説明

情報を記録した積層材料、それを貼付した物品、情報読み取り方法および読み取り装置

【課題】本発明の目的は意匠性、セキュリティー性に優れ、安価に製造することができる、情報を記録した積層材料を提供することにある。
【解決手段】透明微小球18の一部分を露出させた状態で埋め込み、多数の透明微小球18を整列配置した微小球固定層12と、透明微小球18の略焦点位置に設けられた反射層14と、透明微小球18が露出した側の微小球固定層12の面上の少なくとも一部に設けられた透明樹脂層16と、を備え、透明樹脂層16により透明微小球18の焦点位置をずらしてその部分の再帰反射率を低下させ、透明樹脂層16が設けられた部分と前記透明樹脂層が設けられていない部分との再帰反射率の違いによって情報を記録したことを特徴とする情報を記録した積層材料10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記録した積層材料、それを貼付した物品、特に意匠性、情報のセキュリティー性の改良に関する。さらに、積層材料に記録した情報の読み取り方法および装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の製品の生産管理や流通管理を行うため、その製品の外装や部品などにバーコードや二次元コードなどの情報コードを印刷したシールを製品に貼付することが行われている(特許文献1参照)。
情報コードをシールなどに書き込む方法として、一般にレーザーマーキング法やインキマーキング法が用いられている。インキマーキング法は基材と明度差があるインクを表面に印刷して情報コードを書き込む方法であり、レーザーマーキング法は、シール等の表面にレーザーを照射し、表面上に凹形状を形成することによりコードの書き込みを行う方法である(特許文献2参照)。
【0003】
一方、再帰反射材は、従来から交通事故防止対策の目的で案内標識、規制標識などの道路標識用表示材や夜間の道路工事作業や警察官、消防隊員等の衣料に使用されてきた。同様の目的として、夜間のジョギングや歩行時の衣料や靴、鞄などに、また最近はファッション性を高める目的でも使用されるようになってきた。再帰反射材は、特殊な材料を使用したり、材料構成や製造工程を厳密に制御することで模倣が困難となるため、再帰反射材を真正品に貼付し、真正品と偽造品や模造品とを判別する目的で使用されることも多い(特許文献3参照)。
さらに、前述のような偽造防止効果の高い再帰反射材と情報コードを組み合わせることにより偽造品や模造品と真正品との判別(セキュリティー性の向上)と情報コードによる商品情報管理を同時に達成しようとする製品も提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−19253号公報
【特許文献2】特許第2719287号明細書
【特許文献3】特開2000−272300号公報
【特許文献4】特開2004−268258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の情報コードはインキマーキング法により印刷していたため、情報コードを印刷したシールを製品に貼付した場合、その意匠性を著しく低下させるという問題点があった。なぜなら、インキマーキング法では、基材とインクとの明度差をかせぐことが必要(白と黒の組み合わせが最も読み取りやすい)であり、使用できる基材色とインクの色の制限が大きいからである。また、情報コードが目視により容易に観察することができるため、セキュリティー性にもやや問題があった。
【0005】
意匠性の悪化を防ぐため、上記のレーザーマーキング法により透明フィルムに凹凸コードを印字し、その透明フィルムを製品に貼付することでその製品の意匠性を低下させることなく情報コードを記載するといったことも行われている。しかし、透明フィルム上の凹部と平坦部の明度差(コントラスト)が十分に得られず、通常CCDカメラを用いたコードの自動認識において読み取りが不可能であったり、読み取りエラーが起きるという問題点があった。この問題を解決するため、例えば特許文献2では、凹凸コードの形成面に所定角度で光を当て、エッジ部から得られる反射光を受光して認識する方法が提案されている。しかし、この方法では光の照射角度や受光部の位置等が制限され読み取り条件を詳細に設定しなくてはならないこと、装置構成が複雑になり機械が高価になること、等の欠点がある。また、レーザーマーキング法では情報コードの印字にコストがかかるという問題もある。
【0006】
さらに、特許文献4のように、再帰反射材と刻印による情報コードを組み合わせる場合、情報を刻印する層を確保するために透明材質層が最表面に存在しなければならない。そのため、使用できる再帰反射材の種類はクローズタイプに限定されていた。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は意匠性、セキュリティー性に優れ、安価に製造することができる、情報を記録した積層材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる情報が記録された積層材料は、透明微小球の一部分が露出した状態で埋め込まれ、多数の透明微小球が整列配置された微小球固定層と、前記透明微小球が露出した面の反対側に設けられ、該透明微小球を透過した光を反射する反射層と、前記透明微小球が露出した側の微小球固定層の面上の少なくとも一部に設けられた透明樹脂層と、を備える。前記透明微小球へ入射した光の少なくとも一部を略入射方向へ再帰反射させるように前記反射層は前記透明微小球の略焦点位置に設けられる。そして、前記透明樹脂層にて透明微小球の露出面を覆うことで、その透明微小球の焦点位置を前記反射層の位置からずらして再帰反射率を低下させ、前記透明樹脂層が設けられた部分と設けられていない部分との再帰反射率の違いにより情報が記録されている。
【0008】
上記の積層材料において、前記透明樹脂層は、可視光領域(波長400nm〜700nm)の光に対して、透過率が80%以上のものであることが好適である。
上記の積層材料において、前記透明樹脂層により記録された情報がバーコードもしくは二次元コードであることが好適である。
また、上記の積層材料は、好適に物品に貼付することができる。
【0009】
本発明の情報読み取り方法は、上記の積層材料に光を照射し、その再帰反射光から積層材料に記録された情報を読み取ることを特徴とする。
本発明の情報読み取り装置は、光源と、前記光源からの光を2光束に分割し、一方の光束を上記の積層材料に照射するハーフミラーと、前記積層材料からの再帰反射光を前記ハーフミラーを介して受光する光検出手段と、該光検出手段からの検出信号に基き、前記積層材料に記録された情報を解析する解析手段と、を備える。ここで、前記光検出手段は前記ハーフミラーの面に対し、前記光源が配置された位置と反対側に設置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる情報を記録した積層材料によれば、透明微小球が露出した面上の少なくとも一部に設けられた透明樹脂層を備え、前記透明樹脂層を設けることでその部分の透明微小球の焦点位置をずらし、前記透明樹脂層が設けられた部分と設けられていない部分との再帰反射率を異ならせ、この再帰反射率の違いにより情報を記録するという構成をとっているため、意匠性を損なわず、かつセキュリティ性の高い積層材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明にかかる好適な実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態にかかる情報を記録した積層材料の断面図である。本実施形態の積層材料10は、微小球固定層12と、反射層14と、透明樹脂層16とを備える。
微小球固定層12は、透明微小球18と、多数の透明微小球18を整列配置させて固定するための固定樹脂層20とで構成される。透明微小球18は固定樹脂層20に概ね半分埋め込まれた状態で固定されており、透明微小球18の略下半分が埋没した状態で、略上半分が外部(空気中)に露出した状態となっている。微小球固定層12は従来のオープンタイプの再帰反射材(透明微小球の一部分を外部に露出させた状態で使用するもの)と同様の構成であればよい。例えば、透明微小球18は、粒子径が30〜80μmのガラスビーズ等で、屈折率が1.9〜2.2程度のものを用いればよい。また、固定樹脂層20としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用すればよい。なお、固定樹脂層20の強度を上げるため、樹脂に架橋剤を加えても良い。
【0012】
反射層14は透明微小球18が露出した面の反対側に設けられる。つまり、図1に示すように透明微小球18の固定樹脂層20に埋没した面に直接設けても、図2に示すように固定樹脂層20の後段(透明微小球18を埋設した面と反対側)に設けてもよい。反射層14は透明微小球18の略焦点位置(図1の場合は、透明微小球の略表面上に位置し、図2の場合は透明微小球の外側に位置する。)にあればよく、この焦点位置は透明微小球18(および固定樹脂層20)の屈折率から決まる。また、反射層14はその反射面の法線方向が光の入射方向に向いた状態(図1、2に示すように、球面に沿った形)で設けられている。このように反射層14が透明微小球18の略焦点位置にあることで、透明微小球18を透過して反射層14にて反射された光は、入射光と略同一方向に再帰反射されることになる。
【0013】
反射層14の材質は特に制限はなく、従来公知のものを用いればよい。例えばアルミニウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化チタン、インジウム−スズ酸化物、酸化タングステンなどを使用すればよい(例えば、特開2004−294668参照)。また、光の干渉現象を利用して再帰反射光を着色するために、反射層の厚みを調整したり、反射層を複数の層を積層した構成としたり、二酸化チタン被覆雲母などの干渉物質を反射層に用いた構成とすることも好適である(例えば、特許3441507号明細書、特許3541128号明細書参照)。
【0014】
本実施形態で特徴的な部分は、透明微小球18が露出した側の微小球固定層12の面上の少なくとも一部に透明樹脂層16を設けているところである。ここで、透明樹脂層は、可視光の吸収、散乱、反射が小さく、実質的に透明なものであればよく、特に制限はない。本実施形態では透明樹脂により構成している。透明樹脂を用いることで通常の印刷方法により情報を記録することができ、製造が容易である。ただし、透明樹脂層は、必ずしも透明樹脂のみで構成する必要はなく、適宜他の材質も含んでいてもよい。
【0015】
透明樹脂層の透明さの度合いとしては、透明樹脂層を設けた部分とそうでない部分とが、通常の光環境の下、目視で見分けにくい程度に透明であることが好ましい。例えば、透明微小球と同程度もしくはそれ以上に透明であることが望ましい。より具体的には、透明樹脂層16が、波長450〜700nmの可視光に対して、光透過率が80%以上であることが好適である。
【0016】
なお、透明樹脂の例としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、などが挙げられる。また、透明樹脂層として、透明樹脂に光の吸収のほとんどない光散乱粉末に混ぜたものを用いてもよいが、この場合、光散乱粉末の量は、十分な透明性があり、通常の光環境の下では透明樹脂層を設けた部分とそうでない部分とを目視で見分けることができない量であるのが望ましい。
【0017】
また、透明樹脂層を印刷した部分の再帰反射率を下げるため、透明樹脂層の屈折率が可視光領域(波長450〜700nm)の少なくとも一部で空気の屈折率(約1)と異なることが必要である。さらに透明樹脂層の屈折率と空気の屈折率との差が0.3以上であることが好適である。屈折率差が0.3以上であれば、透明樹脂層を設けた部分と設けていない部分とで、再帰反射率が十分に異なり、情報を正確に読み取ることができる。ここで、透明樹脂層の屈折率とは透明樹脂層全体として屈折率のことを意味する。
【0018】
下記に説明するように、透明樹脂層16により露出面を覆われた透明微小球18の部分と、透明樹脂層16に露出面が覆われていない透明微小球18部分とは異なる再帰反射率を持つ。この再帰反射率の違いを利用して情報を記録することにより、意匠性、セキュリティ性の高い積層材料を提供することを可能としている。
透明樹脂層によって記録される情報としては、公知の二次元コード、バーコード等の情報コードであることが好適である。二次元コードとはデータを二進化して情報を二次元状に記録するものであり、バーコードとは、データを二進化して情報を一次元状に記録するものである。
【0019】
また、本実施形態の積層材料では、物品に貼付するための粘着層22を設けている。粘着層に使用する粘着剤としては特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを用いればよい。この粘着層22は必ずしも必要ではなく、他の形態、例えば、別途接着剤を塗布して接着したり、加熱によるホットメルト接着により物品に添付してもよい。
【0020】
以上が本実施形態の概略構成であり、次に図3A、図3B、図4A、図4Bを参照して本実施形態の積層材料の作用を説明する。ここでは図1の積層材料を例に説明するが、図2の積層材料の場合も同様である。
図3Aは、透明樹脂層が設けられていない透明微小球の部分へ光が入射したときの説明図である。空気中から透明微小球18に直接入射した光は少なくとも一部が透明微小球18を透過する。この透過光は透明微小球18の露出表面(空気との界面)で屈折し、透明微小球18の略焦点位置に集光される。透明微小球18の略焦点位置には、反射層14が設けられているため、透明微小球18により集光された光の少なくとも一部が反射層14にて反射され、再び透明微小球18を透過し、空気との界面で屈折して入射方向と略同一方向に帰還する再帰反射光となる。つまり、透明微小球18は球面レンズとして機能していることになる。
【0021】
一方、図3Bに示すように、透明樹脂層16により露出面が覆われている透明微小球18の部分に入射した光は、少なくともその一部が透明樹脂層16を透過したのち、透明微小球18へと向う。透明微小球18は、光の入射する面が空気中に直接露出していた場合に、透明微小球の焦点が反射層18上に位置するように屈折率が定められている。しかし、透明樹脂層の屈折率は空気とは異なるため、透明樹脂層16で覆われた透明微小球18の焦点位置は反射層14の位置からずれる(もしくは、反射層14の位置に明確な焦点を結ばなくなる)。そのため、透明樹脂層16を透過し反射層14にて反射された光は再帰反射光とはならず、入射光と異なる方向へと出て行く拡散反射光となる。言い換えると、透明樹脂層16によって、透明微小球18が球面レンズとしてうまく機能しなくなり、その結果再帰反射率が低下する。
【0022】
図4Aは、積層材料10にほぼ一定の方向に進行方向が定まった光(以下直線光とよぶ)を照射した場合の説明図(図では積層材料10の真上から光を照射した場合を示している)である。上述したように、透明樹脂層16が設けられた透明微小球18の部分と、設けられていない透明微小球18の部分とで異なる再帰反射率を有しているため、図4Aに示すように、光の照射方向から観察した場合(図4Aでは積層材料の真上から観察した場合)、再帰反射光の強度の違いにより、透明樹脂層により記録した情報が読み取れることになる。
一方、光の照射方向から外れた位置で観察した場合、再帰反射光以外の光、例えば、透明微小球18表面、透明樹脂層16表面で反射した光等、を主に観察することになる。透明樹脂層16と透明微小球18はいずれも透明で光の吸収、散乱はほとんどなく、透明樹脂層16が設けられた部分と設けられていない部分の外観の違いを目視にて確認することはほとんどできない。そのため、透明樹脂層16によって記録した情報はほとんど読み取ることができない。このように、透明樹脂層を設けた部分は入射した光を拡散反射する拡散反射領域として働き、透明樹脂層を設けていない部分が入射した光を再帰反射する再帰反射領域として働くことになる。
【0023】
また、太陽光、あるいは蛍光灯等の照明下のように照射する光の進行方向にバラツキがある場合(以下、通常光とよぶ)、積層材料10へは様々な方向から光が入射することになる(図4B参照)。そのため、積層材料10からの反射光のうち特に再帰反射光が強く観察される観察方向というものは存在せず、どの観察位置においても透明樹脂層16が設けられた部分と、設けられていない部分との違いを見分けることはほとんどできない。このため、通常光の下では、透明樹脂層16による情報を読み取ることはほとんどできない。
【0024】
このように、本発明の実施形態にかかる積層材料によれば、透明樹脂層によって情報を記録しているため、通常光の照明下(図4Bに示した場合)では透明樹脂層による情報をほとんど視認することができず、意匠性を損なうことがない。そして、直線光下(図4Aに示した場合)での再帰反射光によってのみ情報を読み取ることができるため、セキュリティ性も向上する。
【0025】
積層材料への情報コードの記録方法は、通常の印刷方法で行なうことができる。よって、特殊な装置を使用しなくてもよく、製造が容易であり、かつ製造コストを低減できるという利点もある。印刷方法としては、例えば、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、透明樹脂層の形成は、塗料を用いて印刷するという方法のみでなく、例えば、透明樹脂をシート状にして貼り付けるといった方法で行ってもよい。
【0026】
なお、本発明の積層材料は、例えばコンピュータソフトウェア、音楽ソフトウェア、高級ブランド製品(カメラ、化粧品、衣料、バックなど)等の偽造されやすい商品の本体や製品タグに貼付することが好適である。本発明の積層材料を貼付することにより、その物品の偽造防止、商品情報管理などに役に立つ。
【0027】
情報コード読み取り方法および装置
次に本発明にかかる積層材料からの情報読み取り方法、および装置について説明する。
本発明にかかる情報読み取り方法は、上記の積層材料に光を照射し、積層材料からの再帰反射光を観察することで、積層材料に記録された情報を読み取ることを特徴とする。この情報読み取り方法は、以下に説明する装置によって実施することが好適である。
【0028】
図5は、本発明の実施形態にかかる情報コード読み取り装置である。図5の情報コード読み取り装置100は、光源(白色光源102)と、ハーフミラー104と、光検出手段(CCDカメラ106)と、コンピュータ等で構成される解析手段108と、を備える。
白色光源102から出射した光は、ハーフミラー104へ向い、そこで一部が反射して積層材料10へ向う。積層材料10へ向った光は積層材料10に入射する。積層材料10からの再帰反射光は再びハーフミラー104へと進み、一部がハーフミラー104を透過してCCDカメラ106へと向い、そこで検出される。CCDカメラ106によって検出された検出信号は、解析手段108へ送られる。解析手段108ではこの検出信号に基き、積層材料に記録した情報の解析を行う。
【0029】
本発明にかかる積層材料から、情報を読み取るためには、光の照射方向と略同一方向から観察する必要がある。しかし、図5の装置によれば、光検出手段106はハーフミラー104の面に対し、光源102が配置された位置と反対側に設置されることになる。このように、ハーフミラーを用いることで光源102と光検出手段106とが位置的に干渉し合うことなく配置することができ、好適に再帰反射光を観測することができる。なお、光源の位置と光検出手段の位置とを取り替えた構成としてもよい。
以下に本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は以下のものに限定されるわけではない。
【実施例1】
【0030】
透明樹脂
(株)セイコーアドバンス社製スクリーン印刷用インキSG−410(90部)、トルエン(10部)を混合し透明塗料を調製した。
スクリーン印刷用版の作成
ナイロン製150メッシュスクリーンを用いて、10mm角のDATAMATRIX型2次元コード(14×14セル、コード情報:SHISEIDO)の版を作成した(図6参照)。
再帰反射材
再帰反射材(微小球固定層+反射層)として、株式会社丸仁製オープン型再帰反射フィルム(LIGHT FORCETM LFU-1200、反射層:アルミニウム蒸着、ガラスビーズの直径:約40〜50μm、ビーズの埋没率:約50%)を用いた。
情報コードの印刷方法
上記の再帰反射材の表面(透明微小球が露出した面)に、上記のスクリーン印刷用板を使用して、スクリーン印刷機で二次元コード(透明樹脂層)の厚さが約10μmになるように印刷した。印刷した二次元コードは外観上目視でほとんど認識できず、再帰反射材の意匠性を損なうことはなかった。
コード情報の読み取り解析
図5に示した装置を用いて、上で作成した積層材料に対し、コード情報の読み取りを行った。ここで、光検出手段および情報コード解析手段として、CCDカメラ付コードリーダTHIR-3000LP((株)東研製))を用いた。コード情報の読み取り、解析を行った結果、「SHISEIDO」と読み取ることが出来た。
【実施例2】
【0031】
コード情報を図7に示した10mm角のQR型2次元コード(21×21セル、コード情報:SHISEIDO)に変更した以外は実施例1と同様に行なった結果、いずれも正確にコード情報を読み取ることが出来た。また、印刷した二次元コードは外観上目視でほとんど認識できず、再帰反射材の意匠性を損なうことはなかった。
【実施例3】
【0032】
コード情報を図8に示した15×18mmのJAN8型バーコード(コード情報:01234565)に変更した以外は実施例1と同様に行なった結果、いずれも正確にコード情報を読み取ることが出来た。また、印刷したバーコードは外観上目視でほとんど認識できず、再帰反射材の意匠性を損なうことはなかった。
【実施例4】
【0033】
再帰反射材を株式会社丸仁製オープン型再帰反射フィルム(LIGHT FORCETM LFU-1400、反射層:硫化亜鉛―二酸化ケイ素―硫化亜鉛積層蒸着、ガラスビーズの直径:約40〜50μm、ビーズの埋没率:約50%)に変更した以外は実施例1と同様に行なった結果、正確にコード情報を読み取ることが出来た。また、印刷した二次元コードは外観上目視でほとんど認識できず、再帰反射材の意匠性を損なうことはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態にかかる、情報を記録した積層材料の一例を示した図。
【図2】本発明の実施形態にかかる、情報を記録した積層材料の一例を示した図。
【図3A】透明樹脂層が設けられていない部分へ光が入射したときの説明図
【図3B】透明樹脂層が設けられている部分へ光が入射したときの説明図
【図4A】直線光の下で積層材料を観察したときの説明図。
【図4B】通常光の下で積層材料を観察したときの説明図。
【図5】本発明の実施形態にかかる情報読み取り装置の概略構成図。
【図6】二次元コードの一例。
【図7】二次元コードの一例。
【図8】バーコードの一例。
【符号の説明】
【0035】
10 情報を記録した積層材料
12 微小球固定層
14 反射層
16 透明樹脂層
18 透明微小球
20 固定樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明微小球の一部分が露出した状態で埋め込まれ、多数の透明微小球が整列配置された微小球固定層と、
前記透明微小球が露出した面の反対側に設けられ、該透明微小球を透過した光を反射する反射層と、
前記透明微小球が露出した側の微小球固定層の面上の少なくとも一部に設けられた透明樹脂層と、を備え、
前記透明微小球へ入射した光の少なくとも一部を略入射方向へ再帰反射させるように前記反射層は前記透明微小球の略焦点位置に設けられ、
前記透明樹脂層にて透明微小球の露出面が覆われていることで、その透明微小球の焦点位置を前記反射層の位置からずらして再帰反射率を低下させ、前記透明樹脂層が設けられた部分と設けられていない部分との再帰反射率の違いにより情報が記録されていることを特徴とする情報を記録した積層材料。
【請求項2】
請求項1に記載の積層材料において、
前記透明樹脂層は、可視光領域(波長400nm〜700nm)の光に対して、透過率が80%以上のものであることを特徴とする情報を記録した積層材料。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の積層材料において、
前記透明樹脂層により記録された情報がバーコードもしくは二次元コードであることを特徴とする情報を記録した積層材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の積層材料を貼付した物品。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の積層材料に光を照射し、その再帰反射光から積層材料に記録された情報を読み取ることを特徴とする情報読み取り方法。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を2光束に分割し、一方の光束を請求項1から3に記載の積層材料に照射するハーフミラーと、
前記積層材料からの再帰反射光を前記ハーフミラーを介して受光する光検出手段と、
該光検出手段からの検出信号に基き、前記積層材料に記録された情報を解析する解析手段と、を備え、前記光検出手段は前記ハーフミラーの面に対し、前記光源が配置された位置と反対側に設置されたことを特徴とする情報読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−192883(P2007−192883A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8583(P2006−8583)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】