説明

悪液質を治療するための環状ペプチド

R1、R2、R3a、R3b、R4、R5、x、y、およびzが明細書で定義される、高度に選択的なメラノコルチン-4受容体拮抗薬の環状ペプチドの式、および、悪液質、筋肉減少症、および消耗症候群または消耗疾患を含む体重障害を治療する方法、ならびに炎症および免疫障害を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年7月6日出願の「悪液質を治療するための環状ペプチド」という表題の米国仮特許出願第60/585971号の出願の優先権および利益を請求するものであり、その明細書および提示されている特許請求の範囲は、本明細書に参照として組み入れられる。
【0002】
本発明は、メラノコルチン-4受容体(MC4-R)に対する高度に特異的な拮抗薬であり、悪液質、筋肉減少症、および消耗症候群または消耗疾患を含む様々な体重障害の治療において、ならびに炎症および免疫障害の治療のために使用することができる環状ヘキサペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察は、著者らによる数々の出版物および出版の年に言及し、最近の出版日により、ある出版物は本発明に関して先行技術とみなされないことを留意されたい。本明細書のこのような出版物の考察は、より完全な背景に対してなされ、そのような出版物は特許性の決定の目的で先行技術であることが認められることと解釈すべきではない。
【0004】
メラノコルチン受容体
メラノコルチン受容体のタイプおよびサブタイプのファミリーが同定されており、正常なヒトメラニン細胞およびメラノーマ細胞上で発現されるメラノコルチン-1受容体(MC1-R)、副腎の細胞で発現される、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に対するメラノコルチン-2受容体(MC2-R)、主に視床下部、中脳、および脳幹における細胞で発現されるメラノコルチン-3受容体およびメラノコルチン-4受容体(MC3-RおよびMC4-R)、ならびに末梢組織の広い分布で発現されるメラノコルチン-5受容体(MC5-R)が含まれる。
【0005】
受容体、および受容体を構成するアミノ酸配列をコードする核酸配列を両方含む、メラノコルチン受容体の構造を決定する上で、意義深い研究がなされている。MC4-Rは、主に脳で発現されると考えられている、Gタンパク質に連結している7回膜貫通型の受容体である。過食症、高インスリン血症、および高血糖症に関連する、成年発症型肥満症候群を有するマウスをもたらす遺伝子ターゲッティングによるこの受容体の不活性化が報告されている(Huszar D.、Lynch C.A.、Fairchild-Huntress V.ら、「Targeted disruption of the melanocortin-4 receptor results in obesity in mice」、Cell、88巻、131〜141頁(1997年))。MC4-Rは、エネルギーの恒常性において治療介入するための分子標的である。
【0006】
一般に、MC4-Rに特異的な化合物、およびMC3-RまたはMC5-Rに特異的な2次的な化合物は、食事摂取および体重増加を減少させるための物質としての使用を含めて、哺乳動物のエネルギーの恒常性の調節に有用であると考えられている。MC4-R拮抗薬は、悪液質、筋肉減少症、消耗症候群または消耗疾患、および食欲不振の治療における使用のためなど、体重増加の助けに有用であると考えられている。MC4-R作用薬は、これとは対照的に、肥満の治療のためなど、食事摂取および体重増加を低減させるのに有用であると考えられている。MC3-RおよびMC4-Rに特異的な拮抗薬である化合物は、血圧、心拍数、およびその他の神経生理学的なパラメータを調節するのに有用であると、さらに考えられている。
【0007】
悪液質および他の消耗疾患
体重障害には、望ましくなく不健康な体重減少、もしくは体細胞量の減少を引き起こす、1つまたは複数の「消耗」疾患(例えば、消耗症候群、悪液質、筋肉減少症)が含まれる。高齢者、ならびに癌患者およびAIDS患者では、消耗疾患は、脂肪および無脂肪のコンパートメントの両方を含む望ましくない体重減少をもたらすことがあり得る。消耗疾患は、不十分な食事摂取、ならびに/または、疾患および/もしくは加齢の過程に付随する代謝の変化の結果であることがある。癌患者およびAIDS患者、ならびに大規模な外科手術後の患者、または慢性の感染症、免疫疾患、甲状腺機能亢進症、クローン病、心因性疾患、慢性心不全、もしくは他の重症の外傷を有する患者は、しばしば消耗疾患に罹患する。消耗疾患は、また、悪液質と呼ばれることもあり、一般的に、代謝障害として、時には摂食障害として認識される。悪液質は、さらに、代謝亢進、および異化亢進を特徴とすることがある。悪液質も消耗疾患も、しばしば交換可能に用いられて消耗状態を意味するが、悪液質を、除脂肪量の、特に体細胞量の減少として消耗症候群と区別する、少なくとも1つの調査体が存在する(Roubenoff R.、「The pathophysiology of wasting in the elderly」、J.Nutr.、129巻(1S補完)、256S〜259S頁(1999年))。高齢の個体が罹患することがあるさらに別のそのような障害である筋肉減少症は、典型的に、筋肉量の減少を特徴とする。上記に記載した、末期の消耗疾患は、悪液質または筋肉減少症のいずれかに罹患している個体に発生することがある。
【0008】
メラノコルチン拮抗ペプチド
拮抗ペプチドは、α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)のコア配列であるHis-Phe-Arg-Trp(配列番号1)の修飾に基づき、一般には、Pheの位置にD-アミノ酸、最も一般的には、任意選択で置換されている環であってもよい、1-もしくは2-ナフチル環またはフェニル環を有するD-アミノ酸を含む。このように米国特許第5731408号は、メラノコルチン受容体MC3-RおよびMC4-Rの非特異的拮抗薬であり、Phe残基の代りにD-Phe(4-1)またはD-Nal 2のいずれかを含む環状ラクタムヘプタペプチドを開示している。特に留意されたいのは、米国特許第5731408号に開示されているSHU91 19(Ac-Nle-シクロ(-Asp-His-D-Nal 2-Arg-Trrp-Lys)-NH2)と一般的に呼ばれているペプチドである。SHU91 19は、基準の非特異的なメラノコルチン拮抗物質として、研究に広く使われている。メラノコルチン受容体MC1-R、MC3-R、MC4-R、およびMC5-Rに対する拮抗物質である関連する環状ラクタムヘプタペプチドは、米国特許第6054556号に開示されている。これらのペプチドは全て、Phe残基の代りに、任意選択で置換されているD-PheまたはD-Nal 2を含んでいる。
【0009】
他の特許は、悪液質および他の体重に関連する障害の治療のためにメラノコルチン拮抗薬を使用することを教示している。例えば、米国特許第6716810号、第6699873号、第6693165号、第6613874号、第6476187号、第6284729号、第6100048号、および第5908609号を参照されたい。しかし、これらはいずれも、本発明のヘキサペプチドを開示するものではない。米国特許第6693165号は、選択的MC4-R拮抗薬であると主張されている環状ヘプタペプチドおよびヘキサペプチドを開示している。これらのペプチドは全て、His-Phe-Arg-Trp(配列番号1)のコア配列においてPhe残基の代りに、任意選択で置換されている1-もしくは2-ナフチル、3-ベンゾチエニル、またはフェニルを含むD-アミノ酸を含んでいる。しかし、米国特許第6693165号に開示されているペプチドは、His-Phe-Arg-Trp(配列番号1)の配列におけるHisを場合により含んでおらず、Hisの位置が存在する場合、それはLysまたはHisに限定されている。
【0010】
公開されている米国特許出願第2003/0113263号の「Methods and Reagents for Using Mammalian Melanocortin Receptor Antagonists to Treat Cachexia」は、悪液質の動物を治療するためのMC4-R拮抗薬の使用を含む、悪液質の動物を治療するのに有用な化合物を特性決定するための方法を開示しており、特にSHU91 19を開示している。公開されている米国特許出願第2003/0105024号の、「Methods and Reagents for Discovering and Using Mammalian Melanocortin Receptor Agonists and Antagonists to Modulate Feeding Behavior in Animals」は、摂食行動を刺激するために実験的に用いられているMC受容体拮抗薬としてSHU91 19を開示している。米国特許第6476187号の、「Methods and Reagents for Discovering and Using Mammalian Melanocortin Receptor Agonists and Antagonists to Modulate Feeding Behavior in Animals」は、同様に、摂食行動を刺激するために実験的に用いられているMC受容体拮抗薬としてのSHU91 19を開示している。公開されている米国特許出願第2003/0032791号の、「Novel Melanocortin-4 Receptor Sequences and Screening Assays to Identify Compounds Useful in Regulating Animal Appetite and Metabolic Rate」は、様々なアッセイにおけるSHU91 19の実験的な使用を開示している。公開されている米国特許出願第2002/0016291号の、「Cyclic Peptides as Potent and Selective Melanocortin-4 Receptor Antagonists」は、MC3およびMC4受容体における拮抗薬としてのSHU91 19を開示している。1977年には、SHU91 19は、摂食行動を増強することが開示された(Fan W.、Boston B.A.、Kesterson R.A.、Hruby V.J.、Cone R.D.、「Role of melanocortinergic neurons in feeding and the agouti obesity syndrome」、Nature、385巻、165〜168頁(1997年);Rossi M.、Kim M.S.、Morgan D.G.ら、「A C-terminal fragment of Agouti-related protein increases feeding and antagonizes the effect of alpha-melanocyte stimulating hormone in vivo」、Endocrinology、139巻、4428〜31頁、(1998年);Wisse B.E.、Frayo R.S.、Schwartz M.W.、Cummings D.E.、「Reversal of cancer anorexia by blockade of central melanocortin receptors in rats」、Endocrinology、142巻、3292〜3301頁(2001年);Marks D.L.、Ling N.、Cone R.D.、「Role of the central melanocortin system in cachexia」、Cancer Research、61巻、1432〜1438頁、(2001年)も参照されたい)。
【0011】
別個のメラノコルチン受容体、特にMC4-Rに高度に特異的なリガンド、およびMC4-Rの拮抗薬であり、または場合により逆作用薬であるリガンドが依然として大いに必要とされている。意図されていない薬理学的反応を低減するためには、リガンドが、MC4-Rなどの標的のMC受容体に高度に特異的であることが望ましい。したがって、MC4-Rに対するリガンドの結合親和性がより高いことが望ましく、例えば、他のMC受容体に対するよりもMC4-Rに対して少なくとも約10倍高いことが望ましい。MC4-Rの高親和性且つ高特異性のペプチドリガンドを、メラノコルチン受容体に関連する様々な生理学的反応を活用するために、拮抗薬または逆作用薬のいずれかとして用いることができる。例えば、MC4-Rの拮抗薬または逆作用薬を用いて、摂食障害、消耗疾患、および悪液質を治療することができる。さらに、メラノコルチン受容体は、様々なサイトカインの活性に作用があり、メラノコルチン受容体の高親和性のペプチドリガンドを用いてサイトカイン活性を調節することができる。したがって、このようなペプチドのリガンドを、炎症および他の免疫障害を治療するためにさらに用いることができる。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/585971号
【非特許文献1】Huszar D.、Lynch C.A.、Fairchild-Huntress V.ら、「Targeted disruption of the melanocortin-4 receptor results in obesity in mice」、Cell、88巻、131〜141頁(1997年)
【非特許文献2】Roubenoff R.、「The pathophysiology of wasting in the elderly」、J.Nutr.、129巻(1S補完)、256S〜259S頁(1999年)
【特許文献2】米国特許第5731408号
【特許文献3】米国特許第6054556号
【特許文献4】米国特許第6716810号
【特許文献5】米国特許第6699873号
【特許文献6】米国特許第6693165号
【特許文献7】米国特許第6613874号
【特許文献8】米国特許第6476187号
【特許文献9】米国特許第6284729号
【特許文献10】米国特許第6100048号
【特許文献11】米国特許第5908609号
【特許文献12】米国特許出願第2003/0113263号
【特許文献13】米国特許出願第2003/0105024号
【特許文献14】米国特許出願第2003/0032791号
【特許文献15】米国特許出願第2002/0016291号
【非特許文献3】Fan W.、Boston B.A.、Kesterson R.A.、Hruby V.J.、Cone R.D.、「Role of melanocortinergic neurons in feeding and the agouti obesity syndrome」、Nature、385巻、165〜168頁(1997年)
【非特許文献4】Rossi M.、Kim M.S.、Morgan D.G.ら、「A C-terminal fragment of Agouti-related protein increases feeding and antagonizes the effect of alpha-melanocyte stimulating hormone in vivo」、Endocrinology、139巻、4428〜31頁、(1998年)
【非特許文献5】Wisse B.E.、Frayo R.S.、Schwartz M.W.、Cummings D.E.、「Reversal of cancer anorexia by blockade of central melanocortin receptors in rats」、Endocrinology、142巻、3292〜3301頁(2001年)
【非特許文献6】;Marks D.L.、Ling N.、Cone R.D.、「Role of the central melanocortin system in cachexia」、Cancer Research、61巻、1432〜1438頁、(2001年)
【非特許文献7】「Synthetic Peptides: A User's Guide」G.A.Grant編集、W.H.Freeman&Co.、ニューヨーク(1992年)
【非特許文献8】「Synthetic Peptides: A User's Guide」Hruby V.J.、Al-obeidi F.、Kazmierski W.、Biochem.J.、268巻、249〜262頁(1990年)
【非特許文献9】Toniolo C、Int. J.Peptide Protein Res.、35巻、287〜300頁(1990年)
【非特許文献10】Manual of Patent Examining Procedure第8版
【非特許文献11】Galande A.K.、Spatola A.F.、Lett.Pept.Sci.、8巻、247頁、(2001年)
【非特許文献12】Schioth H.B.ら、Peptides、18巻、1009〜1013頁(1977年)
【非特許文献13】Merrifield R.B.、「Solid phase synthesis(Nobel lecture)」Angew.Chem.、24巻、799〜810頁(1985年)
【非特許文献14】Baranyら、The Peptides.Analysis Synthesis and Biology、第2巻、Gross E.And Meienhofer J.編集、Academic Press、1〜284頁(1980年)
【非特許文献15】Bam D.R.、Morphy J.R.、Rees D.C.、「Synthesis of an array of amides by aluminum chloride assisted cleavage of resin-bound esters.」、Tetrahedron Lett.、37巻、3213〜3216頁(1996年)
【非特許文献16】DeGrado W.F.Kaiser E.T.、「Solid-phase synthesis of protected peptides on a polymer bound oxime:Preparation of segments comprising the sequences of a cytotoxic 26-peptide analogue」、J.Org.Chem.、47巻、3258〜3261頁(1982年)
【特許文献16】米国特許第5693608号
【特許文献17】米国特許第5977070号
【特許文献18】米国特許第5908825号
【特許文献19】米国特許第4938763号
【特許文献20】米国特許第6432438号
【特許文献21】米国特許第6673767号
【非特許文献17】Catania A.ら、Trends Endocrinol.Metab.、11巻、304〜308頁(2000年)、
【非特許文献18】Gantz I.およびFong T.M.、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.、284巻、E468〜E474頁(2003年)
【非特許文献19】Catania A.、Gatti S.、Colombo G.、Lipton J.M.、Pharmacol.Rev.、56巻、1〜29頁(2004年)
【非特許文献20】Seeley R.J.、Blake K.、Rushing P.A.ら、「The role of CNS glucagons-like peptide-1(7-36) amide receptors in mediating the visceral illness effects of lithium chloride.」、J.Neurosci.、20巻、1616〜1621頁(2000年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、構造式:
【0013】
【化1】

【0014】
の環状ヘキサペプチドを提供する。
式中、
R1は、H、NH2
【0015】
【化2】

【0016】
であり、
R2は、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-S-、または-S-S-であり、
R3aおよびR3bは、各々、任意選択の環置換基であり、1つまたは両方が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、
R4は、-NH2、または-NH(C=NH)NH2であり、
R5は、任意選択で1つまたは2つの環置換基を有する1-もしくは2-ナフチル、または3-インドリルであり、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、
R6は、H、NH2、C1からC4の低級脂肪族の直鎖もしくは分枝のアルキル鎖、C1からC4のアラルキル、またはC1からC4のωアミノ誘導体であり、
x+yが2から7であるという前提で、xは1から4であり、yは1から5であり、
zは2から5である。
【0017】
式(I)の環状ヘキサペプチドは、構造式:
【0018】
【化3】

【0019】
のヘキサペプチドを含む。
[式中、R4、R5、およびzは、構造式(I)のペプチドで定義したとおりである]。かくして一つの実施態様では、式(II)の環状ヘキサペプチドは、
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、または
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2
である。
【0020】
式(I)の環状ヘキサペプチドは、下式のヘキサペプチド:
【0021】
【化4】

【0022】
を含む。
[式中、R4、R5、およびzは、構造式(I)のペプチドで定義したとおりである]。かくして一つの実施態様では、式(III)の環状ヘキサペプチドは、
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、または
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2
である。
【0023】
本発明は更に、式(I)の環状ヘキサペプチドまたは薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体を含むことを特徴とする、製薬調製物を提供する。本発明は更に、前記製薬調製物の医薬として十分な量を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、悪液質を治療する方法を提供する。本発明は更に、前記製薬調製物の医薬として十分な量を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、炎症、および免疫が媒介する障害を治療する方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、ヘキサペプチドが2位から5位においてコア配列Trp-D-Nal 2-X-Yを含み、Xは、Arg、Lys、Orn、Harg、およびHlysからなる群から選択されるL-アミノ酸残基であり、Yは、Nal 1、Nal 2、およびTrpからなる群から選択されるL-またはD-アミノ酸残基であり、コア配列におけるあらゆる芳香環は任意選択で1つまたは2つの環置換基を含むことができ、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、1位におけるアミノ酸残基と6位におけるアミノ酸残基とを通じて環化されていることを特徴とする、N末端Ac基を有する、またはN末端NH2基とC末端NH2基とを有する環状ヘキサペプチドを提供する。前記環状ヘキサペプチドは、1位におけるアミノ酸残基の側鎖のアミノ基または1位におけるアミノ酸残基のN末端基のアミノ基と、6位におけるアミノ酸残基の側鎖カルボキシル基との間のアミド結合の形成により環化されていても良い。別法として、前記環状ヘキサペプチドは、1位におけるアミノ酸残基の側鎖カルボキシル基と、6位におけるアミノ酸の側鎖のアミノ基との間のアミド結合の形成により環化されていても良い。別法として、前記ヘキサペプチドは、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元されたシッフ塩基、イミド、2級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン、またはオキシム結合を含む共有結合の形成により環化されていても良い。
前記環状ヘキサペプチドは、Trp-D-Nal 2-X-Nal 2のコア配列を有しても良い。前記環状ヘキサペプチドは、Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2、H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、及びH-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2を含む。
【0025】
本発明は更に、ヘキサペプチドが2位から5位においてコア配列Trp-D-Nal 2-X-Yを含み、Xは、Arg、Lys、Orn、Harg、およびHlysからなる群から選択されるL-アミノ酸残基であり、Yは、Nal 1、Nal 2、およびTrpからなる群から選択されるL-またはD-アミノ酸残基であり、コア配列におけるあらゆる芳香環は任意選択で1つまたは2つの環置換基を含むことができ、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、1位におけるアミノ酸残基と6位におけるアミノ酸残基とを通じて環化されている、N末端Ac基を有する、またはN末端NH2基とC末端NH2基とを有する環状ヘキサペプチドの医薬として十分な量を投与する工程を含むことを特徴とする、悪液質、筋肉減少症、および消耗症候群または消耗疾患を含む体重障害をの治療する方法を提供する。
【0026】
本発明の一目的は、ペプチドベースのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品を提供することであり、ペプチドは、悪液質の治療で使用するための、高度に選択的なMC4-R拮抗薬または逆作用薬である。
【0027】
本発明の別の一目的は、メラノコルチン受容体MC4-Rに高度に特異的であり、拮抗薬または逆作用薬であるペプチドを提供することである。
【0028】
本発明の別の一目的は、炎症および他の免疫に関連する障害の治療で使用するためのペプチドベースのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品である。
【0029】
本発明のさらに別の一目的は、治療の投与が経鼻投与による治療で使用するためのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品を提供することである。
【0030】
本発明の一実施形態によると、摂食障害の治療において特定の医薬品として使用するのに適する高度に特異的なMC4-R拮抗薬であり、低投与量で有効である環状ヘキサペプチドが提供される。
【0031】
本発明の別の一態様は、大幅な投与量範囲にわたって有効な、高度に特異的なMC4-R環状ヘキサペプチド拮抗薬または逆作用薬を提供する。
【0032】
本発明のさらに別の一態様は、低投与量で効果が増強するので、それだけには限定されない経口送達システム、経鼻送達システム、および粘膜送達システムを含む、従来の静脈内、皮下、または筋肉内注射以外の送達システムにより投与することができる、摂食障害の治療において使用するための高度に特異的なMC4-R環状ヘキサペプチド拮抗薬または逆作用薬を提供する。
【0033】
他の目的、利点、および新規な特徴、ならびに本発明の適用可能性のさらなる範囲を、以下の詳しい記載に部分的に述べ、当業者であれば以下を審査する際にある程度明らかになり、また、本発明の実践により習得することができる。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される手段および組合せにより理解し実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本明細書に組み入れられ、その一部分をなす添付の図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態を例示するものであり、本明細書とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。図面は、本発明の1つまたは複数の好ましい実施形態を説明する目的のためにすぎず、本発明を制限するものとして解釈すべきではない。
【0035】
定義
本明細書および特許請求の範囲を通して用いられるある種の用語を、以下のように定義する。
【0036】
本明細書および特許請求の範囲を通して用いられる「結合する」、「結合」、「複合する」、および「複合」は、一般的に、全てのタイプの物理的および化学的な結合、反応、複合、引力、キレートなどを網羅するものとされる。
【0037】
本発明の「ペプチド」は、a)天然に存在することができ、b)化学合成により生成されることができ、c)組換えDNA技術により生成されることができ、d)より大きい分子の生化学的または酵素的フラグメンテーションにより生成されることができ、e)上記aからdに列挙した方法の組合せに起因する方法により生成されることができ、あるいはf)ペプチドを生成するためのあらゆる他の手段により生成されることができる。
【0038】
好ましい生成手段である化学合成を使用することにより、鎖上に天然に存在しない様々なアミノ酸を導入し、NまたはC末端を修飾するなどし、その結果安定性および調合の向上、プロテアーゼ分解に対する抵抗性などをもたらすことが可能である。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲を通して用いられる「ペプチド」は、化学修飾およびアミノ酸誘導体を含む、2つまたはそれを超えるアミノ酸からなるあらゆる構造を含むものとされる。ペプチドの全てまたは一部分を形成しているアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸、そのようなアミノ酸の立体異性体および修飾体、非タンパク質のアミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に修飾されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するようにデザインされた構築物または構造などであってよく、したがって「ペプチド」には、非ペプチドのバックボーンを有する構造を含む擬ペプチドおよびペプチドミメティック(peptidomimetic)が含まれる。「ペプチド」には、二量体または多量体のペプチドも含まれる。「製造された」ペプチドには、化学合成、組換えDNA技術、より大きい分子の生化学的または酵素的フラグメンテーション、前述の組合せにより生成されたペプチド、または一般的にあらゆる他の方法により作成されたペプチドが含まれる。
【0040】
本明細書および特許請求の範囲で用いられるものを含めて、本発明で用いられる「アミノ酸側鎖部分」には、「アミノ酸」を本明細書で定義するあらゆるアミノ酸のあらゆる側鎖が含まれる。したがって、これには天然に存在するアミノ酸に存在する側鎖部分が含まれる。これには、グリコシル化したアミノ酸など、修飾された天然に存在するアミノ酸における側鎖部分がさらに含まれる。これには、天然に存在するタンパク質のアミノ酸の立体異性体および修飾、非タンパク質のアミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するようにデザインされた構築物または構造などにおける側鎖部分がさらに含まれる。例えば、本明細書に開示されているあらゆるアミノ酸の側鎖部分が、定義内に含まれる。アミノ酸側鎖部分の定義内に、アミノ酸側鎖部分の「誘導体」が含まれる。
【0041】
アミノ酸側鎖部分の「誘導体」には、天然に存在するアミノ酸の側鎖部分の修飾を含めた、あらゆるアミノ酸側鎖部分に対するあらゆる修飾または変異が含まれる。例示として、アミノ酸側鎖部分の誘導体には、直鎖または分枝の、環状または非環状の、置換または非置換の、飽和または不飽和の、アルキル、アリール、またはアラルキル部分が含まれる。
【0042】
本発明の実施形態で用いられる「アミノ酸」、ならびに本明細書および特許請求の範囲で用いられる「アミノ酸」には、周知の天然に存在するタンパク質のアミノ酸が含まれ、その通常の3文字略記および1文字略記の両方により言及される。一般的には、11頁から24頁までに記載してある本文および表を含めて、その教示が本明細書に参照として組み入れられる「Synthetic Peptides: A User's Guide」G.A.Grant編集、W.H.Freeman&Co.、ニューヨーク(1992年)を参照されたい。上記に記載したように、「アミノ酸」は、天然に存在するタンパク質のアミノ酸の立体異性体および修飾、非タンパク質のアミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するようにデザインされた構築物および構造なども含む。修飾された通常ではないアミノ酸は、上記に引用した「Synthetic Peptides: A User's Guide」Hruby V.J.、Al-obeidi F.、Kazmierski W.、Biochem.J.、268巻、249〜262頁(1990年)、およびToniolo C、Int. J.Peptide Protein Res.、35巻、287〜300頁(1990年)に、概ね記載されており、これら全ての教示が、本明細書に参照として組み入れられる。さらに、以下の略記は以下の意味である:
Harg ホモアルギニン
Hlys ホモリジン
Nal 1 3-(1-ナフチル)アラニン
Nal 2 3-(2-ナフチル)アラニン
【0043】
本発明によるペプチドのリストでは、従来のアミノ酸残基は、「Manual of Patent Examining Procedure」第8版のチャプター2400に示してある従来の意味を有する。すなわち、「Nle」はノルロイシン、「Asp」はアスパラギン酸、「His」はヒスチジン、「D-Phe」はD-フェニルアラニン、「Arg」はアルギニン、「Trp」はトリプトファン、「Lys」はリジン、などである。
【0044】
用語「ヘキサペプチド」は、アシル、アセチル、アルケニル、アルキル、N−アルキル、
アミン、またはアミド基を他の中でも含む、N末端及びC末端で非アミノ酸残基を任意に有する、6個のアミノ酸残基を含むペプチドを含む。
【0045】
「アルケン」には、1つまたは複数の2重の炭素-炭素結合を含む不飽和炭化水素が含まれる。このようなアルケン基の例には、エチレン、プロペンなどが含まれる。
【0046】
「アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を含む、炭素原子2から6個の直鎖の1価の炭化水素基、または炭素原子3から6個の分枝の1価の炭化水素基であり、その例として、エテニル、2-プロペニルなどが含まれる。
【0047】
本明細書で特定する「アルキル」基には、直線または分枝、いずれかの配置の指定された長さのアルキル基が含まれる。このようなアルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2級ブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが含まれる。
【0048】
「アルケニル」には、少なくとも1個の三重結合を含む、炭素原子2から6個の直鎖の1価の炭化水素基、または炭素原子3から6個の分枝の1価の炭化水素基が含まれ、その例として、エチニル、プロピニル、ブチニルなどが含まれる。
【0049】
「アリール」には、6から12個の環原子の、および任意選択で、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ-カルボニルから選択される1つまたは複数の置換基で独立に置換されている、単環式または二環式の芳香族炭化水素基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル,1-ナフチル、および2-ナフチル、それらの誘導体などが含まれる。
【0050】
「アラルキル」には、Raがアルキレン(2価アルキル)基でありRbが上記に定義したアリール基であるRaRb基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル、フェニルエチル、3-(3-クロロフェニル)-2-メチルフェニルなどが含まれる。
【0051】
「脂肪族」には、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、およびその誘導体などの炭化水素鎖との化合物が含まれる。
【0052】
「アシル」には、Rが有機基であるRCO-基が含まれる。例には、本明細書で「Ac」と言及されるアセチル基CH3CO-がある。
【0053】
上記に定義したアルキル基または置換されているアルキル基が、1つまたは複数のカルボニル{-(C=O)-}基により結合している場合、ペプチドまたは脂肪族の部分は「アシル化され」ている。ペプチドは、最も通常にはN末端でアシル化されている。
【0054】
「ωアミノ誘導体」には、末端がアミノ基である脂肪族部分が含まれる。ωアミノ誘導体の例として、アミノヘプタノイル、ならびにオルニチンおよびリジンのアミノ酸側鎖部分が含まれる。
【0055】
「ヘテロアリール」には、窒素、酸素、およびイオウから選択されるヘテロ原子を1から4個含む単環および2環式の芳香環が含まれる。5員または6員のヘテロアリールは、単環式の芳香族複素環であり、その例には、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、イソキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどが含まれる。2環式の芳香族複素環には、それだけには限定されない、ベンゾチアジアゾール、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、イソキノリン、プリン、フロピリジン(furopyridine)、およびチエノピリジンが含まれる。
【0056】
「アミド」には、カルボニル基(-CCNH2)に付着している3価の窒素を有する化合物、例えば、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどが含まれる。
【0057】
「イミド」には、イミド基(-CO.NH.CO-)を含む化合物が含まれる。
【0058】
「アミン」には、アミノ基(-NH2)を含む化合物が含まれる。
【0059】
「ニトリル」には、カルボキシル酸誘導体であり、有機基に結合している(-CN)基を含む化合物が含まれる。
【0060】
「ハロゲン」には、ハロゲン原子であるフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素、ならびに、-CF3などのハロゲン原子を1つまたは複数含む基が含まれるものとされる。
【0061】
薬剤組成物におけるような「組成物」は、有効成分、および担体を構成する不活性の成分を含む製品、ならびに、直接的または間接的に、任意の2つまたはそれを超える成分の組合せ、複合体形成、または凝集に起因し、あるいは1つまたは複数の成分の解離に起因し、あるいは他のタイプの1つまたは複数の成分の反応または相互作用に起因するあらゆる製品を包含するものとされる。したがって、本発明の薬剤組成物は、本発明のペプチドと、薬学的に許容できる担体とを混合することにより作成されるあらゆる組成物を包含する。
【0062】
天然に存在するタンパク質のアミノ酸の立体異性体および修飾、非タンパク質のアミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、酵素的に合成されたアミノ酸、誘導体化されたアミノ酸、アミノ酸を模倣するようにデザインされた構築体または構造、などを含む前述の全てを含めた単一のアミノ酸を、本明細書では「残基」と言及することがある。
【0063】
メラノコルチン受容体の「作用薬」は、メラノコルチン受容体と相互作用することができ、メラノコルチン受容体に特徴的な薬理学的反応を開始することができる、天然に存在する物質、または製造された薬剤物質もしくは組成物を意味する。メラノコルチン受容体の「拮抗薬」は、通常メラノコルチン受容体作用物質が引き起こすメラノコルチン受容体に関連する反応に対抗する、天然に存在する物質、または製造された薬剤物質もしくは組成物を意味する。メラノコルチン受容体の「逆作用薬」は、メラノコルチン受容体の不活性な立体配座を安定化し、基本的な活性を阻害する薬物または化合物を意味する。
【0064】
「摂食障害」は、ヒトにおけるあらゆる原因の、低体重、悪液質、食欲不振、または過食症に関連するものである。
【0065】
「悪液質」は、全身の不健康および栄養不良の状態を意味する。これは、しばしば、悪性の癌、嚢胞性線維症、またはAIDSに付随し、それらにより引き起こされ、食欲の減退、体重、特に除脂肪体重の減少、および筋肉の消耗を特徴とする。
【0066】
「食欲不振」は、医薬の、生理学的な、または心理学的な要因のいずれかによりもたらされる食欲の減退を意味するにすぎない。食欲不振は、進行した癌または他の状態の患者にみられる悪液質に密接に関連し、一般的にその原因になることが多い。
【0067】
本発明の環状ヘキサペプチド
一つの実施態様では、本発明は、コア配列Trp-D-Nal 2-X-Yまたはそのホモローグまたは類似対を含む環状ヘキサペプチドを提供し、Xは、Arg、Lys、Orn、Harg、およびHlysからなる群から選択されるL-アミノ酸であり、Yは、Nal 1、Nal 2、およびTrpからなる群から選択されるL-またはD-アミノ酸残基である。上記定義は、コア配列中に一つまたは複数の置換環状基ヘキサペプチドを含み、コア配列におけるいずれかの一つまたは複数の芳香環は、任意選択で1つまたは2つの環置換基を含むことができ、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基である。好ましい実施態様では、前記ペプチドは、1位における残基と6位における残基とを通じて環化されているヘキサペプチドであり、コア配列は2位から6位に存在する。N末端からC末端へアミノ酸残基の位置をカウントすることにより、位置は従来の態様で決定される。より好ましくは、N末端は水素またはアシル基であり、好ましくはアセチル基であり、C末端はアミン基である。
【0068】
本発明の別の一態様は、メラノコルチン受容体、好ましくはMC4-Rに高度に特異的なある種の環状ヘキサペプチドを提供する。最も好ましくは、環状ヘキサペプチドはMC4-Rに高い親和性で結合し、Ki値は少なくとも100nMであり、好ましくは少なくとも10nMであり、最も好ましくは約0.01nMから約2nMまでである。いくつかの実施形態では、環状ヘキサペプチドはそのような受容体または受容体類に関して、機能的に逆作用薬である。しかし、本発明のヘキサペプチドは逆作用薬である必要はない。そのようなヘキサ環状ペプチドは、摂食障害の治療に使用することが好ましいことがあり、それだけには限定されないげっ歯動物、イヌ、およびヒトを含む哺乳動物において体重の増加を引き起こすことを部分的に特徴とすることができる。
【0069】
ペプチドは環状ヘキサペプチドである。環状ペプチドは、提供される場合にはペプチドのN末端のアミノ基と、提供される場合にはC末端のカルボキシル基との間の共有結合の形成を引き起こすことにより得ることができる。環状ペプチドは、末端の反応基と反応性のアミノ酸側鎖部分との間に、または2つの反応性アミノ酸側鎖部分の間に共有結合を形成することにより得ることもできる。環状ペプチドは、アミノ酸側鎖部分を含む2つのスルフヒドリル基の間に、または末端のスルフヒドリル基と別のアミノ酸側鎖部分のスルフヒドリル基との間にジスルフィド共有結合を形成することにより得ることもできる。システイン、ホモシステイン、またはペニシラミンのアミノ酸残基から形成される環状の結合など、ランチオニン、シスタチオニン、またはペンチオニン(penthionene)の共有結合を有するペプチドも形成することができる。これらの結合は、チオエーテル架橋結合である。このような結合を作成する方法を公表している、Galande A.K.、Spatola A.F.、Lett.Pept.Sci.、8巻、247頁、(2001年)は、本明細書に参照として組み入れられる。すなわち、環状ヘキサペプチドは、2つの反応性アミノ酸側鎖部分の間に、または末端の反応性の基と反応性のアミノ酸側鎖部分との間にチオエーテル共有結合を形成することにより得ることもできる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態に開示されている環状ヘキサペプチドは、部分的には、ペプチドがMC4-Rに高度に選択的であるのが好ましいことを特徴としている。例えば、本明細書に使用されているアッセイ条件下では、SHU91 19では、MC4-RのMC3-Rに対するKi値の比は、約1:6より低く、MC4-RのMC5-Rに対する比は約1:3より低く、MC4-RのMC1-Rに対する比は約1:7より低い。他の研究者(例えば、Schioth H.B.ら、Peptides、18巻、1009〜1013頁(1977年))は、異なる値を報告しているが、SHU91 19は非選択的であることには同意している。したがって、SHU91 19は、MC4-Rに対して高度に選択的でないとみることができる。これとは対照的に、本発明の環状ヘキサペプチドは、著しくより選択的である。かくして、実施例116の環状ヘキサペプチドである、Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2は、同アッセイ条件下で、MC4-RのMC3-Rに対するKi値の比が約1:62であり、MC4-RのMC5-Rに対する比が約1:93であり、MC4-RのMC1-Rに対する比が約1:175000である。このように、本発明の環状ヘキサペプチドは薬学的に関連のある投与量全てで、MC4-Rに高度に選択的であるとみることができる。
【0071】
本発明のヘキサペプチドは、あらゆるMC受容体に対する作用薬でないことが好ましく、MC4-R以外の全てのMC受容体に関して不活性または拮抗薬のいずれかであることが好ましいことをさらに特徴とする。本発明の全てのヘキサペプチドは、MC4-Rに関する機能上の拮抗薬である。
【0072】
ペプチド合成
本発明の環状ヘキサペプチドは、アミノ酸の間にペプチド結合を形成するためのあらゆる周知の従来の手順により容易に合成することができる。このような従来の手順には、例えば、そのカルボキシル基または他の反応性の基が保護されているアミノ酸またはその残基の遊離のαアミノ基と、そのアミノ基または他の反応性の基が保護されている別のアミノ酸またはその残基の遊離の1級のカルボキシル基との間の縮合を可能にする、あらゆる溶液相の手順が含まれる。好ましい従来の手順では、本発明の環状ヘキサペプチドは固相合成により合成し、当技術分野では周知の方法にしたがって精製することができる。様々な樹脂および試薬を利用する数々のよく知られている手順の任意のものを用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0073】
環状ヘキサペプチドを合成するためのプロセスは、望まれる配列における各アミノ酸を別のアミノ酸またはその残基に続いて一度に添加する手順により、または望まれるアミノ酸配列を有するペプチドフラグメントをまず従来どおりに合成し、次いで濃縮して望まれるペプチドを提供する手順により行うことができる。次いで生成したヘキサペプチドを環化し、本発明の環状ヘキサペプチドを生産する。
【0074】
固相ペプチド合成方法は、当技術分野ではよく知られており実践されている。このような方法では、本発明のペプチドの合成を、固相方法の一般的原理にしたがって、伸長しているペプチド鎖中に望まれるアミノ酸残基を一度に組み入れることにより、逐次に行うことができる。これらの方法は、多数の参考文献に公開されており、Merrifield R.B.、「Solid phase synthesis(Nobel lecture)」Angew.Chem.、24巻、799〜810頁(1985年)、およびBaranyら、The Peptides.Analysis Synthesis and Biology、第2巻、Gross E.And Meienhofer J.編集、Academic Press、1〜284頁(1980年)が含まれる。
【0075】
ペプチドの化学合成では、様々なアミノ酸残基の反応性の側鎖基は、適切な保護基で保護されており、保護基は、保護基が取り除かれるまでその部位で化学反応が起こるのを防ぐ。その部分がカルボキシル基で反応する間、アミノ酸残基またはフラグメントのαアミノ基を保護し、その後αアミノ保護基を選択的に除去してその部位で引き続き反応が起こるようにすることも一般的である。特定の保護基は公表されており、固相合成法および液相合成法では知られている。
【0076】
αアミノ基は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、ならびに置換されているベンジルオキシカルボニル(例えば、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ビフェニルイソプロポキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、およびp-メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz))などのウレタン型の保護基、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、およびアリルオキシカルボニルなどの脂肪族ウレタン型の保護基を含めた、適切な保護基により保護されていることができる。
【0077】
グアニジノ基は、ニトロ、p-トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(pentamethylchromanesulfonyl)(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、およびBocなどの適切な保護基により保護することができる。Pmcは、Argに好ましい保護基である。
【0078】
本明細書に記載した本発明のペプチドは、Symphony Multiplex Peptide Synthesizer(Rainin Instrument Company)自動ペプチド合成機などにより、固相合成を用いて、製造元が提供するプログラミングモジュールを用いて、製造元のマニュアルに述べてあるプロトコールにしたがって調製した。
【0079】
固相合成は、ペプチドのC終末末端から、保護されているαアミノ酸を適切な樹脂に連結するすることにより開始する。このような開始材料は、αアミノ保護されているアミノ酸をp-ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂もしくは2-クロロトリチルクロライド樹脂にエステル結合により結合させることにより、p-[(R,S)-α-[1-(9H-フルオレン-9-yO-メトキシホルムアミドル^^-ジメチルオキシベンジルJ-フェノキシ酢酸(Rinkリンカー)などのFmoc-リンカーのベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂に対する間のアミド結合により、または当技術分野ではよく知られている他の手段により調製される。Fmoc-リンカー-BHA樹脂支持体は、市販されており、可能な場合に一般的に用いられる。樹脂は、アミノ酸を順次付加するために、必要に応じて、反復性のサイクルにより運ばれる。αアミノFmoc保護基を、塩基性の条件下で取り除く。この目的で、ピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミン、またはモルホリン(20〜40%v/v)のN,N-ジメチルホルミアミド(DMF)溶液を使用することができる。
【0080】
αアミノ保護基を取り除いた後、引き続き保護されているアミノ酸を段階的に望まれる順番で連結させて、中間物である保護されているペプチド樹脂を得る。ペプチドの固相合成におけるアミノ酸の連結のために用いられる活性化試薬は、当技術分野ではよく知られている。ペプチドを合成した後、所望により、直交性に保護されている側鎖保護基を、ペプチドのさらなる誘導体化に当技術分野でよく知られている方法を用いて取り除くことができる。
【0081】
ペプチドにおける反応基を、固相合成の間中、または樹脂から除去した後に選択的に修飾することができる。例えば、ペプチドを修飾してアセチル化などのN末端修飾を得ることができ、樹脂上では、あるいは切断試薬を用いることにより樹脂から除去し、次いで修飾することができる。アセチル化など、N末端を修飾するための方法、及びアミド化など、C末端を修飾するための方法は、当技術分野では知られている。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾するための方法は、ペプチド合成の技術者であればよく知っている。ペプチド上に存在する反応基に対してなされる修飾の選択は、一部には、ペプチドに望まれる特徴により決定される。
【0082】
ペプチドは、一実施形態では、環化した後にペプチド樹脂から切断することができる。反応性の側鎖部分により環化するためには、望まれる側鎖を脱保護し、適切な溶媒に懸濁したペプチドおよび環状のカップリング剤を加える。適切な溶媒には、例えば、DMF、ジクロロメタン(DCM)、または1-メチル-2-ピロリドン(NMP)が含まれる。適切な環状のカップリング試薬には、例えば、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-tris(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-tris(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、2-(2-オキソ-1(2H)-ピリジル)-1,1,3,3-テトラメチルロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)、またはN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が含まれる。連結は従来は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym-コリジン、またはN-メチルモルホリン(NMM)などの適切な塩基を使用することにより開始する。
【0083】
ペプチドの合成後にペプチドを固相から切り離した後、C18カラムなどの適切なカラムを用いて、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)などの数々の方法の任意のものにより、ペプチドを精製することができる。ペプチドのサイズまたは電荷などに基づく方法などの、他の分離または精製の方法も使用することができる。ペプチドは精製後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、アミノ酸分析、マススペクトロメトリーなどの数々の方法の任意のものにより特徴付けることができる。
【0084】
製剤および有用性
本明細書に開示した環状ヘキサペプチドを、医薬の適用にも、動物の畜産または獣医学の適用にも用いることができる。製品をヒトに用いるのが典型的であるが、他の哺乳動物にも用いてもよい。「患者」は、哺乳動物の個体を意味するものとされ、本明細書で、および特許請求の範囲の全体にわたりそのように用いられる。本発明の主な適用はヒト患者に関するが、本発明は、実験室、飼育場、動物園、野生動物、ペット、競技用、またはその他の動物に適用することができる。
【0085】
一般的に、本発明の環状ヘキサペプチドは、固相合成により合成し、当技術分野で知られている方法にしたがって精製することができる。様々な樹脂および試薬を利用する数々のよく知られている手順の任意のものを用いて、本発明の環状ヘキサペプチドを調製することができる。
【0086】
環状ペプチドの塩の形態
本発明の環状ヘキサペプチドは、あらゆる薬学的に許容できる塩の形態であることができる。「薬学的に許容できる塩」は、無機または有機の塩基および無機または有機の酸を含めた、薬学的に許容できる非毒性の塩基または酸から調製される塩を意味する。無機の塩基に由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)の塩、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容できる有機の非毒性の塩基に由来する塩には、1級、2級、および3級アミン、天然に存在する置換されているアミンを含む置換されているアミン、環状アミン、ならびに、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩基性イオン交換樹脂が含まれる。
【0087】
本発明の環状ヘキサペプチドが塩基性である場合、酸付加塩を、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容できる非毒性の酸から調製することができる。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボキシル酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが含まれる。本発明のペプチドの酸付加塩は、ペプチド、および過剰の酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、またはメタンスルホン酸)からの適切な溶剤で調製する。酢酸塩の形態が特に有用である。本発明の実施形態のヘキサペプチドが酸部分を含む場合、適切な薬学的に許容できる塩には、ナトリウム塩もしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、またはカルシウム塩もしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩が含まれ得る。
【0088】
薬剤組成物
本発明の別の一実施形態は、本発明の環状ヘキサペプチドおよび薬学的に許容できる担体を含む薬剤組成物を提供する。担体は、液体の製剤であることができ、緩衝化された等張の水溶液が好ましい。薬学的に許容できる担体は、以下に記載するように、希釈剤、担体などの賦形剤、および、安定化剤、保存剤、可溶化剤、バッファーなどの添加剤も含む。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態の環状ヘキサペプチド組成物は、所望により本発明の環状ペプチドの少なくとも1つを、希釈剤、担体などの賦形剤、および、安定化剤、保存剤、可溶化剤、バッファーなどの添加剤を含めた、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体とともに含む、薬剤組成物中に調合し、または配合することができる。製剤の賦形剤には、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムが含まれ得る。注射または他の液体投与製剤には、少なくとも1つまたは複数の緩衝化成分を含む水が好ましく、安定化剤、保存剤、および可溶化剤も使用することができる。固体の投与製剤には、様々な増粘性の、充填剤の、増量性の、および担体の添加物の任意のもの、例えば、デンプン、糖、脂肪酸などを使用することができる。局所投与の製剤には、様々なクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤などの任意のものを使用することができる。殆どの薬剤製剤では、非活性成分が、製剤の重量または容積の大部分を構成する。薬剤製剤では、本発明のペプチドがある期間にわたって効果的に送達されるように投与量を調合することができるように、様々なメジャードリリースの(measured-release)、持続性の、または徐放性の任意のものの製剤および添加剤を使用することができることも企図される。
【0090】
一般的に、患者に投与する環状ヘキサペプチドの実際の量は、投与の様式、用いる製剤、および望まれる反応に応じて、かなり広い範囲の間で変化する。
【0091】
実際の使用では、環状ヘキサペプチドは、活性成分として、従来の製薬上の配合技術にしたがって製薬上の担体との混合物で組み合わせることができる。担体は、経口の、非経口の(静脈内を含む)、尿道の、膣内の、経鼻の、バッカルの、舌下の、などの投与に望ましい製剤の形態に応じて広範な形態をとることができる。経口投与形態のための組成物を調製する際は、経口の液体製剤、例えば、懸濁剤、エリキシール剤、および溶液剤の場合には、水、グリコール、油、アルコール、着香料、保存剤、着色料など、あるいは、経口の固体製剤、例えば、粉末剤、硬および軟カプセル剤、ならびに錠剤の場合には、デンプン、糖、微結晶性セルロースなどの担体、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など、通常の製薬上の媒体の任意のものを使用することができる。
【0092】
錠剤およびカプセル剤は投与が容易であるので、有利な経口単位投与量形態の代表である。所望により、錠剤を、標準の水性のまたは非水性の技術によりコーティングすることができる。このような治療上有用な組成物における活性ヘキサペプチドの量は、有効な投与量が得られるような量である。別の有利な単位投与量形態では、シート、ウェハー、錠剤などの舌下の構築物を使用することができる。活性ヘキサペプチドを、例えば、液滴またはスプレーなどとして、経鼻的に投与することもできる。
【0093】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、バレイショデンプン、またはアルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、およびショ糖、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味料も含むことができる。単位投与量形態がカプセル剤である場合、上記のタイプの材料の他に、脂肪油などの液体の担体を含むことができる。
【0094】
様々な他の材料を、コーティングとして、または単位投与量の物理形態を修飾するために利用することができる。例えば、錠剤を、シェラック、糖、または両者でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシール剤は、有効成分の他に、甘味料としてショ糖、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料、ならびにチェリーまたはオレンジ香料などの香味料を含むことができる。
【0095】
環状ヘキサペプチドは、非経口投与することもできる。これらの活性なヘキサペプチドの溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中に調製することができる。分散剤は、油中の、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物に調製することもできる。これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐために、保存剤を任意選択で含むことができる。
【0096】
注射可能な使用に適する医薬形態には、滅菌の水性の溶液または分散液、および即時調製の滅菌の注射可能な溶液または分散液のための滅菌粉末剤が含まれる。いずれの場合も、形態は滅菌でなければならず、シリンジにより投与することができる程度に液体でなければならない。形態は製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、または液体ポリエチレングリコール、これらの適切な混合物)、および植物油を含む、溶剤または分散媒体であることができる。
【0097】
本明細書に開示した環状ヘキサペプチドは、経鼻投与により治療的に適用することができる。「経鼻投与」は、本発明の環状ヘキサペプチドの任意のものの経鼻投与のあらゆる形態を意味する。ヘキサペプチドは水溶液中、例えば、食塩水、クエン酸、または他の通常の賦形剤もしくは保存剤を含む溶液中であってよい。ヘキサペプチドは、乾燥または粉末の製剤中であってもよい。
【0098】
代替の一実施形態では、環状ヘキサペプチドを肺の中に直接投与することができる。肺内投与は、患者が吸気の間に作動させる場合に本発明のペプチドの計量されたボーラスを自己投与できるようにする装置である、計量した投与量の吸入器により行うことができる。
【0099】
本発明の別の実施形態の環状ヘキサペプチドは、ペプチド薬物を含めた薬物の効果的な経鼻の吸収を増大させる様々な物質の任意のものと配合することができる。これらの物質は、許容できない損傷を粘膜に与えることなく、経鼻吸収を増大させなければならない。数ある中で、米国特許第5693608号、第5977070号、および第5908825号は、吸収促進剤を含めて、使用することができる数々の薬剤組成物を教示しており、前述の各々の教示、およびそこに引用される参考文献および特許は全て、参照として組み入れられる。
【0100】
水溶液における場合には、本発明の実施態様の環状ヘキサペプチドは、一般的に約pH4から約pH7である、あらゆる生理学的に許容できるpHであることができる、食塩水、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、または他の緩衝化剤により、好適に緩衝化することができる。リン酸緩衝食塩水、食塩水と酢酸塩バッファーなどの緩衝化剤の組合せも使用することができる。食塩水の場合には、0.9%の食塩水溶液を使用することができる。酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩などの場合には、50mM溶液を使用することができる。緩衝化剤の他に、細菌および他の微生物の増殖を防ぎ、または制限するために、適切な保存剤を使用することができる。使用することができるこのような保存剤の1つに、0.05%塩化ベンザルコニウムがある。
【0101】
環状ヘキサペプチドが、乾燥した、粒子の形態であることができることも、可能であり、企図されている。好ましい一実施形態では、粒子は肺の表面上に沈降し、吐き出されないのに十分な重量を有するが、肺に到達する前に気道の表面上に堆積しないくらいに十分小型であるように、粒子は約0.5と6.0μmとの間である。乾燥粉末を微粒子にするために、それだけには限定されないマイクロフライス盤、噴霧乾燥、および急速冷凍エアロゾルの後の凍結乾燥を含む、様々な異なる技術の任意のものを用いることができる。微粒子で、ペプチドは、肺の深部に堆積することができ、それにより血流中への迅速で効果的な吸収をもたらす。さらに、経皮の、経鼻の、または経口の粘膜の送達経路では時々あることであるが、このような取組みでは、浸透促進剤は必要とされない。噴射剤ベースのエアロゾル、ネブライザー、単回投与量のドライパウダー吸入器、およびマルチドーズのドライパウダー吸入器などの、様々な吸入器の任意のものを使用することができる。現在使用されている一般的な装置には、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの治療のための薬物を送達するために用いられている、定量噴霧式吸入器が含まれる。好ましい装置には、常に約6.0μm未満である粒子サイズの微粉末の雲状物またはエアロゾルを形成するようにデザインされているドライパウダー吸入器が含まれる。
【0102】
平均粒度分布を含む微粒子のサイズは、製造方法により調節することができる。マイクロフライス盤では、フライスヘッドのサイズ、ローターのスピード、加工処理時間などが、微粒子サイズを制御している。噴霧乾燥では、ノズルのサイズ、流量、乾燥機の熱などが微粒子サイズを制御している。急速冷凍エアロゾルとそれに続く凍結乾燥による製造では、ノズルのサイズ、流量、エアロゾル溶液の濃度などが微粒子サイズを制御している。これらのパラメータなどを使用して、微粒子サイズを制御することができる。
【0103】
本発明の環状ペプチドを、注射により、通常は徐放性の注射可能な製剤の臀筋または三角筋などにおける深部の筋肉内注射により、治療的に投与することができる。一実施形態では、本発明の環状ペプチドを、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコール、および、それだけには限定されない賦形剤(例えば、塩、ポリソルベート80、pHを調整するための水酸化ナトリウム、または塩酸など)を含めた、任意選択の1つまたは複数のさらなる賦形剤および保存剤と調合される。別の一実施形態では、本発明の環状ペプチドは、ポリマーのバックボーンに様々なパーセント値の乳酸の任意のものを有する自己触媒されたポリ(オルトエステル)であることができるポリ(オルトエステル)、および任意選択で1つまたは複数のさらなる賦形剤と調合する。一実施形態では、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマー(PLGAポリマー)、好ましくは、親水性の末端基を有するPLGAポリマー、例えば、Boehringer Ingelheim社(ドイツ、Ingelheim)からのPLGA RG502Hが使用される。このような製剤は、例えば、本発明の環状ペプチドを、メタノールなどの適切な溶剤で、PLGAの塩化メチレン溶液と組み合わせ、そこにポリビニルアルコールの連続相溶液を反応器で適切な混合条件下で加えることにより作成することができる。一般的には、好ましくは接着性ポリマーでもある、数々の注射可能な生分解性のポリマーの任意のものを、徐放性の注射可能な製剤で使用することができる。米国特許第4938763号、第6432438号、および第6673767号の教示、ならびにそれらに開示されている生分解性ポリマーおよび調合の方法は、参照として本明細書に組み入れられる。製剤は、環状ペプチドの濃度および量、ポリマーの生分解速度、ならびに当業者であれば知っている他の要因に応じて、1週間ごとに、1ヶ月ごとに、または他の期間ベースで注射が必要とされるようなものであることができる。
【0104】
投与経路
注射により投与する場合、注射は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または当技術分野では知られている他の手段であることができる。本発明のヘキサペプチドは、それだけには限定されない、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、懸濁剤、粉末剤、凍結乾燥製剤、座剤、点眼剤、皮膚パッチ剤、経口の可溶性製剤、スプレー剤、エアロゾル剤などのような製剤を含めた、当技術分野では知られているあらゆる手段により調合することができ、バッファー、結合剤、賦形剤、安定化剤、抗酸化剤、および当技術分野では知られている他の物質と混合し、調合することができる。一般的には、表皮の細胞の層を越えて本発明のヘキサペプチドを導入するあらゆる投与経路を使用することができる。投与手段には、したがって、粘膜を介した投与、バッカル投与、経口投与、皮膚投与、吸入投与、経鼻投与、尿道の投与、経膣投与などが含まれ得る。
【0105】
治療有効量
一般的に、本発明の環状ヘキサペプチドを患者に投与する実際の量は、投与の様式、用いる製剤、および望まれる反応に応じて、かなり広い範囲の間で変化する。治療の投与量は、当技術分野では知られている前述の手段またはあらゆる他の手段の任意のものにより、望ましい治療上の効果をもたらすのに十分な量の投与である。したがって、治療有効量は、患者における摂食障害を治療的に緩和するのに十分であり、または摂食障害の発症または再発を防ぎまたは遅延するのに十分であり、または免疫障害および癌に二次的なものを含む悪液質に関連した疾患もしくは症候群の患者における摂食障害のマネージメントのための、本発明のペプチドもしくは薬剤組成物の量を含む。
【0106】
一般的には、本発明の環状ペプチドは高度に活性である。例えば、環状ペプチドは、選択される特定のペプチド、望まれる治療上の反応、投与経路、製剤、および当業者であれば知っている他の要因に応じて、体重1kgあたり約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50、100、または500μgを投与することができる。
【0107】
炎症および免疫介在性の障害
本発明のヘキサペプチドは、炎症および免疫介在性の障害の治療にさらに使用することができる。例えば、各々が参照として本明細書に組み入れられる、Catania A.ら、Trends Endocrinol.Metab.、11巻、304〜308頁(2000年)、Gantz I.およびFong T.M.、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.、284巻、E468〜E474頁(2003年)、およびCatania A.、Gatti S.、Colombo G.、Lipton J.M.、Pharmacol.Rev.、56巻、1〜29頁(2004年)を参照されたい。
【0108】
併用療法
本発明のいくつかの実施形態による環状ヘキサペプチドを、他の薬物または物質と併用して、特に悪液質の治療に用いることも可能であり、企図されている。これらの他の薬物および物質は、コルチコステロイドおよびプロゲステロンの物質を含む、体重の増加を引き起こす物質を含むことができる。本発明の好ましい一実施形態では、本発明の環状ヘキサペプチドを、治療有効量の第2の体重増加の薬剤物質と併用して用いることができる。
【0109】
本発明の別の一実施形態によると、悪液質を治療するための方法が提供される。この方法は、悪液質を有し、または有するリスクのある患者に、本明細書で開示された環状ペプチドの治療有効量を、悪液質の治療に有用な別の化合物の治療有効量と併用して投与することを含む。
【0110】
本発明の一実施態様は、1)本発明の環状ペプチド、および2)悪液質の治療に有用な第2の化合物を含む薬剤組成物を提供することである。
【0111】
上記組成物の一実施形態では、悪液質の治療に有用な第2の化合物は、それだけには限定されないが、ADP-リボース-ポリメラーゼ阻害物質、ADP-リボース-トランスフェラーゼ阻害物質、NADase阻害物質、ニコチンアミド、ベンズアミド、テオフィリン、チミンおよびそれらの類似体;αリノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、もしくはこれらの混合物などのω3脂肪酸;低レベルのトリプトファンおよび5-ヒドロキシトリプトファンを含み、もしくは含まない分枝鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン、もしくはこれらの混合物;βカロチン、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、またはこれらの混合物を含む群から選択される抗酸化剤;L-グルタミン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、およびセレニウム、アザフティッグ(Azaftig);3,5,6-トリメチル-2-(3-ピリジル)メチル-1,4-ベンゾキノン塩酸塩を含むキニン誘導体;インターロイキン2、ベンズアルデヒド、4,6-O-ベンジリデン-D-グルコース、フリーデラン-3-オン、硫酸ヒドラジン、酢酸メドロキシプロゲステロン、β2-アドレナリン受容体作用薬、デキサメタゾンなどのコルチコステロイド、Vitor(登録商標)、Pro-Stat(登録商標)、酢酸メゲステロール(Megace(登録商標))、ドロナビノール(Marinol(登録商標))、酢酸メゲストロール(Megace(登録商標))、サリドマイド(Thalidomid(登録商標))、フルオキシメステロン(Halotestin(登録商標))、ペントキシフィリン(Trental(登録商標))、シプロヘプタジン(Periactin(登録商標))、メトクロプラミド(Reglan(登録商標))、完全非経口栄養、または他のMC4-R拮抗薬からなる群から選択されることが好ましい。別の一実施形態では、悪液質の治療に有用な第2の化合物は、注射可能な形態のヒト成長ホルモンであるソマトロピン(Serostim(登録商標))である。
【0112】
本発明の別の一実施形態は、悪液質を治療するためのキットを提供する。キットは、本発明の一実施形態による環状ペプチドを含む第1の薬剤組成物、悪液質の治療に有用な第2の組成物を含む第2の薬剤組成物、ならびに第1および第2の組成物のための容器を含む。
【0113】
本発明を、以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【0114】
(実施例)
(実施例1)
[I125]-NDP-α-MSHを使用した競合的阻害アッセイ
hMC3-R、hMC4-R、またはhMC5-R遺伝子構築物で形質移入したHEK-293細胞を用いて調製した膜、および、それぞれ0.4nM、0.2nM、または0.1nMの[I125]-NDP-α-MSH(New England Nuclear)の、1mM MgCl2、2mM CaCl2、および5mM KClを含むpH7.2の50mM HEPESバッファー溶液を用いたB-16マウスメラノーマ細胞(MC1-Rを含む)を用いて、競合的結合阻害アッセイを行う。アッセイチューブは、それが[I125]-NDP-α-MSHのその受容体への結合を阻害する効力を決定するために、選択された濃度の、典型的には1μMの濃度の本発明の試験ペプチドも含まれている。1μM NDP-α-MSHの存在するアッセイでは、[I125]-NDP-α-MSHの結合の競合的阻害により、非特異的な結合を測定する。
【0115】
アッセイ混合物を、室温で90分間インキュベートし、次いでろ過し、氷冷したバッファーで膜を3回洗浄する。ろ紙を乾燥し、γ線計数器で、膜に結合している残留している放射能を計測する。1μM NDP-α-MSHの非存在下または存在下で、細胞膜に結合している放射能(cpm)の差を、100%特異的な結合と定義する。試験ペプチドの存在下で得られたcpmを、100%特異的結合に関して標準化して、[I125]-NDP-α-MSH結合のパーセント阻害を決定する。各アッセイを3回ずつ行う。本発明のある種のペプチドのKi(nM)を、同様のアッセイプロトコール、およびより広い投与量範囲にわたる試験ペプチドを用いて決定する。
【0116】
(実施例2)
機能上の活性のアッセイにおいてEC50を決定するための一般的な方法
メラノコルチン受容体におけるペプチドの機能的評価を、hMC3-R、hMC4-R、またはhMC5-Rを発現するHEK-293細胞、ならびにMC1-Rを発現するB-16マウスメラノーマ細胞における細胞内cAMPの蓄積を測定することにより行う。10mM HEPES(pH7.5)、5mM MgCl2、1mMグルタミン、0.1%アルブミン、およびホスホジエステラーゼ阻害物質である3-イソブチル-1-メチルキサンチンを0.6mM含むEarle's Balanced Salt Solutionに懸濁した細胞を、1ウェルあたり0.5×105細胞の密度で96ウェルプレートに接種する。細胞を、α-MSHの存在下または非存在下で試験ペプチドとともに37℃で1時間インキュベートする。細胞溶解物におけるcAMPレベルを、EIAキット(Amersham)を用いて測定する。データを分析し、Prism Graph-Padソフトウェアで非線形回帰分析を用いて、EC50値を決定する。
【0117】
(実施例3)
機能的状態
本発明のある種のペプチドのMC1-R、MC4-R、およびMC5-Rに関する作用薬/拮抗薬の状態を決定する。α-MSH誘導性の、またはNDP-α-MSH誘導性のcAMPレベルの阻害を測定し、その後、以前の記載にあるようにペプチドに曝すことにより、拮抗作用を決定する。
【0118】
作用薬に対するアッセイ
処理後のcAMPの細胞内の蓄積を測定することにより、hMC4-Rを発現するHEK-293細胞における、アゴニスト活性に対する機能的な反応を誘発する分子の評価を行う。MC4-Rを過剰発現するコンフルエントのHEK-293細胞を、酵素を含まない細胞懸濁バッファーで剥離する。細胞を、10mM HEPES(pH7.5)、1mM MgCl2、1mMグルタミン、0.5%アルブミン、およびホスホジエステラーゼ阻害物質である3-イソブチル-1-メチルキサンチンを0.3mM含むEarle's Balanced Salt Solutionに懸濁する。細胞を、1ウェルあたり0.5×105細胞の密度で、96ウェルプレートに接種し、30分間プレインキュベートする。次いで、細胞を、全アッセイ容積200μLのジメチルスルホキシド(DMSO)に0.05〜5000nMの濃度範囲で溶解した試験ペプチドで、37℃で1時間誘発する。DMSOの濃度は、常に、アッセイ混合物の1%に保持する。NDP-α-MSHは、基準の作用薬として用いる。インキュベーション時間の終わりに、cAMP EIAキット(Amersham)からの溶解バッファー50μLを加えて、細胞を破壊する。細胞をピペットで複数回吸い上げ吐き出すことにより、細胞の完全な破壊を確実にする。細胞溶解物におけるcAMPレベルを、EIAキット(Amersham)法を用いて好適に希釈した後測定する。Prism Graph-Padソフトウェアで非線形回帰分析を用いて、データを分析し、EC50値を決定する。NDP-α-MSHと比べた反応比が0.7の5000nMの濃度のペプチドおよびそれより上を、完全作用薬と分類する。比が0.1から0.7までのペプチドを、部分作用薬と分類する。反応比が0.1未満のペプチドは、拮抗的作用と評価する。
【0119】
中性拮抗薬に関するアッセイ
MC4-R膜への結合親和性は高いが、効率が劣り(EC60>1000nM)、反応比の低い(<0.1)ペプチドを、作用薬NDP-α-MSHの刺激作用に拮抗するその能力について分析する。これらの試験は、hMC4-Rを発現するHEK-293細胞で行う。細胞を、作用薬NDP-α-MSHの存在下でペプチドとインキュベートし、拮抗作用の程度を、細胞内cAMP濃度の減少により測定する。拮抗薬に対するペプチドのスクリーニングは、0.5〜5000nMのペプチドの濃度範囲にわたり、NDP-α-MSH(1.0nM)の単一の濃度で行う。試験は、Schildの分析からのpA2値を引き出す強力な拮抗作用を表すペプチドの場合までさらに拡張する。
【0120】
実験の詳細は、アゴニスト活性についての分析と同様であり、上記に記載してある。手短に述べると、0.5nMと5000nM間の濃度の試験ペプチドと細胞を30分間プレインキュベートする。次いで、細胞を1nMの濃度のNDP-α-MSHで1時間刺激する。Schildの分析では、少なくとも3濃度のペプチドを用いて、対数の単位により分けて、全範囲にわたる(0.005〜5000nM)作用薬で、相互作用を試験する。cAMPレベルは、適切に希釈した後、細胞溶解物で測定する。Schildの分析に、またEC50値を得るために、Prism Graph-Padソフトウェアと非線形回帰分析を用いる。pA2値は、Schildのプロットに由来する。
【0121】
逆作用薬に対するアッセイ
EC50値が弱く(EC50>1000nM)、または反応比が低い(<0.1)ペプチドは、逆作用薬として働くその能力、すなわち、hMC4-R受容体を発現するHEK-293細胞におけるcAMPのベースレベルまたは恒常的なレベルを低減させるその能力についても調査する。実験のプロトコールは、上記に記載したものと実質的に同じである。細胞を、0.05nMから5000nMの濃度範囲にわたる試験ペプチドに、37℃で1時間曝す。アグーチ関連タンパク質(AgRP)、またはアグーチタンパク質の生物学的に活性なフラグメント、例えばAgRP(83〜132)(Ser-Ser-Arg-Arg-Cys-Val-Arg-Leu-His-Glu-Ser-Cys-Leu-Gly-Gln-Val-Pro-Cys-Cys-Asp-Pro-Cys-Ala-Thr-Cys-Tyr-Cys-Arg-Phe-Phe-Asn-Ala-Phe-Cys-Tyr-Cys-Arg-Lys-Leu-Gly-Thr-Ala-Met-Asn-Pro-Cys-Ser-Arg-Thr)(配列番号2)を、基準の逆作用薬として用いる。Prism Graph-Padソフトウェアと非線形回帰分析を用いて、データを分析し、EC50値を決定する。
【0122】
(実施例4)
ICV食餌摂取および体重の変化
選択したペプチドについて、食餌摂取および体重の変化を評価した。脳室内留置のカニューレを有するラット(ICVラット)を、Hilltop Lab Animals社(ペンシルバニア州、Scottdale)から得る。動物は、従来のプレキシグラス製吊りケージに個別に収容し、12時間オン/オフの電灯サイクルの制御を維持する。水、および粉末食(LabDiet、5P00 Prolab RMH 3000)またはペレット食(Harlan Taklad 2018 18% Protein Rodent Diet)を任意に供給する。処置前の1週間に、24時間の食餌摂取および体重の変化を記録して、ビヒクル処置の間のグループについてベースラインを評価する。ラットは、ビヒクルまたは選択したペプチド(0.3〜3nmol)を投与したICVである。投与後24時間の体重および食餌摂取の変化を判定する。投与後48時間および72時間の体重および食餌摂取の変化も測定して、体重および食餌摂取の効果におけるベースラインレベルへの変化の逆転を判定する。
【0123】
(実施例5)
IVおよびIP食餌摂取および体重の変化
選択したペプチドについて、食餌摂取および体重の変化を評価する。Sprague-Dawleyオスラットを、Taconic(ニューヨーク州、Germantown)から得る。動物は、従来のプレキシグラス製吊りケージに個別に収容し、12時間オン/オフの電灯サイクルの制御を維持する。水、および粉末食(LabDiet、5P00 Prolab RMH 3000)またはペレット食(Harlan Taklad 2018 18% Protein Rodent Diet)を任意に供給する。治療前の1週間に、24時間の食餌摂取および体重の変化を記録して、ビヒクル治療の間のグループについてベースラインを評価する。ラットに、ビヒクルまたは選択したペプチド(0.5〜3mg/kg)をIVまたはIP投与する。投与後24時間の体重および食餌摂取の変化を判定する。投与後48時間および72時間の体重および食餌摂取の変化も測定して、体重および食餌摂取のベースラインレベルへの変化の逆転を判定する。
【0124】
(実施例6)
満腹行動連鎖
Sprague-Dawleyオスラットを、1日あたり20gの粉末食の制限された食餌で維持する。食餌は、電灯のオンの時間の間に同時に与え、食餌を与え観察を開始する2時間前に食塩水または試験ペプチドのいずれかを投与する。食餌20gを含む、予め重量を測定したボールを与え、ラットの行動を1時間観察する。行動の観察は、3つのカテゴリーに分ける:摂食、行動(グルーミング、飲水、および臭い嗅ぎ/探索を含む)、ならびに休息(活動性の低下および睡眠)。各行動に費やされた時間の量を記録する。観察期間の後、食餌摂取の量を決定する。
【0125】
(実施例7)
味覚条件回避
Sprague-Dawleyオスラットに、電灯のオンの間に1日あたり30分の制限された飲水時間に適応させ、ペレット食を任意に供給する。実験室動物には、LiClを投与すると、サッカリンの新規で好ましい味に対する嫌悪を条件付ける(Seeley R.J.、Blake K.、Rushing P.A., Benoit S., Eng J., Wood S.C., 及びD’Alessio D.::「The role of CNS glucagons-like peptide-1(7-36) amide receptors in mediating the visceral illness effects of lithium chloride.」、J.Neurosci.、20巻、1616〜1621頁(2000年))。動物に条件付けるために、サッカリンの0.1%溶液を最初に与えた直後に、LiClまたは試験ペプチドの注射を投与する。2日後、サッカリン溶液を再び与え、液体摂取を判定する。サッカリン溶液の飲用が減少したら、条件付けられた味覚の嫌悪が発生したことを示唆している。
【0126】
(実施例8)
リポ多糖誘導性の悪液質モデル
留置の脳室内カニューレを有するラット(ICVラット)を、Hilltop Lab Animals社(ペンシルバニア州、Scottdale)から得る。動物は、従来のプレキシグラス性吊りケージに個別に収容し、12時間オン/オフの電灯サイクルの制御を維持する。水、および粉末食(LabDiet、5P00 Prolab RMH 3000)またはペレット食(Harlan Teklad 2018 18% Protein Rodent Diet)を任意に供給する。リポ多糖(LPS)(E.Coli 055:B5、Sigma Chemical社)を、通常の食塩水に溶解し、腹腔内投与する。最初のLPS注射には、6〜7週齢のオス動物を用いる。別の繰り返し実験では、5週齢のメス動物を用いる。動物は、2日間基本摂食を与えてモニターし、次いで、各12時間の期間の間、Lp.食塩水を注射し、その後LPS100μg/kgを注射する。本発明のある種のペプチドを投与し、3時間後に50μg/kgのLPSを投与する。第2の実験では、第2の投与量のLPS 100μg/kgを、第1の投与量の60時間後に与える。ペプチド投与とLPS投与との間に、食餌は与えない。LPS投与後に開始し、摂食を6時間ごとに24時間、次いで12時間ごとにさらなる48時間測定する。
【0127】
偽グループでは、シミュレートしたICV注射および腹腔内食塩水注射の後、年齢および性別をマッチさせた2グループで、基本摂食を6時間ごとに測定する。24時間後、選択したペプチドを投与し、3時間後にLPSを腹腔内投与する。摂食を、6時間ごとに24時間、次いで12時間ごとにさらなる48時間測定する。2グループ間における摂食曲線の差を、体重で標準化した摂取量、ならびに、基本摂食対食塩水後および偽ICV注射のパーセントで表す。
【0128】
(実施例9)
腫瘍が誘発する悪液質モデル
供給元の推奨どおりに、Lewis肺癌腫(LLC)細胞、およびEnglebreth-Holm-Swam Sarcoma(EHS)腫瘍を、それぞれ、10%ウシ胎児血清とともに、またはin vivoでDMEMにおける1次培養物として保つ。LLC腫瘍細胞を、培養物の指数増殖の間に回収し、Hanksの平衡塩類溶液で洗浄し、細胞を動物の上部側腹部中に皮下注射する。EHS肉腫組織をドナー動物から切開し、約3mmの立方体の組織を後部側腹部の上の皮下に埋め込む。偽手術した動物には、同様の量のドナーの筋肉組織を与える。どの場合でも、腫瘍塊の出現した時間を記録し、実験開始4日(LLC)または8日(EHS)以内に触知できる腫瘍を、全ての動物が有することが見出されている。屠殺時に、腫瘍を周囲の組織から切開して取り出し、重量を測定する。全器官を肉眼で観察しても、いかなる観察できる転移の存在は現れない。ラットレプチンラジオイムノアッセイキットで血清レプチンを測定するために、屠殺時に体幹の血液を回収する。
【0129】
動物は、従来のプレキシグラス製吊りケージに個別に収容し、12時間オン/オフの電灯サイクルの制御を維持する。増殖する肉腫の存在による食欲減退および体重減少のある動物における本発明のある種のペプチドの投与の効果を試験する。最初の実験では、担癌動物の食餌摂取が連続した3日間基本摂食の75〜80%になるまで、毎日の食餌摂取および体重を追跡する。平均して、これは埋め込み後12日目、または触知できる腫瘍が存在した4日後に生じる。選択したペプチドのICV注射を行い、動物をモニターして食餌摂取の変化を評価する。
【0130】
2番目の実験では、選択したペプチドが悪液質の発症を防ぎ、通常の摂食および成長を維持する能力を試験する。動物は毎日、触知できる腫瘍の存在を試験し、全動物とも埋込み後14日までに腫瘍を有し、12日より前のものはなかった。次いで、動物を屠殺するまで、48時間ごとに選択したペプチドまたは偽を注射する。偽腫瘍埋込みグループも、比較のために含み、ペプチドも投与する。
【0131】
全実験における摂食、行動、および水分摂取の曲線間における差を、時間および治療を測定した変数として、二元配置の反復測定ANOVAにより分析する。最終の腫瘍および体重を、2グループが含まれる場合にはStudentのt検定により、3グループが含まれる場合には事後分析を伴う一元配置ANOVAにより分析する。反復測定のANOVAに対してはPRISMソフトウェアパッケージ(GraphPad)を、またはStudentのt検定を用いてEXCEL(Microsoft)のいずれかを用いて、統計学的有意性について、データのセットを分析する。
【0132】
(実施例10)
質量の決定および核磁気共鳴分析
本発明のペプチドの質量値を、Waters MicroMass ZQ装置を用いて、ポジティブモードを利用して決定する。質量の測定を、計算値と比べ、質量プラス1(M+1またはM+H)の形態で表す。
【0133】
プロトンNMRデータを、Bruker 300MHzスペクトロメーターを用いて得る。適宜クロロホルム、DMSO、またはメタノールなどの重水素化した溶媒にペプチドを溶解した後、スペクトルを得る。
【0134】
(実施例11)
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2
ヘキサペプチドであるAc-Nle-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2を従来のペプチド合成方法により合成した。式量は1135であることが決定した。競合的阻害試験、およびペプチドのKi(nM)を、実施例1の方法にしたがって測定した。ペプチドの機能上の状態を、実施例2および3の方法にしたがって決定した。
Ki(nM)
MC1-R MC3-R MC4-R MC5-R
5680 2 0.03 3
【0135】
作用薬/拮抗薬の状態を決定するためのcAMPアッセイでは、ペプチドはMC1-Rに関して>1000というEC50(nm)で部分的作用薬であり、MC3-Rに関しては不活性であり、およびMC4-Rに関しては拮抗薬であることが決定した。実施例3における機能的拮抗のための試験では、MC4-Rに関して80852というpA2(M)値が測定された。
【0136】
(実施例12-13)
さらなるペプチド
以下のヘキサペプチドを、従来のペプチド合成方法により合成した:
12. H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2
13. H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2
【0137】
実施例1の方法にしたがって、実施例12及び13のペプチドの競合的阻害およびKi(nM)を測定した。実施例12及び13のペプチドの機能的状態を、実施例2および3の方法にしたがって決定した。
【0138】
(実施例14)
さらなるペプチド
ヘキサペプチドであるAc-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2を、従来のペプチド合成方法により合成した。実施例1の方法にしたがって、実施例14のペプチドの競合的阻害およびKi(nM)を測定した。実施例14のペプチドの機能的状態を、実施例2および3の方法にしたがって決定した。
【0139】
(実施例15)
ICV摂食試験
実施例4の一般的方法に引き続きICV摂食試験を、実施例11のヘキサペプチドを使用してラットで行った。動物は全て、1日目に食塩水ICV投与し、予め食餌重量を測定した食餌ボールを与え、ICV注射2および21時間後に食餌重量を記録した。2日目に、21時間の食餌摂取に基づいて動物を無作為化し、食餌摂取が少ない、または食餌をこぼしたことにより動物を除外した。動物には、ビヒクル(食塩水)、陽性コントロール(1nmolのSHU91 19)または実施例11のヘキサペプチド(0.1、0.3及び1.0nmol)を投与した。食餌重量を、icv注射2、4、21、および24時間後に再び記録した。ある場合で、各グループが8と12の間のメンバーを含む複数の異なる試験を行ったが、平均値は以下に示してある。21時間では、実施例11のヘキサペプチドを投与した動物についての摂食の平均的な増加は、0.1nmolの投与量レベルで4%、0.3nmolの投与量レベルで18%、1.0nmolの投与量レベルで20%であった。
【0140】
(実施例16)
IV摂食試験
実施例5に記載のように実施例11のペプチド1mg/kgをラットに投与し、24時間の期間の選択時間で摂食を測定した。略記すると、オスのSprague-Dawleyラット(300-350g)を、12時間の明期/暗期で靴箱ケージで個別に飼育した。摂食と体重を実験開始前の24時間からモニターした。ラットを体重によりランダム化し、次いで実施例11の化合物または同じ容量のビヒクルで消灯直前に投与した。事前に計量した量の食餌を与え、摂食を2、4、20、及び24時間で測定した。実施例11のヘキサペプチドは、24時間の期間で8%の摂食の増大を引き起こした。
【0141】
先の実施例を、一般的に、または具体的に記載した反応物を置き換えることにより、かつ/または、先の実施例で用いたものに対して本発明の条件を操作することにより、繰り返すことができ、同様に成功を収めている。
【0142】
本発明を、これらの好ましい実施形態に特に関して詳しく記載したが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変形形態および修正形態は、当業者であれば明らかであり、このような修正形態および同等物を包含することが意図される。上記に引用した、全ての参考文献、出願、特許、および出版物全体は、参照として本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】

を特徴とする環状ヘキサペプチド
[式中、
R1は、H、NH2
【化2】

であり、
R2は、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、または-S-であり、
R3aおよびR3bは、各々、任意選択の環置換基であり、1つまたは両方が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、
R4は、-NH2、または-NH(C=NH)NH2であり、
R5は、任意選択で1つまたは2つの環置換基を有する1-もしくは2-ナフチル、または3-インドリルであり、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、
R6は、H、NH2、C1からC4の低級脂肪族の直鎖もしくは分枝のアルキル鎖、C1からC4のアラルキル、またはC1からC4のωアミノ誘導体であり、
x+yが2から7であるという前提で、xは1から4であり、yは1から5であり、
zは2から5である]。
【請求項2】
構造式:
【化3】

であることを特徴とする、請求項1に記載の環状ヘキサペプチド
[式中、R4、R5、およびzは請求項1で定義したとおりである]。
【請求項3】
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、または
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2
であることを特徴とする、請求項2に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項4】
構造式:
【化4】

であることを特徴とする、請求項1に記載の環状ヘキサペプチド
[式中、R4、R5、およびzは請求項1で定義したとおりである]。
【請求項5】
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2、または
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2
であることを特徴とする、請求項4に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の環状ヘキサペプチドまたは薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体を含むことを特徴とする、製薬調製物。
【請求項7】
請求項6に記載の製薬調製物の医薬として十分な量を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、悪液質を治療する方法。
【請求項8】
請求項6に記載の製薬調製物の医薬として十分な量を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、炎症、および免疫が媒介する障害を治療する方法。
【請求項9】
ヘキサペプチドが2位から5位においてコア配列Trp-D-Nal 2-X-Yを含み、Xは、Arg、Lys、Orn、Harg、およびHlysからなる群から選択されるL-アミノ酸残基であり、Yは、Nal 1、Nal 2、およびTrpからなる群から選択されるL-またはD-アミノ酸残基であり、コア配列におけるあらゆる芳香環は任意選択で1つまたは2つの環置換基を含むことができ、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、1位におけるアミノ酸残基と6位におけるアミノ酸残基とを通じて環化されていることを特徴とする、N末端Ac基を有する、またはN末端NH2基とC末端NH2基とを有する環状ヘキサペプチド。
【請求項10】
ヘキサペプチドが、1位におけるアミノ酸残基の側鎖のアミノ基または1位におけるアミノ酸残基のN末端基のアミノ基と、6位におけるアミノ酸残基の側鎖カルボキシル基との間のアミド結合の形成により環化されていることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項11】
ヘキサペプチドが、1位におけるアミノ酸残基の側鎖カルボキシル基と、6位におけるアミノ酸の側鎖のアミノ基との間のアミド結合の形成により環化されていることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項12】
ヘキサペプチドが、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元されたシッフ塩基、イミド、2級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン、またはオキシム結合を含む共有結合の形成により環化されていることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項13】
コア配列が、Trp-D-Nal 2-X-Nal 2であることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項14】
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2であることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項15】
Ac-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2であることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項16】
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Arg-Nal 2-Lys)-NH2であることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項17】
H-シクロ(-Asp-Trp-D-Nal 2-Lys-Nal 2-Lys)-NH2であることを特徴とする、請求項9に記載の環状ヘキサペプチド。
【請求項18】
ヘキサペプチドが2位から5位においてコア配列Trp-D-Nal 2-X-Yを含み、Xは、Arg、Lys、Orn、Harg、およびHlysからなる群から選択されるL-アミノ酸残基であり、Yは、Nal 1、Nal 2、およびTrpからなる群から選択されるL-またはD-アミノ酸残基であり、コア配列におけるあらゆる芳香環は任意選択で1つまたは2つの環置換基を含むことができ、1つまたは両方の環置換基が存在する場合、同一または異なり、独立に、直接またはエーテル結合により結合しているヒドロキシル、ハロゲン、アルキル、またはアリール基であり、1位におけるアミノ酸残基と6位におけるアミノ酸残基とを通じて環化されている、N末端Ac基を有する、またはN末端NH2基とC末端NH2基とを有する環状ヘキサペプチドの医薬として十分な量を投与する工程を含むことを特徴とする、悪液質、筋肉減少症、および消耗症候群または消耗疾患を含む体重障害をの治療する方法。

【公表番号】特表2008−505917(P2008−505917A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520505(P2007−520505)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/024138
【国際公開番号】WO2006/014559
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(506392850)パラティン・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】