説明

情報処理装置

【課題】
ノート型パソコン等の情報処理装置において、背面筐体の薄肉化と剛性が十分確保できる背面筐体の形状を提供すること。
【解決手段】
マグネシウム合金等の薄板により矩形平面が形成された筐体を有する情報処理装置は、その筐体に、当該筐体の長辺の中心に対して左右対称でかつ当該筐体短辺にほぼ平行に設けられた2つの第1の凹溝形状部と、前記第1の凹溝形状部に略直角に連接し当該筐体長辺にほぼ平行に設けられた第2の凹溝形状部とを備える構成とし、これにより情報処理装置の筐体の矩形平面の剛性を高めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコンやペンPCなどに代表される携帯可能な情報処理装置に係り、携帯時の面強度に優れた筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線カードの普及やワイヤレスLANが使用できるホットスポットなどの通信インフラの発展によりノート型パソコン等の携帯利用する機会が増えている。
【0003】
携帯利用されるノート型パソコンは、CPUを搭載した主基板と入力装置のキーボードが搭載された本体部と、液晶などの表示装置を収納したディスプレイ部とで構成され、ディスプレイ部がヒンジにより回動自在に取り付けられた構成となっている。そして、ノート型パソコンの本体部とディスプレイ部の筐体には、軽量化に加え剛性が高いアルミニウム合金の塑性加工法やダイカスト法、マグネシウム合金のダイカスト法やチクソモールディング法で成形したものを使用している。
【0004】
図3と図4に従来のノート型パソコンの一例を示す。図3はノート型パソコンのディスプレイを閉じた状態での断面を示した図である。図において、5は情報処理装置の本体部、4は本体部5にヒンジで開閉可能に取り付けられたディスプレイ部である。ディスプレイ部4は液晶表示装置1とインバータ6が背面筐体3と前面筐体2の間に配置されている。本体部5は本体上筐体7にキーボード9が取り付けられ本体上筐体7と本体下筐体8との間に主基板10が配置され、バッテリー11はヒンジ側に配置され着脱可能になっている。また、小型化のために図4のようにインバータ6を液晶表示装置1と重ねて配置する方式もある。
【0005】
このようなノート型パソコンを鞄などに入れて持ち運ぶ際や手で持ち運ぶ際には、図3と図4に示すような外力F1がディスプレイ部中央に加えられることがあり、その時に薄肉化している背面筐体3が変形し、収納されている液晶表示装置1に接触して液晶表示装置1が変形し、さらに破損に至る不具合が発生している。また外力F2がヒンジ側部に加えられ、図4のようにインバータ6が液晶表示装置1と重なっている配置の場合には液晶表示装置1の中央部だけでなく、液晶表示装置1の基板20やバックライトの管21、インバータ6の変形や破損の不具合も発生している。
【0006】
上記のようにノート型パソコンの携帯時の筐体強度の問題を解決する技術として、例えば特許文献1がある。この特許文献1の図1の(a)(b)には、マグネシウム合金をダイカスト法で成形し、略矩形状の中央部に凸状の隆起部を形成した筐体を用いたディスプレイ部を有するノート型パソコンが開示されている。詳しくは、13はディスプレイ部12のうちの背面筐体で、この背面筐体13と前面筐体14との間に液晶表示装置15が配置されている。背面筐体13は平面部13aから1〜3mmの隆起部13b(段差H1)を設けている。この特許文献1によれば1〜3mmの隆起部13b(段差H1)を設けることにより剛性が向上し、背面筐体13の中央に外力が加わった場合でも隆起部13bがない場合に比較して変形量が小さくなり、許容できる範囲で背面筐体13の平均肉厚T2を薄くできるとしている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−204174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ノート型パソコンの携帯利用環境の整備により、ノート型パソコンなどの筐体には、剛性を確保すると共に極限まで薄肉にして更なる軽量化が求められている。しかしながら特許文献1の図1などにおいてはマグネシウム合金を射出成形することで主要肉厚T1を0.8mm程度まで薄くできるとしているが、更なる薄肉化を目指す場合、例えばマグネシウム合金を塑性加工で成形する場合などは肉厚が0.5mm前後まで薄くできるため、特許文献1の図1ような背面筐体13の形状では剛性が十分確保できるとはいえない。
【0009】
本発明の目的は、マグネシウム合金の塑性加工で成形された筐体であっても、剛性を十分確保できる背面筐体の形状をもつノート型パソコン等の携帯情報機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のマグネシウム合金等の薄板により矩形平面が形成された筐体を有する情報処理装置は、その筐体に、当該筐体の長辺の中心に対して左右対称でかつ当該筐体短辺にほぼ平行に設けられた2つの第1の凹溝形状部と、前記第1の凹溝形状部に略直角に連接し当該筐体長辺にほぼ平行に設けられた第2の凹溝形状部とを備える構成とし、これにより情報処理装置の筐体の矩形平面の剛性を高めるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、背面筐体に外力が加わった場合の変形量を小さくすることできるので、筐体の肉厚を低減でき、ノート型パソコン等の携帯情報機器の更なる軽量化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の実施例でノート型PCのディスプレイ部の背面筐体の外観斜視図を示している。ここで、図1の上側が、ディスプレイヒンジ部になり、下側が、ディスプレイを開放したときの、ディスプレイ上方部になっている。図2は、図1の縦断面図を示している。
【0013】
以下に図1と図2により、本発明を適用したノート型パソコンのディスプレイ部の詳細構成を説明する。ディスプレイ部はマグネシウム合金の塑性加工で形成された背面筐体22とプラスチックで形成された前面筐体23とワイヤレスLANアンテナを収納できるワイヤレスアンテナカバー17の筐体で構成される。液晶表示装置18とインバータ19が背面筐体22と前面筐体23の間に配置されている。
【0014】
ここで、背面筐体22の押圧が所定押圧になるまで背面筐体22の変形により液晶表示装置18を押圧しないように、液晶表示装置18と背面筐体22は、空隙をもって配設されている。
【0015】
背面筐体には短辺とほぼ平行である凹溝形状22aが二本あり、長辺とほぼ平行である凹溝形状22b一本に繋がっている。インバータ19は、この凹溝形状22aと22bと外形のヒンジ側長辺とで作られる四角形の中に配置されている。凹溝形状22aと22bは例えば、基準面22dより2〜5mmの深さになっている。この凹溝形状22aと22bの深さは、この値に限られるものではなく、また、凹溝形状22aと凹溝形状22bを異なる深さとしてもよい。
【0016】
また、凹形状22cは背面筐体基準面22dより低い面となっている。このような形状にすることにより、凹溝形状22aと同様に短辺方向の曲げ剛性を高めるとともに、実施例のノート型パソコン全体を薄く見せるためのデザイン的な面落しとなっている。
【0017】
また、本実施例では基準面22dがワイヤレスアンテナカバー17からヒンジ側に向かって徐々に高くなっている傾斜形状だが、基準面22dが平面であるか、極端な傾斜でない限り本発明に含まれる。
【0018】
このように、本発明の実施例では、背面筐体の短辺と長辺方向に凹溝形状22aと22bを設けるようにした。これにより、筐体の2方向の曲げ剛性を高めることができるので、背面筐体の荷重強度を高めることができる。特許文献1に開示されている形状との強度比較を図9により後述する。
【0019】
つぎに、図2の凹溝形状22bの設置位置について説明する。本発明を適用するノート型パソコンは、図5のように携帯時に装置のヒンジ側を抱えて携帯されることを想定している。このため、携帯時に背面筐体の中央部のヒンジ側に圧力を受ける。本実施例では、凹溝形状22bを背面筐体22のヒンジ側長辺から約60mm(L1)の位置に設けている。これにより、携帯時の押圧による長辺方向の筐体変形を低減する。前記L1の寸法はこれに限定されるものではないが、携帯時の保持側に凹溝形状22bを設けるようにする。
【0020】
また、背面筐体22のヒンジ側長辺から約60mm(L1)の位置に設けた凹溝形状22bは、図6のように、指の引っ掛けとして利用することもでき、携帯性が向上することも期待できる。
【0021】
本実施例の筐体を形成する材料にマグネシウム合金を選択した場合には、ダイキャスト製法あるいはプレスフォーミングにより、筐体を形成することができる。一般にダイキャスト製法では、溶融金属を流すために、溶融金属の流れを阻害しないように湯口を設定される。図1にしめす筐体を形成するためには、筐体のヒンジ側あるいはワイヤレスアンテナカバー17に湯口が設定される。この場合、図1の凹溝形状22bは、溶融金属の流れを阻害する要因となる。このため、筐体のヒンジ側に湯口を設けることが望ましい。
【0022】
プレスフォーミングにより筐体を形成する場合には、上記の問題がないので、凹溝形状の自由度を高くすることができる。この場合、本実施例の2〜5mmの深さであれば、絞り加工をおこなうことができる。
【0023】
つぎに、図7により、他の背面筐体形状について説明する。図1の背面筐体と同様の構成を有し、背面筐体の短辺と長辺方向の凹溝形状22aと22bが異なり、また、インバータ19の配設場所が異なる。
【0024】
背面筐体には短辺とほぼ平行である凹溝形状22aが二本あり、長辺とほぼ平行である凹溝形状15b一本と繋がっている。インバータ19はこの凹溝形状22bと外形のヒンジ側長辺との間でかつ凹溝形状22aの間に配置されている。凹溝形状22aと22bは基準面22dより2〜4mmの深さになっている。凹形状22cは背面筐体基準面22dより低い面となっているが情報処理装置全体を薄く見せるためのデザイン的な面落しとなっているため、この凹形状22cの有無は本発明には影響しない。
【0025】
また、本実施例では基準面22dがワイヤレスアンテナカバー17からヒンジ側に向かって徐々に高くなっている傾斜形状だが、基準面22dが平面であるか、極端な傾斜でない限り本発明に含まれる。
【0026】
また、本実施例でも実施例1の凹溝形状22bは背面筐体22のヒンジ側長辺から約60mm(L1)の位置に設けている。この凹溝形状22bにより図5で示す実施例1と同じように携帯時の手によって受ける外力F2に対しても有効であり、図6で示す実施例1と同じように凹溝形状22bに指を引っ掛けて持ちやすくしている。
【0027】
つぎに図1と図7の形状の背面筐体の剛性について図8と図9により説明する。筐体の剛性は、図8に示すように直径50mmの外力400Nの等分布荷重で背面筐体の3箇所に加えたときの最大たわみ量と最大応力を解析した。 図9に背面筐体をマグネシウム合金の材質で肉厚(板厚)を0.6mmとした場合の解析結果をしめす。
【0028】
これによれば、実施例の図1と実施例の図7の背面筐体の最大たわみ量は、全ての位置で特許文献1より少ないため剛性が高いことを示している。
【0029】
図により説明した本実施例は、ノート型パソコンのディスプレイ部の背面筐体の形状について説明したが、本発明はこれに限定されたものではなく、薄板で矩形平面が形成される情報処理装置の筐体に適用することができ、例えば、ノート型パソコンの本体の底部筐体にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1における情報処理装置のディスプレイ部の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例1と実施例2における情報処理装置のディスプレイ部の断面図である。
【図3】従来のノート型PCの断面図(ディスプレイ部を閉じた状態)である。
【図4】従来のノート型PCの断面図(インバータが液晶と重なった配置)である。
【図5】本発明の実施例1における情報処理装置を手で持った状態の図である。
【図6】本発明の実施例1における情報処理装置を手で持ち指を溝に掛けた状態の図である。
【図7】本発明の実施例2における情報処理装置のディスプレイ部の外観斜視図である。
【図8】本発明の実施例3における解析条件の図である。
【図9】本発明の実施例3における解析結果の図である。
【符号の説明】
【0031】
1…液晶表示装置、2…前面筐体、3…背面筐体、4…ディスプレイ部、
5…本体部、6…インバータ、7…本体上筐体、8…本体下筐体、
9…キーボード、10…主基板、11…バッテリー、
17…実施例のワイヤレスアンテナカバー、18…実施例の液晶表示装置、
19…実施例のインバータ、20…液晶表示装置の基板、
21…液晶表示装置のバックライトの管、22…実施例の背面筐体、
22a…凹溝形状(短辺とほぼ平行)、22b…凹溝形状(長辺とほぼ平行)、
22c…凹形状、22d…基準面、23…実施例の前面筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金等の薄板により矩形平面が形成された筐体を有する情報処理装置であって、前記筐体は、
当該筐体の長辺の中心に対して左右対称でかつ当該筐体短辺にほぼ平行に設けられた2つの第1の凹溝形状部と、
前記第1の凹溝形状部に略直角に連接し、当該筐体長辺にほぼ平行に設けられた第2の凹溝形状部と
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置において、
当該情報処理装置は液晶表示部とインバータを備え、
前記第1と第2の凹溝形状部の底部は前記液晶表示部と空隙をもつように形成され、
前記第1と第2の凹溝形状部以外の筐体部と前記液晶表示部との空隙に前記インバータが収容される
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の情報処理装置において、
当該情報処理装置は液晶表示部と前記液晶表示部を回転自在に取り付けるヒンジ部を備え、
前記第2の凹溝形状部は、当該筐体の短辺の中心より前記ヒンジ部側に配置される
ことを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−3875(P2008−3875A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173290(P2006−173290)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】