説明

情報表示制御装置及び情報表示制御方法及びプログラム

【課題】 CGで表示する物体が遠い距離にあってもくっきり見えることによる違和感を低減させることができ、さらに、視力による見え方が実世界と近似するように表現する。
【解決手段】 本発明は、視力に対応する、オブジェクトと視点間の距離に対するオブジェクトのボケ量補正パラメータを格納するボケ量補正パラメータ記憶手段と、視点からオブジェクトまでの距離を算出する距離算出手段と、指定された視力における距離に対応するオブジェクトのボケ量補正パラメータを所定の計算式により求め、表示サイズパラメータ記憶手段に格納する変更するスケール変更手段と、ボケ量補正パラメータ記憶手段から取得したボケ量補正パラメータに基づいてオブジェクトのボケの度合いを変更するボケ表現手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示制御装置及び情報表示制御方法及びプログラムに係り、特に、表示装置に3次元コンピュータグラフィックス(CG)を表示する際に、被写界深度を考慮した情報表示制御装置及び情報表示制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
実空間に物体を設置する際、設置後の様子を事前に検討するための技法の1つとして、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)が利用されている。3DCG空間の投影面に近い物体は精細に表現し、遠い物体はぼかして表現する手法が知られている(例えば、特許文献1)。当該方法によるオブジェクトと視点間の距離に対応させて描画した例を図7に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−43394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、3DCG空間内における投影面からの遠近によってボケ具合を変化させていたが、3DCG空間内のボケは実際の見え方を十分に反映していなかった。
【0005】
デジタルサイネージの価値は、視聴者に視聴されることによって初めて生じる。そのため、設置されたディスプレイが十分な視認性を有するように、ディスプレイの大きさや設置位置や設置角度を適切に選ぶことが重要であり、事前に設置後の様子を検討するために3DCGによるパース図などが用いられている。デジタルサイネージが有効に機能するためには、視聴者の視野にディスプレイが入っているだけではなく、視聴者が画面を鮮明に見られる必要があるが、従来の手法では、3DCG空間におけるディスプレイの位置とオブジェクトの大きさは表現されているものの、視力を考慮したボケ具合は考慮されておらず、十分な検討を行えなかった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、3DCGで表示した物体も実世界の物体と同様に見えるようになり、CGで表示する物体が遠い距離にあってもくっきり見えることによる違和感を低減させつつ、視力による見え方が実世界と近似するように表現することが可能な情報表示制御装置及び情報表示制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0008】
本発明(請求項1)は、3次元コンピュータグラフィックス空間内における投影面からの遠近によってオブジェクトのボケ具合を表現する情報表示制御装置であって、
視力に対応する、オブジェクトと視点間の距離に対するオブジェクトのボケ量補正パラメータを格納するボケ量補正パラメータ記憶手段60と、
視点から前記オブジェクトまでの距離を算出する距離算出手段10と、
指定された視力における距離に対応するオブジェクトのボケ量補正パラメータを所定の計算式により求め、表示サイズパラメータ記憶手段に格納する変更するスケール変更手段と、
ボケ量補正パラメータ記憶手段から取得したボケ量補正パラメータに基づいてオブジェクトのボケの度合いを変更するボケ表現手段と、を有する。
【0009】
図2は、本発明の原理を説明するための図である。
【0010】
本発明(請求項2)は、3次元コンピュータグラフィックス空間内における投影面からの遠近によってオブジェクトのボケ具合を表現する情報表示制御方法において、
視力に対応する、オブジェクトと視点間の距離に対するオブジェクトのボケ量補正パラメータを格納するボケ量補正パラメータ記憶手段を有する装置が、
視点から前記オブジェクトまでの距離を算出する距離算出ステップ(ステップ1)と、
指定された視力における距離に対応するオブジェクトのボケ量補正パラメータを所定の計算式により求め、表示サイズパラメータ記憶手段に格納する変更するスケール変更ステップ(ステップ2)と、
ボケ量補正パラメータ記憶手段から取得したボケ量補正パラメータに基づいてオブジェクトのボケの度合いを変更するボケ表現ステップ(ステップ3)と、を行う。
【0011】
本発明(請求項3)は、請求項1に記載の情報表示装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための情報表示プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように本発明によれば、3DCGで表示する際に、距離によりオブジェクトのボケ具合を調整することに加えて、視力によりボケ具合を変化させることにより、オブジェクトと視点が同じ距離であっても、視力が良い場合にははっきり見えるようにし、視力が劣る場合には、ボケて見えるようにすることで、実世界と同様に表現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の原理を説明するための図である。
【図3】距離における見え方の違いを示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態における情報表示制御装置の構成図である。
【図5】本発明の一実施の形態における情報表示制御装置のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態における視力に応じた描画の例である。
【図7】距離に応じた描画の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本実施の形態では、3DCGに視点からオブジェクトまでの距離を反映した表現方法について説明する。
【0016】
通常3DCG空間内のオブジェクトは、特許文献1等の方法により、視点とオブジェクト間の距離とそのスケールが対応して描画されるが、本発明では、これに視力と距離に応じたボカシ効果を加える。距離による見え方の違いの例を図3に示す。同図において、一部が切れた円は「ランドルト環」を表している。これは、対象オブジェクトに近くなるほど、また、視力の良い人ほどはっきり見ることができるため、以下に示すボケ量を決める目安として用いる。当該「ランドルト環」は、白地に描かれた黒色の円環であり、一部だけ輪が開いている。ここで、『視力』とは、識別可能な最小視角の逆数で表され、1分の視角を識別できる能力を視力1.0という。
【0017】
図4は、本発明の一実施の形態における情報表示装置の構成を示す。
【0018】
同図に示す情報表示装置は、距離調整部10、スケール変更部20、ボケ表現部30、描画制御部40、パラメータ入力部50、パラメータ記憶部60、表示用画像ファイル70、ディスプレイ80から構成される。
【0019】
表示用画像ファイル70には、オブジェクト、背景、視点を表す人物等が格納されているものとする。
【0020】
パラメータ入力部50から、視力、ランドルト環の規定値(デフォルト)を入力する。
【0021】
距離算出部10は、3DCG空間画像ファイル70の3DCG空間における視点から各オブジェクトまでの距離を計算する。このとき、3DCG空間画像ファイル70の画像を描画部40に表示して、視点とオブジェクトを設定し、その間の距離を求め、当該距離算出部10内のメモリ(図示せず)に格納する。または、パラメータ入力部50から距離を取得するようにしてもよい。
【0022】
スケール変更部20は、距離算出部10のメモリ(図示せず)に格納されている各オブジェクト毎の距離(単位:m)を取得し、パラメータ入力部50から指定された視力を用いて以下の式から、ランドルト環の直径、太さ、環の開いている幅を求め、これをボケ量補正パラメータとしてパラメータ記憶部60に格納する。
【0023】
直径=7.5mm÷視力(測定距離÷5)
太さ=1.5mm÷視力(測定距離÷5)
環の開いている幅=1.5mm÷視力×(測定距離÷5)
ボケ表現部30は、パラメータ記憶部60から、ボケ量補正パラメータを取得して、スレンズボケを表現する既存のアルゴリズムを利用して、画像ファイル70のオブジェクト(デジタルサイネージのコンテンツ)にボケ表現を加えて描画制御部40に出力する。
【0024】
描画制御部40は、ボケ表現部30から取得した拡大または縮小され、ボケ表現が加えられたオブジェクトをディスプレイ80に表示する。
【0025】
図5は、本発明の一実施の形態における情報表示装置の動作のフローチャートである。
【0026】
ステップ101) 距離計算部10は、3DCG空間画像ファイル70の画像を描画部40に表示して、視点位置をクリックするなどして、1つまたは複数の視点を決定し、当該視点とオブジェクトまでの距離を求める、または、パラメータ入力部50から距離を取得し、当該距離計算部10内のメモリ(図示せず)に格納する。
【0027】
ステップ102) スケール変更部20は、距離計算部10のメモリ(図示せず)から距離を取得し、当該距離に基づいて、上記の式からランドルト環の直径、太さ、環の開いている幅をボケ量補正パラメータとして求め、パラメータ記憶部60に格納する。例えば、距離計算部10から取得した距離が『5m』であり、指定されている視力が「1.0」の場合は、ランドルト環のサイズ情報として、ランドルト環の直径(7.5mm)、線の太さ(1.5mm)、環の開いている幅(1.5mm)を求め、パラメータ記憶部60に格納する。
【0028】
ステップ103) ボケ表現部30は、パラメータ記憶部60からボケ量補正パラメータを取得して、3DCG空間画像ファイル70のオブジェクトの画像に既存のアルゴリズムに適用してボケ表現を加える。なお、当該アルゴリズムは何らかのパラメータでボケ量を調整できるものであればよい。
【0029】
ステップ104) 描画制御部40は、ボケ表現が加えられた画像をディスプレイ80に表示する。図6は、2種類の視力(0.5と1.0)と、オブジェクトと1つの視点間の距離の値が設定されている場合の描画の例を示している。
【0030】
上記のように、本発明は、視点からオブジェクトの距離に応じて、オブジェクトの見え具合(ボケ具合)を制御のみならず、これに人間の視力を反映した表現手法を導入する。即ち、視点からオブジェクトまでの距離が同じ場合であっても、視力がよければ、図6の左側のように見え、悪ければ図6の右のように見えるため、ディスプレイ面に対する視力に応じて再現することができる。
【0031】
上記の実施の形態における情報表示制御装置の構成要素の動作をプログラムとして構築し、情報表示制御装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0032】
また、構築されたプログラムをハードディスクや、フレキシブルディスク・CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0033】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 距離算出手段、距離算出部
20 スケール変更手段、スケール変更部
30 ボケ表現手段、ボケ表現部
40 描画制御部
50 パラメータ入力部
60 ボケ量補正パラメータ記憶手段、パラメータ記憶部
70 3DCG空間画像ファイル
80 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元コンピュータグラフィックス空間内における投影面からの遠近によってオブジェクトのボケ具合を表現する情報表示制御装置であって、
視力に対応する、オブジェクトと視点間の距離に対するオブジェクトのボケ量補正パラメータを格納するボケ量補正パラメータ記憶手段と、
視点から前記オブジェクトまでの距離を算出する距離算出手段と、
指定された視力における前記距離に対応するオブジェクトのボケ量補正パラメータを所定の計算式により求め、前記表示サイズパラメータ記憶手段に格納する変更するスケール変更手段と、
前記ボケ量補正パラメータ記憶手段から取得したボケ量補正パラメータに基づいてオブジェクトのボケの度合いを変更するボケ表現手段と、
を有することを特徴とする情報表示制御装置。
【請求項2】
3次元コンピュータグラフィックス空間内における投影面からの遠近によってオブジェクトのボケ具合を表現する情報表示制御方法において、
視力に対応する、オブジェクトと視点間の距離に対するオブジェクトのボケ量補正パラメータを格納するボケ量補正パラメータ記憶手段を有する装置が、
視点から前記オブジェクトまでの距離を算出する距離算出ステップと、
指定された視力における前記距離に対応するオブジェクトのボケ量補正パラメータを所定の計算式により求め、前記表示サイズパラメータ記憶手段に格納する変更するスケール変更ステップと、
前記ボケ量補正パラメータ記憶手段から取得したボケ量補正パラメータに基づいてオブジェクトのボケの度合いを変更するボケ表現ステップと、
を行うことを特徴とする情報表示制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報表示装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための情報表示プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−170642(P2011−170642A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34093(P2010−34093)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】