濃度について、フマル酸ホルモテロール二水和物についてのEuropean Pharmacopeial Monographにおける逆相HPLC法により分析した。クエン酸緩衝液の濃度(20〜200mM)およびpH(4〜7)の関数として、フマル酸ホルモテロールについての水への溶解度の限界を決定した。
【0090】
表10は、pHおよびクエン酸イオン濃度の関数としての、クエン酸緩衝液中のフマル酸ホルモテロールの溶解度および溶液の重量オスモル濃度についてのデータをまとめる。この表は、研究した範囲にわたって、クエン酸イオン濃度が増加するにつれ、そして、pHが上昇するにつれ、重量オスモル濃度が増加することを示す。pHが上昇するにつれ、フマル酸ホルモテロールの溶解度が減少する。クエン酸緩衝溶液に関して、フマル酸ホルモテロールの溶解度は、クエン酸イオン濃度に対して複雑な依存性を示す。これらのデータは、フマル酸ホルモテロールの溶解度が、pH5〜7の範囲において、pHおよびクエン酸イオン濃度から比較的影響を受けないことを示す。フマル酸ホルモテロールの溶解度は、pH≧5において、pH4よりも幾分高い。
【0091】
【表14】

理想的には、フマル酸ホルモテロールの経口用溶液投薬形態は、約0.001〜0.005mg/mLのフマル酸ホルモテロール濃度を提供する。その結果、0.08mgと0.32mgとの間の患者の用量(抗悪液質活性に必要とされる予想用量)は、約75mLの投薬容量を必要とする。実施例において記載した溶解度スクリーニング研究は、フマル酸ホルモテロールが、pH4〜pH7において、20mMと200mMとの間のクエン酸緩衝液濃度において、>1mg/mLまで可溶であることを示す。
【0092】
(6.7 実施例7:4.5%マンニトールおよび0.1%ソルビン酸カリウムを含む20mMクエン酸緩衝液(pH5.5)における0.020mg/mLフマル酸ホルモテロールの安定性)
Banerjeeら(米国特許第6,667,344号)によれば、pH3〜pH7の範囲にわたるフマル酸ホルモテロールの安定性は、pH約5において最適となる。Banerjeeらは、援用される特許において、以下のように記載している:「pH3、pH4、pH5およびpH7における60℃での速度定数は、それぞれ、約0.62日−1、0.11日−1、0.044日−1および0.55日−1である。したがって、5mMの緩衝液濃度および0.05のイオン強度における60℃の水溶液中のホルモテロールの分解は、pH約5.0において最も遅い。本明細書において提供される組成物中のホルモテロールの推定貯蔵寿命は、5℃においては約6.2年であり、そして、25℃においては約7.5ヶ月である」。
【0093】
経口用投薬溶液としての使用に適したビヒクルにおけるフマル酸ホルモテロールの安定性を示すために、フマル酸ホルモテロールを、20mMクエン酸緩衝液(pH5.5)、4.5%マンニトールおよび0.1%ソルビン酸カリウムを含有する水溶液中0.020mg/mLにした。この処方物のサンプルを、5℃、25℃および40℃に維持した。定期的な間隔において、これらのサンプルのアリコートを回収し、そして、Akapoら(Akapoら:J Pharm Biomed Anal 33:935−45,2003)により文献において報告された逆相HPLC法により決定した。溶液のpH値を、USP<791>に従って決定し、そして、溶液の重量オスモル濃度値をUSP<785>に従って決定した。
【0094】
表15は、重量オスモル濃度のデータを示し、研究した条件について、重量オスモル濃度における変化がないことを実証する。表16は、pHのデータをまとめたものであり、調べた条件について、有意な変化がないことを実証する。表17は、5℃、25℃および40℃において、定期的な間隔にわたり維持された溶液についてのフマル酸ホルモテロールの効能のデータをまとめたものである。3ヶ月の時点におけるフマル酸ホルモテロールの効能の喪失は、5℃においては無視できるものであり、そして、25℃においては約3%であった。1.5ヶ月の時点において、フマル酸ホルモテロールの効能の喪失は、40℃において約15%であった。
【0095】
【表15】

【0096】
【表16】

【0097】
【表17】

この実施例は、3ヶ月の時点にわたり、フマル酸ホルモテロールの効能の喪失が、5℃においては無視できたが、25℃においては約3%であったことを示す。1.5ヶ月の時点にわたっては、フマル酸ホルモテロールの効能の喪失は、40℃において約15%であった。
【0098】
(6.8 実施例8:4.5%マンニトールおよび0.1%ソルビン酸カリウムを含むpH6、20mMクエン酸緩衝液において同時に処方したフマル酸ホルモテロールおよびロキシスロマイシンの安定性)
経口用投薬溶液としての使用に適したビヒクルにおける、ロキシスロマイシンと組み合わせたフマル酸ホルモテロールの安定性を示すために、フマル酸ホルモテロールを、20mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、4.5%マンニトールおよび0.1%ソルビン酸カリウムを含有する水溶液中0.005mg/mLにし、そして、ロキシスロマイシンを、同じ水溶液中2.0mg/mLにした。この処方物のサンプルを、5℃、25℃および40℃に維持し、そして、0週間後、2週間後および4週間後に、フマル酸ホルモテロールの効能およびロキシスロマイシンの効能について試験した。Akapoら(Akapoら:J Pharm Biomed Anal 33:935−45,2003)により文献において報告された逆相HPLC法によりフマル酸ホルモテロールの効能を決定した。ロキシスロマイシンの効能は、ロキシスロマイシンについてのEuropean Pharmacopeial(EP)Monographの要件を満たす逆相HPLC法により評価した。表18は、フマル酸ホルモテロールの効能のデータを示し、そして、表19は、ロキシスロマイシンの効能のデータを示す。4週の時点にわたり、安定性のデータは、フマル酸ホルモテロール単独(実施例7)またはロキシスロマイシン単独(実施例5)についての同様のデータと比較して、組み合わせ処方物についての分解の増加の事実がないことを示す。
【0099】
【表18】

【0100】
【表19】


【0101】
(6.9 実施例9:酢酸メゲストロールの水溶性に対する、種々の共溶媒および賦形剤の作用)
実施例4〜8は、pH5〜6において約20mMクエン酸+4.5%マンニトールを含有するビヒクルが、ロキシスロマイシン(2mg/mL)およびフマル酸ホルモテロール(約5μg/mL〜約50μg/mL)の組み合わせについての、液体経口投薬形態として適切である可能性があることを示す。酢酸メゲストロールは、癌性の悪液質の予防および処置のためのロキシスロマイシン:ホルモテロールの組み合わせの有効性を高め得るので、酢酸メゲストロール+ロキシスロマイシンおよびホルモテロールを含有する、3つの薬物を組み合わせた経口用溶液処方物を開発することに、(患者のコンプライアンスに関して)潜在的な価値がある。酢酸メゲストロールの市販の経口用投薬形態としては、40mgの錠剤、800mg/20mLの懸濁液および625mg/5mLの経口用懸濁液が挙げられる。
【0102】
実施例5および7に示す安定性のデータは、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールを含有するpH5〜6、20mMクエン酸緩衝液の処方物が、長期の保存には冷蔵温度を、そして、短期の患者による使用には室温保存を必要とすることを示す。150mg用量のロキシスロマイシンは、2mg/mL溶液の75mLの投薬容量により投与され得る。従って、3つの薬物を組み合わせた経口用溶液についての目標とする境界条件としては、以下が挙げられる:
・酢酸メゲストロールについて0.5〜4mg/mLの溶解度(すなわち、ロキシスロマイシンに必要とされるように、300mg/600mL〜75mLの投薬容量で与えるという指示)
・pH5〜6(ロキシスロマイシンおよびホルモテロールの貯蔵安定性に必要とされる)
・冷蔵保存(ロキシスロマイシンおよびホルモテロールの貯蔵安定性に必要とされる)
・ロキシスロマイシンおよびホルモテロールとの化学的および物理的な混和性。
【0103】
酢酸メゲストロール固有の水への溶解度は2μg/mL(FDAにより認可されたBristol Meyers Squibbの酢酸メゲストロール40mg錠についての包装への刷り込み)であるので、経口投薬のために適した溶液処方物の開発は、共溶媒、界面活性剤、錯体形成因子および/またはこれらの不活性成分の組み合わせの使用を必要とする。
【0104】
4.5%マンニトールを含有する20mMクエン酸緩衝液(pH5.5)の水溶液に、溶媒およびシクロデキストリン錯体形成因子を種々の割合で加えた。過剰(10mg/mL)の酢酸メゲストロールを各試験溶液に加え、そして、5℃にて24時間撹拌した後、溶解しなかった酢酸メゲストロールを濾過により除去した。各試験溶液中の[酢酸メゲストロール]を、Burana−Osot J,ら:J Pharm Biomed Anal 40:1068−72,2006により記載された逆相HPLC法を適用することにより決定した。この酢酸メゲストロールの水への溶解度の限界についての調査結果は、12の試験溶液が、メゲストロールの水への溶解度を>0.5mg/mLまで増加させることを実証した。12の試験溶液(および対応する酢酸メゲストロールの溶解度の限界)は以下のとおりである:
・80:20 ポリエチレングリコール(PEG)(平均分子量600):緩衝液(0.6mg/mL)
・80:20 PEG(平均分子量400):緩衝液(0.8mg/mL)
・コハク酸トコフェリル ポリエチレングリコール1000,55:20:25 プロピレングリコール:PEG 400:緩衝液(0.8mg/mL)中10%
・20% β−シクロデキストリン(0.8mg/mL)
・30% β−シクロデキストリン(1.3mg/mL)
・3% β−シクロデキストリンHeptakis(2,6−ジ−O−メチル)(1.1mg/mL)
・10% β−シクロデキストリンHeptakis(2,6−ジ−O−メチル)(3.3mg/mL)
・3% β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル,ナトリウム塩(0.8mg/mL)
・10% γ−シクロデキストリン(0.6mg/mL)
・3% β−シクロデキストリン2−ヒドロキシプロピル 置換度4.3(0.6mg/mL)
・10% β−シクロデキストリン2−ヒドロキシプロピル 置換度4.3(1.2mg/mL)および
・10% カルボキシメチル化β−シクロデキストリン 置換度3(0.7mg/mL)。
【0105】
上のリストにおいて、酢酸メゲストロールの高い溶解度に寄与する溶液の多くは、シクロデキストリン錯体形成因子を含む。シクロデキストリンは、文献が、全般的な薬物(Strickley RG:Pharm Res 21:201−30,2004,Albers EおよびMuller BW:Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 12:311−37,1995)、特に、ステロイドホルモン(Albers EおよびMuller BW:J Pharm Sci 81:756−61,1992,Nandi I,ら:AAPS PharmSciTech 4:E1,2003,Cserhati TおよびForgacs E:J Pharm Biomed Anal 18:179−85,1998,Albers EおよびMuller BW:J Pharm Sci 81:756−61,1992,Pitha,J.,米国特許第4,727,064号,1988年2月)およびマクロライド系抗生物質(Shastri,V.ら,米国特許第6,699,505号,2004年3月,Salem:Int J Pharm 250:403−14,2003)の溶解度を増加させるためにシクロデキストリンを用いることに対する複数の参照を含む範囲では、シクロデキストリンが、酢酸メゲストロールの水への溶解度を増加させることは予期されない。同様に、PEG 400およびPEG 600共溶媒によって酢酸メゲストロールに与えられる溶解度の増加は、文献の観察と一致している(Millard J,ら:Int J Pharm 245:153−66,2002,Li P,ら:J Pharm Sci 88:1107−11,1999)。また、コハク酸トコフェリル ポリエチレングリコールによって酢酸メゲストロールに与えられる溶解度の増加も、文献の観察と一致している(Royら,米国特許第6,730,679号2004年5月4日,Yuら,Pharm.Res.,16:1812−1817,1999)。しかしながら、上に挙げた12の溶液がまた、酢酸メゲストロール、および、フマル酸ホルモテロールとロキシスロマイシンとの組み合わせを含有する液体経口用投薬形態を調製するために使用され得ることは驚くべきことである。実施例4〜8に示されるように、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールは、20mMクエン酸緩衝液+4.5%マンニトール(pH5〜6)において適切に処方され得る。従って、上記実施例において挙げた11の溶液のいずれもが、2mg/mLロキシスロマイシン、0.005mg/mLホルモテロールおよび>0.5mg/mL酢酸メゲストロールを含有する、3つの薬物を組み合わせた液体経口用投薬形態に適している。適切な保存料および矯味矯臭剤を加えたこのような処方物は、悪液質に苦しむ患者を処置するための実際的な有用性を有する。
【0106】
(6.10 実施例10:ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールの多粒子(multiparticulate)固体経口用投薬形態)
ヒトにおける悪液質および食欲不振の処置および予防は、おそらく、300mg/日の用量のロキシスロマイシンと160μg/日の用量のフマル酸ホルモテロールとを必要とする。患者は、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールが別々の固体経口用投薬形態として同時に投与される条件で、首尾よく1日に2回投薬され得るが、両方の活性な薬学的成分を、単一の固体経口用投薬形態へと一体にすることに対し、明らかな患者のコンプライアンス上の利点が存在する。組み合わせが1日1回投与され得るように、遅延放出特性をもつ単一の固体経口用投薬形態内に両方の活性な薬学的成分を含めることにも、コンプライアンスの見通しからの別の明らかな利点が存在する。
【0107】
ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールのために適切な、組み合わせの固体経口用投薬形態の設計を駆動する要因としては、以下が挙げられる:
・2つの活性成分についての大きく異なる用量、
・非常に強力なフマル酸ホルモテロールの薬学的活性成分を分散形態で扱うことに関する、環境衛生および安全性の関心、
・臨床開発全体にわたる、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールの投薬形態の強度変更における柔軟性、
・組み合わせた固体経口用投薬形態の大きさ、
・ロキシスロマイシンの味のマスキング(taste masking)、
・ロキシスロマイシンとフマル酸ホルモテロールとの間の化学的相互作用の可能性、ならびに
・即時放出投薬形態と遅延放出投薬形態との間の選択の柔軟性。
【0108】
したがって、多粒子の単一薬物および/または薬物の組み合わせの、固体経口用投薬形態において使用するための、ロキシスロマイシンおよびフマル酸ホルモテロールの粒子が開発された。薬物充填レベルが高いロキシスロマイシン粒子は、当業者に公知の種々の方法により調製され得るが、ロキシスロマイシン粒子の調製には、押出し成形/球状化プロセスが特によく適している。薬物充填レベルが低いホルモテロール粒子は、当業者に公知の種々の方法により調製され得るが、フマル酸ホルモテロール粒子の調製には、不活性のノンパレイユ(nonpareil)上にフマル酸ホルモテロールをスプレーコーティングするプロセスが特によく適している。原則として、これらのロキシスロマイシンおよび/またはホルモテロールの粒子は、引き続いて、環境上の安全性、放出速度および/または化学的な相互作用特性を修正するために、スプレーコーティングされ得る。硬ゼラチンカプセル内に充填されるか、そして/または錠剤へと圧縮される複数の粒子はまた、最終的な投薬形態内での活性成分の強度に関して柔軟性を提供し得る。
【0109】
4種のロキシスロマイシン粒子処方物を調製した。表20は、処方物の組成とコード名を示す。
【0110】
【表20】

3種のフマル酸ホルモテロール粒子処方物を調製した。表21は、処方物の組成を示す。
【0111】
【表21】

代表的な調製法を以下に記載する。
【0112】
ロキシスロマイシン処方2Bを調製するために使用した工程は以下のとおりであった:
・ロキシスロマイシン、微結晶性セルロース PH 101およびHPMC E5を量り、そして、遊星運動ミキサー(planetary mixer)(Hobart)に加える。5分間混合する。
・95gの精製水を量り、そして、この水を2分間かけて混合した粉末に加える。
・湿った粉末を10分間混合し続け、混合ボウルの壁からこそげ落とす。
・湿った塊を、1.0mMの円孔篩に嵌めたLCI Bench−Top放射式押出し成形装置に通す。球状化の準備段階の滲出物を回収する。
・約100gの滲出物をCaleva Bench−Top球状化装置(spheronizer)に入れて、5〜10分間作動させ、滲出物を丸くして粒子状にする。
・滲出物が処理されるまで、球状化処理を継続する。
・湿った粒子を回収し、そして、45℃で12時間風乾させる。
【0113】
ロキシスロマイシン処方4Dを調製するために使用した工程は以下のとおりであった:
・ロキシスロマイシン、微結晶性セルロース PH 101およびHPMC E5を量り、そして、遊星運動ミキサー(Hobart)に加える。5分間混合する。
・60gの精製水を量り、そして、この水を1分間かけて混合した粉末に加える。
・湿った粉末を10分間混合し続け、混合ボウルの壁からこそげ落とす。
・湿った塊を、1.0mMの円孔篩に嵌めたLCI Bench−Top放射式押出し成形装置に通す。球状化の準備段階の滲出物を回収する。
・約100gの滲出物をCaleva Bench−Top球状化装置に入れる。少量のCab−O−Silを球状化装置に加え、1〜2分間作動させ、滲出物を丸くして粒子状にする。
・滲出物が処理されるまで、球状化処理を継続する。
・湿った粒子を回収し、そして、45℃で12時間風乾させる。
【0114】
フマル酸ホルモテロール処方6Fを調製するために使用した工程は以下のとおりであった:
・ホルモテロール、糖コアおよびHPMC E5(2部)を量り、そして、このコアを流動床(底部スプレーカラム)に加える。
・2部の秤量したHPMC E5を用いて、2つの7.5% HPMC溶液を調製する。清澄な溶液が作製されたら、一方のHPMC溶液にフマル酸ホルモテロールを加えて混合し、重層溶液(layering solution)を調製する。
・60℃の吸気口空気温度を用いて、流体中の糖コアを40℃〜45℃の製品温度まで予め加熱する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、コアへの重層溶液のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全ての重層溶液が塗布されたら、約45℃の製品温度まで粒子を乾燥する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、重層コアへの第二HPMC溶液(コーティング溶液)のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全てのコーティング溶液が塗布されたら、約45℃〜50℃の製品温度まで重層コーティングされた粒子を乾燥する。
【0115】
フマル酸ホルモテロール処方7Gを調製するために使用した工程は以下のとおりであった:
・フマル酸ホルモテロール、微結晶性セルロースコアおよびHPMC E5(2部)を量り、そして、このコアを流動床(底部スプレーカラム)に加える。
・2部の秤量したHPMC E5を用いて、2つの7.5% HPMC溶液を調製する。清澄な溶液が作製されたら、一方のHPMC溶液にフマル酸ホルモテロールを加えて混合し、重層溶液を調製する。
・60℃の吸気口空気温度を用いて、流体中のMCCコアを40℃〜45℃の製品温度まで予め加熱する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、コアへの重層溶液のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全ての重層溶液が塗布されたら、約45℃の製品温度まで粒子を乾燥する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、重層コアへの第二HPMC溶液(コーティング溶液)のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全てのコーティング溶液が塗布されたら、約45℃〜50℃の製品温度まで重層コーティングされた粒子を乾燥する。
【0116】
フマル酸ホルモテロール処方8Hを調製するために使用した工程は以下のとおりであった:
・フマル酸ホルモテロール、糖コア、ポビドンおよびHPMC E5を量り、そして、このコアを流動床(底部スプレーカラム)に加える。
・7.5% HPMC溶液(コーティング溶液)を調製する。
・精製水+エタノールの50/50混合物を用いて7.5% ポビドン溶液を調製する。清澄な溶液が作製されたら、溶液にフマル酸ホルモテロールを加えて混合し、重層溶液を調製する。
・60℃の吸気口空気温度を用いて、流体中の糖コアを40℃〜45℃の製品温度まで予め加熱する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、コアへの重層溶液のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全ての重層溶液が塗布されたら、約45℃の製品温度まで粒子を乾燥する。
・1〜1.5barの噴霧空気圧を用いて、重層コアへのHPMC溶液(コーティング溶液)のスプレーを開始する。吸気口空気温度を調節して、36℃〜43℃の製品温度を維持する。
・全てのコーティング溶液が塗布されたら、約45℃〜50℃の製品温度まで重層コーティングされた粒子を乾燥する。
【0117】
調製した処方物の各々におけるロキシスロマイシンの量を、HPLCにより決定した。表22は、粒子100mg中に存在するロキシスロマイシンのmgとして、そしてまた、150mgのロキシスロマイシン用量を提供するのに必要とされる粒子のmgとして表した、効能試験の結果を示す。表は、ロキシスロマイシン粒子が、一定範囲の充填レベルにわたって調製され得ること、そして、150mgのロキシスロマイシン用量を提供するのに必要とされる粒子の量が、合理的な大きさのカプセルまたは錠剤の投薬形態内に組み込まれ得る粒子塊の範囲内に十分入ることを示す。
【0118】
【表22】

調製した処方物の各々におけるフマル酸ホルモテロールの量を、HPLCにより決定した。表23は、粒子100mg中に存在するロキシスロマイシンの重量(μg)として、そしてまた、80μgのフマル酸ホルモテロール用量を提供するのに必要とされる粒子の重量(μg)として表した、効能試験の結果を示す。表は、フマル酸ホルモテロール粒子が、一定範囲の充填レベルにわたって調製され得ること、そして、80μgのフマル酸ホルモテロール用量を提供するのに必要とされる粒子の量が、合理的な大きさのカプセルまたは錠剤の投薬形態内に組み込まれ得る粒子塊の範囲内に十分入ることを示す。表はまた、サンプル間での、フマル酸ホルモテロールの含量の満足のゆく均一性を示す。
【0119】
【表23】

ロキシスロマイシン粒子処方物の溶解プロフィールを、37℃においてUSP I法を用いて、そして、20mMクエン酸緩衝液(pH6)またはHCl水溶液(pH2.7)のいずれかを溶解媒体として用いて、HPLCにより決定した。pH6の媒体は、腸の区画のpHに近く、そして、pH2.7は、胃の区画のpHの上限に近い。pH<2.7におけるロキシスロマイシンの溶解プロフィールの決定は実行不可能である。なぜならば、ロキシスロマイシンは、Zhangら(J Pharm Sci 93:1300−9,2004)によれば、酸による触媒作用を受けて、急速に溶解するからである。
【0120】
表24は、pH2.7における溶解試験の結果を示し、そして、表25は、pH6の媒体についての溶解データを示す。pH2.7において、ロキシスロマイシン粒子処方物は、1時間以内に加えたロキシスロマイシンの約50%を放出した。より長い時間間隔において、ロキシスロマイシンの回収値の低下は、ロキシスロマイシンの分解(約5%/時)は、放出に伴うものであることを示す。pH6において、加えたロキシスロマイシンの50%未満程度が約2時間で放出され、そして、約80%は、18時間にわたり放出された。これらの溶解データは、ロキシスロマイシン粒子処方物が、代表的には1時間の胃腸空腹期間にわたり胃の区画に存在する間、加えたロキシスロマイシンのおよそ半分を迅速に放出し、そして、腸の区画に存在する間に、残りをよりゆっくりと放出することを示す。
【0121】
【表24】

【0122】
【表25】

フマル酸ホルモテロール粒子処方物の溶解プロフィールを、20mMクエン酸緩衝液(pH6)を(消化管のpHに近い)媒体として用いて、USP I法により決定した。フマル酸ホルモテロールの濃度をHPLCにより決定した。表26は、溶解試験の結果を示す。表は、加えたフマル酸ホルモテロールの≧75%がおよそ5分以内に放出されたことを示す。したがって、試験した投薬形態は、即時放出用の固体経口用投薬形態に適している。
【0123】
【表26】


【0124】
(7 結論)
種々の特定の実施形態および実施例が本明細書において記載されてきたが、当業者は、本発明の多くの異なる実施が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく達成され得ることを理解する。例えば、上記実施例において使用したロキシスロマイシンは、他のマクロライド系薬物(例えば、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシンであるがこれらに限定されない)で置き換えられ得る。なお他のバリエーションが、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、AH接種したラットの腓腹筋に対する、40mg/kgおよび50mg/kgのロキシスロマイシン(1mg/kgのフマル酸ホルモテロールの有、無)の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法であって、該方法は、このような哺乳動物に、マクロライド系薬物と、βアゴニストとを組み合わせて投与する工程を包含し、該マクロライド系薬物および該βアゴニストは、組み合わせて投与されたときに、該消耗障害を予防するか、または、少なくとも緩和するのに有効な量で投与される、方法。
【請求項2】
食欲を刺激するステロイドの薬学的に有効な量を投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酢酸メゲストロールの薬学的に有効な量を投与する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酢酸メゲストロールが、約100mg/日と約1200mg/日との間の用量で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酢酸メゲストロールが、約100mg/日と約1000mg/日との間の用量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酢酸メゲストロールが、約400mg/日と約1200mg/日との間の用量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、実質的な薬理学的相互作用をもたない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約70%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約50%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約30%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、実質的に異なる浄化機構を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、別個の薬学的に受容可能なキャリア中で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、同じ薬学的に受容可能なキャリア中で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マクロライド系薬物が、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記マクロライド系薬物がロキシスロマイシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ロキシスロマイシンが、約25mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約300mg/日との間の用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約200mg/日との間の用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ロキシスロマイシンが、約150mg/日と約750mg/日との間の用量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記βアゴニストが、フマル酸ホルモテロール、バムブテロールまたはアルブテロールである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記βアゴニストがフマル酸ホルモテロールである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記フマル酸ホルモテロールが、約5μg/日と約500μg/日との間の用量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記フマル酸ホルモテロールが、約5μg/日と約240μg/日との間の用量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、マクロライド系薬物とβアゴニストとを薬学的に受容可能なキャリア中に組み合わせて含有し、該マクロライド系薬物および該βアゴニストは、組み合わせて投与されたときに、該消耗障害を予防するか、または、少なくとも緩和するのに有効な量で提供される、組成物。
【請求項25】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、実質的な薬理学的相互作用をもたない、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約70%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約50%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、約30%未満だけ異なる血清半減期の値を有する、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記マクロライド系薬物と前記βアゴニストとが、実質的に異なる浄化機構を有する、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記マクロライド系薬物が、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記マクロライド系薬物がロキシスロマイシンである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約750mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約300mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約200mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記ロキシスロマイシンが、約150mg/日と約750mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記βアゴニストが、フマル酸ホルモテロール、バムブテロールまたはアルブテロールである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記βアゴニストがフマル酸ホルモテロールである、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記フマル酸ホルモテロールが、約5μg/日と約240μg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記フマル酸ホルモテロールが、約5μg/日と約80μg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
哺乳動物における消耗障害を予防および処置するための方法であって、該方法は、このような哺乳動物に、該消耗障害を予防するか、または少なくとも緩和するのに有効な量のマクロライド系薬物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
前記マクロライド系薬物が、ロキシスロマイシンまたはアジスロマイシンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記マクロライド系薬物がロキシスロマイシンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約750mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約300mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ロキシスロマイシンが、約50mg/日と約200mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ロキシスロマイシンが、約150mg/日と約750mg/日との間の用量を前記哺乳動物に送達するのに十分な量で提供される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
薬学的に有効な量の非ステロイド性抗炎症剤を投与する工程をさらに包含する、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記非ステロイド性抗炎症剤が非選択的シクロオキシゲナーゼインヒビターである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記非ステロイド性抗炎症剤が選択的シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)インヒビターである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
薬学的に有効な量の非ステロイド性抗炎症剤を投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記非ステロイド性抗炎症剤が非選択的シクロオキシゲナーゼインヒビターである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記非ステロイド性抗炎症剤が選択的シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)インヒビターである、請求項51に記載の方法。


【図1】
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【公表番号】特表2009−526087(P2009−526087A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555886(P2008−555886)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004315
【国際公開番号】WO2008/093148
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(508185007)アナボレックス, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(508185029)
【出願人】(508185018)
【出願人】(508185030)
【Fターム(参考)】