説明

情報処理システム

【課題】通信レスポンスの低下を防止することができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、車載端末及び通信機器を有するナビゲーション装置と、センタ装置とを具備している。車載端末は、前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過した場合に、ユーザが通信を実施していない状態が所定時間以上続いているかどうかを判断し、ユーザが通信を実施していない状態が所定時間以上続いているときは、乱数を使って新しい共通鍵を生成し、その共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置に送付する。すると、センタ装置は、受け取った新しい共通鍵を共通鍵データベースに更新登録する。その後、車載端末は、センタ装置から新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信すると、以後新しい共通鍵を使ってセンタ装置と通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の情報処理システムとしては、例えば特許文献1に記載されているように、所定の時間ごとに制御用共有秘密鍵により通信用共有秘密鍵を更新するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように単に所定の時間ごとに共有秘密鍵(共通鍵)を更新する場合には、時間(周期)の設定の仕方によっては通信レスポンスの低下が生じる等、通信レスポンスに影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、通信レスポンスの低下を防止することができる情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共通鍵を用いた共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムにおいて、ユーザが所定時間通信を行っていないかどうかを検知する通信検知手段と、通信検知手段によってユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、共通鍵を更新する共通鍵更新手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の情報処理システムにおいては、ユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、共通鍵を更新することにより、共通鍵を用いて通信を行う際に共通鍵を更新しなくて済む。従って、共通鍵の更新が効率的に行えるため、通信レスポンスの低下を防止することができる。
【0008】
好ましくは、共通鍵更新手段は、共通鍵を公開鍵暗号方式により送付する手段を有する。この場合には、共通鍵暗号方式及び公開鍵暗号方式を組み合わせたハイブリッド暗号方式を利用して通信を行う情報処理システムを効果的に実現することができる。
【0009】
また、好ましくは、共通鍵更新手段による前回の共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を更に備え、共通鍵更新手段は、期間経過検知手段によって前回の共通鍵の更新から所定期間経過していることが検知されると共に、通信検知手段によってユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、共通鍵を更新する。なお、期間経過検知手段における所定期間は、通信検知手段における所定時間よりも長い時間である。この場合には、共通鍵の更新が必要以上に頻繁に行われることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信レスポンスの低下を防止できるので、効率的な情報通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わる情報処理システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した車載端末のECUにより実行される共通鍵更新処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した車載端末とセンタ装置との間の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係わる情報処理システムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わる情報処理システムの一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の情報処理システム1は、共通鍵暗号方式及び公開鍵暗号方式を組み合わせたハイブリッド暗号方式を利用して通信を行うナビゲーションシステムである。共通鍵暗号方式では、暗号化処理が軽くなるが、鍵がばれると全ての通信が盗聴可能となる。公開鍵暗号方式では、鍵がばれることは無いが、暗号化処理が重くなる(共通鍵暗号方式の数百〜数千倍の時間がかかる)。
【0014】
ナビゲーションシステム1は、車両に搭載されたナビゲーション装置2と、センタ装置Cとを具備している。ナビゲーション装置2は、車載端末3と、この車載端末3と接続された通信機器4とを備えている。
【0015】
車載端末3は、共通鍵更新処理及び通信処理等を実行するECU(Electronic Control Unit)5を有している。なお、車載端末3は、図示はしないが、ユーザが各種入力操作を行うための操作部や各種情報を表示する表示部等も有している。通信機器4は、携帯電話網等の通信回線6を介してセンタ装置Cと通信を行う。センタ装置Cには、ユーザ毎の共通鍵を管理する共通鍵データベース7が設けられている。
【0016】
図2は、車載端末3のECU5により実行される共通鍵更新処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、普段ユーザが行う通信には、処理の軽い共通鍵暗号方式が利用される。
【0017】
図2において、まずECU5に設けられたタイマ(図示せず)に基づいて、前回の共通鍵の変更から一定期間(例えば数時間)以上経過したかどうかを判断する(手順S11)。前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過していないときは、共通鍵の更新を実施しないものとし(手順S12)、本処理を終了する。
【0018】
前回の共通鍵の変更から一定期間以上経過したときは、ECU5に設けられたタイマに基づいて、ユーザが通信を実施していない状態が所定時間(例えば数分)以上続いているかどうかを判断し(手順S13)、ユーザが通信を実施していない状態が所定時間以上続いているときは、乱数を使って新しい共通鍵を生成する(手順S14)。そして、その新しい共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置Cに送付する(手順S15)。
【0019】
その後、センタ装置Cから新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信したかどうかを判断し(手順S16)、新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信していないときは、手順S14に戻る。新しい共通鍵の更新登録成功の通知を受信したときは、以後新しい共通鍵を使ってセンタ装置Cと通信を行うものとし(手順S17)、本処理を終了する。
【0020】
次に、ナビゲーションシステム1の動作を図3により説明する。図3において、車載端末3は、一定期間同じ共通鍵を使った後、ユーザが所定時間以上もセンタ装置Cとの間で通信を行っていないと判定される(処理S21)と、乱数を使って新しい共通鍵を生成する(処理S22)。そして、車載端末3は、その共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置Cに送付する(処理S23)。
【0021】
すると、センタ装置Cは、受け取った新しい共通鍵を今後利用可能となるように共通鍵データベース7に更新登録する(処理S24)。そして、センタ装置Cは、新しい共通鍵を更新登録した旨の通知を車載端末3に対して行う(処理S25)。以降、車載端末3とセンタ装置Cとの間で、新しい共通鍵を用いた共通鍵暗号方式による通信が行われる(処理S26)。
【0022】
以上において、図2に示す手順S13は、ユーザが所定時間通信を行っていないかどうかを検知する通信検知手段を構成する。図2に示す手順S14,S15及び図3に示す処理S22〜S24は、通信検知手段によってユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、共通鍵を更新する共通鍵更新手段を構成する。
【0023】
また、図2に示す手順S11は、共通鍵更新手段による前回の共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を構成する。
【0024】
以上のように本実施形態にあっては、ユーザが所定時間以上も通信を行っていないと判定されると、新しい共通鍵を生成し、その共通鍵を公開鍵暗号方式によりセンタ装置Cに送り、当該共通鍵を共通鍵データベース7に更新登録するようにしたので、公開鍵暗号方式の処理速度の遅さをユーザに感じさせないように共通鍵が効率的に更新されるようになる。これにより、通信レスポンスの低下を防止することができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態は、ナビゲーションシステムについてであるが、本発明の情報処理システムは、共通鍵を用いた共通鍵暗号方式により通信を行うものであれば、ナビゲーションシステム以外のシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…ナビゲーションシステム(情報処理システム)、3…車載端末、4…通信機器、5…ECU(通信検知手段、共通鍵更新手段、期間経過検知手段)、7…共通鍵データベース、C…センタ装置。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通鍵を用いた共通鍵暗号方式により通信を行う情報処理システムにおいて、
ユーザが所定時間通信を行っていないかどうかを検知する通信検知手段と、
前記通信検知手段によって前記ユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、前記共通鍵を更新する共通鍵更新手段とを備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記共通鍵更新手段は、前記共通鍵を公開鍵暗号方式により送付する手段を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記共通鍵更新手段による前回の前記共通鍵の更新から所定期間経過しているかどうかを検知する期間経過検知手段を更に備え、
前記共通鍵更新手段は、前記期間経過検知手段によって前記前回の共通鍵の更新から所定期間経過していることが検知されると共に、前記通信検知手段によって前記ユーザが所定時間通信を行っていないことが検知されたときに、前記共通鍵を更新することを特徴とする請求項1または2記載の情報処理システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90159(P2012−90159A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236450(P2010−236450)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】