説明

情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および、ICカード

【課題】セキュリティを向上させることが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報を表示する表示手段(EPD31)と、通信相手のホスト装置(パーソナルコンピュータ10)の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段(通信制御MCU38)と、判定手段によってホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態に制御する制御手段(表示制御MCU36)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および、ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示部を有する無線タグに関する技術が開示されている。このような無線タグでは、内蔵されているメモリに記憶されている情報を表示部に表示させることにより、無線タグに記録された情報を外部から視認できる。
【特許文献1】特開2002−236891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示される技術では、メモリに格納されている全ての情報が表示部に表示されてしまうため、例えば、このような無線タグが第三者の手に渡った場合には、表示されている情報を読み取られてしまうため、セキュリティの観点から好ましくない場合がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、セキュリティを向上させることが可能な情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、および、ICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、情報を表示する表示手段と、通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、ホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かが判定され、通信エリア内でない場合には所定の情報が非表示状態にされる。このため、知られたくない情報を表示しないことから、セキュリティを向上させることが可能となる。
【0006】
また、本発明は、上記発明において、前記表示手段に表示する情報を格納する格納手段を有し、前記制御手段は、前記表示手段に表示されている情報のうち、機密属性を付与されて前記格納手段に格納されている機密情報を非表示状態とすることを特徴とする。
この構成によれば、ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しない場合には、機密属性を付与されて格納手段に格納されている機密情報が非表示状態にされる。このため、通信エリア外に自機が存在する場合には機密情報が非表示状態になるので、セキュリティを向上させることが可能となる。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記判定手段によって通信エリア内でないと判定された後に、通信エリア内であると判定された場合には、前記機密情報を表示状態にすることを特徴とする。
この構成によれば、通信エリア内から外に出た後に、再度、通信エリア内に入った場合には機密情報が表示される。このため、通信エリア内に再度入った場合に、機密情報が自動的に表示されるので、セキュリティを向上させるとともに、ユーザの煩雑さを解消することができる。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記制御手段は、前記判定手段によって通信エリア内でないと判定される状況が一定時間以上継続した場合に、前記機密情報を非表示状態にすることを特徴とする。
この構成によれば、通信エリア内でないと判定された後に、所定の時間が経過した場合にのみ機密情報が非表示状態とされる。このため、通信エリア内に存在する場合に、電波の受信状態が悪化して、誤って機密情報が非表示状態とされることを防止できる。
【0009】
また、本発明の情報処理方法は、通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定し、前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示装置に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする、ことを特徴とする。
この方法によれば、ホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かが判定され、通信エリア内でない場合には所定の情報が非表示状態にされる。このため、知られたくない情報を表示しないことから、セキュリティを向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明の情報処理プログラムは、情報を表示する表示手段、通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段、前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定した場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段、としてコンピュータを機能させる。
このプログラムによれば、ホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かが判定され、通信エリア内でない場合には所定の情報が非表示状態にされる。このため、知られたくない情報を表示しないことから、セキュリティを向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明のICカードは、情報を表示する表示手段と、通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、ホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かが判定され、通信エリア内でない場合には所定の情報が非表示状態にされる。このため、知られたくない情報を表示しないことから、セキュリティを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、本発明の情報処理装置をIC(Integral Circuit)カードとして実施した場合を例に挙げて説明する。また、本発明の情報処理方法および情報処理プログラムは、ICカードの動作およびICカードを制御するプログラムとして説明する。
【0013】
(A)実施の形態の構成の説明
図1は、本発明を適用した実施形態に係るICカードを含むICカードシステムの概略構成を示す図である。図1に示すように、ICカードシステムは、パーソナルコンピュータ10(請求項中「ホスト装置」に対応)、通信ルータ20、および、ICカード30−1,30−2を主要な構成要素としている。なお、この例では、パーソナルコンピュータおよび通信ルータはそれぞれ1台とされ、また、ICカードは2枚とされているが、これ以外の台数(または枚数)であってよい。
【0014】
ここで、パーソナルコンピュータ10は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を主要な構成要素とし、HDDに格納されているアプリケーションプログラムを実行することにより、ICカード30−1,30−2に表示させる情報を生成するとともに、通信ルータ20を介して生成された情報を送信する。通信ルータ20は、パーソナルコンピュータ10から供給された情報に基づいて、搬送波を所定の変調方式により変調し、変調された搬送波を電波としてICカード30−1,30−2に対して送信する。ICカード30−1,30−2は、通信ルータ20から送信された電波を受信して復調することにより、搬送波に含まれている情報を取得し、取得した情報を後述するEPD(Electrophoretic Display)に表示させる。
【0015】
図2は、図1に示すICカード30−1の外観構成を示す図である。なお、ICカード30−1とICカード30−2は、同様の構成とされているので、以下では、ICカード30−1を例に挙げて説明を行う。図2に示すように、ICカード30−1は、略長方形の薄型の形状を有する担体50を有しており、ICカード30−1の表面(図2における奥行き方向の手前側の面)には、表示デバイスとしてのEPD31がはめ込まれており、また、その下側(図2の上下方向の下側)には後述する入力デバイス35を構成する操作ボタン35a〜35cが配置されている。なお、ICカード30−1には、図示せぬクリップ等が設けられており、このクリップによって担体50がユーザの衣服の一部(例えば、胸ポケット)に係止される。なお、この実施の形態では、ICカード30−1が社員証として使用される場合を例に挙げて説明する。
【0016】
図3は、ICカード30−1の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、ICカード30−1は、EPD31(請求項中「表示手段」に対応)、表示制御回路32、バッテリ33、電源回路34、入力デバイス35、表示制御MCU(Main Control Unit)36(請求項中「制御手段」に対応)、不揮発性メモリ37(請求項中「格納手段」に対応)、通信制御MCU38(請求項中「判定手段」に対応)、RF(Radio Frequency)回路39、および、アンテナ40を主要な構成要素としている。
【0017】
ここで、EPD31は、透明な液体の中で浮動する微粒子を電界によって移動させることにより、文字および図形等の表示を行う表示デバイスである。なお、EPD31に表示された情報は、EPD31への電源の供給を絶った後も表示され続ける、いわば、不揮発性の表示デバイスである。表示制御回路32は、EPD31に情報を表示する際の制御を行う回路であり、例えば、表示制御MCU36とEPD31との間の電圧の変換を行う制御を行う。バッテリ33は、例えば、リチウムイオン電池等によって構成され、電源回路34に直流電力を供給する。電源回路34は、バッテリ33から供給される電源電圧を、所定の電圧に昇圧または降圧し、図示せぬ電源線を介して装置の各部に供給する。入力デバイス35は、操作ボタン35a〜35cと、図示せぬスイッチによって構成され、操作ボタン35a〜35cがユーザによって操作された場合には、スイッチがオンまたはオフの状態になり、表示制御MCU36がスイッチの状態に基づいて操作ボタンが操作されたことを検出する。表示制御MCU36は、通信制御MCU38から供給されたコマンドを解釈し、不揮発性メモリ37に格納されている対応するフォントデータまたはビットマップデータを取得して画像を構成し、表示制御回路32に供給してEPD31に表示させる等の処理を実行する。不揮発性メモリ37は、例えば、FeRAM(Ferroelectric RAM)によって構成され、表示制御MCU36が使用するフォントデータおよびビットマップデータを格納するとともに、表示制御MCU36が実行するプログラム等を格納する。通信制御MCU38は、RF回路39から供給されるディジタル信号を解釈し、内蔵するメモリ(不図示)を書き換えたり、ディジタル信号から復元されたコマンドを表示制御MCU36に供給したりする。RF回路39は、アンテナ40によって捕捉された電波を復調し、ディジタル信号を生成して、通信制御MCU38に供給する。アンテナ40は、例えば、コイル形状を有しており、通信ルータ20から送信された電波を捕捉し、RF回路39に供給する。
【0018】
図4は、図3に示す不揮発性メモリ37に確保されている領域の一例を示す図である。この図に示すように、不揮発性メモリ37には、表示情報37a、フォントデータ37b、VRAM(Video RAM)37c、および、システムプログラム37d用の領域が確保されている。ここで、表示情報37aは、EPD31に表示するための情報である。表示情報37aには、機密性が低い情報である非機密情報37a1と、機密性が高い情報である機密情報37a2とが存在する。なお、この例では、ICカード31−1,31−2は、社員証として利用されているので、非機密情報37a1は、例えば、会社名によって構成される。また、機密情報37a2は、例えば、会社員の肖像写真、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、および、その他の情報によって構成される。フォントデータ37bは、全角および半角のフォントデータであり、EPD31に文字を表示する際に必要となるデータである。VRAM37cは、EPD31に表示する情報を展開するとともに、展開された情報を保持する領域である。システムプログラム37dは、I/Oメモリ、アプリケーションプログラム、その他によって構成される。なお、パーソナルコンピュータ10から送信される情報は、例えば、符号化方式としてのシフトJISにより符号化された文字コードとされ、文字コードに対応するフォントデータがフォントデータ37bから取得されて表示される。なお、図4は一例であって、これ以外の情報が格納されていてもよい。また、格納する順序も図4の場合と異なっていてもよい。
【0019】
(B)実施の形態の動作の説明
つぎに、ICカード30−1,30−2において実行される処理の一例について説明する。なお、ICカード30−1,30−2において実行される処理は同様であるので、以下ではICカード30−1を例に挙げて説明する。
まず、ICカード30−1を新たに発行する場合について説明する。例えば、新入社員に対して、ICカード30−1を新たに発行するような場合、パーソナルコンピュータ10において、所定のアプリケーションプログラムを起動し、ICカード30−1に登録する情報を生成する。なお、パーソナルコンピュータ10以外の発行専用の装置によって発行処理を行うことも可能である。このとき、登録する情報としては、例えば、会社名、所属部署名、会社員の氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、会社員の肖像写真、および、所定の情報を含む2次元コード等である。また、会社名については非機密情報としての属性が付与され、それ以外の情報については機密情報としての属性である「機密属性」が付与される。そして、これらの情報は、描画コマンドおよびシフトJISコードに変換され、書き込みを指示するコマンドとともに所定のインタフェース(例えば、USB(Universal Serial Bus)またはLAN(Local Area Network))を介して通信ルータ20に供給される。通信ルータ20では、パーソナルコンピュータ10から供給された情報を取得し、対応するディジタルビット列(“0”および“1”の列)に変換し、このディジタルビット列に基づいて搬送波を変調し、図示せぬアンテナから電波として送信する。
【0020】
このようにして通信ルータ20から送信された電波は、ICカード30−1のアンテナ40によって捕捉され、RF回路39に供給される。RF回路39では、アンテナ40によって捕捉された搬送波に含まれているディジタルビット列を抽出する。そして、抽出されたディジタルビット列は、通信制御MCU38に供給され、そこで、コマンドの解釈が行われる。いまの例では、受信した情報は、不揮発性メモリ37に登録するための情報であるので、表示制御MCU36にこの情報が供給される。
【0021】
表示制御MCU36は、通信制御MCU38から供給された情報を不揮発性メモリ37の表示情報37aとして登録する処理を実行する。このとき、非機密情報の属性が付与されている「会社名」を示す情報については、非機密情報37a1として登録され、機密情報の属性(機密属性)が付与されているそれ以外の情報については機密情報37a2として登録される。このようにして情報が登録されたICカード30−1は、所有者である会社員に手渡される。
【0022】
このようにして情報が登録されたICカードを受け取った会社員は、ICカード30−1に対して、操作者が本人であることを認証するために必要なパスワードとしての操作ボタン35a〜35cの操作方法を登録する。例えば、図2に示す操作ボタン35aが2回操作された後に、操作ボタン35bが1回操作され、操作ボタン35cが1回操作された場合には、ボタンの種類と操作回数および操作順序が不揮発性メモリ37の例えばシステムプログラム37dの領域に格納される。なお、このような操作を不要とすることも可能である。
【0023】
つぎに、図5を参照して、会社員が有するICカード30−1の表示動作について説明する。図5に示す処理が開始されると、つぎのステップが実行される。すなわち、通信制御回路38は、RF回路39の出力を参照し、ICカード30−1が通信エリア内に存在するか否かを判定し(ステップS10)、通信エリア内である場合(ステップS10;Yes)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10;No)には通信エリア内に入るまで同様の処理を繰り返す。なお、通信エリアとは、例えば、通信ルータ20から送信された電波が届く範囲であり、会社であれば、会社の敷地内、建物内、事業部内等が通信エリアとして設定される。図1では、1台のパーソナルコンピュータ10がホスト装置とされているが、複数台のパーソナルコンピュータおよび通信ルータによって通信エリアを構成するようにしてもよい。その場合には、これら複数のパーソナルコンピュータおよび通信ルータによって形成される通信可能なエリアが通信エリアとされる。
【0024】
パーソナルコンピュータ10は、所定の時間毎に、通信ルータ20から通信エリア内に存在するICカードに対して問い合わせを行い、ICカードはこれに呼応して情報(例えば、社員コード等)を送信する。その結果、パーソナルコンピュータ10は、通信エリア内に存在するICカードを特定することができる。また、この問い合わせを検出することで、ICカードは自機が通信エリア内に存在するか否かを判定することができる。例えば、ICカード30−1を有する会社員が出社して通信エリア内に入ったとすると、通信制御MCU38は、通信ルータ20からの問い合わせ情報を検出し、自己が通信エリア内に存在すると判定してステップS11に進む。
【0025】
ステップS11では、表示制御MCU36は、入力デバイス35に対して所定の操作がなされたか否かを判定する。具体的には、表示制御MCU36は、会社員が先に登録したパスワードに対応する操作を行ったか否かを判定し、行った場合(ステップS11;Yes)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11;No)には操作がなされるまで同様の処理を繰り返す。例えば、会社員がパスワードに対応する操作として、前述したように、操作ボタン35aが2回操作された後に、操作ボタン35bが1回操作され、操作ボタン35cが1回操作された場合にはステップS12に進む。
【0026】
ステップS12では、表示制御MCU36は、機密情報を表示状態とする。より詳細には、表示制御MCU36は、不揮発性メモリ37の表示情報37aから機密情報37a2を取得し、VRAM37cに対して展開する処理を実行する。このとき、ビットマップデータについては、VRAM37cの対応する領域に展開し、また、文字については対応するフォントデータをフォントデータ37bから取得し、VRAM37cの対応する領域に展開する。なお、1回目の展開処理では、機密情報だけでなく非機密情報についても同様にして展開処理がされる。2回目以降の展開処理では、非機密情報が既にVRAM37cに展開されているので、機密情報のみが展開され、非機密情報については既存の情報がそのまま使用される。
【0027】
VRAM37cへの展開が終了すると、表示制御MCU36は、表示制御回路32に対してEPD31への表示を指示する。この結果、表示制御回路32は、EPD31に対して展開の結果得られた画像データを転送するとともに、転送された画像データをEPD31の表示部に表示させる制御を行う。このとき、電源回路34は、EPD31に対して書き込み用の電源電力を供給する。
図6(A)は、このとき、EPD31に表示される情報の一例を示す図である。この例では、EPD31には、会社員の肖像写真61、属性情報62、および、2次元コード63が表示されている。ここで、肖像写真61は、例えば、会社員の顔を含む上半身の写真によって構成される。属性情報62は、会社名、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、および、FAX番号によって構成される。より詳細には、会社名は「○×株式会社」であり、所属部署名は「第1機器事業部」であり、社員コードは「123456」であり、電話番号は「03−0000−0001」であり、FAX番号は「03−0000−0002」である。なお、これらのうち、会社名だけが非機密情報とされている。2次元コードは、例えば、食堂等において、本人を認証する際に使用されるコードであり、社員コードその他の情報が符号化されて構成されている。
【0028】
表示処理が終了すると、電源回路34は、EPD31に対する電力の供給を終了する。この結果、EPD31を構成する各種回路(例えば、ドライバ等)は動作を停止するが、EPD31に表示されている情報は、保持される。すなわち、ICカード30−1は、図6(A)に示す情報を表示した状態を維持する。
【0029】
つづいて、通信制御MCU38は、通信エリア内に自機が存在するか否かを判定し(ステップS13)、通信エリア内に自機が存在する場合(ステップS13;Yes)には同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS13;No)にはステップS14に進む。例えば、会社員が会社の敷地内(通信エリア内)から外部に出た場合には、Noと判定されてステップS14に進む。
ステップS14では、表示制御MCU36は、通信エリア内でないと判定される状況が一定時間継続しているか否かを判定し、一定時間継続していると判定した場合(ステップS14;Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合にはステップS13に戻って同様の処理を繰り返す。より詳細には、通信エリア内でないと判定される状況が10分以上継続している場合にはステップS15に進む。なお、このように、通信エリア内でないと判定される状況が一定時間以上継続していることを判断するのは、ICカード30−1が通信エリア内に存在する場合であっても、電波の受信状態によっては誤って通信エリア外であると判定される場合があるので、そのような場合を除外するためである。なお、一定時間については、パーソナルコンピュータ10からの問い合わせの時間間隔(例えば、数分)よりも長い時間(例えば、10分)に設定する。
【0030】
ステップS15では、表示制御MCU36は、機密情報を非表示状態にする。より詳細には、まず、表示制御MCU36は、不揮発性メモリ37の機密情報37a2を取得し、VRAM37cに展開されている該当する情報を削除する処理を実行する。具体的には、表示色を背景色と同じに設定して機密情報を表示する。あるいは、機密情報をVRAM37c上から全て削除する。その結果、VRAM37cからは機密情報が削除され、非機密情報(具体的には会社名)のみが残った状態となる。つづいて、表示制御MCU36は、VRAM37cに生成された画像データをEPD31に表示するように表示制御回路32に対して指示する。その結果、表示制御回路32は、表示制御MCU36から供給された画像データをEPD31に表示させる処理を実行する。
この結果、EPD31には、図6(B)に示すように、非機密情報である会社名を示す「○×株式会社」のみが表示された状態となり、機密情報である肖像写真61、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、および、2次元コードは非表示状態となる。この結果、この会社員が社外において、このICカード30−1を紛失し、第三者の手に渡った場合であっても、機密情報である肖像写真61、所属部署名、氏名、社員コード、電話番号、FAX番号、および、2次元コードを当該第三者は見ることができないので、これらの情報が不正に使用されることを防止できる。また、当該第三者が会社名を参照して、この会社に近づいた場合であっても、ステップS11において所定の操作がなされない限り、機密情報を参照することができない。
【0031】
ステップS16では、表示制御MCU36は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS16;No)にはステップS10に戻って同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS16;Yes)には処理を終了する。例えば、図5に示す処理を停止するための所定の操作が操作ボタン35a〜35cに対してなされた場合には処理を終了し、それ以外の場合にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
【0032】
なお、会社員が社外に出た後に、再度、社内に戻った場合(例えば、出張から戻った場合、または、退社後に翌日出社した場合)には、ステップS10において通信エリア内であると判断され、ステップS11において所定の操作がなされたと判定された場合にはステップS12に進んで機密情報が表示される。この結果、図6のような表示が再度なされることになる。
【0033】
以上に説明したように、本発明の実施の形態によれば、ICカード30−1が通信エリア外に出た場合には、EPD31に表示されている情報のうち、機密情報を非表示状態とするようにしたので、ICカード30−1が第三者の手に渡った場合であっても、機密情報が悪用等されることを防止できる。
【0034】
また、通信エリア内に入った場合には、所定の操作がなされたときのみ機密情報を表示するようにした。このため、ICカード30−1が第三者の手に渡った場合に、当該第三者がICカード30−1を持って、通信エリア内に不正に立ち入った場合であっても、機密情報が表示されないので、機密情報が悪用等されることを防止できる。
【0035】
また、通信エリア外に出た場合には、通信エリア外であるという判断が一定時間継続したときに、機密情報を非表示状態とするようにしたので、通信エリア内に存在するにも拘わらず、電波の受信状況が悪い場合に、機密情報が意に反して非表示状態になることを防止できる。
【0036】
また、機密情報を非表示状態または表示状態にする場合には、機密情報のみを描画または削除するようにし、非機密情報についてはそのまま保持するようにしたので、非機密情報の描画に係る処理を省略することで、表示速度を向上させることができるとともに、それによりバッテリ33の消耗を防ぐことができる。
【0037】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
たとえば、以上の実施の形態では、本発明の実施の形態に係る情報処理装置をICカードとして実施した場合の例を示したが、本発明は、このような場合に限定されるのではなく、例えば、他の小型の情報処理装置に適用することが可能である。
【0038】
また、以上の実施の形態では、機密情報を非表示状態にする方法として、機密情報を消去する方法を採用したが、例えば、機密情報が表示された領域を、文字色と同色の表示色で塗りつぶすことにより非表示状態としてもよい。例えば、黒色で機密情報が表示されている場合に、当該文字の背景を黒色の表示色で塗りつぶすことにより、非表示状態とすることができる。また、単に削除したり、塗りつぶしたりするだけではなく、他の情報を表示するようにしてもよい。図7は、他の情報を表示した場合の表示例である。この例では、非機密情報である会社名の下に、メッセージ65が表示されている。より詳細には、この例では、メッセージ「このカードを拾った人は、下記までお届けください。」が表示されるとともに、会社の住所「○×株式会社総務課○○県○○市○○町」および電話番号「TEL 03−0000−0003」が表示されている。このような情報を表示することにより、このICカード30−1を拾った第三者は、届け先を知ることができる。また、この例においても機密情報は表示されていないので、第三者に機密情報を悪用等されることはない。
【0039】
また、以上の実施の形態では、表示する情報を機密情報と非機密情報とに分け、通信エリアの内か外かに応じて機密情報を表示または非表示とするようにしたが、例えば、通信エリア毎に表示する情報を変更するようにしてもよい。例えば、2次元コード63については、例えば、食堂等において使用されることが多いので、食堂に配置されているパーソナルコンピュータの通信エリア内に入った場合には、2次元コード63を表示し、それ以外の通信エリア内に入った場合には2次元コード63を非表示の状態としてもよい。また、2次元コード63を非表示とするだけでなく、その他の情報(肖像写真61および属性情報62)を拡大して表示するようにしてもよい。そのような方法によれば、必要に応じて情報を表示するとともに、表示の態様を変えることにより、視認性を向上させることができる。
【0040】
また、以上の実施の形態では、社員証としてICカード30−1を使用する場合を例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば、学生証その他に使用することができる。また、EPD31については、他の表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイその他)を使用するようにしてもよい。
【0041】
また、以上の実施の形態では、機密情報および非機密情報は、情報を登録する際に指定するようにしたが、登録後にこれらの情報を変更することができるようにしてもよい。例えば、操作ボタン35a〜35cを操作することにより、機密情報および非機密情報の別を選択できるようにしてもよい。
【0042】
また、以上の実施の形態では、通信エリア内に入った場合には、所定のパスワードが入力された場合に、機密情報を表示するようにしたが、このような情報の入力を待たずに、直ちに機密情報を表示するようにしてもよい。そのような方法によれば、操作の煩雑さを解消することができる。
【0043】
また、以上の実施の形態では、ICカードを発行する際には、パーソナルコンピュータ10によって書き込みを行うようにしたが、発行専用の装置を用いてICカードの発行を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、情報処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disk)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disk ROM)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0045】
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0046】
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の情報処理装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すICカードの外観を示す図である。
【図3】図1に示すICカードの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す不揮発性メモリに格納されている情報の一例である。
【図5】図2に示すICカードにおいて実行される処理のフローチャートである。
【図6】通信エリア内外においてICカードに表示される情報の一例である。
【図7】通信エリア内においてICカードに表示される情報の他の一例である。
【符号の説明】
【0048】
10…パーソナルコンピュータ(ホスト装置)、20…通信ルータ、30−1,30−2…ICカード(情報処理装置)、36…表示制御MCU(制御手段)、37…不揮発性メモリ(格納手段)、38…通信制御MCU(判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示手段と、
通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記表示手段に表示する情報を格納する格納手段を有し、
前記制御手段は、前記表示手段に表示されている情報のうち、機密属性を付与されて前記格納手段に格納されている機密情報を非表示状態とすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置において、
前記制御手段は、前記判定手段によって通信エリア内でないと判定された後に、通信エリア内であると判定された場合には、前記機密情報を表示状態にすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置において、
前記制御手段は、前記判定手段によって通信エリア内でないと判定される状況が一定時間以上継続した場合に、前記機密情報を非表示状態にすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定し、
前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、表示装置に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
情報を表示する表示手段、
通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段、
前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段、
としてコンピュータを機能させるコンピュータ読み取り可能な情報処理プログラム。
【請求項7】
情報を表示する表示手段と、
通信相手のホスト装置の通信エリア内に自機が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記ホスト装置の通信エリア内に自機が存在しないと判定された場合には、前記表示手段に表示されている情報のうち、一部の情報を非表示状態にする制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−104237(P2009−104237A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272901(P2007−272901)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】