説明

情報処理装置および充放電制御方法

【課題】バッテリ駆動時間を犠牲にすることなく、バッテリ寿命を延ばす。
【解決手段】実施形態によれば、情報処理装置は、第1のバッテリおよび前記第1のバッテリよりも充放電サイクル寿命が長い第2のバッテリから電力をそれぞれ受けるように構成されている。この情報処理装置は、電源回路と、充電手段とを具備する。電源回路は、前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが放電可能状態である場合、前記情報処理装置内のコンポーネントに電力を供給するために前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを放電する。充電手段は、前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが満充電状態でない場合、前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バッテリ駆動可能なコンピュータのような情報処理装置および同装置に適用される充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートブックタイプまたはラップトップタイプの各種ポータブルパーソナルコンピュータが開発されている。このようなパーソナルコンピュータの多くは、バッテリ駆動可能に構成されている。パーソナルコンピュータに適用されるバッテリとしては、例えば、リチウムイオンバッテリが知られている。近年では、リチウムイオンバッテリの高容量化が進み、これによってパーソナルコンピュータをバッテリによって長時間駆動することが実現できるようになってきた。また、電池特性が互いに異なる複数種の組電池を搭載するシステムも知られている。
【0003】
一方、パーソナルコンピュータの堅牢/高信頼性設計により、パーソナルコンピュータの品質(寿命)も大幅に改善されている。従って、パーソナルコンピュータにおいては、バッテリの高容量化のみならず、バッテリの長寿命化も要求される。
【0004】
一般に、バッテリの性能(例えば、バッテリの充電可能容量)は、そのバッテリの充放電を繰り返すと徐々に劣化することが知られている。このため、バッテリの寿命を示す指標としては、充放電サイクル寿命(またはサイクル寿命と称される)が用いられる。バッテリの充放電サイクル寿命は、例えば、そのバッテリの充電可能容量がそのバッテリの初期容量に対して所定割合に低下する時における充放電サイクルの数として定義し得る。
【0005】
ところで、最近では、バッテリの寿命を延ばすために、充放電による性能劣化が少ない新たなバッテリが開発され始めている。高寿命化を意図して設計されたバッテリはコンピュータ内の電子部品と同等の長い寿命を有するかもしれない。したがって、高寿命化を意図したバッテリは、バッテリ交換を前提としないシステム設計を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−182810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一般に、バッテリの容量とバッテリの寿命はトレードオフの関係にあり、高寿命化を意図して設計されたバッテリの単位体積当たりの容量は、通常のリチウムイオンバッテリのような、高容量を意図して設計されたバッテリよりも小さいのが通常である。このため、高寿命化を意図して設計されたバッテリを単純にコンピュータに適用するならば、コンピュータのバッテリ駆動時間が短くなる。
【0008】
よって、バッテリ駆動時間を犠牲にすることなく、バッテリ寿命を延ばすことができる新たな技術の実現が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、情報処理装置は、第1のバッテリおよび前記第1のバッテリよりも充放電サイクル寿命が長い第2のバッテリから電力をそれぞれ受けるように構成されている。この情報処理装置は、電源回路と、充電手段とを具備する。電源回路は、前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが放電可能状態である場合、前記情報処理装置内のコンポーネントに電力を供給するために前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを放電する。充電手段は、前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが満充電状態でない場合、前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを充電する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリそれぞれの特性の例を説明するための図。
【図3】同実施形態に係る情報処理装置のシステム構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態に係る情報処理装置内の電源システムの構成を示す回路図。
【図5】同実施形態に係る情報処理装置によって実行されるバッテリ接続チェック処理の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態に係る情報処理装置によって実行される充電開始処理の手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリそれぞれを充電する動作を説明するための図。
【図8】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリに適用されるダイオードOR接続を説明するための図。
【図9】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリそれぞれを放電する動作を説明するための図。
【図10】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリを切り替えるスイッチ回路を示す図。
【図11】同実施形態に係る情報処理装置に取り付けられる2つのバッテリの一方の出力に接続される昇圧回路を示す図。
【図12】同実施形態に係る情報処理装置の使用例と2つのバッテリの充放電との関係の例を示す図。
【図13】同実施形態に係る情報処理装置によって放電開始時に実行されるバッテリ切り替え処理の手順を示すフローチャート。
【図14】一方のバッテリのローバッテリ状態になった時に同実施形態に係る情報処理装置によって実行されるバッテリ切り替え処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、一実施形態に係る情報処理装置の構成について説明する。この情報処理装置は、例えば、バッテリによって駆動可能なノートブック型の携帯型パーソナルコンピュータ10として実現されている。図1は、ディスプレイユニットを開いた状態におけるコンピュータ10を正面側から見た斜視図である。本コンピュータ10は、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18から電力をそれぞれ受けるように構成されている。第1のバッテリ17および第2のバッテリ18は互いに異なる特性を有している。
【0012】
第1のバッテリ17は、高容量化を意図した通常のリチウムイオンバッテリ(高容量バッテリ)などから構成してもよい。通常、バッテリを急速充電すると、バッテリの充放電サイクル寿命(単にサイクル寿命とも云う)に悪影響が及ぼされる。よって、高容量化を意図したリチウムイオンバッテリにおいては、その充放電サイクル寿命が短くなることを防止するために、充電電流を低く押さえる傾向がある。
【0013】
一方、第2のバッテリ18としては、例えば、第1のバッテリ17よりも充放電サイクル寿命が長いバッテリ、つまり充放電に対する性能の劣化(例えば、充電可能容量の低下)が少ないバッテリが用いられる。第2のバッテリ18においては、充放電に対する性能の劣化が少ないので、大充電電流を用いた急速充電が可能である。したがって、第2のバッテリ18は、急速充電可能、且つ長寿命のバッテリであると云える。上述したように、バッテリの容量と充放電サイクル寿命はトレードオフの関係にあるので、第2のバッテリ18は、第1のバッテリ17よりも容量は低いが、第1のバッテリ17よりも急速充電が可能で且つ第1のバッテリ17よりも充放電サイクル寿命が長い。
【0014】
充放電サイクル寿命が長いバッテリとしては、例えば、株式会社東芝によって開発されたSCiB蓄電池、等が挙げられる。
【0015】
本コンピュータ10は、本コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するために、第1のバッテリ17よりも第2のバッテリ18を優先的に放電する。より詳しくは、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18がそれぞれ放電可能状態である場合、本コンピュータ10内の電源回路は、本コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するために、第1のバッテリ17よりも優先して第2のバッテリ18を放電する。つまり、第2のバッテリ18が、本コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するための電力ソースとして機能する。第2のバッテリ18の残容量が閾値よりも低下した時、つまり、例えば第2のバッテリ18がローバッテリ状態またはローバッテリ状態に近い状態になった時、放電対象のバッテリつまり電力ソースは、第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に自動的に切り替えられる。
【0016】
第1のバッテリ17の電源出力端子は第2のバッテリ18の電源出力端子にワイヤードOR接続してもよい。この場合、第2のバッテリ18の出力電圧が第1のバッテリ17の出力電圧よりも高くなるように第2のバッテリ18の出力電圧を設定してもよい。これにより、第1のバッテリ17よりも第2のバッテリ18を優先的に放電することが可能となる。第2のバッテリ18の出力電圧は、例えば、第2のバッテリ18内におけるバッテリーセル直列本数、つまり直列接続されるセルの個数、を変更することによって、調整することができる。
【0017】
さらに、本コンピュータ10内の充電回路は、第1のバッテリ17よりも第2のバッテリ18を優先的に充電する。より詳しくは、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18がそれぞれ満充電状態でない場合、本コンピュータ10は、外部電源装置からの電力を用いて、第1のバッテリ17よりも優先して第2のバッテリ18を充電する。
【0018】
このように、本実施形態では、第1のバッテリ17よりも優先して第2のバッテリ18が充放電される。これにより、本コンピュータ10においては、第1のバッテリ17に対する充放電の頻度を減らすことができ、これにより第1のバッテリ17の充電可能容量が劣化し始める時期を遅らせることが出来る。したがって、第1のバッテリ17の充電可能容量は長期間に亘って初期容量に近い値に維持できる。第2のバッテリ18は充放電サイクル寿命が長い。たとえ第2のバッテリ18の使用頻度(充放電の頻度)が高くても、第2のバッテリ18の充電可能容量の劣化の程度は非常に小さい。よって、第1のバッテリ17よりも優先して第2のバッテリ18を充放電するという本実施形態の構成は、十分に長いバッテリ駆動時間を、長期間に亘って維持することを可能にする。
【0019】
本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成される。ディスプレイユニット12には、LCD16(Liquid Crystal Display)から構成される表示装置が組み込まれている。
【0020】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に支持され、そのコンピュータ本体11に対してコンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面がディスプレイユニット12によって覆れる閉塞位置との間を回動自由に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/オフするための電源スイッチ14およびタッチパッド15が配置されている。
【0021】
また、コンピュータ本体11には、電源コネクタ20が設けられている。電源コネクタ20はコンピュータ本体11の側面、例えば左側面に設けられている。この電源コネクタ20には、外部電源装置が取り外し自在に接続される。外部電源装置としては、ACアダプタを用いることが出来る。ACアダプタは商用電源(AC電力)をDC電力に変換する電源装置である。
【0022】
電源コネクタ20は、ACアダプタのような外部電源装置から導出される電源プラグが取り外し自在に接続可能なジャックから構成されている。第1のバッテリ17は、例えば、コンピュータ本体11の後端部に取り外し自在に装着される。一方、第2のバッテリ18は、例えば、コンピュータ本体11の底面部に取り外し自在に装着される。第1のバッテリ17は本コンピュータ10に標準搭載されるバッテリであってもよく、また第2のバッテリ18は本コンピュータ10に必要に応じて装着可能なオプションバッテリであってもよい。
【0023】
本コンピュータ10は、外部電源装置からの電力、第1のバッテリ17からの電力、または第2のバッテリ18からの電力によって駆動される。本コンピュータ10の電源コネクタ20に外部電源装置が接続されているならば、本コンピュータ10は外部電源装置からの電力によって駆動される。また、外部電源装置からの電力は、第1のバッテリ17または第2のバッテリ18を充電するためにも用いられる。第1のバッテリ17または第2のバッテリ18の充電は、本コンピュータ10が電源オンされている期間中のみならず、本コンピュータ10が電源オフされている期間中にも実行してもよい。本コンピュータ10の電源コネクタ20に外部電源装置が接続されていない期間中は、本コンピュータ10は第1のバッテリ17からの電力または第2のバッテリ18からの電力によって駆動される。
【0024】
また、コンピュータ本体11には、外部電源装置の有無等の各種電源ステータスを通知するためのインジケータ16が設けられている。このインジケータ16は、例えば、コンピュータ本体11の正面に設けられている。インジケータ16は、LEDから構成し得る。
【0025】
図2は、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれの特性の例を示す。第1のバッテリ17は、例えば、高容量のリチウムイオンバッテリであってもよい。第1のバッテリ17の特性例は、以下の通りである。
【0026】
定格電圧:例えば、10.8[V]
定格電流容量: 例えば、6200[mAh]
容量: 例えば、62[Wh](=10.8[V]×6200[mAh])
充電電流: 3[A]
充放電サイクル寿命: 例えば、500回
第1のバッテリ17の満充電が500回実行された時、第1のバッテリ17の充電可能容量は、その初期容量の例えば90[%]に減少する。
【0027】
一方、第2のバッテリ18は、例えば、SCiB蓄電池であってもよい。SCiB蓄電池はリチウムイオンバッテリの一種であるが、その負極にはカーボン系材料の代わりに不燃性の酸化物系材料が適用されている。これにより、SCiB蓄電池は、充放電に対する高い耐性を有し得、長寿命(つまり、充放電サイクル寿命が長い)という特徴を有する。さらに、SCiB蓄電池は通常のリチウムイオンバッテリよりも高い急速充電性能を有しており、SCiB蓄電池の充電には通常のリチウムイオンバッテリの充電電流よりも大きな充電電流を使用することが出来る。
【0028】
第2のバッテリ18の特性例は、以下の通りである。
定格電圧: 例えば、14.4[V]
定格電流容量: 例えば、1400[mAh]
容量: 例えば、20[Wh](=14.4[V]×1400[mAh])
充電電流: 例えば、7[A]
充放電サイクル寿命: 例えば、2000回
第2のバッテリ18が2000回だけ満充電された時、第2のバッテリ18の充電可能容量は、その初期容量の例えば90[%]に減少する。
【0029】
図3は、本コンピュータ10のシステム構成を示している。本コンピュータ10は、CPU111、ノースブリッジ112、主メモリ113、グラフィクスコントローラ114、サウスブリッジ115、ハードディスクドライブ(HDD)116、光ディスクドライブ(ODD)117、BIOS−ROM118、エンベデッドコントローラ(EC)119、電源コントローラ(PSC)120、電源回路121、ACアダプタ122等を備えている。ACアダプタ122は上述の外部電源装置として使用される。
【0030】
CPU111は、本コンピュータ10の各コンポーネントの動作を制御するプロセッサである。このCPU111は、HDD116から主メモリ113にロードされる各種ソフトウェア、例えば、オペレーティングシステム(OS)および各種アプリケーションプログラムを実行する。また、CPU111は、不揮発性メモリであるBIOS−ROM118に格納されたBIOS(基本入出力システム:Basic Input Output System)も実行する。BIOSはハードウェア制御のためのシステムプログラムである。
【0031】
ノースブリッジ112は、CPU111のローカルバスとサウスブリッジ115との間を接続するブリッジデバイスである。また、ノースブリッジ112はグラフィクスコントローラ114との通信を実行する機能も有している。さらに、ノースブリッジ112には、主メモリ113を制御するメモリコントローラも内蔵されている。グラフィクスコントローラ114は、本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD16を制御する表示コントローラである。
【0032】
サウスブリッジ115はPCIバス1に接続されており、PCIバス1上の各デバイスとの通信を実行する。また、サウスブリッジ115は、ハードディスクドライブ(HDD)116および光ディスクドライブ(ODD)117を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラやSerial ATAコントローラを内蔵している。
【0033】
EC119、電源コントローラ(PSC)120、およびバッテリ17は、ICバスのようなシリアルバス2を介して相互接続されている。エンベデッドコントローラ(EC)119は本コンピュータ10の電力管理を実行するための電源管理コントローラであり、例えば、キーボード(KB)13およびタッチパッド15などを制御するキーボードコントローラを内蔵した1チップマイクロコンピュータとして実現されている。EC119は、ユーザによる電源スイッチ14の操作に応じて本コンピュータ10をパワーオンおよびパワーオフする機能を有している。本コンピュータ10のパワーオンおよびパワーオフの制御は、EC119と電源コントローラ(PSC)120との協働動作によって実行される。EC119から送信されるON信号を受けると、電源コントローラ(PSC)120は電源回路121を制御して本コンピュータ10をパワーオンする。また、EC119から送信されるOFF信号を受けると、電源コントローラ(PSC)120は電源回路121を制御して本コンピュータ10をパワーオフする。EC119、電源コントローラ(PSC)120、および電源回路121は、本コンピュータ10がパワーオフされている期間中も、バッテリ17または18、またはACアダプタ122からの電力によって動作する。
【0034】
電源回路121は、コンピュータ本体11に装着されたバッテリ17,18の一方からの電力、またはコンピュータ本体11に外部電源として接続されるACアダプタ122からの電力を用いて、各コンポーネントへ供給すべき電力(動作電源)を生成する。コンピュータ本体11にACアダプタ122が接続されている場合には、電源回路121は、ACアダプタ122からの電力を用いて各コンポーネントへの動作電源を生成すると共に、充電回路201をオンすることによってバッテリ17または18を充電する。
【0035】
次に、図4を参照して、本コンピュータ10内の電源システムの構成例を説明する。
図4の電源システムは、ダイオードD1,D2,D3,D4,D5、ACアダプタ電流検出器211、バッテリ電流検出器212,213、スイッチS1,S2,S3,S5,S6、充電回路201等を含んでいる。ダイオードD1,D2,D3,D4,D5、ACアダプタ電流検出器211、バッテリ電流検出器212,213、スイッチS1,S2,S3,S5,S6は上述の電源回路121として機能する。
【0036】
この電源システムにおいては、ダイオードD1は、ACアダプタ122を接続するための電源端子(DC IN)20と、システム負荷に電力を供給するための電源出力端子OUTとの間に結合されている。ダイオードD2は、第1のバッテリ17の電源端子と電源出力端子OUTとの間に結合されている。さらに、ダイオードD3は、第2のバッテリ18の電源端子と電源出力端子OUTとの間に結合されている。換言すれば、電源端子(DC IN)20は、システム負荷(CPU、メモリ、LCDパネル、等)に電力を供給するための電源回路121の電源出力端子OUTにダイオードD1を介して接続されている。第1のバッテリ17の電源端子はダイオードD2を介して電源回路121の電源出力端子OUTに接続されている。さらに、第2のバッテリ18の電源端子はダイオードD3を介して電源回路121の電源出力端子OUTに接続されている。
【0037】
なお、電源出力端子OUTとシステム負荷との間にはDC−DCコンバータを配置しても良い。
充電回路201は、電源端子(DC IN)20を介して入力されるACアダプタ122からの電力を用いて、第1のバッテリ17または第2のバッテリ18を充電する充電器である。この充電回路201の出力端子は、ダイオードD4を介して第1のバッテリ17の電源端子に接続され、さらに、ダイオードD5を介して第2のバッテリ18の電源端子にも接続されている。
【0038】
スイッチS1は、ACアダプタ122の放電パスをアクティブにまたはインアクティブにするためのスイッチ回路であり、例えばFETから構成される。ACアダプタ122の放電パスには抵抗R1が挿入されている。アダプタ電流検出器211は、抵抗R1の両端の電圧に基づいて、ACアダプタ122から出力される電流、つまりACアダプタ電流を検出する。スイッチS2は、コンピュータ10をパワーオンまたはパワーオフするためのスイッチ回路であり、例えばFETから構成される。
【0039】
スイッチS3は、第1のバッテリ17を充電するための充電パスをアクティブにまたはインアクティブにするためのスイッチ回路であり、例えばFETから構成される。スイッチS4は、第2のバッテリ18を充電するための充電パスをアクティブにまたはインアクティブにするためのスイッチ回路であり、例えばFETから構成される。
【0040】
第1のバッテリ17の放電パスには、上述のダイオードD2に加え、抵抗R2が挿入されている。バッテリ電流検出器212は、抵抗R2の両端の電圧に基づいて、第1のバッテリ17の放電電流(バッテリ#1電流)を検出する。第2のバッテリ18の放電パスには、上述のダイオードD3に加え、抵抗R3が挿入されている。バッテリ電流検出器213は、抵抗R3の両端の電圧に基づいて、第2のバッテリ18の放電電流(バッテリ#2電流)を検出する。
【0041】
第1のバッテリ17は、第1の組電池171、温度測定器172、不揮発性メモリ173、および放電終止検出器174を含んでいる。第1の組電池171は、幾つかのリチウムイオン蓄電池から構成されている。温度測定器172は第1のバッテリ17内の温度(バッテリ#1温度)を検出する。この温度測定器172は、例えば、サーミスタ、およびA−D変換器などを含んでもよい。A−D変換器はサーミスタによって検出される温度をアナログ値からデジタル値に変換する。不揮発性メモリ173は第1のバッテリ17の特性および状態を示すバッテリ情報を格納する。バッテリ情報は、第1のバッテリ17の充放電特性データを含む。この充放電特性データは、第1のバッテリ17のバッテリ定格、バッテリ容量、充電電流、および充放電サイクル寿命等を示す。バッテリ情報は、さらに、第1のバッテリ17の残容量等の現在の状態を示すステータス情報も含んでもよい。放電終止検出器174は、第1のバッテリ17つまり第1の組電池171の過放電を防止するために、第1のバッテリ17の出力電圧つまり第1の組電池171の出力電圧が放電終止電圧にまで低下したことを検出する。第1のバッテリ17の出力電圧つまり第1の組電池171の出力電圧が放電終止電圧にまで低下したことが検出された時、放電終止検出器174は、第1のバッテリ17の放電パスに挿入されたスイッチS5をオフして、第1のバッテリ17の放電を停止させる。スイッチS5は、例えばFETから構成されている。
【0042】
第2のバッテリ18は、第2の組電池181、温度測定器182、不揮発性メモリ183、および放電終止検出器184を含んでいる。第2の組電池181は、例えば、幾つかのSCiB蓄電池から構成してもよい。温度測定器182は第2のバッテリ18内の温度(バッテリ#2温度)を検出する。この温度測定器182は、例えば、サーミスタ、およびA−D変換器などを含んでもよい。A−D変換器はサーミスタによって検出される温度をアナログ値からデジタル値に変換する。不揮発性メモリ183は第2のバッテリ18の特性および状態を示すバッテリ情報を格納する。バッテリ情報は、第2のバッテリ18の充放電特性データを含む。この充放電特性データは、第2のバッテリ18のバッテリ定格、バッテリ容量、充電電流、および充放電サイクル寿命等を示す。バッテリ情報は、さらに、第2のバッテリ18の残容量等の現在の状態を示すステータス情報も含んでもよい。放電終止検出器184は、第2のバッテリ18つまり第2の組電池181の過放電を防止するために、第2のバッテリ18の出力電圧つまり第2の組電池181の出力電圧が放電終止電圧にまで低下したことを検出する。第2のバッテリ18の出力電圧つまり第2の組電池181の出力電圧が放電終止電圧にまで低下したことが検出された時、放電終止検出器184は、第2のバッテリ18の放電パスに挿入されたスイッチS6をオフして、第2のバッテリ18の放電を停止させる。スイッチS6は、例えばFETから構成されている。
【0043】
電源コントローラ(PSC)120は、以下の動作を実行するように構成されている。
(1)電源コントローラ(PSC)120は、ACアダプタ出力ラインの電圧値(ACアダプタ電圧)と電流値(ACアダプタ電流)とを監視する。これにより電源コントローラ120は、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されているか否かを検出する。
(2)電源コントローラ120は、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されていることを検出した時、アダプタ供給ON信号によってスイッチS1をオンして、システム負荷および充電回路201への電力供給を準備する。
【0044】
(3)電源コントローラ120は、第1のバッテリ17がコンピュータ10の第1のバッテリ端子に接続されたことを、第1のバッテリ17のバッテリ温度のA/D変換値(バッテリ#1温度)に基づき検出する。かつ、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17の電圧、電流、温度をそれぞれ監視する。また第1のバッテリ17の接続が検出された時には、電源コントローラ120は、シリアルバス2を介して第1のバッテリ17内の不揮発性メモリ173からバッテリ情報をリードし、そのリードしたバッテリ情報に基づいて第1のバッテリ17の特性および第1のバッテリ17の現在の状態を認識する。
(4)電源コントローラ120は、充電回路ON信号およびバッテリ#1充電ON信号によって、第1のバッテリ17の充電を制御することができる。
【0045】
(5)電源コントローラ120は、第2のバッテリ18に関しても、上記(3)、(4)の動作を実行する。すなわち、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18がコンピュータ10の第2のバッテリ端子に接続されたことを、第2のバッテリ18のバッテリ温度のA/D変換値(バッテリ#2温度)に基づき検出する。かつ、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の電圧、電流、温度をそれぞれ監視する。また第2のバッテリ18の接続が検出された時には、電源コントローラ120は、シリアルバス2を介して第2のバッテリ18内の不揮発性メモリ183からバッテリ情報をリードし、そのリードしたバッテリ情報に基づいて第2のバッテリ18の特性および第2のバッテリ18の現在の状態を認識する。さらに、電源コントローラ120は、充電回路ON信号およびバッテリ#2充電ON信号によって、第2のバッテリ18の充電を制御することができる。
【0046】
(6)本実施形態の電源システムにおいては、ACアダプタ122、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18は、ダイオードD1、D2、D3を介して電源出力端子OUTに接続されている。このようなACアダプタ122、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18のダイオードOR接続により、ACアダプタ122、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18の内で出力電圧が最も高いものを、システム負荷に電力を供給するための電力ソースとして使用することができる。
【0047】
本実施形態では、例えば、ACアダプタ122の出力電圧が最も高く設定されている。第2のバッテリ18の出力電圧は、第1のバッテリ17の出力電圧よりも高く設定されている。この場合、ACアダプタ122の優先度が最も高く、次に、第2のバッテリ18の優先度が高く、第1のバッテリ17の優先度が最も低くなる。
【0048】
ACアダプタ122は、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18よりも優先的に電力ソースとして使用される。これにより、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されている時は、ACアダプタ122からの電力によってコンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給することが出来る。ACアダプタ122が電力ソースとして動作している間は、電源出力端子OUTの電圧は、第1のバッテリ17の出力電圧および第2のバッテリ18の出力電圧のいずれよりも高い。したがって、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18は放電されない。一方、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されていない時は、第2のバッテリ18は、コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するために、第1のバッテリ17よりも優先的に放電される。第2のバッテリ18の残容量がローバッテリ状態に近づいた時、第2のバッテリ18の出力電圧は低下され、第1のバッテリ17の出力電圧以下になる。この時、電力ソースは、第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に自動的に切り替えられる。
【0049】
次に、電源コントローラ120によって実行される充電制御処理について説明する。
【0050】
(1)電源コントローラ120は、まず、図5のフローチャートに従って、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれがコンピュータ10に取り付けられているか否かを判定する。この場合、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17がコンピュータ10の第1のバッテリ端子に接続されているか否かを判定する(ステップS11)。第1のバッテリ17がコンピュータ10の第1のバッテリ端子に接続されているならば、電源コントローラ120は、シリアルバス2を介して第1のバッテリ17と通信し、充放電特性データを含むバッテリ情報を第1のバッテリ17からリードする(ステップS12)。次に、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18がコンピュータ10の第2のバッテリ端子に接続されているか否かを判定する(ステップS13)。第2のバッテリ18がコンピュータ10の第2のバッテリ端子に接続されているならば、電源コントローラ120は、シリアルバス2を介して第2のバッテリ18と通信し、充放電特性データを含むバッテリ情報を第2のバッテリ18からリードする(ステップS14)。
【0051】
(2)電源コントローラ120が第1のバッテリ17および第2のバッテリ18の双方がコンピュータ10に取り付けられていることを検出したならば、電源コントローラ120は、図6のフローチャートに従って、以下のように充電制御処理を実行する。
【0052】
まず、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17の充電開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップS21)。第1のバッテリ17の充電開始条件は、一般には、第1のバッテリ17が満充電状態ではないことである。より詳しくは、第1のバッテリ17の充電開始条件は、例えば、(1)第1のバッテリ17が満充電状態ではない、(2)ACアダプタがコンピュータ10に接続されており、且つACアダプタの出力電圧が正常である、(3)第1のバッテリ17の温度が正常である、という3つの条件が成立したときに成立される。もちろん、(1)、(2)の2つの条件が成立した時に、第1のバッテリ17の充電開始条件が成立していると判定しても良い。
【0053】
第1のバッテリ17の充電開始条件が成立しているならば(ステップS21のYES)、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の充電開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップS22)。第2のバッテリ18の充電開始条件は、一般には、第2のバッテリ18が満充電状態ではないことである。より詳しくは、第2のバッテリ18の充電開始条件は、例えば、(1)第2のバッテリ18が満充電状態ではない、(2)ACアダプタがコンピュータ10に接続されており、且つACアダプタの出力電圧が正常である、(3)第2のバッテリ18の温度が正常である、という3つの条件が成立したときに成立される。もちろん、(1)、(2)の2つの条件が成立した時に、第2のバッテリ18の充電開始条件が成立していると判定しても良い。
【0054】
第1のバッテリ17の充電開始条件および第2のバッテリ18の充電開始条件の双方が成立しているならば(ステップS22のYES)、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の充電を第1のバッテリ17の充電よりも優先して開始する(ステップS23)。第1のバッテリ17の充電開始条件のみが成立しており、第2のバッテリ18の充電開始条件が成立していないならば(ステップS22のNO)、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17の充電を開始する(ステップS24)。
【0055】
一方、第1のバッテリ17の充電開始条件が成立していないならば(ステップS21のNO)、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の充電開始条件が成立しているか否かを判定する(ステップS25)。第1のバッテリ17の充電開始条件が成立しておらず、第2のバッテリ18の充電開始条件のみが成立しているならば(ステップS25のYES)、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の充電を開始する(ステップS26)。
【0056】
図7の上側に示すグラフは、第2のバッテリ18の充電期間中における充電電流およびバッテリ電圧の変化特性を示している。このグラフの縦軸は第2のバッテリ18の出力電圧(バッテリ#2電圧)と第2のバッテリ18の充電電流(バッテリ#2充電電流)を表し、このグラフの横軸は時間を表している。図7の下側に示すグラフは、第1のバッテリ17の充電期間中における充電電流およびバッテリ電圧の変化特性を示している。このグラフの縦軸は第1のバッテリ17の出力電圧(バッテリ#1電圧)と第1のバッテリ17の充電電流(バッテリ#1充電電流)を表し、このグラフの横軸は時間を表している。
【0057】
ここで、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されており、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18が満充電状態でない場合を想定する。この場合、まず、第2のバッテリ18が優先的に充電される。第2のバッテリ18の満充電後は、第1のバッテリ17の充電が開始される。より詳しくは、以下のような充電動作を実行してもよい。
【0058】
(1)第2のバッテリ18はまず7[A]の充電電流で定電流充電される。
(2)第2のバッテリ18の電圧がある閾電圧近傍に上昇した時、第2のバッテリ18の充電は、例えば、定電流充電から定電圧充電に切り替えられる。
(3)第2のバッテリ18が満充電状態になった時、つまり第2のバッテリ18の出力電圧が第2のバッテリ18の満充電状態に対応する出力電圧にまで上昇した時(図7のタイミングt)、第2のバッテリ18の充電が終了される。そして、充電対象のバッテリは第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に切り替えられる。
(4)第1のバッテリ17を3[A]の充電電流で定電流充電する。
(5)第1のバッテリ17の電圧がある閾電圧近傍に上昇した時、第1のバッテリ17の充電は、例えば、定電流充電から定電圧充電に切り替えられる。
(6)第1のバッテリ17が満充電状態になった時、つまり第1のバッテリ17の出力電圧が第1のバッテリ17の満充電状態に対応する出力電圧になった時(図7のタイミングt)、第1のバッテリ17の充電が終了される。
【0059】
次に、図8および図9を参照して、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18に対する放電制御動作について説明する。
【0060】
図8は第1のバッテリ17および第2のバッテリ18に対する放電回路部を示している。図8に示されているように、第1のバッテリ17の出力電圧範囲と第2のバッテリ18の出力電圧範囲は互い異なっている。
【0061】
第1のバッテリ17の満充電状態おける第1のバッテリ17の出力電圧は第1電圧であり、第1のバッテリ17のローバッテリ状態おける第1のバッテリ17の出力電圧は第1電圧よりも低い第2電圧である。一方、第2のバッテリ18の満充電状態おける第2のバッテリ18の出力電圧は第1の電圧よりも高い第3電圧であり、第2のバッテリ18のローバッテリ状態おける第2のバッテリ18の出力電圧は第1の電圧よりも低く、且つ第2の電圧よりも高い第4電圧である。
【0062】
より詳しくは、各バッテリの出力電圧範囲は、例えば、次のように設定されている。
第1のバッテリ17の定格出力電圧は図2で説明したように例えば10.8[V]であるが、実際には、第1のバッテリ17の出力電圧は第1のバッテリ17の残容量に応じて変わる。第1のバッテリ17は、例えば、その出力電圧が第1の電圧範囲、例えば9.0[V]〜12.6[V]の範囲内で変わるように設計されている。第1のバッテリ17が満充電状態である時、第1のバッテリ17の出力電圧は例えば12.6[V]またはその近傍の値である。第1のバッテリ17の残容量が閾値よりも少ないローバッテリ状態の時、第1のバッテリ17の出力電圧は例えば9.0[V]となる。
【0063】
第2のバッテリ18の定格出力電圧は図2で説明したように例えば14.4[V]であるが、実際には、第2のバッテリ18の出力電圧もその第2のバッテリ18の残容量に応じて変わる。第2のバッテリ18は、その出力電圧が第2の電圧範囲、例えば12.0[V]〜16.8[V]の範囲内で変わるように設計されている。第2のバッテリ18が満充電状態である時、第2のバッテリ18の出力電圧は例えば16.8[V]またはその近傍の値である。第2のバッテリ18の残容量が閾値よりも少ないローバッテリ状態の時、第2のバッテリ18の出力電圧は例えば12.0[V]となる。
【0064】
第2のバッテリ18の出力電圧範囲(第2の電圧範囲:12.0[V]〜16.8[V])の下端領域は、第1のバッテリ17の出力電圧範囲(第1の電圧範囲:9.0[V]〜12.0[V])の上端領域にオーバラップしている。これにより、第2のバッテリ18の残容量が零になる前に電力ソースを第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に切り替えることができ、しかも、電力ソースが第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に切り替わる時には、第2のバッテリ18および第1のバッテリ17の双方から電力を放電させることができる。よって、電力ソース切り替え時に、電源電圧の変動等の不具合を招くことなく、安定した電力をシステム負荷に供給することが出来る。
【0065】
図9の上側のグラフは、放電期間におけるバッテリ電圧の変化の様子を示している。このグラフの縦軸は第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれ出力電圧(バッテリ電圧)を表し、横軸は時間を表している。
一方、図9の下側のグラフは、放電期間におけるバッテリ容量の変化の様子を示している。このグラフの縦軸は第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれの容量(残容量)を表し、横軸は時間を表している。
上述したように、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18は電源出力端子にダイオードOR接続されており、且つ第1のバッテリ17の出力電圧よりも第2のバッテリ18の出力電圧が高い。よって、ACアダプタ122がコンピュータ10に接続されていない期間中においては、第2のバッテリ18が第1のバッテリ17よりも優先して放電される。
【0066】
第2のバッテリ18の放電が開始されてから所定期間経過し、第2のバッテリ18の残容量がローバッテリ状態近傍にまで低下した時(タイミングtc)、第2のバッテリ18の出力電圧は閾値よりも低下し、第1のバッテリ17の出力電圧と同値になる。タイミングtcからタイミングtdまでの期間中は第1のバッテリ17および第2のバッテリ18から放電される。タイミングtdより後は、第1のバッテリ17からのみ放電される。なお、タイミングtdより後は、過放電防止プロテクターつまり放電終止検出器184が動作して第2のバッテリ18の放電パスが遮断されるので、第2のバッテリ18の出力電圧は上昇する。
【0067】
これまでの説明では、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18を電源出力端子OUTにダイオードOR接続し、且つ第1のバッテリ17の出力電圧よりも第2のバッテリ18の出力電圧を高く設定する構成を説明した。しかし、第2のバッテリ18を第1のバッテリ17に優先して放電させるための構成はこれに限定されない。
【0068】
例えば、図10に示すように、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれの放電パス内にスイッチ301,302を挿入しても良い。電源コントローラ120は、第1のバッテリ17および第2のバッテリ18それぞれが放電可能状態である期間は、スイッチ302をオン状態に設定し、スイッチ301をオフ状態に設定する。これにより、第2のバッテリ18を優先的に放電させることが出来る。第2のバッテリ18の残容量が少なくなった時、電源コントローラ120は、スイッチ301,302を制御して、電力ソースを第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に切り替える。この場合、例えば、スイッチ301,302の双方を一定期間オン状態に設定し、その後、スイッチ302のみをオフしてもよい。
【0069】
また、図11に示すように、第2のバッテリ18の電源端子にそのバッテリの出力電圧を昇圧する昇圧回路401を接続し、第1のバッテリ17の電源端子と、昇圧回路401の出力端子とを、電源回路121の電源出力端子OUTにダイオードOR接続してもよい。この構成においては、2つのバッテリの出力電圧が同じでも良いため、バッテリーセル直列本数の制約を受けない。
【0070】
次に、図12を参照して、本コンピュータ10の使用例と2つのバッテリ17,18に対する充放電動作との関係の例を説明する。
【0071】
上述したように、本実施形態では、急速充電可能且つ長寿命という特徴を有する第2のバッテリ18が、高容量バッテリである第1のバッテリ17よりも優先して充放電される。したがって、結果として、たとえば、オフィスや工場等において、以下のようなコンピュータ10の使用形態を実現することが出来る。
【0072】
(1)高容量の第1のバッテリ17を充電する際には時間がかかる為、第1のバッテリ17の充電を帰宅時以降に行う。
【0073】
(2)会議の合間のような比較的短い時間の間に、急速充電可能且つ長寿命の第2のバッテリ19を充電する。
【0074】
(3)長い会議や外出時には、2つのバッテリーを連続的に使用することよって、例えば、最初に第2のバッテリ18によってコンピュータ10を駆動し、そして第2のバッテリ18がローバッテリ状態になった後は第1のバッテリ17によってコンピュータ10を駆動することによって、コンピュータ10の長時間のバッテリ駆動を実現する。
【0075】
図12においては、出勤時から退勤時までの勤務期間中において短い会議と長い会議とが短い合間を置いて設定されて場合が想定されている。各会議においては、ユーザはコンピュータ10を会議室で使用する。このため、各会議の時間帯においては、コンピュータ10にはACアダプタ122は接続されていない。連続する会議の合間の時間帯は、ユーザはコンピュータ10を自席で使用することができる。このため、会議の合間の時間帯においては、コンピュータ10にACアダプタ122を接続することができる。退勤時以降の時間帯においても、コンピュータ10にACアダプタ122が接続されている。
【0076】
いま、2つのバッテリ17,18が共に放電可能状態である(ローバッテリ状態ではない)とする。最初の短い会議(例えば150分の会議)では、コンピュータ10は第2のバッテリ19から放電される電力によって駆動される。最初の短い会議と次の長い会議(例えば640分の会議)までの合間の時間帯(例えば約20分)においては、第2のバッテリ18がACアダプタ122からの電力によって急速充電される。長い会議でも、最初は、コンピュータ10は第2のバッテリ18から放電される電力によって駆動される。これは、第2のバッテリ18の残像容量が既に行われた充電によって増えており、第2のバッテリ18が放電可能状態であるからである。
【0077】
そして、第2のバッテリ18の残容量がローバッテリ状態に対応する閾値にまで低下すると(例えば、長い会議の開始から180分経過した時点)、電力ソースは、第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に自動的に切り替えられる。以降、長い会議が終了するまで、コンピュータ10は第1のバッテリ17から放電される電力によって駆動される。
【0078】
長い会議が終了すると、コンピュータ10にACアダプタ122が接続される。バッテリ17,18は共にローバッテリに近い状態である。次のバッテリ駆動に備えて、まず、第2のバッテリ18の充電が開始される。第2のバッテリ18が満充電されると、充電対象のバッテリは、第2のバッテリ18から第1のバッテリ17に自動的に切り替えられ、第1のバッテリ17の充電が開始される。
【0079】
このように、本実施形態では、コンピュータ10の電力ソースが比較的短い時間間隔でバッテリ(バッテリ17または18)とACアダプタとの間で切り替えられている間は、第2のバッテリ18だけが充放電され、第1のバッテリ17は充放電されない。長い会議や外出時のように長期間のバッテリ駆動が必要とされるときは、第2のバッテリ18と第1のバッテリ17の双方がこの順で放電される。よって、第1のバッテリ17の充放電の頻度を、第2のバッテリ18の充放電の頻度よりも下げることが可能となる。
【0080】
いま、時間の短い充放電(つまり第2のバッテリ18の充放電)が1日2回行われ、時間の長い充放電(つまり第2のバッテリ18の充放電と第1のバッテリ17の充放電)が1週間に2回行われると仮定し、且つ1回の充放電が1充放電サイクルに想到すると仮定すると、第2のバッテリ18および第1のバッテリ17の寿命は以下のようになる。
【0081】
バッテリ18: 40充放電サイクル/月 → 図2から、バッテリ18の寿命はおよそ4年
バッテリ17: 8充放電サイクル/月 → 図2から、バッテリ17の寿命はおよそ5年
次に、図13を参照して、図10の放電回路に適用される放電制御処理の手順を説明する。
【0082】
バッテリ17または18からの放電が必要となった時、電源コントローラ120は、まず、第2のバッテリ18が放電可能状態であるか否かを判定する(ステップS31)。例えば、第2のバッテリ18の出力電圧が所定値よりも高い場合、つまり第2のバッテリ18がローバッテリ状態でない場合、第2のバッテリ18が放電可能状態であると判定される。第2のバッテリ18が放電可能状態であるならば(ステップS31のYES)、電源コントローラ120は、コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するために、第2のバッテリ18の放電パス内のスイッチ302をオンして、第2のバッテリ18を放電する(ステップS32)。
【0083】
第2のバッテリ18が放電可能状態でないならば(ステップS31のNO)、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17が放電可能状態であるか否かを判定する(ステップS33)。例えば、第1のバッテリ17の出力電圧が所定値よりも高い場合、つまり第1のバッテリ17がローバッテリ状態でない場合、第1のバッテリ17が放電可能状態であると判定される。第1のバッテリ17が放電可能状態であるならば(ステップS33のYES)、電源コントローラ120は、コンピュータ10内のコンポーネントに電力を供給するために、第1のバッテリ17の放電パス内のスイッチ301をオンして、第1のバッテリ17を放電する(ステップS34)。
【0084】
次に、図14を参照して、図10の放電回路に適用される放電バッテリ切り替え処理の手順を説明する。
【0085】
いま、第2のバッテリ18が放電されている、つまり第2のバッテリ18が電力ソースとして使用されていると想定する。電源コントローラ120は、第2のバッテリ18が放電可能状態であるか否かを判定する(ステップS41)。第2のバッテリ18の残容量の低下に起因して第2のバッテリ18の出力電圧が閾値にまで低下すると、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18が放電可能状態でないと判定する。第2のバッテリ18が放電可能状態でないと判定された時(ステップS41のNO)、電源コントローラ120は、第1のバッテリ17が放電可能状態であるか否かを判定する(ステップS42)。第1のバッテリ17が放電可能状態であれば(ステップS42のYES)、電源コントローラ120は、まず、第1のバッテリ17の放電パス内のスイッチ301をオンして、第1のバッテリ17の放電を開始する(ステップS43)。そして、スイッチ301がオンされてから所定時間(T秒)経過後に、電源コントローラ120は、第2のバッテリ18の放電パス内のスイッチ302をオフする(ステップS44)。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1のバッテリ17とこの第1のバッテリ17よりも充放電サイクル寿命が長い第2のバッテリ18とを含むハイブリッドバッテリシステムが実現される。第2のバッテリ18は第1のバッテリ17よりも優先して充放電される。このため、第1のバッテリ17が充放電される頻度を低く押されることが可能となるので、第1のバッテリ17の性能劣化を遅らせることができる。一方、第2のバッテリ18の充放電サイクル寿命は長いので、たとえ第2のバッテリ18の充放電の頻度が高くても、第2のバッテリ18の劣化の程度は非常に小さい。よって、バッテリ駆動時間を犠牲にすることなく、バッテリ寿命を延ばすことができる。
【0087】
なお、本実施形態では、第2のバッテリ18として急速充電可能で且つ充放電サイクル寿命が長いという2つの特性を併せ持つバッテリを用いる場合を例示したが、第2のバッテリ18は、必ずしも急速充電可能という特性を有していなくてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、第1のバッテリ17の容量が第2のバッテリ18の容量よりも大きい場合を想定したが、第1のバッテリ17の容量と第2のバッテリ18の容量はそれぞれ任意の値に設定しても良い。
【0089】
また本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
17…第1のバッテリ、18…第2のバッテリ、120…電源コントローラ、201…充電回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバッテリおよび前記第1のバッテリよりも充放電サイクル寿命が長い第2のバッテリから電力をそれぞれ受けるように構成された情報処理装置であって、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが放電可能状態である場合、前記情報処理装置内のコンポーネントに電力を供給するために前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを放電する電源回路と、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが満充電状態でない場合、前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを充電する充電手段とを具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第2のバッテリの出力電圧は前記第1のバッテリの出力電圧よりも高く、
前記電源回路は、電源出力端子と、前記第1のバッテリの電源端子と前記電源出力端子との間に結合された第1のダイオードと、前記第2のバッテリの電源端子と前記電源出力端子との間に結合された第2のダイオードとを含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記電源回路は、前記第2のバッテリ18の残容量が閾値よりも低下した時、放電対象のバッテリを前記第2のバッテリ18から前記第1のバッテリに切り替えることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2のバッテリは前記第1のバッテリよりも高い急速充電性能を有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1のバッテリの容量は前記第2のバッテリの容量よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1のバッテリの満充電状態おける前記第1のバッテリの出力電圧は第1電圧であり、前記第1のバッテリのローバッテリ状態おける前記第1のバッテリの出力電圧は前記第1電圧よりも低い第2電圧であり、前記第2のバッテリの満充電状態おける前記第2のバッテリの出力電圧は前記第1の電圧よりも高い第3電圧であり、前記第2のバッテリのローバッテリ状態おける前記第2のバッテリの出力電圧は前記第1の電圧よりも低く、且つ前記第2の電圧よりも高い第4電圧であり、
前記電源回路は、電源出力端子と、前記第1のバッテリの電源端子と前記電源出力端子との間に結合された第1のダイオードと、前記第2のバッテリの電源端子と前記電源出力端子との間に結合された第2のダイオードとを含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置に設けられる、第1のバッテリおよび前記第1のバッテリよりも充放電サイクル寿命が長い第2のバッテリそれぞれの充放電を制御する充放電制御方法であって、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが放電可能状態である場合、前記情報処理装置内のコンポーネントに電力を供給するために前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを放電するステップと、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリそれぞれが満充電状態でない場合、前記第1のバッテリよりも優先して前記第2のバッテリを充電するステップとを具備することを特徴とする充放電制御方法。
【請求項8】
前記放電するステップは、前記第2のバッテリ18の残容量が閾値よりも低下した時、放電対象のバッテリを前記第2のバッテリ18から前記第1のバッテリに切り替えるステップを含むことを特徴とする請求項7記載の充放電制御方法。
【請求項9】
前記第2のバッテリは前記第1のバッテリよりも高い急速充電性能を有することを特徴とする請求項7記載の充放電制御方法。
【請求項10】
前記第1のバッテリの容量は前記第2のバッテリの容量よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の充放電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−229337(P2011−229337A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98960(P2010−98960)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】