説明

情報処理装置

【課題】 電池を内蔵することなく通信距離を長くすることを可能とした指紋読み取り機能を備えた情報処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ICモジュールならびにアンテナコイルが格納された本体と、本体内に格納され、ICモジュールに接続された指紋読み取り部と、本体内に格納され、受熱部ならびに放熱部を備えICモジュールに接続された熱電変換素子とを具備し、指紋読み取り部は熱電変換素子の受熱部と熱的結合されていることを特徴とする情報処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を内蔵しない非接触ICカードなどに適用される指紋識別機能を有する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報にアクセスする場合あるいは所定の処理操作を行う場合に、取り扱う情報量の増大や偽造防止などの要求から、所有者本人の識別を行うため、個人の生態情報たとえば、指紋認識手段を設けた各種情報処理装置が注目されている。
【0003】
一般に、予め指紋データが登録された使用者の指紋を、指紋読み取り手段により読み取った指紋データと照合する指紋認識手段を具備する指紋読み取り機能付情報処理装置においては、内蔵されたICモジュールなどの電子回路を作動させるために必要な電源を得るため電源回路を構成する電池を内蔵している。
【0004】
このような指紋読み取り機能を備えた非接触ICカードとして、内部に指紋読み取り部、内部に指紋データや指紋照合プログラムが格納されたICチップ、外部との通信に利用されるアンテナなどから構成されているICカードが知られている(特許文献1を参照)。
【0005】
この特許文献1に示されているICカードにおいては、電池を内蔵せず、外部からの電磁波をアンテナを介して受信し、この電磁波に基づいて発生した起電力を電源として指紋を読み取り、照合・識別を行う。
【0006】
また、電磁波を受信して外部と通信を行う非接触ICカードであって、内部に熱電池を内蔵したICカードも知られている(特許文献2を参照)。
【0007】
すなわち、この特許文献2においては、内部に温度差により発電するペルチェ素子が格納されている。そして、カード上面にはペルチェ素子の低温側を冷却するための放熱フィンが装着されており、カード底面はペルチェ素子の高温側に熱エネルギを供給する高温源と接触可能に構成されている。カード利用に際しては、カードを別に設けられた高温源上に載置して起電力を発生させる。
【特許文献1】特開2003−242464号公開特許公報
【特許文献2】特開2003−132312号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した非接触ICカードなどの情報処理装置においては、情報の送受信距離を長く(約1m〜数十m)するためには、情報処理装置に電池などの電源を内蔵しなければならず、電池交換や充電作業が必要であった。特許文献1の構成においては、内部に電池を備えておらず外部からの電磁波を受信して発生した起電力を利用しており、通信距離を長くすることは困難であった。
【0009】
また、特許文献2の構成においては、内部に熱起電力を発生するペルチェ素子を備えていることから、通信距離を長くすることを可能としているが、外部に放熱フィンを設けなければならず、さらに、利用に際してペルチェ素子に熱エネルギを供給するために、ICカード底面が接触するように、外部の高温源上に載置しなければならず、高温源が設置されている箇所以外での利用は困難であった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、電池を内蔵することなく、装置表面に構成した指紋読み取り手段に接触することにより、指紋読み取り部の背面に設けた熱電変換素子の受熱部に指の体温を伝え、温度差で発電するとともに、指紋を読み取って所有者本人の識別を行うことができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る情報処理装置は、指紋読み取り部を有する情報処理装置において、ICモジュールならびにアンテナコイルが格納された本体と、前記本体内に格納され、前記ICモジュールに接続された指紋読み取り部と、前記本体内に格納され、受熱部ならびに放熱部を備え前記ICモジュールに接続された熱電変換素子とを具備し、前記指紋読み取り部は前記熱電変換素子の受熱部と熱的結合されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る情報処理装置は、前記本体の表裏面にわたって受熱延長部ならびに放熱延長部が形成され、前記受熱延長部は前記熱電変換素子の受熱部と熱的結合がなされ、前記放熱延長部は前記熱電変換素子の放熱部と熱的結合がなされ、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間は熱的に絶縁されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る情報処理装置は、前記熱的絶縁が、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間の間隙により形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る情報処理装置は、前記熱的絶縁が、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間に埋め込まれた熱絶縁材によって形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係る情報処理装置は、前記情報処理装置がICカードであることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る情報処理装置は、前記情報処理装置がキーエントリー器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
内部に電池を内蔵することなく通信距離を長くでき、指紋識別機能を備えた情報処理装置を提供することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明に係る実施形態を図を参照して説明する。図1、図2には本発明に係る第1の実施形態であって、指紋識別機能を備えた非接触ICカードを示してある。図1は一部透視上面図、図2は図1のICカードの一部断面図である。
【0019】
ICカード11の内部には、その一端にICモジュール12が配置され、このICモジュール12にはカード内側に沿って巻回されたアンテナコイル13が接続されている。ICカード11の他端には熱電変換素子14が配置されている。熱電変換素子14の上面、すなわち図の表側には受熱部15が設けられ、熱電変換素子14の下面、すなわち図の裏側には放熱部16が設けられている。なお、受熱部15ならびに放熱部16は、いずれもICカード面と平行な板状に形成されている。熱電変換素子14とICモジュール12間は、起電力ライン17にて接続されている。
【0020】
ICカード11の他端には指紋読み取り部18が設けられている。この指紋読み取り部18の表面は図1に点線で示した利用者の指19が直接接触可能のように、ICカード11表面に露出している。また、指紋読み取り部18の裏面は、熱電変換素子14の受熱部15上に熱的結合を伴って設置されている。そして、指紋読み取り部18とICモジュール12間は信号ライン20によって接続されている。なお、 ICカード11の表面は、指紋読み取り部18の表面を除き、上記した各素子を内蔵するため、樹脂や紙などのシート21によって被覆されている。
【0021】
このように構成された非接触ICカード11のICモジュール12は、内蔵された熱電変換素子14の起電力により作動し、指紋データなどの照合、記憶や演算を行い、アンテナコイル13が電磁波によって情報の送受信を行う。
【0022】
また、熱電変換素子14は、受熱部15と放熱部16間の温度差によって発電を行うが、受熱部15に印加される熱は利用者の指19の体温によって供給され、これによって受熱部15と放熱部16に温度差が生じ発電がなされ、ICモジュール12を作動させる電源となり指紋読み取りなどを可能とする。
【0023】
さらに、指紋読み取り部18を受熱部15の表面に設けたことで、特別に設置スペースを確保することなく情報処理本体に指紋読み取り部18を容易に設けることができ、指の体温で発電を行うとともに、指紋を読み取る所有者本人の識別を容易にし、省スペースで行うことができる。
【0024】
次に本発明の第2の実施形態であって、指紋識別機能を備えた非接触ICカードを図3、図4を参照して説明する。図3は一部透視上面図、図4は図3の一部断面図である。なお、上述した第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
本発明に係る第2の実施形態においては、第1の実施形態と比較して熱電変換素子14に印加する温度差をより一層容易に得ることができる構成を提供することを可能にした。すなわち、第1の実施形態では、受熱部15に印加される利用者の体温は、指紋読み取り部18からのみ供給されていたが、第2の実施形態では受熱部15への体温の供給範囲を、指紋検出対象の指以外の他の指などからの体温の供給がなされるように拡大する構成とした。
【0026】
また、第1の実施形態では、放熱部16は図2に示したように熱電変換素子14の直下のみが放熱範囲であったが、第2の実施形態ではこの放熱範囲を広げ、熱電変換素子14における温度差の拡大を図る構成とした。
【0027】
このため、図3、図4に示すように、ICカード11の表面を被覆するシート21表面に受熱延長部22ならびに放熱延長部23が被覆される。受熱延長部22は、露出されている指紋読み取り部18を除き、ICカード11の表裏にわたって形成される。同様に放熱延長部23もICカード11の表裏にわたって形成される。
【0028】
受熱延長部22は、熱電変換素子14の受熱部15の一端と熱的結合がなされており、受熱延長部22の表裏に印加された体温は受熱部15へ供給されることになる。同様に放熱延長部23は、熱電変換素子14の放熱部16の一端と熱的結合がなされており、放熱部16からの熱は放熱延長部23の表裏面から放散されることになる。
【0029】
受熱延長部22と放熱延長部23間は、熱的に絶縁されており、図3、図4の例では両者間に間隙を設けているが、両者間の間隙に熱絶縁材を埋め込むことにより、ICカード11表面の平滑性を形成するようにしてもよい。また、受熱延長部22と放熱延長部23はそれぞれ熱伝導性の高い材料で形成することが望ましい。なお、上記例では受熱延長部22と放熱延長部23をICカード11表面に形成されているシート21上をさらに覆うように形成したが、シート21自体を熱伝導性の高い材料を用いて形成し、受熱延長部22と放熱延長部23を兼ねて機能させることも可能である。
【0030】
この場合には、受熱延長部22と放熱延長部23間を間隙として残存させることは好ましくなく、両者間には熱絶縁材を埋め込むことが望ましい。受熱延長部22ならびに放熱延長部23表面に凹凸を形成したり、受放熱を促進する塗料を塗布するなどの処理を施すことにより、受放熱効率をさらに向上させることも可能である。
【0031】
このような構成により、受熱延長部22にあっては、指紋読み取り時には点線で示した利用者の指のうち、指紋読み取り部18に接触する指先以外の部分が受熱延長部22に接触して体温を供給し、さらに他の指などが裏面の受熱延長部22に接触することで体温を供給することを可能とした。放熱延長部23にあっても表裏両面から放熱することが可能となり、熱電変換素子14に印加される温度差を大とすることができる。
【0032】
図5には本発明の第3の実施形態を説明する図を示してあるが、これは本発明を自動車のドア錠の開閉に多用されているキーレスエントリー器24に適用したものである。構成としては実質的に上述したICカードと同様であるが、この場合も熱電変換素子14に熱的に結合した指紋読み取り部18が形成されている。このように、本発明はオフィスでの入退室カードなど人が手で持ったり、手で操作するICカード類や装置全般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明する一部透視上面図。
【図2】図1のICカードの一部断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明する一部透視上面図。
【図4】図3の一部断面図。
【図5】本発明の第3の実施形態を説明する一部透視上面図。
【符号の説明】
【0034】
11…ICカード、12…ICモジュール、13…アンテナコイル、14…熱電変換素子、15…受熱部、16…放熱部、17…起電力ライン、18…指紋読み取り部、19…指、20…信号ライン、21…シート、22…受熱延長部、23…放熱延長部、24…キーレスエントリー器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋読み取り部を有する情報処理装置において、ICモジュールならびにアンテナコイルが格納された本体と、前記本体内に格納され、前記ICモジュールに接続された指紋読み取り部と、前記本体内に格納され、受熱部ならびに放熱部を備え前記ICモジュールに接続された熱電変換素子とを具備し、前記指紋読み取り部は前記熱電変換素子の受熱部と熱的結合されていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記本体の表裏面にわたって受熱延長部ならびに放熱延長部が形成され、前記受熱延長部は前記熱電変換素子の受熱部と熱的結合がなされ、前記放熱延長部は前記熱電変換素子の放熱部と熱的結合がなされ、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間は熱的に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記熱的絶縁は、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間の間隙により形成されることを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記熱的絶縁は、前記受熱延長部ならびに前記放熱延長部間に埋め込まれた熱絶縁材によって形成されることを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置がICカードであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置がキーエントリー器であることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−129068(P2009−129068A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301541(P2007−301541)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】