説明

情報表示装置および情報表示制御プログラム

【課題】 ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定すること。
【解決手段】 情報表示装置1は、ディスプレイコントローラ50の電源が投入される際に、表示される画像のファイルヘッダ部分を参照し、その画像が有する階調に応じて、ディスプレイコントローラ50の表示モードを設定する。そのため、ディスプレイコントローラ50は、常に、ディスプレイ60に描画する画像の階調に合わせた表示階調で起動される。したがって、不必要に高階調の表示モードに設定されることにより、表示速度が低下したり、低階調の画像を高階調に変換する必要が生ずることにより、処理効率の低下あるいは消費電力の増加を招くといった事態を回避することができる。即ち、本発明によれば、ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示階調を切り換え可能なディスプレイを有する情報表示装置およびその情報表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示階調を多段階に切り換えることが可能なディスプレイを有する情報表示装置が知られており、例えば、必要に応じてモノクロ2階調の表示モードとモノクロ16階調の表示モードとのいずれかに切り換えて情報の表示を行うといったことが行われている。
このような情報表示装置においては、一般に、ディスプレイの表示モードを切り換える場合、ディスプレイコントローラの初期化(リセット)を行う必要がある。そのため、CRT(Cat hode Ray Tube)や非記憶性の液晶ディスプレイ等において表示モードを切り換える場合には、表示されている情報が消去されることとなる。
【0003】
一方、記憶性の液晶ディスプレイや電気泳動ディスプレイ等においては、ディスプレイコントローラがリセットされた場合にも、表示されていた情報が保持されることから、情報の表示中においても、比較的柔軟に表示モードを変更することが可能である。
ここで、ディスプレイコントローラがいずれの表示モードに設定するかについては、一般に、リセット時に明示的な指定が行われている場合には指定された表示モードとし、いずれの表示モードに設定すべきか不明な場合には、最も高階調の表示モードに設定することとしている。
【0004】
なお、画像の表示におけるモードを設定する技術については、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平10−232669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディスプレイコントローラにおいては、より低階調の表示モードの場合の方が、概して高速に画像を表示することができる。
そのため、ディスプレイコントローラがいずれの表示モードに設定すべきか不明である場合に、最も高階調の表示モードに設定すると、ディスプレイに対する画像の書き込み時間が増大し、表示速度が低下する事態を招くこととなる。
【0006】
また、表示対象の画像がより低階調であり、高階調の表示モードとする必要がないにも関わらず、高階調の表示モードとされた場合、低階調の画像を高階調の画像に一旦変換し、サイズがより増大したデータをプロセッサ等からディスプレイコントローラに転送する必要がある。それにより、不要な処理が発生し、処理効率の低下あるいは消費電力の増加を招くこととなる。
【0007】
したがって、ディスプレイコントローラにおいては表示階調を適切に設定する必要がある。
また、上述のような事態は、ディスプレイの表示モードを柔軟に変更できる記憶性の液晶ディスプレイ等においては、特に大きな問題となる。
なお、特許文献1に記載された技術は、表示対象となる画像の画像タイプ(パレットを用いて色が表現された画像および通常のRGB画像)に応じて、表示する処理のモードを切り換える技術であり、ディスプレイコントローラにおける表示階調を適切に設定する場合に適用することができるものではない。
【0008】
本発明の課題は、ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明は、
表示階調のモードを複数備えるディスプレイ(例えば、図1のディスプレイ60)と、該ディスプレイにおける表示階調のモード変更時にリセットを伴うディスプレイコントローラ(例えば、図1のディスプレイコントローラ50)とを含む情報表示装置であって、前記ディスプレイコントローラがリセットされる際に、表示対象となるデータが有する表示階調を検出する表示階調検出手段(例えば、図1のCPU10)と、前記表示階調検出手段によって検出された表示階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定する表示階調設定手段(例えば、図1のCPU10)とを含むことを特徴としている。
【0010】
このような構成により、ディスプレイがリセットされる際に、表示対象となるデータの表示階調が検出され、ディスプレイコントローラは、その表示階調に応じた表示階調のモードに設定される。
そのため、ディスプレイコントローラが不必要に高階調の表示モードに設定されることにより、表示速度が低下したり、低階調の画像を高階調に変換する必要が生ずることにより、処理効率の低下あるいは消費電力の増加を招くといった事態を回避することができる。
【0011】
したがって、ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定することが可能となる。
なお、ここで言うリセットには、明示的な指示が入力された場合のリセットの他、電源投入プロセスにおいて行われるリセットも含むものである。
また、前記ディスプレイは、表示している情報を電力の供給を受けることなく不揮発的に保持する記憶性の表示装置であることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、電力の供給を行わなくても表示された情報が保持されるディスプレイにおいて、ディスプレイおよびディスプレイコントローラの電源を切断した場合でも、以後、電源が再投入される際に、ディスプレイコントローラにおける表示階調を適切に設定することが可能となる。
また、前記ディスプレイに前記ディスプレイコントローラが表示対象となるデータの画像を描画する際に、該ディスプレイおよびディスプレイコントローラに電源を投入すると共に、画像の描画が終了することに対応して電源を切断する電源制御手段(例えば、図1のCPU10および電源コントローラ20)をさらに備えることを特徴としている。
【0013】
このような構成により、ディスプレイおよびディスプレイコントローラの動作が不要な場合に、電源制御手段によって可能な限り電源の切断を行うことができると共に、電源が再投入される際に、表示階調を適切に設定することができる。即ち、消費電力を低減しつつ、ディスプレイコントローラにおける表示階調を適切に設定することが可能となる。
また、表示対象となるデータが、前記ディスプレイの1画面分に対応するデータに区分されていると共に、前記ディスプレイコントローラが該1画面分のデータを前記ディスプレイに描画する毎に、前記表示階調検出手段が、表示対象となる1画面分のデータが有する表示階調を検出し、前記表示階調設定手段が、前記表示階調検出手段が検出したデータの階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定することを特徴としている。
【0014】
このような構成により、ページ単位で表示が行われる電子ブックのようなコンテンツを表示する場合に、ページの書き換えが行われる毎にディスプレイコントローラにおいて適切な表示階調を設定することが可能となる。
また、本発明は、
表示階調のモードを複数備えるディスプレイと、該ディスプレイにおける表示階調のモード変更時にリセットを伴うディスプレイコントローラとを含む情報表示装置を制御するための情報表示制御プログラムであって、前記ディスプレイコントローラがリセットされる際に、表示対象となるデータが有する表示階調を検出する表示階調検出機能と、前記表示階調検出機能によって検出された表示階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定する表示階調設定機能とをコンピュータに実現させることを特徴としている。
【0015】
このように、本発明によれば、ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明に係る情報表示装置の実施の形態を説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、本発明に係る情報表示装置1の機能構成を示すブロック図である。
なお、ここでは、情報表示装置1が電子ブックのビューワ端末である場合の例について説明する。
【0017】
図1において、情報表示装置1は、CPU(Central Processing Unit)10と、電源コントローラ20と、フラッシュROM30と、メモリ40と、ディスプレイコントローラ50と、ディスプレイ60と、メモリカードコントローラ70と、メモリカード80と、バスコントローラ90とを含んで構成され、ディスプレイ60およびメモリカード80を除く各部は、バスによって接続されている。また、これらの各部には、不図示のバッテリから電力が供給されている。
【0018】
CPU10は、情報表示装置1全体を制御するもので、不図示の入力ボタンから入力される各種の指示信号に従って、フラッシュROM30に記憶されたオペレーティングシステムプログラム、あるいは、画像表示処理プログラム(後述)等の各種アプリケーションプログラムを読み出して実行する。そして、CPU10は、各種処理結果をフラッシュROM30あるいはメモリ40に格納する。
【0019】
さらに、CPU10は、情報表示装置1に対する入力操作が行われた場合等、動作の必要が生じた場合にのみ電源を投入して処理を行い、動作が不要な場合には、電源を切断した状態とするように電源コントローラ20を介して電力制御を行う。例えば、CPU10は、電子ブックの次のページを表示する指示がボタンを介して入力された場合、メモリカードコントローラ70、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60に電源を投入する指示を電源コントローラ20に出力する。そして、CPU10は、メモリカード80に記憶された電子ブックの所定コンテンツを読み出してディスプレイ60に描画させた後、メモリカードコントローラ70、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60の電源を切断する指示を電源コントローラ20に出力する。
【0020】
電源コントローラ20は、CPU10の指示に従って、情報表示装置1の各部に対するバッテリからの電力の供給を制御する。例えば、電源コントローラ20は、電子ブックの次のページを表示する指示がボタンを介して入力されることにより、CPU10からメモリカードコントローラ70、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60の電源を投入する指示が入力されると、これらの各部に電源を投入し、続いてCPU10から電源を切断する指示が入力されると、これらの各部の電源を切断する。
【0021】
フラッシュROM30は、情報表示装置1において実行されるオペレーティングシステムプログラム、あるいは、画像表示処理プログラム(後述)等の各種アプリケーションプログラムを記憶している。また、フラッシュROM30は、表示中の電子ブックのページ等、情報表示装置1の電源が切断された場合にも保持しておく必要がある各種データを記憶する。
【0022】
メモリ40は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)あるいはSDRAM(Synchronous DRAM)といった半導体メモリによって構成され、CPU10が処理を実行する際にワークエリアを形成すると共に、その処理結果を記憶する。
ディスプレイコントローラ50は、ディスプレイ60を直接制御するものであり、CPU10によって入力される描画命令を解釈し、メモリカード80に記憶されているコンテンツを読み出して、表示が指示された電子ブックのページをディスプレイ60に描画する。
【0023】
また、ディスプレイコントローラ50は、CPU10が画像表示処理プログラムを実行することにより、電源投入時にディスプレイの表示モードが16階調あるいは2階調のいずれかに設定される。そして、ディスプレイコントローラ50は、CPU10によって設定された階調でコンテンツの所定ページをディスプレイ60に描画する。
ディスプレイ60は、表示している情報を不揮発的に保持する記憶性のディスプレイである。
【0024】
なお、ここではディスプレイ60がコレステリック液晶ディスプレイであるものとして説明するが、電気泳動ディスプレイやツイストボール型ディスプレイ等、他の記憶性ディスプレイを用いることや、非記憶性のディスプレイを用いることも可能である。
メモリカードコントローラ70は、メモリカード80に対するデータの読み出しあるいは書き込みを行うインターフェース回路であり、CPU10の指示に従って、メモリカードに記録された電子ブックのコンテンツを読み出す等の処理を行う。
【0025】
メモリカード80は、情報表示装置1において表示される電子ブックのコンテンツを記憶する記憶媒体である。
図2は、メモリカード80に記憶されるコンテンツのファイルフォーマットを示す模式図である。
図2において、メモリカード80が記憶する電子ブックのコンテンツは、ファイルの属性に関する情報であるヘッダ部分と、ファイルの実データであるボディ部分とによって構成されている。
【0026】
本発明に係る情報表示装置1は、ディスプレイコントローラ50の電源投入に際し、図2に示すファイルフォーマットのうち、ヘッダ部分に含まれる“階調数”のデータを取得し、その階調数に基づいてディスプレイコントローラ50の表示階調のモードを設定する。
図1に戻り、バスコントローラ90は、バスに接続された各部によるバスアクセスを調停する。
【0027】
次に、動作を説明する。
本実施の形態における情報表示装置1は、上述の構成の下、入力操作が行われた場合等、動作が必要な場合にのみ所定部分に電源が投入され、必要な動作が終了すると、再び電源が切断された状態となる。そして、情報表示装置1は、表示する画像を変更させる入力操作行われた場合、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60に電源を投入し、必要な動作が終了すると、再び電源が切断された状態となる。このとき、CPU10は、電源が投入される毎に、ディスプレイ60の表示モードを設定するための画像表示処理を実行する。
【0028】
図3は、情報表示装置1のCPU10が実行する画像表示処理を示すフローチャートである。
図3において、電子ブックの次のページを表示する指示等がボタンを介して入力されるると、CPU10は、電源コントローラ20によりメモリカードコントローラ70、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60に電源を投入し(ステップS1)、メモリカードコントローラ70の初期化を行う(ステップS2)。
【0029】
そして、CPU10は、メモリカード80から表示する画像のファイルヘッダ部分を読み出し(ステップS3)、その画像が有する階調が2階調であるか否かの判定を行う(ステップS4)。
ステップS4において、その画像が有する階調が2階調であると判定した場合、CPU10は、表示階調を2階調に設定してディスプレイコントローラ50を初期化し(ステップS5)、その画像が有する階調が16階調であると判定した場合、表示階調を16階調に設定してディスプレイコントローラ50を初期化する(ステップS6)。
【0030】
ステップS5およびステップS6の後、CPU10は、その画像のファイルにおけるボディ部分(実データ)をメモリカード80からディスプレイコントローラ50に転送する(ステップS7)。これにより、ディスプレイコントローラ50がディスプレイ60に画像の描画を行う。
そして、CPU10は、電源コントローラ20により、ステップS1において電源を投入したメモリカードコントローラ70、ディスプレイコントローラ50およびディスプレイ60の電源を切断し(ステップS8)、画像表示処理を終了する。
【0031】
以上のように、本実施の形態に係る情報表示装置1は、ディスプレイコントローラ50の電源が投入される際に、表示される画像のファイルヘッダ部分を参照し、その画像が有する階調に応じて、ディスプレイコントローラ50の表示モードを設定する。
そのため、ディスプレイコントローラ50は、常に、ディスプレイ60に描画する画像の階調に合わせた表示階調で起動される。
【0032】
したがって、不必要に高階調の表示モードに設定されることにより、表示速度が低下したり、低階調の画像を高階調に変換する必要が生ずることにより、処理効率の低下あるいは消費電力の増加を招くといった事態を回避することができる。
即ち、本発明によれば、ディスプレイコントローラにおいて表示階調を適切に設定することが可能となる。
【0033】
なお、本実施の形態に係る情報表示装置1において、コレステリック液晶表示装置や電気泳動ディスプレイを用いた場合、16階調で表示を行うためには2階調で表示を行う場合に比べて、画素のリセットから表示までの時間が大幅に増大することから、このような時間を可能な限り短縮することができる。また、中間調を表現するためには各画素を複雑に制御する必要があることから、このような事態を可能な限り回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る情報表示装置1の機能構成を示すブロック図である。
【図2】メモリカード80に記憶されるコンテンツのファイルフォーマットを示す模式図である。
【図3】情報表示装置1のCPU10が実行する画像表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 情報表示装置、10 CPU、20 電源コントローラ、30 フラッシュROM、40 メモリ、50 ディスプレイコントローラ、60 ディスプレイ、70 メモリカードコントローラ、80 メモリカード、90 バスコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示階調のモードを複数備えるディスプレイと、該ディスプレイにおける表示階調のモード変更時にリセットを伴うディスプレイコントローラとを含む情報表示装置であって、
前記ディスプレイコントローラがリセットされる際に、表示対象となるデータが有する表示階調を検出する表示階調検出手段と、
前記表示階調検出手段によって検出された表示階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定する表示階調設定手段と、
を含むことを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記ディスプレイは、表示している情報を電力の供給を受けることなく不揮発的に保持する記憶性の表示装置であることを特徴とする請求項1記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記ディスプレイに前記ディスプレイコントローラが表示対象となるデータの画像を描画する際に、該ディスプレイおよびディスプレイコントローラに電源を投入すると共に、画像の描画が終了することに対応して電源を切断する電源制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の情報表示装置。
【請求項4】
表示対象となるデータが、前記ディスプレイの1画面分に対応するデータに区分されていると共に、前記ディスプレイコントローラが該1画面分のデータを前記ディスプレイに描画する毎に、前記表示階調検出手段が、表示対象となる1画面分のデータが有する表示階調を検出し、前記表示階調設定手段が、前記表示階調検出手段が検出したデータの階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定することを特徴とする請求項3記載の情報表示装置。
【請求項5】
表示階調のモードを複数備えるディスプレイと、該ディスプレイにおける表示階調のモード変更時にリセットを伴うディスプレイコントローラとを含む情報表示装置を制御するための情報表示制御プログラムであって、
前記ディスプレイコントローラがリセットされる際に、表示対象となるデータが有する表示階調を検出する表示階調検出機能と、
前記表示階調検出機能によって検出された表示階調に前記ディスプレイコントローラの表示階調を設定する表示階調設定機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とする情報表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−184674(P2006−184674A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379208(P2004−379208)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】