説明

悪臭吸収性ポリマーおよび繊維

熱可塑性ポリオレフィンポリマー組成物、ポリマーチップ、繊維、織布または不織布、フィルム、蓋、ラミネートには、ポリマー、ポリマーおよび非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を含むことができる。熱可塑性ポリオレフィンポリマー組成物にはさらに、ポリマー、シクロデキストリン改質ポリマー、および非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を含むことができる。そのポリマー組成物のカルボン酸残基が、そのポリマー環境の中にある塩基性物質と反応して、その塩基性物質の放出を抑制することができる。シクロデキストリンは、環境の中のその他の汚染物または臭気を吸収するかまたは捕捉するように作用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として2010年3月30日に、米国以外のすべての国の場合の指定出願人としては、米国企業のCellresin Technologies,LLCの名前で、そして、米国の場合のみの指定出願人としては、発明者のWillard F.Wood(米国市民)およびNeil J.Beaverson(米国市民)の名前で出願されるものであって、本件は、米国特許出願第12/414,118号(2009年3月30日出願)に対する優先権を主張するものである(その出願の内容を、参考として引用し本明細書に組み入れるものとする)。
【0002】
本明細書の開示は、熱可塑性ポリマー組成物、典型的にはポリオレフィン組成物に関する。それらのポリオレフィン物質は、各種の用途において広い範囲の悪臭を吸収することができる。本明細書の開示はさらに、ポリマー物質、繊維、織布および不織布、フィルム、各種の厚みのポリマーウェブ、硬質または半硬質のシート、チップ、バリヤーコーティング、およびその他の有用なポリマーの形態にも関する。
【背景技術】
【0003】
合成繊維は、各種の用途において幅広い使用法を見出してきた。合成繊維は、各種のタイプの流体を吸収し、たとえば尿、外傷の滲出物、血液などからの悪臭を中和させるのに使用されてきた。たとえば医療用、おむつまたは女性生理用品など、いくつかの織布および不織布用途においては、悪臭を効果的に吸収することが強く求められている。これまでは、従来からのコーティングした合成繊維では、悪臭を満足に吸収して、商品としての価値が十分にあるというレベルには達することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体を吸収すると同時に、酸性、塩基性、ならびに極性、非極性いずれものノニオン性の悪臭を含めた、典型的な悪臭物質を中和または吸収することが可能なポリマー組成物および繊維を手に入れることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その熱可塑性ポリマー組成物には、ポリオレフィン樹脂、改質ポリオレフィン樹脂、および非揮発性のポリマー相溶性カルボン酸のブレンド物が含まれる。一つの実施態様においては、その改質ポリオレフィン樹脂が、それに共有結合的に結合された、その可塑性ポリマーとは相溶性がある、シクロデキストリン(CD)残基を含む構造を有しているが、ここでそのシクロデキストリンには、包接複合体化合物は含まれていない。それらの改質ポリオレフィン樹脂は、カルボン酸化合物、ジカルボン酸、無水物化合物を含む構造を有しているか、またはその可塑性ポリマーとは相溶性があるその様な構造の電子を有していることができる。
【0006】
本発明の実施態様の組成物は、改良された悪臭中和性能を有している。思いがけないことには、ポリオレフィン、改質ポリオレフィン、および非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を有する本明細書の開示の組成物から製造された繊維およびその他の構築物は、広く各種の範囲の悪臭および浸透物を中和する、望ましい特性を有している。思いがけないことには、ポリオレフィン、改質ポリオレフィン、共有結合的に結合されたシクロデキストリン、および非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を有する本明細書の開示の組成物から製造された繊維およびその他の構築物は、広く各種の範囲の悪臭および浸透物を中和する、望ましい特性を有している。たとえば、限定を目的とするものではないが、第一の実施態様においては、非揮発性カルボン酸のカルボン酸残基は、たとえば、アンモニア、アミンなどの塩基性の悪臭成分を中和させることができる。第二の実施態様においては、ポリオレフィン、改質ポリオレフィン、共有結合的に結合されたシクロデキストリン、および非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が、塩基的に反応する悪臭およびその他の浸透物、または、それ以外では、カルボン酸残基(たとえば、芳香族化合物、アルコール、ハロゲン化物およびハロゲン化水素、カルボン酸およびそれらのエステルなど)とは反応しないか、または極めてゆっくりとしか反応しないであろう包接化合物と結合することが可能である。したがって、シクロデキストリンと非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸とを組み合わせることによって、中和特性に関して多目的である繊維、またはその他の構築物が得られる。これらの特性はすべて、ポリマー組成物の加工性(たとえば、押出加工性)に悪影響を与えることなく達成された。
【0007】
本明細書で使用するとき、「改質ポリマー(modified polymer)」という用語は、シクロデキストリンをポリマーに結合させることが可能な共有結合的に結合された結合基を有しているか、または、ポリマーに直接的に共有結合的に結合されるか、もしくは結合基を介してポリマーに共有結合的に結合されたシクロデキストリンを有しているかのいずれかである、たとえばポリオレフィンのようなポリマーを意味している。
【0008】
本明細書で使用するとき、「ポリオレフィン相溶性(polyolefin compatible)」または「ポリマー相溶性(polymer compatible)」という用語は、成分を(本明細書において使用されている用語のままの)改質ポリオレフィンまたは改質ポリマーを含む組成物に添加するかまたはそれと接触させたときに、それがその組成物から相分離することなく、そして、得られるポリオレフィンの適切な物理特性たとえば、引張強度、メルトインデックス、色、臭気またはそのポリオレフィンまたはポリマーが(そうでなければ)有していたであろうその他の物理特性に悪影響を与えることがないということを意味している。
【0009】
本明細書で使用するとき、「非揮発性(non−volatile)」という用語は、ポリオレフィンに添加された、容易には蒸発しないか、蒸発によるロスがほとんどないか、または、たとえば100〜260℃の範囲のポリマー加工温度で低い蒸気圧(たとえば、1.5mmHg未満)を有している成分を意味している。
【0010】
本明細書で使用するとき、「中和する(neutralize)」または「中和(neutralization)」という用語は、化学物質が変化を受けて、望ましくない特性(たとえば、臭気)が減少したり、あるいは無くなったりするということを意味している。その変化は、吸収、極端なpH、吸着、化学吸着、化学反応、またはそれらの組合せによって達成してもよい。
【0011】
本明細書で使用するとき、「カルボン酸」という用語には、少なくともカルボン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、および無水物が含まれる。
【0012】
「相安定な(phase stable)」という用語は、ポリオレフィンに相溶性があり、安定な混合物で留まる物質を指している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】不織布製品サンプルの、処理済みサンプルと対照サンプルの性能試験の比較を表示したグラフである。この試験には、アンモニア/尿溶液を用いて検証した、両方のサンプルをペアにした比較評価が含まれていた。
【図2】不織布製品サンプルの、処理済みサンプルと対照サンプルの性能試験の比較を表示したグラフである。この試験には、アンモニア/尿溶液を用いて検証した、両方のサンプルをペアにした比較評価が含まれていた。
【図3】誘導体化をしていないシクロデキストリン分子の寸法を示す図である。中央のポアには、親水性空間が含まれ、中央のポアまたはシクロデキストリン分子の内部容積は、浸透物またはそのような汚染物を吸収するためのサイトとして機能することができる。図3Aはα−シクロデキストリンを表し、図3Bはβ−シクロデキストリンを表し、そして図3Cはγ−シクロデキストリンを表している。そのようなシクロデキストリンは、その分子の周辺部に形成されたヒドロキシル基を有していて、それらを、官能化ポリオレフィンの上で、たとえば、無水物基もしくはエポキシド基またはそれら両方と反応させるのに利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を有する、改質ポリオレフィンおよびポリオレフィンを含む組成物から調製された組成物、繊維、およびフィルムは、思いがけないことには、塩基性成分たとえばアンモニアおよびアミン(これらに限定される訳ではない)から発生する悪臭を効果的に中和させることが見出された。これらの系においては、ポリマー相溶性カルボン酸をポリオレフィンと改質ポリオレフィンとのブレンド物の中にメルトブレンドすることが可能であり、そのポリマー相溶性カルボン酸は、そのポリオレフィンと改質ポリオレフィンとのブレンド物と相溶性がある。
【0015】
非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を有する、共有結合的に結合されたシクロデキストリンを有する改質ポリオレフィンとポリオレフィンとを含む組成物から調製された組成物、繊維、およびフィルムは、思いがけないことには、塩基性成分たとえばアンモニアおよびアミン(これらに限定される訳ではない)から発生する悪臭ならびにノニオン性の極性および非極性の悪臭を効果的に中和させることが見出された。これらの系においては、ポリマー相溶性カルボン酸をポリオレフィンと改質ポリオレフィンとのブレンド物の中にメルトブレンドすることが可能であり、そのポリマー相溶性カルボン酸は、そのポリオレフィンと改質ポリオレフィンとのブレンド物と相溶性がある。
【0016】
一つの実施態様においては、本発明の熱可塑性ポリマー組成物には、ポリオレフィン樹脂、改質ポリオレフィン樹脂、および非揮発性のポリマー相溶性カルボン酸のブレンド物が含まれる。第二の実施態様においては、その改質ポリオレフィン樹脂が、約0.1〜約10重量%または1〜9重量%のシクロデキストリンを含んでいる。その熱可塑性ポリマー組成物には、主成分のポリオレフィン樹脂と、そのポリマー組成物を基準として約1重量%〜約50重量%の間の改質ポリオレフィン樹脂とのブレンド物、ならびに、そのポリマー組成物を基準として約0.1重量%〜約15重量%、約0.1〜5重量%、0.2重量%〜約3重量%、または0.5〜1.5重量%の非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が含まれる。
【0017】
シクロデキストリン改質したポリオレフィン樹脂は、非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸と組み合わせて使用されるポリオレフィンまたはポリオレフィンブレンド物の上にシクロデキストリン残基を共有結合的にグラフトさせることによって調製することができる。そのグラフト反応は、シクロデキストリン(CD)の官能基たとえばヒドロキシル基を、ポリオレフィンまたはポリオレフィンブレンド物の上の官能基たとえば、エポキシ、酸、酸塩化物または無水物残基と反応させて、シクロデキストリンとポリオレフィンとの間に結合を形成させることにより、達成させることができる。また別の実施態様においては、官能化ポリオレフィンの無水物またはエポキシド成分を使用して、反応生成物を形成させることも可能である。たとえば、シクロデキストリンの上の一級ヒドロキシルは、実質的にすべての無水物基をハーフエステルに変換させる条件下で、無水マレイン酸残基と反応する。まったく思いがけないことには、そのような変換をさせることによって、親化合物のシクロデキストリンを使用して通常のポリオレフィンポリマーの中における有機化合物の低分子量移送(low molecular weight transport)を顕著に変化させることが可能となるということが見出された。
【0018】
本明細書の開示による実施態様には、慣用されるコンパウンディング装置の中で、官能化ポリオレフィンおよびポリオレフィンから相溶性ポリオレフィン組成物を形成させ、それを非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸成分と組み合わせるプロセスが含まれる。C〜C24酸およびポリ酸は、典型的には、改質ポリマーが存在しないと、PEまたはPPとの相溶性はない。改質オレフィンは、非揮発性カルボン酸成分を相溶化させ、そのカルボン酸成分が物品の表面に移行するのを妨げる。このことが、この適用法を、離型剤および潤滑剤として使用されている脂肪酸およびセッケンの適用法(この場合、それらが非相溶性であるために、表面へブリードする傾向がある)から差別化している。
【0019】
さらに、非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸の蒸気圧特性をメルトグラフトプロセスの温度プロファイルに合うように適合させて、加工現場における危険な揮発性成分の存在を回避または最小化させることができる。
【0020】
本明細書の開示に従った、改質ポリオレフィンおよびシクロデキストリングラフト化ポリマー組成物は、薄膜、ラミネート、半硬質フィルムおよび硬質コンテナー、さらには繊維などのような、射出成形または金型成形構造物において有用である。たとえば、それらの構造物は、フレキシブル食品包装におけるシーラント層、カートンおよびボトルのための飲料接触層、ソース、スープ、プリン、ベビーフードおよびワインのためのボトルおよびジャーのためのプラスチック製の蓋および密閉要素層、プラスチック燃料タンクにおける非接触層、ならびに使い捨てのおむつのための繊維、テクスタイル、および不織布組成物を製造するために使用されるポリマーのための機能特性を提供する。
【0021】
簡潔に述べれば、本明細書の開示には、非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸とブレンドした、CDに共有結合的に結合されたポリオレフィンが含まれる。CDは、官能化ポリオレフィンと反応することができる。ポリオレフィンは、CDを共有結合的に結合させることに使用可能な各種公知の反応性官能基を用いて、改質することができる。一つの方法は、ポリマーの上に化学的に反応性の残基を加えるために、各種の不飽和極性モノマーと共に過酸化物重合開始剤を使用して、ポリオレフィンを改質または官能化することであって、このことは、本明細書の開示においてシクロデキストリンおよびカルボン酸として表明した化合物の群と組み合わせて使用すると、重要かつ予想外の用途を有している。
【0022】
他の実施態様においては、本明細書の開示は、ポリマー、シクロデキストリン官能化ポリオレフィン、および悪臭を中和する作用をする非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸を含むポリオレフィンに関する。
【0023】
本明細書の開示はさらに、ポリオレフィンおよび無水物改質ポリオレフィン樹脂および非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸のブレンド物を含む熱可塑性プラスチックマスターバッチに関する。
【0024】
本明細書の開示に従った実施態様にはさらに、主要寸法が約10mmで、重量が約20〜50mgのチップも含むが、ここで、そのチップには、上述のような本明細書の開示の組成物を含んでいる。
【0025】
さらなる実施態様には、ポリオレフィンウェブによって囲まれた密閉容積を含むコンテナーも含まれるが、ここでそのウェブは、上述のような組成物からなっており、そのようなコンテナーは、たとえば食品の包装において有用である。さらに、本明細書に開示の組成物から調製した繊維およびフィルムもまた、本明細書の開示に従って含まれる。
【0026】
悪臭抑制のための組成物中で使用するのに有用なカルボン酸としては、非揮発性ポリマー相溶性物質が挙げられる。それらの物質は、組み合わされた組成物の中で使用され、ポリオレフィンには結合されていない。そのような物質は、高分子量のヒドロカルビル置換カルボン酸または無水物である。それらの高分子量のカルボン酸は、ポリマーおよび改質ポリマーを含む組成物とは相溶性があり、非揮発性であり、そして、悪臭を吸収、吸着または中和するための作用を有することができる。低分子量のカルボン酸たとえば、酢酸、プロピオン酸および酪酸は、本明細書において開示された高分子量のカルボン酸に比較して、有用性(すなわち、蒸気圧および臭気)に限度がある。典型的には、それら有用な高分子量のカルボン酸もしくは無水物、または誘導体は、平均して約8〜約500個の炭素原子、約8〜約200個の炭素原子、約9〜約300個の炭素原子、約10〜約50個の炭素原子、いくつかのケースでは約8〜約40個の炭素原子を含むヒドロカルビル基または置換基を有している。
【0027】
ヒドロカルビル置換基は、たとえば以下のようなポリマーの基から誘導された少なくとも一つの残基から誘導することができる:エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、および1−オクタデセン。ヒドロカルビル置換基は、たとえば、C15〜25アルファ−オレフィンからなる群より選択されるような、アルファ−オレフィンの部分から誘導することができる。有用なカルボン酸は、モノカルボン酸またはポリカルボン酸または無水物である。その酸成分は、脂肪族であっても、あるいは芳香族であってもよい。それらの成分には、極性の置換基を含むことも可能であるが、ただし、その極性の置換基がその酸の炭化水素特性を顕著に変更させるほどに十分に大きい割合で存在していてはならない。典型的な、好適な極性の置換基としては、ハロたとえばクロロおよびブロモ、オキソ、オキシ、ホルミル、スルフェニル、スルフィニル、チオ、ニトロなどが挙げられる。そのような極性の置換基を存在させるのならば、それが、これらの成分の、カルボキシル基を除いた炭化水素部分の全重量の約10重量%を超えていないのが好ましい。
【0028】
モノカルボン酸としては、脂肪酸、イソ脂肪酸すなわち、1個または複数の低級非環状ペンダントアルキル基を有する酸が挙げられる。その様な酸には、少なくとも約14個の飽和、脂肪族炭素原子を有する主鎖を含んでいることが多い。その鎖は、14〜35個の炭素原子と、少なくとも1個、通常は約4個以下のペンダント非環状アルキル基とを有していることができる。その酸の主鎖の例としては、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、およびエイコサンから誘導される基が挙げられる。ペンダント基は、低級アルキル基たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、またはその他の約7個までの炭素原子を有する基とすることができる。ペンダント基は、基1個あたりに1個以下の極性の置換基を含む、極性置換されたアルキル基、たとえばクロロメチル、ブロモブチル、メトキシエチルなどとすることもできる。そのようなイソ脂肪酸の具体例としては、以下のものが挙げられる:10−メチル−テトラデカン酸、11−メチル−ペンタデカン酸、3−エチル−ヘキサデカン酸、15−メチル−ヘプタデカン酸、16−メチル−ヘプタデカン酸、6−メチル−オクタデカン酸、8−メチル−オクタデカン酸、10−メチル−オクタデカン酸、14−メチル−オクタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、15−エチル−ヘプタデカン酸、3−クロロメチル−ノナデカン酸、7,8,9,10−テトラメチル−オクタデカン酸、および2,9,10−トリメチル−オクタデカン酸。
【0029】
イソ脂肪酸には、たとえば、約16〜約20個の炭素原子の市販の脂肪酸を異性化することによって調製される分岐鎖酸の混合物も含まれる。有用な方法としては、脂肪酸を、約250℃よりも高い温度および約200〜700psiの圧力で加熱し、粗製の異性化酸を蒸留し、そして留出物を水素化して、実質的に飽和の異性化酸を製造することが含まれる。異性化反応は、たとえばミネラルクレー、珪藻土、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、またはいくつかのその他のフリーデルクラフツ触媒のような触媒によって促進させることができる。触媒の濃度は、約0.01%の程度に低くしてもよいが、異性化混合物の約0.1%〜約3重量%の間とすることが多い。水もまた異性化を促進させるので、約0.1%〜約5重量%の少量の水を、その異性化混合物に添加するのが有利となることもある。それからイソ脂肪酸を誘導することが可能な不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、および市販の脂肪酸混合物たとえばトール油酸などが挙げられる。
【0030】
前述の特許類にも開示されているように、これらの高分子量の酸および無水物を調製するためのいくつかのプロセスが存在している。一般的には、これらのプロセスには、(1)エチレン性不飽和カルボン酸、酸ハライド、無水物またはエステル反応物質を、(2)エチレン性不飽和炭化水素または塩素化炭化水素と、約100℃〜300℃の範囲内の温度で反応させることが含まれる。それらの塩素化炭化水素またはエチレン性不飽和炭化水素反応物質には、少なくとも約10個の炭素原子を含むことができる。いくつかの実施態様においては、その塩素化炭化水素またはエチレン性不飽和炭化水素反応物質には、少なくとも約20個の炭素原子もしくはそれ以上、少なくとも約30個の炭素原子もしくはそれ以上、少なくとも約40個の炭素原子もしくはそれ以上、またはさらには少なくとも約50個の炭素原子を含むことができる。さらに、その塩素化炭化水素またはエチレン性不飽和炭化水素反応物質には、極性の置換基、油溶性とするためのペンダント基を含むことが可能であり、また本明細書で先に説明した一般的な制限範囲の中で不飽和であってもよい。
【0031】
ヒドロカルビル置換カルボン酸を調製する場合、そのカルボン酸反応物質は通常、式R−(COOH)で表されるが、ここでRは、少なくとも1個のエチレン性不飽和炭素−炭素共有結合の存在を特徴とし、nは、1〜約6の整数、好ましくは1または2である。その酸性反応物質はさらに、相当するカルボン酸のハライド、無水物、エステル、またはその他の同等のアシル化剤、およびそれらの1種以上の混合物とすることもできる。通常は、その酸性反応物質の中の炭素原子の総数が約20を超えない、好ましくはこの数が約10を超えない、そして一般的には約6を超えないことになるであろう。その酸性反応物質は、好ましくは、少なくとも1個のカルボキシル官能基に関して、アルファ位、ベータ位に少なくとも1個のエチレン性結合を有しているであろう。酸性反応物質の例としては、以下のものが挙げられる:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、クロロマレイン酸、アコニット酸、クロトン酸、メチルクロトン酸、ソルビン酸、3−ヘキセン酸、10−デセン酸など。好適な酸反応物質としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、および無水マレイン酸が挙げられる。
【0032】
これらの高分子量のカルボン酸および無水物の調製法において使用されるエチレン性不飽和炭化水素反応物質および塩素化炭化水素反応物質は、高分子量で、実質的に飽和の石油留分、および実質的に飽和のオレフィンポリマー、ならびにそれらに相当する塩素化反応生成物とすることができる。2〜約30個の炭素原子、好ましくは2〜約20個の炭素原子、より好ましくは2〜約12個の炭素原子、より好ましくは2〜約8個の炭素原子、より好ましくは2〜約6個の炭素原子を有するモノオレフィンから誘導されたポリマーおよび塩素化ポリマーが有用である。有用なポリマーは、1−モノオレフィン、たとえばエチレン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、3−シクロヘキシル−1−ブテン、および2−メチル−5−プロピル−1−ヘキセンのポリマーである。メジアル(medial)オレフィン、すなわちオレフィン結合が末端位には存在していないオレフィンのポリマーも同様に有用である。それらの例としては、2−ブテン、3−ペンテン、4−オクテン、2−ドデセンなどが挙げられる。
【0033】
上に列記したような1−モノオレフィン相互の間の共重合体、ならびに他の共重合可能なオレフィン系化合物たとえば、芳香族オレフィン、環状オレフィン、およびポリオレフィンとの共重合体もまた、エチレン性不飽和反応物質の有用な出発源である。そのような共重合体としては、たとえば、以下のものを重合させて調製したものが挙げられる:イソブテンとスチレン、イソブテンとブタジエン、プロペンとイソプレン、プロペンとイソブテン、エチレンとピペリレン、イソブテンとクロロプレン、イソブテンとp−メチル−スチレン、1−ヘキセンと1,3−ヘキサジエン、1−オクテンと1−ヘキセン、1−ヘプテンと1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンと1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ペンテンと1−ヘキセン、イソブテンとスチレンおよびピペリレンなど。
【0034】
炭化水素/ポリオレフィンの相溶性の面から、本明細書の開示において有用な高分子量のカルボン酸および無水物を調製するのに使用しようとする共重合体は、実質的に脂肪族で、実質的に飽和とすることができる。すなわち、それらは、重量基準で少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約95%の、脂肪族モノオレフィンから誘導される単位を含んでいるべきである。それらが、存在している炭素−炭素共有結合の総数を基準にして、約5%以下のオレフィン結合しか含んでいないのが好ましい。
【0035】
本明細書の開示の一つの実施態様においては、約35%〜約75重量%のブテン含量と約30%〜約60重量%のイソブテン含量とを有する、石油精製C留分を、塩化アルミニウム、塩素化アルミナまたは三フッ化ホウ素のようなルイス酸触媒の存在下に重合させることによって、それらのポリマーおよび塩素化ポリマーを得ている。これらのポリイソブテンには、大部分がイソブテン繰り返し単位の構成で含むことができる。
【0036】
高分子量のカルボン酸および無水物の調製法において使用される塩素化炭化水素およびエチレン性不飽和炭化水素には、1分子あたり約500個までの炭素原子を有することができる。好適な高分子量のカルボン酸および無水物は、約8〜500個の炭素原子、約9〜300個の炭素原子、さらに他の実施態様では約10〜約50個の炭素原子のヒドロカルビル基を含むものである。それらの高分子量のカルボン酸および無水物はまた、上述のオレフィンポリマーのような高分子量の炭化水素をハロゲン化してポリハロゲン化反応生成物を製造し、そのポリハロゲン化反応生成物をポリニトリルに変換させ、次いでそのポリニトリルを加水分解することによって調製してもよい。それらは、過マンガン酸カリウム、硝酸、または類似の酸化剤を用いて高分子量の多価アルコールを酸化させることによって調製してもよい。また別な方法としては、オレフィンまたは極性置換炭化水素たとえばクロロポリイソブテンを、不飽和ポリカルボン酸たとえばクエン酸の脱水反応により調製した2−ペンテン−1,3,5−トリカルボン酸と反応させることも含まれる。
【0037】
高分子量のカルボン酸および無水物はさらに、塩素化カルボン酸、無水物、アシルハロゲン化物などを、エチレン性不飽和炭化水素またはエチレン性不飽和置換炭化水素たとえば、本明細書において先に述べたポリオレフィンおよび置換されたポリオレフィンと、米国特許第3,340,281号に記載の方法に従って反応させることによっても得ることが可能である(この特許を、参考として引用し本明細書に組み入れる)。
【0038】
低分子量および高分子量のカルボン酸無水物は、それに相当する二酸を脱水させることによって得ることができる。脱水は、好ましくは脱水剤たとえば、無水酢酸の存在下に、約70℃を超える温度に酸を加熱することによって容易に実施される。環状無水物は通常、3個以下の炭素原子によって分離された複数の酸基を有するポリカルボン酸たとえば置換されたコハク酸またはグルタル酸から得られるが、それに対して直鎖状の無水物は通常、4個以上の炭素原子によって分離された複数の酸基を有するポリカルボン酸から得られる。
【0039】
本明細書において使用される低分子量および高分子量のカルボン酸には、それの(無水物に加えて)酸形成性誘導体たとえば、アシルハロゲン化物などが含まれる。したがって、本明細書の特許請求項において使用する場合、「カルボン酸」という用語は、そのような酸のアシルハロゲン化物もまた指している。それらのアシルハロゲン化物は、カルボン酸またはそれらの無水物を、ハロゲン化剤たとえば、三臭化リン、五塩化リンまたは塩化チオニルと、公知の方法を使用して反応させることによって調製することができる。
【0040】
無水マレイン酸を直鎖のアルファオレフィンに付加させると、アルケニル無水コハク酸が生成する。その「エン(ene)」反応は、間接的な置換付加である。それには、アリル性水素を有するオレフィン(エン)を、エノフィルたとえば、無水マレイン酸と反応することが含まれる。その反応の結果として、二つの不飽和炭素の間に新しい結合が形成され、アリル性水素が環状の遷移状態を介して無水マレイン酸へと移行する。その反応は、1−ブテンからC30+直鎖アルファオレフィンワックスまでの範囲の直鎖アルファオレフィンを使用して実施することができる。無水マレイン酸分子が、アルケニル無水コハク酸に反応性の無水物官能性を与え、その一方で、長鎖アルキル部分が、疎水性を与える。
【化1】

【0041】
アルケニル無水コハク酸物質は、たとえば無水マレイン酸誘導体として市販されているが、それには、Cから始まってC18にまで至るアルケニル主鎖を有する反応生成物が含まれる。出発アルケンの性質(すなわち、直鎖か、異性化された形態か)を変化させることによって、得られるアルケニル無水コハク酸の物理化学的性質(たとえば、室温で液状化か固体状か)を変性させることができる。市販されている有用な物質としては以下のものが挙げられる:ドデセニル無水コハク酸、n−テトラデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、i−ヘキサデセニル無水コハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、およびテトラプロペニル無水コハク酸。便宜上、ポリメチレン鎖は、特定の形状で示しているが、本発明の組成物においては、これらの形態に合致している訳ではない。ヒドロカルビル置換コハク酸および無水物は、好ましい高分子量のカルボン酸および無水物である。これらの酸および無水物は、無水マレイン酸を、オレフィンまたは塩素化炭化水素たとえば塩素化ポリオレフィンと反応させることによって、調製することができる。その反応に含まれるのは、それら二つの反応物質を、約100℃〜約300℃、好ましくは約100〜200℃の温度に加熱するだけのことである。
【0042】
この反応の生成物は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸であるが、ここでその置換基は、それらのオレフィンまたは塩素化炭化水素から誘導されたものである。所望により、その反応生成物を、標準的な水素化処理によって水素化して、エチレン性不飽和共有結合の全部または一部を除去してもよい。そのヒドロカルビル置換無水コハク酸を、水またはスチームを用いた処理により加水分解して、対応する酸としてもよい。高分子量のヒドロカルビル置換コハク酸および無水物は、次式で表すことができる:
【化2】


式中、Rはヒドロカルビル置換基である。Rが、約10〜約500個の炭素原子、より好ましくは約15〜約500個の炭素原子、または約18〜約500個の炭素原子を含んでいるのが好ましい。
【0043】
シクロデキストリン(CD)は、ある種の酵素たとえばシクロデキストリングリコトランスフェラーゼ(CGTase)の作用によって形成される、α−D−グルコピラノシドの環状オリゴマーである。それぞれ、6個、7個および8個のα−1,4−結合グルコースモノマーからなる、3種のシクロデキストリン(アルファ、ベータ、およびガンマ)が市販されている(図1A、1Bおよび1C参照)。これらのオリゴサッカライドの最も安定な三次元分子配置は、円環体状物(toroid)の形状であって、その円環体状物の小さい開口部と大きい開口部には、一級および二級のヒドロキシル基が存在している。グルコースモノマーを特定して組み合わせることによって、CDに、特定の容積を有する中空の内部空間を有する、硬質で、円錐を切断した分子構造が与えられる。この内部キャビティは親油性であり(すなわち、外側に比較して、炭化水素物質を引き寄せやすい)、それがシクロデキストリンの重要な構造的特徴であって、分子(たとえば、芳香族化合物、アルコール、ハロゲン化物、およびハロゲン化水素、カルボン酸およびそれらのエステルなど)を錯体化させる性能を与えている。その錯体化される分子は、シクロデキストリンの内部キャビティの中に少なくとも部分的に嵌って、その結果として包接複合体を生ずるようなサイズ基準を満たしていなければならない。
【0044】
【表1】

【0045】
オリゴサッカライド環が、切断した円錐のような円環体(torus)を形成していて、グルコース残渣それぞれの一級ヒドロキシル基が、その円環体の狭い方の末端に並んでいる。二級のグルコピラノースのヒドロキシル基は、広い方の末端に位置している。親化合物のシクロデキストリン分子および有用な誘導体は、次式(環の炭素には、慣用される番号をつけた)で表すことができるが、ここで空となっている結合(vacant bond)の先は、環状分子である。
【化3】

【0046】
CDの内部キャビティサイズ(すなわち、α、β、γ)を配慮することが可能であり、目標とする揮発分または不純物との包接複合体を形成させることに加えて、所望するバルクポリマーおよび表面ポリマー特性を変化させるには、官能基を変性することが適切となりうる。特定の結果を達成するためには、二つ以上のキャビティサイズと官能基が必要となることもあり得る。
【0047】
本明細書の開示においては、そのシクロデキストリン(CD)は、包接複合体を実質的に含まない化合物である。本明細書の開示において適用したように、「包接複合体を実質的に含まない」という用語は、バルクポリマー中のCDの量の大部分が、シクロデキストリン環(図1A、1B、および1C参照)の中央のポアの中にポリマー汚染物を含まないCDであるということを意味している。中央のポアは、浸透物のための結合場所として使用される。使用する際には、中央のポアが、浸透物またはその他の包接化合物を捕捉することができる。しかしながら、使用前たとえば、製造時にいくぶんかの錯体形成が起こりうる。この錯体形成は、残存ポリマー不純物として起こりうるのであって、分解物質が、CDキャビティの中で錯体化のための包接に使用されるようになる。
【0048】
CD分子は、官能化ポリオレフィンとの反応では、グルコース残基の6位の一級ヒドロキシル、および2位および3位の二級ヒドロキシルを利用する。CD分子の幾何学的構造および環の置換基の化学的性質のために、ヒドロキシル基のすべてが同じ反応性を有している訳ではない。しかしながら、細心の注意を払い、効果的な反応条件を用いれば、乾燥させた(dry)CD分子を反応させて、グラフトされたCDを得ることは可能である。所望により、選択された置換基を有する(すなわち、一級ヒドロキシルのみが置換されていたり、二級ヒドロキシル基の一方または両方のみが置換されていたりする)CDもまた、グラフト化させることが可能である。2個の異なった置換基、または3個の異なった置換基を有する、誘導された分子を直接合成することもまた可能である。それらの置換基は、ランダムに配置することも、あるいは特定のヒドロキシルに向かわせることも可能である。さらに、CDのアルコール誘導体(たとえば、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピル)およびアミノ誘導体を反応させて、グラフト化CDを作ることもできる。
【0049】
ポリオレフィン樹脂との相溶性を有するグラフト化CDポリオレフィン物質を製造するために好ましい準備スキームには、CD分子の一級または二級ヒドロキシルでの反応が含まれる。このことは、CDのヒドロキシル官能基が、官能化ポリオレフィンの無水物またはエポキシド成分と反応して、反応生成物を形成するということを意味している。CD分子の一級または二級いずれかの環ヒドロキシルの上にエステルまたはエーテル結合を形成させることには、周知の反応が含まれる。さらに、利用可能な誘導体基を用いて置換されるヒドロキシルの全部が利用されているのではないCDは、利用可能なヒドロキシルの残りのものの一つまたは複数を用いてグラフトすることができる。シクロデキストリン分子の一級OH基は、二級の基よりも容易に反応する。しかしながら、分子は実質的にどの位置で置換することも可能で、有用な組成物を形成させることができる。おおまかに言って、本願発明者らは、広く各種のペンダント置換残基を分子の上で使用できることを見出した。それらの誘導体化したシクロデキストリン分子としては、アルキル化シクロデキストリン、ヒドロカルビル−アミノシクロデキストリンなどを挙げることができる。その置換残基は、その誘導体化した物質に相溶性を与える領域を備えていなければならない。
【0050】
残基を含むペンダント熱可塑性ポリマーを有する、シクロデキストリンのアミノおよびアジド誘導体は、本発明のシート、フィルム、またはコンテナーにおいて使用することができる。スルホニル誘導体化シクロデキストリン分子は、アジド(N−1)イオンによるスルホネート基の求核的置換を介して、スルホニル基置換されたシクロデキストリン分子からアミノ誘導体を形成させるのに使用することができる。次いで還元によって、そのアジド誘導体を置換されたアミノ化合物に転換させる。そのような誘導体は、対称的置換アミン基(シクロデキストリン分子の上に対称的に配された2個以上のアミノまたはアジド基を有するそれらの誘導体)の中、または対称的に置換されたアミンまたはアジド誘導体化シクロデキストリン分子として製造することができる。窒素含有基が生成するのは求核的置換反応であるために、6位の炭素原子にある一級ヒドロキシル基が、窒素含有基がもっとも導入されやすいサイトである。本発明において有用となりうる窒素含有基の例としては、以下のものが挙げられる:アセチルアミノ基(−NHAc)、アルキルアミノたとえばメチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、イソプロピルアミノ、ヘキシルアミノ、およびその他のアルキルアミノ置換基。それらのアミノまたはアルキルアミノ置換基は、窒素原子と反応してそのアミン基をさらに誘導体化する他の化合物との反応性をさらに有していてもよい。その他の可能性のある窒素含有置換基としては、ジアルキルアミノたとえばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピペリジノ(piperidino)およびピペリジノ(piperizino)が挙げられる。
【0051】
シクロデキストリン分子は、複素環式核たとえば、ペンダントイミダゾール基、ヒスチジン、イミダゾール基、ピリジノおよび置換ピリジノ基などを用いて置換することもできる。
【0052】
熱可塑性プラスチック樹脂
たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリオレフィン、さらにはエチレンとプロピレンとその他のアルファオレフィンモノマーとのコポリマーも本発明において使用することができる。
【0053】
市販されているポリオレフィンの官能化は、当業者公知の、溶液状態、溶融状態、および固体状態のルートを使用して実施される。そのプロセスでは、ビニルポリマーの上、またはオレフィンと他のモノマーたとえばビニルモノマーとのコポリマー(大部分の割合がオレフィンで構成されている)も含めて、ポリオレフィンポリマーの上にモノマーを共有結合的に結合させる。本明細書の開示に従った改質または非改質の実施態様において有用なポリオレフィンとしては、以下のものが挙げられる:ポリ(エチレン)すなわちPE、ポリ(プロピレン)すなわちPP、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)すなわちPEP、エチレン/アクリル酸メチルコポリマー、およびエチレン/アクリル酸エチルコポリマー。それらのポリオレフィンは、たとえば不飽和の無水物またはカルボン酸のような不飽和化合物を用いて機能的な改質を行うことができる。包装材グレードのビニルポリマーであれば、いかなるものも使用することができる。
【0054】
ポリオレフィンおよび官能化ポリオレフィンは、広く各種の工業的用途を有していて、たとえば以下の用途が挙げられる:食品産業用の、多層フィルムおよびボトルにおける共押出しタイ樹脂、エンジニアリングポリマーのための相溶化剤、および自動車産業のためのプラスチック燃料タンクのタイ樹脂、ケーブルのため、および屋根構造材に使用される充填材のためのハロゲン非含有ポリマーの可撓化および相溶化。官能化ポリオレフィンは、食品と接触するコンテナーにおいても用途を見出すこともできる。本明細書の開示において有用な官能化ポリオレフィンとしては、以下のものが挙げられる:マレイン化ポリエチレンおよびポリプロピレン(OREVAC(商標)およびLOTRYL(商標)(Arkema(Philedelphia,Pennsylvania)から入手可能)、PLEXAR(登録商標)樹脂(EQUISTAR(Rotterdam,The Netherland)から入手可能)、ADMER(登録商標)樹脂(三井化学(日本、東京)製)、FUSABOND(登録商標)樹脂(DuPont(Wilmington,Delaware)製)、OPTIM(商標)樹脂(MANAS(India)製)、およびEXXELOR(商標)(Exxon/Mobil(Houston,Texas)製))、官能化EP、EVA、およびEPDM(たとえば、エチレン−プロピレン−ブタジエン、またはエチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエンポリマー)、エチレン−オクテンコポリマー、エチレン−アクリル酸n−ブチル−無水マレイン酸、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸ターポリマー、ならびにエチレン−メタクリル酸グリシジルのコポリマー。エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエンコポリマーは次式で表すことができる:
【化4】

式中、xは、エチレンが約70〜90重量%となるように選択し、yは、プロピレンが約10〜30重量%となるように選択し、そしてzは、1,4−ヘキサジエンが約5重量%までとなるように選択する。空となっている結合は、同様の基、H、または末端基に結合されている。
【0055】
望ましい加工性や最終製品特性を付与するために、本発明の組成物の中で、当業者公知の他のポリオレフィンを使用することもできる。たとえば、ポリブテンを添加して、繊維の強度を上げることも可能である。可撓性を付与するために、コポリマーまたはブレンド物を製造するために添加することが可能な他のオレフィンとしては、1−ヘキセンおよび1−オクテンのようなアルファオレフィンが挙げられる。
【0056】
本明細書の開示に従う組成物は、反応押出成形法を使用して調製することができるが、この方法では、乾燥させたシクロデキストリンもしくはその誘導体(湿分0.10%未満)、官能化ポリオレフィン、および場合によっては第二のポリオレフィンを押出機の中にフィードするが、このときの温度は、シクロデキストリンが溶融ポリマーとしての官能化ポリオレフィンと反応して、シクロデキストリンが押出機の中で移行して、たとえば、シクロデキストリンをポリオレフィンに対して共有結合的に結合させているエステル基を含む反応生成物を形成するような温度とする。官能化ポリオレフィンの非官能化ポリオレフィンに対する比率を調節して、特定の用途および二次加工プロセスに適合するようにすることができる。
【0057】
本発明は、シクロデキストリンと、グラフト結合剤(すなわち、無水物、エポキシドなど)と、非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸との化学量論的反応生成物で、特にマスターバッチとして好適な改質ポリマーを得ることを目的としているが、このマスターバッチは次いで、1種または複数の非官能化熱可塑性ポリマーおよび熱可塑性エラストマーを用いて、マスターバッチ組成物1部に対して、非官能化ポリマー10〜20部の重量比で希釈することができる。別の言い方をすれば、ポリマーとマスターバッチ、または官能化ポリマーのブレンド物は、ブレンドの後では、約0.01〜10重量%のCD官能化ポリマーを含むことが可能であり、ある種の用途においては、そのポリマーが、約0.02〜8重量%の官能化物質、約0.02〜5重量%の官能化物質、または約0.02〜2重量%の官能化物質を含むことができる。CDをポリオレフィンに結合させるには、マレイン酸、フマル酸、または無水マレイン酸の官能化物質が有用である。メルトグラフト反応のための化学量論比は、グラムモル(グラム式量)を基準に計算されるが、ここで1グラムモルのCD(α、βまたはγ形)は、1グラムモルのグラフトされる無水物、グリシジル、およびカルボン酸残基と等価である。
【実施例】
【0058】
スパンボンド繊維の製造
アンモニアおよび揮発性アミン化合物の加工性および中和性を分析するために、脂肪酸および脂肪酸誘導体を用いてスパンボンドウェブを製造した。
【0059】
Nordson Fiber Systems/Hill Inc.Bicomponent Spundbond Systemを、0.35mmのダイオリフィス直径および4:1のキャピラリー比で使用した。急冷距離が41cm、紡糸距離が60cm、成形距離が75cmであった。この構成によって、2デニール繊維(18u);20g/平方メートルウェブが得られた。
【0060】
Bicomponent Spunbondラインは、異なった溶融流れを押出加工して、コアとシースとなるように構成した。実施例6の場合のみ、コアとシースの配合が異なっている。比較例C1を除くすべての配合物は、脂肪酸、ポリブテン、MA/PP、およびホモポリマーPPを含むコンセントレート(マスターバッチ)を、15部のコンセントレート対85部のPPホモポリマーの比率で添加することによって作成した。
実施例1:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP、0.75%オレイン酸。発煙性あり(some smoking)。
実施例2:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP、0.75%ステアリン酸。発煙性あり。
実施例3:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP(高MA含量)、0.75%オクタデセニル無水コハク酸。低発煙性(Low smoking)。
実施例4:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP(高MA含量)、0.75%セバシン酸。高発煙性(Heavy smoking)。
実施例5:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、0.0%MA/PP、0.75%ステアリン酸。高発煙性。
実施例6:スパンボンド繊維;93.25%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP(高MA含量)シース:0.75%オクタデセニル無水コハク酸;コア:0.75%セバシン酸。低発煙性。
実施例7:スパンボンド繊維;91.75%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP(高MA含量)、1.5%アルファCD、0.75%オクタデセニル無水コハク酸。
比較例C1:スパンボンド繊維、100%PPホモポリマー。無発煙性(No smokikng)。
比較例C2:スパンボンド繊維;88.45%PPホモポリマー、10.05%MA/PP(低MA含量)、1.5%アルファCD。
比較例C3:スパンボンド繊維、92.5%PPホモポリマー、2.1%ポリブテン、3.9%MA/PP(高MA含量)、1.5%アルファCD。
【0061】
脂肪酸をポリプロピレンの中に組み入れて、押出加工して繊維とするとき、脂肪酸の幾分かは240゜F(PPがダイから押し出されるときの溶融PPの温度)で蒸発するが、空気が排気口から引かれるにつれて空気の温度が低下すると、その脂肪酸は急速に凝縮する。
【0062】
ヘッドスペースアンモニア分析
約0.670gの繊維片を、「TEFLON(商標)」被覆セプタ(Fisher−Scientific P/N 14−965−84として入手可能)を備えた250mLのジャー(I−Chem品番121−0250、縦長で透明なWM Septa−Jar(商標)、Fisher−Scientific P/N 05−719−452)の中に入れることによって、サンプルを調製した。空の較正標準ジャーおよびサンプルシャーを38゜Fで、平衡に到達させた。脱イオン水を用いて、濃水酸化アンモニウム(ACS試薬、NHとして28.0〜30.0%、Sigma−Aldrich P/N 221228、または同等品)を(2:5)〜(1:10)に希釈することにより、約2.9〜7.6重量%の水酸化アンモニウムを作成した。ジャーのキャップを外して、ジャーの内側にアンモニアのアリコートを注入することによって、10μLのアンモニア溶液を用いてジャーにイノキュレート(inoculate)した。その溶液が不織布のサンプルに接触しないように注意し、速やかに置換し、キャップを閉じた。次いでそのジャーを38゜Fのオーブンに戻し、30分後に評価のために取り出した。すべてのサンプルで、そのイノキュレーションプロセスとタイミングを同様に実施するということが極めて重要である。アンモニア溶液の2、4、6、8、および10μLのアリコートを、空のジャーにイノキュレートして標準とした。2〜3個のジャーの群を一度にイノキュレートしてから、38゜Fのチャンバーに30分間戻した。
【0063】
ジャーのセプタムの下のジャーのヘッドスペースから、目盛り付きのガラス製のガス密シリンジ(Fisher−Scientific P/N SG−009660または同等品)によって、40mLのヘッドスペースを抜き出して、5ccのDI水の中に徐々にバブリングさせて、ガス相のアンモニアを溶解させた。目盛り付きの1000μLシリンジを使用し、0.001〜0.004MのHClを用いて、その得られたアンモニア溶液をフェノールフタレインの終点まで滴定した。次いで、標準からの較正曲線を使用して、ジャーの中に存在している遊離のアンモニアの量を計算した。
【0064】
【表2】

【0065】
配合物C2は、約1%の無水マレイン酸を含むMAPPを用いて製造する。他の配合物はすべて、2%よりも高い無水マレイン酸を含むMAPPを採用する。
【0066】
【表3】

【0067】
次いで、表3に列記したマスターバッチ配合物のそれぞれをPPと15/85(重量/重量)の比率でブレンドし、17〜20ミクロンの範囲の直径を有するスパンボンド繊維を製造した。
【0068】
それに続けて上述のヘッドスペースアンモニア分析を実施したが、ただし250mLのジャーの中に1gのスパンボンド繊維を入れた。
【0069】
比較例C2およびC3のスパンボンド繊維は、0.100〜0.150ugのアンモニアを除去し、約35%の効率であった。実施例7のスパンボンド繊維は、0.840mgのアンモニアを除去し、75%の効率であった。
【0070】
試験をした脂肪酸はいずれも、重量/重量ベースでは同等の性能を有している。試験条件下では、二酸と一酸との間の酸基の数の違いは、ヘッドスペースからのNH除去効率にはほとんど影響しない。
【0071】
例のC1、2、3、および5からの繊維のサンプル17グラムを、5%エタノール中0.05規定NHの溶液800mLを用いて60分かけて抽出して、繊維の表面の上の有効な有機酸を溶解させた。乾燥させた抽出物の重量から、対照抽出物の重量を引いたものを、脂肪酸(二酸)のアンモニウム塩とみなした。繊維抽出の結果を次の表に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
繊維中に脂肪酸(無水物)が5%未満の場合には、脂肪酸を添加した繊維の効率がMAPP繊維の場合と同等になり、アンモニアの低下が、繊維1グラムあたり500ugのオーダーになるであろうと予想される。しかしながら、驚くべきことには、繊維の表面上の脂肪酸の量が少ないにもかかわらず、アンモニアの低下量が予想した値のほぼ2倍になっている。大部分の脂肪酸が表面上にある訳ではないという事実があるにもかかわらず、それでも、MAPP単独の場合よりもはるかに高効率で、それらはヘッドスペースからアンモニアを除去することが可能である。さらに、不織布製品サンプルの処理済みサンプルおよび対照サンプルの性能試験の比較を行った。アンモニア/尿溶液を用いて検証した、両方のサンプルをペアにした比較評価がこの試験には含まれていた。サンプルについて、訓練を受けた評価者パネルと訓練を受けていない評価者パネルとで評価を行った。両方の官能パネルの試験結果から、処理されたサンプルで感知されるアンモニアおよび尿の特有の臭気および総合的な臭気が、対照サンプルで感知されるものよりも顕著に低いことが判る。
【0074】
詳細な試験における、試験のための一次サンプルは、次のように名付けた:
実施例7、α−CD+ODSAをグラフトしたスパンボンドPP、0.5%親水性表面処理
比較のために用意した対照サンプルは次のように名付けた:
比較例C1、スパンボンドPP対照、0.5%親水性表面処理
【0075】
試験の目的は、アンモニア/尿溶液に曝露させたときに、対照サンプルよりも不織布の処理されたサンプルの方が、臭気強度をより低下させるという記録をとることであった。少量のアンモニア/尿溶液を、ファブリックサンプルで裏打ちした(lined with)を用いてガラスジャーの底に置いた。それらのサンプルを加熱し、その二つのサンプルの内のいずれがより低い臭気強度を有しているかを求めた。評価者らにはさらに、それらのサンプルで顕著な、臭気記述表現用語を報告させた。
【0076】
処理されたサンプルの臭気強度が低い場合には、ASTM International E2164−01『Standard Test Method for Directional Difference Test』を使用して評価した。この標準法の一般的な性質は、評価者に対して2種のサンプルを与え、一つの特質/パラメーターに基づいてそれらのサンプルの間の違いを求めさせる(一対比較法)。この試験で必要とされる評価者の人数は、統計学的検出力の選択に依存する。
【0077】
この試験の場合、5%の第一種の過誤(α=0.05)が受容可能であると定めたが、このことは、差が存在しないのに差が存在しているとしてしまうリスクが5%であるということを指している。さらに、30%の第二種の過誤(β=0.30)が受容可能であるが、このことは、実際には差があるのに差が存在しないとするリスクが30%であるということを指している。高いレベルの第二種のリスクが受容可能であるが、これが、対照サンプルに有利になるからである。最後に、75%のPMAX値を使用したが、これは、我々が逆らって試験をしたくなる一般的レスポンスの比率である。別の言い方をすれば、その試験の結果が、母集団の75%を超えるものがサンプル中に単なる偶然のレベルを超えた差を見つけるであろうということを実証することになるであろう。
【0078】
ASTM E2164には、これらの統計的パラメーターで必要とされる評価者の人数を決めるためのルックアップ表が与えられている。片側検定を使用したが、その理由は、処理されたサンプルの臭気強度が低いと予想されたためであって、そのために、最低でも18名の評価者のレスポンスが必要であるとの標準から決定した。
【0079】
この試験のために用いたアンモニア溶液は、100mLの脱イオン水の中に1.6mLの29%水酸化アンモニウム溶液を加えることによって調製した。その溶液を十分に混合した。次いでこのアンモニア溶液を使用して、凍結乾燥尿(KOVA−Trol Low Abnoramal Human Urinalysis Control;HYCOL Biomedical,Inc.)を再構成した。30mLのアンモニア溶液を用いてこの凍結乾燥尿を再構成した。通常は、60mLの水を用いて尿を再構成するが、そのアンモニア溶液は尿のアンモニア臭を強めるために使用し、より濃縮された尿を得るために30mLしか使用しなかった。
【0080】
サンプルは、Teflon被覆の蓋を有する250mLのガラスジャー(高さ4.5インチ、周囲6インチ)の壁面を覆う4.5インチ×6インチのファブリックサンプル片を用いて、準備した。それらのサンプルは、ジャーの蓋の上に、ランダムに発生させた3桁の数字を用いてコード化した。
【0081】
蓋をしたジャーを、38℃のオーブンの中で30分間予備加熱した。次いで、自動ピペットを使用して、ジャーの底部に10μLのアンモニア/尿溶液を入れた。ファブリックがその溶液と直接的に接触しないように、注意をはらった。ジャーの蓋をして38℃のオーブンに戻し、30分間経過後に評価者に渡して、観察させた。合計して10μLの溶液を蒸発させて、アンモニア濃度がほぼ250ppmになるようにした。
【0082】
それらのファブリックサンプルについて、訓練を受け、製品および材料の官能検査の経験がある13名の評価者を使用して、最初の試験を実施した。それらの評価者たちは、前もって、閾値試験、尺度化、識別法、および各種の属性格付けの応用など各種の官能検査技法の訓練を受けている。それぞれの評価者に、2組の処理済みサンプルおよび対照サンプルが渡された。それらのペアになったサンプルは、バランスのとれたデザインで、ランダムな順序で現れるように渡されるので、それぞれのサンプルのタイプが、同じ回数だけ、第一と第二の順で現れた。
【0083】
それぞれのペアについて、異なったサンプルコードで、独立して提供された。評価者たちには、オーブンから取り出した直後の第一のペアが渡された。評価者は、第一のジャーサンプルの蓋を開け、直ぐに鼻を開口部に近づけてサンプルの臭いをかいだ。評価者たちには、自分の鼻を休ませるのに必要だと自分で判断しただけの時間を与えた後で、第二のサンプルの臭いをかぐように指導した。これは通常、約30〜60秒間の休憩時間であった。評価者たちは、第二のジャーについて観察を繰り返した。試験の質問票では、評価者たちに、どのサンプルが「低い臭気強度」を有しているかを報告するように求めた。
【0084】
この第一回目の観察が完了したら、ジャーを試験室から持ち出し、それらの蓋を異なったコードを付けた蓋と取り替えた。ジャーを20分間保持してから、評価者たちへ戻した。評価者たちは、どちらのサンプルの臭気強度が低いかを求めるための評価を繰り返し、それぞれのサンプルについて、特性をプロファイリングする質問票に記入することを求められた。彼らは事前に支持を与えられていたので、サンプルの第二の組を評価する際には、特定の記述表現が得られるように注意深く観察する必要があることは承知していた。それぞれのサンプルに対して、評価者たちは、快不快のトーン、観察された臭気特性の記述表現、および主たる臭気特性の相対的な強度および感覚(sensation、feeling)カテゴリーを記録した。
【0085】
快不快のトーンは、臭気の快適さまたは不快さの尺度である。これは、主観的な試験パラメーターであって、評価者たちは、−10(最も不快)から+10(最も快適)までの尺度を使用して、彼らの臭気の知覚を記録した。ゼロのスコアは、中性の臭気である。訓練を受けた評価者たちによって得られた快不快のトーン値が一般的な母集団の意見を代表しているとは考えるべきではない。それらの値は、同一の評価者パネルによって観察されたものであるので、サンプルの間での快適さを比較するために使用するべきである。
【0086】
評価者たちは、標準としてコンピュータ化されたスコアリングシートの上で特性をマークすることによって、彼らが感知した臭気の記述表現を記録する。それらの臭気特性は、以下の8種の主たるカテゴリーに組織化されている:野菜臭(vegetable)、果実の香り(fruity)、花の香り(floral)、薬臭(medicinal)、化学薬品臭(chemical)、魚臭(fishy)、刺激臭(offensive)、土臭(earthy)。
【0087】
記述表現用語を臭気にあてはめるときには、主たる臭気記述表現カテゴリーを、1から5まで(「微臭」から「強臭」まで)の相対的な強度でランク付けすることができる(0は存在しない)。次いで、臭気試験の記述表現データをスパイダープロット(レーダープロット)方式の上にプロットするが、それぞれの軸に沿っての距離が、それぞれのカテゴリーについての0〜5のスケールを表している。そのプロットは、他のサンプルについてのスパイダープロットと比較することが容易に可能な「パターン」を作り出している。さらに、特定の臭気記述表現が、ヒストグラムの中に表されているが、ここで、それぞれの記録された記述表現は、記録した評価者たちのパーセントに沿って並べられている。
【0088】
鼻腔および上部口蓋全体に位置している三叉神経(第五脳神経)およびその他の神経は、何らかの臭気の存在を感じ取っている(すなわち、「のような臭いがする」というよりは、「のような感じがする」)。使用可能な8種の一般的な感覚の記述表現としては次のものが挙げられる:痒覚(itching)、刺痛覚(tingling)、温覚(warm)、灼熱覚(burning)、刺激覚(pungent)、鋭痛覚(sharp)、冷覚(cool)、および金属覚(metallic)。この場合もまた、評価者たちは、これらの特質の存在の強度を0〜5のスケールでランク付けすることが可能であり、次いでそれらの結果を、スパイダープロットの上にプロットする。
【0089】
特性のプロファイリングが完了したら、サンプル第二のセットをオーブンから取り出し、評価者たちに渡して、どれが臭気強度が低いかを求めさせる。
【0090】
第二の試験は、訓練を受けていない評価者たちの消費者パネルを使用して実施した。20名の評価者たちを、一般的な母集団から選定した。評価者たちは、18歳以上の非喫煙者であった。
【0091】
それぞれの評価者には、ランダム化された順序で2組のサンプルを2度渡されるので、それぞれのサンプルが、同じ回数だけ、第一と第二の順で現れた。それぞれのペアが独立したコードになっているので、評価者たちは、それらが同じサンプルのペアであるとは気が付かない。それぞれのペアに関連して、評価者に質問票を渡して、どちらのサンプルが「低い臭気強度」を有しているかを記録させた。二回目にサンプルのセットの観察をしてから、評価者たちには、ボックスをチェックすることによって、それぞれのサンプルの中に、存在するとすれば、10種の臭気記述表現の存在を報告するように求めた。それらの10種の記述表現用語は以下のものであった:花の香り、野菜臭、土臭、かび臭(musty)、硫黄臭(sulfurous)、魚臭、化学薬品臭様、尿臭、アンモニア臭、および薬臭。評価者たちは、「その他」として、自分自身の言葉で書くことも許された。
【0092】
結果
訓練を受けたパネル
13名の訓練を受けた評価者たちでは、ペア比較試験の第一ラウンドにおいては、13名の評価者たちの内の13名が、処理されたサンプル(実施例7)の方が臭気強度がより低いとの選択をした。同一のサンプルを観察する第二ラウンドでは、13名中11名が、この処理されたサンプルの方が臭気強度がより低いとの選択をした。
【0093】
ペアの第二セットにおいては、13名の評価者たちの内の12名が、処理されたサンプル(実施例7)の方が臭気強度がより低いとの選択をした。
【0094】
まとめれば、サンプル評価の第一ラウンドでは、これは、26回の観察中25回が、処理されたサンプルの方が強度がより低いと識別したことになる。全部のサンプルでは、これは、39回の観察中36回が、処理されたサンプルの方が強度がより低いと識別したことになる。ASTM E2164の中の表3に、第一種の過誤に基づいた一つのテイルドテスト(tailed test)で統計的に有意な結果を得るために必要なレスポンスの数、および使用する評価者の数が与えられている。この表は、13名の評価者たちの内の10名以上が、その処理されたサンプルを臭気強度が低いと識別するならば、これは統計的に有意な結果であろうということを示している。したがって、すべての試験において、11〜13名が選択したということは、その母集団が、処理されたサンプルの方が低い臭気強度を与えていると検出することが可能であるということを、95%のレベルで証明していることになる。3組の観察の結果を考慮に入れれば、26回の内の25回で識別されたということおよび39回の内の35回で識別されたということは、処理されたサンプルが臭気強度がより低いと識別されたことの信頼度が99.9%より高いということである。
【0095】
訓練を受けた評価者たちによる快不快のトーンの平均値は、処理されたサンプル(実施例7)では−1.6、対照サンプル(比較例C1)では−4.9であった。処理されたサンプルの方がより中性である(ゼロに近い)が、それでも、スケールの「不快」の側にあると考えてよいであろう。対照サンプルの快不快のトーンの値は、それが極めて不快であるということを示唆している。それらの値は、統計的に差があることがわかった(p<0.0001、α=0.05)。
【0096】
評価者たちによって与えられた臭気記述表現用語としては、処理されたサンプルに対しては、土臭、古臭(stale)、刺激臭、およびかび臭が挙げられ、対照サンプルに対しては、アンモニア臭、尿臭、刺激臭、およびジャコウ臭(musky)が挙げられた。処理されたサンプルに対しては、「土臭」という表現が、最も高い頻度で記録された。対照サンプルに対しては、薬臭(アンモニア臭を含む)および刺激臭(尿臭を含む)が、最も高い頻度で記録された。
【0097】
図1は、臭気特性カテゴリーの相対的な強度ランクをまとめたものである。対照サンプルは、処理されたサンプルに比較すると、薬臭および刺激臭の項目で、最高の相対的な強度と最大の差とを有していた。土臭の点では、処理されたサンプルの方が対照よりもやや高かった。
【0098】
図2は、臭気感覚(感じ)の相対的な強度をまとめたものである。対照サンプルは、処理されたサンプルと比較すると、灼熱覚、刺激覚、および鋭痛覚のカテゴリーで、最高の相対的な強度と最大の差とを有していた。処理されたサンプルの場合に記録された唯一の感覚は、軽い刺激覚および温覚であり、これは、対照サンプルと同じ相対的な強度にあったが、その理由はおそらく、サンプルが、38℃のオーブンから取り出して数分以内に評価者たちに渡されたという事実のためであろう。
【0099】
訓練を受けていない評価者たちでは、ペア比較試験の第一ラウンドにおいては、20名の評価者たちの内の17名が、処理されたサンプルの方が臭気強度がより低いとの選択をした。第一のペアのサンプルを二度目に提供すると、20名の評価者たちの内の16名が、処理されたサンプルの方が臭気強度が低いという選択をした。第二の組のサンプルでは、20名の評価者たちの内の19名が、一回目の観察では、処理されたサンプルの方が臭気強度が低いという選択をした。第二のペアを二度目に提供すると、20名の評価者たちの内の15名が、処理されたサンプルの方が臭気強度が低いという選択をした。
【0100】
まとめれば、2組のサンプルの一回目の観察では、これは、40回の観察中36回が、処理されたサンプルの方が強度がより低いと識別したことになる。それらのサンプルを二度目に観察すると、40回の観察の内の31回が、処理されたサンプルの方が強度がより低いと識別したことになる。
【0101】
それぞれのラウンドの結果を総括すると、その母集団が、処理されたサンプルの方が低い臭気強度を与えていると検出することが可能であるということに少なくとも95%の信頼性を与えることができる。両方のラウンドを組み合わせると、40レスポンス中の36,そして40レスポンス中の31であることが、その母集団が、処理されたサンプルの方が低い臭気強度を有していると検出するであろうということに、99.9%の信頼度レベルを与える。
【0102】
消費者パネルはさらに、それぞれの組のサンプルの二回目の観察で、彼らが気づいた臭気記述表現も報告した。第一の組のサンプルにおいては、30%の評価者たちが、対照サンプルではアンモニア臭および尿臭を報告していたが、処理されたサンプルでそれらの臭気を報告したのは、わずか15%であった。土臭とかび臭は、両方のサンプルでもっとも頻度高く認識されていた。第二の組のサンプルにおいては、対照サンプルでは、40%がアンモニア臭を報告し、20%が尿臭を報告していたが、処理されたサンプルでそれらの臭気を報告したのは、5%であった。この場合もまた、土臭とかび臭は、もっとも頻度高く認識されていた。
【0103】
処理されたサンプルの実施例7を対照サンプルの比較例C1と比較した方向性差分試験法(一対比較法)では、処理されたファブリックの方が、対照ファブリックよりも、アンモニア臭および尿臭をより低下させるということが実証された。
【0104】
訓練を受けた官能評価者たちのパネルの結果から、99%を超える信頼度レベルで、処理されたファブリックの方が対照よりも臭気を低下させることにその母集団が気づいているということが示されている。訓練を受けた評価者たちは、対照サンプルの快不快のトーンが、処理されたサンプルよりも、有意により不快であることを見出していた。これらの訓練を受けた評価者たちはまた、対照サンプルが、より高いレベルの薬臭および刺激臭、ならびにより高いレベルの鋭痛覚および刺激覚を有していると報告していた。
【0105】
消費者官能パネル(訓練を受けていない評価者たち)からの結果でも、99%より高い信頼度レベルで、処理されたファブリックの方が対照よりも臭気を低下させることにその一般的な母集団が気づいているということが示されている。これらの評価者たちはさらに、対照サンプルの臭気には、処理されたサンプルよりも強いアンモニア臭および尿臭が含まれているが、それに対して土臭およびかび臭は、いずれのものにも含まれていることに気づいていた。
【0106】
本明細書の開示の範囲と精神から外れることなく本発明による実施態様および実施例に対して各種の修正および変更を加えることは、当業者には明らかであろうが、本明細書の開示が、本明細書に記載の説明のための実施態様および実施例に不当に限定されるものではないということを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー組成物であって、
(i)以下のもののブレンド物、
(1)主成分のポリオレフィン樹脂、および
(2)約1重量%〜47重量%の改質ポリオレフィン樹脂、ならびに
(ii)前記ポリマー組成物を基準にして約0.1重量%〜約5重量%の非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸、
を含む、熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が、C〜C500カルボン酸であり、前記カルボン酸が、前記ポリマー組成物を基準にして約0.25重量%〜約2.5重量%の間の量で含まれている、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が、C〜C200ジカルボン酸であり、前記ジカルボン酸が、前記ポリマー組成物を基準にして約0.25重量%〜約2.5重量%の間の量で含まれている、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が酸無水物であり、前記ポリマー組成物を基準にして約0.25重量%〜約2.5重量%の間の量で含まれている、請求項3に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記ジカルボン酸が、C〜C28アルケニル置換されたコハク酸または無水物であり、前記ポリマー組成物を基準にして約0.5重量%〜約1.5重量%の間の量で含まれている、請求項3に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸が、オクタデセニル置換されたコハク酸または無水物であり、前記ポリマー組成物を基準にして約0.5重量%〜約1.5重量%の間の量で含まれている、請求項5に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項7】
約1〜50重量%の前記ポリオレフィン樹脂および約0.01〜約15重量%の前記改質ポリオレフィンを含み、前記ポリオレフィンが、約0.5〜1500g/10minのメルトフローインデックスを有し、前記改質ポリオレフィンが、約0.7〜800g/10minのメルトフローインデックスを有するポリオレフィンから誘導される、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリエチレンを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリプロピレンを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリオレフィンが、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記改質ポリオレフィンが、無水マレイン酸改質ポリオレフィンに結合されたシクロデキストリンを含み、前記ポリオレフィンが、約0.05〜約5重量パーセントの無水マレイン酸を含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質高密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記シクロデキストリン改質ポリオレフィン樹脂が、ランダムに置換され、共有結合的に結合されたシクロデキストリン化合物に由来する基を有するポリメチレン主鎖を含み、前記組成物が、約100重量部の前記ポリオレフィン樹脂および約0.01〜50重量部の前記改質ポリオレフィンを含み、前記シクロデキストリン化合物が、前記シクロデキストリン環の中央のポアの中に化合物を実質的に含まない、請求項12に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を含む繊維。
【請求項15】
約0.2〜50ミクロンの直径を有する、請求項14に記載の繊維。
【請求項16】
前記カルボン酸が、C〜C200ジカルボン酸であり、前記ジカルボン酸が、前記ポリマー組成物を基準にして約0.25重量%〜約2.5重量%の間の量で含まれている、請求項14に記載の繊維。
【請求項17】
前記繊維が、織布または不織布の構成要素である、請求項16に記載の繊維。
【請求項18】
前記ジカルボン酸が、C〜C28アルケニル置換されたコハク酸または無水物である、請求項16に記載の繊維。
【請求項19】
前記ジカルボン酸が、オクタデセニル置換されたコハク酸または無水物である、請求項18に記載の繊維。
【請求項20】
約48〜94重量%の前記ポリオレフィン樹脂および約0.25〜約2.5重量%の前記カルボン酸を含み、前記ポリオレフィンが、約0.5〜1500g/10minのメルトフローインデックスを有し、前記改質ポリオレフィンが、約0.7〜800g/10minのメルトフローインデックスを有するポリオレフィンから誘導される、請求項14に記載の繊維。
【請求項21】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリエチレンを含む、請求項14に記載の繊維。
【請求項22】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリプロピレンを含む、請求項14に記載の繊維。
【請求項23】
前記ポリオレフィンが、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含み、前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含む、請求項14に記載の繊維。
【請求項24】
前記改質ポリオレフィンが、無水マレイン酸改質ポリオレフィンに結合されたシクロデキストリンを含み、前記ポリオレフィンが、約0.05〜約5重量パーセントの無水マレイン酸を含む、請求項14に記載の繊維。
【請求項25】
前記改質ポリオレフィンが、シクロデキストリン改質高密度ポリエチレンを含む、請求項14に記載の繊維。
【請求項26】
前記シクロデキストリン化合物が、ランダムに置換され、共有結合的に結合されたシクロデキストリン化合物に由来する基を有するポリメチレン主鎖を含む改質ポリオレフィン樹脂を含み、前記組成物が、約100重量部の前記ポリオレフィン樹脂および約0.01〜50重量部の前記改質ポリオレフィンを含み、前記シクロデキストリン化合物が、前記シクロデキストリン環の中央のポアの中に化合物を実質的に含まない、請求項25に記載の繊維。
【請求項27】
熱可塑性ポリマーマスターバッチであって、
(i)主成分がポリオレフィン樹脂であるブレンド物、および
(ii)前記ポリマー組成物を基準にして約1重量%〜約15重量%の非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸、
を含む、熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項28】
前記非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が、C〜C40カルボン酸であり、前記カルボン酸が、前記ポリマーマスターバッチを基準にして約1重量%〜約15重量%の間の量で含まれている、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項29】
前記非揮発性でポリマー相溶性のカルボン酸が、C〜C40ジカルボン酸であり、前記ジカルボン酸が、前記ポリマーマスターバッチを基準にして約1重量%〜約15重量%の間の量で含まれている、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項30】
前記非揮発性でポリマー相溶性のジカルボン酸が、酸無水物であり、前記酸無水物が、前記ポリマーマスターバッチを基準にして約1重量%〜約15重量%の間の量で含まれている、請求項29に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項31】
前記ジカルボン酸が、アルケニル置換されたコハク酸または無水物である、請求項29に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項32】
前記二酸が、オクタデセニル置換されたコハク酸または無水物である、請求項31に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項33】
約10〜70重量%の前記ポリオレフィン樹脂、約10重量%〜約45重量%の改質ポリオレフィン樹脂、および約1〜15重量%の前記カルボン酸を含み、前記ポリオレフィンが、約0.5〜1500g/10minのメルトフローインデックスを有し、前記改質ポリオレフィンが、約0.7〜800g/10minのメルトフローインデックスを有するポリオレフィンから誘導される、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ。
【請求項34】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、改質ポリエチレンを含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項35】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、改質ポリプロピレンを含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項36】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンを含み、前記改質ポリオレフィンが、改質ポリプロピレンを含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項37】
前記ポリオレフィンが、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含み、前記改質ポリオレフィンが、改質ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項38】
前記ポリオレフィンが、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)を含み、前記改質ポリオレフィンが、改質ポリプロピレンを含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項39】
前記改質ポリオレフィンが、無水マレイン酸改質ポリオレフィンに結合されたシクロデキストリンを含み、前記ポリオレフィンが、約0.05〜5重量パーセントの無水マレイン酸を含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項40】
前記組成物が、ポリマー相溶性シクロデキストリン化合物をさらに含む、請求項27に記載の熱可塑性ポリマーマスターバッチ組成物。
【請求項41】
前記シクロデキストリン化合物が、ランダムに置換され、共有結合的に結合されたシクロデキストリン化合物に由来する基を有するポリメチレン主鎖を含む改質ポリオレフィン樹脂を含み、前記組成物が、約100重量部の前記ポリオレフィン樹脂および約0.01〜50重量部の前記改質ポリオレフィンを含み、前記シクロデキストリン化合物が、前記シクロデキストリン環の中央のポアの中に化合物を実質的に含まない、請求項38に記載の熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項42】
主要寸法が約10ミリメートル未満であり、重量が約15〜約50ミリグラムである、成形したポリオレフィン樹脂微粒子を含むチップであって、請求項1に記載の組成物を含む、チップ。
【請求項43】
ポリオレフィンウェブで囲まれた密閉容積を有するコンテナーであって、前記ウェブが請求項1に記載の組成物を含む、コンテナー。
【請求項44】
前記ウェブが、板紙層および接着されたポリオレフィン層を含むラミネートを含む、請求項43に記載のコンテナー。
【請求項45】
前記ウェブが、液状食品で充填されている、請求項44に記載のコンテナー。
【請求項46】
前記ウェブが、約100mL〜3リットルの容積を有し、前記液状食品が柑橘類のジュースを含む、請求項45に記載のコンテナー。
【請求項47】
請求項1に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項48】
前記フィルムが、板紙層および接着されたポリオレフィン層を含むラミネートを含む、請求項47に記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522124(P2012−522124A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503618(P2012−503618)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029219
【国際公開番号】WO2010/117794
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509234032)セルレシン テクノロジーズ, エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】