説明

情報処理装置および情報処理装置の制御方法

【課題】入力装置を有する表示装置の消費電力の抑制とセキュリティ性の向上とを両立できるようにする。
【解決手段】入力装置12と、人体の接近を検出する第1の検出部13と、入力装置12に対する入力操作に用いられる媒体20の識別情報を検出する第2の検出部14と、第1及び第2の検出部13及び14による検出結果に基づいて、入力装置12の動作状態を制御する制御部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理技術に関し、例えば、入力装置を有する情報処理装置の省電力化及びセキュリティ性に関わる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ユーザーが装置を使用しないときは節電し、ペンや指等の操作媒体やユーザー自身が装置に接近あるいは接触するだけで直ちに使用できる、省電力制御方式が記載されている。この省電力制御方式では、装置の筐体全体あるいは一部に、ユーザーが操作する媒体あるいはユーザーに付随する媒体が接近あるいは接触したことを検出し、前記媒体の接近あるいは接触状況に応じて前記装置の消費電力を制御する。これにより、例えば、ユーザーが装置の電源をつけたまま、長時間離席した場合、自動的に装置を節電状態の待機中にし、ユーザーあるいはユーザーが操作するペンや指等の媒体が装置に接近または接触するだけで、直ちに本装置を使用可能にできる。
【0003】
また、下記の特許文献2には、ペンデバイスを正当な使用者が使用しているかどうかを判断できるようにする、使用者判別システム等が記載されている。この使用者判別システムでは、ペンデバイスと当該ペンデバイスの正当な使用者の特徴情報(例えば、筆跡情報)との対応をデータベースに記憶しておき、ペンデバイスの使用に際し、当該ペンデバイスに対応する特徴情報を前記データベースから取得する。そして、当該システムは、取得した特徴情報と、前記ペンデバイスにて取得された当該ペンデバイスの使用者の特徴情報とに基づいて、当該使用者が正当な使用者であるかどうかを判断する。その結果、正当な使用者であると判断されれば、その使用者によるペンデバイスのその後の使用が許可される一方、正当な使用者でないと判断されれば、その使用者によるペンデバイスのその後の使用が拒絶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−119090号公報
【特許文献2】特開2007−004706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ユーザーあるいはユーザーが操作するペンや指等の媒体が装置に接近または接触するだけで、直ちに当該装置が使用可能になることを記載するに留まる。そのため、特許文献1の技術では、どんなユーザーあるいは媒体であっても装置に接近または接触しさえすれば、当該装置が使用可能になる。
【0006】
一方、特許文献2は、ペンデバイスの使用者の特徴情報(例えば、筆跡情報)が予めデータベースに登録された情報と一致するかしないかに応じて、ペンデバイスの使用が許可又は拒絶されることを記載するに留まる。
【0007】
そのため、仮に、特許文献1記載の技術に、特許文献2記載の技術の適用を試みたとしても、ペンデバイスの正当な使用者でない者が装置に接近あるいは接触すれば当該装置は使用可能な状態となり、その後にペンデバイスの使用が拒絶できるに留まる。
【0008】
本発明の目的の一つは、情報処理装置の省電力化とセキュリティ性の向上との両立を図ることにある。情報処理装置の非限定的な一例は、デジタイザーやタブレット等と呼ばれる、空間的な位置座標等の情報が入力可能な入力装置を有する装置である。
【0009】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の情報処理装置の一態様は、入力装置と、人体の接近を検出する第1の検出部と、前記入力装置に対する入力操作に用いられる媒体の識別情報を検出する第2の検出部と、前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御する制御部と、を備える。当該情報処理装置では、第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御することができる。
【0011】
ここで、前記制御部は、前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知し、かつ、前記第2の検出部による検出結果に基づいて所定の識別情報を有する前記媒体が接近していることを認知した場合に、前記入力装置の動作を開始させる、こととしてもよい。これにより、入力装置の動作開始を、当該入力装置に、人体が接近し、かつ、前記媒体が接近した場合に限ることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知した場合に、前記第2の検出部の動作を開始させる、こととしてもよい。これにより、第2の検出部の動作開始を、人体が入力装置に接近した場合に限ることができる。
【0013】
さらに、本発明の情報処理装置の制御方法の一態様は、入力装置を備えた情報処理装置の制御方法であって、人体の接近を第1の検出部にて検出するとともに、前記入力装置に対する入力操作に用いられる媒体の識別情報を第2の検出部にて検出する処理と、前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御する処理と、を有する。当該制御方法では、第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御することができる。
【0014】
ここで、前記入力装置の動作状態を制御する処理は、前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知し、かつ、前記第2の検出部による検出結果に基づいて所定の識別情報を有する前記媒体が接近していることを認知した場合に、前記入力装置の動作を開始させる処理を含む、こととしてよい。これにより、入力装置の動作開始を、当該入力装置に、人体が接近し、かつ、前記媒体が接近した場合に限ることができる。
【0015】
また、前記入力装置の動作状態を制御する処理は、前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知した場合に、前記第2の検出部の動作を開始させる処理を含む、こととしてよい。これにより、第2の検出部の動作開始を、人体が入力装置に接近した場合に限ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る情報処理システムの一例としての電子ペーパーシステムの構成例を模式的に示す図である。
【図2】図1に例示する指示具及び表示装置の機能的な構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に例示する指示具の機能的な構成例を示す図である。
【図4】図1に例示する指示具の変形例を示す図である。
【図5】図1及び図2に例示する座標検出装置に焦電型赤外線センサーを用いた構成例を示す図である。
【図6】図5に例示する焦電型赤外線センサーの構成例を示すブロック図である。
【図7】図1及び図2に例示する座標検出装置に静電容量センサーを用いた構成例を示す図である。
【図8】図7に例示する静電容量センサーの構成例を示すブロック図である。
【図9】図1及び図2に例示する電子ペーパーシステムの動作例を説明するタイミングチャートである。
【図10】図2に例示する表示装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0018】
〔背景〕
近年、電子ペーパーと呼ばれる、紙に近い表示特性を有する表示装置の実用化が進められている。このような表示装置の一例として、反射型表示装置が挙げられる。反射型表示装置は、バックライトを有する透過型液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の自発光型表示装置に比べて、外光を拡散的に反射する紙に近い表示が可能である。そのため、読みやすく目にやさしい表示を低消費電力で行なうことが可能である。反射型表示装置の代表例としては、EPD(Electrophoretic Display)と呼ばれる電気泳動方式の表示装置があり、例えば新聞紙よりも高いコントラスト比での表示が可能である。
【0019】
電子ペーパーと呼ばれる表示装置には、高コントラスト比での表示の他に、手書き入力等の入力が可能であることのニーズがある。すなわち、紙のように、読めるだけではなく書き込めることも求められている。
【0020】
このような入力機能は、例示的に、いわゆる手書き入力やユーザーインターフェース(UI)操作等による情報(例えば、位置座標)の入力を受け付ける、デジタイザー等の入力装置を表示装置に設けることで実現可能である。
【0021】
ここで、EPD等の記憶性表示体を有する表示装置は、表示体に供給する電力をオフにしても表示状態を保持できる性質(記憶性)を有するため、装置に対する操作が行なわれない間は当該装置の動作状態を例えば停止あるいは電力消費量がアクティブな状態よりも低い待機(スタンバイ)状態(以下、まとめて「省電力モード」ともいう。)にすることで、消費電力の低減化を図ることができる。
【0022】
一方、入力装置については、例えば、手書き入力等による入力をユーザーが望む時にいつでも受け付け可能な状態としてユーザーの利便性を確保したい場合がある。そのため、入力装置はできるだけアクティブな状態にしておきたいが、消費電力が増加する。例示的に、電磁誘導方式や光学方式等の方式の座標入力装置では、数十mW(ミリワット)以上の電力を継続的に消費し得る。
【0023】
そこで、入力の有る場合に限って入力装置の動作をアクティブな状態に制御し、入力の無い場合には入力装置を省電力モードに制御すれば、消費電力を抑えることが可能である。「入力の有無」を判定する方法の例としては、入力装置に対する入力に用いられるスタイラスやペン等の入力デバイスやユーザーの指等と、入力装置との接近状態を検出する方法が考えられる。
【0024】
ここで、特許文献1には、装置筐体の全部又は一部に、ユーザーが操作する媒体あるいはユーザーに付随する媒体が接近したことを検出する技術が記載されているが、表示装置の省電力制御が可能になるに過ぎない。また、判定の確度が不十分なため、入力装置を有する表示装置に当該技術を単に適用しても、十分な省電力効果が得られない。例えば、表示装置に表示された文章等を読む場合にもユーザーは表示装置に接近した状態にあるため、入力装置に対して入力操作が行なわれない場合にも、入力装置はアクティブな状態にある。
【0025】
また、仮に省電力制御の対象を入力装置としても、どんなユーザーあるいはどんな媒体でも表示装置に接近しさえすれば、入力装置がアクティブな状態になるため、意図しないユーザーによる入力が許容され、セキュリティ面において不十分な場合がある。この点、特許文献2記載の技術によれば、正当な使用者でない者によるペンデバイスの使用を拒絶できる。しかし、入力装置は、アクティブな状態であることに変わりなく、電力を消費し続ける。
【0026】
そこで、以下に説明する実施形態では、座標入力装置等の入力装置を有する表示装置の消費電力の抑制とセキュリティ性の向上とを両立できるようにする。
【0027】
(システム構成例)
図1は、一実施形態に係る情報処理システムの一例としての電子ペーパーシステム1の構成例を模式的に示す図であり、図2は、図1に例示するシステム1の機能的な構成例を示すブロック図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施形態の電子ペーパーシステム1は、例示的に、情報処理装置の一例としての表示装置10と、位置指示具20と、を備える。
【0029】
位置指示具(以下、単に「指示具」ともいう。)20は、表示装置10の表示面に対して手書き入力等の入力操作を行なうのにユーザーが用いるタッチペンやスタイラス等の媒体の一例である。
【0030】
表示装置10は、非限定的な一例として、EPD等の表示体(表示部)11と、座標入力装置12と、接近検出部13と、RFID送受信部14と、表示体駆動制御部15と、システム制御部16と、を備える。
【0031】
座標入力装置(以下、「座標検出装置」ともいう。)12は、ユーザーによる入力操作を受け付ける(あるいは検出する)入力装置の一例であり、例示的に、表示体11の表示面において位置指示具20が接触した位置に関する情報(例えば座標)を検出し、検出した座標情報をシステム制御部16に出力する。システム制御部16は、座標入力装置12で検出された座標情報に基づき表示体駆動制御部15を介し表示体11の表示状態を制御する。これにより、例えば、指示具20が表示体11に接触しながら移動した際の軌跡を表示体11に表示することができ、手書き入力の様子等を表示体11に、随時、表示することができる。
【0032】
指示具20が表示体11に触れている位置の検出には、非限定的な一例として、電磁誘導式の指示具20及び座標検出装置12を用いることができる。例えば、指示具20の表示体11との接触部分に内蔵されたアンテナ(コイル)が発する交流磁界を、座標検出装置12に備えられたアンテナ(コイル)で検出することで、指示具20が表示体11に触れている位置を検出できる。
【0033】
具体例として、電磁誘導式の指示具20は、図2及び図3に例示するように、ペン形状の指示具20のペン先に相当する部分(表示体11との接触部分)等に、交流磁界発生部21を備える。指示具20は、図1〜図3に例示するように、RFIDタグ部22を内蔵しており、表示装置10側のRFID送受信部14と無線通信が可能である。RFIDタグ部22には、駆動電力を内蔵電池により発生するアクティブタグを用いてもよいし、駆動電力を外部から電磁的に受けて(電磁誘導起電力により)発生するパッシブタグを用いてもよい。なお、RFIDの通信の詳細については後述する。
【0034】
交流磁界発生部21は、例示的に、交流磁界を空間に放射するアンテナ(コイル)211と、交流磁界を発生させる交流電力をアンテナ211に供給する交流発生回路212と、を備える。なお、図4は、指示具20の機能的な変形例を示す図であり、その詳細については後述する。
【0035】
交流発生回路212の駆動電力は、指示具20内蔵の図示を省略したバッテリーから供給してもよいし、後述するRFIDタグ部22で発生する電力の一部を供給してもよい。RFIDタグ部22で発生する電力は、アクティブタグである場合の内蔵電池による電力でもよいし、パッシブタグである場合の電磁誘導起電力でもよい。
【0036】
一方、電磁誘導式の座標検出装置12は、表示体11の表示面に対応して設けられた、座標検出面の一例を成すアンテナ板(センサーコイル)121と、このセンサーコイル121で受信した交流磁界に応じた信号に基づいて座標検出面121における位置座標を検出する座標検出制御部122と、を備える。
【0037】
座標検出制御部122は、システム制御部16からオン/オフ制御信号を受けることで、アクティブ(非省電力モード)/スタンバイ(省電力モード)状態に制御される。アクティブ状態において座標検出制御部122は座標検出を開始し、検出した座標情報をシステム制御部16に出力する。座標検出周期を短くするほど、検出感度(時間分解能)が高くなり、手書き入力時等における表示体11での軌跡表示を滑らかにすることができる。非限定的な一例として、座標検出周期は、10ms(ミリ秒)程度であれば十分である。
【0038】
接近検出部13は、第1の検出部の一例であり、ユーザーの人体(例えば、指示具20を持った手や指等)が表示装置10に接近しているか否かを検出する。接近検出部13で検出した情報(以下、「人体接近情報」という)は、システム制御部16に出力される。接近検出部13には、例示的に、図5及び図6に示す焦電型赤外線センサー13Aや、図7及び図8に示す静電容量センサー13Bを適用できる。
【0039】
(焦電型赤外線センサー)
図5及び図6に示す焦電型赤外線センサー13Aは、例示的に、焦電素子131と、アンプ132と、判定部133と、を備える。
【0040】
焦電素子131は、焦電効果によって赤外線を含む光を検出する素子であり、光を熱源とした温度変化に応じた信号(例えば、電圧信号)を検出信号として出力する。焦電型赤外線センサー13Aの外部には、焦電素子131に向けて赤外線を集光するレンズ134を設けることができる。
【0041】
レンズ134を設けることで、焦電素子131の検出感度を上げることができ、また、検出可能範囲を拡大することができる。レンズ134及び焦電型赤外線センサー13Aは、図5に模式的に例示するように、表示装置10の表示体11(座標検出面121)に接近する人体(例えば、指示具20を持ったユーザーの手や指)が発する赤外線を検出できるように例えば表示装置10に前記検出可能範囲の向き等が調整されて配置される。
【0042】
アンプ132は、焦電素子131の検出信号を増幅し、判定部133は、アンプ132で増幅された検出信号が所定の閾値を超えているか否かを判定する。検出信号が閾値を超えていれば、判定部133は、人体が表示体11に接近していると判定し、検出信号が閾値を超えていなければ、人体が表示体11から離れていると判定する。判定部133の判定結果は、システム制御部16へ与えられる。
【0043】
これにより、システム制御部16は、表示体11に人体が接近しているか否かを認識することができる。なお、システム制御部16において判定部133の判定結果をサンプリングする周期(つまりは、接近検知周期)は、適宜の周期に設定、変更可能である。サンプリング周期を短くするほど、接近検知感度を上げることができる。
【0044】
(静電容量センサー)
一方、図7及び図8に示す静電容量センサー13Bは、例示的に、静電容量検出電極135と、コンデンサC1と、アンプ136と、判定部137と、を備える。
【0045】
静電容量検出電極135は、人体(例えば、指示具20を持った手)が表示装置10に接近し、人体を通じてアース(グランド)された場合に生じる静電容量Csの変化に応じた電気信号(例えば、電圧信号)を検出信号として出力する。静電容量検出電極135は、検出対象とすべき範囲に応じて適当な形状及び数で配置することができる。図7には、非限定的な一例として、平面視において矩形状の表示体11の周辺部に3つの帯状の静電容量検出電極135を配置した例を示している。
【0046】
コンデンサC1は、静電容量検出電極135の検出信号のノイズ成分をカットし、アンプ136は、検出信号を増幅し、判定部137は、アンプ136で増幅された検出信号が所定の閾値を超えているか否かを判定する。検出信号が閾値を超えていれば、判定部137は、人体が表示体11に接近していると判定し、検出信号が閾値超えていなければ、人体が表示体11から離れていると判定する。判定部137の判定結果は、システム制御部16へ与えられる。
【0047】
これにより、システム制御部16は、表示体11に人体が接近しているか否かを認識することができる。なお、接近検知周期の設定については、焦電型赤外線センサー13Aの場合と同様でよい。
【0048】
次に、図2において、表示装置10におけるRFID送受信部14は、第2の検出部の一例であり、指示具20のRFIDタグ部22と無線通信して、RFIDタグ部22に記憶されている、指示具20の識別情報(ID)を受信、検出する。
【0049】
このため、RFID送受信部14は、図2に示すように、例示的に、アンテナ141と、ID受信回路142とを備え、指示具20のRFIDタグ部22は、例示的に、アンテナ221と、ID送信回路222とを備える。
【0050】
指示具20は、ID送信回路222において所定のIDをメモリ等に記憶しており、当該IDをアンテナ221から表示装置10へ送信することができる。なお、アンテナ221の機能は、図4に模式的に例示するように、交流磁界を発生するアンテナコイル211と共用にしてもよい。この場合、アンテナコイル211は、座標指示用の交流磁界とID送信用の交流磁界とに共通の共振周波数をもつように設定するとよい。
【0051】
当該共用化により、RFIDタグ部22のアンテナ221を削減できるので、指示具20のサイズ、消費電力の低減化を図ることができる。RFIDタグ部22の駆動電力は、アクティブタグである場合の内蔵電池による電力でもよいし、パッシブタグである場合の電磁誘導起電力でもよい。
【0052】
指示具20のアンテナ221(又は211)から送信されたIDは、表示装置10のRFID送受信部14(ID受信回路142)にて受信される。アンテナ141を通じてID受信回路142で受信されたIDは、システム制御部16に出力される。
【0053】
システム制御部16は、接近検出部13で検出された人体接近情報とID受信回路142で受信されたIDとに基づいて、座標検出装置12の動作状態を制御する。
【0054】
例えば、システム制御部16は、人体接近情報からユーザー(人体)が表示装置10に対して所定距離内に接近したことを認知し、かつ、指示具20から受信したIDが所定の登録IDに一致(適合)することを確認(認証成功)すると、座標検出装置12の動作状態をアクティブな状態に制御する。これにより、座標検出装置12による座標検出が開始される。その際、システム制御部16は、RFID送受信部14を通じて指示具20のRFIDタグ部22へ使用許可を示す制御情報を送信してもよい。
【0055】
一方、いずれかの条件が成立しなければ、システム制御部16は、座標検出装置12の動作状態を省電力モードに制御する。省電力モードにおいて、座標検出装置12は、座標検出動作を停止する。接近検出部13にて人体接近情報が検出されてから所定時間内にID認証に成功しなかった場合(指示具20のIDを受信できない場合も含む)にも、システム制御部16は、座標検出装置12による座標検出動作を省電力モードに制御してよい。また、指示具20のID認証に失敗した場合、システム制御部16は、RFID送受信部14を通じて指示具20のRFIDタグ部22へ使用禁止を示す制御情報を送信してもよい。
【0056】
システム制御部16が使用許可/禁止を示す制御情報を指示具20に送信する態様の場合、指示具20のRFIDタグ部22は、表示装置10のRFID送受信部14から使用許可/禁止を示す制御情報を受信することで、当該制御情報に応じて指示具20の動作状態、例えば交流磁界発生部21(交流発生回路212)への電力供給を制御(開始/停止)することとしてもよい。
【0057】
この場合、システム制御部16は、表示装置10に接近した指示具20のID認証が成功した場合に限って、指示具20を使用可能な状態に制御することが可能である。したがって、表示装置10に対する入力操作が可能な指示具20を制限でき、また、指示具20の消費電力を抑えることも可能である。さらに、使用禁止を示す制御情報は、指示具20を持ったユーザーの手や指が表示装置10から離れた(あるいは離れた状態が一定時間継続した)場合に、指示具20の電源をオフに制御する情報として用いてもよい。この場合、ユーザーによる指示具20の電源オフ忘れを抑えることができる。
【0058】
一方、システム制御部16が使用許可/禁止を示す制御情報を指示具20に送信しない態様の場合、指示具20のRFIDタグ部22は、交流磁界発生部21(交流発生回路212)への電力供給を指示具20の電源オン後に連続的に行なってもよいし間欠的に行なってもよい。
【0059】
表示装置10(システム制御部16)において指示具20のID認証に用いる登録IDは、例示的に、システム制御部16に備えられたRAM等のメモリ(図示省略)に記憶しておくことができる。当該メモリに記憶しておくIDの数は、表示装置10の操作を許可された正当なユーザーに割り当てられた1又は複数の指示具20に対応した数とすることができる。
【0060】
なお、RFID送受信部14によるID受信動作は、接近検出部13の検出動作と独立していてもよいし、従属していてもよい。例えば、システム制御部16は、(a)それぞれ独立して得られる人体接近情報と指示具20のIDとが揃ってから前記認証を行なってもよいし、(b)接近検出部13で人体接近情報が検出されたことをトリガにして、RFID送受信部14のID受信動作をアクティブな状態に制御(ID受信動作を開始)し、受信されたIDの認証を行なってもよい。
【0061】
(b)の場合、RFID送受信部14によるID受信動作の開始を、接近検出部13で人体接近情報が検出された場合に限ることができるので、RFID送受信部14の消費電力を抑えることが可能である。なお、(b)の場合で、かつ、指示具20のRFIDタグ部22がパッシブタグの場合、指示具20がIDを送信できるよう、システム制御部16は、接近検出部13で人体接近情報が検出されたことをトリガにして、RFID送受信部14から指示具20のRFIDタグ部22へ電磁的に電力を伝達することを開始してよい。
【0062】
表示装置10に接近した指示具20のID認証が成功して座標検出装置12の動作状態がアクティブ状態となれば、システム制御部16は、座標検出装置12(座標検出制御部122)から与えられた座標情報に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号を表示体駆動制御部15に出力する。
【0063】
表示体駆動制御部15は、システム制御部16から受信した制御信号に応じて表示体11の表示状態を制御する。これにより、表示体11に対するユーザーの指示具20を用いた入力操作に応じた表示(指示具20の表示体11上での軌跡等)が表示体11においてなされる。
【0064】
以下、上述の電子ペーパーシステム1の動作例について、図9及び図10を用いて説明する。
【0065】
まず、表示装置10が起動されると、システム制御部16が、接近検出部13を起動して接近検出部13による検出動作を開始させる。システム制御部16は、接近検出部13の出力(判定結果)を周期的にサンプリングし、人体(例えば、指示具20を持ったユーザーの手や指)が表示装置10に接近したか否かを監視する(図10の処理P10のNルート)。
【0066】
サンプリングの結果、人体が表示装置10に接近したことをシステム制御部16が認知すると、システム制御部16は、RFID送受信部14をアクティブな状態に制御して、指示具20のID受信動作を開始させる(図9の時刻T1)。指示具20のRFIDタグ部22がパッシブタグであれば、システム制御部16は、RFID送受信部14からRFIDタグ部22へ駆動電力を電磁的に伝達する。
【0067】
その後、指示具20のRFIDタグ部22から送信されたIDがRFID送受信部14にて受信されると(図10の処理P10のYルートから処理P20)、システム制御部16は、受信IDが登録(記憶)IDに適合するか否かを判定する(図10の処理P30)。
【0068】
判定の結果、受信IDが登録IDに適合しなければ(図10の処理P30のNルート)、システム制御部16は、座標検出制御部122にオフ信号(省電力モード指示)を与えて座標検出装置12を省電力モードに制御(変更又は維持)する。その際、システム制御部16は、RFID送受信部14を通じて、指示具20のRFIDタグ部22へ指示具20の使用禁止を示す制御情報を送信してもよい(図9の時刻T2)。指示具20は、使用禁止を示す制御情報をRFIDタグ部22にて受信すると、交流磁界発生部21による交流磁界の発生を停止してよい。
【0069】
一方、RFID送受信部14によるID受信動作の開始(図9の時刻T3)後に受信したIDが、登録(記憶)IDに適合した場合、システム制御部16は、座標検出制御部122にオン信号(アクティブモード指示)を与えて座標検出装置12をアクティブな状態に制御(変更又は維持)する(図10の処理P30のYルートから処理P40)。その際、システム制御部16は、RFID送受信部14を通じて、指示具20のRFIDタグ部22へ指示具20の使用許可を示す制御情報を送信してもよい(図9の時刻T4)。指示具20は、使用許可を示す制御情報をRFIDタグ部22にて受信すると、交流磁界発生部21による交流磁界の発生を開始してよい。
【0070】
その後、交流磁界を発生している指示具20を用いた入力操作が表示体11に対してなされると、座標検出装置12にて当該入力操作に応じた座標情報が時系列に検出される。システム制御部16は、座標検出装置12にて検出された座標情報に応じた表示制御信号を表示体駆動制御部15に与える。これにより、表示体駆動制御部15は、当該表示制御信号に応じた表示動作に表示体11を制御する(図9の時刻T5〜T6)。
【0071】
以上のように、上述した実施形態によれば、表示装置10に接近した指示具20のIDが適合した場合に座標検出装置12の動作状態がアクティブな状態に制御され、指示具20による入力操作が受け付けられるので、座標検出装置12の動作時間を短縮できる。したがって、座標検出装置12の消費電力、ひいては表示装置10の消費電力を抑えることができる。例えば、人体の接近検出に要する電力と指示具20のID識別に要する電力との和が、座標入力装置12を省電力状態にすることで削減できる電力よりも小さければ、表示装置10の消費電力を低減できる。
【0072】
また、人体接近情報と指示具20のIDとを基に座標検出装置12の動作を制御するので、ユーザーが入力操作を行なおうとする状況の判定確度を上げることができる。したがって、ユーザーによる入力操作がある期間を適切に識別して、当該期間に限って座標入力装置12をアクティブな状態に制御できるので、省電力性を向上できる。
【0073】
さらに、所定のIDを有する指示具20でないと座標検出装置12がアクティブ状態にならない(つまり、表示装置10に対する入力操作が受け付けられない)ので、表示装置10に対して入力が可能な人を限定することができ、表示装置10のセキュリティ性を向上することができる。
【0074】
また、所定IDを有する指示具20を持ったユーザーの手や指が表示装置10へ接近したり離れたりする状況に応じて座標検出装置12の動作状態が制御されるので、ユーザーは、特別な操作を行なわなくても、また、意識せずに、省電力制御を実現できる。
例えば、所定のIDを有する指示具20が表示装置10に接近した状態、つまりユーザーが入力を行なう前に表示装置10(座標入力装置12)をアクティブな状態にできる(省電力モードの解除を完了できる)ので、ユーザーの利便性を向上することができる。
【0075】
さらに、表示装置10は、接近検出部13でユーザーの手や指が表示装置10へ接近したことを検出した場合に限って、指示具20のID受信動作を有効にする(開始する)ことで、ID受信の動作期間を指示具20が接近した状態にありIDが正しく受信されやすい期間に限ることもできる。したがって、RFID送受信部14(ID受信回路142)の受信動作期間を短縮することができ、表示装置10のさらなる省電力化を図ることができる。また、指示具20のID受信成功率を上げることもできる。
【0076】
(その他)
上述した実施形態では、ユーザーが表示装置10に対して入力操作するのに用いる媒体の一例として指示具20を挙げたが、媒体は、携帯電話やICカード等のIDを送信可能な他の態様の媒体でもよい。例えば、携帯電話やICカードを持った特定ユーザーの手や指が表示装置10に接近すると、ID認証を行ない、ID認証が成功した場合に携帯電話やICカード内に保存されている情報の読み取り(受信)が開始されて表示装置10に当該情報を表示する等のシステムを構築することもできる。
【0077】
また、上述した実施形態にける表示装置10は、EPD等の電気泳動表示装置の他、他の記憶性反射型表示装置(例えば、エレクトロクロミック等)や、記憶性を有さない表示装置(例えば、TN液晶を用いる液晶表示装置、有機EL等)でもよい。ただし、省電力性を有する電気泳動表示装置等の記憶性反射型表示装置においては、他の種類の表示装置に比べて座標入力装置12が占める消費電力の比率が高いため、表示装置10全体としての消費電力の削減効果が大きく、より効果的である。
【0078】
また、座標検出装置12には、上述した電磁誘導方式の他、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、赤外線方式等の他の方式の座標検出装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…電子ペーパーシステム、10…表示装置、11…表示体、12…座標入力装置、13…接近検出部、13A…焦電型赤外線センサー、13B…静電容量センサー、14…RFID送受信部、15…表示体駆動制御部、16…システム制御部、20…位置指示具、21…交流磁界発生部、22…RFIDタグ部、121…アンテナ板(センサーコイル)、122…座標検出制御部、131…焦電素子、132,136…アンプ、133,137…判定部、134…レンズ、135…静電容量検出電極、141…アンテナ、142…ID受信回路、211…アンテナ(コイル)、212…交流発生回路、221…アンテナ、222…ID送信回路、C1…コンデンサ、Cs…静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置と、
人体の接近を検出する第1の検出部と、
前記入力装置に対する入力操作に用いられる媒体の識別情報を検出する第2の検出部と、
前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御する制御部と、
を備えた、情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知し、かつ、前記第2の検出部による検出結果に基づいて所定の識別情報を有する前記媒体が接近していることを認知した場合に、前記入力装置の動作を開始させる、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知した場合に、前記第2の検出部の動作を開始させる、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
入力装置を備えた情報処理装置の制御方法であって、
人体の接近を第1の検出部にて検出するとともに、前記入力装置に対する入力操作に用いられる媒体の識別情報を第2の検出部にて検出する処理と、
前記第1及び第2の検出部による検出結果に基づいて、前記入力装置の動作状態を制御する処理と、
を有する、情報処理装置の制御方法。
【請求項5】
前記入力装置の動作状態を制御する処理は、
前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知し、かつ、前記第2の検出部による検出結果に基づいて所定の識別情報を有する前記媒体が接近していることを認知した場合に、前記入力装置の動作を開始させる処理を含む、請求項4記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項6】
前記入力装置の動作状態を制御する処理は、
前記第1の検出部による検出結果に基づいて人体が接近したことを認知した場合に、前記第2の検出部の動作を開始させる処理を含む、請求項4又は5に記載の情報処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−170712(P2011−170712A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35240(P2010−35240)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】