説明

情報処理装置、及びその制御方法

【課題】 画面に表示し、ユーザに提示する表示画像の描画を効率よく行うための一手法を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、取得部0400が取得した前後関係を有する複数のオブジェクトを、描画オブジェクトと省略オブジェクトとに分類し、前記描画オブジェクトを描画して保持する第一描画部0401と、前記描画オブジェクトを前記前後関係を維持して1つの画像に合成する第一合成部0403と、前記合成後、前記省略オブジェクトを描画する第二描画部0402と、前記省略オブジェクト及び、前記描画され保持されていた描画オブジェクトを前記前後関係を維持して1つの画像に合成する第二合成部0404とを備え、前記第一描画部0401は、前記前後関係において前後に隣接する少なくとも1つの描画オブジェクトをグループ化し、該グループ毎に独立したバッファに描画して保持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトを描画することによって画面に表示する画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及している様々な情報処理端末では、様々なアプリケーションを利用したり書籍や辞書等といった情報コンテンツを閲覧したりする環境において、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(以下、GUI)が広く利用されている。GUIは、一般に、利用者に提示するボタン、テキスト、リスト、イメージといった個々のオブジェクトを、画像処理装置の表示部に表示させる画像上の特定の位置に配置することで作成される。この配置時には、複数のオブジェクトの前後関係も決定されており、画像処理装置は、後ろにあるオブジェクトに重畳して前にあるオブジェクトを描画し、利用者に提示する。画像処理装置がこのようなオブジェクトを描画する方法は様々であるが、例えば、最も後方に配置されたオブジェクトから描画を開始し、順に手前に配置されたオブジェクトを描画していくアルゴリズムがある。これは、絵描きがキャンバス上に絵を描いていくのと同じ手順であることから、Painter’s Algorithmと呼ばれ、GUIの描画方法として一般に広く採用されている。
【0003】
ここで、各オブジェクトの描画に要する時間は、その対象によって様々である。例えば、オブジェクトが複雑なパスや巨大なビットマップで表現されている場合、一般に、そのオブジェクトの描画には長い時間を要する。また、オブジェクトを描画するために、画像処理装置の外部からデータを取得する必要がある場合、その処理によって、オブジェクトの描画処理全体が遅延してしまうことがある。このように、特定オブジェクトの描画時間の増大によって、表示画像の描画が遅延することを回避するため、次のような発明が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、表示していたGUI画面に変更が生じた際に、変更により修復する必要がある領域を基に、再描画を必要とするオブジェクトを特定する。そして、Painter’s Algorithmに従い、後方から順に描画が必要なオブジェクトのみを描画し、不必要なオブジェクトの描画を抑制することで効率的な表示処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−102343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、再描画が必要なオブジェクトか否かの判定は、直前に表示していた画像の内容から変更が生じたかをチェックすることによって、決定するものである。従って、最初に表示画像を描画する際には、前回の描画結果が存在しないために、効率化した描画処理は機能せず、通常のPainter’s Algorithmに従って描画を行うのみである。このため、表示画像の初回描画時にはデバイスのユーザビリティを向上させることはできない。
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、ユーザに提示する表示画像の描画を効率よく行うための一手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、前後関係を有する複数のオブジェクトを取得する取得手段と、前記複数のオブジェクトを、優先的に描画する描画オブジェクトと、非優先的に描画する省略オブジェクトとに分類する分類手段と、前記描画オブジェクトを描画して保持する第一の描画手段と、前記複数のオブジェクトが有する前後関係を示す情報を参照し、前記描画された描画オブジェクトを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、表示部に表示させる第一の合成手段と、前記第一の合成手段による合成の後、前記省略オブジェクトを描画する第二の描画手段と、前記前後関係を示す情報を参照し、前記第二の描画手段により描画された省略オブジェクトと、前記第一の描画手段により描画され保持されていた描画オブジェクトとを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、前記表示部に表示させる第二の合成手段とを備え、前記第一の描画手段は、前記複数のオブジェクトが有する前後関係において、前後に隣接する少なくとも1つの描画オブジェクトをグループ化し、該グループ毎に独立したバッファに描画して保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一部のオブジェクトの描画を省略した表示画像を生成することで、ユーザの操作に対する表示上の反応が遅延することを低減する。さらに、省略されたオブジェクトを描画し、既に描画済みであったオブジェクトと合成して完全な表示画像に合成するので、ユーザに提示する表示画像の生成を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ユーザにGUIを提供する表示画像の一例を示す図
【図2】情報処理装置のハードウェア及び機能を示すブロック図
【図3】省略オブジェクトの決定方法の一例を示す図
【図4】表示画像生成処理を示すフローチャート
【図5】第一描画処理の一例を示すフローチャート
【図6】オブジェクト描画されたバッファの前後関係を示す図
【図7】第二描画処理を示すフローチャート
【図8】オブジェクト描画されたバッファの前後関係を示す図
【図9】第一描画処理の一例を示すフローチャート
【図10】第一描画処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施例の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、以下説明する実施形態は、本実施例を具体的に実施した場合の一例を示すものであり、これに限るものではない。
【0011】
<実施例1>
本実施例では、電子辞書デバイスにおいて、利用者が表示部に表示されたメニュー上で特定の辞書を選択した後、指定された辞書で単語を検索するためのGUI画面を提示する例を示す。ここでGUI画面とは、電子辞書デバイスの表示部に表示させ、ユーザに対してGUIを提供するために表示する表示画像である。
【0012】
図1(A)は、本実施例の説明において、本実施例の利用者にGUIを提供する表示画像の一例を示す図である。利用者が、辞書選択メニューを提供する表示画像(メニュー画面)0100において、和英辞典アイテム0101を選択すると、和英辞典を提供する表示画像(和英辞書画面)0102に遷移する。和英辞典画面0102には複数のオブジェクトが存在する。このうち、タイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105を表示するためには、大量の情報が保存された外部の辞書データを探索して、具体的な辞書名や画像ファイルパスを取得する必要がある。そのため、描画を完了するまでにその他のオブジェクトよりも長い時間を要する。
【0013】
図1(B)は、本実施例の利用者に提示する和英辞典画面102のうち、一部のオブジェクトを省略した表示画像(和英辞典省略画面)の一例を示す図である。本実施例では、ユーザが和英辞典アイテム0101を選択後、和英辞典画面0102の表示まで長く待たされることを避けるため、和英辞典画面0102を表示する前に、和英辞典省略画面0200を提示する。和英辞典省略画面0200は、和英辞典画面0102の中で描画に時間のかかるタイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105の描画を省略したもので、和英辞典画面0102よりも高速に描画することができる。以下、和英辞典画面0102に含まれるオブジェクトのうち、優先的に描画されるオブジェクトを描画オブジェクトと称し、非優先的に描画するオブジェクト、すなわち描画を一旦省略するオブジェクトを省略オブジェクトと称する。ここで、省略オブジェクトはタイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105である。
【0014】
さらに、本実施例は、和英辞典省略画面0200を利用者に提示した後に、優先されなかった(非優先された)省略オブジェクトの描画を行い、優先的に描画した描画オブジェクトの描画結果と合成して和英辞典画面0102を提示する。このとき、描画オブジェクトは既存の描画結果を再利用するため、描画処理をはじめからやり直す場合と比較して、省略されていない本来の表示画像を高速に提示することができる。
【0015】
図2(A)は、本実施例のハードウェア構成の一例を示す図である。CPU0300は、表示画像生成に係るプログラムに基づいて処理を実行する。ROM0301には、前述の処理や基本I/Oなどに係る各種プログラム、表示画像の各オブジェクト情報(オブジェクトのアートワーク、配置情報など)が読み取り専用データとして格納されている。RAM0302は、CPU0300のワークエリア(メインメモリ)として機能する。記憶装置0303には、各辞書データなどが格納されている。さらに、本実施例は、ディスプレイ0304を備え、ROM0301に格納されたコンテンツデータに基づいて描画されたビットマップを、表示画像として出力する。システムバス0305は、本実施例内のデータの流れを司る。
【0016】
図2(B)は、本実施例の機能ブロックの一例を示す図である。本実施例は、取得部0400を備え、ROM0301から各オブジェクト情報を取得して、第一描画部0401、及び、第二描画部0402に渡す。第一描画部0401は、取得部0400から渡されたオブジェクト情報をもとに、描画オブジェクトを描画オブジェクトバッファに描画するとともに、省略オブジェクトを描画するための省略オブジェクトバッファを確保して第二描画部0402に渡す。第二描画部0402は、取得部0400から渡されたオブジェクト情報をもとに、第一描画部0401から受け取った省略オブジェクトバッファに省略オブジェクトを描画する。さらに、本実施例は第一合成部0403を備え、第一描画部0401で描画された描画オブジェクトバッファを、各バッファ内に描かれたオブジェクトの前後関係を維持した状態で合成し、最終的に利用者に提示するビットマップを作成する。同様に、第二合成部0404は、描画オブジェクトバッファと省略オブジェクトバッファの両方を受け取り、各バッファ内に描かれたオブジェクト同士の前後関係を維持した状態で合成し、利用者に提示するビットマップを作成する。第一合成部0403及び第二合成部0404で生成されたビットマップは、ディスプレイ0304に出力される。なお、本実施例では、取得部0400、第一描画部0401、第二描画部0402、第一合成部0403、第二合成部0404の各機能ブロックは、CPU0300の機能部であり、各機能部のワークエリア及びバッファとしてRAM0302が用いられる。ただし、本発明は、これらの機能部をハードウェアで実現する情報処理装置によっても同様に実現可能である。
【0017】
次に、本実施例の動作を実現する処理の一例を、フローチャートやデータ構造図などを用いて詳細に説明する。本実施例では、表示画像を構成するオブジェクトのうち、いずれを省略オブジェクトとするかを、GUIの開発環境において任意に設定可能とする例を示す。図3(A)は、本実施例において、和英辞典画面0102を開発者が開発する際のオーサリングツールの表示画像を示す図である。現在開発中の画面を示す編集領域0500が存在し、その中に和英辞典画面0102が表示されている。本実施例のGUIの開発者は、このオーサリングツールを用い、和英辞典画面0102の中に存在するオブジェクトを選択してコンテキストメニュー0501を開き、当該オブジェクトを省略オブジェクトとして指定することができる。ここで指定されたオブジェクトは、和英辞典省略画面0200に含まれない省略オブジェクトとして、編集領域0500内の表示様態を変更される。この変更方法は任意であるが、例えば、該オブジェクトの表示を半透明に変更する。本実施例では、上述したように、描画に時間がかかるタイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105を省略オブジェクトとして指定する。それ以外のオブジェクトは、和英辞典省略画面0200に含まれる描画オブジェクトとなる。オーサリングツールでは、取得部0400によってROM0301から取得されたオブジェクト情報に、オーサリングツール上で指定された情報を付加して、それぞれが描画オブジェクトか指定オブジェクトであることを示す分類情報を示すテーブルを生成する。ユーザの操作によって省略オブジェクトが指定されると、取得部0400はオブジェクト分類情報を更新し、ROM0301にオブジェクトとともに保存する。図3(B)は、オブジェクト分類情報の一例を示すテーブルを示す図である。図3(A)の例で指定したオブジェクトの分類情報は、テーブルとしてRAM0302上に保持される。本実施例では、図3(B)のように、オブジェクトの前後関係(後方からの順序)を示すナンバー0600、オブジェクトを一意に特定するオブジェクトID0601、オブジェクトの外接矩形情報0602、と省略オブジェクトフラグ0603が定義される。ここで、オブジェクトの外接矩形情報とは、対応するオブジェクトが表示されるのに必要十分な外接矩形の、表示画像上の位置(画面左上を原点とする座標)と幅・高さを示す情報である。本実施例では、タイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105に対応して、辞書名ラベルデータ0604、タイトルラベルデータ0605、辞書アイコンデータ0606の省略オブジェクトフラグ0603がTRUEとなっている。それ以外のオブジェクトは省略オブジェクトとして指定されていないため、省略オブジェクトフラグ0603はFALSEであり、描画オブジェクトとみなされる。
【0018】
図4は、本実施例のGUIの表示画像を生成する処理の全体を示すフローチャートである。はじめに、ステップS700において、第一描画処理を実行する。第一描画処理とは、少なくとも1つの描画オブジェクトを描画し、オブジェクトが有する前後関係を維持した状態で描画オブジェクトのみからなる合成した表示画像を表示させる処理である。ここでは、第一描画部0401及び第一合成部0403が、和英辞典省略画面0200を描画し、ディスプレイ0304に出力して利用者に提示する。図5は、本実施例の第一描画処理(ステップS700)の詳細を示すフローチャートである。ここでの処理は、一般的なPainter’s Algorithmに基づいており、後方に配置されたオブジェクトから前方に配置されたオブジェクトの順に処理を行う。
【0019】
まず、ステップS800において、取得部0400は、ROM301から、図3(B)で示したオブジェクト分類情報を取得し、RAM0302上に保持する。次にステップS801において、第一描画部0401は、RAM0302から得たオブジェクト情報を参照して一番後方のオブジェクトを描画対象に設定する。
【0020】
次に、ステップS802において、第一描画部0401は、図3(B)のオブジェクト分類情報に示される省略オブジェクトフラグ0603の値を参照し、現在の描画対象が省略オブジェクトか否かの判定を行う。ここで、処理対象が省略オブジェクトだった場合(ステップS802でYES)には、ステップS803に進む。ステップS803では、省略オブジェクトバッファを確保する。ここでは、図3(B)のオブジェクト分類情報に示されるオブジェクトの外接矩形情報を参照して、処理対象のオブジェクトを描画するのに必要十分なサイズのバッファを、メモリ領域に確保し、ステップS809に進む。ここで確保された省略オブジェクトバッファは、のちに第二描画部0402によって使用される。一方、処理対象が省略オブジェクトでない場合(ステップS802でNO)の場合には、ステップS804に進む。
【0021】
ステップS804において、第一描画部0401は、RAM0302に保持されている情報から、その前に処理対象であったオブジェクトの描画が行われているか否かの判定を行う。ここで、描画されていなかった場合は(ステップS804でNO)、ステップS805に進み、新たに描画用のバッファを作成し、カレントバッファに設定する。ここで生成するバッファの大きさは、ディスプレイ0304に表示する表示画像全体を描画できるのに十分な大きさのものとする。また、カレントバッファとは、現在処理対象となっているオブジェクトを描画するバッファである。なお、第一描画処理において最初に処理する一番後方のオブジェクトが対象の場合も、前の処理対象オブジェクトそのものが存在しないため、ステップS804の判定はNOとなり、ステップS805に進んで描画オブジェクトバッファの新規作成処理を行う。描画用バッファをカレントバッファに設定したら、ステップS806に進む。一方、前に処理対象だったオブジェクトが描画済みである場合は(ステップS804でYES)、新たなバッファの作成は行なわず、ステップS806に進む。ステップS806では、取得部400が、ROM0301から、処理対象となっているオブジェクトのオブジェクト情報を取得し、RAM0302上に保持する。ここで取得するオブジェクト情報は、オブジェクトのアートワークなど、当該オブジェクトを描画するのに必要な情報である。次にステップS807では、第一描画部0401が、取得したオブジェクト情報を基に、カレントバッファに処理対象のオブジェクトを描画し、更にステップS808において、描画済みであることを示すフラグをオブジェクト情報に設定する。
【0022】
次に、ステップS809において、第一描画部0401は、オブジェクト情報を基に、全てのオブジェクトを処理し終えたか否かの判定を行う。ここで、まだ未処理のオブジェクトがある場合は(ステップS809でNO)、ステップS810に進み、処理対象を1つ手前に配置されたオブジェクトに設定して、ステップS802の処理に戻る。一方、すべてのオブジェクトを処理し終えた場合(ステップS809でYES)、ステップS811に進む。ステップS811では、最後に、第一合成部0403が、これまで描画オブジェクトを描画した全てのバッファを、前後関係を維持した状態で1つの画像に合成する。具体的には、第一合成部0403は、取得部0400が取得したオブジェクト情報に示された前後関係を参照し、後方に存在するオブジェクトの上に前方に存在するオブジェクトが描かれるよう、後方から順にバッファを合成し、表示画像を生成する。本実施例では、表示画像(和英辞典省略画面0200)が生成される。このとき、省略オブジェクトバッファには、まだ何も描画が行われていないため、第一合成部0403による合成対象には含まれない。そして、ステップS812において、第一合成部0403が、生成した表示画像をディスプレイ0304に出力する。
【0023】
図6は、本実施例の第一描画処理(ステップS700)の後、図3(B)のオブジェクト分類情報に示される各オブジェクトに対応するRAM0302上のバッファの様子を示した概念図である。図中の括弧内の数字は、各バッファの前後関係を示しており、値が小さいほど、後方に存在するオブジェクトが描かれることを示す。本実施例では、タイトルラベル0103、辞書アイコン0104、辞書名ラベル0105の3つのオブジェクトが省略オブジェクトとして指定されている。従って、これらのオブジェクトは、第一描画処理(ステップS700)では描画されず、独立したバッファの生成のみが行われる。図6において、それぞれ、点線で示した矩形0903〜0905は表示画像全体のサイズを示している。それに対し、各省略オブジェクトに対応して生成された省略オブジェクトバッファが、辞書名ラベル用バッファ0907、タイトルラベル用バッファ0908、辞書アイコン用バッファ0909で示されている。一方、その他の描画オブジェクトは、描画オブジェクトバッファ0900〜0902のいずれかに描画されている。これらは、図3(B)のオブジェクト分類情報で示された前後関係を有する各オブジェクトを、後方に存在するものから順に、かつ前後に隣接するオブジェクトはグループ化して、そのグループ毎に1つの独立したバッファに描画したものである。本実施例では、処理対象が前回の処理対象が描画されていない、すなわち省略オブジェクトであった場合(ステップS802でNO)、次に描画するオブジェクトに対しては新しいバッファが生成される(ステップS803)。このため、隣接する描画オブジェクトは、間に省略オブジェクトを挟んで別々のバッファに分かれて描画される。これは、後に行う第二描画処理(ステップS702)において、省略オブジェクトを描画した後、今回の描画結果の間に挿入して合成するためである。第ニ描画処理とは、省略オブジェクトを描画して、既に描画され保持されている描画オブジェクトと、オブジェクトの前後関係を維持した状態で合成することにより、完全な表示画像を生成し表示させる処理である。その詳細は、後に第二描画処理(ステップS702)の説明で述べる。第一合成部0403は、ステップS811において、描画済みのバッファのみを合成する。すなわち、ここでは、描画オブジェクトバッファ0900〜0902の3つのバッファを合成する。これにより図2で示した和英辞典省略画面0200の表示画像を作成し、ディスプレイ0304に出力して利用者に提示する。以上が、第一描画処理(ステップS700)の詳細である。
【0024】
第一描画処理(S700)が終了すると、処理ステップは呼び出し元にリターンされ、図4のフローチャートにおけるステップS701に進む。ステップS701では、今回の処理において省略オブジェクトが1つ以上あるかを判定する。この判定は、第二描画部0402が、RAM0302上の情報を参照し、図3(B)で示したオブジェクト分類情報において、省略オブジェクトのフラグが設定されたオブジェクトがあるかを確認することで可能になる。また、第二描画部0402が、RAM0302上の情報省略オブジェクトバッファが生成されているかを確認することでも判定できる。省略オブジェクトが1つ以上存在する場合(S701でYES)、ステップS702の第二描画処理に進む。省略オブジェクトが存在しない場合(S701でNO)、全てのオブジェクトが描画済みであるので、処理を終了する。本実施例では、1つ以上の省略オブジェクトが存在するため、第二描画処理(ステップS702)に移行する。
【0025】
図7は、本実施例の第二描画処理(ステップS702)の詳細を示すフローチャートである。はじめに、ステップS1000において、第二描画部0402が、RAM0302上に保持されているオブジェクト分類情報を参照し、処理対象を一番後方のオブジェクトに設定する。そしてステップS1001において、オブジェクトが省略オブジェクトか否かの判定を行う。この判定は、第一描画処理のステップS807において、描画済みオブジェクトに対して設定されたフラグの値をチェックすることで行う。処理対象が描画オブジェクトで、既に描画済みであった場合(ステップS1001でYES)、当該オブジェクトに対しては何も処理を行なわず、ステップS1004に進む。一方、処理対象が省略オブジェクトに指定されており、まだ未描画である場合は(ステップS1001でNO)、ステップS1002に進む。ステップS1002において、取得部0400が、0402が、ROM0301から、省略オブジェクトの描画に必要なオブジェクト情報を取得する。ステップS1003では、処理対象のオブジェクトを、ステップS803において生成された対応する省略オブジェクトバッファに描画する。省略オブジェクトバッファは、第一描画部0401によって、対応する省略オブジェクトの外接矩形を含むのに必要十分な領域としてRAM0302上に確保されているものである。次にステップS1004において、全オブジェクトを処理し終えたか否かの判定を行い、未処理のオブジェクトがある場合(ステップS1004でNO)、ステップS1005において処理対象を1つ手前のオブジェクトに設定し、ステップS1001の処理に戻る。一方、全オブジェクトを処理し終えた場合(ステップS1004でYES)、ステップS1006に進む。ステップS1006では、第二合成部0404が、第二描画処理において描画された省略オブジェクトバッファと、第一描画処理において描画されて第一描画部0401によってRAM0302上に保持されていた描画オブジェクトバッファを1つ画像に合成する。このとき、第二合成部0404は、取得部0400が取得したオブジェクトの前後関係を示す情報を参照し、後方に存在するオブジェクトの上に前方に存在するオブジェクトが描かれるよう、順に描画オブジェクトバッファと省略オブジェクトバッファを合成する。また、省略オブジェクトバッファに対しては、RAM0302上に保持された各オブジェクトの外接矩形情報を参照し、各オブジェクトの位置を合わせて、1つの表示画像として合成する。第二合成部0404によって、本実施例では、和英辞典画面0102の表示画像が生成される。そして、ステップS1007において、生成された表示画像をディスプレイ0304に出力する。なお、ワークエリアに余裕がある場合には、複数の描画オブジェクトバッファに対して、それぞれの前方に存在する省略オブジェクトバッファを合成する処理を並行して行い、最終的に全て前後関係を維持した1つの画像としてそれらのバッファを合成しもよい。
【0026】
以上が、第二描画処理(ステップS702)の詳細である。ステップS702の第二描画処理が終了すると、呼び出し元にリターンされ、本実施例のGUIを表示する表示画像を生成する処理が終了する。
【0027】
図8は、第二描画処理(ステップS702)のにおいて全てのバッファにおける描画か完了した後の、RAM0302上で保持された各バッファを示した概念図である。図6で示した、本実施例の第一描画処理(ステップS700)の後のバッファとの差異は、辞書名ラベル用バッファ1106、タイトルラベル用バッファ1107、辞書アイコン用バッファ1108に、省略オブジェクトが描画されている点にある。第一描画処理(ステップS700)では、上段の描画オブジェクトバッファにしかオブジェクトが描画されていなかったが、ここではすべてのバッファにオブジェクトが描画されており、第二合成部0404はそれらすべてを合成する。ここで、既に第一描画処理(ステップS700)において描画済みの3つのバッファは、以前の描画結果を再利用するため、オブジェクトの描画処理自体は行われず、合成に利用されるだけである。
【0028】
以上で説明した実施例によれば、辞書選択メニュー画面0100から和英辞典画面0102の遷移時に、描画に時間のかかるオブジェクトを省略した和英辞典省略画面0200を提示し、ユーザの操作に対するデバイスの反応を素早くユーザに示すことができる。従って、ユーザは操作が有効に受け付けられたことを早く認識できる。また、省略画面において表示される描画オブジェクトに、例えば「全画面に戻る」ためのボタンや文字入力スペースのように、ユーザの操作とのインタラクションが可能な操作用のオブジェクトが含まれている場合がある。その場合、ユーザは省略オブジェクトの描画終了を待つ必要なく、操作を行うことができる。従って、ユーザの操作に対するデバイスの反応を示すために、前回終了時の表示画像等の仮の静止画像を表示させる場合に比較して、表示画面がフリーズしてしまったような不安を低減するという効果もある。これに加えて、本実施例では、和英辞典省略画面0200でされた描画オブジェクトの描画結果を再利用して、省略のない本来の和英辞典画面0102を生成する。従って、仮の画像を描画した後に、改めて描画するのに比較して、高速に最終的な表示画像を提示することができ、効率のよい表示画像の生成が可能となる。また、本実施例では、省略オブジェクトバッファを確保にする際に、各処理対象オブジェクトを描画するのに必要十分な領域を確保する。常に画面サイズと同じ大きさのバッファを確保した場合、組み込み機器などの低リソースデバイスでは、ワークエリア(RAM0302の容量)が不足する可能性があるが、本実施例によれば、ワークエリアの使用量を抑えることができる。
【0029】
実施例1では、各省略オブジェクトを描画するのに必要十分な大きさの省略オブジェクトバッファを確保するため、それら描画オブジェクトバッファと合成して1つの画像を生成する(ステップS1006)際に、位置合わせをする必要がある。次に、実施例1の変形例1として、描画オブジェクトに対してと同様に、オブジェクトの前後関係において前後に隣接する省略オブジェクトはグループ化し、グループ毎に独立した省略オブジェクトバッファに描画する例を示す。変形例1では、描画オブジェクトバッファと同様に、表示画像全体を描画するのに十分な大きさの省略オブジェクトバッファを確保するため、位置合わせをすることなくバッファを合成できる。図9は、変形例1における第一描画処理(ステップS700)を示すフローチャートである。図5のフローチャートとの差異はステップS802a〜805aの処理にある。図9では、オブジェクト分類情報を取得し(ステップS800),処理対象のオブジェクトを設定した(ステップS801)後、ステップS802aに進む。ステップS802aでは、第一描画部0401がRAM0302上の情報を参照し、現在の処理対象オブジェクトが、前回の処理対象オブジェクトと同じ分類か否かを判定する。そして、前回の処理対象オブジェクトと同じ分類ではない場合(ステップS802aでNO)、ステップS803aに進み、描画用バッファを新規に生成して、カレントバッファに設定し、ステップS804aに進む。ここで生成するバッファは、表示画像全体を描画するための大きさをもったバッファである。一方、処理対象が前回の処理対象オブジェクトと同じ分類である場合(ステップS802aでYES)には、バッファを作成せず、ステップS804aに進む。一番後方のオブジェクトを処理対象としている場合には、前の処理の対象が存在しないので、ステップS0802aの判定はNOとなる。ステップS804aでは、第一描画部0401が、RAM0302上のオブジェクト情報を参照して、処理対象のオブジェクトが省略オブジェクトかどうかを判定する。処理対象オブジェクトが省略オブジェクトではない場合(ステップS804aでNO)、ステップS806に進む。処理対象オブジェクトが省略オブジェクトであった場合(ステップ804aでYES)は、ステップS805aに進み、カレントバッファを省略オブジェクトバッファとして、第二描画処理(ステップS702)まで保持する。以降は、実施例1と同様の処理に従う。この場合、第二描画処理(ステップS702)のステップS1003において、第二描画部0402は、前後に隣接する省略オブジェクトは後方に存在する省略オブジェクトから順に同じバッファに描画する。このように、変形例1においては、前後に隣接する少なくとも1つの省略オブジェクトをグループ化して、グループ毎に同じバッファに描画を行う。従って、省略オブジェクトバッファと描画オブジェクトバッファを合成する際に、位置合わせを必要としない。さらに、前後に隣接する省略オブジェクトが多数存在する場合には、各省略オブジェクトに対して別々にバッファを確保するのに比べて、メモリの使用領域を抑えることができる。
【0030】
また、ワークエリアの使用量を削減のための変形例2として、第一描画処理(ステップS700)において省略オブジェクトバッファを確保せずに、本発明の目的を実現することもできる。この場合には、ステップS805においては、カレントバッファを解放する。そして、第二描画処理(ステップS702)のステップS1003において、第二描画部0402が、処理対象の省略オブジェクトの後方に相当する描画オブジェクトバッファを確保する。そして、その描画オブジェクトバッファの前方に存在する省略オブジェクトを順に描画していくことで、オブジェクトの前後関係を維持して全てのオブジェクトを描画することが可能になる。そして、追加して省略オブジェクトが描画された複数の描画オブジェクトバッファを、第二合成部0404によって、後方から重ねて合成することで、表示画像を生成することができる。
【0031】
なお、本実施例の説明においては、図1や図2で示したような電子辞書において和英辞書を選択するためのGUIを例に説明を行ったが、本実施例は、利用者に提示するGUIの内容(オブジェクトのアートワークや配置位置など)によって限定されるものではない。例えば、電子辞書における、語句の検索結果を表示する際の表示画像や、地図や電子書籍等の各種アプリケーションで提供されるGUIや、Painter’s Algorithmによって描画される他の表示画像にも、本実施例は適応することができる。また、図3で示したオーサリングツールの景観、構成にも限定されず、表示画像を描画するよりも前の何らかの工程で、省略オブジェクトを予め指定することが可能であれば、実施例1の発明は適応される。
【0032】
<実施例2>
本実施例では、描画に時間がかかるオブジェクトを画像処理装置が自動で判別し、GUI開発者による明示的な指定作業を不要とする例を示す。
【0033】
実施例1では、省略オブジェクトを、GUI開発者がオーサリングツール上で明示的に指定する例を示した。この構成では、省略されるオブジェクトをGUI開発者のコントロール下に置くことが可能な反面、別途、オーサリングツールを利用して指定作業を行う必要があった。また、近年では、利用者が製品を購入後、外部メディアやネットワークなどを介して、コンテンツを追加または更新する機能を備えたデバイスが普及している。この場合、GUI開発時に、全ての省略オブジェクトを指定することは困難である。
【0034】
このように、GUI開発者が明示的に省略オブジェクトを指定するよりも、画像処理装置が省略オブジェクトを自動的に判別し、指定作業をすることなく省略画面を提示できた方が、より有用な場合がある。本実施例では、実施例1で示した第一描画処理(ステップS700)を変更することで、これを実現する。
【0035】
本実施例では、図5で示した第一描画処理(ステップS700)の詳細以外の構成及び処理は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。また、上述したように、図3で説明したオーサリングツールを利用した事前の省略オブジェクトの指定作業は行う必要はない。
【0036】
図10は、本実施例における第一描画処理(ステップS700)の詳細を示すフローチャートである。実施例1と同様、ここでの処理は、Painter’s Algorithmをベースとし、後方に配置されたオブジェクトから前方に配置されたオブジェクトの順に処理を行う。
【0037】
はじめに、ステップS1200において、取得部0400は、ROM301から、オブジェクトの種類と外接矩形(位置と幅・高さ)、前後関係を示すオブジェクト情報を取得し、RAM0302上に保持する。ここでオブジェクトの種類とは、テキスト、イメージ、ラベルなどといった、表示画像であるGUI画面における要素を示す種類ものである。本実施例では、これらのオブジェクト情報を、テーブルで取得するものとする。ステップS1201において、第一描画部0401がRAM302上のオブジェクト情報を参照し、処理対象を一番後方のオブジェクトに設定する。ステップS1202において、第一描画部0401が、この一つ前に処理対象だったオブジェクトが描画済みかどうかを判定する。一つ前の処理対象のオブジェクトが描画されていない、あるいは初回の処理だった場合には(ステップS1202でNO)、ステップS1203に進み、新しく描画オブジェクトバッファを生成してカレントバッファに設定して、ステップS1204に進む。ここで生成するバッファの大きさは、ディスプレイ0304に表示する表示画像全体を描画できるのに十分な大きさのものとする。一方、一つ前の処理対象のオブジェクトが描画済みであった場合には(ステップS1202でYES)、そのままステップS1204に進む。
【0038】
次に、本実施例では、ステップS1204において、第一描画部0401が、RAM0302上に保持された情報から、処理対象のオブジェクトの種類がラベル、または、イメージであるか否かの判定を行う。これは、本実施例で生成する表示画像が提供する電子辞書のGUIでは、描画時間の長いオブジェクトが、サイズの大きい辞書データのロードを要するラベルかイメージに限定されるためである。処理対象であるオブジェクトが、ラベルでもイメージでもなかった場合(ステップS1204でNO)、処理はステップS1205に進む。ステップS1205において、取得部400は、オブジェクトのアートワーク等、処理対象のオブジェクトを描画するために必要なオブジェクト情報を取得し、RAM0302に上に保持する。第一描画部0401は、ステップS1206において、RAM0302上のオブジェクト情報に基づき、カレントバッファに処理対象のオブジェクトを描画し、ステップS1207において、オブジェクトに描画済みであることを示すフラグを立てる。そして、ステップS1211に進む。ここで示した描画オブジェクトに対する処理は、実施例1と同様である。
【0039】
一方、処理対象のオブジェクトがラベル、または、イメージであった場合(ステップS1204でYES)、処理はステップS1208に進む。ステップS1208では、取得部400が、具体的に利用者に提示するテキストやイメージ名を取得するため、辞書データをロードして、描画に用いるオブジェクト情報を取得する。そしてステップS1209において、本実施例では、第一描画部0401が、処理対象であるオブジェクトに対する描画処理がさらなる省略条件に合致するか否かの判定を行う。本実施例では、オブジェクト情報を含む辞書データのロードに200ミリ秒という閾値以上を要するものとする。ここで用いる省略条件は、合致する場合に、第一描画部0401での描画処理を省略するもので、条件に合致するオブジェクトを省略オブジェクトと分類するための条件である。処理対象となっているオブジェクトが省略オブジェクトに分類された場合は、第二描画部0402での第二描画処理(ステップS702)まで描画を行わない。本実施例では、ステップS1208において、辞書データのロード開始から200ミリ秒経過後にポーリング(問い合わせ)を行い、辞書データのロードが完了したか否かを判定する(ステップS1209)。これは、例えば、辞書データのロードが完了した際に立てられるフラグなどをチェックすれば良い。ここで、省略条件に合致しなかった場合(ステップS1209でNO)、処理対象のオブジェクトがラベルやイメージでなかった場合と同様、描画オブジェクトであるとみなし、ステップS1206に進んでカレントバッファにオブジェクトを描画する。省略条件に合致した場合(ステップS1209でYES)、処理対象のオブジェクトを省略オブジェクトとして指定し、ステップS1210に進む。ステップS1210では、カレントバッファを省略オブジェクトバッファとして、描画を行わずに第二描画処理まで保持する。このとき、第一描画部0401は、ステップS1200で取得部400が取得したオブジェクト情報のうち、外接矩形の位置(画面左上を原点とする座標)と幅・高さの情報を参照する。そして、カレントバッファのメモリ領域のうち、対応する外接矩形を描画するのに必要十分な大きさの領域を確保して、残りを解放する。
【0040】
その後、ステップS1211において、第一描画部0401は、すべてのオブジェクトを処理したか否かの判定を行う。ここで、まだ未処理のオブジェクトが存在する場合(ステップS1210でNO)は、ステップS1212で描画対象を1つ手前のオブジェクトに設定し、ステップS1202の処理に戻り、次のオブジェクトに対して同様の処理を行う。一方、すべてのオブジェクトを処理し終えた場合(ステップS1211でYES)、ステップS1213に進む。ステップS1213では、第一合成部0403が、描画オブジェクトが有する前後関係を維持したまま、全ての描画オブジェクトバッファを合成する。このとき、第一描画処理において第一描画部0401によって描画されてRAM0302上に保持されていた描画オブジェクトバッファを1つ画像に合成する。このとき、第一合成部0403は、取得部0400が取得したオブジェクトの前後関係を示す情報を参照し、後方に存在するオブジェクトの上に前方に存在するオブジェクトが描かれるよう、順に描画オブジェクトバッファを合成する。本実施例では、和英辞典省略画面0200の表示画像が生成される。そして、ステップS1214において、生成された表示画像をディスプレイ0304に出力する。以上が、本実施例における第一描画処理(S700)である。この後に続くステップS701、及び第二描画処理(S702)は、既に説明した実施例1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
以上で説明した本実施例では、事前にオブジェクトの省略条件を設定しておくことで、省略オブジェクトを画像処理装置が自動的に判定することが可能となる。従って、GUIの開発者は、オーサリング環境において省略対象の全てのオブジェクトを指定する作業を行わなくても良い。また、利用者が製品を購入後に追加したコンテンツに対しても、本実施例の描画処理を適応し、条件に合致するオブジェクトの描画を省略して、素早く機器の反応を利用者に示すことができる。従って、ユーザは操作が有効に受け付けられたことを早く認識できる。また、省略画面において表示される描画オブジェクトに、ユーザの操作とのインタラクションが可能な操作用のオブジェクトが含まれている場合には、ユーザは省略オブジェクトの描画終了を待つ必要なく、操作を行える。さらに、本実施例では、省略オブジェクトを描画する際に、和英辞典省略画面0200でされた描画オブジェクトの描画結果を再利用して、省略のない本来の和英辞典画面0102を生成する。従って、仮の静止画像を表示することでユーザの操作の有効性を示し、全てのオブジェクト情報をロードした後に改めて表示画像を生成する場合に比べて、高速に最終的な表示画像を提示することが可能となる。また、本実施例においても、省略オブジェクトバッファを確保する際に、各処理対象オブジェクトを描画するのに必要十分な領域を確保する。常に画面サイズと同じ大きさのバッファを確保した場合、組み込み機器などの低リソースデバイスでは、ワークエリアが不足する可能性があるが、本実施例によれば、ワークエリアの使用量を抑えることができる。
【0042】
なお、本実施例の説明においては、省略オブジェクトである可能性が高いものに対してのみ省略条件に合致するか否かを判定し、省略オブジェクトである可能性が低いものは描画オブジェクトと決定して処理することで、判定処理の付加を低減した。その一例として、省略条件に合致するか否かを判定するオブジェクトの種類をラベル、または、イメージに限定したが、本発明の実施の態様はこれによって限定されるものではない。他の種類のオブジェクトを、省略条件を判定する対象としてもよく、もちろん全てのオブジェクトに省略条件を設定してもよい。また、処理対象とするオブジェクトがラベル、イメージであるか否かを、省略オブジェクトであるか否かを判定する省略条件とし、さらなる詳細な省略条件での判断は省略することもできる。さらに、本実施例では、省略条件として、オブジェクト情報を取得して描画するための時間が200ミリ秒という閾値以上に至ることを条件とする例を挙げたが、その他の条件を用いることもできる。他の例として、例えば、処理対象のオブジェクトの描画面積が一定の大きさを超えることを省略条件として設定しても良い。これは、描画面積の大きいオブジェクトは、一般に、描画処理により長い時間を要する傾向にあることを踏まえたものである。また、ここで設定する条件は複数であっても良い。また、複数条件を設定した場合に、それぞれの条件に重み付けを行い、各条件の判定結果から評価値を算出する評価関数を構築しても良い。この場合、図10のステップS1206で示した、省略条件に合致したか否かの判定は、各オブジェクトの評価値が、予め定められた閾値を上回るか否かで決定する。これにより、例えば、ボタンやリストなど、ユーザが機器操作を行うために必要なコントロールオブジェクトを、他のオブジェクトよりも描画の優先度を高くするなど、より柔軟に省略オブジェクトの決定条件を定めることができる。このように、省略条件は、実現するGUIやデバイスの特性に応じて、任意に設定可能なものである。
【0043】
実施例2においても、各省略オブジェクトを描画するのに必要十分な大きさの省略オブジェクトバッファを確保するため、それら描画オブジェクトバッファと合成して1つの画像を生成する(ステップS1006)際に、位置合わせをする必要がある。次に、実施例2の変形例1として、描画オブジェクトに対してと同様に、オブジェクトの前後関係において前後に隣接する省略オブジェクトはグループ化し、グループ毎に独立した省略オブジェクトバッファに描画することもできる。変形例1では、描画オブジェクトバッファと同様に、表示画像全体を描画するのに十分な大きさの省略オブジェクトバッファを確保するため、位置合わせをすることなくバッファを合成できる。変形例1は、例えば以下のようにして実現される。一例として、図10のフローチャートのステップS1210の前に、第一描画部0401が、RAM0302上の情報を参照し、前回の処理で省略オブジェクトバッファが確保されたかを判定する処理ステップを設ける。そして、RAM0302上に、前回の処理で確保された省略オブジェクトバッファが存在しない場合にのみステップS1210に進む。そしてS1210では、カレントバッファを表示画面全体の描画が可能な大きさのまま、省略オブジェクトバッファとしてRAM0302上に保持する。前回の処理で省略オブジェクトバッファが確保されていれば、ステップS1210をスキップしてステップS1211に進む。この場合、第二描画部0402が、第二描画処理(ステップS702)において、前後に隣接する省略オブジェクトは後方に存在する省略オブジェクトから順に同じバッファに描画する。このような処理ステップにより、実施例2の変形例1では、オブジェクトの前後関係において前後に隣接する省略オブジェクトはグループ化し、グループ毎に独立した省略オブジェクトバッファに描画することができる。従って、省略オブジェクトバッファと描画オブジェクトバッファを合成する際に、位置合わせを必要としない。さらに、前後に隣接する省略オブジェクトが多数存在する場合には、各省略オブジェクトに対して別々にバッファを確保するのに比べて、メモリの使用領域を抑えることができる。
【0044】
また、ワークエリアの使用量を削減のための変形例2として、第一描画処理(ステップS700)において省略オブジェクトバッファを確保せずに、本発明の目的を実現することもできる。この場合には、ステップS1210においては、カレントバッファを解放する。そして、第二描画処理(ステップS702)のステップS1003において、第二描画部0402が、処理対象の省略オブジェクトの後方に相当する描画オブジェクトバッファを確保する。そして、その描画オブジェクトバッファの前方に存在する省略オブジェクトを順に描画していくことで、オブジェクトの前後関係を維持して全てのオブジェクトを描画することが可能になる。そして、省略オブジェクトが追加して描画された複数の描画オブジェクトバッファを、第二合成部0404によって、後方から重ねて合成することで、表示画像を生成することができる。
【0045】
なお、本実施例の説明においては、図1や図2で示したような電子辞書において和英辞書を選択するためのGUIを例に説明を行ったが、本実施例は、利用者に提示するGUIの内容(オブジェクトのアートワークや配置位置など)によって限定されるものではない。例えば、電子辞書における、語句の検索結果を表示する際の表示画像や、地図や電子書籍等の各種アプリケーションで提供されるGUIや、Painter’s Algorithmによって描画される他の表示画像にも、本実施例は適応することができる。
【0046】
<その他の実施例>
これまでに説明した実施例では、すべてのオブジェクトが省略条件に合致しなかった場合、最初から省略のない画面を利用者に提示することが可能である。しかし、第一描画部0401での第一描画処理(ステップS700)において、省略オブジェクトか否かの判定処理が行われるため、従来の描画処理と比較して、描画処理全体が僅かに長くなる可能性がある。これを回避するため、描画を行う表示画像、省略オブジェクトが含まれないことが明らかである場合、本実施例による省略画面の描画処理を行わず、通常の描画処理を行っても良い。このためには、ROM0301に保持されているコンテンツデータ内に、省略オブジェクトを含む表示画像を用いたGUIであることを示すフラグを設定しておく。そして、第一描画部0401が第一描画処理(ステップS700)のはじめにそれをチェックすれば、容易に実現可能である。
【0047】
本発明は、これまでに説明したような制御方法に従って動作する情報処理装置であっても良い。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後関係を有する複数のオブジェクトを取得する取得手段と、
前記複数のオブジェクトを、優先的に描画する描画オブジェクトと、非優先的に描画する省略オブジェクトとに分類する分類手段と、
前記描画オブジェクトを描画して保持する第一の描画手段と、
前記複数のオブジェクトが有する前後関係を示す情報を参照し、前記描画された描画オブジェクトを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、表示部に表示させる第一の合成手段と、
前記第一の合成手段による合成の後、前記省略オブジェクトを描画する第二の描画手段と、
前記前後関係を示す情報を参照し、前記第二の描画手段により描画された省略オブジェクトと、前記第一の描画手段により描画され保持されていた描画オブジェクトとを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、前記表示部に表示させる第二の合成手段とを備え、
前記第一の描画手段は、前記複数のオブジェクトが有する前後関係において、前後に隣接する少なくとも1つの描画オブジェクトをグループ化し、該グループ毎に独立したバッファに描画して保持することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第二の描画手段は、描画の対象となる少なくとも1つの省略オブジェクトの大きさに応じた大きさのバッファを生成し、該バッファに前記描画の対象となる少なくとも1つの省略オブジェクトを描画することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分類手段は、前記複数のオブジェクトのそれぞれに対して、描画オブジェクトであるか、省略オブジェクトであるかを任意に指定する操作の結果に基づいて、前記複数のオブジェクトを分類することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記分類手段は、前記複数のオブジェクトのそれぞれが1つ以上の省略条件に合致するか否かを判定することによって、優先的に描画する描画オブジェクトと、非優先的に描画する省略オブジェクトとに分類することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記分類手段では、前記少なくとも1つの省略条件のうちの1つとして、前記複数のオブジェクトのそれぞれについて、該オブジェクトを描画するため要する描画時間が閾値を超えるかを判定し、前記閾値以上の描画時間を要しないオブジェクトを描画オブジェクト、前記閾値以上の描画時間を要するオブジェクトを省略オブジェクトとして分類することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記分類手段では、前記複数のオブジェクトのそれぞれについて、前記少なくとも1つの省略条件に合致するか否かを判定した結果を組み合わせて評価値を算出し、該評価値が予め定められた条件を満たす場合に、該オブジェクトを省略オブジェクトとして分類することを特徴とする請求項4乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数のオブジェクトのうち、前記分類手段によって省略オブジェクトに分類されるオブジェクトが存在するか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段により、省略オブジェクトが存在すると判定された場合にのみ動作することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータに読み込み込ませ実行させることで、前記コンピュータを請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
取得手段により、前後関係を有する複数のオブジェクトを取得する取得工程と、
分類手段により、前記複数のオブジェクトを、優先的に描画する描画オブジェクトと、非優先的に描画する省略オブジェクトとに分類する分類工程と、
第一の描画手段により、前記描画オブジェクトを描画して保持する第一の描画工程と、
第一の合成手段により、前記複数のオブジェクトが有する前後関係を示す情報を参照し、前記描画された描画オブジェクトを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、表示部に表示させる第一の合成工程と、
前記第一の合成工程の後、第二の描画手段により、前記省略オブジェクトを描画する第二の描画工程と、
第二の合成手段により、前記前後関係を示す情報を参照し、前記第二の描画手段により描画された省略オブジェクトと、前記第一の描画手段により描画され保持されていた描画オブジェクトとを、前記前後関係を維持した状態で1つの画像として合成し、前記表示部に表示させる第二の合成工程とを備え、
前記第一の描画工程では、前記複数のオブジェクトが有する前後関係において、前後に隣接する少なくとも1つの描画オブジェクトをグループ化し、該グループ毎に独立したバッファに描画して保持することを特徴とする情報処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−83822(P2013−83822A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224138(P2011−224138)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】