説明

情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラム

【課題】情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラムを提供する。
【解決手段】基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から信号強度の測定情報を受信する受信部と、基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部と、前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部と、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部と、前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部と、を備える、情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、衛星から送信された無線信号を受信可能な受信装置が車や携帯電話などの移動体に搭載されている。GPS(Global Positioning System)測位によれば、かかる受信装置を搭載した移動体の位置を推定することが可能である。このような受信装置を用いた位置推定技術は、ナビゲーション、セキュリティーまたは娯楽などの多岐にわたる分野において重要な共通基盤技術である。しかし、GPS測位に基づく位置推定技術は、起動時に同期補足のために要する時間が長く、また、衛星からの無線信号が届かない屋内や地下での利用が困難であった。
【0003】
また、例えば特許文献1に記載されているように、無線LAN(Local Area Network)の基地局から送信される無線信号の無線端末における信号強度に基づいて無線端末の位置を推定する方法も提案されている。具体的には、事前に登録された各基地局の位置情報と、無線信号の信号強度から算出される各基地局および無線端末間の距離とに基づいて無線端末の位置を推定することができる。無線LANの基地局は屋内や地下にも設置されるので、この推定方法によれば、GPS測位に基づく位置推定技術では困難であった屋内や地下での位置推定を行うことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−104029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、基地局の移動などにより、登録されている基地局位置情報が誤った情報になってしまう場合が想定される。このため、誤った基地局位置情報に基づいて行われる位置推定の精度も劣化してしまうことが懸念される。近日、ユーザにより携帯される移動基地局の普及により、上記懸念は一層高まりつつある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、基地局位置情報を信頼性の高い値に更新していくことが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から信号強度の測定情報を受信する受信部と、基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部と、前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部と、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部と、前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0008】
前記情報管理部は、前記基地局の推定位置と前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報の示す位置との差分が規定値を上回っている場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている指標の示す信頼性を低下させてもよい。
【0009】
前記基地局の推定位置は、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の示す位置であってもよい。
【0010】
前記測定情報は、信号強度の測定結果および測定位置情報を含み、前記基地局の推定位置は、前記測定情報に含まれる前記測定位置情報の示す位置であってもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記受信部により受信された前記測定情報を記憶する測定情報記憶部をさらに備えてもよい。
【0012】
前記基地局位置推定部は、前記測定情報記憶部を参照し、前記受信部により受信された前記基地局に関する複数の測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定し、前記推定結果評価部は、前記複数の測定情報の各々の示す信号強度の大きさに応じて前記指標を算出してもよい。
【0013】
前記推定結果評価部は、前記複数の測定情報の各々の示す信号強度の平均値を前記指標として算出してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記情報管理部により前記基地局の前記指標の信頼性が低下させられた基地局の履歴情報を記憶する履歴情報記憶部と、前記履歴情報に基づいて前記基地局が移動基地局であるか否かを判断する移動基地局判断部と、前記移動基地局判断部により前記移動基地局であると判断された基地局を示す情報を記憶する移動基地局情報記憶部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
前記移動基地局判断部は、前記指標の信頼性が所定の頻度以上で低下させられた基地局を移動基地局であると判断してもよい。
【0016】
前記情報処理装置は、前記無線端末から受信される前記測定情報、および前記基地局情報記憶部に記憶されている前記基地局位置情報に基づいて前記無線端末の位置を推定する端末位置推定部をさらに備え、前記端末位置推定部は、前記測定情報に含まれる基地局ごとの測定結果のうちで、前記指標の示す信頼性が閾値を上回っている基地局の測定結果を用いて前記無線端末の位置を推定してもよい。
【0017】
前記端末位置推定部は、前記測定情報に含まれる基地局ごとの測定結果のうちで、前記指標の示す信頼性が閾値を上回っている基地局であって、かつ、前記移動基地局情報記憶部に移動基地局として記憶されていない基地局の測定結果を用いて前記無線端末の位置を推定してもよい。
【0018】
前記情報管理部は、前記基地局の推定位置と前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報の示す位置との差分が前記規定値を上回っている場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている指標の示す信頼性を前記閾値以下に低下させてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶媒体が記憶するステップと、基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から、信号強度の測定情報を受信するステップと、前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定するステップと、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出するステップと、算出した前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記記憶媒体に記憶されている基地局位置情報を、推定した前記基地局の位置情報で更新するステップと、を含む情報処理方法が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から、信号強度の測定情報を受信する受信部と、基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部と、前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部と、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部と、前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末と、前記無線端末から信号強度の測定情報を受信する受信部、基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部、前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部、および前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部、を有する情報処理装置と、を備える情報処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、基地局位置情報を信頼性の高い値に更新していくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による情報処理システムの構成を示した説明図である。
【図2】測定情報の具体例を示した説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による位置推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図4】基地局情報記憶部が記憶する基地局情報の具体例を示した説明図である。
【図5】測定情報記憶部が記憶する各測定情報の具体例を示した説明図である。
【図6】端末位置推定の具体例を示した説明図である。
【図7】推定誤差の概念を示した説明図である。
【図8】推定誤差の概念を示した説明図である。
【図9】基地局の位置情報および推定誤差の算出に用いられる測定情報の一例を示した説明図である。
【図10】基地局の位置情報および推定誤差の算出に用いられる測定情報の一例を示した説明図である。
【図11】基地局情報記憶部が記憶する基地局情報の更新例を示した説明図である。
【図12】第1の実施形態による位置推定装置の動作を示したフローチャートである。
【図13】基地局が移動した場合の測定情報の変化を示した説明図である。
【図14】第2の実施形態による位置推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図15】基地局情報記憶部が記憶する基地局情報の更新例を示した説明図である。
【図16】第2の実施形態による位置推定装置の第1の動作例を示したフローチャートである。
【図17】第2の実施形態による位置推定装置の第2の動作例を示したフローチャートである。
【図18】第2の実施形態による位置推定装置の第3の動作例を示したフローチャートである。
【図19】第3の実施形態による位置推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図20】第3の実施形態による情報処理システムの動作例を示したシーケンス図である。
【図21】第4の実施形態による位置推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図22】低信頼性基地局情報記憶部が記憶する低信頼性基地局情報の具体例を示した説明図である。
【図23】移動基地局情報記憶部が記憶する移動基地局情報の具体例を示した説明図である。
【図24】第4の実施形態による位置推定装置の動作例を示したフローチャートである。
【図25】第5の実施形態による無線端末の構成を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じて基地局30A、30Bおよび30Cのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、基地局30A、30Bおよび30Cを特に区別する必要が無い場合には、単に基地局30と称する。
【0026】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.情報処理システムの基本構成
2.第1の実施形態:新旧推定誤差の比較結果に応じた基地局位置情報の更新
2−1.第1の実施形態による位置推定装置の構成
2−2.第1の実施形態による位置推定装置の動作
3.第2の実施形態:推定誤差の補正
3−1.第2の実施形態による位置推定装置の構成
3−2.第2の実施形態による位置推定装置の動作
(第1の動作例)
(第2の動作例)
(第3の動作例)
4.第3の実施形態:無線端末の位置推定
4−1.第3の実施形態による位置推定装置の構成
4−2.第3の実施形態の動作
5.第4の実施形態:移動基地局の判断
5−1.第4の実施形態による位置推定装置の構成
5−2.第4の実施形態による位置推定装置の動作
6.第5の実施形態:無線端末への機能実装
7.まとめ
【0027】
<1.情報処理システムの基本構成>
本発明は、一例として「2.第1の実施形態」〜「6.第5の実施形態」において詳細に説明するように、多様な形態で実施され得る。また、各実施形態による位置推定装置20または無線端末40は、
(1)基地局位置情報および基地局位置情報の信頼性を示す指標(推定誤差)を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部(216、416)と、
(2)基地局から送信された無線信号の信号強度の測定情報に基づいて基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部(224、424)と、
(3)基地局位置推定部により推定される基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部(推定誤差算出部228、428)と、
(4)推定結果評価部により算出された指標が基地局情報記憶部に記憶されている指標より高い信頼性を示す場合に、基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部(232、234、432)と、を備える。
【0028】
以下では、まず、このような各実施形態において共通する基本構成について図1および図2を参照して説明する。
【0029】
(情報処理システムの構成)
図1は、本発明の実施形態による情報処理システム1の構成を示した説明図である。図1に示したように、本発明の実施形態による情報処理システム1は、位置推定装置20(情報処理装置)と、複数の基地局30と、無線端末40と、を備える。
【0030】
基地局30は、空間的に散在する通信装置間の通信を制御する。例えば、基地局30は、それぞれの電波到達範囲内にある無線端末40と他の無線端末(図示せず。)との無線通信を制御したり、無線端末40と基地局30に有線で接続された通信装置との通信を制御したりすることができる。具体的には、基地局30は、WiFi(Wireless Fidelity)規格に基づく無線LAN(Local Area Network)の基地局であってもよいし、LTE(Long Term Evolution)の基地局であってもよいし、GSM(Global System for Mobile Communications)の基地局であってもよいし、Bluetooth(登録商標)の基地局であってもよい。
【0031】
また、基地局30は、例えばビーコン信号を定期的に送信することにより無線ネットワークを形成する。このビーコン信号は、基地局30を識別する基地局IDを含むビーコン信号を含む。このため、無線端末40は、受信したビーコン信号に含まれる基地局IDから、当該ビーコン信号の送信元の基地局30を特定することが可能である。
【0032】
無線端末40は、基地局30による制御に従って各種データを無線で送受信することができる。例えば、無線端末40は、基地局30を介してコンテンツ配信サーバ(図示せず。)からコンテンツデータを受信したり、他の無線端末と電子メールを送受信したりすることができる。なお、コンテンツデータとしては、音楽、講演およびラジオ番組などの音声データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどの多様なデータがあげられる。
【0033】
また、このような無線端末40は、例えば、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistant)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、または家電機器などの情報処理装置であってもよい。
【0034】
また、無線端末40は、基地局30から送信される無線信号(例えば、ビーコン信号)を受信すると、該無線信号の信号強度を測定することができる。そして、無線端末40は、測定した信号強度情報、基地局30の基地局ID、および測定位置を示す測定位置情報を含む測定情報を位置推定装置20に送信する。ここで、図2を参照して測定情報の具体例を説明する。
【0035】
図2は、測定情報の具体例を示した説明図である。図2に示したように、測定情報は、測定位置情報、測定時刻、および基地局ごとの信号強度情報を含む。なお、本明細書においては、説明の便宜上、各基地局に付した符号と基地局IDが共通するものとする。
【0036】
測定位置情報は、上述したように、無線信号の測定位置を示す情報である。この測定位置情報は、無線端末40がGPSなどの位置推定機能を有する場合には、当該位置推定機能により推定することが可能である。また、無線端末40のユーザが測定位置情報を入力する実施形態も実現可能である。その他、測位位置情報は、携帯電話の基地局情報を用いた方法や、各種センサを用いた方法などにより取得することも可能である。
【0037】
また、図2においては測定位置情報を簡略化して示しているが、測定位置情報は、緯度経度を用いた形式、x、y座標を用いた形式、極座標を用いた形式、またはベクトルを用いた形式などにより表現されてもよい。
【0038】
また、図2においては、信号強度情報が「Dbm」単位で表わされる例を示したが、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、信号強度情報は、「40%」または「80%」のように、設定値(例えば信号強度の飽和値)に対する測定値の割合で表現されたものであってもよい。
【0039】
また、基地局30が送信した無線信号の信号強度は、所定の規則に従い、基地局30から離隔するにつれて減少する。すなわち、無線端末40における無線信号の信号強度は、該無線信号を送信した基地局30と無線端末40との距離に換算することが可能である。このように、信号強度と、信号強度から推定される基地局30および無線端末40間の距離とは対応関係にあるので、無線端末40は、信号強度から推定される基地局30および無線端末40間の距離を信号強度情報として扱ってもよい。
【0040】
ここで、図1を参照して情報処理システム1の説明に戻ると、位置推定装置20(情報処理装置)は、無線端末40から受信される測定情報に基づき、各基地局30の位置情報を推定する。また、位置推定装置20は、各基地局30の位置情報を記憶しており、この各基地局30の位置情報を、測定情報に基づく推定結果に応じて更新する。
【0041】
また、第3の実施形態による位置推定装置20−3および第4の実施形態による位置推定装置20−4は、無線端末40から位置推定要求として基地局30ごとの信号強度情報を受信すると、当該信号強度情報と、事前に記憶している各基地局30の位置情報とに基づいて無線端末40の位置情報を推定することが可能である。
【0042】
さらに、第3の実施形態による位置推定装置20−3および第4の実施形態による位置推定装置20−4は、無線端末40の位置推定に際し、信頼性の高い基地局30の位置情報を選択的に用いることにより、位置推定の精度を向上することが可能である。以下、このような各実施形態について詳細に説明する。
【0043】
<2.第1の実施形態:新旧推定誤差の比較結果に応じた基地局位置情報の更新>
[2−1.第1の実施形態による位置推定装置の構成]
図3は、本発明の第1の実施形態による位置推定装置20−1の構成を示した機能ブロック図である。図3に示したように、第1の実施形態による位置推定装置20−1は、通信部212と、基地局情報記憶部216と、測定情報記憶部220と、基地局位置推定部224と、推定誤差算出部228と、情報管理部232と、を備える。
【0044】
通信部212は、無線端末40と情報を送受信するためのインターフェースである。通信部212は、例えば、無線端末40から測定情報を受信する受信部としての機能を有する。なお、通信部212は、有線または無線の伝送路を含む通信網を介して無線端末40と通信してもよい。より詳細には、通信網は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、通信網は、IP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0045】
基地局情報記憶部216は、位置情報および推定誤差からなる基地局情報を基地局30ごとに記憶する。ここで、推定誤差は、基地局30の位置情報の信頼性を示す指標であり、推定誤差が大きいほど位置情報の信頼性は低く、推定誤差が小さいほど位置情報の信頼性は高い。以下、図4を参照し、基地局情報記憶部216が記憶する基地局情報の具体例を説明する。
【0046】
図4は、基地局情報記憶部216が記憶する基地局情報の具体例を示した説明図である。図4に示したように、基地局情報は、対象の基地局を識別する基地局ID、位置情報、および推定誤差を含む。例えば、基地局30Aの基地局情報は、基地局ID「30A」、「位置情報A」、および推定誤差「45m」という情報を含む。なお、基地局情報に含まれる推定誤差の概念および算出方法については、図6〜図8を参照して後述する。
【0047】
測定情報記憶部220は、通信部212により無線端末40から受信された測定情報を記憶する。各測定情報は、図2を参照して説明したように、測定位置情報、測定時刻、基地局IDおよび信号強度情報などを含む。測定情報記憶部220には、図5に示すように、このような各測定情報が蓄積される。なお、各測定情報の送信元の無線端末40は特に限定されない。例えば、図5に示した「測定位置情報1」を含む測定情報の送信元端末と、「測定位置情報2」を含む測定情報の送信元端末は、同一であってもよいし、異なってもよい。また、測定情報には、無線端末40のユーザが歩いている、または車に乗っている等の、測定者属性が含まれてもよい。
【0048】
(基地局位置推定)
基地局位置推定部224は、ある基地局30の位置情報を、当該基地局30に関する複数の測定情報に基づいて推定する。例えば、基地局位置推定部224は、当該基地局30に関する測定情報に含まれる測定位置情報の各々に各測定情報における信号強度の大きさに応じた重みを付し、重みが付された測定位置情報の各々の重心を当該基地局30の位置情報として推定してもよい。以下、図6を参照し、基地局30の位置情報の推定方法をより具体的に説明する。
【0049】
図6は、基地局30の位置情報の推定方法示した説明図である。ここでは、図5に示した2つの測定情報に基づいて基地局30Aの位置を推定することを考える。この場合、基地局位置推定部224は、測定位置情報1の示す測定位置P1、および測定位置情報2の示す測定位置P2の重心を求める際に、測定位置P1および測定位置P2に、信号強度の大きさに応じた重みを付す。
【0050】
なお、各信号強度は距離に換算することが可能である。このため、図6には、測定位置P1における基地局30Aの信号強度「−90Dbm」が「80m」という距離に換算され、測定位置P2における基地局30Aの信号強度「−70Dbm」が「60m」という距離に換算された例を示している。この場合、基地局位置推定部224は、測定位置P1および測定位置P2に、距離換算値「80m」および「60m」に応じた重みを付してもよい。
【0051】
その結果、基地局位置推定部224は、測定位置P1および測定位置P2間を「80m」と「60m」の比である4:3に区分する位置EP1を基地局30Aの位置として推定することができる。さらに、基地局位置推定部224は、以下に示す一般化された数式に従い、複数の測定情報に基づいて基地局30の位置を推定することも可能である。
【0052】
【数1】

【0053】
【数2】

【0054】
【数3】

【0055】
なお、数式1においてPiはi番目の測定位置情報を示す。したがって、測定位置情報が経度、緯度で表される場合、基地局位置推定部224は数式1を経度、緯度ごとに適用する。また、Viは、数式2に示したように、信号強度から推定される無線端末40および基地局30間の距離を示すdistS(EP,Pi)基づいて得られる重み係数である。また、Vは、数式3に示したように重み係数Viの総和である。
【0056】
(推定誤差の算出)
上述したように、基地局位置推定部224による測定情報に基づく位置推定により、基地局30の推定位置は求まる。しかし、この推定位置に実際に基地局30が存在するとは限らず、推定位置は誤差を有することが想定される。以下、この推定誤差について図7および図8を参照して説明する。
【0057】
図7および図8は、推定誤差の概念を示した説明図である。図7に示したように、基地局位置推定部224により基地局30の位置EP1が推定されたとしても、この位置EP1は、例えば破線で示した範囲内の誤差を有すると考えられる。
【0058】
同様に、図8に示したように、測定位置Pxにおける信号強度(距離換算値「40m」)および測定位置Pyにおける信号強度(距離換算値「30m」)に基づいて基地局30の位置EP2を推定した場合を考える。この場合にも、図7に示した例と同様に、位置EP2は例えば図8に破線で示した範囲内の誤差を有すると考えられる。
【0059】
しかし、図8に示したように、位置EP2の有する誤差の方が、図7に示したEP1の有する誤差より小さくなると予想される。これは、図8に示した測定位置Pxおよび測定位置Pyにおける信号強度の方が、図7に示した測定位置P1および測定位置P2における信号強度より大きいので、基地局30の位置をより狭く絞り込めると考えられるからである。
【0060】
このように、基地局位置推定部224により推定された基地局30の位置情報の信頼性は、推定に用いられた各信号強度が大きいほど高くなる。すなわち、基地局位置推定部224により推定された基地局30の位置情報の推定誤差は、推定に用いられた各信号強度が大きいほど小さくなる。
【0061】
そこで、推定誤差算出部228は、基地局位置推定部224による位置情報の推定誤差を、推定に用いられた各信号強度、または各信号強度の距離換算値に基づいて算出する。例えば、推定誤差算出部228は、各距離換算値の平均値を推定誤差として算出してもよいし、各距離換算値の中央値を推定誤差として算出してもよいし、各距離換算値のうちの最大値を推定誤差として扱ってもよい。
【0062】
各距離換算値の平均値を推定誤差として算出する場合、図7に示した例では距離換算値「80m」と「60m」との平均値である「70m」が推定誤差として算出される。一方、図8に示した例では距離換算値「40m」と「30m」との平均値である「35m」が推定誤差として算出される。
【0063】
なお、上記では、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228が2つの測定情報に基づいて対象の基地局30の位置情報および推定誤差を算出する例を説明したが、本実施形態はかかる例に限定されない。例えば、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228は、図9に示すように、対象の基地局30に関する直近の5つの測定情報に基づいて位置情報および推定誤差を算出してもよい。さらに、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228により利用される測定情報は、直近の所定期間内(例えば、3ヵ月以内)の測定情報に限定されてもよい。
【0064】
(基地局情報の更新)
情報管理部232は、基地局情報記憶部216に記憶されている基地局情報(位置情報+推定誤差)を、基地局位置推定部224による推定結果および推定誤差算出部228による算出結果に応じて更新する。
【0065】
具体的には、情報管理部232は、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報と、基地局位置推定部224により推定された位置情報の信頼性を比較する。すなわち、情報管理部232は、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差と、推定誤差算出部228により算出された推定誤差とを比較する。
【0066】
そして、情報管理部232は、推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差の方が小さい場合、すなわち、基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報の信頼性の方が高いと判断される場合、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を、新たな位置情報および推定誤差で更新する。ここで、情報管理部232は、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を、新たな位置情報および推定誤差に置き換えてもよいし、双方の中間値などに更新してもよい。以下、図4、図9〜図11を参照し、情報管理部232による更新処理についてより詳細に説明する。
【0067】
(更新処理の具体例)
基地局情報記憶部216に基地局30Aに関して図4に示した「位置情報A」および推定誤差「45m」が記憶されている状態において、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228が図9に示した5つの基地局30Aに関する測定情報に基づいて位置情報および推定誤差を算出する場合を考える。
【0068】
この場合、基地局位置推定部224は、例えば上記の数式1に従って基地局30Aの位置EP1を推定する。また、推定誤差算出部228は、各距離換算値の平均値「50m」を推定誤差として算出する。
【0069】
さらに、情報管理部232は、推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差「50m」と、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差「45m」を比較する。この場合、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差「45m」の方が小さい、すなわち、基地局情報記憶部216に記憶されている「位置情報A」の信頼性の方が高いと判断される。このため、情報管理部232は、基地局30Aに関する「位置情報A」および推定誤差「45m」を更新しない。
【0070】
その後、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228が、図10に示した測定位置P2〜P6における5つの測定情報に基づいて位置情報および推定誤差を算出するとする。
【0071】
この場合、基地局位置推定部224は、例えば上記の数式1に従って基地局30Aの位置EP2を推定する。また、推定誤差算出部228は、各距離換算値の平均値「40m」を推定誤差として算出する。
【0072】
さらに、情報管理部232は、推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差「40m」と、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差「45m」を比較する。この場合、推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差「40m」の方が小さい、すなわち、基地局位置推定部224により推定された新たな推定位置EP2の信頼性の方が高いと判断される。このため、情報管理部232は、基地局30Aに関する「位置情報A」および推定誤差「45m」を、図11に示すように、新たな推定位置EP2を示す「推定位置情報2」および新たな推定誤差「40m」に更新する。
【0073】
かかる構成により、情報管理部232は、基地局情報記憶部216に記憶されている各基地局30の位置情報を、より信頼性の高い値に更新していくことが可能である。その結果、基地局情報記憶部216に記憶されている各基地局30の位置情報に基づいて無線端末40の位置推定を行う場合には、無線端末40の位置推定の精度を向上させることができる。
【0074】
[2−2.第1の実施形態による位置推定装置の動作]
以上、本発明の第1の実施形態による位置推定装置20−1の構成を説明した。続いて、図12を参照し、第1の実施形態による位置推定装置20−1の動作を説明する。
【0075】
図12は、第1の実施形態による位置推定装置20−1の動作を示したフローチャートである。まず、図12に示したように、位置推定装置20−1の基地局位置推定部224が、対象の基地局30に関して測定情報記憶部220に記憶されている測定情報に基づき、当該基地局30の位置情報を推定する(S304)。
【0076】
続いて、あるいはS304に示した基地局位置推定部224による位置推定と並行して、推定誤差算出部228が、基地局位置推定部224による位置推定に用いられる測定情報に基づき、基地局位置推定部224により推定される位置情報の推定誤差を算出する(S308)。
【0077】
さらに、情報管理部232は、基地局情報記憶部216から対象の基地局30に関する推定誤差を検索し(S312)、検索した推定誤差と、S308において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差とを比較する(S316)。
【0078】
そして、情報管理部232は、新たな推定誤差の方が小さい場合、S304において基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報、およびS308において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差で、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新する(S320)。なお、情報管理部232は、新たな推定誤差の方が大きい場合には、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新しない。
【0079】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、対象の基地局30に関して新たに推定された位置情報の信頼性(推定誤差)に基づき、当該基地局30の位置情報をより適切な値に更新していくことが可能である。
【0080】
<3.第2の実施形態:推定誤差の補正>
次に、本発明の第2の実施形態を説明に先立ち、本発明の第2の実施形態に至った経緯を説明する。
【0081】
近日、ユーザにより携帯される移動基地局の普及や、新幹線に搭載される基地局の存在などにより、基地局の移動が増加している。また、ユーザの自宅に設置される基地局であっても、ユーザの引っ越しにより移動されることが想定される。このようにして基地局30が移動される場合、図13に示すように、当該基地局30に関する測定情報も変化する。
【0082】
図13は、基地局30が移動した場合の測定情報の変化を示した説明図である。図13に示したように、東京エリアに存在する基地局30が、大阪エリアに移動された場合、当該基地局30に関する測定情報も変化する。例えば、図13に示したように、基地局30の移動前は測定位置P4〜P8における測定情報が得られ、基地局30の移動後は測定位置P9〜P13における測定情報が得られる。
【0083】
この場合、基地局30は現実には大阪エリアに移動されているので、測定位置P9〜P13における測定情報に基づき、当該基地局30の位置情報EP3が大阪エリアの位置情報EP4に更新されることが望まれる。
【0084】
この点に関し、移動前の測定位置P4〜P8における測定情報から算出される推定誤差は「20m」であり、移動後の測定位置P9〜P13における測定情報から算出される推定誤差は「50m」である。このため、第1の実施形態において説明した方法においては、移動前の推定誤差の方が小さいので、基地局30の位置情報EP3は大阪エリアの位置情報EP4に更新されない。すなわち、第1の実施形態において説明した方法によれば、一度小さな推定誤差で基地局30の位置情報が推定されると、基地局30が移動した場合に位置情報が更新され難い。
【0085】
そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の第2の実施形態を創作するに至った。本発明の第2の実施形態によれば、基地局30の移動に追従して基地局30の位置情報を適切に更新することが可能である。以下、このような本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。
【0086】
[3−1.第2の実施形態による位置推定装置の構成]
図14は、第2の実施形態による位置推定装置20−2の構成を示した機能ブロック図である。図14に示したように、第2の実施形態による位置推定装置20−2は、通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、および情報管理部234を備える。
【0087】
通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、および推定誤差算出部228は、第1の実施形態で説明した構成であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0088】
一方、第2の実施形態による情報管理部234は、第1の実施形態で説明した情報管理部232に対して付加的な機能が実装された構成である。以下、この第2の実施形態による情報管理部234について詳細に説明する。
【0089】
情報管理部234は、無線端末40から受信される測定情報に基づく対象の基地局30の推定位置と、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報の示す位置との差分が規定値を上回っているか否かを判断する。ここで、対象の基地局30の移動などにより基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報が誤った情報となっている場合に双方の位置の差分が規定値を上回ると考えられる。
【0090】
そこで、情報管理部234は、双方の位置の差分が規定値を上回る場合、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報の信頼性を低下させる。すなわち、情報管理部234は、双方の位置の差分が規定値を上回っている場合、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差の値を大きくする。
【0091】
例えば、WiFi電波の到達距離が一般的に300m程度と言われていることを考慮し、情報管理部234は、600mまたは1Kmなど、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差を300mより大きな値に補正してもよい。
【0092】
かかる構成により、一度小さな推定誤差で基地局30の位置情報が推定された後に当該基地局30が移動された場合には、情報管理部234により上記推定誤差が大きな値に補正される。その結果、移動後に推定誤差算出部228による算出される新たな推定誤差の方が小さくなり易くなるので、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている基地局30の位置情報を、移動後に基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報に更新することが可能となる。
【0093】
(推定誤差補正の具体例)
ここで、図13および図15を参照し、情報管理部234による推定誤差の補正の具体例を説明する。
【0094】
図13に示した測定位置P4〜P8における対象の基地局30に関する測定情報により、図15に示したように、当該基地局30の推定位置EP3を示す「位置情報3(東京)」および推定誤差「20m」が基地局情報記憶部216に記憶されている状態を考える。この状態において、基地局30が東京エリアから大阪エリアに移動され、測定位置P9において当該基地局30に関する測定情報が得られると、基地局位置推定部224は、測定位置P5〜P9における測定情報に基づいて基地局30の位置を推定する。
【0095】
この場合、基地局位置推定部224により推定される基地局30の位置は、測定位置P9が他の測定位置P5〜P8と大きく離隔することに起因して、「位置情報3(東京)」の示す位置との差分が規定値を上回る。このため、情報管理部234は、図15に示したように、当該基地局30の推定誤差を例えば「5000m」に補正する。なお、情報管理部234は、この時点では基地局30の位置情報を変更しない。
【0096】
その後、図13に示した測定位置P9〜P13における測定情報が得られると、これら測定情報に基づいて基地局位置推定部224が基地局30の位置EP4を推定し、推定誤差算出部228が推定誤差「50m」を算出する。
【0097】
ここで、推定誤差算出部228により新たに算出された推定誤差「50m」は、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差「5000m」よりも小さい。このため、情報管理部234は、当該基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報を、位置EP4を示す「位置情報4(大阪)」に更新し、推定誤差を「50m」に更新する。
【0098】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、基地局30が移動された場合、基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報を、移動後の位置付近における測定情報に基づいて適切な値に更新することが可能である。
【0099】
[3−2.第2の実施形態による位置推定装置の動作]
以上、本発明の第2の実施形態による位置推定装置20−2の構成を説明した。続いて、図16〜図18を参照し、第2の実施形態による位置推定装置20−2の動作例を説明する。
【0100】
(第1の動作例)
図16は、第2の実施形態による位置推定装置20−2の第1の動作例を示したフローチャートである。まず、図16に示したように、位置推定装置20−2の基地局位置推定部224が、対象の基地局30に関して測定情報記憶部220に記憶されている測定情報に基づき、当該基地局30の位置情報を推定する(S324)。
【0101】
続いて、あるいはS324に示した基地局位置推定部224による位置推定と並行して、推定誤差算出部228が、基地局位置推定部224による位置推定に用いられる測定情報に基づき、基地局位置推定部224により推定される位置情報の推定誤差を算出する(S328)。
【0102】
さらに、情報管理部234は、基地局情報記憶部216から対象の基地局30に関する位置情報および推定誤差を検索し(S332)、検索した推定誤差と、S328において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差とを比較する(S336)。
【0103】
そして、情報管理部234は、新たな推定誤差の方が小さい場合、S324において基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報、およびS328において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差で、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新する(S340)。
【0104】
一方、新たな推定誤差の方が大きい場合(S336)、情報管理部234は、S324において推定された位置情報、およびS332において検索された位置情報の示す位置が規定値より離れているか否かを判断する(S344)。そして、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れている場合、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている当該基地局30に関する推定誤差を十分に大きな値に補正する(S348)。
【0105】
なお、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている当該基地局30に関する推定誤差を、双方の位置情報の示す位置の差分の大きさに応じた値に補正してもよい。また、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れていない場合には、基地局情報記憶部216の内容は変更されない。
【0106】
(第2の動作例)
図17は、第2の実施形態による位置推定装置20−2の第2の動作例を示したフローチャートである。第2の動作例は、第1の動作例とS324〜S332は共通するが、第1の動作例と判断順序が異なる。
【0107】
具体的には、図17に示したように、S324〜S332の処理が行われると、情報管理部234は、S324において推定された位置情報、およびS332において検索された位置情報の示す位置が規定値より離れているか否かを判断する(S352)。そして、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れている場合、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている当該基地局30に関する推定誤差を十分に大きな値に補正する(S356)。
【0108】
一方、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れていない場合、情報管理部234は、S332において検索された推定誤差と、S328において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差とを比較する(S360)。
【0109】
そして、情報管理部234は、新たな推定誤差の方が小さい場合、S324において基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報、およびS328において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差で、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新する(S364)。
【0110】
このように、第1の動作例のS336およびS344の分岐の順序を入れ替えても、第1の動作例と同等の効果を得ることが可能である。
【0111】
(第3の動作例)
図18は、第2の実施形態による位置推定装置20−2の第3の動作例を示したフローチャートである。第3の動作例では、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報の示す位置との差分が規定値を上回っているか否かを判断される位置が、基地局位置推定部224により測定情報に基づいて推定される位置でない点で他の動作例と大きく相違する。
【0112】
具体的には、図18に示したように、情報管理部234が、基地局情報記憶部216から新たな測定情報に関する基地局30の位置情報および推定誤差を検索する(S372)。続いて、情報管理部234は、測定情報に含まれる測定位置情報の示す位置と、S372において検索された基地局30の位置情報の示す位置が規定値より離れているか否かを判断する(S376)。
【0113】
そして、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れている場合、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている当該基地局30に関する推定誤差を十分に大きな値に補正する(S380)。このように、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れている場合には、基地局位置推定部224および推定誤差算出部228が位置推定および推定誤差の算出を行わなくてよいので、位置推定装置20−2における負荷を軽減することが可能である。
【0114】
一方、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れていない場合(S376)、基地局位置推定部224が、対象の基地局30に関して測定情報記憶部220に記憶されている測定情報に基づき、当該基地局30の位置情報を推定する(S384)。また、推定誤差算出部228が、基地局位置推定部224による位置推定に用いられる測定情報に基づき、基地局位置推定部224により推定される位置情報の推定誤差を算出する(S388)。
【0115】
続いて、情報管理部234は、S372において検索した推定誤差と、S388において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差とを比較する(S392)。そして、情報管理部234は、新たな推定誤差の方が小さい場合、S384において基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報、およびS388において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差で、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新する(S396)。
【0116】
以上説明したように、第3の動作例によれば、測定情報に含まれる測定位置情報の示す位置を基地局30の推定位置として扱うことにより、位置推定装置20−2における負荷を軽減しつつ、他の動作例と同等の効果を得ることが可能である。
【0117】
<4.第3の実施形態:無線端末の位置推定>
以上、本発明の第2の実施形態を説明した。続いて、図19および図20を参照し、本発明の第3の実施形態による位置推定装置20−3について詳細に説明する。
【0118】
[4−1.第3の実施形態による位置推定装置の構成]
図19は、第3の実施形態による位置推定装置20−3の構成を示した機能ブロック図である。図19に示したように、第3の実施形態による位置推定装置20−3は、通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、情報管理部234、および端末位置推定部240を備える。
【0119】
通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、および情報管理部234は、第2の実施形態で説明した構成であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0120】
端末位置推定部240は、無線端末40から送信される位置推定要求に応じ、無線端末40の位置情報を推定する。そして、通信部212が、端末位置推定部240により推定された無線端末40の位置情報を無線端末40に送信する。
【0121】
ここで、無線端末40から送信される位置推定要求は、無線端末40における信号強度測定により得られた基地局30ごとの信号強度情報を含む。例えば、位置推定要求においては、基地局IDおよび信号強度情報が対応付けられている。
【0122】
端末位置推定部240は、このような位置推定要求、および基地局情報記憶部216に記憶されている各基地局30の位置情報に基づき、無線端末40の位置情報を推定する。例えば、端末位置推定部240は、以下に示す数式に従って無線端末40の位置Oを推定する。
【0123】
【数4】

【0124】
【数5】

【0125】
【数6】

【0126】
数式4において、Aiは基地局情報記憶部216に登録されているi番目の基地局の位置情報を示す。したがって、基地局の位置情報が経度、緯度で表される場合、端末位置推定部240は、数式4を経度、緯度ごとに適用する。また、Wiは、数式5に示したように、信号強度から推定される無線端末40およびi番目の基地局間の距離を示すdistS(O,Ai)基づいて得られる重み係数である。また、Wは、数式6に示したように重み係数の総和である。
【0127】
なお、無線端末40の位置推定方法は上記数式4を用いる方法に限られず、端末位置推定部240は、例えば、無線端末40が最も高い信号強度で受信した信号の送信元の基地局30の位置を、無線端末40の位置として推定してもよい。または、端末位置推定部240は、無線端末40が所定の値以上の信号強度で受信した信号の送信元の基地局30の中心となるような位置を、無線端末40の位置として推定してもよい。さらに、最小二乗法を適用することにより、ロバスト性の高い位置推定を実現することも可能である。
【0128】
ここで、第1および第2の実施形態において説明したように、基地局情報記憶部216において推定誤差の大きい位置情報は信頼性が低い。このため、このような位置情報を無線端末40の位置推定に用いると位置推定の精度が劣化してしまうと考えられる。
【0129】
そこで、端末位置推定部240は、位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、位置情報の推定誤差が閾値未満である基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定してもよい。かかる構成により、無線端末40の位置推定の精度を向上することが可能である。
【0130】
なお、情報管理部234は、図16のS348や図17のS356に示した処理に際し、推定誤差を上記閾値より大きな値に補正してもよい。かかる構成により、移動された可能性の高い基地局30の位置情報が無線端末40の位置推定に際して利用されることを防止できる。
【0131】
[4−2.第3の実施形態の動作]
以上、本発明の第3の実施形態による位置推定装置20−3の構成を説明した。続いて、図20を参照し、第3の実施形態による情報処理システムの動作例を説明する。
【0132】
図20は、第3の実施形態による情報処理システムの動作例を示したシーケンス図である。図20に示したように、無線端末40は、周囲の基地局30から送信される無線信号の信号強度測定を行うと(S62)、当該信号強度測定により得られた基地局30ごとの信号強度情報を含む位置推定要求を位置推定装置20−3に送信する(S64)。
【0133】
そして、位置推定装置20−3の端末位置推定部240は、位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、位置情報の推定誤差が閾値未満である基地局30の位置情報を基地局情報記憶部216から検索する(S66)。さらに、端末位置推定部240は、位置情報の推定誤差が閾値未満である基地局30の位置情報、および信号強度情報に基づいて無線端末40の位置を推定する(S68)。
【0134】
その後、位置推定装置20−3の通信部212が、端末位置推定部240による位置推定結果を無線端末40に送信する(S70)。
【0135】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、適切に更新される基地局30の位置情報を、無線端末40の位置推定に活用することができる。したがって、無線端末40の位置推定の精度を向上することが可能である。
【0136】
<5.第4の実施形態:移動基地局の判断>
以上、本発明の第3の実施形態を説明した。続いて、図21〜図24を参照し、本発明の第4の実施形態による位置推定装置20−4について詳細に説明する。
【0137】
[5−1.第4の実施形態による位置推定装置の構成]
図21は、第4の実施形態による位置推定装置20−4の構成を示した機能ブロック図である。図21に示したように、第4の実施形態による位置推定装置20−4は、通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、情報管理部234、低信頼性基地局情報記憶部244、移動基地局判断部248、移動基地局情報記憶部252、および端末位置推定部256を備える。
【0138】
通信部212、基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、情報管理部234は、第1〜第3の実施形態で説明した構成であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0139】
情報管理部234は、第2の実施形態などで説明したように、無線端末40から受信される測定情報に基づく対象の基地局30の推定位置と、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報の示す位置との差分が規定値を上回っているか否かを判断する。そして、情報管理部234は、双方の位置の差分が規定値を上回る場合、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報の信頼性を低下させる。すなわち、情報管理部234は、双方の位置の差分が規定値を上回っている場合、対象の基地局30に関して基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差の値を大きくする。
【0140】
したがって、基地局30の推定誤差は、主に当該基地局30が移動された場合に補正される。このため、推定誤差が補正された基地局30は、ユーザにより携帯される移動基地局である可能性がある。しかし、家庭用基地局であっても、ユーザの移動に伴って移動される場合がある。そこで、本実施形態においては、基地局30の推定誤差が補正された頻度または回数に基づき、基地局30が移動基地局であるか否かを特定する。以下、具体的に説明する。
【0141】
情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている基地局30の推定誤差を大きな値に補正する場合、当該基地局30は固定基地局としての信頼性が低いので、当該基地局を示す基地局IDを、低信頼性基地局情報記憶部244に追加する。ここで、図22を参照し、低信頼性基地局情報記憶部244が記憶する低信頼性基地局情報の具体例を説明する。
【0142】
図22は、低信頼性基地局情報記憶部244が記憶する低信頼性基地局情報の具体例を示した説明図である。図22に示したように、低信頼性基地局情報記憶部244は、低信頼性基地局を示す基地局IDと、当該基地局が低信頼性基地局として報告(追加)された報告時刻を対応付けて記憶している。例えば、図22においては、基地局30Aが「2010/7/14 10:34:56」に低信頼性基地局として報告されたことが示されている。このように、低信頼性基地局情報記憶部244は、報告された低信頼性基地局情報の各々を履歴情報として記憶する履歴情報記憶部として機能する。
【0143】
ここで、家庭用基地局は、ユーザの引っ越しにより移動された結果、低信頼性基地局として情報記憶部244に記憶されることが考えられる。しかし、ユーザが例えば短期間中に何度も引っ越しをすることは考えにくい。
【0144】
そこで、移動基地局判断部248は、低信頼性基地局244を参照し、低信頼性基地局として報告される頻度の高い基地局30を移動基地局と判断する。例えば、移動基地局判断部248は、1週間、1カ月または3ヵ月などの所定期間内に、2回、5回または10回などの規定回数を超えて低信頼性基地局として報告された基地局30を移動基地局であると判断してもよい。
【0145】
より具体的に説明すると、図22に示した例では、基地局30Aが「2010/7/14」〜「2010/7/18」の間に4回も低信頼性基地局として報告されているので、移動基地局判断部248は、基地局30Aが移動基地局であると判断してもよい。
【0146】
移動基地局判断部248により移動基地局であると判断された基地局30の情報は、移動基地局情報記憶部252に追加される。例えば、移動基地局判断部248により基地局30Aが移動基地局であると判断された場合、図23に示すように、移動基地局情報記憶部252に基地局30Aの基地局IDが追加される。なお、移動基地局情報記憶部252には、ユーザ申告された基地局ID、ベンダやキャリアから報告される情報に基づき、オフラインで基地局IDが追加されてもよい。
【0147】
また、移動基地局判断部248により移動基地局であると判断された基地局30の情報は、基地局情報記憶部216から削除されてもよい。例えば、例えば、移動基地局判断部248により基地局30Aが移動基地局であると判断された場合、基地局30Aの位置情報および推定誤差などの基地局情報は基地局情報記憶部216から削除されてもよい。
【0148】
以上説明した移動基地局は定位置に存在しないので、無線端末40の位置推定に際してこのような移動基地局の情報を利用すると、位置推定の精度が劣化してしまうことが懸念される。
【0149】
そこで、端末位置推定部256は、無線端末40からの位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、移動基地局情報記憶部252に移動基地局として記憶されていない基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定してもよい。かかる構成により、無線端末40の位置推定の精度を向上することが可能である。
【0150】
[5−2.第4の実施形態による位置推定装置の動作]
以上、本発明の第4の実施形態による位置推定装置20−4の構成を説明した。続いて、図24を参照し、第4の実施形態による位置推定装置20−4の動作例を説明する。
【0151】
図24は、第4の実施形態による位置推定装置20−4の動作例を示したフローチャートである。まず、図24に示したように、位置推定装置20−4の基地局位置推定部224が、対象の基地局30に関して測定情報記憶部220に記憶されている測定情報に基づき、当該基地局30の位置情報を推定する(S504)。
【0152】
続いて、あるいはS504に示した基地局位置推定部224による位置推定と並行して、推定誤差算出部228が、基地局位置推定部224による位置推定に用いられる測定情報に基づき、基地局位置推定部224により推定される位置情報の推定誤差を算出する(S508)。
【0153】
さらに、情報管理部234は、基地局情報記憶部216から対象の基地局30に関する位置情報および推定誤差を検索し(S512)、検索した推定誤差と、S508において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差とを比較する(S516)。
【0154】
そして、情報管理部234は、新たな推定誤差の方が小さい場合、S504において基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報、およびS508において推定誤差算出部228により算出された新たな推定誤差で、基地局情報記憶部216に記憶されている位置情報および推定誤差を更新する(S520)。
【0155】
一方、新たな推定誤差の方が大きい場合(S516)、情報管理部234は、S504において推定された位置情報、およびS512において検索された位置情報の示す位置が規定値より離れているか否かを判断する(S524)。そして、双方の位置情報の示す位置が規定値より離れている場合、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている当該基地局30に関する推定誤差を十分に大きな値に補正する(S528)。
【0156】
さらに、情報管理部234は、推定誤差を大きな値に補正した基地局30の基地局IDを低信頼性基地局情報記憶部244に追加する(S532)。その後、移動基地局判断部248が、低信頼性基地局244を参照し、低信頼性基地局情報記憶部244に追加される頻度の高い基地局30を移動基地局と判断する(S536)。
【0157】
そして、移動基地局判断部248により移動基地局と判断された基地局30を示す基地局IDが移動基地局情報記憶部252に追加され、当該基地局30に関する情報が基地局情報記憶部216から削除される(S540)。
【0158】
以上説明したように、第4の実施形態によれば移動基地局を判断することができる。このため、端末位置推定部256は、無線端末40からの位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、移動基地局情報記憶部252に移動基地局として記憶されていない基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定することが可能となる。かかる構成により、無線端末40の位置推定精度の向上を図ることができる。
【0159】
<6.第5の実施形態:無線端末への機能実装>
以上、本発明の第1〜第4の実施形態を説明した。本発明の第1〜第4の実施形態においては、基地局情報の更新機能、無線端末40の位置推定機能、および移動基地局の判断機能などが位置推定装置20に実装される例を説明した。しかし、以下に第5の実施形態として説明するように、無線端末40にこれらの機能を実装することも可能である。
【0160】
図25は、第5の実施形態による無線端末40の構成を示した機能ブロック図である。図25に示したように、第5の実施形態による無線端末40は、通信部412、測定部414、基地局情報記憶部416、測定情報記憶部420、基地局位置推定部424、推定誤差算出部428、情報管理部434、低信頼性基地局情報記憶部444、移動基地局判断部448、移動基地局情報記憶部452、および端末位置推定部456を備える。
【0161】
通信部412は、無線端末40の周囲の基地局30とのインターフェースであり、基地局30から送信された無線信号を受信する受信部、および基地局30に無線信号を送信する送信部として機能する。
【0162】
測定部414は、通信部412により各基地局30から受信された無線信号の信号強度を、送信元の基地局30ごとに測定する。この測定部414による信号強度の測定により、例えば図2を参照して説明したような測定情報が得られる。
【0163】
第5の実施形態による無線端末40の他の機能ブロック(416〜456)は、第4の実施形態で説明した基地局情報記憶部216、測定情報記憶部220、基地局位置推定部224、推定誤差算出部228、情報管理部234、低信頼性基地局情報記憶部244、移動基地局判断部248、移動基地局情報記憶部252、および端末位置推定部256と実質的に同一に構成することができるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0164】
要点を説明すると、測定部414により得られた測定情報は測定情報記憶部420に記憶され、この測定情報に基づいて基地局位置推定部424および推定誤差算出部428が基地局30の位置情報および推定誤差を算出する。そして、情報管理部434は、基地局位置推定部424および推定誤差算出部428により得られた位置情報および推定誤差と、基地局情報記憶部416に記憶されている基地局情報の関係に応じ、基地局情報記憶部416に記憶されている基地局情報を更新する。
【0165】
また、低信頼性基地局情報記憶部444には固定基地局としての信頼性が低い基地局30を示す基地局IDが記録され、移動基地局判断部448は、低信頼性基地局情報記憶部444を参照して移動基地局を判断する。移動基地局判断部448により移動基地局であると判断された基地局30に関する情報は移動基地局情報記憶部452に追加される共に、基地局情報記憶部416から削除される。なお、ユーザが手動で位置推定に利用した内基地局30のリストを設定することも可能である。
【0166】
端末位置推定部456は、測定部414により得られる基地局30ごとの信号強度情報に基づき、無線端末40の位置を推定する。このとき、端末位置推定部456は、測定部414により得られた基地局30ごとの信号強度情報のうちで、移動基地局情報記憶部452に移動基地局として記憶されていない基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定する。かかる構成により、無線端末40の位置推定精度の向上を図ることが可能である。
【0167】
<7.まとめ>
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、基地局情報記憶部216に記憶されている推定誤差と新たに算出された推定誤差との関係に応じ、基地局情報記憶部216に記憶されている各基地局30の位置情報を、より信頼性の高い値に更新していくことが可能である。
【0168】
また、本発明の第2の実施形態によれば、一度小さな推定誤差で基地局30の位置情報が推定された後に当該基地局30が移動された場合には、情報管理部234により上記推定誤差が大きな値に補正される。その結果、移動後に推定誤差算出部228による算出される新たな推定誤差の方が小さくなり易くなるので、情報管理部234は、基地局情報記憶部216に記憶されている基地局30の位置情報を、移動後に基地局位置推定部224により推定された新たな位置情報に更新することが可能となる。
【0169】
また、本発明の第3の実施形態によれば、位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、位置情報の推定誤差が閾値未満である基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定することができる。
【0170】
また、本発明の第4の実施形態によれば、基地局30が低信頼性基地局として報告された頻度に基づき、当該基地局30が移動基地局であるか否かを判断することができる。このため、端末位置推定部256は、無線端末40からの位置推定要求に含まれる基地局30ごとの信号強度情報のうちで、移動基地局情報記憶部252に移動基地局として記憶されていない基地局30の信号強度情報、および当該基地局30の位置情報を選択的に用いて無線端末40の位置を推定することが可能となる。
【0171】
また、本発明の第5の実施形態として説明したように、第1〜第4の実施形態で説明した基地局情報の更新機能、無線端末40の位置推定機能、および移動基地局の判断機能などの機能を無線端末40に実装することも可能である。
【0172】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0173】
例えば、本明細書の位置推定装置20および無線端末40の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、位置推定装置20の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0174】
また、位置推定装置20および無線端末40に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した位置推定装置20および無線端末40の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0175】
20、20−1、20−2、20−3、20−4 位置推定装置
30、30A、30B、30C 基地局
40 無線端末
212、412 通信部
216、416 基地局情報記憶部
220、420 測定情報記憶部
224、424 基地局位置推定部
228、428 推定誤差算出部
232、234、434 情報管理部
240、256、456 端末位置推定部
244、444 低信頼性基地局情報記憶部
248、448 移動基地局判断部
252、452 移動基地局情報記憶部
414 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から信号強度の測定情報を受信する受信部と;
基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部と;
前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部と;
前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部と;
前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部と;
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記情報管理部は、前記基地局の推定位置と前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報の示す位置との差分が規定値を上回っている場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている指標の示す信頼性を低下させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記基地局の推定位置は、前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の示す位置である、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記測定情報は、信号強度の測定結果および測定位置情報を含み、
前記基地局の推定位置は、前記測定情報に含まれる前記測定位置情報の示す位置である、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記受信部により受信された前記測定情報を記憶する測定情報記憶部をさらに備える、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記基地局位置推定部は、前記測定情報記憶部を参照し、前記受信部により受信された前記基地局に関する複数の測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定し、
前記推定結果評価部は、前記複数の測定情報の各々の示す信号強度の大きさに応じて前記指標を算出する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記推定結果評価部は、前記複数の測定情報の各々の示す信号強度の平均値を前記指標として算出する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
前記情報管理部により前記基地局の前記指標の信頼性が低下させられた基地局の履歴情報を記憶する履歴情報記憶部と;
前記履歴情報に基づいて前記基地局が移動基地局であるか否かを判断する移動基地局判断部と;
前記移動基地局判断部により前記移動基地局であると判断された基地局を示す情報を記憶する移動基地局情報記憶部と;
をさらに備える、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記移動基地局判断部は、前記指標の信頼性が所定の頻度以上で低下させられた基地局を移動基地局であると判断する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記情報処理装置は、
前記無線端末から受信される前記測定情報、および前記基地局情報記憶部に記憶されている前記基地局位置情報に基づいて前記無線端末の位置を推定する端末位置推定部をさらに備え、
前記端末位置推定部は、前記測定情報に含まれる基地局ごとの測定結果のうちで、前記指標の示す信頼性が閾値を上回っている基地局の測定結果を用いて前記無線端末の位置を推定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記端末位置推定部は、前記測定情報に含まれる基地局ごとの測定結果のうちで、前記指標の示す信頼性が閾値を上回っている基地局であって、かつ、前記移動基地局情報記憶部に移動基地局として記憶されていない基地局の測定結果を用いて前記無線端末の位置を推定する、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記情報管理部は、前記基地局の推定位置と前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報の示す位置との差分が前記規定値を上回っている場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている指標の示す信頼性を前記閾値以下に低下させる、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶媒体が記憶するステップと;
基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から、信号強度の測定情報を受信するステップと;
前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定するステップと;
前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出するステップと;
算出した前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記記憶媒体に記憶されている基地局位置情報を、推定した前記基地局の位置情報で更新するステップと;
を含む、情報処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末から、信号強度の測定情報を受信する受信部と;
基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部と;
前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部と;
前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部と;
前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部と;
として機能させるための、プログラム。
【請求項15】
基地局から送信された無線信号の信号強度を測定する無線端末と;
前記無線端末から信号強度の測定情報を受信する受信部、
基地局位置情報および前記基地局位置情報の信頼性を示す指標を基地局ごとに記憶する基地局情報記憶部、
前記受信部により受信された前記測定情報に基づいて前記基地局の位置情報を推定する基地局位置推定部、
前記基地局位置推定部により推定される前記基地局の位置情報の信頼性を示す指標を算出する推定結果評価部、および
前記推定結果評価部により算出された前記指標が前記基地局情報記憶部に記憶されている前記指標より高い信頼性を示す場合に、前記基地局情報記憶部に記憶されている基地局位置情報を前記基地局位置推定部により推定された位置情報で更新する情報管理部、
を有する情報処理装置と;
を備える、情報処理システム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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