説明

情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラム

【課題】表示のズーム倍率変更を通して画像の観察を良好に行うことのできる情報処理装置を提供する。
【解決手段】表示処理部は、ズーム倍率変更前のカーソルポインタが指す画面上の位置に対応する、元画像座標空間における座標がズーム倍率変更後の表示画像の中心位置となるように、ズーム倍率の変更に伴って画像の表示範囲を変更する。その際、元のズーム倍率に対応する解像度の階層と目標のズーム倍率に対応する解像度の階層との間に別の解像度の階層が存在する場合には、その間の階層に対応するズーム倍率での画像表示を経て、目標のズーム倍率での画像表示状態へと遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、病理、生物、材料等の分野において顕微鏡により得られた画像の表示を制御する情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療または病理等の分野において、光学顕微鏡により得られた、生体の細胞、組織、臓器等の病理画像をデジタル化し、そのデジタル画像に基づき、医師や病理学者等がその組織等を検査したり、患者を診断したりするシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の方法では、顕微鏡により光学的に得られた画像が、CCD(Charge Coupled Device)を搭載したビデオカメラによりデジタル化され、そのデジタル信号が制御コンピュータシステムに入力され、モニタに可視化される。病理学者はモニタに表示された画像を見て検査等を行う(例えば、特許文献1の段落[0027]、[0028]、図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−37250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル病理画像をコンピュータシステムのモニタに表示して病理診断が行われる際、診断者(以下「操作者]と記述。)はモニタの画面でデジタル病理画像の観察位置をマウスやキーボードなどの操作手段を使って移動したり、拡大(ズームイン)/縮小(ズームアウト)したりする操作を行う。デジタル病理画像のブラウズを処理するプログラムは、操作者が操作手段を操作することによって操作手段より入力された移動、拡大/縮小などの指令を受けて、その指令に応じて表示の処理を行う。
【0006】
さて、典型的なプログラムは、画面に表示された画像の中心を基準に画像の拡大(ズームイン)/縮小(ズームアウト)の処理を行う。このため、表示された画像の一部の領域を拡大(ズームイン)して詳細に観察したい場合、操作者は、まず、表示された画像の所望の領域を画面のほぼ中心に移動させる指令を操作手段により入力し、移動が完了したところで拡大(ズームイン)の指令を操作手段により入力する必要があった。このように、複数段階の操作が必要となり、操作効率の低下を招く要因の1つとなっていた。特に、画面の隅の方に要観察部位があった場合、拡大(ズームイン)により要観察部位が画面から逸脱してしまい、要観察部位を操作者が見失う可能性があった。このような場合、操作者は画像の表示範囲を移動させる操作などして要観察部位を見つけなおす必要があるなど、作業効率の低下を招いていた。
【0007】
さらに、典型的なプログラムでは、マウスのドラッグ操作に対して画像の表示範囲を移動させる処理が割り当てられる場合が多い。しかし、このマウスのドラッグ操作で画像の表示範囲を移動させる方式では、画面の端までカーソルポインタを移動させたところまでで画像の表示範囲の移動も制限されてしまい、それより先の表示範囲を表示させるには、マウスドラッグ以外の操作に割り当てられた指令を入力しなければならなかった。したがって、このことによっても作業効率の低下を招いていた。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、表示のズーム倍率変更を通して画像の観察を良好に行うことのできる情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る情報処理装置は、画面を有し、顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを前記画面に表示可能な表示部と、前記画面上で前記カーソルポインタを移動させるユーザからの入力および前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示を受け付けることが可能な入力部と、前記入力部により前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させる表示処理部とを具備する。
【0010】
本発明によれば、表示処理部が、入力部によりズーム倍率変更の指示が入力されたとき、カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を画面に表示させるので、表示のズーム倍率変更を通して画像の観察を良好に行うことが可能となる。
【0011】
前記表示処理部は、ズーム倍率を段階的に前記指示されたズーム倍率まで変更し、その都度、変更されたズーム倍率の画像を表示させるものであってもよい。
これにより画像の操作者が要観察部位を見失うおそれが低減され、観察の効率を向上させることができる。
【0012】
前記表示処理部は、段階的なズーム倍率の変更に伴い、表示画像の中心位置を前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき前記カーソルポインタが指していた元画像座標空間における位置に徐々に近付けるものであってもよい。
要観察部位の位置が徐々に表示画像の中心に移動するので、操作者が要観察部位を見失う可能性をより一層低減できる。
【0013】
前記入力部は、ズーム倍率の変更に伴う表示画像の表示方法として第1のモードと第2のモードのいずれか一方をユーザに設定させ、前記表示処理部は、前記第1のモードが設定されている場合、前記入力部により前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置をズーム倍率変更後の表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させ、前記第1のモードが設定されている場合、ズーム倍率の変更前後で元画像座標空間における表示画像の中心位置を固定したままズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させるものとしてもよい。
これにより、上記の2種類のモードを適宜切り換えてズーム倍率の変更を行うことができる。
【0014】
入力部はマウスであり、前記表示処理部は、前記画面より解像度の高い画像を表示させるとき、前記マウスによる前記カーソルポインタの移動操作に伴って前記画面に表示させる画像の範囲を移動させ、かつ前記カーソルポインタの前記画面上での可動範囲に拠らず、前記マウスからの前記カーソルポインタの移動操作のための出力をもとに、前記画面に表示させる画像の範囲を移動させるものであってもよい。
これにより、マウスの操作によりカーソルポインタの移動操作に伴う画像の表示範囲の移動を、画面上でのカーソルポインタの移動の限界に縛られることなく行うことが可能となり、ユーザにとっての操作性が格段に向上する。
【0015】
また本発明の別の観点に基づく情報処理方法は、顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを表示部の画面に表示させ、ユーザより前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示が入力されたとき、表示処理部が、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させるというものである。
【0016】
さらに、本発明の別の観点に基づくプログラムは、顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを表示部の画面に表示させ、ユーザより前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させるようにコンピュータを動作させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、表示のズーム倍率変更を通して画像の観察を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置を少なくとも含む情コンピュータシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像データのピラミッド構造を示す図である。
【図3】中心固定モードでの画像ピラミッド構造と表示画像のズーム倍率の変更との関係を示す図である。
【図4】中心可変モードでの画像ピラミッド構造と表示画像のズーム倍率の変更との関係を示す図である。
【図5】本実施形態に係る情報処理装置においてズーム倍率変更に伴って画像表示範囲を変更するための機能的な構成を示す図である。
【図6】中心固定モードによるズームインを説明する図である。
【図7】中心可変モードによるズームインを説明する図である。
【図8】中心可変モードによるズームイン時の表示画像の変化の様子を示す図である。
【図9】マウスドラッグによる画像の表示範囲の移動について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
[情報処理装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を少なくとも含むコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。情報処理装置として、例えばPC(Personal Computer)100が用いられる。
【0020】
PC100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM102(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)103、入出力インターフェース105、及び、これらを互いに接続するバス104を備える。
【0021】
入出力インターフェース105には、表示部106、入力部107、記憶部108、通信部109、ドライブ部110等が接続される。
【0022】
表示部106は、例えば液晶、EL(Electro-Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)等を用いた表示デバイスである。
【0023】
入力部107は、例えばポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル、その他の操作装置である。入力部107がタッチパネルを含む場合、そのタッチパネルは表示部106と一体となり得る。
【0024】
記憶部108は、不揮発性メモリであり、例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、その他の固体メモリである。
【0025】
ドライブ部110は、例えば光学記録媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気記録テープ、フラッシュメモリ等、リムーバブルの記録媒体111を駆動することが可能なデバイスである。これに対し上記記憶部108は、主にリムーバブルでない記録媒体を駆動する、PC100に予め搭載されたデバイスとして使用される場合が多い。
【0026】
通信部109は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等に接続可能な、他のデバイスと通信するためのモデム、ルータ、その他の通信機器である。通信部109は、有線及び無線のどちらを利用して通信するものであってもよい。通信部109は、PC100とは別体で使用される場合が多い。
【0027】
[画像データのピラミッド構造と画像データのアクセス]
次に、本実施形態の情報処理装置(PC100)による表示処理の対象となる画像データについて説明する。
【0028】
図2は、この画像データのピラミッド構造を示す図である。
同図に示すように、対象となる画像データは、例えば、高解像度の撮像手段によって観察対象を撮像することによって得られた画像データのピラミッド構造である。画像データのピラミッド構造とは、撮像された元の画像データから解像度を段階的に下げた複数の解像度の画像データを生成し、これらを階層状に設定したものである。各階層の画像データはそれぞれ「タイル」と呼ばれるに所定の解像度の領域に分割される。ピラミッド構造における各層を、それぞれ下からN層目、N−1層目、N−2層目、・・・、0層目とすると、それぞれの層毎のタイルの数は2×2、2N−1×2N−1、2N−2×2N−2、・・・、1である。なお、1つのタイルの解像度は例えば256×256(pixel)、あるいは256×512(pixel)などである。
【0029】
[画像ピラミッド構造からの画像データのアクセス]
本実施形態の情報処理装置(PC100)は、ユーザより任意の解像度と画像の表示範囲の指定を受け付けたとき、上記の画像ピラミッド構造の中から該当する画像データをタイルの単位で読み込み、表示用バッファに展開して表示部106に画像を表示する。また、ユーザより、表示部106に表示された画像の表示範囲の移動の指示が与えられた場合には、情報処理装置(PC100)はこの指示に従って、同一解像度の画像データの中から移動先の画像テータをタイルの単位で読み込み、表示用バッファの内容を更新することによって、移動指示先の画像を表示部106に表示する。なお、「画像の表示範囲」とは、全体の画像データの中で、物理画面に実際に表示される画像データの領域のことである。さらに、ユーザより表示のズーム倍率の変更(ズームイン/ズームアウト)の指示が与えられた場合には、情報処理装置(PC100)は、指示されたズーム倍率に対応する解像度の画像データの中から、必要な画像データをタイルの単位で読み込み、表示用バッファの内容を更新することによって、表示画像のズーム倍率を変更する。なお、物理画面における画像表示領域のサイズを固定とした場合、ズーム倍率を上げると(ズームイン時)画像の表示範囲は縮小され、逆にズーム倍率を下げると(ズームアウト時)画像の表示範囲は拡大されることとなる。このように、画像データのピラミッド構造から必要な画像データをタイルの単位で読み込むことによって、画像データに対する全体的なアクセス時間を低減することができる。
【0030】
[ズーム倍率の変更]
次に、ズーム倍率の変更(ズームイン/ズームアウト)について説明する。説明にあたり、画像の表示範囲は2×2のタイルのサイズとする。
【0031】
図3は画像ピラミッド構造と表示画像のズーム倍率の変更との関係を示す図である。図3において、第N−3層目の画像データD3は2×2のタイルで構成され、画像の表示範囲のサイズと同じであるため、全体の画像が表示範囲となって物理的な画面に表示される。この状態からズーム倍率が1段階上げられると、第N−2層目の4×4のタイルで構成される画像データD2の中の2×2分のタイルのサイズ領域が画像の表示範囲1となり、結果的に画像が2倍のズームで表示される。ズーム倍率がさらに1段階上げられると、第N−1層目の8×8タイルで構成される画像データD1の中の2×2分のタイルの領域が画像の表示範囲1となり、画像が4倍のズームで表示される。ズーム倍率がさらに1段階上げられると、第N層目の16×16タイルで構成される画像データD0の中の2×2分のタイルの領域が画像の表示範囲1となり、画像が8倍のズームで表示される。ズームアウト時も同様である。このようにズーム倍率が変更されると、解像度の変更により画像の表示範囲1つまりユーザから見える画像の範囲が変わる。
【0032】
[ズーム倍率変更に伴って画像表示範囲を変更する2種類のモード]
本実施形態の情報処理装置(PC100)においては、ズーム倍率の変更に伴って画像の表示範囲1を変更させる方式として次の2つのモードが用意されている。その1つは、図3及び図6に示すように、ズーム倍率の変更の前後で元画像(N層の画像データ)の座標空間における表示画像1の中心位置が変わらない「中心固定モード」である。もう1つは、図4及び図7に示すように、ズーム倍率の変更の前後で元画像座標空間における表示画像1の中心位置が変わる「中心可変モード」である。
【0033】
中心可変モードでは、より具体的には、図4に示すように、ズーム倍率変更前のカーソルポインタC1が指す画面上の位置に対応する、元画像座標空間における座標がズーム倍率変更後の表示画像の中心位置となるように、ズーム倍率の変更に伴って画像の表示範囲1が変更される。なお、図4においては、N−1層の画像データが表示されている状態にて画面上のカーソルポインタをC0の位置からC1の位置へと移動させ、この後、ズームインの指示が発生した場合を示している。
【0034】
これらの2つのモードはユーザによる設定により使い分けることができる。すなわち、ユーザは入力部107を使っていずれかのモードを有効とする設定を行うことができる。CPU101は、その設定の内容を受けて記憶部108に記憶する。CPU101は、ズーム倍率の変更の指示が入力部107を通じてユーザより与えられると、記憶部108に記憶された設定内容に従って、いずれかのモードで、画像の表示範囲を変更するように制御を行う。
【0035】
[ズーム倍率変更に伴って画像表示範囲を変更する機能的な構成]
図5はズーム倍率変更に伴って画像表示範囲を変更するための機能的な構成を示す図である。
【0036】
同図に示すように、本実施形態の情報処理装置(PC100)は、ズーム倍率変更に伴って画像の表示範囲を変更するための機能的な構成として、カーソルポインタ座標計算部203、カーソルポインタ座標保持部204、表示処理部205を備える。これらの機能部は、上記の典型的なコンピュータを機能させるためのプログラムとして提供される。このプログラムは、例えば、記憶部108などの記憶手段に格納され、CPU101は、画像データを表示部106に表示させるために、記憶部108からメインメモリとしてのRAM(Random Access Memory)103に当該プログラムをロードし、これを解釈して実行する。それぞれの機能部は次のようなものである。
【0037】
カーソルポインタ座標計算部201は、中心可変モードにおいて、画面上のカーソルポインタの位置データから当該カーソルポインタが指す元画像座標空間内の座標を計算する。
【0038】
カーソルポインタ座標保持部202は、カーソルポインタ座標計算部201によって計算された最新のカーソルポインタの座標データを保持する。
【0039】
表示処理部203は、入力部107を通じてユーザより変更先のズーム倍率の値を含むズーム倍率変更要求が入力されたとき、予め設定されたモード(中心固定モード/中心可変モード)に応じて表示画像のズーム倍率を変更する処理を行う。すなわち、中心固定モードが設定されている場合、表示処理部203は、図6に示すように、ズーム倍率変更の前後で、表示画像の元画像座標空間における中心座標を変えずにズーム倍率を変更する処理を行う。中心可変モードが設定されている場合には、図7に示すように、表示処理部203は、カーソルポインタ座標保持部202からカーソルポインタCが指す画面上の位置に対応する元画像座標空間の座標データを取得し、この座標がズーム倍率変更後の表示画像の中心位置となるようにズーム倍率を変更する処理を行う。
【0040】
[中心可変モードでのズーム倍率変更の動作]
図8は中心可変モードでのズーム倍率変更(ズームイン)の様子を示す図である。
同図において(A)をズーム倍率変更前の表示画像とする。この表示画像は画像データブロック構造においてN−3層目の2×2のタイルの画像データD3に基づくものである。この表示画像が表示されている表示部106の画面にはカーソルポインタCが表示されている。このカーソルポインタCはユーザがマウスなどを操作することによって画面上で任意の方向へ任意の距離移動させることができる。
【0041】
ここで、カーソルポインタCがユーザのマウスなどの操作によって図8(A)に示す位置に移動されたこととする。この状態で、ユーザのマウスなどの操作によってN層目の画像へのズームインが指示されると、画像表示状態は、図8(A)のN−3層目の画像表示状態から、図8(B)のN−2層目の画像表示状態、図8(C)のN−1層目の画像表示状態を経て、図8(D)のN層目の画像表示状態へと遷移する。ここで、N層目の画像表示状態において表示画像の中心位置は、N−3層目の画像表示状態でズームインが指示された時にカーソルポインタCが指していた元画像座標空間における座標である。
【0042】
このように目標のズーム倍率の画像表示状態に一挙に切り換えられるのではなく、元のズーム倍率に対応する解像度の階層と目標のズーム倍率に対応する解像度の階層との間に別の解像度の階層が存在する場合には、その間の階層に対応するズーム倍率での画像表示を経て、目標のズーム倍率での画像表示状態へと遷移される。
【0043】
また、この際、元のズーム倍率に対応する解像度による画像表示から目標のズーム倍率に対応する解像度による画像表示に至るまでに、それぞれの解像度による表示画像の中心位置が、元のズーム倍率に対応する解像度による画像表示状態においてカーソルポインタCが指していた元画像座標空間における座標に徐々に近付くように、表示処理部203は、それぞれの解像度での画像の表示範囲を変えて行く。
【0044】
図8(D)のN層目の画像表示状態から、ユーザのマウスなどの操作によってN−3層目の画像へのズームアウトが指示されると、画像表示状態は、図8(D)のN−3層目の画像表示状態から、図8(E)のN−2層目の画像表示状態、図8(F)のN−1層目の画像表示状態を経て、図8(G)のN層目の画像表示状態へと遷移する。このように、ズームアウトの場合も、ズームイン時と同様に、元のズーム倍率に対応する解像度の階層と目標のズーム倍率に対応する解像度の階層との間に別の解像度の階層が存在する場合には、その間の階層に対応するズーム倍率での画像表示を経て、目標のズーム倍率での画像表示状態へと遷移される。また、元のズーム倍率に対応する解像度による画像表示から目標のズーム倍率に対応する解像度による画像表示に至るまでの、それぞれの解像度による表示画像の中心位置が、元のズーム倍率に対応する解像度による画像表示状態においてカーソルポインタCが指していた元画像座標空間における座標に徐々に近付くように、表示処理部203は、それぞれの解像度での画像の表示範囲を変えて行くことは、ズームアウト時も同様である。
【0045】
これにより、視覚的に自然な態様でのズームイン表示およびズームアウト表示が実現される。さらに、本実施形態によれば、操作者が画像における要観察部位にカーソルポインタCを移動させてからズームインの指示を入力した場合に、表示画像が徐々に解像度の高いものに切り替わって表示されて行くので、操作者が要観察部位を見失うおそれが低減され、観察の効率を向上させることができる。さらに、この際、要観察部位の位置が徐々に表示画像の中心に移動するので、操作者が要観察部位を見失う可能性をより一層低減できる。したがって、表示のズーム倍率変更を通して画像の観察を良好に行うことが可能となる。
【0046】
[マウスドラッグによる画像の表示範囲の移動]
表示処理部203は、マウスによるカーソルポインタCの移動操作に伴って画像の表示範囲を移動させる。この際、表示処理部203は、カーソルポインタCの画面上での可動範囲に拠らず、マウスからのカーソルポインタその移動操作のための出力をもとに、画像の表示範囲を移動させることが可能である。
【0047】
図9はマウスドラッグによる画像の表示範囲の移動について説明する図である。同図において、(A)から(D)はマウスのドラッグ操作による画像の表示範囲の移動の様子を時系列に示している。
【0048】
表示処理部203は、マウスのドラッグ操作に応じて次のように画像の表示範囲を移動させるように処理を行う。まず、図9(A)に示すように、マウスのカーソルポインタCが表示画像の上に存在するものとする。この状態からマウスのドラッグ操作によりカーソルポインタCが図面上左方向へ移動されると、表示処理部203は、そのカーソルポインタCの移動方向へ移動量だけ、画像の表示範囲を移動させる。図9(B)はマウスのドラッグ操作によりカーソルポインタCが画面の表示領域の端まで到達した状態である。このように画像の表示範囲はマウスのドラッグ操作によるカーソルポインタCの移動に伴って移動する。表示処理部203は、このようにカーソルポインタCが画像の画面の表示領域の端まで到達した状態において、さらにマウスのドラッグ操作によりカーソルポインタCを図面上左方向へ移動させるための操作入力が発生した場合には、カーソルポインタCを画面の表示領域の端に置いたまま画像の表示範囲のみを移動させる。図8(C)および(D)はこのときの画像の表示範囲の移動の様子を示している。
【0049】
これにより、マウスのドラッグ操作によりカーソルポインタCの移動操作に伴う画像の表示範囲の移動を、画面上でのカーソルポインタCの移動の限界に縛られることなく行うことが可能となり、ユーザにとっての操作性が格段に向上する。
【0050】
なお、図の例では、マウスのドラッグ操作によりカーソルポインタが図面上左方向へ移動された場合について説明したが、その他の方向へ移動される場合も同様に、画像の表示を画面上でのカーソルポインタの移動の限界に縛られることなく行うことができる。
【0051】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々
の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 画像の表示範囲
100 PC
101 CPU
106 表示部
107 入力部
108 記憶部
203 カーソルポインタ座標計算部
204 カーソルポインタ座標保持部
205 表示処理部
C カーソルポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面を有し、顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを前記画面に表示可能な表示部と、
前記画面上で前記カーソルポインタを移動させるユーザからの入力および前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示を受け付けることが可能な入力部と、
前記入力部により前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させる表示処理部と
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記表示処理部は、ズーム倍率を段階的に前記指示されたズーム倍率まで変更し、その都度、変更されたズーム倍率の画像を表示させる
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記表示処理部は、段階的なズーム倍率の変更に伴い、表示画像の中心位置を前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき前記カーソルポインタが指していた元画像座標空間における位置に徐々に近付ける
情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記入力部は、ズーム倍率の変更に伴う表示画像の表示方法として第1のモードと第2のモードのいずれか一方をユーザに設定させ、
前記表示処理部は、前記第1のモードが設定されている場合、前記入力部により前記ズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置をズーム倍率変更後の表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させ、前記第1のモードが設定されている場合、ズーム倍率の変更前後で元画像座標空間における表示画像の中心位置を固定したままズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させる
情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記入力部はマウスであり、
前記表示処理部は、前記画面より解像度の高い画像を表示させるとき、前記マウスによる前記カーソルポインタの移動操作に伴って前記画面に表示させる画像の範囲を移動させ、かつ前記カーソルポインタの前記画面上での可動範囲に拠らず、前記マウスからの前記カーソルポインタの移動操作のための出力をもとに、前記画面に表示させる画像の範囲を移動させる
情報処理装置。
【請求項6】
顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを表示部の画面に表示させ、
ユーザより前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示が入力されたとき、表示処理部が、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させる
情報処理方法。
【請求項7】
顕微鏡により得られた画像とともにカーソルポインタを表示部の画面に表示させ、
ユーザより前記表示部に表示された画像に対するズーム倍率変更の指示が入力されたとき、前記カーソルポインタが指す元画像座標空間における位置を表示画像の中心位置としてズーム倍率を変更した画像を前記画面に表示させる
ようにコンピュータを動作させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−118479(P2011−118479A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272841(P2009−272841)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】