説明

情報再生方法

本発明は、いくつかの情報レイヤを有する情報記録担体に記録された情報を、その担体に光を放射して再生する情報再生方法に関する。その担体は例えば光ディスクである。該方法は、1)情報記録担体に隣接配置された第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに光をフォーカスする段階と、2)前記情報記録担体からの反射光にラジアルトラッキングを行う段階と、3)ラジアルトラッキングにより光が、そのフォーカスされた光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する段階とを有する。一実施形態では、光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているかの評価により、その光がフォーカスしているレイヤを識別する。本発明は、本発明の方法を実施する光装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、いくつかの情報レイヤを有する情報記録担体に記録された情報を、その担体に光を放射して再生する情報再生方法に関する。その担体は例えば光ディスクである。本発明は、その情報再生方法を実施する手段を有する光装置にも関する。
【0002】
情報記憶容量の増え続ける需要に対応するため、DVD(digital versatile disc)やBD(Blu-ray Disc)等の光媒体の記憶容量は常に改善されている。記憶容量をさらに改善するため、デュアルレイヤの光媒体やマルチレイヤの光媒体も導入されている。
デュアルレイヤ(dual-layer)媒体やマルチレイヤ媒体における情報の記録再生は技術的には難しい課題である。光ハードウェアを本質的に余次元のバリエーション(an extra dimension of variation)に適応させなければならないからである。具体的な問題としては、レイヤ番号の識別情報を読み取ってから、そのレイヤに情報を読み書きしなければならないことがある。従来、光ディスクでは情報をセクタで構成している。そのセクタはディスクに記録できる最小単位である。各セクタは、データの実際の物理的なロケーションに関する情報(すなわち物理識別データ(PID))を含むヘッダ領域と、データ領域と、エラー訂正コード(ECC)領域とを有する。ヘッダ領域がレイヤ番号に関する情報を含んでいてもよいが、そうすると冗長となる。レイヤ番号は各セクタヘッダに格納されているからである。代替的または追加的に、セクタ情報とレイヤ情報はグルーブトラックまたはプリピット(pre-pits)のウォブルに格納することもできる。
【0003】
あるいは、物理アドレスと記録アドレスを増減することによりデュアルレイヤ光ディスクの情報レイヤを識別する方法が米国特許出願公開第2002/0176346号公報に記載されている。このように、アドレスの構成によりレイヤの識別情報を本日的に格納して、レイヤの識別情報自体を格納する必要性を無くす。その方法は、第1の情報レイヤと第2の情報レイヤが同心らせん(concentric spiral)に配置されているディスクであれば、らせんトラック方向が同じでも反対でも、そのディスクに適用できる。BDディスクの標準規格では、デュアルレイヤディスクのらせんはトラック方向が反対であり、その2つのレイヤ間の遷移時間を最小化している。
【0004】
しかし、この方法では、光ディスクから情報を再生する光装置がその情報再生に最適化されていなければならない。再生には、ディスク種別認識、球面収差補正、信号読み出しを可能とする閉ラジアルループトラッキングの最適化、トラッキング極性決定、プリグルーブ中のアドレス(ADIP)の読み出し試行、最適球面収差補正の反復等の準備ステップが含まれる。これらのステップは実際のレイヤ識別をする前に終了させなければならず、一部の準備ステップはレイヤが分からなければトライアンドエラーで行わねばならないので、比較的時間がかかる。それゆえ、情報再生前の準備ステップ(例えば、球面収差補正の繰り返し)はレイヤ番号が事前に分かっていれば潜在的には速くすることができる。レイヤ番号が分かっていれば、トラッキング極性の決定とレイヤ依存のフォーカスオフセットのプリセットは速くなるであろう。
【0005】
米国特許出願公開第2004/0095860号公報は、球面収差信号を、再生光束の中央位置と周辺位置におけるフォーカス位置変動信号間の差分信号として検出する方法を開示している。情報レイヤの区別は、あるレベルのゼロ交差点における球面収差の補正量または差分信号に関連する球面収差信号を用いて行われる。このように、この方法により、レイヤ自体から情報を再生することなしに、レイヤの識別情報を取得することができる。しかし、この方法は、球面収差信号を発生するためには、追加的に光学コンポーネントと電気回路を備えなければならず、比較的高価になり、実施形態が複雑になるという欠点がある。
【0006】
よって、改良された情報再生方法があれば有利であり、特に速くて信頼性の高い情報再生方法があれば有利である。
【0007】
従って、本発明は、好ましくは、単独でまたは組み合わされて、上記の1つ以上の不利な点を緩和もしくは解消するものである。特に、本発明の一目的は、先行技術の上記の問題を解決してマルチレイヤ情報記録単体中のレイヤを識別する情報再生方法を提供することである。
【0008】
この目的及びその他の目的は、本発明の第1の態様において、情報記録担体上に記録された情報を再生する情報再生方法であって、前記担体は複数の情報レイヤを有し、各レイヤは実質的に同心の1つ以上のらせん上に配置された情報を有し、前記再生は前記情報記録担体に光を放射することにより行われる方法により達成される。前記方法は、前記情報記録担体に隣接配置された第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに前記光をフォーカスする段階と、前記情報記録担体からの反射光にラジアルトラッキングを行う段階と、前記ラジアルトラッキングにより前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する段階とを有する。
【0009】
本発明は、入射光ビームに対する情報レイヤ中のらせんの方向を求めるのに特に有利であるが、これに限らない。例えば、第1の情報レイヤと第2の情報レイヤを有し、これらに相互に反対トラック方向に向いている2つのらせんが配置されているデュアルレイヤ情報記録担体の場合、らせんの方向を使用して直接的かつ絶対的に情報レイヤを識別することができる。第1の情報レイヤと第2の情報レイヤとが逆方向を向いているデュアルレイヤの場合、本発明により光がフォーカスされているレイヤの方向が分かる。第1の情報レイヤと第2の情報レイヤは反対方向のらせんを有するので、容易に区別することができる。これは情報再生に先立つ準備ステップにとって非常に有益である。その準備ステップは、情報レイヤが識別されていれば、加速することができる。例えば、準備ステップのトライアンドエラープロセスを短くしたり、無くしたりすることができる。本発明は、読み出し専用(ROM)、ライトワンス・リードメニー(WORM)、再書き込み可能(RE)等の様々なタイプの情報記録担体に適用することができる。
【0010】
しかし、本発明はデュアルレイヤ担体に限定されず、本発明の原理はマルチレイヤ情報記録担体、すなわち3つ、4つ、5つまたはそれ以上の情報レイヤを有する担体に適用することもできる。本発明の方法により情報のらせんの相対的な方向(すなわち、時計まわりか反時計回りか)を評価することができるので、その評価の結果には2通りある。1つの担体に3つ以上のレイヤがある場合、らせん方向の結果は絶対的な意味でレイヤを識別するためには十分ではない。それにもかかわらず、本発明は、マルチレイヤの情報記録担体のレイヤの識別に有利に適用することができる。第1に、例えば情報レイヤが3つある場合、真ん中の情報レイヤのらせん方向は、その上下の情報レイヤのらせん方向と反対であり得る。よって、少なくとも真ん中のレイヤは本発明により絶対的に識別することができる。
【0011】
第2に、マルチレイヤ情報記録担体の場合、2つのレイヤを区別すれば十分な場合がある。例えば、光がマルチレイヤ情報記録担体中の2つのレイヤの一方にフォーカスされていることが期待されているか、または分かっているが、その2つのレイヤのうちどちらに光がフォーカスしているか分からない場合である。このように、本発明の方法を2つ以上のレイヤ間の区別に適用できるので、本発明の場合、相対的な識別であってもレイヤの識別となっていると理解することができる。
【0012】
第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに光をフォーカスするステップは、場合に応じた任意的または故意的な選択の結果である。意図的に選択したキャプチャレイヤの場合でも、フォーカスキャプチャがうまくいっているか確認するチェックをする必要がある。また、本発明は、立ち上がりにおける情報再生・記録に先立つ準備ステップにおいて使用されるだけでなく、本発明は、情報の再生・記録を短い時間だけ中断するプロセス等の制御プロセスや、回復時、すなわち光ドライブが内的または外的影響により故障し、新たにレイヤの識別が必要になった場合にも使用することができる。
【0013】
各情報レイヤは1つ以上のらせんを有し、その1つ以上のらせんは情報を格納するピットまたはマーク等の光学的読み取り可能な効果を有する。1つのレイヤの1つ以上のらせんは、好ましくは同一方向であるが、反対方向であってもよい。このように、本発明により、1つのレイヤ内の様々ならせん方向も評価して、そのらせんを識別する役に立つ。
【0014】
本発明は、専用レンズ等のコリメート手段により、前記第1のレイヤと前記第2のレイヤの間の前記光記録担体中の一位置における光学収差を補正する初期段階をさらに有する。これは、担体のカバーレイヤ及び/または中間レイヤによる光学収差を補償及び/または無くすために行われる。これはフォーカスオフセットも除去または補償する。光学収差補正をする前記位置は、前記第1の情報レイヤと前記第2の情報レイヤに対して実質的に中間位置にあり得る。
【0015】
前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計まわりのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する段階は、前記情報記録担体上の前記フォーカスしている光の相対位置の増加ラジアル移動を測定する段階を有する。ラジアル移動の増分は、有利にもラジアル積分手段により測定することができる。代替的または追加的に、ラジアル移動の増分は、情報記録担体上の光の相対的な位置をずらすように構成された駆動手段から測定することができる。この測定は、例えば、前記駆動手段に関連またはこれ制御する電流または電圧を測定することにより行われる。
【0016】
ラジアル移動の増分の値を安定させるために、測定したラジアル移動の増分を情報記録担体の少なくとも一回転にわたって平均してもよい。さらにまた、担体に配置されたらせんが偏心している場合、かかる偏心はラジアル移動の増分の評価においては相殺または考慮され得る。
【0017】
本発明は、ラジアルトラッキングが、プッシュ・プル(PP)、差分プッシュ・プル(DPP)、及び差分位相検出(DPD)の非排他的群のうちの1つのラジアルトラッキング方法に基づく点で、特に有利である。他のラジアルトラッキング方法を本発明による機能に組み込むか適応させることも容易である。
【0018】
一実施形態では、第1のレイヤの少なくとも1つのらせんと第2のレイヤの少なくとも1つのらせんは、光に対して反対方向に向いている。例えば、1つのらせんは時計回りであり、もう1つのらせんは反時計回りである。これは、例えば、デュアルレイヤBDの標準規格の現在の状況である。このように、本発明は周知の標準規格に容易に適用または組み込みができる。
【0019】
本発明の場合、らせん方向はフォーカスされた光に対して評価される。かかる光は通常、担体平面に対して垂直なビーム方向を有する。しかし、同様にして、らせんの方向を一定の視点(例えば、その担体の片側)に対して評価することもできる。
【0020】
第2の態様では、本発明は、情報記録担体上に記録された情報を再生する、光情報担体から情報を再生及び/またはそれに情報を記録するように構成された光装置に関する。該装置は、前記情報記録担体に隣接配置された第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに前記光をフォーカスする手段と、前記情報記録担体からの反射光にラジアルトラッキングを行う手段と、前記ラジアルトラッキングにより前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する手段とを有する。
【0021】
本装置は、らせんの方向を光がフォーカスされているレイヤのアイデンティティの表示と関連付ける手段を有すると有利である。
【0022】
第3の態様では、本発明は、付随するデータ格納手段を有する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムに、第1の態様の情報再生方法により光学記録装置を制御させるように構成されたコンピュータプログラムに関する。
【0023】
本発明が、コンピュータシステムに本発明の第2の態様による装置の動作を制御させるコンピュータプログラム製品により実施できる点で、本発明のこの態様は特に有利であるが、これに限定はされない。このように、既知の光装置の一部はそれを制御するコンピュータシステムにコンピュータプログラム製品をインストールすることにより、本発明に従って動作するように変更できると思われる。かかるコンピュータプログラム製品はいかなる種類のコンピュータ読み取り可能媒体で提供してもよく、例えば、磁気ベースの媒体でも光ベースの媒体でもよいし、インターネット等のコンピュータベースのネットワークを介して提供してもよい。
【0024】
本発明の第1、第2、第3の態様は、他のどの態様と組み合わせることもできる。本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにし、説明する。
【0025】
添付した図面を参照して本発明を説明する。
【0026】
図1は、逆方向らせんを有する単体の2つの情報記録レイヤの概略分解図である。図示したように、記録レイヤL1、L0はそれぞれらせん40、41を有し、そのらせん40、41は反対方向である。このように、図1から分かるように、レイヤL1のらせん40は時計回りであり、レイヤL0のらせん41は反時計回りである。
【0027】
矢印45は情報再生時の担体1の回転を示している。以下の詳細な説明から明らかなように、光装置は担体1からの情報再生時、または情報再生の準備時に、担体1を回転させる。
【0028】
レイヤL1において示した第1の場合には、光は、最初の時間tにおいてレイヤL1上の光スポット46にフォーカスされている。光スポット46は、ラジアルトラッキングが行われているので、担体1が回転している間も、実質的にらせん40のトラック上に位置する。らせん40のトラックは、好ましくはデータのアドレス情報等の付加的情報を提供するために、ウォブル(wobbled)されていてもよい。しかし、図を分かりやすくするために、これは図1には示していない。回転方向45とらせん40の方向(すなわち時計回り)の組み合わせにより、フォーカスした光46は、後の時間tには、最初の時間tの位置よりも担体1の中心位置に近い位置にある。このように、光スポット46はレイヤL1を内側に向かって移動する。
【0029】
レイヤL0において示した第2の場合には、光は、最初の時間tにおいてレイヤL0上の光スポット47にフォーカスされている。光スポット47は、ラジアルトラッキングが行われているので、担体1が回転している間も、実質的にらせん41のトラック上に位置する。回転方向45とらせん41の方向(すなわち反時計回り)の組み合わせにより、フォーカスした光47は、後の時間tには、最初の時間tの位置よりも担体1の中心位置から遠い位置にある。このように、光スポット47はレイヤL1を外側に向かって移動する。
【0030】
図1において、本発明の原理が2つの実施形態により示されている。光スポット46、47は、それぞれのらせん40、41上を、2回転分(two revolutions)内側または外側に向けて移動している。しかし、これは単に例示を目的としたものである。実際、本発明の原理は1回転、3回転、4回転、5回転またはそれ以上の何回転の場合にも適用でき、また1/10回転、1/5回転、1/3回転等の1回転の一部分にも適用できる。ただし、らせん40、41のらせん方向を信頼性高く十分に評価できることが条件である。
【0031】
図2は、図1の分解図と同様に、2つのレイヤL1、L0を有する担体1の2つの情報記録レイヤの断面側面図を示している。このように、2つのレイヤL1とL0は反対向きのらせんを有している。
【0032】
図2において、フォーカスされた光ビーム5a(対物レンズ(図示せず)によりフォーカスされたレーザビーム等)が、光ビーム5aが担体1のカバーレイヤ48を通してレイヤL1上にフォーカスしている第1の場合を示している。担体1が回転するにつれ、光ビーム5aはレイヤL1のらせん40(側面図につき見えない)をトラッキングしつづけ、矢印70で示したように、担体1上を中心位置73に向かってラジアル方向内向きに移動する。
【0033】
同様に、ラバーレイヤ48と、レイヤL1とL0を隔てる中間レイヤ49とを通してレイヤL0上にフォーカスされた光ビーム5bが示されている。担体1が回転するにつれ、光ビーム5bはレイヤL0のらせん41(側面図につき見えない)をトラッキングしつづけ、矢印71で示したように、担体1上を中心位置に向かってラジアル方向内向きに移動する。光ビーム5aと5bは、図2では2つの別々のビームとして示されているが、一般的な光ドライブにおいては、主ビームは1つだけであり、その主ビームの焦点位置が可変である。すなわち、主ビームの位置はビーム5aに対応する位置からビーム5bに対応する位置に、及びその逆に変化する。
【0034】
光ビーム5aまたは5bのラジアル方向の移動は、図2に示したように半径座標系を導入すれば容易に定量化できる。半径座標系の原点(origo)Oは、実質的に担体1の中心位置にある。光ビーム5aまたは5bは、動径座標rにより記述される。ラジアル位置rの増分Δrは次式で与えられる:
Δr=r(t)−r(t)、
ここで、tは最初の時間であり、tはその後の時間である。よって、内向きの移動の場合、増分Δrは負であり、外向きの移動は正の増分Δrを有する。増分Δrは、電気的手段、機械的手段などの様々な手段により、差分時間(すなわち、Δt=t−t)または担体1の回転等の時間にわたって平均してもよい。これは、本発明の一般的な原理を理解した当業者によって容易に実行できる。以下に説明するように、例えば、ラジアルトラッキングから得られるまたはそれに付随する値または信号を測定することにより、増分Δrは間接的な方法でも求めることができる。
【0035】
図3は、光記録担体1を有する、本発明の第2の態様による光装置を示す図である。担体1は保持手段30により固定され回転される。
【0036】
担体1は、放射手段5により情報を記録するのに好適な材料を含んでいる。記録材料は、例えば、光磁気タイプ、相変化タイプ、色素タイプ、Cu/Si等の合金、その他の好適な材料である。情報は担体1上の光学的に検出可能な領域であり、その領域は再書き込み可能媒体ではマークと呼ばれ、ライトワンス媒体ではピットと呼ばれている。あるいは、読み出し専用媒体と同様に、アルミまたは銀等でできた反射レイヤ中の突起部により光学的に読み出し可能な効果が得られる。
【0037】
本装置は光学ヘッド20を有する。その光学ヘッド20は電気的ステッピングモータ等の駆動手段21により移動できる。光学ヘッド20は光検出システム10、放射源4、ビームスプリッタ6、対物レンズ7、及びレンズ移動手段9を有する。ビームスプリッタ6は、反射光8を光検出手段10に分岐するものであり、偏光タイプでも非偏光タイプでもよく、ホログラムでも格子でもよい。光学ヘッド20もビームスプリット手段(図示せず)を有する。そのビームスプリット手段は、格子またはホログラムパターンであり、放射ビーム5を3スポット差分プッシュ・プルラジアルトラッキング制御法に使用する少なくとも3つの成分に分離することができる。図を分かりやすくするため、放射ビーム5は単一のビームとして示した。同様に、反射された放射8の成分は1つより多いが、図3には図を分かりやすくするため、1つのビーム8しか示していない。レンズ移動手段9はいわゆる3次元タイプであり、レンズ7を焦点方向(z方向)に移動できるのはもちろんのこと、レンズ7を担体1のラジアル方向でも移動することができる。また、レンズ移動手段9は、担体1の「アンブレラ状」欠陥等を補償するために、担体1に実質的に平行な平面中の担体1のラジアル方向と直交する方向の軸の回りで、レンズ7を少し旋回すなわち傾けることができる。
【0038】
光学ヘッド20はコリメータ手段すなわちコリメータレンズ22も有する。そのコリメータレンズ22は、放射源4から放射された分岐光5を点源から平行ビーム5に変換する。しかし、これは、図3では図を分かりやすくするため示していない。コリメータレンズ22は、専用の駆動手段23すなわち電気的ステッピングモータにより、実質的にビーム5の光軸に沿って移動可能である。このことにより、図2に示したカバーレイヤ48と中間レイヤ49により生じる球面収差を補償することができる。本発明の一実施形態では、コリメータ手段は中間位置にプリセットされ、好ましくは中間レイヤ49の中間にプリセットされている。例えば、レイヤL1が、光5が担体1に入射する表面から75マイクロメートルの距離にあり、レイヤL2が、光5が担体1に入射する表面から100マイクロメートルの距離にある場合、コリメータレンズ22は約87.5マイクロメータの距離を補償するように設定され得る。これは、もちろん球面収差を補償するには最適な距離ではないが、情報再生を開始する前の立ち上がり時には、光ビーム5がフォーカスしているレイヤがどれか正確には分からないので、最良の解決策としてはレイヤL1とL0の中間の補償距離となるであろう。コリメータ手段はフォーカスオフセットをある程度補償すなわち訂正することができる。
【0039】
図3に示した実施形態では、コリメータ手段はコリメータレンズであるが、コリメータ手段は対物レンズ7の前に配置された1つ以上の液晶(LC)セルを有していてもよく、ビームスプリッタ6と対物レンズ7との間に配置された1つ以上の望遠レンズを有していてもよい。
【0040】
光検出システム10の機能は、担体1により反射された放射8を電気信号に変換することである。よって、光検出システム10は、1つ以上の電気的出力信号を発生できる光ディテクタ(例えば、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)等)を有する。その電気的出力信号はプリプロセッサ11に送られる。フォトディテクタは、互いに空間的に放されて構成され十分な時間分解能を有しており、プリプロセッサ11においてフォーカスエラーとラジアルトラッキングエラーとを検出できるようになっている。これは、米国特許出願公開第2004/0095860号公報で示された光ドライブ装置と同様である。このように、プリプロセッサ11は、プロセッサ50にフォーカスエラーとラジアルトラッキングエラーとを送る。光検出システム10は、担体1から読み出される情報を表す読み出し信号すなわちRF信号を、プリプロセッサ11を介してプロセッサ50に送ることができる。
【0041】
ラジアル方向のエラー、すなわち意図されたラジアル位置または理想的なラジアル位置に対する実際のラジアル位置のずれを求める方法はいくつかある。そのうちの1つは、プッシュ・プル(PP)法である。この方法では、光再生装置の光センサにおいて検出された光信号間のレベル差に基づき、トラッキングエラー信号を発生する。その他、時間差(または位相差)検出(DTD)法がある。この方法では、光再生装置の光センサで検出された光信号間の位相差を使用してラジアルトラッキングエラー信号を発生する。DTD法はBraat氏により開発されたものであり、米国特許第4,057,833号公報に開示されている。最新式の差分PP法は3スポット法を使用する。この3スポット法では、主光ビームが情報トラックを追い、2つの周辺光ビームがその情報トラックに対して反対方向にシフトされる。しかし、本発明においては、閉ループ制御機構によりラジアルトラッキングを行い、フォーカスされた光5を担体1上の意図されたラジアル位置に留める好適な方法であれば、いかなる方法を使用してもよい。
【0042】
放射ビーム5を放射する放射源4は例えば半導体レーザ等であり、出力が可変であり、放射波長も可能であれば可変である。あるいは、放射源4は1つ以上のレーザを有していてもよい。
【0043】
光学ヘッド20の光学的構成は、放射ビーム5が、コリメータレンズ22とビームスプリッタ6と対物レンズ7とを介して、光担体1に行くようになっている。担体1により反射された放射8は、対物レンズ7により集められ、ビームスプリッタ6を通って、光検出系10に当たる。その光検出系10は、上記の通り、入射する放射8を電気出力信号に変換する。
【0044】
プロセッサ50は、プリプロセッサ11からの出力信号を受けて、これを分析する。プロセッサ50は、図1に示したように、駆動手段21、放射源4、レンズ移動手段9、コリメータ駆動手段23、プリプロセッサ11、及び保持手段30に制御信号を出力する。同様に、プロセッサ50は、担体1に書き込む情報等のデータ(61で示した)を受け取り、読み出しプロセスによるデータ(60で示した)を出力する。
【0045】
らせん方向の評価は上記の通りラジアルトラッキングに基づき行われる。しかし、この評価はいろいろな方法で行うことができる:
第1に、プロセッサ50は積分器または合計回路51を有する。その回路51は、所定時間及び/または担体1の回転にわたってプリプロセッサ11から受け取ったラジアルトラッキングエラー信号を合計する。積分器51、光5がフォーカスされたらせんの方向に応じて、好ましくは極性信号(±1、0/1等)等である信号を出力する。
【0046】
第2に、プロセッサ50からラジアル駆動手段21に送られた制御信号の平均電流を測定し、これを光5がフォーカスされているらせんの方向の表示信号として使用する。実用上の理由から、ラジアル駆動(actuation)は、比較的粗いスレッジモータ等であるラジアル駆動手段21と、レンズ移動アクチュエータ9を用いたレンズ7のより繊細なラジアル方向の移動との両方により行われる。ファインチューニングアクチュエータ9とスレッジモータ21の両方、特にこれらの制御電流及びパワー電流を、光5がフォーカスしているらせんの向きを評価するために利用できる。上記の電流の測定はいずれも当業者に周知の手段により容易に測定することができる。例えば、専用のアンペアメータを挿入すればよい。
【0047】
図4は、本発明の第1の態様による情報再生方法を示すフローチャートである。
【0048】
第1のステップS1において、光5を第1の情報レイヤL1または第2の情報レイヤL0にフォーカスする。第1のレイヤL1と第2のレイヤL0は、図2に示すように、情報記録担体中に隣接して配置されている。
【0049】
第2のステップS2において、上記の通り、情報記録担体1からの反射光8に基づきラジアルトラッキングを実行する。よって、フォーカスされた光5は、閉ループ制御機構によりトラック上に留まる。そのトラックは図1に示したらせん40または41として配置されている。
【0050】
第3のステップS3において、ラジアルトラッキングを利用して、光5がその光5に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんのいずれにフォーカスしているか評価する。これは、一実施形態では、積分回路51において、プロセッサ50に送られたラジアルエラートラッキング信号を積分して、好ましくは平均することにより行われる。
【0051】
らせん40または41の方向に応じて、時計回り(S5)または反時計回り(S4)を示す値が求まる。
【0052】
第6のステップS6において、らせん方向を示す値を利用して、光5がフォーカスされているレイヤL1またはL0を識別する。これは絶対的な方法または相対的な方法で行うことができる。後者は3つ以上のレイヤを有する担体等に対応している。
【0053】
具体的な実施形態に関して本発明を説明したが、ここに記載した具体的な形式に限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の範囲は添付した請求の範囲のみにより限定される。請求項では、「有する」という用語は他の要素やステップの存在を排除するものではない。また、個々の機能(feature)は異なる請求項に含まれていても、これらを有利に組み合わせることが可能であり、異なる請求項に含まれていても、機能を組み合わせられないとか、組み合わせても有利ではないということを示唆するものでもない。また、単数扱いをしても複数の場合を排除するものではない。よって、「1つの」、「第1の」、「第2の」等は複数の場合を排除するものではない。さらにまた、請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】逆方向らせんを有する担体の2つの情報記録レイヤの概略分解図である。
【図2】逆方向らせんを有する担体の2つの情報記録レイヤの断面側面図である。
【図3】本発明の第2の態様による光装置を示す図である。
【図4】本発明の第1の態様による情報再生方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録担体上に記録された情報を再生する情報再生方法であって、前記担体は複数の情報レイヤを有し、各レイヤは実質的に同心の1つ以上のらせん上に配置された情報を有し、前記再生は前記情報記録担体に光を放射することにより行われ、前記方法は、
前記情報記録担体に隣接配置された第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに前記光をフォーカスする段階と、
前記情報記録担体からの反射光にラジアルトラッキングを行う段階と、
前記ラジアルトラッキングにより前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する段階とを有する方法。
【請求項2】
前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているかの評価により前記光がフォーカスしているレイヤを識別する、請求項1に記載の情報再生方法。
【請求項3】
前記第1のレイヤと前記第2のレイヤの間の前記光記録担体中の一位置における光学収差を補正する初期段階をさらに有する、請求項1に記載の情報再生方法。
【請求項4】
光学収差補正をする前記位置は前記第1のレイヤと前記第2のレイヤに対して実質的に中間位置にある、請求項3に記載の情報再生方法。
【請求項5】
前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計まわりのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する段階は、前記情報記録担体上の前記光の相対位置の増加ラジアル移動を測定する段階を有する、請求項1に記載の情報再生方法。
【請求項6】
前記増加ラジアル移動はラジアル積分手段により測定される、請求項5に記載の情報再生方法。
【請求項7】
前記増加ラジアル移動は前記情報記録担体上の前記光の相対位置を移動するように構成されたアクチュエーション手段により測定される、請求項4に記載の情報再生方法。
【請求項8】
測定された前記増加ラジアル移動は前記情報記録担体の少なくとも1回転にわたり平均化される、請求項5ないし7いずれか一項に記載の情報再生方法。
【請求項9】
前記情報記録担体からの前記反射光に実行されたラジアルトラッキングは、プッシュ・プル、差分プッシュ・プル、及び差分層検出のグループに含まれるラジアルトラッキング方法に基づく、請求項1に記載の情報再生方法。
【請求項10】
前記第1のレイヤの少なくとも1つのらせんと前記第2のレイヤの少なくとも1つのらせんは、前記光に対して反対方向に向いている、請求項1に記載の情報再生方法。
【請求項11】
光情報担体に情報を記録再生するように構成された光装置であって、
前記情報記録担体に隣接配置された第1の情報レイヤまたは第2の情報レイヤに前記光をフォーカスする手段と、
前記情報記録担体からの反射光にラジアルトラッキングを行う手段と、
前記ラジアルトラッキングにより前記光がその光に対して時計回りのらせんと反時計回りのらせんとのいずれにフォーカスしているか評価する手段とを有する装置。
【請求項12】
付随するデータ格納手段を有する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムに、請求項1に記載の情報再生方法により光学装置を制御させるように構成されたコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−524761(P2008−524761A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546261(P2007−546261)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054180
【国際公開番号】WO2006/067666
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】