説明

情報収集方法、情報収集システム、および移動無線端末

【課題】無線通信システムの動作と関連付けられた受信状況を安価で容易に収集するための、無線通信の情報収集方法、情報収集システムおよび移動無線端末を提供する。
【解決手段】基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて、情報収集サーバが移動無線端末へ報告を要求する情報を送信する。移動無線端末が、報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と移動無線端末の位置とを情報収集サーバへ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に、無線通信システムのメンテナンスや最適化のための受信状況の実測値収集に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話やPHS、公衆無線LAN等の無線通信システムにおいては利用料金の低廉化が進んでいる。そのため、無線通信システムの運用コストをできるだけ抑える必要がある。そして、無線通信システムのメンテナンスや最適化のための調整を、いかに低コストで実現するかが通信事業者にとって大きな課題となっている。
【0003】
無線通信システムのメンテナンスや最適化のための調整とは、長い期間にわたりシステムを不具合なく、安定的に動作させるために行われる保守調整である。調整対象としては、例えば無線基地局の送信電力やアンテナのチルト角などがある。
【0004】
無線通信システムのメンテナンスや調整は、一般に、無線ネットワーク設計シミュレータを用いた評価検討に基づいて行われる。そして、シミュレーション精度を高めるために、無線通信システムのサービスエリア(以下、カバレージと称す)において実測された受信状況情報と、その実測値が測定された位置情報とが設計シミュレータに入力される。
【0005】
受信状況情報としては、例えばCDMAシステムでは、共通パイロットチャネルの受信品質や受信強度などがある。これらの受信状況情報は、それが測定された位置において、移動無線端末による無線通信システムのサービスの利用が可能であるか否かを判断するための指標となるため、メンテナンスや調整に欠かせない有用な情報である。
【0006】
従来、受信状況情報の測定は専用の測定車や専門の測定チームにより行われてきた。図8は、無線通信システムの受信状況情報を収集する、従来の方法を説明するための図である。図8に示すように、従来方法では、無線基地局91、92、93がネットワーク90に接続された構成の無線通信システムのカバレージを測定チームのメンバーが受信状況測定車94でまわり各測定地点で受信状況情報を測定していた。そして、受信状況情報は、受信状況測定車94に備えられた位置測定装置94aを用いて測定した位置情報に対応づけて記録されていた。
【0007】
そして、通信事業者は、測定された受信状況情報を用いて、無線通信システムのメンテナンスや調整を行い、無線通信システムを不具合無く、安定的に動作させていた。
【0008】
従来の他の受信状況情報の収集方法として、ユーザの所有する一般の移動無線端末に受信状況情報を測定させ、その測定結果を収集するという方法がある。(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、図8に示されたような受信状況測定車を用いなくても、迅速かつ容易に、受信状況情報を収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−152104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図8に示されたような受信状況測定車を用いて受信状況情報を測定する方法では、受信状況測定車94を走行させて実測するため、運転手、走行指示者、測定者など複数のメンバーによる測定チームが必要となる。そのため、受信状況測定車の取得および維持にかかる費用や、受信状況の収集にかかる人件費が膨大であり、無線通信システムの運用コストを低減させることを妨げていた。また、この方法では、限られた数の受信状況測定車を用いて、無線通信システムのカバレージ内をあまねく走り回る必要があるため、受信状況情報の収集に多大な時間がかかっていた。
【0011】
また、受信状況測定車94を用いず、多数の測定チームによってカバレージ内の受信状況情報を測定することも考えられる。その場合、受信状況測定車94は不要になるが、人件費はさらに膨大となる。
【0012】
CDMA無線通信システムでは、ユーザーがシステムに接続することで負荷すなわち干渉量が変化し、それに伴って無線通信システムのカバレージが時間的に変動する。ユーザーが徐々に増えてシステムが成熟する過程において、安定的なカバレージを維持するためには、定期的に繰り返して受信状況情報を収集する必要がある。したがって、受信状況測定車を定期的に繰り返して走行させ、受信状況情報を収集するために、受信状況情報の収集にかかるコストは他のシステムに比べて非常に大きな物となる。
【0013】
また、CDMA無線通信システムでは、受信状況測定車でカバレージ内を走行して受信状況情報を測定しているうちに、測定済のエリアでのユーザの利用状況が変化してしまうという事態も考えられる。
【0014】
一方、特許文献1に記載されたように、一般ユーザが利用している移動無線端末に受信状況情報を測定させる方法によれば、受信状況測定車を必要とせず、また複数メンバーの測定チームも必要ないので、低コストで受信状況情報を収集することができる。そして、無線通信システムのカバレージを受信状況測定車で走り回るわけではなく、一般ユーザが使用している移動無線端末に受信状況情報を測定させるので、短時間で大量の情報を収集することができる。
【0015】
しかし、CDMA無線通信システムでは、様々な要因で受信状況が変化し、その受信状況の変化が様々な形でシステムの動作に影響を与える。例えば、時間的な要因で受信状況が変化することが考えられる。また、ユーザの集中などから生じる負荷の変化によって受信状況が変化することが考えられる。また、その受信状況の変化によって、網による通信の強制切断の頻度が変化することが考えられる。また、ハンドオーバの失敗の頻度が変化することが考えられる。
【0016】
しかし、特許文献1に記載されたような方法では、受信状況情報と位置情報との関係が収集されるだけなので、受信状況の変化の原因やそれによって引き起こされている現象を的確に把握することができなかった。
【0017】
本発明の目的は、無線通信システムの動作と関連付けられた受信状況を安価で容易に収集するための、無線通信の情報収集方法、情報収集システムおよび移動無線端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の情報収集方法は、
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて、情報収集サーバが前記移動無線端末へ報告を要求する情報を送信するステップと、
前記移動無線端末が、前記報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と前記移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の情報収集システムは、
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて、前記移動無線端末へ報告を要求する情報を送信する情報収集サーバと、
前記報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と自移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信する移動無線端末と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の移動無線端末は、
自身の位置を取得する位置情報取得部と、
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて情報収集サーバから送信された、報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と自移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カバレージ内の各位置における受信状況を通信状況と関連付けて取得することができ、無線設備のメンテナンスや調整に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による無線通信システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による移動無線端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態による移動無線端末の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施形態による無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態による移動無線端末の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態による無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。
【図8】無線通信システムの受信状況情報を収集する、従来の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の無線通信システムの構成を示すシステム構成図である。本実施形態の無線通信システムは、無線基地局11、12、13、ネットワーク2および情報収集サーバ1を有している。そして、この無線通信システムには移動無線端末21、22が接続可能である。実際には、多数の移動無線端末が存在するが、ここでは2つだけが示されている。また、無線通信システムには、無線基地局が多数存在するが、ここでは3つだけが示されている。
【0025】
移動無線端末21、22は、無線通信システムにおいてユーザが利用する携帯電話、PHS、公衆無線LAN等の移動可能な端末である。ただし、移動無線端末21、22を利用するユーザは、自身の位置や無線基地局からの無線信号の受信状況を、無線通信システムの安定動作のために、提供することに同意したユーザである。
【0026】
図2は、本実施形態の移動無線端末の構成を示すブロック図である。図1に示された移動無線端末21と移動無線端末22は同じ構成なので、図2には代表として移動無線端末21を示す。
【0027】
図2を参照すると、移動無線端末21は、位置情報取得部31、受信状況取得部32、通信状況取得部33、時間情報取得部34、制御部35および表示部36を有している。
【0028】
位置情報取得部31は、移動無線端末21の位置を示す情報を取得する。位置情報取得部31は、例えばGPS(Global Positioning System)によって自身の位置を測定し、位置情報として取得する。
【0029】
受信状況取得部32は、無線基地局からの無線信号の受信状況を示す情報を取得する。この受信状況情報は、無線通信システムのメンテナンスおよび調整に有用である。受信状況情報の例としては、CDMA無線通信システムにおける共通パイロットチャネルの受信品質であるEc/Io(チップあたりの受信信号電力対干渉電力比)や受信強度などが挙げられる。
【0030】
通信状況取得部33は、ユーザ通信の通信状況を示す情報を取得することができる。この通信状況情報は、無線信号を利用した通信の状況を示す情報である。通信状況情報の例としては、無線基地局からの無線信号を受信できずにユーザ通信が強制切断されたことや、他の移動無線端末への発信ができないことを示す情報などが挙げられる。また、ハンドオーバに失敗したことを示す情報や、通信のスループットを示す情報なども挙げられる。
【0031】
時間情報取得部34は、受信状況情報が取得された時刻や、受信状況の測定が開始された時刻および測定されていた時間などの時間情報を取得することができる。
【0032】
制御部35は、位置情報および時間情報と共に受信状況情報が取得されると、それらをまとめて実測情報として、いずれかの無線基地局とネットワーク2を介して情報収集サーバ1に通知する。実測情報とは、位置情報、時間情報および受信状況情報を含む情報である。
【0033】
また、制御部35は、通信状況取得部33で取得される通信状況情報が所定の条件を満たしたことをトリガに、受信状況取得部32に受信状況情報の取得を指示し、位置情報取得部31に位置情報の取得を指示し、時間情報取得部34に測定時刻や測定時間の取得を指示する。例えば、移動無線端末21は、通話やデータ通信などのユーザ通信が強制切断されると、それをトリガに受信状況情報を取得する。また、例えば、移動無線端末21は、通信のスループットが所定の閾値を下回ったことをトリガにしてもよい。また、ユーザ通信を開始するために発呼がされたことをトリガとしてもよい。
【0034】
制御部35は、情報収集サーバ1から有価ポイントを示す情報を受信すると、それを表示部36に表示させる。
【0035】
有価ポイントとは、金銭などに相当する価値を有するポイントであり、実測情報を提供したことに対する対価としてユーザに与えられる。有価ポイントの例として、ネットワーク2に含まれるインターネット上の電子商取引で利用可能なポイントが考えられる。また、他の例として、各種のサイバーキャッシュや電子マネーなども考えられる。さらに他の例として、ネットワーク2に含まれる無線通信システムのコアネットワークにおいて価値を有するポイント、すなわち無線通信システムの利用料金と相殺可能なポイントが考えられる。
【0036】
表示部36は、有価ポイント情報を制御部35からの指示に基づいて表示する。
【0037】
無線基地局11、12、13は、無線移動端末21、22と無線信号を送受信する装置であり、例えば、携帯電話システムやPHSシステムの基地局や、無線LAN等のアクセスポイントなどである。
【0038】
ネットワーク2は、本実施形態の無線通信システムのコアネットワーク、例えば携帯電話システムの移動交換機で構成されるネットワークを含む。また、ここでは、ネットワーク2は、ゲートウェイ(不図示)を介して接続されるインターネットをも含む。
【0039】
情報収集サーバ1は、ワークステーションなどの情報処理装置によって構成される。情報収集サーバ1は、移動無線端末21、22より送信された実測情報を受信し、記録する。また、情報収集サーバ1は、移動無線端末21、22から実測情報を受信して記録すると、その送信元の移動無線端末21、22のユーザに与える有価ポイント情報を、ネットワーク2および無線基地局を介して、その移動無線端末21、22に送る。
【0040】
図3は、本実施形態の無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。図3では、移動無線端末21および情報収集サーバ1のみが着目されている。
【0041】
予め、有価ポイントの取得と引き換えに、受信状況情報や位置情報などを含む実測情報を提供することに同意したユーザの移動無線端末に専用ソフトウェアをインストールし、本実施形態の移動無線端末21、22にしておく。この専用ソフトウェアをインストールしておくことにより、移動無線端末21、22は以下に示す動作を自動的に行うことができる。
【0042】
図3を参照すると、移動無線端末21は、ユーザ通信の通信状況を監視しており、通信状況情報が所定の条件を満たしたことをトリガとして検出する(ステップ101)。トリガを検出すると、移動無線端末21は、受信状況を測定し、受信状況情報として取得する(ステップ102)。そのとき、移動無線端末21は、時間情報も同時に取得する。なお、移動無線端末21は、ステップ101および102の動作の代わりに、受信状況の測定を常時継続しており、トリガを検出すると、そのときの受信状況を後の処理に用いることとしてもよい。
【0043】
次に、移動無線端末21は、GPSなどによって自身の位置を測定し、位置情報として取得する(ステップ103)。なお、そのときの位置や環境によって移動無線端末21が位置情報を取得できないこともあり得る。その場合、移動無線端末21は、現在に最も近い過去の時刻に取得した位置情報を用いることとしてもよい。また、移動無線端末21は、信頼度が低いことを示す情報を位置情報に付加することが好ましい。次に、移動無線端末21は、位置情報、時間情報および受信状況情報を含む実測情報を情報収集サーバ1に送る(ステップ104)。
【0044】
なお、実測情報を早期に調整に反映させるために、移動無線端末21は、受信状況情報および位置情報を取得した直後に、それらを含む実測情報を情報収集サーバ1に送ることが好ましい。しかし、ユーザ通信の強制切断やハンドオーバ失敗をトリガにする場合、トリガ検出の直後に情報収集サーバ1に実測情報を送ることはできない。したがって、その場合には、移動無線端末21は、回線が利用可能となった後に実測情報を送ればよい。
【0045】
情報収集サーバ1は、移動無線端末21から実測情報を受信し、内部のメモリに記録する(ステップ105)。実際には、複数の移動無線端末から同様に実測情報が送られるので、情報収集サーバ1には、カバレージ内の様々な位置における受信状況情報が収集される。
【0046】
情報収集サーバ1に収集される実測情報は、トリガ条件によって、無線通信システムの様々な動作と関連付けられたものとなる。そのため、単に位置と受信状況とを対応付けただけのマップが得られるでなく、様々な状況と関連付けたマップが得られる。例えば、ユーザ通信が強制切断されたときに取得された情報のマップは電波の到達状況が悪い地域を推定するのに役立つ。ハンドオーバの失敗が起きたときに取得された情報のマップは、無線基地局間でカバレージが途切れている位置を推定するのに役立つ。また、スループットが所定の閾値を下回ったときに取得された情報のマップは、通信品質の良くない位置を推定するのに役立つ。また、発呼時に取得された情報のマップは、多数のユーザが集中している位置を推定するのに役立つ。
【0047】
また、実測情報に含まれる時間情報に示された測定時刻などは、通信状況や受信状況の時間的な変化を推定するのに役立つ。
【0048】
次に、情報収集サーバ1は、移動無線端末21のユーザに有価ポイントを与えると共に、情報提供に対する対価(有価ポイント)を示す有価ポイント情報を移動無線端末21に送る(ステップ106)。即時性を重視し、移動無線端末21から実測情報が送られた直後に、情報収集サーバ1が有価ポイント情報を移動無線端末21に送るのが好ましい。ただし、トラフィックの増大を防止するために、有価ポイント情報の送信タイミングを遅らせてもよい。例えば、情報収集サーバ1は、いくらかの有価ポイント情報をまとめた後に送信してもよい。また、情報収集サーバ1は、深夜にまとめて有価ポイント情報を送信してもよい。
【0049】
また、実際の有価ポイントを与える方法は、有価ポイントの態様によって異なる。例えば、無線通信システムの利用料金と相殺可能な有価ポイントの場合、情報収集サーバ1、課金センタ(不図示)、あるいは有価ポイント管理専用サーバなどに記録し、管理すればよい。また、銀行口座と連動した電子マネーの場合、銀行のサーバに有価ポイントを通知すればよい。
【0050】
このようにして情報収集サーバ1に実測情報が収集されると、無線通信システムのコアネットワーク2は、無線基地局11、12、13のメンテナンス、送信出力やアンテナのチルト角などの各種パラメータの調整に利用する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザの移動無線端末が所定の通信状況となったことをトリガに受信状況情報および位置情報を取得し、それらを含む実測情報を情報収集サーバ1に通知するので、通信事業者は、安価な有価ポイントをユーザに払うことにより、通信状況と関連付けられた実測情報を即時に多く得ることができ、無線基地局のメンテナンスや調整を即時かつ有効に行うことができると共に、それらにかかる工数や費用を低減できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、多くの実測情報を即時に収集し、メンテナンスや調整に反映させることができるので、特にCDMAのように、移動無線端末の接続による無線回線への負荷状況すなわち干渉量によってカバレージが変動するような無線通信システムのユーザが徐々に増える過程において顕著な効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、多くのユーザが集まるような地域に関する実測情報が多く得られ、また、このような地域において即時かつ正確な調整が重要な意味を持つので、必要性の高い地域に多くの実測情報を用いた即時かつ正確な調整が可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、位置情報や受信状況情報を提供することに同意したユーザの移動無線端末からのみ実測情報を取得するので、位置情報や受信状況情報を通信事業者に送ることを望まないユーザから自動的に情報を取得することがなく、ユーザにとってもプライバシや移動無線端末の消費電力の面で不都合はない。
【0055】
本発明の他の実施形態について説明する。
【0056】
本実施形態の無線通信システムは図1と同様の構成である。移動無線端末21、22が実測情報を測定するためのトリガは、情報収集サーバ1から複数の移動無線端末に同時に与えられる点で図3に示した動作と異なる。
【0057】
図4は、本発明の他の実施形態の移動無線端末の構成を示すブロック図である。図4の移動無線端末は、通信状況受信部33の代わりにトリガ情報受信部37を有する点で図2のものと異なる。
【0058】
トリガ情報受信部37は、実測情報の測定を開始するトリガとなる情報であり、情報収集サーバ1から移動無線端末に送られる。本実施形態の情報収集サーバ1は、実測情報の測定を開始させるために、トリガ情報を複数の移動無線端末に対して同時に送信することができる。
【0059】
また、本実施形態の制御部35は、情報収集サーバ1からトリガ情報が受信されたことをトリガに、受信状況および位置情報の測定を受信状況取得部32および位置情報取得部31に指示し、測定時刻などの取得を時間情報取得部34に指示する。
【0060】
図5は、本実施形態の無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。図5では、移動無線端末21および情報収集サーバ1のみが着目されている。
【0061】
予め、有価ポイントの取得と引き換えに、受信状況情報や位置情報などを含む実測情報を提供することに同意したユーザの移動無線端末に専用ソフトウェアをインストールし、本実施形態の移動無線端末21、22にしておく。
【0062】
図5を参照すると、まず、情報収集サーバ1はトリガ情報を複数の移動無線端末に対して同時に送信する(ステップ201)。例えば、情報収集サーバ1は、システム負荷が統計的に高くなる時間帯や低くなる時間帯など、受信状況を観測したい特異な時間帯にトリガ情報を送信する。トリガ情報を受信すると、移動無線端末21は、受信状況を測定し、受信状況情報として取得する(ステップ202)。そのとき、移動無線端末21は、時間情報も同時に取得する。
【0063】
それ以降、ステップ203〜207の処理は、図3に示したステップ103〜107の処理と同じである。
【0064】
情報収集サーバ1に収集される実測情報は、トリガ情報の受信をトリガに複数の移動無線端末で同時に取得されたものとなる。そのため、単に位置と受信状況とを対応付けただけのマップが得られるのではなく、同時刻におけるカバレージ内の各位置の受信状況を取得することができ、各位置の受信状況の変化の関連性の推定などに役立つ。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、情報収集サーバ1から複数の移動無線端末に同時に送信されたトリガ情報の受信をトリガに受信状況情報および位置情報を取得し、それらを含む実測情報を情報収集サーバ1に通知するので、通信事業者は、安価な有価ポイントをユーザに払うことにより、同時刻の各地の実測情報を即時に多く得ることができ、無線基地局のメンテナンスや調整を即時かつ有効に行うことができると共に、それらにかかる工数や費用を低減できる。
【0066】
本発明のさらに他の実施形態について説明する。
【0067】
本実施形態の無線通信システムは図1と同様の構成である。移動無線端末21、22が実測情報を測定するためのトリガは、図5に示されたように情報収集サーバ1から複数の移動無線端末に同時に与えられるものと、図3に示されたように移動無線端末自身が検出するものとがある点で図3に示した動作と異なる。
【0068】
図6は、本発明のさらに他の実施形態の移動無線端末の構成を示すブロック図である。図6の移動無線端末は、通信状況受信部33とトリガ情報受信部37の双方を有する点で図2のものと異なる。通信状況受信部33は図2と同じものであり、トリガ情報受信部37は図4と同じものである。
【0069】
また、本実施形態の制御部35は、通信状況取得部33でトリガとなる通信状況情報が取得されたこと、またはトリガ情報受信部37でトリガ情報が受信されたことをトリガに、受信状況取得部32、位置情報取得部33および時間情報取得部34への指示を行う。
【0070】
図7は、本実施形態の無線通信システムおよび移動無線端末が受信状況を収集するときの動作を示す図である。図7では、移動無線端末21および情報収集サーバ1のみが着目されている。
【0071】
予め、有価ポイントの取得と引き換えに、受信状況情報や位置情報などを含む実測情報を提供することに同意したユーザの移動無線端末に専用ソフトウェアをインストールし、本実施形態の移動無線端末21、22にしておく。
【0072】
図7を参照すると、まず、情報収集サーバ1が、トリガ情報を複数の移動無線端末に対して同時に送信するか(ステップ301)、あるいは移動無線端末21が、通信状況情報が所定の条件を満たしたことをトリガとして検出する(ステップ302)。
【0073】
いずれかのトリガが発生すると、移動無線端末21は、受信状況を測定し、受信状況情報として取得する(ステップ303)。そのとき、移動無線端末21は、時間情報も同時に取得する。
【0074】
それ以降、ステップ304〜308の処理は、図3に示したステップ103〜107の処理と同じである。
【0075】
情報収集サーバ1に収集される実測情報は、トリガ条件によって、無線通信システムの様々な動作と関連付けられた、あるいは同時刻のものとなる。そのため、単に位置と受信状況とを対応付けただけのマップが得られるでなく、様々な状況と関連付けたマップ、あるいは同時刻におけるカバレージ内の各位置の受信状況を示すマップが得られる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定の通信状況となったこと、あるいは情報収集サーバ1から複数の移動無線端末に同時に送信されたトリガ情報を受信したことをトリガに、移動無線端末が受信状況情報および位置情報を取得し、それらを含む実測情報を情報収集サーバ1に通知するので、通信事業者は、安価な有価ポイントをユーザに払うことにより、通信状況と関連付けられた実測情報や、同時刻の各地の実測情報を即時に多く得ることができ、無線基地局のメンテナンスや調整を即時かつ有効に行うことができると共に、それらにかかる工数や費用を低減できる。
【符号の説明】
【0077】
1 情報収集サーバ
2 ネットワーク
11、12、13 無線基地局
21、22 移動無線端末
31 位置情報取得部
32 受信状況取得部
33 通信状況取得部
34 時間情報取得部
35 制御部
36 表示部
37 トリガ情報受信部
101〜107、201〜207、301〜308 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて、情報収集サーバが前記移動無線端末へ報告を要求する情報を送信するステップと、
前記移動無線端末が、前記報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と前記移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信するステップと、を有することを特徴とする情報収集方法。
【請求項2】
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて、前記移動無線端末へ報告を要求する情報を送信する情報収集サーバと、
前記報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と自移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信する移動無線端末と、を有することを特徴とする情報収集システム。
【請求項3】
自身の位置を取得する位置情報取得部と、
基地局と移動無線端末との間の通信状況に基づいて情報収集サーバから送信された、報告を要求する情報を受信し、無線信号の受信状況と自移動無線端末の位置とを前記情報収集サーバへ送信する制御部と、を有することを特徴とする移動無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−45144(P2011−45144A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265238(P2010−265238)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2008−179240(P2008−179240)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】