説明

情報記録ディスク用紙基材およびその製造方法

【課題】 高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材およびその製造方法の提供。
【解決手段】 木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって抄造された原紙の両面に塗工層を有する塗工紙において、前記塗工紙が少なくとも2枚以上貼合されていることおよび塗工層を構成するバインダーがワックスを含有していることを特徴とする、情報記録ディスク用紙基材によって並びに前記原紙をサイズプレス処理し、乾燥し、得られる原紙の両面にデラミネートカオリンを顔料の主成分とし、かつ、ワックス含有のバインダーを使用する塗工液を塗工し、キャレンダー温度30〜100℃、キャレンダー線圧50〜200kg/cmのキャレンダー加工を行なうことを特徴とする、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗工層を有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材に関するものであり、さらに詳しくは単層あるいは多層抄きによって抄造された原紙の両面に顔料とワックス含有のバインダーを主体とする塗工層を設け、キャレンダー加工を施し、得られた塗工紙を少なくとも2枚以上貼合することで、吸水度や水中伸度、透湿度を低減した高い耐水性や表面バリア性を有し、さらに、平滑度や表面粗さおよび表面強度を規定して高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録ディスク用基材やそれを備えた情報記録ディスクには極めて平坦な表面性が要求される。それは、情報の記録再生中にヘッドクラッシュを起こさず、再生信号の振幅の変動やトラッキングエラーの発生を防止し、良好な情報の記録再生を行なうのに必要不可欠だからである。情報記録ディスクに使用される基材材料にはポリカーボネ−ト、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォンまたはフェノール樹脂などのいわゆるプラスチックが専ら使用されている。プラスチックは極めて平坦な表面性が得られやすいうえ、耐水性や耐候性に優れ、様々な使用条件を想定した環境下において変形しにくい利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、プラスチックは焼却しにくいうえ、焼却の際にはダイオキシンなどの有害物質が発生する危険があり、廃棄処理もできず、環境面や情報保護の観点でデメリットがあった。
【0004】
そのため、情報記録ディスク用基材におけるプラスチック代替として紙が検討されている。紙はプラスチックに比べ安価なうえ、はさみなどで切断できるため、廃棄時の情報保護が容易であり、焼却や廃棄処理もプラスチックよりも安全かつ容易で環境負荷を低減できるメリットがある。さらに、紙表面への印刷によって、意匠性の高いラベル表示が可能となる。
【0005】
しかしながら、紙はプラスチックに比べ、平坦な表面性が得られにくいうえ、耐水性や耐候性に劣り、様々な使用条件を想定した環境下においてカールやねじれが起こりやすいなど、変形しやすい欠点があった。
【0006】
このように、情報記録ディスク用基材におけるプラスチックから紙への代替は難しく、高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材はなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−192648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、情報記録ディスク用基材において、高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、鋭意検討の結果、木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって抄造された原紙の両面に塗工層を有する塗工紙において、前記塗工紙が少なくとも2枚以上貼合されていることおよび塗工層を構成するバインダーがワックスを含有していることを特徴とする、情報記録ディスク用紙基材によって解決できることを見出した。
【0010】
本発明の一つの実施態様は、木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって抄造された原紙の両面に塗工層を有し、該塗工層が顔料およびワックス含有バインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜30g/mの範囲にあり、該塗工層の全顔料100重量部の内、デラミネートカオリンが40〜100重量部であり、そして、バインダーの量が顔料100重量部に対して30〜200重量部である塗工紙を少なくとも2枚以上貼合することを特徴とする、情報記録ディスク用紙基材にも関する。
【0011】
本発明の別の一つの実施態様は、木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせで原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の両面に前記規定の顔料およびバインダーを主体とし、かつ、ワックスを含有することを特徴とする塗工液を塗工し、キャレンダー温度30〜100℃、キャレンダー線圧50〜200kg/cmのキャレンダー加工を行なうことを特徴とする、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の情報記録ディスク用紙基材は、高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材である。そして、本発明の情報記録ディスク用紙基材は、情報記録ディスク用基材におけるプラスチックの代替を可能ならしめるものである。
【発明の実施をするための最良の形態】
【0013】
本発明の有利な一つの実施態様においては、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の紙厚(JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」)が0.5〜1.0mmである。
【0014】
本発明の有利な一つの実施態様においては、該塗工層が顔料およびワックス含有バインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜30g/mの範囲にあり、該塗工層の全顔料100重量部の内、デラミネートカオリンが40〜100重量部であり、そして、バインダーの量が顔料100重量部に対して30〜200重量部である。
【0015】
本発明の有利な一つの実施態様においては、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるコッブ法による吸水度(JIS P 8140:1998「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」)が水との接触時間300秒において20g/m以下、または、縦横の水中伸度(JAPAN TAPPI No.27:2000「紙及び板紙−水中伸度試験方法」、B法)が1%以下、または、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿下に24時間放置した際のカップ法による透湿度(JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」)が300g/m以下である。
【0016】
本発明の有利な一つの実施態様においては、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるベック平滑度試験機による平滑度(JIS P 8119:1998「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」)が30秒以上、または王研式平滑度試験機による平滑度(JAPAN TAPPI No.5−2:2000「紙及び板紙−平滑度及び透気度試験方法−第2部:王研法」)が200秒以上であり、触針式表面粗さ測定器による中心線平均粗さRa(JIS B 0651:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」)が1.0μm以下である。
【0017】
本発明の有利な一つの実施態様においては、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の塗工層の表面強度がワックスピック試験(Tappi Test Method, T459 om−83, “Surface strength of paper (wax pick test)”)において、7以上である。
【0018】
本発明の有利な一つの実施態様においては、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法において、原紙の抄造、塗工液の塗工・乾燥、キャレンダー加工をオンマシンによる一貫した工程で行なう。
【0019】
このような構成をとることによって、情報記録ディスク用基材において、高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材およびその製造方法を提供することができた。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、木材パルプを主体とした、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって情報記録ディスク用紙基材の原紙を抄造する。木材パルプとしては、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)やLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)に代表される木材漂白化学パルプが主に使用される。必要に応じて、GP(砕木パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、BCTMP(ケミカルサーモメカニカルパルプ)等の機械パルプやDIP(古紙処理パルプ)、さらには、SWP(ポリオレフィン合成パルプ)やケナフ、麻等の非木材パルプなどを適宜配合することも出来る。その叩解度は特に限定されるものではない。
【0021】
本発明における、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の紙厚(JIS P 8118)は0.5〜1.0mmである。情報記録ディスクには、再生専用型(凹凸ピット型)としてコンパクトディスク(CD)、コンピュータ用の読み出し専用記録媒体CD(CD−ROM)、レーザーディスク(LD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、コンピュータ用の読み出し専用記録媒体DVD(DVD−ROM)、また追記型光ディスクとしてはコンパクトディスク・レコーダブル(CD−R、CD+R)、デジタルバーサタイルディスク・レコーダブル(DVD−R、DVD+R)、さらに書換え型光ディスクとしてはコンパクトディスク・リライタブル(CD−RW、CD+RW)、デジタルバーサタイルディスク・リライタブル(DVD−RW、DVD+RW)、コンピュータ用の読み書き・消去のいずれも可能なデジタルバーサタイルディスク(DVD−RAM)、並びに書換え型の光磁気ディスク(MO)、音楽用のミニディスク(MD)等の光ディスク、あるいは書換え型の磁気ディスクとしてフロッピー(登録商標)ディスク(FD)、ハードディスク(HD)があり、コンピュータ用のデータ、音楽・音声・映像などの各種情報がこれらの記憶容量に応じて、利用されている。また、最近では次世代大容量光ディスク「Blu−ray Disc」が策定されている。「Blu−ray Disc」は最大27GBの記録が可能な光メディア規格で、405nmの青紫色レーザーや開口数0.85の対物レンズ、光透過保護層厚0.1mmのディスク構造を採用することで大容量化を実現している。
【0022】
このように、CDやDVD等の光ディスクを製造するには、光ディスクの種類に応じて、一般に情報が記録済みの再生専用型光ディスクの場合、基材上にプラスチックのディスクにピットと呼ばれる小さな凹みを付けて、ディジタルのビット情報を記録する。その上を金属の反射膜と透明な保護層でコーティングした3層構造になっている。また、一般に追記・書換え型光ディスクの場合、基材上の金属の反射膜との間に記録層としての相変化記録膜、光磁気記録膜や色素膜等の誘電体層を設け、反射膜の上下等に保護層を設ける。一般的にCDやDVD等の光ディスクのディスク厚はその規格上1.2mmであるため、本発明における、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の紙厚もそれに応じて0.5〜1.0mmと規定するものである。情報記録ディスク用紙基材の紙厚が0.5mm未満では情報記録ディスクとして1.2mm未満となり、情報記録ディスク用紙基材の紙厚が1.0mmを超えると情報記録ディスクとして1.2mmを超えてしまう。情報記録ディスク用紙基材の紙厚は好ましくは0.6〜0.9mmが望ましい。
【0023】
本発明では、該塗工層が顔料およびワックス含有バインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜30g/mの範囲にあり、該塗工層の全顔料100重量部の内、デラミネートカオリンが40〜100重量部であり、そして、バインダーの量が顔料100重量部に対して30〜200重量部である。
本発明における情報記録ディスク用紙基材の塗工量は5g/m以下では、高い耐水性や表面バリア性が得られない。さらに、塗工層に含まれるバインダーが接着剤の役割を果たして、別途貼合用の接着剤を使用しなくても熱プレス処理などの加熱圧着による貼合可能であるが、塗工量が5g/m以下では貼合して得た情報記録ディスク用紙基材の貼り付きが弱く、剥離してしまう。塗工量30g/m以上では製造コストのアップに繋がる。好ましくは塗工量15〜25g/m、特に好ましくは塗工量20〜25g/mである。
【0024】
本発明の有利な一つの実施態様において、塗工層の全顔料100重量部の内、デラミネートカオリンを40〜100重量部、好ましくは60〜100重量部、特に好ましくは80〜100重量部、なかでも100重量部使用する。コート用顔料にはシリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、サチンホワイトやデラミネートカオリン以外のカオリン・クレー等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料があるが、本発明によれば、デラミネートカオリンが最も高い平滑性を得られることが判明した。各種の白色顔料の中でも、カオリンは六角板状構造を有しており、塗工後のキャレンダー加工処理等によって、紙面に平行に配向し、高い平滑性や光沢度などを与える。その中でも、デラミネートカオリンはアスペクト比が高く、コートカバレッジが非常に良いため、さらに高い平滑性を得ることができる。好ましくは、デラミネートカオリン100重量部が望ましいが、シリカやタルクと併用しても高い平滑性が得られる。併用する場合の他の顔料は特に規定するものではない。
【0025】
本発明の有利な一つの実施態様において、高い耐水性や表面バリア性を得るために、塗工層を構成するバインダーがワックス含有のワックスであり、該バインダーの量が顔料100重量部に対して30〜200重量部である。バインダーとしては、アクリル系ラテックスが最も有利であるが、それ以外にもスチレン・ブタジエン系やウレタン系ラテックス、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、水溶性高分子等、さまざまな種類のバインダーが使用可能である。塗工層を構成するバインダーがワックス含有のアクリル系ラテックスを主体とするバインダーの場合に、高い耐水性や表面バリア性および耐候性が得られ、かつ、塗工後のキャレンダー加工処理にて、高い平滑性と表面強度を得られることが判明した。さらに、塗工層を構成するバインダーがワックス含有のアクリル系ラテックス主体の情報記録ディスク用紙基材を用いてCDやDVD等の光ディスクを製造した場合、紙基材上に設ける保護層や記録層が浸透することや、化学反応するような相互作用がなく、良好な情報記録ディスクが得られることも判明した。なお、ワックス含有のアクリル系ラテックスは単独または前記の他バインダーとの併用もできる。
【0026】
バインダーに含有されるワックスについては特に限定されるものではないが、ワックス含有によって発現する撥水性や耐水性、表面バリア性は塗工層中のワックス含有量に依存するため、十分な撥水性、耐水性、表面バリア性が得られるようなバインダー量にしなければならない。また、塗工層に含まれるバインダーが貼合する際に接着剤の役割を果たすことから、十分な塗工紙間強度が得られるようなバインダー量にしなければならない。該バインダー量は、顔料100重量部に対し、バインダーが30部以下では耐水性や表面バリア性が不十分となり、紙の吸脱湿によるカール・ネジレが発生しやすくなる。また、貼合した際の塗工紙間強度が不十分となり、剥離してしまう。バインダーが200部以上では、バインダーによるマシンコーターの汚れが多くなるなどの問題が生じやすく、製造コストのアップにも繋がる。該バインダー量は顔料100重量部に対して、好ましくは50〜150重量部、特に好ましくは80〜100重量部である。
【0027】
ワックスには大きく分類して天然ワックスと合成ワックスがあり、天然ワックスは動・植物ワックス、鉱物ワックス、石油ワックス、例えばパラフィンワックス、モンタンワックスに分類でき、合成ワックスは脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フィッシャー・トロブシュワックス、ポリオレフィンワックス、例えばポリエチレンワックス、極性変性ポリオレフィンワックス、その他合成ワックスに分類できるが、本発明の塗工層中に含有されるワックスの種類については特に限定されるものではなく、これら、ワックス相互の混合物も勿論使用することができる。また、ワックスを助剤として使用しても良い。ワックスの使用量は、この種のバインダーに通常使用される量であり、バインダーとワックスの総重量を基準として一般に5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
また、塗工液における助剤については、主体となる顔料やバインダーおよび前記ワックス以外にも耐水化剤、消泡剤、分散剤、保水剤、増粘剤、潤滑剤、湿潤剤、防腐剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、印刷適性向上剤等を適宜使用でき、助剤について特に限定されるものではない。
【0028】
本発明の有利な一つの実施態様においては、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるコッブ法による吸水度(JIS P 8140)が水との接触時間300秒において20g/m以下、または、縦横の水中伸度(JAPAN TAPPI No.27、B法)が1%以下、または、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿下に24時間放置した際のカップ法による透湿度(JIS Z 0208)が300g/m以下であることを規定している。情報記録ディスクにはカール・ネジレや環境適性を考慮して、高い耐水性や表面バリア性、耐候性などが要求され、同様に情報記録ディスク用紙基材にも高い耐水性や表面バリア性などが要求される。情報記録ディスク用紙基材の耐水性および表面バリア性の目安として、これらの数値は上限レベルであり、吸水度、水中伸度および透湿度は低いほど良い。
【0029】
本発明の有利な一つの実施態様において、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるベック平滑度試験機による平滑度(JIS P 8119)が30秒以上、または王研式平滑度試験機による平滑度(JAPAN TAPPI No.5−2)が200秒以上であり、触針式表面粗さ測定器による中心線平均粗さRa(JIS B 0651)が1.0μm以下であることを規定している。情報記録ディスクには極めて平坦な表面性が要求され、当然ながら、情報記録ディスク用紙基材にも同様に高い平滑性が要求される。情報記録ディスク用紙基材の平滑性の目安として、これらの数値は下限レベルであり、ベック平滑度試験機および王研式平滑度試験機による平滑度はさらに高いほど良く、触針式表面粗さ測定器による中心線平均粗さRaはさらに低いほど良い。
【0030】
また、本発明における有利な一つの実施態様において、顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工層を両面に有する塗工紙を少なくとも2枚以上貼合して製造される情報記録ディスク用紙基材の塗工層の表面強度がワックスピック試験(Tappi Test Method, T459 om−83)において、7以上であることを規定している。塗工層強度が弱いと、情報記録ディスクの製造の際、塗工層剥離が起こり、問題となる。情報記録ディスク用紙基材の塗工層の表面強度の目安として、この数値は、塗工層の表面強度の下限レベルであり、さらに高いほどより好ましい。
【0031】
また、高い耐水性や表面バリア性を実現し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材を製造する方法においては、木材パルプを主体とした、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって原紙を抄造し、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の両面に顔料およびワックス含有バインダーを主体とする塗工液を塗工し、キャレンダー温度30〜100℃、キャレンダー線圧50〜200kg/cmのキャレンダー加工を行なう。さらに、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法をオンマシンによる一貫した工程で行なうことも特徴とする、情報記録ディスク用紙基材の製造方法を提供するものである。
塗工液は、一般の塗工方式、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、カーテンコーター、リップコーター、ロッドコーター、ダイコーター、グラビアコーター、チャンプフレックスコーターなどの塗工方式によってオフマシンコーターあるいはオンマシンコーターで塗工する。塗工方式は特に限定されるものではない。
また、塗工後のキャレンダー加工処理によって、情報記録ディスク用紙基材としての高い平滑性が得られ、その効果はキャレンダーの温度および線圧が高いほど大きい。また、キャレンダー加工処理によって、情報記録ディスク用紙基材の紙厚等を調整する。情報記録ディスク用紙基材における高い平滑性を得るために、好ましくはキャレンダー温度30〜100℃、なかでも50〜70℃、線圧100kg/cm以上が望ましい。
【0032】
高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性および表面強度を有し、カール・ネジレがなく、紙粉の発生がない、安価な情報記録ディスク用紙基材を製造する方法においては、木材パルプを主体とする、単層あるいは2層以上の抄き合わせによる原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の両面に塗工液を塗工し、キャレンダー加工処理を行なう。情報記録ディスク用紙基材の原紙の抄造は丸網抄紙機、長網抄紙機、トップワイヤーの付いた長網抄紙機、短網抄紙機あるいはそれらのコンビネーション抄紙機等で行なわれるが、これに限定されるもではない。
具体的に前記の一般的操作を以下に例示する:
パルプはNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)/LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)=0/100〜50/50(重量比)、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC(株)製、AL1200)を対パルプ0.05〜0.5%(有効成分)、定着剤として硫酸バンドを対パルプ0.1〜2%(有効成分)、カチオン化澱粉を対パルプ0.5〜2%(有効成分)を添加し、5層抄き合わせによって抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC(株)製、ST5000)1〜5%液を両面で20〜50ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥し、引き続き該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて抄造した原紙の片面または両面に、ワックス含有のアクリル系ラテックスを使用し、かつ、顔料がデラミネートカオリンを主体とする塗工液を片面当たり5〜30g/m(固形分)でオンマシン塗工し、乾燥後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度30〜100℃、線圧50〜200kg/cmで平滑性を与えるためオンマシンキャレンダー処理し、かつ、紙厚等の調整を行ない、情報記録ディスク用紙基材をオンマシンにて一貫して製造する。
なお、本発明はこの一般的操作に限定されるものではなく、原紙として巻き取られた後に、オフマシン塗工機やオフマシンキャレンダー装置で後処理を行なっても差し支えない。
実施例:
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。なお、部および%は固形分換算での重量部、重量%を示す。
【実施例1】
【0034】
<原紙の抄造>
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)/LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)=40%/60%配分のパルプを混合叩解してカナディアンスタンダードフリーネス(以下CSFと略す)500mlのパルプを得、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC(株)製、AL1200)を対パルプ0.25%、硫酸バンドを対パルプ0.75%、カチオン化澱粉を対パルプ1%逐次添加し、丸網抄紙機にて各層坪量72g/mの5層抄き合わせによって、坪量360g/mの紙を抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC(株)製、ST5000)2.5%液を両面で40ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥して原紙を抄造した。
<情報記録ディスク用紙基材の製造>
前記サイズプレス液を塗布し、乾燥して得た原紙は巻き取ることなく、該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて以下に示す塗工液を該原紙の両面に片面当たり15g/m(固形分)でオンマシン塗工し、乾燥させた後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度50℃、線圧130kg/cmの条件でオンマシンキャレンダー処理し、坪量390g/m、紙厚0.35mm、密度1.11g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造した後、前記製造品を熱プレス処理(温度 80℃;圧力 100kg/cm;時間 30分〜1時間)にて2枚貼合し、坪量780g/m、紙厚0.7mm、密度1.11g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
<塗工液調製>
水に分散剤((株)日本触媒製、アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、デラミネートカオリン((株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製、CAPIM NP)100部をカウレス分散機にて分散し、68%濃度の顔料スラリーを調製した。
この顔料スラリーにポリエチレンワックスとパラフィンワックスとの混合系を含有するアクリル系バインダー(ジョンソンポリマー(株)製、HRC−1645:ワックス含有量15重量%(絶乾))を顔料に対して50部添加、攪拌し、その後、耐水化剤や消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度55%の塗工液を調製した。
【実施例2】
【0035】
原紙の抄造および情報記録ディスク用紙基材の製造を以下のように行なった以外は、実施例1と同様にして、情報記録ディスク用紙基材を製造した。
<原紙の抄造>
NBKP/LBKP=40%/60%配分のパルプを混合叩解してCSF500mlのパルプを得、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC(株)製、AL1200)を対パルプ0.25%、硫酸バンドを対パルプ0.75%、カチオン化澱粉を対パルプ1%逐次添加し、丸網抄紙機にて各層坪量34g/mの5層抄き合わせによって、坪量170g/mの紙を抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC(株)製、ST5000)2.5%液を両面で40ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥して原紙を抄造した。
<情報記録ディスク用紙基材の製造>
前記サイズプレス液を塗布し、乾燥して得た原紙は巻き取ることなく、該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて実施例1に示す塗工液を該原紙の両面に片面当たり15g/m(固形分)でオンマシン塗工し、乾燥させた後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度50℃、線圧130kg/cmの条件でオンマシンキャレンダー処理し、坪量200g/m、紙厚0.175mm、密度1.14g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造した後、前記製造品を実施例1と同様に熱プレス処理にて4枚貼合し、坪量800g/m、紙厚0.7mm、密度1.14g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
【実施例3】
【0036】
実施例1、2と同様の塗工液を原紙の両面に片面当たり10g/m(固形分)塗工した以外は、実施例1と同様にして坪量380g/m、紙厚0.35mm、密度1.09g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造した後、前記製造品を実施例1と同様に熱プレス処理にて2枚貼合し、坪量760g/m、紙厚0.7mm、密度1.09g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
【実施例4】
【0037】
実施例1〜3と同様の塗工液を原紙の両面に片面当たり20g/m(固形分)塗工した以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m、紙厚0.35mm、密度1.14g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造した後、前記製造品を実施例1と同様に熱プレス処理にて2枚貼合し、坪量800g/m、紙厚0.7mm、密度1.14g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
【実施例5】
【0038】
塗工液の調製を以下のように行なった以外は、実施例1と同様にして、情報記録ディスク用紙基材を製造した。
<塗工液調製>
水に分散剤((株)日本触媒製、アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、デラミネートカオリン((株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製、CAPIM NP)100部をカウレス分散機にて分散し、68%濃度の顔料スラリーを調製した。
この顔料スラリーにポリエチレンワックスとパラフィンワックスとの混合系を含有するアクリル系バインダー(ジョンソンポリマー(株)製、HRC−1645)を顔料に対して80部添加、攪拌し、その後、耐水化剤や消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度50%の塗工液を調製した。
【0039】
比較例1:
<原紙の抄造>
NBKP/LBKP=40%/60%配分のパルプを混合叩解して(CSF)500mlのパルプを得、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC(株)製、AL1200)を対パルプ0.25%、硫酸バンドを対パルプ0.75%、カチオン化澱粉を対パルプ1%逐次添加し、丸網抄紙機にて各層坪量134g/mの5層抄き合わせによって、坪量670g/mの紙を抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC(株)製、ST5000)2.5%液を両面で40ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥して原紙を抄造した。
<情報記録ディスク用紙基材の製造>
前記サイズプレス液を塗布し、乾燥して得た原紙は巻き取ることなく、該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて実施例1に示す塗工液を該原紙の両面に片面当たり15g/m(固形分)でオンマシン塗工し、乾燥させた後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度50℃、線圧130kg/cmの条件でオンマシンキャレンダー処理し、坪量700g/m、紙厚0.7mm、密度1.00g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造し、坪量700g/m、紙厚0.7mm、密度1.00g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
<塗工液調製>
水に分散剤((株)日本触媒製、アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、デラミネートカオリン((株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製、CAPIM NP)100部をカウレス分散機にて分散し、68%濃度の顔料スラリーを調製した。
この顔料スラリーにアクリル系バインダー(旭化成(株)製、ポリトロンF2000)を顔料に対して50部添加、攪拌し、その後、耐水化剤や消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度55%の塗工液を調製した。
【0040】
比較例2:
実施例1〜4と同様の塗工液を紙の両面に片面当たり3g/m(固形分)塗工した以外は、実施例1と同様にして坪量366g/m、紙厚0.35mm、密度1.05g/cmの情報記録ディスク用紙基材をオンマシンで一貫して製造した後、前記製造品を実施例1と同様に熱プレス処理にて2枚貼合し、坪量732g/m、紙厚0.7mm、密度1.05g/cmの情報記録ディスク用紙基材を得た。
【0041】
比較例3:
塗工液の調製を以下のように行なった以外は、実施例1と同様にして、情報記録ディスク用紙基材を製造した。
<塗工液調製>
水に分散剤((株)日本触媒製、アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、デラミネートカオリン((株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製、CAPIM NP)100部をカウレス分散機にて分散し、68%濃度の顔料スラリーを調製した。
この顔料スラリーにワックス含有のアクリル系バインダー(ジョンソンポリマー(株)製、HRC−1645)を顔料に対して25部添加、攪拌し、その後、耐水化剤や消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度55%の塗工液を調製した。
【0042】
評価方法:
得られた情報記録ディスク用紙基材は、23℃−50%RHの恒温恒湿の環境下で24時間調湿後、それぞれ以下の方法による評価を行なった。
吸水度:
水との接触時間が300秒における、コッブ法による吸水度(JIS P 8140)を測定した。
水中伸度:
水への浸漬時間が5分における、縦横の水中伸度(JAPAN TAPPI No.27、B法)を測定した。
透湿度:
温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿下に24時間放置した際のカップ法による透湿度(JIS Z 0208)を測定した。
平滑度:
ベック平滑度試験機による平滑度(JIS P 8119)および王研式平滑
度試験機による平滑度(JAPAN TAPPI No.5−2)を測定した。
表面粗さ:
触針式表面粗さ測定器による中心線平均粗さRa(JIS B 0651)を
測定した。
塗工層強度:
表面強さ(ワックスピック試験、Tappi Test Method, T459 om−83)およびセロテープ(登録商標)剥離強度を行なった。セロテープ剥離強度は市販されているセロテープを塗工層に貼り付け、すばやく剥した際、セロテープに付着した塗工層の顔料やバインダー等を目視で評価し、以下の基準で評価した。
○:塗工層の顔料やバインダーがほとんど付着しない、
△:塗工層の顔料やバインダーがやや付着する、
×:塗工層の顔料やバインダーがかなり付着する。
情報記録ディスク適性:
情報記録ディスク用紙基材上に保護層等を設けた時の紙基材と保護層等との相互作用、情報記録ディスク製造時の加工適性や製造した情報記録ディスクの平滑性等を踏まえ、以下の基準で評価した。
○:この情報記録ディスク用紙基材は保護層との相互作用がなく、情報記録ディスク製造時の加工適性があり、かつこの情報記録ディスク用紙基材を用いて製造した情報記録ディスクは高平滑で記録データの再生が良好である。
×:この情報記録ディスク用紙基材は保護層との相互作用があるか、もしくは情報記録ディスク製造時の加工適性に難があり、この情報記録ディスク用紙基材を用いて製造した情報記録ディスクは平滑性が低く、記録データの再生ができない。
環境試験適性:
情報記録ディスクを温度80℃、相対湿度85%の高温高湿下に96時間放置後温度23℃、相対湿度50%RHの恒温恒湿下で72時間放置した後、表面の平滑性やカール・ネジレを調査し、以下の基準で評価した。
○:この情報記録ディスク用紙基材は、表面が平滑でカール・ネジレがなく、環境試験適性がある。
×:この情報記録ディスク用紙基材は、平滑性および/またはカール・ネジレがあり、環境試験適性がない。
【0043】
実施例1〜5、比較例1〜3の情報記録ディスク用紙基材の評価結果を表1に示す。
【0044】
塗工紙の貼合枚数およびワックスの存在による情報記録ディスク用紙基材の環境試験適性への影響:
【表1】

【0045】
表1のデータに基づき、本発明の効果を説明する:
実施例1ではワックス含有のアクリル系ラテックスをバインダーとして使用し、該バインダー量が顔料のデラミネートカオリンに対して50部からなる塗工液を原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を熱プレス処理にて2枚貼合することによって、吸水度が20g/m以下、水中伸度が縦横とも1.0%以下、透湿度が300g/m以下で高い耐水性、表面バリア性が得られ、かつ、ベック平滑度が30秒以上、王研式平滑度が200秒以上、表面粗さRaが1.0μm以下で高い平滑性が得られ、環境試験適性や情報記録ディスク適性があることが判る。
また、実施例2のように、製造した塗工紙を4枚貼合して、貼合数を増やすことで、吸水度、水中伸度、透湿度は実施例1の2枚貼合の場合よりもさらに低減し、より高い耐水性、表面バリア性が得られていることが判る。
それに対し、比較例1では、ワックスが含有されていないアクリル系ラテックスをバインダーとして使用した単層の塗工紙であり、ベック平滑度、王研式平滑度および表面粗さRaは規定値をクリアしているものの、吸水度や透湿度が規定値よりも高く、その結果、環境試験適性が劣っていることが判る。
【0046】
比較例1のように、塗工層にワックスを含有しない場合、吸水度や透湿度が規定値よりも高くなり、耐水性や表面バリア性が劣るため、この情報記録ディスク用紙基材およびこれを用いて製造した情報記録ディスクとも、情報記録ディスク適性はあるものの、環境試験適性がない。
【0047】
塗工量およびバインダ量の情報記録ディスク適性および環境試験適性への影響:
【表2】

【0048】
実施例3では、実施例1、2と同様の塗工液を原紙の両面に片面当り10g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して情報ディスク用紙基材を得ており、実施例1の原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して得た情報ディスク用紙基材と比べると、吸水度や水中伸度、透湿度は高くなるものの、規定値は十分クリアしており、高い耐水性や表面バリア性が得られていることが判る。さらに、ベック平滑度、王研式平滑度および表面粗さRaも規定値をクリアしており、平滑性も高く、環境試験適性や情報記録ディスク適性があることが判る。
実施例4では、実施例1〜3と同様の塗工液を原紙の両面に片面当り20g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して情報ディスク用紙基材を得ており、実施例1の原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して得た情報ディスク用紙基材と比べると、吸水度や水中伸度、透湿度がさらに低減しており、より高い耐水性や表面バリア性が得られていることが判る。
それに対し、比較例2では、実施例1〜4と同様の塗工液を原紙の両面に片面当り3g/m塗工した塗工紙を2枚貼合したが、得られた情報記録ディスク用紙基材は塗工紙間強度が弱く、剥離してしまい、物性評価ができなかった。
このように、顔料のデラミネートカオリンとワックス含有のバインダーを主体とする塗工液の塗工量は5g/m以上でないと十分な塗工層間強度が得られず、さらに、塗工量は多いほど耐水性や表面バリア性が高く、より良好な環境試験適性が得られることが判る。
【0049】
実施例5では、塗工層を構成するバインダーのワックス含有のアクリル系ラテックスが80部からなる塗工液を原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して情報ディスク用紙基材を得ており、実施例1のワックス含有のアクリル系ラテックス50部からなる塗工液を原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を2枚貼合して情報ディスク用紙基材に比べても、吸水度や水中伸度、透湿度はほぼ同等であり、高い耐水性や表面バリア性が得られていることが判る。
それに対し、比較例3では、塗工層を構成するバインダーのワックス含有のアクリル系ラテックスが25部からなる塗工液を原紙の両面に片面当り15g/m塗工した塗工紙を2枚貼合したが、得られた情報記録ディスク用紙基材は塗工紙間強度が弱く、剥離してしまい、物性評価ができなかった。
このように、ワックス含有のバインダー量は顔料に対して30部以上でないと十分な塗工層間強度が得られないうえ、高い耐水性や表面バリア性も得られないことが判る。その部数は30〜200重量部、殊に50〜150重量部、特に好ましくは80〜100重量部が好ましい。
【0050】
比較例2、3のように、塗工層にワックスを含有していても、塗工量や該バインダー量が規定値よりも少ない場合、貼合しても十分な塗工層間強度が得られず、剥離してしまい、環境試験適性や情報記録ディスク適性も全くない。
実施例1〜5は、いずれも吸水度や水中伸度、透湿度が規定値よりも低く、高い耐水性や表面バリア性を有し、かつ、高い平滑性と表面強度も有していることが判る。特に、塗工層にワックスを含有し、かつ、貼合数を増やした場合および塗工量を増やした場合に吸水度や水中伸度、透湿度を極めて低減することができ、この情報記録ディスク用紙基材およびこれを用いて製造した情報記録ディスクは極めて良好な情報記録ディスク適性および環境試験適性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせによって抄造された原紙の両面に塗工層を有する塗工紙において、前記塗工紙が少なくとも2枚以上貼合されていることおよび塗工層を構成するバインダーがワックスを含有していることを特徴とする、情報記録ディスク用紙基材。
【請求項2】
情報記録ディスク用紙基材の紙厚(JIS P 8118)が0.5〜1.0mmである、請求項1に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項3】
該塗工層が顔料およびワックス含有バインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜30g/mの範囲にあり、該塗工層の全顔料100重量部の内、デラミネートカオリンが40〜100重量部であり、そして、バインダー量が顔料100重量部に対して30〜200重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項4】
塗工層を構成するバインダーがアクリル系ラテックスである、請求項1〜3に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項5】
情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるコッブ法による吸水度(JIS P 8140)が水との接触時間300秒において20g/m以下、または、縦横の水中伸度(JAPAN TAPPI No.27、B法)が1%以下、または、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿下に24時間放置した際のカップ法による透湿度(JIS Z 0208)が300g/m以下である、請求項1〜4に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項6】
情報記録ディスク用紙基材の情報記録面におけるベック平滑度試験機による平滑度(JIS P 8119)が30秒以上、または王研式平滑度試験機による平滑度(JAPAN TAPPI No.5−2)が200秒以上であり、触針式表面粗さ測定器による中心線平均粗さRa(JIS B 0651)が1.0μm以下である、請求項1〜5に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項7】
情報記録ディスク用紙基材の塗工層の表面強度がワックスピック試験(Tappi Test Method, T459 om−83)において、7以上である、請求項1〜6に記載の情報記録ディスク用紙基材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の情報記録ディスク用紙基材を製造する方法において、木材パルプを主体とし、単層あるいは2層以上の抄き合わせで原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の両面にデラミネートカオリンを顔料の主成分とし、かつ、ワックス含有のバインダーを使用する塗工液を塗工し、キャレンダー温度30〜100℃、キャレンダー線圧50〜200kg/cmのキャレンダー加工を行なうことを特徴とする、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報記録ディスク用紙基材の製造方法において、原紙の抄造、塗工液の塗工、キャレンダー温度30〜100℃、キャレンダー線圧50〜200kg/cmのキャレンダー加工をオンマシンによる一貫した工程で行なうことを特徴とする、前記情報記録ディスク用紙基材の製造方法。

【公開番号】特開2007−66424(P2007−66424A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251309(P2005−251309)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】