説明

情報再生装置、情報再生方法、及び光ディスク媒体

【課題】超解像光ディスクの再生信号を、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価することで、精度良く情報の再生を行なう。
【解決手段】回折限界よりも小さいピッチの記録マークにより情報が記録された光ディスク15からの反射光に基づいて生成されたRF信号は、波形等価回路65により中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性(例えばPR(1,1,4,4,1)等)に波形等価される。これにより、回折限界より小さいピッチで記録された情報を、非対称な形状の光スポットを用いて超解像再生する場合に、アナログ再生信号(RF信号)の特性とパーシャルレスポンス特性(PR(1,1,4,4,1))とが効果的に整合し、結果的に、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生装置及び情報再生方法、並びに光ディスク媒体に係り、さらに詳しくは、光ディスク媒体に記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置及び情報再生方法、並びに前記情報再生装置又は情報再生方法に用いられる光ディスク媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進歩やデータの圧縮技術の向上などにともない、光ディスクの大容量化が要求されている。この要求に対する主な方策としては、情報の再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくし、光学系の解像度を向上させることが考えられる。
【0003】
例えば、DVD(digital versatile disc)などよりも記録容量の大きなBD(Blue-ray disc)などの光ディスクに対し情報の再生及び記録を行なう光ディスク装置などでは、波長が390nmから420nm程度のレーザ光を、開口数が0.70から0.90程度の対物レンズで集光することにより、光ディスクの記録層上に形成されるレーザ光のスポット径を0.48μm程度まで絞りこみ、例えば0.160μmから0.138μm以下の直径の記録マークによる情報の読み出し、及び書込みが可能になっている。
【0004】
しかしながら、光ディスクに用いられるポリカーボネイト材料の透過性などの問題から、これ以上のレーザ光の短波長化や、対物レンズの高NA化を行なうことは困難であるため、最近では、光記録の分野において、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報の再生(以下、「超解像再生」という)が可能な光ディスク(以下、「超解像光ディスク」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。この超解像光ディスクは、レーザ光が照射されると、例えばその光学定数(例えば、屈折率実部n、及び屈折率虚部k)が変化する材料を含む超解像層を有しており、この超解像層に再生用のレーザ光が集光されたときの上記光学定数の変化に起因して、光スポット内に微小マスク領域あるいは微小開口領域が形成されることにより、超解像再生を可能とするものである。
【0005】
また、近年光ディスク装置のデジタル情報再生装置において、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式を採用することが広く行われている。これは、デジタル情報を記録する記録媒体の記録密度が高くなるにつれて、デジタル情報1ビットの読み込み信号を、その隣接するビットによる影響(符号間干渉)無しに読み込みにくくなったことに起因するものである。
【0006】
パーシャルレスポンス方式は、波形等価処理部において積極的に既知の線形な波形干渉を作り込むことにより、等価復号処理による信号性能の劣化を防ぐものであり、最近では、このパーシャルレスポンス方式に、最尤推定法であるML(Maximum Likelihood)方式を組み合わせることにより、更に高精度な信号処理を可能としたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が実用化されている。
【0007】
従来から、パーシャルレスポンス方式では、再生系の特性と合致させたパーシャルレスポンス特性を選択することで、ノイズを低減しビットエラーレートを改善することが知られており、例えば特許文献5に示されているように、5ビットまでのPR特性の例では、PR(a,a)、PR(a,b,a)、PR(a,b,b,a)、PR(a,b,c,b,a)、PR(a,b,b,b,a)、及びPR(a,a,b,a,a)(a,b及びcは任意の実数)など、中央を原点として対称形で表されるパーシャルレスポンス特性を有する信号処理装置が用いられてきた。しかしながら、上述した対称形で表されるパーシャルレスポンス特性は、非対称な形状の光スポットで読み出される特許文献1〜4に開示されているような超解像光ディスクからのアナログ再生信号の特性に整合しているとは言い難く、結果的に再生系の特性とパーシャルレスポンス特性との間に不整合が生じていた。そして、その結果ビットエラーレートの上昇を招いていた。
【0008】
【特許文献1】特開平6−183152号公報
【特許文献2】特開平5−205314号公報
【特許文献3】特開平11−250493号公報
【特許文献4】特開2001−250274号公報
【特許文献5】.特許第3696130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能な情報再生装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能な光ディスク媒体を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第3の目的は、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能な情報再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;を備える情報再生装置である。
【0013】
これによれば、信号生成手段により、回折限界よりも小さいピッチの記録マークにより情報が記録された光ディスクからの反射光に基づいて生成されたRF信号は、波形等価器により中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価される。したがって、回折限界より小さいピッチで記録された情報を、非対称な形状の光スポットを用いて超解像再生する場合に、アナログ再生信号の特性とパーシャルレスポンス特性とが整合し、結果的に、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0014】
本発明は第2の観点からすると、本発明の情報再生装置に用いられる光ディスク媒体であって、回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に最適なパワー又は線速度、及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと;前記パーシャルレスポンス特性に関する情報と;を有する光ディスク媒体である。
【0015】
これによれば、光ディスク媒体は、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に関する情報を有している。これにより、光ディスク媒体に対して超解像再生が行なわれる際に、光ディスクから読み取られたRF信号が、光ディスク媒体に記録されたパーシャルレスポンス特性に関する情報に基づいて波形等価されることで、アナログ再生信号の特性とパーシャルレスポンス特性とが整合する。したがって、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0016】
本発明は第3の観点からすると、情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;前記RF信号を、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;を含む情報再生方法である。
【0017】
これによれば、回折限界よりも小さいピッチの記録マークにより情報が記録された光ディスクから読み取られたRF信号は、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価される。したがって、回折限界より小さいピッチで記録された情報を、非対称な形状の光スポットを用いて超解像再生する場合に、アナログ再生信号の特性とパーシャルレスポンス特性とが整合し、光ディスクに回折限界よりも小さいマークで記録された情報を、精度良く再生することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0019】
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23を光ディスク15の半径方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、光ディスク15は、一例として図2に示されるように、1組の透明基板15a,15eに挟まれる形で、回折限界よりも小さいピッチの記録マークにより情報が記録されている記録層15c、光を反射する反射層15b、及び温度により光学定数が変化する材料を含む超解像層15dを有し、超解像再生が可能な超解像光ディスクであるものとする。
【0020】
図1に戻り、前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15にレーザ光を照射するとともに、光ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、光ディスク15に対応する波長のレーザ光を出射する光源と、該光源からの光を光ディスク15に集光する対物レンズを含み、光ディスク15で反射され対物レンズを介した戻り光を所定位置に導く光学系と、前記所定位置に配置され前記戻り光を受光する複数の受光領域を有する受光器と、対物レンズを微小駆動する駆動系(いずれも図示省略)などを備えている。受光器の各受光領域は、それぞれ受光光量に応じた信号(光電変換信号)を再生信号処理回路28に出力する。また、駆動系は、対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及び対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータを有している。ここでは、一例として光源から出射されるレーザ光の波長を635nm、対物レンズの開口数(NA)を0.6とする。この場合の回折限界は約530nm(レーザ光の波長/2NA)である。
【0021】
ところで、光ピックアップ装置23を用いて光ディスク15に400nmピッチで形成されている記録マーク(記録マーク長=200nm)を再生したときのCNR(キャリア/ノイズ比)と再生パワーPrとの関係が一例として図3に示されている。図3では、再生パワーPrが2mW以上では、CNRが30dBを超えており、超解像再生が可能であることが分かる。なお、以下では、超解像再生が可能な再生パワーを「超解像再生パワー」ともいう。
【0022】
光ディスク15に超解像再生パワーのレーザ光が集光されると、その部分の温度が上昇し、光スポット内に、一例として図4(A)に示されるように、超解像層15dに形成されたビームスポットBS内に微小開口領域HA、あるいは、一例として図4(B)に示されるように微小マスク領域MAが生じる。微小開口領域HA及び微小マスク領域MAは、いずれも光スポットの進行方向と反対の方向に尾を引いた形状を有している。なお、微小開口領域HA及び微小マスク領域MAのどちらが生じるかは、超解像層の材料や層構成に依存している。
【0023】
微小開口領域HAが生じる場合には、記録マークが微小開口領域HAに含まれるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。一方、微小マスク領域MAが生じる場合には、記録マークが微小マスク領域MAによってマスクされるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。例えば、マスク領域MAが生じる場合には、一例として図5に示されるように、光軸をAXとするレーザ光23aが照射されることによる加熱に起因して、超解像層15cの光学定数が変化する。その結果スポット後方部にマスクMAが形成され、その部分の反射層15bからの反射率が低下する。超解像層15dの入射側表面PLでの光強度分布を考えると、図5の曲線L1で示される入射光は対称な光スポット形状を有しているが、曲線L2で示される反射光は非対称な光スポット形状(状態)となる。
【0024】
一例として図6には超解像層15dの入射側表面PLにおける反射光の光強度分布の再生パワー依存性が示されている。なお、図6では光スポットの中心位置を基準(原点)としている。これによると、再生パワーPrを超解像再生パワーまで上げると、光スポット後方がマスクされ、反射光の光強度分布が後部から削れた形状に変化している。したがって、光ディスク15を超解像再生する際には、記録層15cに記録された情報を、図6に示されるような非対称な形状の光スポットで読み出すことになり、光ディスク15からの、例えばRF信号等の読み込み信号には位相歪みが存在する。
【0025】
そこで、光ディスク装置のデジタル情報再生装置において、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式を採用することが広く行なわれている。これは、デジタル情報を記録する記録媒体の記録密度が高くなるにつれ、デジタル情報1ビットの読み込み信号を、その隣接するビットによる影響(符号間干渉)無しに読み込みにくくなったことに起因するものである。
【0026】
PR方式は、波形等価処理部において積極的に既知の線形な波形干渉を作り込むことにより、等化復号処理による信号性能の劣化を防ぐものであり、最近ではPR方式に最尤推定法であるML(Maximum Likelihood)方式を組み合わせることにより、高精度な信号処理を可能としたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が実用化されている。
【0027】
また、従来から5ビットまでのPR特性をもつ信号処理装置としては、PR(a,a)、PR(a,b,a)、PR(a,b,b,a)、PR(a,b,c,b,a)、PR(a,b,b,b,a)、及びPR(a,a,b,a,a)、(a,b,c=任意の実数)など、中央を原点として対称な形で表されるPR特性(以下単に、対称形PR特性という)を有する装置が用いられてきた。しかしながら、上述した超解像再生においては、光ディスクからの情報は非対称な形状の光スポットで読み出されるものであるため、結果的に信号処理装置のPR特性とアナログ再生信号の特性に不整合が生じていた。
【0028】
なお、上述した対称形PR特性は、nビットのパーシャルレスポンス特性がPR(PR1,PR2,PR3,…,PRn)で示され、nが偶数であるときは、次式(1)の条件が成立し、nが奇数であるときは次式(2)の条件が成立する特性であるものとする。これに対し、中央を原点として非対称なPR特性(以下単に、非対称形PR特性という)とは、式(1)及び式(2)の条件が成立しない特性をいうものとする。そして、本実施形態の光ディスク装置20では、一例として、光ディスク15に対し、PR特性がPR(1,1,4,4,1)であるPRML方式を適応させることにより、ビットエラーレートを改善することとする。
【0029】
【数1】

【0030】
【数2】

【0031】
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、アンプ28a、サーボ信号生成回路28b、ウォブル信号生成回路28c、RF信号生成回路28d、及びデコーダ28eなどから構成されている。
【0032】
アンプ28aは、光ピックアップ装置23の受光器からの複数の光電変換信号をそれぞれ電圧信号に変換するとともに、所定のゲインで増幅する。
【0033】
サーボ信号生成回路28bは、アンプ28aの各出力信号に基づいてサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号など)を生成する。ここで生成されたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力される。
【0034】
ウォブル信号生成回路28cは、アンプ28aの各出力信号に基づいてウォブル信号を生成する。
【0035】
RF信号生成回路28dは、アンプ28aの各出力信号に基づいてRF信号を生成する。
【0036】
デコーダ28eは前記ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号は駆動制御回路26に出力される。
【0037】
また、デコーダ28eは前記RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。
【0038】
図7はデコーダ28eのブロック図である。図7に示されるようにデコーダ28eは、ハイパスフィルタ(HPF)60、等価回路61、ADコンバータ(A/D)62、非対称FIRフィルタ63、インターポレータ64、等価回路65、ビタビ復号器56、及びPLL67などを備えている。
【0039】
等価回路61はHPF60の後段に配置され、RF信号生成回路28dから入力され、HPF(ハイパスフィルタ)60により低周波ノイズが除去されたRF信号の、光学系によるMTF(modulation transfer function)の低下により減衰した高域成分を強調し符号間干渉を低減する。なお、等価回路61は、A/D62でのAD変換時にエイリアシングノイズが起こらないように高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF)の役割も兼ねている。
【0040】
A/D62は、等価回路61の後段に配置され、等価回路61の出力信号をデジタル信号に変換(AD変換)する。
【0041】
非対称FIRフィルタ63は、タップ中心を原点として非対称な等価係数を持つFIRフィルタであり、A/D62の出力信号に対してフィルタ処理を行い、前述した超解像光ディスクに形成される光スポットの非対称性に起因するRF信号の位相歪みを補正する。
【0042】
インターポレータ64は、A/D62の出力信号あるいは非対称FIRフィルタ63の出力信号が入力され、前後2つ以上の時間のサンプル値から、クロックタイミングにおけるサンプル値を補間する。
【0043】
PLL67は、インターポレータ64の出力信号から光ディスク15に記録されている信号のクロック(以下「再生クロック」ともいう)を再生し、インターポレータ64に前記クロックタイミングを指示する。すなわち、インターポレータ64とPLL67の組み合わせで、再生クロックに同期したサンプリングが行われる。
【0044】
等価回路65は、インターポレータ64の後段に配置され、インターポレータ64の出力信号に対して、所望のPR(Partial Response)特性に応じた応答となるように波形等価を行う。なお、前記所望のPR特性は、例えば超解像再生を行なう際には例えばPR(1、1、4、4、1)とする。なお、等価回路65のPR特性は、超解像再生を行なう際には例えばPR(1、1、4、4、1)とし、それ以外の再生(超解像再生以外の再生)を行なう場合には、例えばPR(1、2、2、2、1)等のPR特性に切り替えることとしてもよい。
【0045】
ここで、等価回路65において、非対称形PR特性へ波形等価を行なうことは、RF信号に位相歪みを付加していることと等価である。位相歪みを付加されたRF信号からクロック信号を抽出することは困難であるため、クロック信号は等価回路65を経由する前のRF信号から抽出することが重要である。
【0046】
ビタビ復号器56は、詳細については後述するが、等価回路65の後段に配置され、等価回路65の出力信号に対して、最尤(maximum likelihood)復号方式であるビタビ(Viterbi)復号方式で復号処理を行い2値化データを出力するビタビ復号器である。すなわち、ここでは、等価回路65とビタビ復号器56とで、パーシャルレスポンス方式と最尤復号方式とを組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式の信号処理を行っている。
【0047】
図1に戻り、前記駆動制御回路26は、対物レンズ60の位置ずれを補正するため、再生信号処理回路28からのサーボ信号に基づいて、光ピックアップ装置23の駆動系の駆動信号を生成する。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0048】
前記バッファRAM34には、光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0049】
前記レーザ制御回路24は、光ピックアップ装置23の光源の発光パワーを制御する。
【0050】
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0051】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、光ピックアップ装置23の光源の発光特性、後述する等価係数情報などが格納されている。
【0052】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0053】
《PRML方式の説明》
次に、前述のビタビ復号器56でのRPML方式による複合方法について説明する。なお、ビタビ復号器56の説明は、一例としてPR特性がPR(1,1,4,4,1)、最小反転間隔が2Tであるものとして説明するが、PR特性はPR(1,1,4,4,1)に限られるものではなく、非対称形PR特性であればよい。
【0054】
図8には、ビタビ復号器56のブロック図が示されている。図8に示されるように、ビタビ復号器56はブランチメトリック計算器70、ACS演算器71、パスメモリ72、出力選択器73、及びパスメトリックメモリ74を備えている。また、上記のように構成されるビタビ復号器56はPRクラスがPR(1,1,4,4,1)であるため、4ビットのビット列でそれぞれ表される10個の状態(ステート)S0000〜S1111と、各ステートS0000〜S1111に対応する16本の枝(ブランチ)B(n)(n=1,2,…,16)を有している。そして、各ステートS0000〜S1111間の状態遷移は図9に示されるトレリス線図で表される。
【0055】
前記ブランチメトリック計算器70は、現時点(図9の時刻t−1)における各ステートから時刻tにおける各ステートまでのブランチの目標値と、入力信号とのユークリット距離(ブランチメトリックBM)の計算を行なう。詳述すると、各ブランチB(n)での目標値はPRクラスと、各ブランチに相当するビット列により規定される値となり、各ブランチB(n)のブランチメトリックBM(n)は以下の式(3)で表される。
【0056】
BM(n)=(PP(n)×PR−RF) …(3)
ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[11441]であり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列であり、例えばブランチB(n)に対応する遷移前の状態を示す4ビットのビット列に、遷移後のビット列の先頭の1ビットを加えた5ビットのビット列で表される。ブランチメトリック計算器70は上記式(3)に基づいて、16個のブランチメトリックBM(n)を計算する。なお、式(3)中の×は行列の掛け算を示す。
【0057】
前記ACS(Add-Compare-Select)演算器71は、パスメトリックメモリ74に記憶された時刻t−1における各ステートS0000〜S1111ごとのパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を読み出して、ブランチメトリック計算器70により計算された時刻t−1から時刻tまでのブランチメトリックBM(n)に対応するパスメトリックPMt−1(0000)〜PMt−1(1111)を加算して、加算値PM’(n)を算出する。
【0058】
そして、図9のトレリス線図の時刻tにおける各ステートS0000〜S1111に合流するパスが2本ある場合には、その2本のパスに対応するパスメトリックどうしを比較して、小さい方のパスメトリックに対応するパスを時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、各ステートS0000〜S1111に合流するパスが1本である場合にはそのパスを無条件に時刻tにおけるステートの生残りパスと判断し、それぞれの判断結果をパスメモリ72に記録する。これによってパスメモリ72には、上記のようにACS演算器71による判断結果が順次記録され過去の生残りパスが履歴として記録される。また、ACS演算器71は並行して生残りパスに対応する加算値PM’(n)を時刻tにおける新たなパスメトリック値として、パスメトリックメモリ74のパスメトリックPM(0000)〜PM(1111)の値を更新する。
【0059】
図10は、パスメモリ72のブロック図である。パスメモリ72は、PRクラスによって決まるステートと同じ数のシフトレジスタを備えている。本実施形態ではPRクラスが5ビットのPR(1,1,4,4,1)であるから、10個のシフトレジスタを備えるパスメモリセル90〜9016を有している。各パスメモリセル90〜9016のシフトレジスタは、ACS演算器71での判断結果を1時刻ごとに、次のパスメモリセルへシフトしながら保持する。その際。ACS演算器71から出力された推定結果に従い、選択された生残りパスの1時刻前の状態に対応する推定結果がコピーされる。これにより、後段のパスメモリセルにおいては、判断に伴うパスの選択により生残りパスが次第に少なくなり、最終段のパスメモリセル9016のシフトレジスタに残る推定結果はおおむね同じ結果となる。すなわち、パスマージが完了する。
【0060】
図8に戻り、出力選択器73は、パスメモリ72に記録された生残りパスの履歴から、最小のパスメトリック値に対応する、つまり尤も確からしい1本の生残りパスを選択し、そのパスに相当する2値化データを判定値として出力する。なお、パスメモリ72のパスメモリセルの数が十分である場合で、RF信号の品質が良好な場合にはパスメモリ内の複数のシフトレジスタの最終段に残る結果はおおむね同じ結果になるため、この場合は出力選択器73は必ずしも必要とはされない。
【0061】
《効果の説明》
図11(A)〜図13に示されるグラフは、最短記録マーク長が147nmである記録マークで記録された超解像光ディスクの再生信号に対して、ランダムに5ビットのPR特性を変化させてビットエラーレート(BER)の変化を観測し、観測により得られたビットエラーレート(BER)に対する各ビットにおけるそれぞれのPR特性を示すグラフである。つまり、各グラフ中のPR特性はPR特性の要素値の和で正規化したものであり、図11(A)は、PR特性がPR(a,a,a,a,a)と表される場合において、1ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートとの相関を示すグラフであり、図11(B)は、2ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図12(A)は、3ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図12(B)は4ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図13は、5ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフである。なお、各グラフ中に示される直線は、各観測点を一次近似することに得られた近似直線である。
【0062】
等価回路のPR特性を選択する際には、波形等価したときの各ビットにおけるビットエラーレート(BER)が小さいほど好ましい。そこで、各グラフにおいて、ビットエラーレート(BER)が小さくなる縦軸近傍の近似直線で示されるa/(a+a+a+a+a)(i=1〜5)の値をみると、各ビットにおけるa/(a+a+a+a+a)の値はおおよそ次表1のようになる。
【0063】
次表1から1ビット目と5ビット目とを比較するとa/(a+a+a+a+a)の値はほぼ同等となっているが、2ビット目と4ビット目とを比較するとa/(a+a+a+a+a)の値は、a/(a+a+A+a+a)の値の4倍程度となっていることがわかる。これは、超解像光ディスクからの再生信号が、2ビット目と4ビット目に関して非対称なPR特性に対応していることを意味している。
【0064】
【表1】

【0065】
次表2には、一例として超解像光ディスクに対して超解像再生を行なったときに、ビットエラーレート(BER)が少なかった2つの対称形PR特性におけるビットエラーレート(BER)の値と、7つの非対形PR特性におけるビットエラーレート(BER)の値とが示されている。次表2にから明らかなように、例えば一般的に用いられている対称なPR(1,2,2,2,1)でのビットエラーレートの値に比べて、非対称なPR(2,0,5,1,0)でのビットエラーレートの値は1/4程度となり、他の非対称形PR特性においても対称形PR特性に比べて、ビットエラーレートの値が1桁小さくなっている。したがって、超解像光ディスクを超解像再生する場合には非対称なPR特性により再生信号を波形等価することで、ビットエラーレートを大幅に低減することが可能となることがわかる。本実施形態の光ディスク装置20では、一例としてRF信号はPR(1,1,4,4,1)へ波形等価されているため、例えば対称形PR特性であるPR(1,2,2,2,1)へ波形等価する場合に比較して、ビットエラーレートが約1/3に低減されることになる。
【0066】
【表2】

【0067】
なお、本実施形態にかかる光ディスク装置20では、RF信号をPR(1,1,4,4,1)に波形等価する場合について説明したが、これに限らず、光ディスク15に該光ディスク15に適したPR特性に関する情報を記録しておき、再生時にPR特性に関する情報を光ディスク装置20で読み取って使用することも可能である。
【0068】
例えば、光ディスク15のウォブル情報や、図14(A)に示されるように、光ディスク15のデータ領域2の内周部にあるTOC(Table Of Contents)領域にPR特性に関する情報が含まれている場合には、例えば光ディスク15のディスクマウント時に、CPU40に、PR特性に関する情報を読みこませてRAM41に保存させ、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨の通知があった場合に、RAM41に保存されている前記情報と再生条件等とに基づいてPR特性を設定しても良い。また、図14(B)に示されるように、光ディスク15の、記録領域2に黒点3で示されるように、PR特性に関する情報を周期的に配置しておくこととしてもよい。
【0069】
また、超解像再生時には、超解像層15dの構成、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び光源の駆動波形などの再生条件により、超解像層15dの温度分布が変化し、開口部またはマスク部の形状が変化するため、これに起因して非線形性の発現の仕方も異なる。したがって、上記各パラメータも単数または複数規定して、その時の最適なPR特性を持つと良い。
【0070】
また、上記実施形態では、図7に示されるようにA/D62、非対称FIRフィルタ63、及びインターポレータ64は直列に配置されているが、図15に示されるように、非対称FIRフィルタ63はPLLへの信号経路のみに配置しても良い。その場合には、RF信号は等価回路65のみ通過するため、図7に示されるように、RF信号が非対称FIRフィルタ63と等価回路65を通過する構成と比較して、FIRフィルタ63の有効桁数に起因する波形等価の数値誤差を低減することが可能となる。
【0071】
《変形例》
次に、デコーダ28eのビタビ復号器56に代えて、判定帰還型ビタビ復号器66を用いた光ディスク装置20について説明する。図16は判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。図16に示されるように、判定帰還型ビタビ復号器66は、図8に示される前述のビタビ復号器56と比較して、ブランチメトリック計算器70が補償機能付きブランチメトリック計算器77に代わり、パスメモリ72が仮判定機能付きパスメモリ76に代わり、パターン補償メモリ75が付加されている点で相違する。以下、判定帰還型ビタビ復号器66を備える光ディスク装置20について、ビタビ復号器56との相違点を中心に説明する。
【0072】
図17は判定帰還型ビタビ復号器66の仮判定結果出力機能付きパスメモリ76のブロック図である。この仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、パスメモリセルの内容をそれぞれのステートに対応した仮判定結果としてパターン補償メモリ75へと出力する。仮判定結果は、最尤推定中のビットのすぐ後のビット情報を有するため、後方ビットの判定情報として、最尤推定に反映することにより、媒体上でより広い範囲(長いビット長)での非線形補償が可能となる。そのため、超解像光ディスクの再生信号に含まれる長い範囲の非線形な符号間干渉を補償することが可能となり、超解像光ディスク再生時のビットエラーレートを大きく改善できる。
【0073】
図18は、仮判定結果の取得を説明するためのトレリス線図である。以下、図18を参照しつつ仮判定結果の取得方法について説明する。図18における時刻tから時刻t−4に対応するステートは最尤推定中の状態遷移部分である。また、時刻t−5から時刻t−9に対応するステートは仮判定結果部分である。図18においてt−1における各ステートから、太線の矢印で示される生き残パスに沿って時間を逆にたどっていくと、各生き残りパスに対応する仮判定ビット列は一つに決まる。すなわち、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111からパスマージが終了した時刻t−9におけるステートS0000までの、生残りパスをたどるルートは一義的に決まり、時刻t−1における各ステートS0000〜S1111の時刻t−5から時刻t−9までの仮判定ビットは、図18に示されるようにそれぞれ決定される。そして、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76は、図17と図18を総合するとわかるように、時刻t−5から時刻t−7の各ステートS0000〜S1111に対応する3ビットのビット列B(0000)〜B(1111)を仮判定ビット列としてパターン補償メモリ75に出力する。
【0074】
図19は、パターン補償メモリ75のブロック図である。図19に示されるようにパターン補償メモリ75は、各ブランチB(n)に対応する16のB(n)補償値セット格納メモリ51〜5116を有しており、仮判定結果出力機能付きパスメモリ76からの仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)はそれぞれ対応するB(n)補償値セット格納メモリ51〜5116に入力される。そして、各B(n)補償値セット格納メモリ51〜5116からは、入力された仮判定ビット列B(0000)〜B(1111)に対応する補償値CV(n)が出力される。一例として、図20(A)にはB(1)補償値セット格納メモリ51のビット列B(0000)と補償値CV(1)の対応を示すテーブルが示され、図20(B)にはB(6)補償値セット格納メモリ51のビット列B(0110)と補償値CV(n)の対応を示すテーブルが示され、図20(C)にはB(12)補償値セット格納メモリ5112のビット列B(1100)と補償値CV(12)の対応を示すテーブルが示されている。例えば、図18のトレリス線図に示されるように生残りパスが決定している場合には、B(1)補償値セット格納メモリ51に入力されるビット列B(0000)は(110)である。したがって、B(1)補償値セット格納メモリ51では、図20(A)のテーブルに基づいて補償値CV(1)の値が−0.11と決定される。同様に、B(6)補償値セット格納メモリ51に入力されるビット列B(0110)は(000)であり、B(12)補償値セット格納メモリ5112に入力されるビット列B(1100)は(111)である。したがって、(6)補償値セット格納メモリ51及びB(12)補償値セット格納メモリ5112では、図20(B)及び図20(C)のテーブルに基づいて補償値CV(6)の値が−0.01と決定され、補償値CV(12)の値が−0.08と決定される。そして、一例として上述のように決定された補償値CV(1),CV(6),CV(12)は補償機能付きブランチメトリック計算器77へ出力される。
【0075】
図16に戻り、補償機能付きブランチメトリック計算器77は、PRクラスにより決まるビット長の線形な符号間干渉予測値に、パターン補償メモリ75から出力される各ブランチB(n)に相当する補償値CV(n)を加えた値を目標値とし、この目標値と入力信号としての波形等価されたRF信号の値とのユークリッド距離(ブランチメトリック)の計算を行う。次式(4)は補償機能付きブランチメトリック計算器77によるブランチメトリックの計算式であり、補償機能付きブランチメトリック計算器77は式(4)によりブランチメトリックBM(n)をそれぞれ計算する。なお、式(4)は各ブランチB(n)に対応する補償値CV(n)項を有している点で式(3)と相違している。
【0076】
BM(n)=(PP(n)×PR+CV(n)−RF) …(4)
ただし、nは1〜16の整数であり、PRは行列[11441]であり、RFは入力信号としてのPR特性へと波形等価されたRF信号の値である。また、PP(n)は各ブランチB(n)に対応する5ビットのビット列であり、例えばブランチB(n)に対応する遷移前の状態を示す4ビットのビット列に、遷移後のビット列の先頭の1ビットを加えた5ビットのビット列で表される。ブランチメトリック計算器70は上記式(4)に基づいて、16個のブランチメトリックBM(n)を計算する。なお、式(4)中の×は行列の掛け算を示す。
【0077】
上記式(4)により各ブランチメトリックBM(n)の計算が終了すると、判定帰還型ビタビ復号器66では上述したビタビ復号器56と同様の方法で、2値化信号が生成される。
【0078】
《効果の説明》
図21(A)〜図23に示されるグラフは、最短記録マーク長が147nmである記録マークで記録された超解像光ディスクの再生信号に対して、ランダムに5ビットのPR特性を変化させてビットエラーレート(BER)の変化を観測し、観測により得られたビットエラーレート(BER)に対する各ビットにおけるそれぞれのPR特性を示すグラフである。つまり、各グラフ中のPR特性はPR特性の要素値の和で正規化したものであり、図21(A)は、PR特性がPR(a,a,a,a,a)と表される場合において、1ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートとの相関を示すグラフであり、図21(B)は、2ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図22(A)は、3ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図22(B)は4ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフであり、図23は、5ビット目に対応するa/(a+a+a+a+a)の値とビットエラーレートの相関を示すグラフである。なお、各グラフ中に示される直線は、各観測点を一次近似することに得られた近似直線である。
【0079】
上述したように、等価回路のPR特性を選択する際には、波形等価する際に各ビットにおけるビットエラーレート(BER)が小さいほど好ましい。そこで、各グラフにおいて、ビットエラーレート(BER)が小さくなる縦軸近傍の近似直線で示されるa/(a+a+a+a+a)(i=1〜5)の値をみると、各ビットにおけるa/(a+a+a+a+a)の値はおおよそ次表3のようになる。
【0080】
次表3から、2ビット目と4ビット目とを比較するとa/(a+a+a+a+a)の値は、a/(a+a+A+a+a)の値の0.5程度の大きな差があることがわかる。これは、超解像光ディスクからの再生信号が、2ビット目と4ビット目に関して非対称なPR特性に対応していることを意味している。
【0081】
【表3】

【0082】
次表4には、一例として超解像光ディスクに対して超解像再生を行なったときにビットエラーレート(BER)が少なかった2つの対称形PR特性におけるビットエラーレート(BER)の値と、7つの非対形PR特性におけるビットエラーレート(BER)の値とが示されている。次表4にから明らかなように、例えば一般的に用いられている対称なPR(1,2,2,2,1)でのビットエラーレートの値に比べて、非対称なPR(2,0,5,8,1)でのビットエラーレートの値は1/7程度となり、他の非対称形PR特性においても対称形PR特性に比べて、ビットエラーレートの値が1桁小さくなっている。したがって、超解像光ディスクを超解像再生する場合には非対称なPR特性により再生信号を波形等価することで、ビットエラーレートを大幅に低減することが可能となることがわかる。本実施形態の光ディスク装置20では、一例としてRF信号は非対称形PR特性であるPR(1,1,4,4,1)へ波形等価されているため、例えば対称形PR特性であるPR(1,2,2,2,1)へ波形等価する場合に比較して、ビットエラーレートが効果的に低減されることになる。
【0083】
【表4】

【0084】
なお、上記実施形態では、光ディスク装置20が、再生信号をPR(1,1,4,4,1)で波形等価する場合について説明したが、これに限らず、PR(3,0,8,1,1)、PR(2,0,5,1,0)、PR(2,0,8,3,1)、PR(1,0,5,2,1)、PR(2,0,5,5,1)、PR(2,0,8,4,1)、PR(2,0,4,6,0)、PR(2,0,5,8,1)、PR(1,0,2,4,0)、PR(2,0,4,5,0)、及びPR(3,1,8,1,1)のうちのいずれかであってもよい。要は、光ディスク20は、上記式(1)及び式(2)で示される条件が成立しないPR特性に、再生信号を波形等価するものであればよい。
【0085】
また、上記実施形態では、情報の再生のみが可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
【0086】
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの光源を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光を発光する複数の光源を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明の情報再生装置、情報再生方法、及び光ディスク媒体は、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超解像光ディスクを説明するための図である。
【図3】超解像光ディスクにおける再生パワーとCNRとの関係を説明するための図である。
【図4】図4(A)は微小開口領域を説明するための図であり、図4(B)は微小マスク領域を説明するための図である。
【図5】微小マスク領域の作用を説明するための図である。
【図6】超解像光ディスクにおける反射光の光強度分布と再生パワーとの関係を説明するための図である。
【図7】デコーダ28eのブロック図(その1)である。
【図8】ビタビ復号器56のブロック図である。
【図9】PR(1,1,4,4,1)の状態遷移を示すトレリス線図である。
【図10】パスメモリ72のブロック図である。
【図11】図11(A)及び図11(B)は、ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その1、その2)である。
【図12】図12(A)及び図12(B)は、ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その3、その4)である。
【図13】ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その5)である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、光ディスク15の変形例を示す図である。
【図15】デコーダ28eのブロック図(その2)である。
【図16】判定帰還型ビタビ復号器66のブロック図である。
【図17】仮判定機能付きパスメモリ76のブロック図である。
【図18】仮判定結果の取得を説明するための図である。
【図19】パターン補償メモリ75のブロック図である。
【図20】図20(A)〜図20(C)は補償値CV(n)の決定方法を説明するための図である。
【図21】図21(A)及び図21(B)は、ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その6、その7)である。
【図22】図22(A)及び図22(B)は、ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その8、その9)である。
【図23】ビットエラーレートとPR特性との相関を示すグラフ(その10)である。
【符号の説明】
【0089】
15…光ディスク、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28d…RF信号生成回路、28e…デコーダ、56…ビタビ復号器、65…等価回路、66…判定帰還型ビタビ復号器、75…パターン補償メモリ、76…仮判定機能付きパスメモリ、77…補償機能つきブランチメトリック計算器、67…PLL。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を、光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成手段と;
前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された前記光ディスクに対して、前記RF信号を、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価器と;を備える情報再生装置。
【請求項2】
前記非対称なパーシャルレスポンス特性は、PR(3,0,8,1,1)、PR(2,0,5,1,0)、PR(2,0,8,3,1)、PR(1,0,5,2,1)、PR(2,0,5,5,1)、PR(2,0,8,4,1)、PR(1,1,4,4,1)、PR(2,0,4,6,0)、PR(2,0,5,8,1)、PR(1,0,2,4,0)、PR(2,0,4,5,0)、及びPR(3,1,8,1,1)のうちのいずれかとする請求項1に記載の情報再生装置。
【請求項3】
前記記録マークのビットパターン毎の複数の補償値が記録されたパターン補償メモリと;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する過去の判定結果を出力する機能を有するパスメモリと;
前記複数の補償値のうちの前記過去の判定結果に応じた補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック計算器と;を更に備える請求項1又は2に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記光ディスクには、前記パーシャルレスポンス特性に関する情報が記録されており、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと、前記光ディスクに記録されているパーシャルレスポンス特性に関する情報とから、前記波形等価器の波形等価係数を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記波形等価器により波形等価される前のRF信号から、クロック信号を抽出するクロック抽出回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の情報再生装置に用いられる光ディスク媒体であって、
回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;
前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に最適なパワー又は線速度、及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと;
前記パーシャルレスポンス特性に関する情報と;を有する光ディスク媒体。
【請求項7】
情報をPRML方式を用いて再生する情報再生方法であって、
前記情報が回折限界よりも小さいピッチの記録マークで記録された光ディスクから、RF信号を読み取る工程と;
前記RF信号を、中央を原点として非対称なパーシャルレスポンス特性に波形等価する波形等価工程と;を含む情報再生方法。
【請求項8】
前記波形等価されたRF信号のビットパターン毎の補償値を算出する補償値算出工程と;
前記PRML方式に応じた複数のステートに対する、過去の判定結果に応じた前記補償値を用いて、前記波形等価されたRF信号の各受信信号に対する尤度を演算するブランチメトリック値算出工程と;を更に含む請求項7に記載の情報再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2007−323686(P2007−323686A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149448(P2006−149448)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】