説明

情報記憶装置

【課題】ヘッド位置が大きく振動することを充分に抑制して良好な情報の記録/再生を実現する情報記憶装置を提供する。
【解決手段】ヘッドを情報記憶媒体上で移動させる駆動部と、駆動部を制御する制御部とを備え、情報記憶媒体の各トラックは、ユーザ情報の書き込みおよび読み出し用の第1の領域と、ヘッドの位置決め用の情報を記憶する第2の領域とが交互に繰り返されてなるものである。制御部は、ヘッド位置とアクセス対象の第1の領域の代表位置との差を解消するフィードバック制御値決定部と、フィードバック制御値の決定が行われた第1の領域に対応する論理制御値を求めその論理制御値にフィードバック制御値を加えることで制御実行用の制御実行値を決定する制御実行値決定部と、制御実行値決定部により決定された制御実行値に基づいて駆動部の制御を実行する制御実行部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記憶されるディスク状の情報記憶媒体を回転させ、回転する情報記憶媒体上にヘッドを移動させてアクセスする情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ技術の発展とともに、コンピュータに内蔵される機器や、コンピュータに外部から接続される周辺機器に関する技術が急速に発展している。こうした技術の1つに、磁気ディスクなどの平面的な形状の情報記憶媒体を備え、その情報記憶媒体に情報を書き込むことで情報の記憶を行う情報記憶装置が知られている。
【0003】
情報記憶装置の中には、情報記憶媒体との間で情報の記録や再生を行う役割を果たすヘッドを、情報記憶媒体を回転させながら記憶媒体上で移動させることにより、情報記憶媒体への情報の記録や記憶媒体からの情報の再生(アクセス)を行う情報記憶装置が存在する。ハードディスク装置(HDD)は、こうした情報記憶装置の代表例である。ヘッドを用いて情報記憶媒体とのアクセスを行う情報記憶装置では、装置内の情報記憶媒体上に、ユーザによって取り扱われるユーザ情報(以下、単に「データ」と呼ぶ)の書き込みおよび読み出し用のデータ領域と、ヘッドの位置決め用の情報(以下、単に「位置情報」と呼ぶ)を記憶するサーボ領域とが、領域を分けてそれぞれ複数形成されていることが多く、各データ領域は、サーボ領域に記憶されている位置情報によって互いに識別される。このサーボ領域からヘッドが位置情報を読み取ることで、ヘッドを制御する制御部に記憶媒体上におけるヘッドの位置が把握されて、ヘッドが所望のデータ領域上に位置決めされる。そこで、ヘッドの位置決めの上では、データ領域とサーボ領域とが所定の位置関係に従って規則正しく並んでいる情報記憶媒体が、情報記憶媒体として理想的な情報記憶媒体となる。
【0004】
ここで、サーボ領域とデータ領域とについて、ハードディスク装置(HDD)に内蔵されている磁気ディスクを例にとって具体的に説明する。
【0005】
図1は、データ領域とサーボ領域とが所定の位置関係に従って規則正しく並んでいる理想的な磁気ディスク1000を表した図である。
【0006】
この図に示すように、理想的な磁気ディスク1000では、2つのサーボ領域1001の間に設けられた帯状のデータ領域1002が、磁気ディスク1000の円周方向(図の左右方向)に真っ直ぐ延びた状態で設けられている。ヘッドは、磁気ディスク1000の回転によって、磁気ディスク1000に対し相対的に図の右方向に移動し(すなわち、磁気ディスク1000が、回転により左方向に移動する)、移動しながら磁気ディスク1000との間で情報の記憶/再生(アクセス)を実行する。ここで、サーボ領域1001とその右隣のデータ領域1002との組はセクタと呼ばれ、セクタが磁気ディスク1000の円周方向に並んでディスク中心を周回したものがトラック1004である。各サーボ領域1001は、各サーボ領域1001ごとに磁気ディスク1000上における位置の情報が記憶される領域となっており、この情報により、ヘッドが(正確にはアクセスを実行する、ヘッド内の再生素子や記録素子の位置が)、何番目のトラックの、何番目のセクタの、サーボ領域1001の中心位置から磁気ディスク1000の半径方向にどれだけずれた位置にあるか、といった情報が得られる。データ領域1002やサーボ領域1001は、それぞれ磁性体材料によって構成された磁性体領域を備えており、データや位置情報は、データ領域1002やサーボ領域1001の磁性体領域に形成された磁化の磁化方向の形式で記録される。ここで、各データ領域1002の図の上側および図の下側には、非磁性の材料(磁化率がきわめて小さい材料)によって構成された非磁性領域1003が設けられており、このようにデータ領域1002が、磁気ディスク1000の半径方向(図の上下方向)に、サーボ領域1001を間において離散的に並ぶことで、ヘッドによる情報の記憶/再生(アクセス)の際に、磁気ディスク1000の半径方向について、データ領域同士が、明確に区別されることとなる。なお、ここでは、図の上下方向のサーボ領域1001の並びは、トラックの延びている方向(図の左右方向)と直交しているように図示されているが、これは、磁気ディスク1000の構成を局所的に表したことによるものであって、実際には、サーボ領域1001の並びは、磁気ディスク1000全体でみると、トラックの延びている方向(図の左右方向)に対して少し斜めになっている(後述の図7参照)。この点は、以下の図2および図3でも同様である。
【0007】
図1に示すような磁気ディスク1000の領域区分を形成する作業では、まず、ディスク中心を1周しトラックの原型となる周回領域が、同じようにディスク中心を周回する帯状の非磁性領域を間において磁気ディスクの半径方向に沿って複数形成される。次に、これらの周回領域を分断するように、磁気ディスクの中心から磁気ディスクの縁に向かってライン状に延びるライン状領域が複数本形成される。ここで、2本のライン状領域の間に挟まれた周回領域が図1のデータ領域1002となる。ライン状領域は、それぞれ、磁気ディスク上における位置を表す位置情報が記憶するための単位記憶領域に区分されて、それぞれに位置情報の記録が行われる。この位置情報の記録が行われた単位記憶領域が、図1に示すサーボ領域1001である。
【0008】
理想的な磁気ディスク1000では、上述したように、帯状のデータ領域1002は、磁気ディスク1000の円周方向(図の左右方向)に真っ直ぐ延びている。このことに加え、理想的な磁気ディスク1000では、図の左右方向に並ぶ各データ領域1002にそれぞれ隣接するサーボ領域1001では、各サーボ領域1001の中心は、磁気ディスク1000の半径方向(図の上下方向)については同じ位置にあり、さらに、それぞれ隣接するデータ領域1002の中心とも図の上下方向については同じ位置にある。例えば、上から2つ目に並ぶ7個のサーボ領域1001の中心位置S,S,S,S,S,S,Sは、図の上下方向について同じ位置にあり、各サーボ領域が隣接するデータ領域1002の中心位置D,D,D,D,D,D,Dとも図の上下方向について同じ位置にある。
【0009】
ヘッドのアクセスの際には、サーボ領域1001からヘッドで読み取られる現在のヘッド位置の情報に基づき、ヘッド位置(正確にはヘッド内の再生素子や記録素子の位置)が各サーボ領域1001の中心位置(例えば、図1の中心位置S,S,S,S,S,S,S)となるように、ヘッド位置の制御が行われる。具体的には、サーボ領域1001通過時にヘッド位置とサーボ領域1001の中心位置との差がサーボ領域1001の読み取りで把握され、その差がゼロになるようにフィードバック制御が施されることで、ヘッド位置が各サーボ領域1001の中心位置に一致するように制御が行われる。このような制御の結果、理想的な磁気ディスク1000では、ヘッドは、各サーボ領域1001が隣接する各データ領域1002の中心を通る中心線(例えば、図1中の点線)に沿ってアクセスを行うこととなり、正確な情報の記録/再生が実現することとなる。
【0010】
しかしながら、図1の理想的な磁気ディスク1000のように、データ領域1002が磁気ディスク1000の円周方向に真っ直ぐ延びているとともに、磁気ディスク1000の半径方向についての各サーボ領域の中心位置が一致している磁気ディスクは、実際上は実現しにくい。これは、磁気ディスク製造の際に製造誤差が発生しやすいためである。例えば、上記の周回領域を設ける工程では周回領域がうねって形成されてしまうことがあり、この結果、データ領域のうねりが発生する。また、ライン状領域を単位記憶領域(すなわちサーボ領域)に区分してそれぞれに位置情報を記録する工程では位置情報の記録位置がずれることがあり、このため、たとえ同じデータ領域に隣接する2つのサーボ領域であってもその中心位置は磁気ディスクの半径方向について互いにずれたものとなる。
【0011】
図2は、データ領域のうねりや、サーボ領域の位置ずれが発生している磁気ディスク2000を表した図である。
【0012】
図2に示す磁気ディスク2000では、各データ領域2002は、図2の磁気ディスク2000の円周方向(図の左右方向)に真っ直ぐ延びておらず、うねりが生じている。また、図の左右方向の並んだ各サーボ領域1001の中心位置は、互いに異なったものとなっている。
【0013】
このようにデータ領域のうねりや、サーボ領域の中心位置の位置ずれが発生している磁気ディスク2000に対し、ヘッドの位置が各サーボ領域1001の中心位置となるようにヘッド位置の制御が行われると、ヘッドの軌道が、データ領域からはずれて非磁性領域2003にまで入り込むこととなる。例えば、図2の磁気ディスク2000の上から2番目のデータ領域2002に対しヘッドが相対的に図2の右方向に移動してアクセスを行う際には、ヘッドは、7個のサーボ領域1001の中心位置S’,S’,S’,S’,S’,S’,S’がヘッド位置となるように移動し、その軌道5101は、図2に示すように上下方向に大きく振動する軌跡となる。このとき、データ領域2002にうねりが存在することで、図2に示すように、ヘッドの軌跡5101に、データ領域2002から大きくはずれて非磁性領域2003に深く入り込む箇所が現れるようになる。このような状態では、正確に情報を記録/再生することは困難である。
【0014】
このような事態が発生するのを回避するために、サーボ領域とデータ領域との間に、そのデータ領域の中心位置とそのサーボ領域の中心位置との間における、磁気ディスクの半径方向についての位置ずれ量を表す位置補正情報が記録された領域を新たに設け、この領域での読み取りから得られる位置ずれ量に基づき、ヘッドの位置補正を実行するHDDが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
図3は、位置補正情報が記憶された領域を有する磁気ディスク3000を表した図、図4は、この磁気ディスク3000を採用したHDDで行われるヘッドの位置決め制御の制御ブロック図である。
【0016】
図3に示す、特許文献1のHDDで採用されている磁気ディスク3000では、図3のデータ領域3002とサーボ領域3001との間に補正情報領域3004が設けられている。この磁気ディスク3000では、これらサーボ領域3001、補正情報領域3004
、およびデータ領域3002の組で1つのセクタが構成されでり、このようなセクタが磁気ディスク3000の円周方向に並んでディスク中心を周回することでトラックが構成される。補正情報領域3004には、この補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間における、磁気ディスク3000の半径方向についての位置ずれ量を表す位置補正情報が記録されている。例えば、図3の中央の補正情報領域3004aには、この補正情報領域3004の右側のデータ領域3002の中心位置Dと、この補正情報領域3004aの左側のサーボ領域3001の中心位置Sとの間の位置ずれ量hを表す位置補正情報が記録されている。特許文献1のHDDでは、磁気ディスク3000をHDD内に組み込む際に、各補正情報領域3004での読み取りから得られる位置ずれ量を、各補正情報領域3004が隣接する各データ領域3002に対応づけて表した位置補正用のテーブル(位置補正テーブル)が作成され、図4のメモリ4000d内に蓄えられる。
【0017】
特許文献1のHDDでは、ヘッド位置とサーボ領域3001の中心位置との間における、磁気ディスク3000の半径方向についての差がゼロになるようにフィードバック制御が施される上述の方式の代わりに、ヘッド位置とデータ領域3002の中心位置との間における、磁気ディスク3000の半径方向についての差がゼロになるようにフィードバック制御が施される方式が採用されている。具体的には、図4に示すように、まず、磁気ディスク中心から現在のヘッド位置までの距離yと、磁気ディスク中心からサーボ領域3001の中心位置までの距離rとの差s(s=r−y)が、このサーボ領域3001での読み取りで得られる。次に、フィードフォワード(FW)制御部4000cが、フィードフォワード制御部4000c内のメモリ4000dに蓄えられている上述の位置補正テーブルを用いて、磁気ディスク中心からサーボ領域3001の中心位置までの距離rと、補正情報領域3004を間に介してこのサーボ領域3001と相対するデータ領域3002の中心位置の磁気ディスク中心からの距離rとの差h(h=r−r)を求め、補正加算器4000aに渡す。補正加算器570aは、渡された差hを、上述した、ヘッド位置までの距離yとサーボ領域3001の中心位置までの距離rとの差sに加えることで、ヘッド位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置とまでの距離rの差t(t=s+h=r−y)を求める。次に、フィードバック(FB)制御部4000bが、この差tをゼロにするフィードバック制御用のフィードバック制御値uを求め、このフィードバック制御値uにより、ヘッドを移動させるボイスコイルモータの制御が行われる。このフィードバック制御値uは、具体的には、ボイスコイルモータに供給される電流値である。このようにボイスコイルモータの制御が行われることで、ヘッドがディスク中心から距離yだけ離れた位置に移動する。この図では、ボイスコイルモータやヘッドがまとめてプラント5000として表されており、制御の流れの上では、プラント5000は、フィードバック制御値uが入力されると距離yを出力するものである。ヘッドの移動後、移動先のサーボ領域3001での読み取りにより、ヘッド位置までの新たな距離yとサーボ領域3001の中心位置までの新たな距離rとの差sが新たに得られ、その差に基づき、上述したのと同様の制御が実行される。このような制御が繰り返されることで、時間の経過とともに、ヘッド位置yが、データ領域3002の中心位置rに近づいていくようになる。
【0018】
このような制御により、ヘッドは、データ領域3002にうねりがあっても、図3の軌跡5102のように、非磁性領域1003にあまり深く入り込まずに図3の左右方向に並んだデータ領域3002になるべく沿った軌跡を描いて移動することとなる。
【特許文献1】特開2006−031846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1記載の方式では、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、各データ領域3002で大きく異なる磁気ディスク3000、言い換えれば、磁気ディスクの半径方向について、サーボ領域3001の位置とデータ領域3002の位置との間の相対的な距離が高周波で変動するような磁気ディスク3000では、フィードバック制御により、ヘッド位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差tをゼロにするのに時間がかかり、この結果、アクセス時にヘッド位置が大きく振動することを充分に抑制できないことがある。
【0020】
図5は、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルを用いた位置補正の効果を表した図、図6は、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルを用いた位置補正の効果を表した図である。
【0021】
図5および図6では、簡単のために、磁気ディスクにおいて、図2や図3のようなサーボ領域の中心位置同士の間の位置ずれが発生しておらず、データ領域のうねりだけが発生しているものとしたときのシミュレーションの結果が示されている。
【0022】
図5のパート(a)および図6のパート(a)では、トラックあたり220個のデータ領域3002がディスク円周方向に並んでいる磁気ディスク3000(すなわち、トラックあたりのセクタ数が220の磁気ディスク3000)について、セクタ番号を横軸にとったときの、ヘッド位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差t(以下、位置誤差tと呼ぶ)の変化の様子がグラフで示されている。ここで、位置誤差tは、トラック幅に対する割合(%)で表されている。
【0023】
これら図5のパート(a)および図6のパート(a)では、位置補正テーブルを用いない場合の位置誤差tのグラフが実線で示されており、図5のパート(b)および図6のパート(b)にそれぞれ示す位置補正テーブルを用いて位置補正を行ったときの位置誤差tのグラフが点線で示されている。
【0024】
図5のパート(b)および図6のパート(b)の位置補正テーブルは、それぞれ、サーボ領域3001の中心位置までの距離r(ただし、このシミュレーションでは距離rは一定値である)とデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hの変化のグラフに対応しており、トラック幅に対する割合(%)を単位として、位置補正テーブルを構成するセクタごとの位置補正値が記載されている。
【0025】
図5のパート(a)に示すように、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期という高周波で揺らいでいる場合には、位置補正テーブルを用いて位置補正を行った点線グラフは、位置補正を行わない実線グラフより若干小さな振幅で振動しており、位置補正テーブルを用いて位置補正を行なうことでわずかながらではあるが改善効果が得られることがわかる。
【0026】
また、図6のパート(a)に示すように、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期という高周波で揺らいでいる場合には、位置補正テーブルを用いて位置補正を行った点線グラフは、位置補正を行わない実線グラフよりも大きな振幅で振動しており、位置補正テーブルを用いて位置補正を行うとかえってヘッドが大きく振動するようになることがわかる。これは、高い周波数で振動している状況ではフィードバック制御が素早く追従できないために、フィードバック制御が、振動を抑制するよりは増幅する方向に働いてしまうことによるものである。
【0027】
このように、特許文献1記載の方式では、磁気ディスクの半径方向について、サーボ領域3001の位置とデータ領域3002の位置との間の相対的な距離が高周波で変動するような磁気ディスク3000に対しては、アクセス時にヘッド位置が大きく振動することを充分に抑制できず、正確に情報を記録/再生することが難しいという問題がある。
【0028】
以上では、HDDを例にとって説明したが、上記の問題は、HDDに限らずサーボ領域の読み取りでヘッドの位置決めを行う情報記憶装置全般について起こり得る問題である。
【0029】
上記事情に鑑み、ヘッド位置が大きく振動することを充分に抑制して良好な情報の記録/再生を実現する情報記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成する情報記憶装置の基本形態は、
情報が記憶されるディスク状の情報記憶媒体を回転させ、回転する情報記憶媒体上にヘッドを移動させてアクセスする情報記憶装置において、
上記ヘッドを上記情報記憶媒体上で移動させる駆動部と、
上記駆動部を制御する制御部とを備え、
上記情報記憶媒体は、該情報記憶媒体の円周方向に延びて該情報記憶媒体のディスク中心を周回する帯状のトラックが、該情報記憶媒体の半径方向に複数配列されてなるものであり、各トラックは、ユーザ情報の書き込みおよび読み出し用の領域であって上記円周方向に延びた帯状の第1の領域と、上記ヘッドの位置決め用の情報を記憶する第2の領域とが交互に繰り返されてなるものであって、
上記制御部が、
第2の領域でのヘッドの読み取りで得られる上記半径方向についてのヘッド位置と、アクセス対象の第1の領域の上記半径方向についての代表的な位置を表す代表位置との差を求め、その差を解消するフィードバック制御のためのフィードバック制御値を決定するフィードバック制御値決定部と、
第1の領域と、該第1の領域の代表位置に上記ヘッドを移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけたテーブルを有し、該テーブルを用いて、上記フィードバック制御値決定部によりフィードバック制御値の決定が行われた第1の領域に対応する論理制御値を求めて、該論理制御値に、上記フィードバック制御値決定部により決定されたフィードバック制御値を加えることで制御実行用の制御実行値を決定する制御実行値決定部と、
上記制御実行値決定部により決定された制御実行値に基づいて上記駆動部の制御を実行する制御実行部とを備えている。
【0031】
この基本形態によれば、論理制御値とフィードバック制御値の和が制御実行用の制御実行値となることで、フィードバック制御値がそのまま制御実行用の制御実行値となる場合よりも素早くヘッドが第1の領域の代表位置に近づくようになる。このため、上記の基本形態では、ヘッドが代表位置から離れて大きく振動することが充分に抑制されることとなり、良好な情報の記録/再生を実現することが可能となる。
【0032】
また、上記の基本形態において、「上記情報記憶媒体は、第1の領域の代表位置に上記ヘッドを移動させるための論理制御値を表した論理制御値情報が第2の領域に記録されているものであり、上記テーブルは、上記情報記憶媒体の第2の領域に記録されている論理制御値情報を上記ヘッドで読み取ることによって作成されたものである」という応用形態は好適である。
【0033】
このような応用形態によれば、基本形態で上述したテーブルが簡単に作成される。
【0034】
また、上記の基本形態において、「上記ヘッドは、上記情報記憶媒体の情報を読み取る読取素子と、上記情報記憶媒体に情報を記録する記録素子とを備えたものであって、上記フィードバック制御値決定部は、情報の読み取りの際には、第2の領域での上記読取素子の読み取りで得られる上記半径方向についての該読取素子の位置と、アクセス対象の第1の領域の代表位置との差を求めることでフィードバック制御値を決定するものであり、情報の記録の際には、上記ヘッドにおける上記読取素子と上記記録素子との相対的な位置関係に基づいて、第2の領域での上記読取素子の読み取りで得られる上記半径方向についての該読取素子の位置から上記記録素子の位置を求め、その記録素子の位置と、アクセス対象の第1の領域の代表位置との差を求めることでフィードバック制御値を決定するものであり、上記制御値補正部は、上記テーブルとして、第1の領域と該第1の領域の代表位置に上記読取素子を移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけた読取用テーブルと、第1の領域と該第1の領域の代表位置に上記記録素子を移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけた記録用テーブルとの2つのテーブルを備えているものであって、情報の読み取りの際には上記読取用テーブルを用いて制御実行値を決定し、情報の記録の際には上記記録用テーブルを用いて制御実行値を決定するものである」という応用形態も好適である。
【0035】
このような応用形態によれば、情報の読み取りの際には第1の領域の代表位置に読取素子が素早く移動し、情報の記録の際には第1の領域の代表位置に記録素子が素早く移動することとなる。このため、良好な情報の記録/再生を実現することができる。
【0036】
さらに、読取用テーブルや記録用テーブルを用いて制御実行値を決定する応用形態において、「上記情報記憶媒体は、第1の領域の代表位置に上記読取素子を移動させるための論理制御値を表した読取用制御値情報と、第1の領域の代表位置に上記記録素子を移動させるための論理制御値を表した記録用制御値情報とが第2の領域に記録されているものであり、上記読取用テーブルおよび上記記録用テーブルは、上記情報記憶媒体の第2の領域に記録されている読取用制御値情報および記録用制御値情報を上記読取素子で読み取ることによって作成されたものである」という応用形態はさらに好適である。
【0037】
このような応用形態によれば、読取用テーブルや記録用テーブルを用いる応用形態で上述したテーブルが、簡単に作成されることとなる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、情報記憶装置の上記基本形態によれば、ヘッド位置が目標位置に対して大きく振動することが充分に抑制され良好な情報の記録/再生が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
基本形態(および応用形態)について上述した情報記憶装に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0040】
図7は、情報記憶装置の具体的な実施形態であるハードディスク装置(HDD)500を表した図である。
【0041】
図7に示すHDD500には、可動式のコイルであるボイスコイルと、ボイスコイルに一定の磁場を印加する永久磁石とを内蔵したボイスコイルモータ54が設けられている。このボイスコイルモータ54では、ボイスコイルに電流が流されることでボイスコイルが移動することができ、このボイスコイルの移動により、駆動軸540を回転軸とする回転駆動力が発生する。このボイスコイルモータ54は、アーム53を支持しており、ボイスコイルモータ54の回転駆動力を受けて、アーム53は、駆動軸540の周りを回転する。アーム53の先端には、ジンバルと呼ばれる支持具でスライダ52が取り付けられており、さらに、このスライダ52の先端部には、ヘッド51が取り付けられている。
【0042】
ヘッド51は、磁気ディスク50からの情報の読み取りや磁気ディスク50への情報の書き込みを行う役割を担っており、磁気ディスク50への情報の書き込みを行う記録素子(図7では不図示)と、磁気ディスク50からの情報の読み取りを行う再生素子(図7では不図示)の2つの素子を有している。情報の読み取りや書き込みの際には、ボイスコイルモータ54によりアーム53が、ボイスコイルモータ54を中心として回転駆動されることで、ヘッド51は、磁気ディスク50の表面上の所望の位置に配置される。このときのヘッド51は、円盤状の磁気ディスク50の表面から微小な高さだけ浮上した位置に維持されており、この状態で、磁気ディスク50からの情報の読み取りや磁気ディスク50への情報の書き込みを行う。この図では、ヘッド51の位置を原点とし、磁気ディスク103の中心向き方向をy軸とし、図に垂直な法線方向をz軸として定義されたxyz直交座標系の中で、ヘッド51が表されている。
【0043】
円盤状の磁気ディスク50の表面には、ディスク中心を周回する帯状のトラックが半径方向に複数並んだ構成が設けられており、図7ではこれら複数のトラックのうちの1つのトラック55が図示されている。また、円盤状の磁気ディスク50の表面には、この図に示すように、ディスク中心からディスク円周に向かって、ヘッドの位置決め用の情報を記憶するライン状領域550が複数本設けられている。
【0044】
図7のトラック55において2つのライン状領域550の間で円周方向に帯状に延びている部分には、ユーザ情報(以下、単に「データ」と呼ぶ)の書き込みおよび読み出し用のデータ領域が設けられている。
【0045】
また、1本のライン状領域550は、このライン状領域550が交差する各トラックに対応して、複数個の単位記憶領域に分割されており、それぞれが、各場所に応じたヘッドの位置決め用の情報を記憶している。なお、ここでいう「ヘッドの位置決め用の情報」には、磁気ディスク1000上における位置の情報(位置情報)と、ヘッドの位置決め補正を実行するための補正情報との両方が含まれており、上記の単位記憶領域は、位置情報を記憶するサーボ領域と、補正情報を記憶する補正情報領域とから構成されている。
【0046】
これらデータ領域、サーボ領域、および補正情報領域は、磁性体材料によって構成された磁性領域を備えている。後述するように補正情報領に記憶される補正情報の内容が異なることを除き、各領域の配置は、局所的には、図3に示す、データ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004の配置と同じであり、図7の磁気ディスク50においても、磁気ディスク50の半径方向について、データ領域とデータ領域との間は、非磁性の材料(磁化率がきわめて小さい材料)によって構成された非磁性領域が設けられている。以下では、図7の磁気ディスク50におけるデータ領域、サーボ領域、および補正情報領域については、図3に示す磁気ディスク3000のデータ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004と同一の符号を用いる。
【0047】
図8は、図7の磁気ディスク50におけるサーボ領域3001および補正情報領域3004の構成を表した図である。
【0048】
図8に示すように、磁気ディスク50には、データ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004が順番に並んだ構成が設けられている。
【0049】
図8のサーボ領域3001には、位置情報の信号の取り出しタイミングを決定する同期信号が記録された同期情報部3001a、トラック番号やセクタ番号といったアドレス情報が記録されたアドレス情報部3001b、磁気ディスク50の半径方向についてサーボ領域3001の中心位置(図1〜図3での説明参照)からどの程度離れているかの目盛りの情報が記録された微小位置情報部3001cが設けられている。
【0050】
一方、図8の補正情報領域3004には、この補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間における、磁気ディスク50の半径方向についての位置ずれ量を表す位置補正情報が記録されている位置補正情報部3004aが設けられている。また、補正情報領域3004には、データ領域3002の中心位置に図7のヘッド51を移動させるためにボイスコイルモータ54に与えられるべき論理上の制御値(論理制御値)を表す制御値補正情報が記録されている制御値補正情報部3004bも設けられている。
【0051】
ここで、位置補正情報部3004aに記録されている位置補正情報は、図3の磁気ディスク3000の補正情報領域3004に記録されているものと同一のものである(図3の説明参照)が、図7の磁気ディスク50では、位置補正情報部3004aに加え、制御値補正情報部3004bが設けられている点が、図3の磁気ディスク3000とは大きく異なる。論理制御値については、後で詳しく説明する。
【0052】
データ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004では、図7のトラック55の延びている方向に沿って1ビット領域と呼ばれる1ビット分の情報を記憶する単位記憶領域が並んでいる。図7のHDD500では、垂直磁気記録方式が採用されており、各1ビット領域には、図7のz軸の正方向あるいは負方向を向いた磁化がそれぞれ1つずつ設けられてこの2つの向きで1ビット分の情報が表される。この磁気ディスク50は、スピンドルモータ59の回転駆動力を受けてディスク中心を回転中心として図7の面内を回転し、磁気ディスク50表面近くに配置されたヘッド51は、回転する磁気ディスク501のトラック55の各1ビット領域に順次近接する。
【0053】
データ、位置情報、および補正情報の再生時には、ヘッド51内の再生素子は、各1ビット領域において磁化方向の形式で記録された情報を、各ビットのそれぞれから発生する磁界に応じて電気的な再生信号を生成することにより取り出し、その再生信号はヘッドアンプ58に出力される。また、データの記録時には、磁気ディスク50に近接したヘッド51内の記録素子に、ヘッドアンプ58を介して電気的な記録信号が入力され、記録素子は、入力された記録信号に応じてデータ領域中の各1ビット領域に磁界を印加して、その記録信号に担持された情報をそれらの各1ビット領域の磁化方向の形式で記録する。
【0054】
ヘッド51は、磁気ディスク50の回転により、データ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004に順次近接し、ヘッド51がデータ領域3002に近接したときにデータの再生/記録が実行され、ヘッド51がサーボ領域3001、および補正情報領域3004に近接したときに位置情報の読み取りが実行されて、このようなデータの再生/記録と、位置情報の読み取りとが交互に繰り返される。
【0055】
以下の説明では、ヘッド51の有する記録素子51bおよび再生素子51aは、互いにきわめて接近した位置にそれぞれ配置されており、再生素子51aの位置と記録素子51bの位置とはほぼ同じ位置にあるものとして話を進める。このときの再生素子51aおよび記録素子51bの位置を、以下では、単にヘッド51の位置(ヘッド位置)と呼ぶ。
【0056】
上述した、ボイスコイルモータ54、アーム53、スライダ52、ヘッド51、およびヘッドアンプ58など、情報の記憶再生に直接的に携わる各部は、磁気ディスク50とともに、ベース56に収容されており、図7では、ベース56の内側の様子が表されている。ベース56の裏側には、上記の各部を制御する制御回路を有する制御基板57が設けられており、図7では、制御基板57は点線で示されている。上記の各部は、不図示の機構でこの制御基板57と電気的に導通しており、ヘッド51に入力される上述の記録信号や、ヘッド51で生成された上述の再生信号は、ヘッドアンプ58を介してこの制御基板57において処理される。
【0057】
次に、この制御基板57について説明する。
【0058】
図9は、制御基板57に設けられている制御機構を表した図である。
【0059】
制御基板57には、ボイスコイルモータ(VCM)ドライバ54aを介したボイスコイルモータ(VCM)54の制御やスピンドルモータ(SPM)ドライバ59aを介したスピンドルモータ(SPM)59の制御を行うMPU(Micro Processing Unit)570や、図7の磁気ディスク55へのヘッド51によるデータの記録/再生(アクセス)を制御するディスクコントローラ572が設けられている。また、この制御基板57には、再生信号や記録信号の信号処理を実行するR/Wチャネル571も設けられている。
【0060】
データの記録が行われる際には、このHDD500に接続されたコンピュータなどの外部機器から、ディスクコントローラ572を介してR/Wチャネル571に記録信号が入力され、R/Wチャネル571にて再生時に適した磁気情報を記録するための信号処理が行われる。信号処理が行われた記録信号は、ヘッドアンプ58で増幅された後、ヘッド51内の記録素子51bに入力され、上述したように、磁気ディスク50へのデータの記録が実行される。
【0061】
データの再生、位置情報の再生、および補正情報の再生が行われる際には、上述したように、ヘッド51の再生素子51aで再生信号が生成され、その再生信号は、ヘッドアンプ58で増幅された後、R/Wチャネル571に入力されて各種の信号処理が施される。
【0062】
ここで、データの再生信号は、R/Wチャネル571での信号処理後にディスクコントローラ572に送られ、誤り訂正復号などの処理を経た後、さらにディスクコントローラ572から、このHDD500に接続された外部機器(コンピュータなど)に送られる。
【0063】
一方、位置情報および補正情報の再生信号は、R/Wチャネル571での信号処理後にMPU570に入力される。MPU570は、ディスクコントローラ572からヘッド51の位置決め制御実行の指示を受けて、入力された位置情報および補正情報の再生信号に基づきボイスコイルモータ(VCM)ドライバ54aを介したボイスコイルモータ(VCM)54の制御を行うことで、ヘッド51の位置決め制御を実行する。上述した、データの記録や再生は、このようなMPU570の位置決め制御によりヘッド51がデータの記録や再生のための所望の位置に移動した後に行われる。
【0064】
ここで、位置情報の再生信号の信号処理について説明する。
【0065】
図10は、位置情報の再生信号の信号処理の際のR/Wチャネル571の動作を表した動作ブロック図、図11は、位置情報の再生信号の信号処理の際の各種の信号の波形を表した図である。
【0066】
図11のパート(a)には、ヘッドアンプ58で増幅された後の位置情報の再生信号の波形が示されており、図11のパート(a)に示すように、増幅後の位置情報の再生信号は、上述した図8の同期情報部3001a、アドレス情報部3001b、および微小位置情報部3001cの各領域の読み取りによって生成された、同期信号部4001a、アドレス信号部4001b、および微小位置信号部4001cの信号から構成されている。図11のパート(a)に示す再生信号は、磁気ディスク50の角速度に対応した時間間隔をおいて、図10の可変ゲイン部5701に次々と入力される。再生信号は、可変ゲイン部5701において、あらかじめ設定されているゲイン制御値の下で増幅処理が施され、さらに低域通過フィルタ5702で高周波のノイズ成分が除去される。そして、ノイズ成分が除去された再生信号は、A/D変換器5703に渡され、位相調整器5704から入力された図11のパート(c)に示すADCクロック信号に基づき、アナログ信号からデジタル信号に変換される。A/D変換器5703でデジタル信号に変換された再生信号は、図10の、位相調整器5704、ゲイン調整器5705、同期信号検出器5706、アドレス復調器5707、および微小位置復調器5708にそれぞれ入力される。
【0067】
位相調整器5704は、位相ロックループ(PLL)回路を備えており、位相調整器5704は、PLL回路の動作開始を表す信号である図11のパート(b)のサーボゲート信号の入力を受けて、A/D変換された再生信号中の同期信号部4001aを、そのPLL回路により所定数倍の周波数の信号に変換し、図11のパート(c)に示すADCクロック信号を生成する。このADCクロック信号は、再生信号中の同期信号部4001aを、アドレス信号部4001bや微小位置信号部4001cから区別する信号となっている。このADCクロック信号は、次にA/D変換器5703に入力されてくる再生信号に対するA/D変換に用いられる。
【0068】
ゲイン制御器5705は、デジタル信号に変換された再生信号に基づき、次に可変ゲイン部5701に入力されてくる再生信号が可変ゲイン部5701において最適な振幅の再生信号に増幅されるように、可変ゲイン部5701に設定されるゲイン制御値を制御する。
【0069】
同期信号検出器5706は、再生信号中で同期信号部4001aの位置を検出して、同期信号部4001aの始点と終点を表す図11のパート(d)の同期信号部検出信号を生成する。生成された同期信号部検出信号は、レジスタ5709に記録される。また、同期信号検出器5706は、再生信号中でアドレス信号部4001bの位置を検出して、アドレス信号部4001bの始点と終点を表す図11のパート(e)のアドレス信号部検出信号を生成し、生成されたアドレス信号部検出信号は、アドレス復調器5707に入力される。
【0070】
アドレス復調器5707は、アドレス信号部検出信号に基づき、再生信号中のアドレス信号部4001bの復調を行い、復調されたアドレス値を表す、図11のパート(g)のアドレス復調値信号を生成する。生成されたアドレス復調値信号は、レジスタ5709に記録される。また、アドレス復調器5707は、再生信号中で微小位置信号部4001cの位置を検出して、微小位置信号部4001cの始点と終点を表す図11のパート(f)の微小位置信号部検出信号を生成し、生成された微小位置信号部検出信号は、微小位置復調器5708に入力される。
【0071】
微小位置復調器5708は、微小位置信号部検出信号に基づき、再生信号中の微小位置信号部4001cの復調を行い、復調された微小位置を表す、図11のパート(g)の微小位置復調値信号を生成する。生成された微小位置復調値信号は、レジスタ5709に記録される。
【0072】
次に、MPU570によるヘッド51の位置決め制御について詳しく説明する。
【0073】
図12は、MPU570によるヘッド51の位置決め制御の制御ブロック図である。
【0074】
図12の制御ブロック図には、第1フィードフォワード(FW)制御部570c、第2フィードフォワード(FW)制御部570f、フィードバック(FB)制御部570b、第1補正加算器570aおよび、第2補正加算器570eが示されており、これらは、MPU570の行う動作にそれぞれ対応する。
【0075】
第1フィードフォワード(FW)制御部570c内の第1メモリ570dには、図8の補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間の上述の位置ずれ量を、このデータ領域3002のセクタに対応づけて(実質的には、データ領域3002に対応づけているのと等価)表した位置補正用のテーブル(位置補正テーブル)が蓄えられている。また、第2フィードフォワード(FW)制御部570f内の第2メモリ570gには、データ領域3002の中心位置に図7のヘッド51を移動させるためにボイスコイルモータ54に与えられるべき論理上の制御値(論理制御値)を、このデータ領域3002のセクタに対応づけて表した制御値補正用のテーブル(制御値補正テーブル)が蓄えられている。これらの位置補正テーブルや制御値補正テーブルは、図7の磁気ディスク50をHDD500内に組み込む際に、図8の補正情報領域3004の位置補正情報部3004aや制御値補正情報部3004bでの読み取りから得られる位置ずれ量や論理制御値を、この補正情報領域3004のセクタに対応づける(実質的には、この補正情報領域3004に隣接するデータ領域3002と対応づけるのと等価)ことで作成されるテーブルである。なお、図12の制御ブロックでは、第1メモリ570dと第2メモリ570gは、それぞれ異なるものであるかのように図示されているが、ハードウェアとしては、図9のMPU570が有する同一のメモリである。
【0076】
ここで、図12の第1フィードフォワード制御部570c、フィードバック制御部570b、および第1補正加算器570aは、それぞれ、図4のフィードフォワード(FW)制御部4000c、フィードバック(FB)制御部4000b、および補正加算器4000aとほぼ同様の動作を行うものであり、位置補正テーブルは、図4で説明した位置補正テーブルと同じものである。
【0077】
しかし、図4に示す制御ブロックとは異なり、図12に示す制御ブロックには、第2フィードフォワード制御部570f、および第2補正加算器570eが備えられており、制御値補正テーブルに基づいた制御値の補正が行われる。この点が、図12に示す制御ブロックが図4に示す制御ブロックとは大きく異なる点である。
【0078】
以下、図12を参照して、MPU570によるヘッド51の位置決め制御について説明する。
【0079】
まず、磁気ディスク中心から現在のヘッド位置までの距離yと、磁気ディスク中心からサーボ領域3001の中心位置までの距離rとの差s(s=r−y)が、サーボ領域3001(図3参照)での読み取りで得られる。次に、第1フィードフォワード(FW)制御部570cが、第1フィードフォワード制御部570c内の第1メモリ570dに蓄えられている上述の位置補正テーブルを用いて、磁気ディスク中心からそのサーボ領域3001の中心位置までの距離rと、補正情報領域3004を間に介してこのサーボ領域3001と相対するデータ領域3002の中心位置の磁気ディスク中心からの距離rとの差h(h=r−r)を求め、第1補正加算器570aに渡す。第1補正加算器570aは、渡された差hを、上述した、ヘッド位置までの距離yとサーボ領域3001の中心位置までの距離rとの差sに加えることで、ヘッド位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置とまでの距離rの差t(t=s+h=r−y)を求める。次に、フィードバック(FB)制御部570bが、この差tをゼロにするフィードバック制御用のフィードバック制御値uを求める。次に、第2フィードフォワード(FW)制御部570fが、第2フィードフォワード制御部570f内の第2メモリ570gに蓄えられている上述の制御値補正テーブルを用いて、このセクタ(サーボ領域3001、補正情報領域3004、およびデータ領域3002の組)に対応した論理制御値uを求めて、その論理制御値uを第2補正加算器570aに渡す。
【0080】
ここで、論理制御値について詳しく説明する。
【0081】
ボイスコイルモータ54に供給される制御値(電流値)がu(単位としては例えば[mA]が採用される)の下での、ヘッド51の軌道を運動方程式に基づいて考察する。図7において、ヘッド51が、あるトラック55上に存在するとき、そのトラック55の平均的な半径をyとすると、yを基準としたヘッド位置の変位(y−y)は、理想的には下記の運動方程式によって求められる。
(y−y)/dt=k×u (1)
ここで、左辺の「d(y−r)/dt」は、(y−y)を時間について2回微分したものである。また、右辺のkは、ボイスコイルモータ54の慣性モーメント、ボイスコイルモータの駆動軸540からボイスコイルモータ54中のボイスコイルまでの距離、ボイスコイルモータの駆動軸540からヘッド51までの距離、ボイスコイルの巻きつき数、ボイスコイルに加えられる磁場、巻きつき方向についてのボイスコイルの周長等によって定まる定数である。
【0082】
この式(1)は、図7の駆動軸540回りの回転の運動方程式から導かれるものである。ここで、左辺が角運動量の時間変化に対応しており、右辺が、ボイスコイルモータ54によって発生する駆動軸540回りのトルクに対応している。なお、定係数はすべて式(1)中のkに含めている。一般に磁界中のボイスコイルに働く力は、ボイスコイルに流れる電流に比例するために、発生するトルクもその電流に比例し、式(1)のように、電流uの1次の項が現れることとなる。
【0083】
なお、式(1)は、電流がボイスコイルに流れることによって発生する、電流に比例した力(ボイスコイルを移動させる力)の影響だけを考慮し、それ以外の他の外力(空気抵抗や、ボイスコイルの移動を緩衝するための緩衝バネのバネ抵抗、摩擦力など)の影響が無視できるような理想的な状況で成立する式であり、空気抵抗や、ボイスコイルの移動を緩衝するための緩衝バネのバネ抵抗、および摩擦力といったほかの外力が存在する場合には、式(1)の右辺に、(y−y)を時間についての1回微分したものに比例する項、(y−y)に比例する項、および、(y−y)によらない項が現れる。
【0084】
ここで、ヘッド51が各データ領域3002上を通過する際に、ヘッド位置が、各データ領域3002の中心位置(図3参照)と一致するようにするには、どのような制御値(電流値)uが必要となるかを考える。図3で上述したように、一般に、データ領域3002の中心位置は、同じトラック55内でもデータ領域3002に応じて(すなわちセクタに応じて)異なったものとなっているため、磁気ディスク50の回転により、ヘッド51が通過するデータ領域3002の中心位置は、時間に応じて変化することとなる。ここで、HDD500では、アクセス時には磁気ディスク50の回転速度(角速度)が、ほぼ一定に保たれるようにスピンドルモータ59が制御されており、このため、単位時間あたりにヘッド51が通過するデータ領域3002(あるいはセクタ)の数は一定となっている。このため、データ領域3002の順番(セクタ番号)に応じた中心位置の変化は、そのまま、時間に応じた中心位置の変化に比例したものとなる。ここで、ヘッド位置が、各データ領域3002の中心位置(図3参照)と一致するようにするための論理上の制御値(論理制御値)をuとし、yを基準としたときの、ヘッド51が通過するデータ領域3002の中心位置の変位(r−y)で上記の式(1)中の(y−y)を置き換え、また、式(1)中のuをuで置き換えると下記の式(2)を得る。
(r−y)/dt=k×u (2)
一方、図3で上述したように、サーボ領域3001の中心位置も、同じトラック55内でもサーボ領域3001に応じて(すなわちセクタに応じて)一般に異なったものとなっているため、磁気ディスク50の回転により、ヘッド51が通過するサーボ領域3001の中心位置も時間に応じて変化することとなる。yを基準としたときの、ヘッド51が通過するサーボ領域3001の中心位置の変位(r−y)の時間変化は、磁気ディスク50がHDD500に組み込まれる前に実験により求めることができる。ここで、この変位(r−y)が、以下の式(3)で表されるものとする。
−y=F(t) (3)
ここで、式(3)の右辺のF(t)は、上述したように実験により求められた時間の関数である。式(3)を2回微分することで、下記の式(4)を得る。
(r−y)/dt=dF(t)/dt (4)
ここで、上記の式(2)から式(3)を引くことで、トラック55の平均的な半径yを消去すると、下記の式(5)を得る。
(r−r)/dt=k×u−dF(t)/dt (5)
式(5)を制御値(電流値)uについて解くと、下記の式(6)を得る。
=(1/k)×[d(r−r)/dt+dF(t)/dt] (6)
ここで、式(6)中のd(r−r)/dtについては、上述した差h(h=r−r)を2回時間微分することによって得られる。
【0085】
このようにして、各セクタ(すなわち、各サーボ領域3001あるいは各データ領域3002)ごとに式(6)左辺の論理制御値uが求められ、磁気ディスク50がHDD500に組み込まれる前に図8の磁気ディスク50の各制御値補正情報部3004bに記録される。そして、上述したように、磁気ディスク50がHDD500に組み込まれる際に、その情報が読み出されて制御値補正テーブルが作成されて、第2フィードフォワード(FW)制御部570f内の第2メモリ570gに蓄えられる。
【0086】
なお、以上では、簡単のために、電流に比例した力(ボイスコイルを移動させる力)の影響だけを考慮し、それ以外の他の外力(空気抵抗や、ボイスコイルの移動を緩衝するための緩衝バネのバネ抵抗、摩擦力など)の影響を無視したが、これは近似であって、これらの外力の影響を加味することも可能である。具体的には、式(1)の右辺に、(y−y)を時間についての1回微分したものに比例する項、(y−y)に比例する項、および、(y−y)によらない項が付け加わった式において、この式(1)中の(y−y)を変位(r−y)で置き換え、さらに、式(3)を用いて半径yを消去することで、これらの外力の影響を加味した場合の論理制御値uが求められる。そして、このようにして、外力の影響を加味した場合の制御値補正テーブルが作成される。
【0087】
図12の説明を続ける。
【0088】
第2補正加算器570eは、第2フィードフォワード(FW)制御部570fから論理制御値uを渡されると、その論理制御値uを、上述したフィードバック制御値uに加えて、これら論理制御値uとフィードバック制御値uとの和からなる実行制御値uを求める。そして、第2補正加算器570eは、その実行制御値uをボイスコイルモータ54に入力して、ボイスコイルモータ54の制御を実行する。このようにボイスコイルモータ54の制御が行われることで、ヘッド51がディスク中心から距離yだけ離れた位置に移動する。この図では、ボイスコイルモータ54やヘッド51がまとめてプラント500aとして表されており、制御の流れの上では、プラント500aは、実行制御値uが入力されると距離yを出力するものである。ヘッドの移動後、移動先のサーボ領域3001での読み取りにより、再び、ヘッド位置までの新たな距離yとサーボ領域3001の中心位置までの新たな距離rとの差sが新たに得られ、その差に基づき、上述したのと同様の制御が実行される。このような制御が繰り返されることで、時間の経過とともに、ヘッド位置が、データ領域3002の中心位置に近づいていくようになる。
【0089】
このとき、図12の制御方式では、論理制御値uがフィードバック制御値uに加わってなる実行制御値uでボイスコイルモータ54が制御されることにより、図4の制御方式に比べて、データ領域3002の中心位置に向かってヘッド51が素早く移動することができる。このため、磁気ディスクの半径方向について、サーボ領域3001の位置とデータ領域3002の位置との間の相対的な距離が高周波で変動するような磁気ディスク3000であっても、ヘッド51が、データ領域3002の中心位置から離れて大きく振動することが充分に抑制される。この結果、図12の制御方式では、良好な情報の記録/再生を実現することが可能となっている。ここで、現実には、環境などの要因により、論理制御値uでボイスコイルモータ54が制御されたとしてもヘッド51がデータ領域3002の中心位置にぴったり位置するようになるのは実現が困難で多少のずれが発生するが、図12の制御方式では、そのずれの分はフィードバック制御により補正される。
【0090】
以上の説明において、図9のボイスコイルモータ54が、上述した情報記憶装置の基本形態における駆動部の一例に相当し、図9の制御基板57が、上述した情報記憶装置の基本形態における制御部の一例に相当する。また、図12のフィードバック制御部570b、第1補正加算部570a、および第1フィードフォワード制御部570cを合わせたものが、上述した情報記憶装置の基本形態におけるフィードバック制御値決定部の一例に相当する。また、第2フィードフォワード制御部570fと、論理制御値uをフィードバック制御値uに加えて実行制御値uを求める際の第2補正加算部570aとを合わせたものが、上述した情報記憶装置の基本形態における制御実行値決定部の一例に相当する。また、実行制御値uをボイスコイルモータ54に入力してボイスコイルモータ54の制御を実行する際の第2補正加算部570aが、上述した情報記憶装置の基本形態における制御実行部の一例に相当する。
【0091】
ここで、図12の制御方式が採用されることで、ヘッド51が中心位置から離れて大きく振動することが抑制されることを、具体的なシミュレーション結果を用いて説明する。
【0092】
図13は、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正の効果を表した図、図14は、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正の効果を表した図である。
【0093】
図5および図6では、簡単のために、磁気ディスクにおいて、図2や図3のようなサーボ領域の中心位置同士の間の位置ずれが発生しておらず、データ領域のうねりだけが発生しているものとしたときのシミュレーションの結果が示されている。
【0094】
図13のパート(a)および図14のパート(a)では、トラックあたり220個のデータ領域3002がディスク円周方向に並んでいる磁気ディスク50(すなわち、トラックあたりのセクタ数が220の磁気ディスク50)について、セクタ番号を横軸にとったときの、ヘッド位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差t(以下、位置誤差tと呼ぶ)の変化の様子がグラフで示されている。ここで、位置誤差tは、トラック幅に対する割合(%)で表されている。なお、上述したように、一定の角速度で回転する磁気ディスク50に近接するヘッド51にとっては、ヘッド51が近接するセクタが順次変わっていくこと(セクタ番号の増加)と、時間の経過とは比例するものであり、横軸は、経過時間の代用とみなすこともできる。図13のパート(a)および図14のパート(a)では、濃い実線のグラフ(太線グラフ)が、図12の制御方式のように位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正を行った場合のグラフであるが、比較のために、制御値補正は行わず位置補正テーブルを用いた位置補正のみを行った場合のグラフや、制御値補正も位置補正も行わなかった場合のグラフも、それぞれ、点線グラフや実線グラフで示されている。
【0095】
図13のパート(b)および図14のパート(b)の位置補正テーブルは、それぞれ、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hの変化のグラフに対応しており、トラック幅に対する割合(%)を単位として、位置補正テーブルを構成するセクタごとの位置補正値が記載されている。
【0096】
ここで、図13のパート(a)および図14のパート(a)の点線グラフや実線グラフは、図5のパート(a)および図6のパート(a)の点線グラフや実線グラフと同じものであり、図13のパート(b)および図14のパート(b)の位置補正テーブルも、図5のパート(b)および図6のパート(b)の位置補正テーブルと同じものである。
【0097】
図13のパート(c)および図14のパート(c)には、2種類の、差hの揺らぎの周波数それぞれに対する制御値補正テーブルが示されている。この制御値補正テーブルは、式(6)によって求められるものであるが、上述したように、このシミュレーションでは距離rは一定値であるため、右辺の第2項めのdF(t)/dtの項は落ちて、右辺の第1項めのd(r−r)/dtの項によって決定される。すなわち、図13のパート(b)および図14のパート(b)の位置補正テーブルの2回微分に定数(ここでは負の定数)を乗じることによって図13のパート(c)および図14のパート(c)の制御値補正テーブルがそれぞれ得られる。なお、図13のパート(c)および図14のパート(c)では、制御値補正テーブルの縦軸の単位は適宜、無次元化して表されている。
【0098】
図13のパート(a)や図14のパート(a)に示すように、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いて位置補正および制御値補正を行った太線グラフは、制御値補正は行わず位置補正テーブルを用いた位置補正のみを行った場合の点線グラフや、制御値補正も位置補正も行わなかった場合の実線グラフよりも、振幅が小さいグラフとなっている。このことから、サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域3002の中心位置までの距離rとの差hが、トラックの周長の5分の1や10分の1の周期で揺らいでいるような高周波の揺らぎが存在する場合であっても、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いて位置補正および制御値補正を行うことで、ヘッド51が中心位置から離れて大きく振動することが充分に抑制されるということがわかる。
【0099】
以上の説明では、ヘッド51の有する記録素子51bおよび再生素子51aは、互いに接近した位置にそれぞれ配置されており、再生素子51aと記録素子51bの位置はまとめてヘッド51の位置としてみなせるものとしたが、以下では、再生素子と記録素子との間の距離がトラック幅程度であって、ヘッドの位置決め精度の観点からこの距離の存在が無視できない磁気ヘッドを有するHDDと、このHDDで行われるヘッドの位置決め制御について説明する。このようなHDDは、基本形態(および応用形態)について上述した情報記憶装置に対する別の具体的な実施形態に相当する。
【0100】
このHDDの構成要素が、図7のHDD500の構成要素と大きく異なる点は、ヘッドにおいて再生素子と記録素子との間の距離がトラック幅程度である点と、この距離の存在の影響を補正するために磁気ディスクの補正情報領域に(図3の補正情報領域3004参照)、再生素子用の位置補正情報部および制御値補正情報部(図8参照)と、記録素子用の位置補正情報部および制御値補正情報部(図8参照)とがそれぞれ個別に設けられている点であり、これらの点を除けば、このHDDは、図7のHDD500と同じ構成要素を備えている。また、このHDDの動作は、再生素子と記録素子との間の距離の影響を補正するようにヘッドの位置決め制御が行われる点を除けば、図7のHDD500の動作と同じである。
【0101】
そこで、以下では、図7のHDD500とは異なる点に焦点を絞って説明を行う。
【0102】
ここで、このHDDに備えられている磁気ディスクは、補正情報領域に記憶される補正情報の内容が異なることを除き、図3に示す磁気ディスク3000と同じ構成を備えており、以下では、データ領域、サーボ領域、非磁性領域、および補正情報領域の具体的な配置については図3を参照することとし、これらについての符号は、図3で用いられたのと同じ符号を用いる。
【0103】
まず、再生素子と記録素子との間の距離が長く、この距離の存在が、ヘッドの位置決め精度の観点から無視できないことについて具体的に説明する。
【0104】
図15は、再生素子51a’と記録素子51b’との間の距離が長いヘッド51’において、再生素子51a’と記録素子51b’との間の位置関係を表す図である。
【0105】
図15のパート(a)には、データの記録の際のヘッド51’の様子が示されており、図15のパート(b)には、データの再生の際のヘッド51’の様子が示されている。ヘッド51’では、図15のパート(a)および図15のパート(b)に示すように、再生素子51a’と記録素子51b’との間の距離が、データ領域3002の幅(トラック幅)程度となっている。このため、図15のパート(a)に示すように、記録素子51b’が図15のパート(a)の下側のデータ領域3002でデータの記録を行う際には、再生素子51a’は、下側のデータ領域3002からはずれて非磁性領域3003や上側のデータ領域3002にまで入り込んでおり、一方、図15のパート(b)に示すように、再生素子51a’が図15のパート(b)の上側のデータ領域3002でデータの再生を行う際には、記録素子51b’は、上側のデータ領域3002からはずれて非磁性領域3003や下側のデータ領域3002にまで入り込んでいる。
【0106】
ここで、データの再生を行う際には、再生素子51a’の中心H(以下、単に、再生素子51a’の位置と呼ぶ)が、データ領域3002の中心位置を通過するようにヘッド51’の位置決め制御が行われることが好ましく、データの記録を行う際には、記録素子51b’の中心H(以下、単に、記録素子51b’の位置と呼ぶ)が、データ領域3002の中心位置を通過するようにヘッド51’の位置決め制御が行われることが好ましい。
【0107】
ここで、サーボ領域3001での読み取りによって得られる位置は、再生素子51a’の位置Hに対応するものである。そこで、データの再生を行う際に上記の好ましい位置決めを実現するには、読み取りによって得られる位置が、データ領域3002の中心位置となるように制御が行われればよい。このような制御は、実質的に、図12の制御と同じ制御で実現できる。データの再生が行われる際には記録素子51b’は用いられないので、図15のパート(a)にように記録素子51b’の位置と再生素子51a’の位置とが離れているヘッド51’であっても、データの再生精度の上では特に問題は起こらない。
【0108】
ところが、データの記録が行われる際に図15のパート(b)のように記録素子51b’の位置が再生素子51a’の位置から離れていると、データ領域3002(図3参照)での記録の合間にサーボ領域3001(図3参照)での再生素子51a’の読み取りで得られる位置を、そのまま記録素子51b’の位置とみなすことができず、データの記録精度の上で問題となる。このようなヘッド51’で、記録素子51b’の位置がデータ領域3002の中心位置を通過するような好ましい位置決め制御を実現するには、サーボ領域3001での読み取りによって得られる位置を、記録素子51の位置に換算した上でその記録素子51の位置がデータ領域3002の中心位置となるように制御が行われることが必要となる。
【0109】
以下では、データの記録/再生の際に上記の好ましい位置決め制御を行うための工夫について説明する。
【0110】
図16は、再生素子51a’と記録素子51b’との間の距離が長いHDDが有する磁気ディスクにおけるサーボ領域3001および補正情報領域3004の構成を表した図である。
【0111】
図16に示すように、このHDDが有する磁気ディスクには、データ領域3002、サーボ領域3001、および補正情報領域3004が順番に並んだ構成が設けられている。サーボ領域3001の構成は、図8で説明したサーボ領域3001の構成と同じであり、ここでは、その重複説明は省略する。
【0112】
図16の補正情報領域3004には、再生素子51a’用の位置補正情報部として、この補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間の位置ずれ量を表す位置補正情報が記録されている再生用位置補正情報部3004cが設けられている。また、補正情報領域3004には、再生素子51a’用の制御値補正情報部として、データ領域3002の中心位置に再生素子51a’の位置を一致させるためにボイスコイルモータ54に与えられるべき論理上の制御値(論理制御値)を表す制御値補正情報が記録されている再生用制御値補正情報部3004eも設けられている。これら再生用位置補正情報部3004cと再生用制御値補正情報部3004eは、図8で上述した位置補正情報部3004aと制御値補正情報部3004bと同じものである。
【0113】
また、図16の補正情報領域3004には、記録素子51a’用の補正情報部として、記録用位置補正情報部3004dが設けられており、記録素子51a’用の制御値補正情報部として、記録用制御値補正情報部3004fも設けられている。記録用位置補正情報部3004dには、仮にこの補正情報領域3004のセクタに再生素子51a’が近接しているとしたときに記録素子51b’が近接することになるセクタにおける位置ずれ量が記録されている。また、記録用制御値補正情報部3004fには、仮にこの補正情報領域3004のセクタに再生素子51a’が近接しているとしたときに記録素子51b’が近接することになるセクタにおいて記録素子51b’の位置をそのセクタのデータ領域3002の中心位置と一致させるために必要な論理制御値が記録されている。
【0114】
図17は、再生素子51a’と記録素子51b’との間の距離が長いHDDが有するMPUによるヘッド51の位置決め制御の制御ブロック図である。
【0115】
図17のパート(a)の制御ブロック図は、再生素子51a’の位置決めの際の制御ブロック図であり、図17のパート(b)の制御ブロック図は、記録素子51b’の際の位置決めの制御ブロック図である。
【0116】
図17のパート(a)および図17のパート(b)に示す制御ブロックには、第1フィードフォワード(FW)制御部570c’、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’、フィードバック(FB)制御部570b’、第1補正加算器570a’および、第2補正加算器570e’が示されており、これらは、このHDDが有するMPUの行う動作にそれぞれ対応する。
【0117】
第1フィードフォワード(FW)制御部570c’内の第1メモリ570d’には、図16の補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間の位置ずれ量を、このデータ領域3002のセクタに対応づけて表した、再生素子51a’の位置決め用の位置補正テーブル(再生用位置補正テーブル)が備えられている。この再生用位置補正テーブルは、図12で上述した位置補正テーブルと同じものであり、データの再生時における再生素子51a’の位置決めに用いられる。さらに、この第1フィードフォワード(FW)制御部570c’内の第1メモリ570d’には、データの記録時における記録素子51b’の位置決めに用いられる位置補正テーブル(記録用位置補正テーブル)が備えられている。この記録用位置補正テーブルは、図16の補正情報領域3004が隣接するデータ領域3002の中心位置と、この補正情報領域3004が隣接するサーボ領域3001の中心位置との間の位置ずれ量を、仮にこのデータ領域3002のセクタに記録素子51b’が近接しているとしたときに再生素子51a’が近接することになるセクタに対応づけて表したテーブルである。従って、この記録用位置補正テーブルは、上記の再生用位置補正テーブルにおいて対応づけられるセクタを、再生素子51a’と記録素子51b’との位置ずれ分だけ離れた位置にあるセクタに置き換えたテーブルである。
【0118】
第2フィードフォワード(FW)制御部570f’内の第2メモリ570g’には、データ領域3002の中心位置に再生素子51a’ を移動させるためにボイスコイルモータに与えられるべき論理上の制御値(論理制御値)を、このデータ領域3002のセクタに対応づけて表した、再生素子51a’の位置決め用の制御値補正テーブル(再生用制御値補正テーブル)が備えられている。この再生用制御値補正テーブルは、図12で上述した制御値補正テーブルと同じものであり、データの再生時における再生素子51a’の位置決めに用いられる。さらに、この第2フィードフォワード(FW)制御部570f’内の第2メモリ570g’には、データの記録時における記録素子51b’の位置決めに用いられる制御値補正テーブル(記録用制御値補正テーブル)が備えられている。この記録用制御値補正テーブルは、データ領域3002の中心位置に記録素子51a’ を移動させるためにボイスコイルモータに与えられるべき論理上の制御値(論理制御値)を、仮にこのデータ領域3002のセクタに記録素子51b’が近接しているとしたときに再生素子51a’が近接することになるセクタに対応づけて表したテーブルである。
【0119】
これら、再生用位置補正テーブル、記録用位置補正テーブル、再生用制御値補正テーブル、および記録用制御値補正テーブルは、このHDDの磁気ディスクをHDD内に組み込む際に、図16の補正情報領域3004の、再生用位置補正情報部3004c、記録用位置補正情報部3004d、再生用制御値補正情報部3004e、および記録用制御値補正情報部3004fでの読み取りから得られる、再生素子51a’用の位置ずれ量、記録素子51b’用の位置ずれ量、再生素子51a’用の論理制御値、および記録素子51b’用の論理制御値を、この補正情報領域3004のセクタに対応づける(実質的には、この補正情報領域3004に隣接するデータ領域3002と対応づけるのと等価)ことで作成されるテーブルである。なお、図12の制御ブロックでは、2つの第1メモリ570d’、570g’は、それぞれ異なるものであるかのように図示されているが、ハードウェアとしては、このHDDのMPUが有する同一のメモリである。
【0120】
次に、データの再生の際のヘッド51’の位置決め制御と、データの記録の際のヘッド51’の位置決め制御について説明する。
【0121】
まず、データの再生の際のヘッド51’の位置決め制御について、図17のパート(a)を参照して説明する。図17のパート(a)に示すように、磁気ディスク中心から現在の再生素子51a’の位置までの距離yと、磁気ディスク中心からサーボ領域3001の中心位置までの距離rSRとの差s(s=rSR−y)が、サーボ領域3001(図3参照)での読み取りで得られる。次に、第1フィードフォワード(FW)制御部570c’が、第1フィードフォワード制御部570c’内の第1メモリ570d’に蓄えられている上述の再生用位置補正テーブルを用いて、磁気ディスク中心からそのサーボ領域3001の中心位置までの距離rSRと、補正情報領域3004を間に介してこのサーボ領域3001と相対するデータ領域3002の中心位置の磁気ディスク中心からの距離rdRとの差h(h=rdR−rSR)を求め、第1補正加算器570a’に渡す。第1補正加算器570a’は、渡された差hを、上述した、再生素子51a’の位置までの距離yとサーボ領域3001の中心位置までの距離rSRとの差sに加えることで、再生素子51a’の位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置とまでの距離rdRの差t(t=s+h=rdR−y)を求める。次に、フィードバック(FB)制御部570b’が、この差tをゼロにするフィードバック制御用のフィードバック制御値u0Rを求める。次に、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’が、第2フィードフォワード制御部570f’内の第2メモリ570g’に蓄えられている上述の再生用制御値補正テーブルを用いて、このセクタ(サーボ領域3001、補正情報領域3004、およびデータ領域3002の組)に対応した論理制御値u1Rを求めて、その論理制御値u1Rを第2補正加算器570a’に渡す。なお、論理制御値u1Rは、図12で上述したのと同様にして式(1)〜式(6)により決定されるものである。具体的には、u1Rは、上述した式(1)から式(6)と同様にして、式(6)の(r−r)を上述のh(h=rdR−rSR)に置き換え、式(6)のF(t)を、(rSR−y0R)に置き換えた下記の式によって決定される。
1R=(1/k)×[d/dt+d(rSR−y0R)/dt] (8)
ここで、y0Rは、再生素子51a’が近接しているトラックの平均的な半径である。
【0122】
第2補正加算器570e’は、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’から論理制御値u1Rを渡されると、その論理制御値u1Rを、上述したフィードバック制御値u0Rに加えて、これら論理制御値u1Rとフィードバック制御値u0Rとの和からなる実行制御値uを求める。そして、第2補正加算器570e’は、その実行制御値uをボイスコイルモータに入力して、ボイスコイルモータの制御を実行する。このようにボイスコイルモータの制御が行われることで、再生素子51a’がディスク中心から距離yだけ離れた位置に移動する。この図では、ボイスコイルモータやヘッド51’がまとめてプラント500a’として表されており、データの再生時における制御の流れの上では、プラント500a’は、実行制御値uが入力されると距離yを出力するものである。再生素子51a’の移動後、移動先のサーボ領域3001での読み取りにより、再生素子51a’の位置までの新たな距離yとサーボ領域3001の中心位置までの新たな距離rSRとの差sが新たに得られ、その差に基づき、上述したのと同様の制御が実行される。このような制御が繰り返されることで、時間の経過とともに、再生素子51a’の位置が、データ領域3002の中心位置に近づいていくようになる。
【0123】
次に、データの記録の際のヘッド51’の位置決め制御について、図17のパート(b)を参照して説明する。磁気ディスク中心から現在の記録素子51b’の位置までの距離yと、現在の記録素子51b’が近接するセクタのサーボ領域3001の中心位置までの距離rSWとの差s(s=rSW−y)は、この時点での再生素子51a’の位置(そのセクタに記録素子51b’が近接しているときに再生素子51a’が位置情報の読み取りを実行することで得られる位置)に基づき、一意的に定まる。具体的には、再生素子51a’が、磁気ディスク上における座標点x(ここではxはベクトルとする)に存在しているとすると、記録素子51b’の位置の座標点x(ここではxはベクトルとする)は、再生素子51a’の位置から記録素子51b’の位置まで延びるベクトルW(x)を用いて、
=x+W(x) (9)
と書ける。式(9)を用いて、現在の記録素子51b’の位置までの距離yが定まる。ここで、ベクトルW(x)は、図15で示したような記録素子51b’と再生素子51a’との間の位置関係から幾何学的に求められるベクトルであり、xに応じて向きが変化するベクトルである。実際上は、xは、アドレス(トラック番号およびセクタ番号)と、サーボ領域3001の中心位置を基準とした再生素子51aの微小位置(図12の微小位置情報部3001cに記録されている情報)とによって定まる離散的な座標点である。また、式(9)により、記録素子51b’が現在近接しているセクタが定まり、そのセクタのサーボ領域3001の中心位置までの距離までの距離rSWも定まる。この結果、磁気ディスク中心から現在の記録素子51b’の位置までの距離yと、現在の記録素子51b’が近接するセクタのサーボ領域3001の中心位置までの距離rSWとの差s(s=rSW−y)が、この時点での再生素子51a’の位置に基づき定まることとなる。このような演算は、MPUによって実行されるが、図17のパート(b)では、その演算を行うMPUの動作は、プラント500a’の中に含まれている。
【0124】
次に、第1フィードフォワード(FW)制御部570c’が、現在記録素子51b’が近接しているセクタについて、磁気ディスク中心からそのセクタのサーボ領域3001の中心位置までの距離rSWと、補正情報領域3004を間に介してこのサーボ領域3001と相対するデータ領域3002の中心位置の磁気ディスク中心からの距離rdWとの差h(h=rdW−rSW)を求め、第1補正加算器570a’に渡す。具体的には、この差hは、第1フィードフォワード(FW)制御部570c’が、再生素子51a’が近接しているセクタに対応づけられた差hを、上述の記録用位置補正テーブルから読み出すことによって求められるものである。ここで、記録素子51b’が近接するセクタにおける差hは、図17のパート(a)の差hが、磁気ディスク上における任意の座標点x(ここではxはベクトル)の関数として、h=h(x)の形で表されるとすると、下記の式で表される。
=h(x+W(x)) (10)
ここで、xは、上記のセクタに記録素子51b’が近接しているときの再生素子51a’ の座標点x(ここではxはベクトル)であり、W(x)は、再生素子51a’の位置(座標点xの位置)から記録素子51b’の位置に向かうベクトルである。また、h(x)は、セクタに応じて値が1つ定まる関数であり、1つのセクタ内では(つまり、xがそのセクタ内のどの座標点であっても)、h(x)は一定値である。このように式(10)を用いることで、図17のパート(a)の差h(再生用位置補正テーブルと同等)から、図17のパート(a)の差h(記録用位置補正テーブルと同等)を求めることができる。
【0125】
第1補正加算器570a’は、渡された差hを、上述した、記録素子51b’の位置までの距離yとサーボ領域3001の中心位置までの距離rSWとの差sに加えることで、記録素子51b’の位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置とまでの距離rdWの差t(t=s+h=rdW−y)を求める。次に、フィードバック(FB)制御部570b’が、この差tをゼロにするフィードバック制御用のフィードバック制御値u0Wを求める。次に、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’が、データ領域3002の中心位置に記録素子51a’ を移動させるためにボイスコイルモータに与えられるべき論理制御値u1Wを求めて、その論理制御値u1Wを第2補正加算器570a’に渡す。具体的には、この論理制御値u1Wは、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’が、再生素子51a’が現在近接しているセクタに対応づけられた論理制御値u1Wを、上述の記録用制御値補正テーブルから読み出すことによって求められるものである。なお、論理制御値u1Wは、具体的には、上述した式(1)から式(6)と同様にして、式(6)の(r−r)を上述のh(h=rdW−rSW)に置き換え、式(6)のF(t)を、(rSW−y0W)に置き換えた下記の式によって決定されるものである。
1W=(1/k)×[d/dt+d(rSW−y0W)/dt] (11)
ここで、y0Wは、記録素子51b’が近接しているトラックの平均的な半径である。
【0126】
第2補正加算器570e’は、第2フィードフォワード(FW)制御部570f’から論理制御値u1Wを渡されると、その論理制御値u1Wを、上述したフィードバック制御値u0Wに加えて、これら論理制御値u1Wとフィードバック制御値u0Wとの和からなる実行制御値uを求める。そして、第2補正加算器570e’は、その実行制御値uをボイスコイルモータに入力して、ボイスコイルモータの制御を実行する。このようにボイスコイルモータの制御が行われることで、記録素子51b’がディスク中心から距離yだけ離れた位置に移動する。この図では、ボイスコイルモータやヘッド51’がまとめてプラント500a’として表されており、データの再生時における制御の流れの上では、プラント500a’は、実行制御値uが入力されると距離yを出力するものである。ただし、上述したように、図17のパート(b)では、プラント500a’の中に、式(8)により、再生素子51a’の座標点xから、記録素子51b’の座標点xを求めるMPUの動作も含まれている。
【0127】
記録素子51b’の移動後、移動先での再生素子51a’によるサーボ領域3001での読み取りに基づき、記録素子51b’の位置までの新たな距離yとサーボ領域3001の中心位置までの新たな距離rSWとの差sが新たに得られる。そして、その差に基づき、上述したのと同様の制御が実行される。このような制御が繰り返されることで、時間の経過とともに、記録素子51b’の位置が、データ領域3002の中心位置に近づいていくようになる。
【0128】
以上説明した図17の制御方式では、このようにして、記録素子51b’と再生素子51a’との間の距離の影響が補正される。この制御方式でも、論理制御値u1Rや論理制御値u1Wがフィードバック制御値u0Rやフィードバック制御値u0Wに加わってなる実行制御値uでボイスコイルモータ54が制御されることにより、図4の制御方式に比べて、データ領域3002の中心位置に向かって記録素子51b’と再生素子51a’が素早く移動することができる。このため、磁気ディスクの半径方向について、サーボ領域3001の位置とデータ領域3002の位置との間の相対的な距離が高周波で変動するような磁気ディスク3000であっても、良好な情報の記録/再生が実現する。
【0129】
以上の説明において、図17のフィードバック制御部570b’、第1補正加算部570a’、および第1フィードフォワード制御部570c’を合わせたものが、上述した情報記憶装置の基本形態におけるフィードバック制御値決定部の一例に相当する。また、第2フィードフォワード制御部570f’と、論理制御値u1Rや論理制御値u1Wを、フィードバック制御値u0Rやフィードバック制御値u0Wに加えて実行制御値u1Rや実行制御値u1Wを求める際の第2補正加算部570a’とを合わせたものが、上述した情報記憶装置の基本形態における制御実行値決定部の一例に相当する。また、実行制御値u1Rや実行制御値u1Wをボイスコイルモータに入力してボイスコイルモータの制御を実行する際の第2補正加算部570a’が、上述した情報記憶装置の基本形態における制御実行部の一例に相当する。
【0130】
ここで、図17の制御方式が採用されることで、記録素子51b’と再生素子51a’が中心位置から離れて大きく振動することが抑制されることを、具体的なシミュレーション結果を用いて説明する。
【0131】
図18は、再生素子51a’が近接するトラックにおいてサーボ領域3001の中心位置までの距離rSRとデータ領域3002の中心位置までの距離rdRとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでおり、記録素子51b’が近接するトラックにおいてサーボ領域3001の中心位置までの距離rSWとデータ領域3002の中心位置までの距離rdWとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合において、データ記録時に、記録用位置/制御値補正テーブルを用いて記録素子51b’の近接するトラックに応じたヘッドの位置決めを行うことの効果を表した図である。
【0132】
図18では、簡単のために、磁気ディスクのどのトラックにおいても図2や図3のようなサーボ領域の中心位置同士の間の位置ずれが発生しておらず、データ領域のうねりだけが発生しているものとしたときのシミュレーションの結果が示されている。
【0133】
図18のパート(a)では、トラックあたり220個のデータ領域3002がディスク円周方向に並んでいる磁気ディスク50(すなわち、トラックあたりのセクタ数が220の磁気ディスク50)について、セクタ番号を横軸にとったときの、記録素子51b’の位置までの距離yとデータ領域3002の中心位置までの距離rdWとの差t(以下、位置誤差tと呼ぶ)の変化の様子がグラフで示されている。ここで、位置誤差tは、トラック幅に対する割合(%)で表されている。このシミュレーションでは、磁気ディスクは一定の角速度で回転するものとしており、このように一定の角速度で回転する磁気ディスクに近接する再生素子51a’や記録素子51b’にとっては、再生素子51a’や記録素子51b’が近接するセクタが順次変わっていくこと(セクタ番号の増加)と、時間の経過とは比例するものである。そこで、横軸は、経過時間の代用とみなすこともできる。
【0134】
図18のパート(a)では、濃い実線のグラフ(太線グラフ)が、図17のパート(b)の制御方式のように、データ記録時に、記録用位置/制御値補正テーブルを用いることで記録素子51b’の近接するトラック(すなわち、差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいるトラック)に応じたヘッドの位置決めが行われた場合のグラフである。ここで、図18のパート(a)では、比較のために、データ記録時でも、再生用位置/制御値補正テーブルを用いることで再生素子51a’の近接するトラック(すなわち、差hがこの箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいるトラック)に応じたヘッドの位置決めが行われた場合のグラフが、点線で示されている。
【0135】
図18のパート(b)には、記録素子51b’が近接するトラックに対応した記録用位置補正テーブル(正確には、記録用位置補正テーブルのうち、このトラックに対応した部分)が濃い実線(太線)で示されており、また、再生素子51a’が近接するトラックに対応した再生用位置補正テーブル(正確には、再生用位置補正テーブルのうち、このトラックに対応した部分)が点線で示されている。これらの位置補正テーブルは、それぞれ、サーボ領域3001の中心位置までの距離rSW、rSRと、データ領域3002の中心位置までの距離rdW、rdRとの差h、hの変化のグラフに対応しており、トラック幅に対する割合(%)を単位として、位置補正テーブルを構成するセクタごとの位置補正値が記載されている。
【0136】
また、図18のパート(c)には、記録素子51b’が近接するトラックに対応した記録用制御値補正テーブルが濃い実線(太線)で示されており、また、再生素子51a’が近接するトラックに対応した再生用制御値補正テーブル(正確には、再生用制御値補正テーブルのうち、このトラックに対応した部分)が点線で示されている。これらの制御値補正テーブルは、式(8)および式(11)によって求められるものであるが、上述したように、ここで、このシミュレーションでは距離rSR、rSWは一定値であるため、式(8)の右辺の第2項めのd(rSR−y0R)/dtの項は落ち、式(11)の右辺の第2項めのd(rSW−y0W)/dtの項は落ちる。この結果、図18のパート(c)の再生用制御値補正テーブルは、式(8)の右辺の第1項めのd/dtの項によって決定され、図18のパート(c)の記録用制御値補正テーブルは、式(11)の右辺の第1項めのd/dtの項によって決定される。すなわち、図18のパート(b)の位置補正テーブルの2回微分に定数(ここでは負の定数)を乗じることによって図18のパート(c)の制御値補正テーブルがそれぞれ得られる。なお、図18のパート(c)では、制御値補正テーブルの縦軸の単位は適宜、無次元化して表されている。
【0137】
図18のパート(a)に示すように、記録用位置/制御値補正テーブルを用いて記録素子51b’の近接するトラック(すなわち、差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいるトラック)に応じたヘッドの位置決めが行われる太線グラフは、再生素子51a’の近接するトラック(すなわち、差hがこの箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいるトラック)に応じたヘッドの位置決めが行われる点線グラフよりも、振幅が小さいグラフとなっている。このことから、正確なデータ記録を実行する上では、データの記録の際に、記録素子51b’の近接するトラックに応じたヘッドの位置決めを行うことが好ましいということがわかる。
【0138】
以上が実施形態の説明である。
【0139】
以上の説明では、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正が行われたが、上述した情報記憶装置の基本形態では、非常に高周波の位置ずれが存在する場合には、フィードバック制御の追従性を安定化させるために、これらのテーブルに、その高周波の成分をカットするようなフィルタリングが施されたテーブルが用いられてもよい。
【0140】
また、上述した情報記憶装置の基本形態では、磁気ディスクのデータ領域としては、全体が磁性体材料で構成されているデータ領域でもよく、あるいは、磁性体材料で構成されたドット状の単位領域が磁気ディスクの円周方向に並んでなるデータ領域でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】データ領域とサーボ領域とが所定の位置関係に従って規則正しく並んでいる理想的な磁気ディスクを表した図である。
【図2】データ領域のうねりや、サーボ領域の位置ずれが発生している磁気ディスクを表した図である。
【図3】位置補正情報が記憶された領域を有する磁気ディスクを表した図
【図4】図3の磁気ディスクを採用したHDDで行われるヘッドの位置決め制御の制御ブロック図である。
【図5】サーボ領域の中心位置までの距離rとデータ領域の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルを用いた位置補正の効果を表した図である。
【図6】サーボ領域3001の中心位置までの距離rとデータ領域の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルを用いた位置補正の効果を表した図である。
【図7】情報記憶装置の具体的な実施形態であるハードディスク装置(HDD)を表した図である。
【図8】図7の磁気ディスクにおけるサーボ領域および補正情報領域の構成を表した図である。
【図9】制御基板57に設けられている制御機構を表した図である。
【図10】位置情報の再生信号の信号処理の際のR/Wチャネルの動作を表した動作ブロック図である。
【図11】位置情報の再生信号の信号処理の際の各種の信号の波形を表した図である。
【図12】MPUによるヘッドの位置決め制御の制御ブロック図である。
【図13】サーボ領域の中心位置までの距離rとデータ領域の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正の効果を表した図
【図14】サーボ領域の中心位置までの距離rとデータ領域の中心位置までの距離rとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合における、位置補正テーブルおよび制御値補正テーブルを用いた位置補正および制御値補正の効果を表した図である。
【図15】再生素子と記録素子との間の距離が長いヘッドにおいて、再生素子と記録素子との間の位置関係を表す図である。
【図16】再生素子と記録素子との間の距離が長いHDDが有する磁気ディスクにおけるサーボ領域および補正情報領域の構成を表した図である。
【図17】再生素子と記録素子との間の距離が長いHDDが有するMPUによるヘッドの位置決め制御の制御ブロック図である。
【図18】再生素子が近接するトラックにおいてサーボ領域の中心位置までの距離rSRとデータ領域3002の中心位置までの距離rdRとの差hが、この箇所のトラックの周長の5分の1の周期で揺らいでおり、記録素子が近接するトラックにおいてサーボ領域の中心位置までの距離rSWとデータ領域の中心位置までの距離rdWとの差hが、この箇所のトラックの周長の10分の1の周期で揺らいでいる場合において、データ記録時に、記録用位置/制御値補正テーブルを用いて記録素子の近接するトラックに応じたヘッドの位置決めを行うことの効果を表した図である。
【符号の説明】
【0142】
1000,2000,3000,50 磁気ディスク
1001,2001,3001 サーボ領域
1002,2002,3002 データ領域
1003,2003,3003 非磁性領域
3001a 同期情報部
3001b アドレス情報部
3001c 微小位置情報部
3004 補正情報領域
3004a 位置補正情報部
3004b 制御値補正情報部
3004c 再生用位置補正情報部
3004d 記録用制御値補正情報部
3004e 再生用位置補正情報部
3004f 記録用制御値補正情報部
4000a 補正加算部
4000b,570b,570b’ フィードバック制御部
4000c フィードフォワード制御部
4000d メモリ
500 HDD
51,51’ ヘッド
51a,51a’ 再生素子
51b,51b’ 記録素子
52 スライダ
53 アーム
54 ボイスコイルモータ(VCM)
54a ボイスコイルモータ(VCM)ドライバ
540 駆動軸
55 トラック
550 ライン状領域
56 ベース
57 制御基板
570 MPU
571 R/Wチャネル
5701 可変ゲイン
5702 低域通過フィルタ
5703 A/D変換器
5704 位相調整器
5705 ゲイン制御器
5706 同期信号検出器
5707 アドレス復調器
5708 微小位置復調器
5709 レジスタ
572 ディスクコントローラ
570a,570a’ 第1補正加算部
570c,570c’ 第1フィードフォワード制御部
570d,570d’ 第1メモリ
570e,570e’ 第2補正加算部
570f,570f’ 第2フィードフォワード制御部
570g,570g’ 第2メモリ
4000c フィードフォワード制御部
4000d メモリ
58 ヘッドアンプ
59 スピンドルモータ(SPM)
59a スピンドルモータ(SPM)ドライバ
5000,500a,500a’ プラント
5101,5102 軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記憶されるディスク状の情報記憶媒体を回転させ、回転する情報記憶媒体上にヘッドを移動させてアクセスする情報記憶装置において、
前記ヘッドを前記情報記憶媒体上で移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備え、
前記情報記憶媒体は、該情報記憶媒体の円周方向に延びて該情報記憶媒体のディスク中心を周回する帯状のトラックが、該情報記憶媒体の半径方向に複数配列されてなるものであり、各トラックは、ユーザ情報の書き込みおよび読み出し用の領域であって前記円周方向に延びた帯状の第1の領域と、前記ヘッドの位置決め用の情報を記憶する第2の領域とが交互に繰り返されてなるものであって、
前記制御部が、
第2の領域でのヘッドの読み取りで得られる前記半径方向についてのヘッド位置と、アクセス対象の第1の領域の前記半径方向についての代表的な位置を表す代表位置との差を求め、その差を解消するフィードバック制御のためのフィードバック制御値を決定するフィードバック制御値決定部と、
第1の領域と、該第1の領域の代表位置に前記ヘッドを移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけたテーブルを有し、該テーブルを用いて、前記フィードバック制御値決定部によりフィードバック制御値の決定が行われた第1の領域に対応する論理制御値を求めて、該論理制御値に、前記フィードバック制御値決定部により決定されたフィードバック制御値を加えることで制御実行用の制御実行値を決定する制御実行値決定部と、
前記制御実行値決定部により決定された制御実行値に基づいて前記駆動部の制御を実行する制御実行部とを備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【請求項2】
前記情報記憶媒体は、第1の領域の代表位置に前記ヘッドを移動させるための論理制御値を表した論理制御値情報が第2の領域に記録されているものであり、
前記テーブルは、前記情報記憶媒体の第2の領域に記録されている論理制御値情報を前記ヘッドで読み取ることによって作成されたものであることを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記情報記憶媒体の情報を読み取る読取素子と、前記情報記憶媒体に情報を記録する記録素子とを備えたものであって、
前記フィードバック制御値決定部は、情報の読み取りの際には、第2の領域での前記読取素子の読み取りで得られる前記半径方向についての該読取素子の位置と、アクセス対象の第1の領域の代表位置との差を求めることでフィードバック制御値を決定するものであり、情報の記録の際には、前記ヘッドにおける前記読取素子と前記記録素子との相対的な位置関係に基づいて、第2の領域での前記読取素子の読み取りで得られる前記半径方向についての該読取素子の位置から前記記録素子の位置を求め、その記録素子の位置と、アクセス対象の第1の領域の代表位置との差を求めることでフィードバック制御値を決定するものであり、
前記制御値補正部は、前記テーブルとして、第1の領域と該第1の領域の代表位置に前記読取素子を移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけた読取用テーブルと、第1の領域と該第1の領域の代表位置に前記記録素子を移動させるのに必要な論理上の制御値である論理制御値とを対応づけた記録用テーブルとの2つのテーブルを備えているものであって、情報の読み取りの際には前記読取用テーブルを用いて制御実行値を決定し、情報の記録の際には前記記録用テーブルを用いて制御実行値を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の情報記憶装置。
【請求項4】
前記情報記憶媒体は、第1の領域の代表位置に前記読取素子を移動させるための論理制御値を表した読取用制御値情報と、第1の領域の代表位置に前記記録素子を移動させるための論理制御値を表した記録用制御値情報とが第2の領域に記録されているものであり、
前記読取用テーブルおよび前記記録用テーブルは、前記情報記憶媒体の第2の領域に記録されている読取用制御値情報および記録用制御値情報を前記読取素子で読み取ることによって作成されたものであることを特徴とする請求項3記載の情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−223961(P2009−223961A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68167(P2008−68167)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】