説明

情報機器用カード

【課題】 カード自体の強度を保持して回路基板等の破壊を防止できると共に、情報機器に装着された状態でSIMカードが抜き取られるという誤操作を防止できる情報機器用カードを提供する。
【解決手段】 本発明のPCカード1は、一端にカード端子部3aが形成され他端にカード他端部3bが形成されたカード本体部3からなる。カード他端部3bの内部には、チップスロット7が設けられている。このチップスロット7は、挿入口7aから差し込まれたSIMカード2を、プリント基板9に電気的接続させるように構成されている。チップスロット7の挿入口7aは、カード他端部3bの外側面上で開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯型コンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の情報機器に差し込まれるPCカード等の情報機器用カードに関し、特に、SIM(Subscriber Identity Module)カード、UIM(User Identity Module)カード又はUSIM(Universal Subscriber Identity Module)カード等のように、識別情報が記録されたチップカードを、PCカード(情報機器用カード)に接続保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のPCカードには、情報機器(携帯型コンピュータ、以下「PC」ともいう。)の機能を拡張し、無線通信用の送受信端末として用いられるものがある。このようなPCカードの一つを複数の者で使用する場合には、加入者ごとの使用を管理するため、個人データや契約電話番号等の識別情報が記録されたSIMカードをPCカードに装着した状態で、そのPCカードをPCのカードスロットから挿入して電気的接続をし、SIMカードの識別情報をPCカードを介して送信するようにしている。
【0003】
ところで、PCカードは、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)の規格に従い、例えばType2の場合、その大きさが幅:54mm×長さ:86.5mm×厚さ:5mmに規定されている。このような極薄のPCカードに、厚さが0.8mm程度のSIMカードを装着する場合、設置スペース等の観点から、種々の設計上の困難を伴う(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
そのため、従来技術においては、PCカードの内部にSIMカードをスライドして挿入するだけの機構を採用し、取り外しの際、SIMカードの露出部分を掴むためその操作性が悪く、また、掴んだ部分に曲げ応力等が発生するため内部破壊を招くおそれがあった。
【0005】
近年、上述した操作性や接続信頼性等の問題を解決するため、イジェクト機構を採用したPCカードが提案されている。このPCカードにおいては、PCカードの中腹部分を切り欠き、その部分に取り付けたイジェクト機構により、SIMカードをPCカードの挿入方向と直交する方向に抜き差しするようにしている。
【非特許文献1】“JIシステムズ”、[平成16年7月6日検索]、インターネット<http://www.jisystems.co.jp/jisys/icsys/icsys.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のPCカードにおいては、その動作中にSIMカードが誤って抜き取られた場合、PCカードの回路基板等が破壊するおそれがあるため、PCカードがPCに装着された状態では、SIMカードが抜き取られるような誤操作からPCカードを保護する必要がある。
【0007】
一方、上記イジェクト機構採用のPCカードにおいては、PCカードの中腹部分にイジェクト機構用の切り欠きが形成されいるため、PCカード自体の強度が弱くなり、これを補強してもPCカードの捩れ等により、この回路基板等を破壊するおそれがあった。また、PCカードの切り欠きやイジェクト機構の挿入口は、SIMカード又はPCカードの回路基板等を、PC内部の電気的ノイズの影響下におくことになり、これによって生じるノイズはシールドによっても十分に対策しきれないという問題もあった。
【0008】
従って、本発明の目的は、カード自体の強度を保持して回路基板等の破壊を防止できると共に、情報機器に装着された状態でチップカードが抜き取られるという誤操作を防止できる情報機器用カードを提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、情報機器の内部で生じる電気的ノイズの影響を受けにくい情報機器用カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一枚板状の情報機器用カード、又は拡張部付きの情報機器用カードに適用されるもので、前者の場合、情報機器と電気的接続するカード端子部が一端に形成され該情報機器のカードスロット内に装着されるカード本体部を備え、チップカードを接続保持する情報機器用カードにおいて、前記カード本体部の他端部には、前記チップカードを装着するチップスロットが設けられ、該チップスロットの挿入口は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットの挿入口内に配置されており、前記カード本体部には、前記チップカードを排出するための操作部が設けられ、該操作部は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットで遮蔽されるように配置されていることを特徴とする情報機器用カードを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0011】
また、本発明は、拡張部付きの情報機器用カードの場合、情報機器と電気的接続するカード端子部が一端に形成され該情報機器のカードスロット内に装着されるカード本体部と、該カード本体部が装着された状態で該カードスロットから張り出したカード拡張部とを備え、チップカードを接続保持する情報機器用カードにおいて、前記カード拡張部には、前記チップカードを装着するチップスロットが設けられ、該チップスロットの挿入口は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に前記カードスロットの挿入口に通じる外側面に配置されており、前記カード本体部には、前記チップカードを排出するための操作部が設けられ、該操作部は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットで遮蔽されるように配置されていることを特徴とする情報機器用カードを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一枚板状の情報機器用カード又は拡張部付きの情報機器用カードの何れであっても、カード本体部の他端部又はカード拡張部に、チップカードを装着するチップスロットを設け、この挿入口をカード本体部の他端部の端面又はカード拡張部の外側面に配置することにより、チップカードを差し込むだけで容易に装着できると共に、カード本体部に切り欠きを設けずにカード自体の強度を保持して回路基板等の破壊を防止できる。
【0013】
また、本発明によれば、情報機器用カードが情報機器のカードスロット内に装着された場合、チップカードを排出させる操作部を、情報機器のカードスロットで遮蔽することにより、情報機器カードの装着状態では、チップカードが情報機器用カードから抜き取られるという誤操作を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の情報機器用端末の好ましい一実施形態(第1実施形態)を図1及び図2を参照して説明する。
【0015】
図1(a)は、本実施形態(第1実施形態)のPCカード(情報機器用カード)の概略構成をSIMカード(チップカード)が装着された状態で示す斜視図、図1(b)は、同PCカードをSIMカードが排出された状態で示す斜視図である。図2は、PC(情報機器)に装着された本施形態のPCカードをSIMカードを排出した状態で示す断面図である。
【0016】
図1又は図2に示すように、本実施形態のPCカード1は、一枚板状のPCカードであり、SIMカード2を接続保持し、PC10のPCスロット(カードスロット)11に装着された状態で、このPC10を無線通信端末としてその機能を拡張するものである。SIMカード2は、識別情報が記録された回路基板(図示しない)を内蔵し、裏面に接続端子2aが形成された矩形カード状のものである。
【0017】
図1(a)(b)に示すように、本実施形態のPCカード1は、一端にカード端子部3aが形成され他端にカード他端部3bが形成されたカード本体部3からなる。
【0018】
カード本体部3は、金属薄板の上板31及び下板32が重ね合わせた状態で樹脂製フレーム枠に組み込まれた薄型の矩形ケース状のものであり、プリント基板9等が内蔵されている。ここに、カード本体部3の「上板」とは、PCカード1がPCスロット11に装着された場合、PC10の操作側の面をいい、カード本体部3の「下面」とは、PC10の設置側の面をいう。
【0019】
プリント基板9の一端には、PCカードバス(32ビット)用のカード端子部3aが形成されている。このカード端子部3aは、カード本体部3の一端側(PCカード1の挿入側)から露出し、PCスロット11の奥部に取り付けられたPC端子部(図示しない)と電気的接続するようになっている。
【0020】
本実施形態の場合、図1(a)(b)又は図2に示すように、カード他端部3bの内部には、チップスロット7が設けられている。このチップスロット7は、挿入口7aから差し込まれたSIMカード2を、チップスライダ25により装着してプリント基板9の上方に配置し、この状態で、SIMカード2の接続端子2aをプリント基板9上のバネ性端子9aに電気的接続させるものである。また、カード本体部3には、イジェクトスイッチ(操作部)20が設けられている。このイジェクトスイッチ20は、SIMカード2を挿入口7aから排出するものである。以下、このようなチップスロット7及びイジェクトスイッチ20の構成を具体的に述べる。
【0021】
図2に示すように、カード他端部3bは、上板31及び下板32と、これらの間に配設されたゲート部21とからなる。チップスロット7の挿入口7aは、ゲート部21を貫通して形成され、カード他端部3bの外側面(カード端子部3a側と反対側の端面)上で開口している。上板31の下面には、前方ストッパ24及び後方ストッパ23が、前後(カード端子部3a側とカード他端部3b側との方向)に一定間隔をおいて並んで配設されている。前方ストッパ24及び後方ストッパ23の下部には、チップスライダ25が配設されている。このチップスライダ25は、断面L字の板状に形成され、挿入口7aから挿入されたSIMカード2の先端部分とぴったり係合するようになっている。
【0022】
そして、チップスライダ25は、前方ストッパ24及び後方ストッパ23の下面に当接してこれらの案内により、SIMカード2の挿入方向A−又は抜取方向A+に往復移動可能に配置されている。
【0023】
一方、チップスライダ25の上面には、イジェクトスイッチ20が固着されている。このイジェクトスイッチ20は、断面略T字状の部材であり、チップスライダ25を移動させるものである。上板31には、スイッチ用凹部3cが形成されている。このスイッチ用凹部3cは、上記前方ストッパ24及び後方ストッパ23に挟まれた空隙部分でイジェクトスイッチ20を収容し、イジェクトスイッチ20の上面を上板31からはみ出させずこれより低い位置に配置するようになっている。
【0024】
そして、イジェクトスイッチ25は、スイッチ用凹部3c内でSIMカード2の挿入方向A−又は抜取方向A+に往復移動するようになっており、これに伴って、チップスライダ25が連動するようになっている。
【0025】
また、チップスライダ25は、SIMカード2の挿入に伴って、この挿入方向A−に移動し、イジェクトスイッチ20が前方ストッパ25に当接することにより、停止するようになっている。このようなチップスライダ25の停止位置は、SIMカード2の後端部をチップスロット7の挿入口7aからはみ出さないように設定されている。
【0026】
次に、本実施形態のPCカード1の使用態様又は作用を説明する。
【0027】
図1(a)(b)に示すように、SIMカード2を、PCカード1に装着する際、カード他端部3bの挿入口7aから挿入し、チップスロット7内に装着する。この場合、チップスロット7は、SIMカード2の挿入に伴って、挿入方向A−に移動し、これと連動して、イジェクトスイッチ20が挿入方向A−に移動する。そして、図2に示すように、このようなPCカード1を、PC10のPCスロット11内に装着した場合、チップスロット7の挿入口7aは、PCスロット11の挿入口11a内で露出して配置されており、イジェクトスイッチ20は、PCスロット11の上面で遮蔽されている。
【0028】
以上述べたように、本実施形態によれば、PCカード1がPCスロット11内に装着された場合、SIMカード2を排出させるイジェクトスイッチ20を、このPCスロット11で遮蔽するようにしたことから、PCカード1の装着状態では、SIMカード2がPCカード1から抜き取られるという誤操作を防止できる。
【0029】
特に、この点について、チップスライダ25をイジェクトスイッチ20と連動させるようにしたことから、イジェクトスイッチ20の操作を伴わなければ、チップスライダ25をSIMカード2の抜取方向A+に移動できないため、PCカード1の装着状態におけるSIMカード2の抜取防止を確実にすることができ、また、SIMカード2をチップスロット7に装着した場合、SIMカード2の後端部がチップスロット7の挿入口7aからはみ出ないようにしたことから、SIMカード2を摘んで抜取ることも防止できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、チップスロット7の挿入口7aをカード他端部3bの端面上に配置したため、SIMカード2を差し込むだけで容易に装着できると共に、カード本体部3に切り欠きを設けずにカード自体の強度を保持して回路基板等の破壊を防止できる。
【0031】
さらに、本実施形態によれば、PCカード1がPCスロット11内に装着された状態で、チップスロット7の挿入口7aがPCスロット11の挿入口11a内で露出しているため、チップスロット7内にSIMカード2が装着されているか否か容易に目視することができる。
【0032】
次に、本発明の情報機器用端末の好ましい他の一実施形態(第2実施形態)を図3を参照して説明する。
【0033】
図3は、本実施形態(第2実施形態)のPCカード(情報機器用カード)の概略構成をSIMカード(チップカード)が排出された状態で示す斜視図である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のPCカード1Aは、カード本体部3と、カード拡張部4とからなる、拡張部付きのPCカードであり、主に、カード拡張部4に上記チップスロット7が設けられている点が上記第1実施形態と異なっている。以下、この点について詳述し、その他の構成等については、上記第1実施形態と同符号を付してその説明を省略する。
【0035】
カード拡張部4は、カード本体部3の他端からその長手方向(SIMカード2の抜取方向)A+に延出した肉厚のケース体であり、カード本体部3から跨ったプリント基板9の他端部分や、内部アンテナ(図示しない)が内蔵されている。このようなカード拡張部4は、カード本体部3がPCスロット11内に装着された状態で、このPCスロット11の挿入口から張り出して配置されるようになっている。
【0036】
本実施形態の場合、カード拡張部4の内部には、上記チップスロット7が配設され、このチップスロット7は、SIMカード2の挿入方向A−に延びてカード本体部3に跨っている。このカード本体部3の内部には、上記チップスライダ25が配設され、これに上記イジェクトスイッチ20が固着されている。
【0037】
チップスロット7の挿入口7aは、カード拡張部4の外側面(カード端子部3aと反対側の側面)上で開口しており、カード本体部3がPCスロット11内に装着された場合、PC10の端面上におけるPCスロット11の挿入口へ通じる位置に配置されるようになっている(図2参照)。
【0038】
また、本実施形態の場合、カード拡張部4の上面には、チェック板4aが嵌め込まれている。このチェック板4aは、透明又は半透明に形成されてチップスロット7の上方に配置されたもので、チップスロット7にSIMカード2が装着された場合、このSIMカード2を透かすようになっている。
【0039】
以上述べたように、本実施形態によれば、カード拡張部4に透明又は半透明のチェック板4aを設けてSIMカード2を透かすようにしたため、チップスロット7にSIMカード2が装着されているか否か容易に認知することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、カード拡張部4の端面上におけるチップスロット7の挿入口7aを、PC10の端面上におけるPCスロット11の挿入口11aへ通じる位置に配置したことから、カード本体部3のプリント基板9と近接する高さでこれにSIMカード2を載置できるため、プリント基板9の接続端子の厚さを小さくでき、これに伴って、カード拡張部4の厚さをも小さくできる。
【0041】
その他のPCカード1Aの構成及び作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は第1実施形態のPCカードの概略構成をSIMカードが装着された状態で示す斜視図、(b)は同PCカードをSIMカードが排出された状態で示す斜視図である。
【図2】PCに装着された第1実施形態のPCカードがSIMカードを排出した状態を示す断面図である。
【図3】第2実施形態のPCカードの概略構成をSIMカードが排出された状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
2 SIMカード(チップカード)
3 カード本体部
3a カード端子部
3b カード他端部
4 カード拡張部
7 チップスロット
7a チップスロットの挿入口
10 PC(情報機器)
11 カードスロット
11a カードスロットの挿入口
20 イジェクトスイッチ(操作部)
A+ SIMカードの抜取方向
A− SIMカードの挿入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報機器と電気的接続するカード端子部が一端に形成され該情報機器のカードスロット内に装着されるカード本体部を備え、チップカードを接続保持する情報機器用カードにおいて、
前記カード本体部の他端部には、前記チップカードを装着するチップスロットが設けられ、該チップスロットの挿入口は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットの挿入口内に配置されており、
前記カード本体部には、前記チップカードを排出するための操作部が設けられ、該操作部は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットで遮蔽されるように配置されていることを特徴とする情報機器用カード。
【請求項2】
情報機器と電気的接続するカード端子部が一端に形成され該情報機器のカードスロット内に装着されるカード本体部と、該カード本体部が装着された状態で該カードスロットから張り出したカード拡張部とを備え、チップカードを接続保持する情報機器用カードにおいて、
前記カード拡張部には、前記チップカードを装着するチップスロットが設けられ、該チップスロットの挿入口は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に前記カードスロットの挿入口に通じる外側面に配置されており、
前記カード本体部には、前記チップカードを排出するための操作部が設けられ、該操作部は、前記カード本体部が前記カードスロット内に装着された場合に該カードスロットで遮蔽されるように配置されていることを特徴とする情報機器用カード。
【請求項3】
前記カード拡張部は、その一部又は全部が前記チップカードを透かすように透明又は半透明に形成されていることを特徴とする請求項2記載の情報機器用カード。
【請求項4】
前記操作部は、前記チップカードの挿入方向又は抜取方向に前記チップスロットと連動して往復移動するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の情報機器用カード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−72720(P2006−72720A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255645(P2004−255645)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】