説明

情報書き込み装置及び媒体発行装置

【課題】印字ヘッドと消去ヘッドを独立に駆動でき、且つメンテナンスし易いようにそれらの着脱を可能にした情報書き込み装置及び当該装置を備えた媒体発行装置に提供する。
【解決手段】カード状媒体2が搬送される搬送路30と、媒体2に文字情報を印字する印字ヘッド71と、媒体2の文字情報を消去する消去ヘッド72と、媒体2に対して印字ヘッド71を押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置74と、媒体2に対して消去ヘッド72を押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置73とを少なくとも有する情報書き込み装置70であって、印字ヘッド71及び印字へッド駆動装置74を含む印字機構と、消去ヘッド72及び消去へッド駆動装置73を含む消去機構とを搬送路30の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したことにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報書き込み装置及び媒体発行装置に関し、さらに詳しくは、印字ヘッドと消去ヘッドを有し、それらを独立に駆動でき、且つメンテナンスしやすいようにそれらの着脱を可能にした情報書き込み装置及び当該装置を備えた媒体発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気カードやICカード等の記録媒体が多方面で広く用いられており、商品やサービスの購入代金支払いの際に利用するための一定金額の価値を有するカード型の有価証券であるプリペイドカードが普及している。また、このような記録媒体には、繰り返し貨幣価値を追加(チャージ)して利用できるカードもある。その例としては、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際に利用できる運賃、乗車回数や利用期間を磁気カードやICカードなどに記録した各種の乗車カードがある。こうした中、各種の記録媒体を新規に発行する装置や、新しい媒体に更新することができる装置が検討されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、多種のカードを、カード毎の処理を行なうユニットに振り分けて搬送する手前の共通搬送路中に、搬送路切替ガイドを回動可能に設け、その搬送路切替ガイドの周囲に、前記各ユニットに連続するユニットガイドを放射状に配置した搬送路切替部を設け、搬送路切替部に一時保留したカードを前記各ユニットガイドに選択的に接続するようにしたカード発行装置が提案されている。
【0004】
前記のカード発行装置によるカードの新規発行は、積層されたリライタブルカード(書き換え可能カードのこと)をホッパーより1枚毎出し、データ印字し、一旦搬送路切替部で保留し、さらに、カードの種類が磁気カードであるかICカードであるか、即ち、いずれのデータ処理をするかにより、それぞれの書き込み機能部に機能別に振り分け処理し、その書き込み機能部で書き込み処理した後に受け取りゲートまで搬送し、新規カードを発行する。また、カードの更新発行においては、前記受け取りゲートと同じカード挿入ゲートに投入された磁気カード又はICカードを、カードの種類に対応した書き込み機能部に振り分け搬送し、その書き込み機能部で所定のデータを読み書きし、その後リライトユニット内の印字ヘッドと消去ヘッドにより処理されて、再度受け取りゲートまで搬送して更新発行する。
【特許文献1】特開2005−242435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のような従来のカード処理装置には以下のような不具合がある。例えば、リライタブルカードに印字及び消去を行なう印字ヘッドと消去ヘッドのカードへの押圧が同一の駆動源で行われていたため、搬送中のカードに対する各ヘッドの押圧のタイミングをとることが難しく、カード全面への印字や消去が難しいという難点があった。また、印字ヘッドと消去ヘッドの押圧位置は固定されているので、厚さや形状の異なるカードや、反り気味のカード等に対して、均一に適切な印字や消去を行なうことが難しいという問題があった。また、印字ヘッドと消去ヘッドが、搬送路に一体化して設けられていたために、リライトユニット内でのカード詰まりが発生した場合のメンテナンスや、各ヘッドのクリーニング等の作業に手間がかかるという難点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、印字ヘッドと消去ヘッドを独立に駆動でき、且つメンテナンスし易いようにそれらの着脱を可能にした情報書き込み装置、及び当該装置を備えた媒体発行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の情報書き込み装置は、カード状媒体が搬送される搬送路と、前記媒体に文字情報を印字する印字ヘッドと、前記媒体の文字情報を消去する消去ヘッドと、前記媒体に対して前記印字ヘッドを押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置と、前記媒体に対して前記消去ヘッドを押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置と、を有する情報書き込み装置であって、前記印字ヘッド及び前記印字へッド駆動装置を含む印字機構と、前記消去ヘッド及び前記消去へッド駆動装置を含む消去機構とを、前記搬送路の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したことを特徴とする。
ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、印字ヘッドを押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置と、消去ヘッドを押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置とを有するので、各駆動装置を単独で動作させることができ、その結果、搬送中のカードに対する各ヘッドの押圧のタイミングをとることが容易で、カード全面への印字や消去を容易に行なうことができる。また、各駆動装置を単独で動作させることができるので、印字ヘッドと消去ヘッドの押圧位置を独立して制御可能であり、その結果、厚さや形状の異なるカードや反り気味のカード等に対して均一な印字や消去を行なうことができる。また、印字機構と消去機構とを搬送路の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したので、それぞれについての独立制御が可能となる一方で、対称的な動作で共通の制御が可能であり、制御の容易化を実現できる。
【0009】
本発明の情報書き込み装置において、前記印字機構と前記消去機構のうち、少なくとも前記印字ヘッドを前記搬送路に進出後退可能に支持する枠体と前記消去ヘッドを前記搬送路に進出後退可能に支持する枠体とが共通の部材であることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、部品の共通化によるコスト削減と設計の簡易化を達成できる。
【0011】
本発明の情報書き込み装置において、前記搬送路には媒体位置検出センサが設けられ、当該媒体位置検出センサは、前記媒体が前記印字ヘッド位置又は前記消去ヘッド位置に搬送されたときに前記印字ヘッド又は前記消去ヘッドが当該媒体に押圧するように、前記印字ヘッド駆動装置及び/又は前記消去ヘッド駆動装置を動作させる信号を送るためのセンサであることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、搬送路に設けられた媒体位置検出センサは、媒体が印字ヘッド位置又は消去ヘッド位置に搬送されたときに印字ヘッド又は消去ヘッドが媒体に押圧するように、印字ヘッド駆動装置及び/又は消去ヘッド駆動装置を動作させる信号を送るので、そのセンサ信号に基づいて各駆動装置を単独で動作させることができ、その結果、搬送中のカードに対する各ヘッドの押圧のタイミングをとることが容易で、カード全面への印字や消去を容易に行なうことができる。
【0013】
本発明の情報書き込み装置において、前記印字機構及び前記消去機構は、前記媒体に対して付勢力を伴う押圧手段を備えることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、印字機構及び消去機構が媒体に対して付勢力を伴う押圧手段を備えるので、厚さや形状の異なるカードや反り気味のカード等に対して柔軟に対応でき、均一な印字や消去を行なうことができる。
【0015】
本発明の情報書き込み装置において、前記印字機構及び前記消去機構を有するヘッドユニットと、前記搬送路を含む搬送ユニットとが対向配置されており、前記ヘッドユニットの前記媒体搬送方向の一端が回動可能に片持ち固定されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、各ヘッドや各駆動装置を有するヘッドユニットが、搬送路を含む搬送ユニットと別体で設けられ、しかもヘッドユニットの媒体搬送方向の一端が回動可能に片持ち固定されているので、搬送路内での媒体詰まりが発生した場合のメンテナンスや、各ヘッドのクリーニング等の作業が容易となる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明の媒体処理装置は、カード状記録媒体を発行する媒体発行装置であって、装置奥側に配置され、前記媒体を積層して収納するとともに、積層された前記媒体のうち最端部位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有するホッパーと、装置手前側に前記媒体繰り出し部と対角位置に配置され、前記媒体を装置外へ排出する媒体排出口と、前記ホッパーと前記媒体排出口の間に傾斜して配置される、上記本発明の情報書き込み装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、印字ヘッドと消去ヘッドとをそれらを独立に駆動でき且つ着脱可能にした情報書き込み装置がカード状記録媒体を発行する媒体発行装置の構成部材として設けられているので、カード全面への印字や消去を容易にし、且つメンテナンス等の作業が容易となる。また、角位置に配置されたホッパーと媒体排出口との間に、上記情報書き込み装置が傾斜して配置されているので、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印字ヘッドと消去ヘッドを独立に駆動でき、且つメンテナンスし易いようにそれらの着脱を可能にした情報書き込み装置を提供することができる。また、印字機構と消去機構とを搬送路の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したので、それぞれについての独立制御が可能となる一方で、対称的な動作で共通の制御が可能であり、制御の容易化を実現できる。
【0020】
また、本発明の媒体発行装置によれば、カード全面への印字や消去を容易にし、且つメンテナンス等の作業が容易であるとともに、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の情報書き込み装置及び媒体発行装置について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
【0022】
以下においては、本発明の情報書き込み装置が好ましく装着される媒体発行装置の全体構成について説明する中で、情報書き込み装置の詳細について詳しく説明する。なお、情報書き込み装置の装着対象が以下に説明する媒体発行装置に限定されないことは言うまでもない。
【0023】
(媒体発行装置)
図1は、本発明の情報書き込み装置が好ましく装着される媒体発行装置の実施の形態を示す透視側面図である。図1に示す媒体発行装置1は、カード状記録媒体(単に「媒体2」ということがある)を発行する装置であって、装置奥側に配置され、媒体2を積層して収納するスタッカ25及び積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向(図1では右斜め上)へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する搬送路30を有する情報書き込み装置70と、搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側に配置されて、媒体2を排出する媒体排出口10と、を少なくとも備えている。
【0024】
図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10がホッパー20の媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側の対角位置に配置されている具体的な実施の形態を示したものであって、ホッパー20が、スタッカ25内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有し、媒体排出口10が、媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側に対角配置されている。こうした対角配置により、ホッパー20の高さ方向にスペースが与えられるので、媒体収納量の多いスタッカ25を用いることができる。
【0025】
さらに詳しくは、図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10と情報書き込み装置70との間に設けられ、媒体2を回動させて媒体搬送方向を切り替える第1の媒体回動部80と、媒体繰り出し部21と情報書き込み装置70との間に設けられ、媒体2を回動させて媒体搬送方向を切り替える第2の媒体回動部60とを備えている。また、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部100を備えている。また、図1に示すように、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書込み行なう磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよいし、第2の媒体回動部60の上方にクリーニング媒体保持部110を備えていてもよい。なお、第1の媒体回動部80と第2の媒体回動部60は必須の構成ではなく、その代わりに、単純構造である曲がった搬送路を採用してもよい。こうした配置構成は、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さL)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。
【0026】
以下、媒体発行装置1の構成等について簡単に説明する。図中、「S」はセンサを表している。
【0027】
ホッパー20は、スタッカ25(カセット式媒体収納容器ともいう)と媒体送り出し機構22とより構成され、その媒体送り出し機構22は媒体繰り出し部21を有している。
【0028】
スタッカ25は、媒体2を積層収納する容器で、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部としてホッパー20から着脱可能に設けられている。このスタッカ25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、例えば図1においては、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。
【0029】
スタッカ25の下側には、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、スタッカ25の底板とスタッカ25の側板をなす基準板との間に設けられている。
【0030】
また、スタッカ25には、そのスタッカ25をホッパー20から脱着したときにゲート部23を塞ぐためのシャッタ24が設けられていている。また、スタッカ25内に収容される媒体2を上方から押し下げるように作用するおもり26が設けられていることが好ましい。シャッタ24は、媒体2を入れたスタッカ25を媒体発行装置1に装着するとき、又はホッパー20から取り外して持ち運ぶときに、ゲート部23から媒体2が落下等するのを防ぐように作用する。また、おもり26は、スライド機構を備えたものでもよいし、チェーン等でスタッカ25に取り付けられていてもよく、何れの場合もおもり26の紛失防止に効果的である。
【0031】
媒体送り出し機構22は、ホッパー20の底部にスタッカ25と対向して配置され、スタッカ25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aをスタッカ25(即ちホッパー20)の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、スタッカ25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由してスタッカ25(即ちホッパー20)の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部が形成されていることが好ましい。
【0032】
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。なお、図1においては、2つのスプロケット223,223が用いられているが、3つ以上のスプロケットで構成されたものであっても構わない。このスプロケットは、例えば図1に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝動ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
【0033】
なお、図1に示す形態は、媒体送り出し機構22の一例の概略形態であり、必ずしもそれらの形態に限定されるものではない。例えば、チェーン222とスプロケット223により押出部材221を駆動する構成に代えて、押出部材221をリードスクリューに取り付けて、駆動させる構成としてもよい。
【0034】
媒体繰り出し部21は、スタッカ25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aがスタッカ25(即ちホッパー20)の外に繰り出される部分であり、スタッカ25の下側に設けられたゲート部23及びその周辺部により構成される。
【0035】
媒体排出口10は、媒体発行装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた情報書き込み装置70を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、情報書き込み装置70は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路30を有している。この媒体排出口10は、図1においては媒体発行装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、後述するように、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部50等を配置することができる。
【0036】
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体発行装置として用いられる。
【0037】
上記の媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサ等が設けられていてもよい。
【0038】
上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置される情報書き込み装置70は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた情報書き込み装置70は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
【0039】
媒体排出口10と情報書き込み装置70との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第1の媒体回動部80が設けられ、また、情報書き込み装置70と媒体繰り出し部21との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第2の媒体回動部60とが設けられていることが望ましい。なお、情報書き込み装置70と媒体排出口10及び媒体繰り出し部21との間は、第1及び第2の回動部に代えて、媒体をガイドしてカーブをなす屈曲した搬送路としてもよい。
【0040】
次に、本発明に係る情報書き込み装置70について詳しく説明する。
【0041】
図2は、本発明に係る情報書き込み装置の実施の形態を示す模式的な透視断面図である。また、図3は、図2に示す情報書き込み装置を下方から見たときの図であり、図4は、図2に示す情報書き込み装置の搬送路を上方から見たときの図、すなわち搬送ユニットの平面図であり、図5は、図2に示す情報書き込み装置を上方から見たときの図、すなわちヘッドユニットの平面図である。また、図6は、情報書き込み装置が備える印字ヘッド及び消去ヘッドの押圧持の形態であり、図7は、情報書き込み装置が備える印字ヘッド及び消去ヘッドの待避時の形態である。また、図8は、印字ヘッドと消去ヘッドの押圧持及び待避時の検知機構の説明図であり、偏心カムに取り付けられたスリット板とセンサとの位置関係を示す図である。また、図9は、印字ヘッド及び消去ヘッドを有するヘッドユニットと、搬送路を含む搬送ユニットとを、片持ち状態で分離した形態を示す説明図である。
【0042】
情報書き込み装置70は、媒体2に対して所定の文字情報の印字と消去を行なうものであり、図1及び図2に示すように、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、媒体2が搬送される搬送路30と、媒体2に文字情報を印字する印字ヘッド71と、媒体2に文字情報を消去する消去ヘッド72と、媒体2に対して印字ヘッド71を押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置74と、媒体2に対して消去ヘッド72を押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置73とを少なくとも有している。そして、本発明の情報書き込み装置70においては、印字ヘッド71及び印字へッド駆動装置74を含む印字機構と、消去ヘッド72及び消去へッド駆動装置73を含む消去機構とを、搬送路30の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したことに特徴がある。
【0043】
情報書き込み装置70内に設けられる搬送路30は、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この搬送路30は、媒体2の幅よりも若干大きい幅からなり、幅方向に対向して設けられた複数のガイド部材(例えば図3に示す符号309,310を参照)により搬送される媒体2の幅方向が規制されている。また、搬送路30の厚さ方向の隙間も、媒体2の厚さよりも若干大きい寸法の隙間からなり、厚さ方向に対向して設けられた複数のガイド部材(例えば図3に示す符号301〜306及び図4に示す符号401〜406を参照)により搬送される媒体2の厚さ方向が規制されている。この厚さ方向に対向するガイド部材301〜306、401〜406は、図3に示すように、所定の短い幅からなるものが、前記幅方向のガイド部材309,310に接合して設けられている。なお、幅方向のガイド部材309,310及び厚さ方向のガイド部材301〜306、401〜406のいずれにおいても、図2に示すように、媒体2がスムーズに入り込むことができるように、端部307,308が若干開口していることが好ましい。また、各方向のガイド部材の数は図示の例に限定されない。
【0044】
搬送路30での媒体2の搬送は、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)で行われる。具体的には、図2に示すように、第2の媒体回動部60側から、第1搬送駆動ローラ31及び第1パッドローラ31a、第2搬送駆動ローラ32及び第2パッドローラ32a、第3搬送駆動ローラ33及び第3パッドローラ33a、の3組の対向ローラで媒体2が搬送される。
【0045】
第1〜第3の搬送駆動ローラ31,32,33はそれぞれ駆動軸361,362,363に固定され、その駆動軸361,362,363はそれぞれのプーリとタイミングベルトを介し、同期回転するように連動する。なお、後述するプラテンローラ34,34もこの搬送駆動ローラ31,32,33と同期回転するように連動する。具体的には、図2及び図3に示すように、B駆動モータ150からの駆動力がベルト153によってプラテンローラ回転用のプーリ342,344に伝わり、そのプーリ342,344にそれぞれ連設されたプーリ341,343から、第1搬送駆動ローラ用プーリ311、第2搬送駆動ローラ用プーリ321及び第3搬送駆動ローラ用プーリ331に、それぞれのベルト345,346,332を介して駆動力が伝わる。こうしてB駆動モータ150からの駆動力は、3つの搬送駆動ローラ31,32,33及び2つのプラテンローラ34,34に伝わり、しかも、各ローラの直径を同じにすることによって、各対向ローラの搬送速度を同じにし、且つ同期させることができる。なお、図2及び図3に示す符号35は、アイドラーである。
【0046】
また、図3に示すように、駆動ローラ31,32,33とプラテンローラ34,34との間のピッチを同じ長さとし、プーリ及びベルトを同じものとすることが好ましい。こうした構成とすることにより、媒体への全面印字の際にパッドローラの飛び離れがあっても印字に影響することなく搬送が可能になるという利点がある。
【0047】
各搬送駆動ローラ31,32,33及びプラテンローラ34,34の各回転軸は、4枚の側板352,353.76,761によって軸受けされている。具体的には、図3に示すように、プラテンローラ34,34の各回転軸は、搬送路用のガイド部材が取り付けられた側板76,352には軸受けされず、その外側に配置された側板761,353に軸受けされている。一方、搬送駆動ローラ31,32,33の各回転軸は、搬送路用のガイド部材が取り付けられた側板352と、駆動系が配置された側板761に軸受けされている。また、各側板間は、複数の支柱(例えば符号792,793等)によって連結されている。また、図2中の符号S31,S32,S33は搬送中の媒体2を検知することができるセンサであり、符号351は、その端子を示している。
【0048】
図4は、図2に示す情報書き込み装置70の搬送路30を上方から見たときの図である。すなわち、図4は、搬送ユニット3の平面図を示したものであり、印字ヘッド71や消去ヘッド72等を有するヘッドユニット4を除いた形態を示している。この形態は、後述の図9に示すように、印字ヘッド71及び消去ヘッド72を有するヘッドユニット4を、搬送路30を含む搬送ユニット3から片持ち状態で分離したときに現れる形態を模式的に示したものであるが、搬送駆動ローラ31,32,33及びプラテンローラ34,34は省略している。図4に示すように、搬送路を上方から見ると、搬送駆動ローラ31,32,33に対向する位置に、第1〜第3のパッドローラ31a,32a,33aが設けられている。この各パッドローラ31a,32a,33aは、それぞれ、軸受けを介して板部材314,324,334に固定され、その板部材314,324,334は、片持ち支柱316,326,336に巻かれたバネ315,325,335に固定されている。その結果、各パッドローラ31a,32a,33aは、それぞれ、搬送駆動ローラ31,32,33側に付勢されている。
【0049】
図5は、図2に示す情報書き込み装置70を上方から見たときの図であり、印字ヘッド71と消去ヘッド72を備えるヘッドユニット4を含み、そのヘッドユニット4の平面形態の説明図である。印字ヘッド71と消去ヘッド72は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に文字情報を印字したり、印字されている文字情報を消去したりする。なお、媒体を搬送する対向ローラ31と32との間、及び、対向ローラ32と33の間は、それぞれ媒体2の搬送方向の長さよりも短い間隔となるように配置され、その間にプラテンローラ34,34及び印字ヘッド71及び消去ヘッド72が配置されている。そうした間隔で対向ローラを配置することにより、媒体2に印字処理を行う間、媒体2の一部が少なくとも一つの対向ローラに常に狭持されているので、安定した媒体の搬送を行うことができる。ひいては、安定した印字処理を行うことができる。
【0050】
図5〜図7に示すように、情報書き込み装置70には、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動装置74が設けられ、また、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動装置73が設けられている。こうした各ヘッドの駆動装置73,74は、媒体2に文字情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された文字情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に作動し、図6に示すように、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、印字ヘッド71又は消去ヘッド72を降下させる。一方、上記の印字や消去が終了した場合は、図7に示すように、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に印字ヘッド71又は消去ヘッド72を上昇させる。印字や消去が必要でない場合は、各ヘッドの駆動装置73,74は動作せず、印字ヘッド71又は消去ヘッド72は搬送路30から待避した位置に保持される。
【0051】
印字ヘッド71は、図2、図5〜図9に示すように、ヘッドホルダ711(Aヘッドホルダ711という)に保持され、そのAヘッドホルダ711はAヘッドレバー747に固定されている。Aヘッドホルダ711は、印字ヘッド71をジンバル構造で保持して、Aヘッドレバー747に固定されている。このジンバル構造は、印字ヘッド71を媒体2の搬送される方向S及び幅方向Rにおいて揺動可能保持するので、媒体2の印字面に対して印字ヘッド71を良好に追従させることができる。従って、変形した媒体に対しても良好な印字を実現できる。
【0052】
Aヘッドレバー747は、印字ヘッド71を保持する枠体であり、印字ヘッド71を連結したAヘッドホルダ711がAヘッドレバー747の側板に固定されている。Aヘッドレバー747の搬送方向の一端は、図6及び図7に示すように、支点軸748に回動可能に取り付けられ、搬送方向の他端は、媒体2に対して印字ヘッド71を押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置74に取り付けられている。印字ヘッド駆動装置74は、独立駆動する駆動モータ741を有し、その駆動モータ741から2つのギア742,743を介して偏心カム744に駆動力が伝達される。偏心カム744が動作すると、偏心カム744に連設された連結部材746が上下動し、その連結部材746に連設(ピボット接続)されたAヘッドレバー747が上下動する。その結果、印字ヘッド71は、媒体2に対して押圧又は待避することができる。なお、このときのAヘッドレバー747は、支点軸748を支点として回動する。
【0053】
消去ヘッド72も印字ヘッド71同様、図2、図5〜図9に示すように、ヘッドホルダ721(Bヘッドホルダ721という)に保持され、そのBヘッドホルダ721はBヘッドレバー737に固定されている。Bヘッドホルダ721は、消去ヘッド72をジンバル構造で保持して、Bヘッドレバー737に固定されている。このジンバル構造は、印字ヘッド72を媒体2の搬送される方向S及び幅方向Rにおいて揺動可能に保持するので、媒体2の文字消去する面(印字面)に対して消去ヘッド72を良好に追従させることができる。従って、変形した媒体に対しても良好な印字消去を実現できる。
【0054】
Bヘッドレバー737は、消去ヘッド72を保持する枠体であり、消去ヘッド72を連結したBヘッドホルダ721がBヘッドレバー737の側板に固定されている。Bヘッドレバー737の搬送方向の一端は、支点軸738に回動可能に取り付けられ、搬送方向の他端は、媒体2に対して消去ヘッド72を押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置73に取り付けられている。消去ヘッド駆動装置73は、独立駆動する駆動モータ731を有し、その駆動モータ731から2つのギア732,733を介して偏心カム734に駆動力が伝達される。偏心カム734が動作すると、偏心カム734に連設(ピボット接続)された連結部材736が上下動し、その連結部材736に連設されたBヘッドレバー737が上下動する。その結果、消去ヘッド72においても、媒体2に対して押圧又は待避することができる。なお、このときのBヘッドレバー737は、支点軸738を支点として回動する。
【0055】
前記のヘッドレバー737,747の回動は、支点軸738,748を座標原点とした場合、±5°程度調整可能とすればよい。なお、ヘッドレバー737,747及び支点軸738,748は、それぞれ情報書き込み装置70の搬送路30の搬送方向前後おける中心線に対して対称に配置している。
【0056】
印字ヘッド駆動装置74及び消去ヘッド駆動装置73は、媒体2に対して付勢力を伴う押圧手段を備えていることが好ましい。この付勢力は、図2、図5〜図7に示すバネ部材714,724により実現できる。バネ部材714,724の一端は、印字ヘッド71及び消去ヘッド72の近傍で印字ユニット4の側板77,753にネジ部材で固定されている。一方、バネ部材714,724の他端は、支点軸738,748の側で支点軸から離間してヘッドレバー737,747に固定されている。その結果、各ヘッドを図6に示す押圧状態から図7に示す待避状態にしたとき、バネ部材714,724は、各ヘッドを媒体側に押圧する方向に付勢する。したがって、図6に示す押圧状態においても、各ヘッドをさらに押圧する方向に付勢するので、例えば、厚さや形状の異なるカードや反り気味のカード等に対して柔軟に対応でき、均一な印字や消去を行なうことができる。
【0057】
また、上記印字ヘッド71及び消去ヘッド72が取り付けられるヘッドレバー737,747及び駆動装置73,74等は、いずれも図5〜図7に示すように、同じ構造の共通の部品であることが好ましい。これにより、部品共通化によるコスト削減が可能であり、また、印字ヘッド71と消去ヘッド72の取付位置を任意に交換することも可能となり、設計の変更等が容易となる。特に、ヘッドレバー737,747を同一形状とし、各ヘッドレバー737,747の中央位置に印字ヘッド71及び消去ヘッド72を配置し、各ヘッドレバー737,747の一端側の支点軸738,748を搬送路の前後に対称配置するとともに、支点軸738,748とは反対の他端側に進出退避の作用点(連結部材746,736の連接点)を配置したので、印字ヘッド71と消去ヘッド72の形状が異なっていても、同形状のヘッドレバーに737,747配置することができる。また、両方の駆動装置73,74の駆動モータはそれぞれ独立であるので、各ヘッドの押圧又は待避のタイミングを自由に調整することができるという利点がある。
【0058】
また、印字ヘッド駆動装置74及び消去ヘッド駆動装置73において、駆動モータ731,741から偏心カムとの間のギア伝動に代えて、ベルト伝動であっても構わないし、その駆動モータ731,741もDCモータであってもステッピングモータであっても構わない。
【0059】
図8は、印字ヘッド71と消去ヘッド72の押圧持及び待避時の検知機構の説明図であり、偏心カム734,744に取り付けられたスリット板739,749と、センサ73a,73b,74a,74bとの位置関係を示す図である。図示のように、印字機構において、印字ヘッド用の偏心カム744の近傍にセンサ74a,74bを設け、偏心カム744にセンシングプレート(スリット板749)を取り付けておくことにより、印字ヘッド71が押圧状態であるか待避状態であるかを検知することができる。一方、消去機構においても同様に、消去ヘッド用の偏心カム734の近傍にセンサ73a,73bを設け、偏心カム734にセンシングプレート(スリット板739)を取り付けておくことにより、消去ヘッド72が押圧状態であるか待避状態であるかを検知することができる。
【0060】
情報書き込み装置70において、印字ヘッド駆動装置74及び消去ヘッド駆動装置73は、搬送路30上に、媒体位置検出センサS31,S32,S33を有していることが望ましい。この媒体位置検出センサS31,S32,S33は、媒体2が印字ヘッド位置又は消去ヘッド位置に搬送されたときに印字ヘッド71又は消去ヘッド72が媒体2に押圧するように、印字ヘッド駆動装置74及び/又は消去ヘッド駆動装置73を動作させる信号を送るように設定されている。印字ヘッド駆動装置74及び消去ヘッド駆動装置73がこうしたセンサS31,S32,S33を備えることにより、そのセンサ信号に基づいて各駆動装置73,74を単独で動作させることができる。その結果、搬送中の媒体に対する各ヘッド71,72の押圧のタイミングをとることが容易で、媒体全面への印字や消去を容易に行なうことができる。センサの具体例としては特に限定されないが、光学式センサであってもよいし近接式センサであってもよい。また、センサS31,S32,S33の配置位置も特に限定されず、媒体の搬送速度と各ヘッドの駆動装置の押圧速度を適宜調整することにより、任意の部位に設置可能である。
【0061】
図9は、情報書き込み装置70を、印字ヘッド71、印字ヘッド駆動装置74、消去ヘッド72及び消去ヘッド駆動装置73を有するヘッドユニット4と、搬送路30を含む搬送ユニット3とで構成した実施形態を示すものである。図9に示すように、ヘッドユニット4と搬送ユニット3とが対向配置されており、ヘッドユニット4の媒体搬送方向の一端が回動可能に片持ち固定されている。こうした形態からなる情報書き込み装置70は、搬送路30内での媒体詰まりが発生した場合等のメンテナンスや、各ヘッドのクリーニング等の作業が容易となるという利点がある。更に、情報書き込み装置70は、本実施の形態の媒体発行装置1のように搬送路30が傾斜搬送路を形成するように配置するならば、傾斜した搬送路30の上側に生じた空きスペースを利用してヘッドユニット4を開閉させることができる。従って、ヘッドユニット4を装置から取り外すことなく十分なメンテナンス空間を確保することができ、メンテナンスが容易になる。
【0062】
具体的には、図9に示すように、搬送ユニット3は、搬送路30と、駆動ローラ31,32,33及びそれに対向するパッドローラ31a,32a,33aと、プラテンローラ34,34とで構成され、その搬送ユニット3は、情報書き込み装置70が設置される本体シャーシ(4枚の側板352,353.76,761)に固定されている。そして、印字機構(印字ヘッド駆動装置74)に対応する駆動ローラ33、パッドローラ33a、プラテンローラ34と、消去機構(消去ヘッド駆動装置73)に対応する駆動ローラ31、パッドローラ31a、プラテンローラ34とは、それぞれ情報書き込み装置70の搬送路30の搬送方向前後おける中心線に対して、即ち駆動ローラ32及びパッドローラ32aを対称の中心として、対称に配置されている。
【0063】
一方、ヘッドユニット4は、印字ヘッド71及び印字ヘッド駆動装置74を含む印字機構と、消去ヘッド72及び消去ヘッド駆動装置73を含む消去機構により構成される。そして、印字機構と消去機構は、これに対応する搬送ユニット3同様に、情報書き込み装置70の搬送路30の搬送方向前後おける中心線に対して、対称に配置されている。
【0064】
このヘッドユニット4は、第2の媒体回動部60の側の端部に設けられた支点軸78を中心にした片持ち態様で、A方向に回動可能になっている。支点軸78の反対側のヘッドユニット4の端部にはロックピン748が設けられており、そのロックピン748(上記の支点軸748と併用してもよい)にロックレバー794先端の凹部798が係合して、ヘッドユニット4を固定している。ロックレバー794の、凹部798の反対側の端部には、バネ部材795が取り付けられており、そのバネ部材795は、凹部794がロックピン748を付勢する方向に取り付けられている。なお、支点軸78とロックピン748の配置は、図9の場合の逆側であっても構わない。
【0065】
ロックレバー794をロックピン748から外してヘッドユニット4を上昇させるためには、ロックレバー794をバネ部材795の付勢力に抗して移動させる。こうした動作により、ヘッドユニット4を上昇させることができる。このような片持ち固定でヘッドユニット4を上昇させれば、情報書き込み装置70を装置1から取り外さずに簡便にメンテナンスすることができる。また、図4及び図5において、ヘッドユニット4の開閉検知として、センサ79をロックレバー794の側に設け、ヘッドユニット4がロックピン748でロックされた際に側板77の一部がセンサで検知されるように構成することが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、印字ヘッド71、消去ヘッド72及びヘッドユニット4のうちのいずれか1又は2以上が、着脱可能に設けられているように構成してもよい。こうすることにより、印字ヘッド71や消去ヘッド72等の部品や情報書き込み装置70が備える媒体の搬送機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。具体的には、支点軸78を駆動ベルト側(図2及び図9を平面視した場合の手前側)に抜くことにより、ヘッドユニット4を取り外すことができ、保守点検や交換が容易となる。
【0067】
なお、本実施の形態では、情報書き込み装置70は、感熱式の情報書き込み装置であってもよいし、他の方式の印字装置であってもよい。また、磁気カードリーダやその他の情報リーダライタを、上記印字ヘッド71や消去ヘッド72と置き換えたものであってもよい。
【0068】
以上のように、この情報書き込み装置70によれば、各駆動装置73,74を単独で動作させることができるので、搬送中の媒体2に対する各ヘッド71,72の押圧のタイミングをとることが容易であり、媒体全面への印字や消去を容易に行なうことができる。また、各駆動装置73,74を単独で動作させることができるので、印字ヘッド71と消去ヘッド72の押圧位置を独立して制御可能であり、その結果、厚さや形状の異なるカードや反り気味のカード等に対して均一な印字や消去を行なうことができる。
【0069】
第1の媒体回動部80は、図1に示すように、媒体排出口10と情報書き込み装置70との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第1の媒体回動部80は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路81と、回動搬送路81の両端近傍に設けられた対向ローラ82,83と、回動搬送路81の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸84とを少なくとも有している。
【0070】
回動軸84は、ベルト86を介して回動軸用モータ85で回動させることができ、回動搬送路81の方向を、情報書き込み装置70内の搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体排出口10に向かうように回動させることができる。また、後述するように、廃棄媒体保管部50が媒体排出口10の下側に設けられる場合には、その廃棄媒体搬送部90の搬送路91と一致させるように回動させることができる。また、後述のように、磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下方に設けられる場合には、その磁気媒体リーダライタ120の搬送路121と一致させるように回動させることができる。
【0071】
第1の媒体回動部80を所定の角度回動させるための回動制御は、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、情報書き込み装置70内の搬送路30と一致させる角度と、媒体排出口10に向かう搬送路に一致させる角度の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに複数の角度に制御する場合には、それぞれの角度に精度良く回動させる。第1の媒体回動部80は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第1の媒体回動部80は、回動軸84を中心にして回動するので、回動角度を少なくとも180°以上(360°も可能である)に大きくとることができる。
【0072】
この第1の媒体回動部80は、(A)情報書き込み装置70内の搬送路30から搬送された媒体2を媒体排出口10に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を前記搬送路30と同じ角度に傾斜させておき、その搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して媒体排出口10側の搬送路101と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から対向ローラ82,83により媒体2を送り出す。また、(B)媒体排出口10から搬送された媒体2を搬送路30に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を媒体排出口10側の搬送路101と一致させておき、媒体排出口10から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して搬送路30の角度と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から媒体2を送り出す。
【0073】
第2の媒体回動部60は、図1に示すように、媒体繰り出し部21と情報書き込み装置70との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第2の媒体回動部60は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路61と、回動搬送路61の両端近傍に設けられた対向ローラ62,63と、回動搬送路61の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸64とを少なくとも有している。
【0074】
回動軸64は、ベルト66を介して回動軸用モータ65で回動させことができ、回動搬送路61の方向を、情報書き込み装置70内の搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体回動部60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させることができる。
【0075】
第2の媒体回動部60を所定の角度回動させるための回動制御も上記第1の媒体回動部80と同様、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、情報書き込み装置70内の搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体回動部60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。
【0076】
この第2の媒体回動部60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、次いで所定角度回転して搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体回動部60から対向ローラ62,63により媒体2を搬送路30に送り出す。また、(B)搬送路30から搬送された媒体2を再び搬送路30に搬送して媒体2に印字したり消去したりする場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を搬送路30の角度と一致させておき、搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、第2の媒体回動部60を回動させることなく再び搬送路30に送り出す。
【0077】
媒体発行装置1には、廃棄媒体保管部50や廃棄媒体搬送部90を設けることができる。廃棄媒体保管部50は、図1においては媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管するカセット部材であり、「廃棄媒体保管カセット」ということもできる。
【0078】
廃棄媒体保管部50は、上記のスタッカ20と同様、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部をなすユニットとして着脱可能に設けられている。この廃棄媒体保管部50内には、一定期間使用後の媒体で、設定された廃棄時期に至った媒体が投入され廃棄のために収容される。廃棄される媒体2は、図1に示すように、廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に対して斜めの状態で投入されるので、廃棄媒体保管部50の底面51もほぼ同じ角度の傾斜形状であることが好ましい。なお、廃棄媒体保管部50内には、廃棄媒体が投入されたことを確認するセンサ52が設けられていることが好ましい。センサ52は、図1に示すような機械式のセンサであってもよいし、光学式のセンサであってもよい。
【0079】
廃棄媒体搬送部90は、第1の媒体回動部80と廃棄媒体保管部50との間に設けられ、第1の媒体回動部80から使用済みの媒体を受け取って、廃棄媒体保管部50に搬送するための部材である。廃棄媒体搬送部90が有する搬送手段は、情報書き込み装置70内に設けられているような駆動モータにより駆動する対向ローラ92である。対向ローラ92は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ92の一方のローラに設けた電磁クラッチ94により駆動切断及び接続がなされる。
【0080】
電磁クラッチ94の作動即ち対向ローラ92の駆動タイミングの制御は、搬送路91の両端に設けられた媒体2の位置を検知するセンサ95、96が検知した媒体2の位置に基づき行われるようになっている。即ち、センサ96が媒体2を検知した場合に第1の媒体回動部80から搬送路91への取り込みが開始され、センサ95及び96の両方が検知した場合に搬送路91内の媒体2の存在(一時保留)が検知され、センサ96のみによる検知から完全に検知されなくなった場合に廃棄媒体保管部50への媒体2の投入が判断される。なお、センサ95は媒体2のレバーへの接触を検知するレバー式検知センサであり、センサ96は媒体2による遮光を検知するフォトセンサであることが好ましいが、その他の方法で検知するセンサであってもよい。
【0081】
また、その廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92から廃棄媒体保管部50側には、徐電ブラシ93が設けられていることが好ましい。その徐電ブラシ93は、廃棄媒体の静電気を除去して、廃棄媒体が廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦になってしまうのを防ぐことができるので、廃棄媒体を整然と積み重ねることができる。さらにレバー式検知センサ95のレバーは廃棄媒体の後端を上方から下方に押すように機能するので、除電された廃棄媒体を廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦方向に立たせること無く整然と重ねることができるように作用する。
【0082】
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。この非接触通信部100は、媒体排出口10から挿入された媒体2を搬送する搬送路101を有し、さらに、その搬送路101の長手方向の両端近傍には媒体を挟んで搬送する対向ローラ102,103が設けられている。搬送路101の中央の一面側(図1において上側)には、非接触での通信を行なうアンテナ部104が設けられている。このアンテナ部104は、非接触ICカードとの間で情報通信を行なうことができ、非接触ICカードに情報の送受を行なう。なお、図1に示すように、必要に応じて、媒体2の有無を検知しアンテナ部104との通信の信頼性を確保したり、又は媒体2の表裏の方向を検知したりするための目的でセンサ105が設けられていてもよい。
【0083】
磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80の下に設けられていてもよい。この磁気媒体リーダライタ120は、媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体回動部80の下に設ける代わりに、第2の媒体回動部60の上に設けてもよい。磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80又は第2の媒体回動部60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読み取る磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。
【0084】
クリーニング媒体保持部110は、図1に示すように、第2の媒体回動部60の上方に設けられていてもよい。クリーニング媒体保持部110は、情報書き込み装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60との間で授受可能に保持する。そして、クリーニング媒体114は、第2の媒体回動部60から情報書き込み装置70へ搬送され、印字ヘッド71や消去ヘッド72のクリーニングを行なう。
【0085】
クリーニング媒体保持部110は、第2の媒体回動部60との間でクリーニング媒体114を接受する搬送路111と、クリーニング媒体114を搬送する対向ローラ112が設けられている。対向ローラ112は、後述するB駆動モータ150により駆動される。その駆動力の伝達は、対向ローラ112の一方のローラに設けた電磁クラッチ113により駆動切断及び接続がなされる。搬送路111の両端にはセンサ115,116が設けられており、クリーニング媒体114の保持および送り出しの状況が検知及び制御される。こうしたクリーニング媒体保持部110が収容するクリーニング媒体114により、情報書き込み装置70の印字ヘッド71や消去ヘッド72を定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。
【0086】
電源部130は、図1に示すように、第1の媒体回動部80の下方及び情報書き込み装置70の下方のスペースに設けることができる。この電源部130は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0087】
(駆動システム)
図10は、本発明の情報書き込み装置を備えた媒体発行装置の駆動方式の一例を示す透視側面図である。この媒体発行装置1においては、図10に示すように、主に2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動させている。なお、この媒体発行装置1及び駆動システムは例示であって、本発明に係る情報書き込み装置70が装着される媒体発行装置として限定されるものではない。
【0088】
A駆動モータ140は、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、一時保留部である廃棄媒体搬送部90、第1の媒体回動部80、及び非接触通信部100の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
【0089】
廃棄媒体搬送部90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルト143を介してプーリ141に伝わる。さらに、プーリ141の回転駆動は、それに連接されたギア142により廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92に伝わりこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力の伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送部90における媒体の保持、第1の媒体回動部80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管部50への媒体の送り等が行われる。
【0090】
また、プーリ141にかけられた他のベルト144は、第1の媒体回動部80の回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145と非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリに掛け渡されている。
【0091】
そして、非接触通信部100を駆動するA駆動モータ140の駆動力は、対向ローラ103と同軸配置したプーリにより対向ローラ103及び対向ローラ103とベルトにより連結されて同期回転する対向ローラ102に伝達される。非接触通信部100は、対向ローラ102及び103によって媒体2を第1の媒体回動部80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。
【0092】
次に、プーリ141にかけられたベルト144により第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145に伝達されたA駆動モータ140の駆動力は、第1の媒体回動部80における媒体2の搬送を行なう。即ち、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146を介して対向ローラ82を回転させ、さらにその対向ローラ83は、ベルトとプーリを介して他の対向ローラ83を回転させる。このように第1の媒体回動部80は、A駆動モータ140の駆動力によって、第1の媒体回動部80の対向ローラ82,83を駆動して、媒体2を第1の媒体回動部80内に保持したり、情報書き込み装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管部50との間で媒体の搬送等を行なう。
【0093】
さらに、第1の媒体回動部80の回動は、その回動軸84にベルト86を介して駆動力を送る回動軸用モータ85により行われる。このとき、回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145は、図10に示すように、対向ローラ82にギア146で連結しているとともにベルト144により回転が規制されているので、第1の媒体回動部80を回動させると、搬送駆動プーリ145に対してギア146が相対的に回転して対向ローラ82及び83が回転して搬送路81内で保持された媒体2に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ85による第1の媒体回動部80の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2を搬送するようにA駆動モータ140が搬送駆動プーリ145を駆動する。
【0094】
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図10に示すように、情報書き込み装置70、第2の媒体回動部60、及びクリーニング媒体保持部110の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152が備えるプーリに同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34,34からベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、情報書き込み装置70内での媒体の搬送等が行われる。
【0095】
次に、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の対抗ローラ112を駆動させる。そして、電磁クラッチ113が切断(OFF状態)されている場合は、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持がなされ、電磁クラッチ113が接続(ON状態)されている場合には、B駆動モータ150の回転に応じて、第2の媒体回動部60との間でのクリーニング媒体114の授受が行われる。
【0096】
さらに、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介して、第2の媒体回動部60の搬送駆動プーリ155を回転させる。この搬送駆動プーリ155は、図示しないギアやベルトとプーリを介して対向ローラ63を回転させ、さらにその対向ローラ63は、図示しないベルトとプーリを介して他の対向ローラ62を回転させる。このように、B駆動モータ150の駆動力は、第2の媒体回動部60の対向ローラ62,63を駆動して、媒体2及びクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60内に保持したり、情報書き込み装置70との間でやり取りしたり、新規発行される媒体2を媒体繰り出し部21から受け取ったりする。また、クリーニング媒体保持部110との間でのクリーニング媒体114の授受も行われる。
【0097】
さらに、第2の媒体回動部60の回動は、その回動軸64にベルト66を介して駆動力を送る回動軸用モータ65により行われる。このとき、回動軸64と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ155は、第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145同様に、対向ローラ62等にギア等で連結しているとともにベルト156により回転が規制されているので、第2の媒体回動部60を回動させると、搬送駆動プーリ155に対する相対回転により対向ローラ62及び63が回転して搬送路61内で保持された媒体2(又はクリーニング媒体114)に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ65による第2の媒体回動部60の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2(又はクリーニング媒体114)を搬送するようにB駆動モータ150が搬送駆動プーリ155を駆動する。
【0098】
以上のように、媒体2の搬送用の駆動モータを用いることにより、媒体の更新発行のように、古い媒体と新しい媒体とを装置内で独立に搬送することができるので、処理時間を短縮することができるとともに、ベルトやプーリ等の削減も可能になるので、小型化と低コストかを実現できる。なお、図1及び図10においては、A駆動モータ140とB駆動モータ150の2つを主に用いているが、一つの駆動モータで構成してもよい。なお、一つの駆動モータで構成する場合は、機械的なクラッチ等で設けることが好ましい。
【0099】
(媒体発行方法)
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体回動部60内に搬送した後、第2の媒体回動部60を搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体回動部60から搬送路30上に配置された情報書き込み装置70内に搬送し、情報書き込み装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体回動部80から一端分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0100】
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、搬送路30と同じ角度まで回動した後、情報書き込み装置70内に媒体2を搬送し、その後、搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体回動部60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体回動部60から、装置上位からの指示で再度情報書き込み装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体回動部80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0101】
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りみが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。第1の媒体回動部80に取り込まれた媒体2は、搬送路30には搬送されず、第1の媒体回動部80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送部90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体回動部80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送部90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管部50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
【0102】
次に、媒体廃棄の動作について説明する。廃棄媒体保管部50への媒体2の投入(廃棄)は、廃棄媒体搬送部90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体回動部80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報が読み取られて廃棄媒体であるかが判断される。非接触通信部100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。
【0103】
このとき、廃棄媒体搬送部90に搬送された廃棄媒体は、そこで保持されずに廃棄媒体保管部50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がスタッカ20から発行され、情報書き込み装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持されることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体2が発行されてから、廃棄媒体を、一時保留部としての廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体2を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
【0104】
以上説明したように、本発明の情報書き込み装置によれば、印字ヘッドと消去ヘッドを独立に駆動でき、且つメンテナンスし易いようにそれらの着脱を可能にした情報書き込み装置を提供することができる。また、本発明の媒体発行装置によれば、カード全面への印字や消去を容易にし、且つメンテナンス等の作業が容易であるとともに、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の媒体発行装置の一例を示す透視側面図である。
【図2】本発明に係る情報書き込み装置の実施の形態を示す模式的な透視断面図である。
【図3】図2に示す情報書き込み装置を下方から見たときの図である。
【図4】図2に示す情報書き込み装置の搬送路を上方から見たときの図(搬送ユニットの平面図)である。
【図5】図2に示す情報書き込み装置を上方から見たときの図(ヘッドユニットの平面図)である。
【図6】情報書き込み装置が備える印字ヘッド及び消去ヘッドの押圧持の形態である。
【図7】情報書き込み装置が備える印字ヘッド及び消去ヘッドの待避時の形態である。
【図8】印字ヘッドと消去ヘッドの押圧持及び待避時の検知機構の説明図であり、偏心カムに取り付けられたスリット板とセンサとの位置関係を示す図である。
【図9】印字ヘッド及び消去ヘッドを有するヘッドユニットと搬送路を含む搬送ユニットとを片持ち状態で分離した形態を示す説明図である。
【図10】本発明の媒体発行装置の駆動方式の一例を示す透視側面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 媒体発行装置
2,2a 媒体
10 媒体排出口
11 シャッタ
12 シャッタ用ソレノイド
13 シャッタ機構
20 ホッパー
21 媒体繰り出し部
22 媒体送り出し機構
221 押出部材
222 チェーン
223 スプロケット
224 駆動手段
225 伝動ベルト
23 ゲート部
24 シャッタ
25 スタッカ
26 おもり
27 最上位部
3 搬送ユニット
30 搬送路
31,32,33 対向ローラ
34 プラテンローラ
4 ヘッドユニット
50 廃棄媒体保管部(リジェクトカセット)
51 底面
52 センサ
60 第2の媒体回動部
61 搬送路
62,63 対向ローラ
64 回動軸
65 回動軸用モータ
70 情報書き込み装置
71 印字ヘッド
711 Aヘッドホルダ
72 消去ヘッド
721 Bヘッドホルダ
73 消去ヘッド駆動モータ
737 Bヘッドレバー
74 印字ヘッド駆動モータ
747 Aヘッドレバー
80 第1の媒体回動部
81 搬送路
82,83 対向ローラ
84 回動軸
85 回動軸用モータ
86 ベルト
90 廃棄媒体搬送部
91 搬送路
92 対向ローラ
93 徐電ブラシ
94 電磁クラッチ
95 レバー部材(センサ)
96 センサ
100 非接触通信部
101 搬送路
102,103 対向ローラ
104 アンテナ部
105 センサ
110 クリーニング媒体保持部
111 搬送路
112 対向ローラ
113 電磁クラッチ
114 クリーニング媒体
115,116 センサ
120 磁気媒体リーダライタ
121 搬送路
122 磁気ヘッド
123 対向ローラ
124 電磁クラッチ
130 電源部
140 A駆動モータ
141 プーリ
142 ギア
143,144 ベルト
145 搬送駆動プーリ
146 ギア
150 B駆動モータ
151,152,154 プーリ
153,156 ベルト
155 搬送駆動プーリ
157 ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体が搬送される搬送路と、前記媒体に文字情報を印字する印字ヘッドと、前記媒体の文字情報を消去する消去ヘッドと、前記媒体に対して前記印字ヘッドを押圧又は待避させる印字ヘッド駆動装置と、前記媒体に対して前記消去ヘッドを押圧又は待避させる消去ヘッド駆動装置と、を有する情報書き込み装置であって、
前記印字ヘッド及び前記印字へッド駆動装置を含む印字機構と、前記消去ヘッド及び前記消去へッド駆動装置を含む消去機構とを、前記搬送路の搬送方向前後における中心線に対して対称に配置したことを特徴とする情報書き込み装置。
【請求項2】
前記印字機構と前記消去機構のうち、少なくとも前記印字ヘッドを前記搬送路に進出後退可能に支持する枠体と前記消去ヘッドを前記搬送路に進出後退可能に支持する枠体とが共通の部材であることを特徴とする請求項1に記載の情報書き込み装置。
【請求項3】
前記搬送路には媒体位置検出センサが設けられ、当該媒体位置検出センサは、前記媒体が前記印字ヘッド位置又は前記消去ヘッド位置に搬送されたときに前記印字ヘッド又は前記消去ヘッドが当該媒体に押圧するように、前記印字ヘッド駆動装置及び/又は前記消去ヘッド駆動装置を動作させる信号を送るように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報書き込み装置。
【請求項4】
前記印字機構及び前記消去機構は、前記媒体に対して付勢力を伴う押圧手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報書き込み装置。
【請求項5】
前記印字機構及び前記消去機構を有するヘッドユニットと、前記搬送路を含む搬送ユニットとが対向配置されており、前記ヘッドユニットの前記媒体搬送方向の一端が回動可能に片持ち固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の情報書き込み装置。
【請求項6】
カード状記録媒体を発行する媒体発行装置であって、
装置奥側に配置され、前記媒体を積層して収納するとともに、積層された前記媒体のうち最端部位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有するホッパーと、
装置手前側に前記媒体繰り出し部と対角位置に配置され、前記媒体を装置外へ排出する媒体排出口と、
前記ホッパーと前記媒体排出口の間に傾斜して配置される、請求項1〜5のいずれかに記載の情報書き込み装置とを備えることを特徴とする媒体発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−272630(P2007−272630A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98337(P2006−98337)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】