説明

情報記録媒体

【課題】情報記録媒体は、意匠性の観点から傷及び汚れ防止の要望が高くなってきており、対応に迫られている。しかし、情報記録媒体表面を耐擦傷性及び防汚性の向上した設計とすると画像印字適性やホログラム転写適性が著しく低下することがあった。本発明は、耐擦傷性及び防汚性を維持し、ホログラム箔や画像印字適性の向上が可能とする情報記録媒体を提供する。
【解決手段】ホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔又は画像印字を必要とする情報記録媒体において、前記情報記録媒体の最表面の少なくとも前記転写箔又は画像印字部領域に接着性アンカー層を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔を熱転写が可能であり、文字や顔写真等の個別情報を印字することが可能な中間転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報が記録された情報記録体としては種々のものがあるが、偽造、変造に対する防護性を確保する目的で、情報記録体毎に異なる個別情報を記録しておくことが多い。個別情報は、例えば、預貯金用カード、クレジットカード等のカード類、もしくはパスポート、身分証明書では、保持者の氏名等の個人を特定する情報や顔写真、紙幣等の金券では一連番号等である。
【0003】
また、上記の情報記録体には、真正性を確保する意味で、回折格子パターンやホログラム等の光回折構造が適用してあることが多く、情報記録体の表面に積層して適用されている。
【0004】
一般に、磁気カードの場合、磁気カード製造後、カード上に文字や画像を形成したり、ホログラム箔などが積層されることが多いので、カード表面の保護層は画像印字適性及びホログラム箔適性を有することを重視して設計されている。一方、特許文献1のような光カードなどでは耐擦傷性が良好な樹脂設計をすることが可能であるが、磁気カードでは採用されることが少なかった。
【0005】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平8−96422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、情報記録媒体は、意匠性の観点から傷及び汚れ防止の要望が高くなってきており、対応に迫られている。しかし、情報記録媒体表面の耐擦傷性及び防汚性の向上させることと、画像印字適性やホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔適性を有することとは、材料設計の方向性が一般的に相反している。例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂は、耐擦傷性及び防汚性に優れるが、他の樹脂との密着性が低い。
【0007】
本発明は、情報記録媒体表面が耐擦傷性及び防汚性を有し、かつ画像印字適性及びホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔適性とを兼ね備えた情報記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための解決手段として、
請求項1に係る発明は、ホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔又は画像印字を必要とする情報記録媒体において、
前記情報記録媒体の最表面の少なくとも前記転写箔又は画像印字部領域に接着性アンカー層を有していることを特徴とする情報記録媒体である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記情報記録体の最表面が、耐擦傷性保護層からなることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記耐擦傷性保護層が、シリコーン樹脂又はフッ素含有樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の情報記録媒体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記接着性アンカー層は、前記耐擦傷性保護層に含有する樹脂成分を含むウレタン樹脂又はビニル系樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報記録媒体である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記接着性アンカー層は、熱溶融転写によって形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。すなわち、耐擦傷性及び防汚性を有するカードにおいても、本発明の接着性アンカー層を設けることでホログラム箔や画像印字適性向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面に基づき説明する。図1は、本発明に係る情報記録媒体(磁気カード)の積層構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明における接着性アンカー転写箔の構成の一例を示す断面図である。
【0015】
図1で示すように、本発明の情報記録媒体(磁気カード)は、樹脂フィルムからなるベース基材1上に、磁気記録層付きオーバーシート2を貼り合せ、カードの表面とする側に遮蔽用インキ層(図示せず)及び印刷層3を設け、さらに耐擦傷性保護層4としたもので、ホログラム箔や印字が必要とする領域6に接着性アンカーを設けた構成とするものである。
【0016】
以下、図1に基づき本発明の情報記録媒体を詳細に説明する。塩化ビニル樹脂等による厚さ0.45〜0.5mm程度のセンターコア1の両面に、塩化ビニル樹脂等により厚さ0.1mm程度のオーバーシート2をラミネートしたシートをカード基材とする。このカード基材上に磁気記録層7が設けられているが、この磁気記録層は一般的に所定の幅の磁気ストライプが使用されている。また、この磁気ストライプは前記のオーバーシートに設けられたものをラミネートする方法、或いはオーバーシートがラミネートされたカード基材に直接貼り付ける方法のいずれでも適宜選択することができる。なお、この磁気ストライプはカード基材の片側或いは両面に設けることも可能である。
【0017】
次に、このカード基材上の磁気記録層7(磁気ストライプ)の色が暗褐色或いは黒色系のために第一隠蔽層を厚さ0.5〜5μm程度に施し、磁気記録層を隠蔽する。なお、あまり厚く施すと磁気記録層の再生出力に影響するので前述した厚みの範囲で選択すると良い。この隠蔽層は磁気記録層上を含め自由なデザインができるようにしたものである。従って、この隠蔽力を生かすために濃度の高い着色インキ又は金や銀インキを使用し、印刷もスクリーン印刷等が使用する方法が一般的である。
【0018】
さらに、この第一隠蔽層上に第二の隠蔽層を厚さ0.5〜5μm程度に設けて、隠蔽力の向上を図った構成でも良い。
【0019】
さらに、前述した隠蔽層の上に絵柄層3を設けたものである。隠蔽(ベタインキ)層は好ましくは白色インキ層を施すことで、この表面に設ける絵柄層3は淡い着色インキ等を用いることができるので、デザイン的にも優れた意匠性が得ることができ、しかもオセット印刷等により薄膜の絵柄層を得ることが可能となる。
【0020】
さらに、絵柄層や隠蔽層の摩耗を最小限に抑制するためこの絵柄層を含めた全面に保護層6を設けた。この保護層6の耐擦傷性向上策としては、耐擦傷性保護層をカード全面にいわゆるハードコート材を形成すればよく、例えば、高硬度UV硬化樹脂や有機無機ハイブリット樹脂、メラミン系樹脂などが挙げられる。しかし、高硬度樹脂は、一般的に架橋度が高い傾向にあり、ガラス転移温度も高いことが多い。そのため、箔やインキ等との密着性が悪いことが多い。本発明のように、画像印字やホログラム箔転写が必要な箇所にのみ、アンカー剤を形成しておくことで、耐擦傷性に優れた構成であっても画像印字適性やホログラム適性が合格となる。この保護層6としては透明な硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、好ましくはこの保護層6は耐擦傷性及び防汚性の面からシリコーン樹脂及びフッ素樹脂、メラミン樹脂成分を有した樹脂系とする方が良い。
【0021】
例えば、シリコーン系保護層としては、シリコンアクリルポリオール(大成ファインケミカル社製、商品名「8BS−1005N」)60部、イソシアネート硬化剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHL」)18部、ポリカーボネートウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、商品名「ニッポラン5199」)40部、ポリエチレンWAX(東洋インキ社製、添加剤180)5部を酢酸エチル/酢酸ブチル混合溶媒で溶解し、ロールコータで乾燥時2μm厚になるよう塗工し、40℃の恒温室で5日間エージングすればよい。
【0022】
一方、フッ素樹脂系保護層としては、アクリル樹脂(三菱レイヨン製BR80)80部、フッ素樹脂(住友スリーエム製ダイニオンTHV)20部をメチルエチルケトン/トルエン混合溶媒で溶解し、ロールコータで乾燥時2μm厚になるよう塗工することで保護層ができる。
【0023】
また、メラミン系保護層は、メラミンの硬化にカード基材の変形温度よりも高い硬化温度を必要とするので熱転写法にて保護層を形成するのがよい。例えば、塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ製1700Z)60部、シリコーン/メラミン樹脂(GE東芝シリコーン製SHC900)30部、酢酸セルロース(ダイセル化学製L−40)10部をテトラヒドロフラン溶媒で溶解し、グラビアコーターで25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚1μmとなるように塗工する。このとき、乾燥炉の温度を120℃とする。続いて、転写箔用接着剤として、塩酢ビ樹脂(日信化学製ソルバインA)のメチルエチルケトン/トルエン混合溶液を乾燥膜厚1μmほど上塗りし、保護層転写箔フィルムを作製する。続いて、この保護層転写箔フィルムと磁気カードとを120℃、10分加圧貼り合せ後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することで、メラミン系保護層を有するカードとなる。
【0024】
前記のように耐擦傷性保護層がシリコーン又はフッ素含有樹脂とすることで、撥水、撥油性が向上し、防汚性が高くなることに加え、滑り性が良好になることで耐摩耗性もすることになる。一方、シリコーン又はフッ素含有樹脂においては、画像印字適性やホログラム適性が劣るが、アンカー剤として、ホログラム箔や画像印字との適合性が優れるウレタン及びビニル系樹脂など密着性の良好な樹脂系を主成分とし、カードと接着性アンカー層との濡れ性向上させる目的で表面張力の低いシリコーンやフッ素樹脂成分を付与することで耐擦傷性保護層との密着が可能となる。ウレタン樹脂とは、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、又は、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオールをイソシアネート系硬化剤で硬化させたものをいい、ビニル系樹脂とは、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のビニル共重合をいう。アンカー層と耐擦傷性保護層を密着させるには、両層が若干混じり合うことが重要で、塗布する方法では耐擦傷性保護層をやや侵す溶剤を選択すればよいが、硬化したシリコーンやフッ素樹脂を侵すことができる溶剤はほとんどない。そこで、耐擦傷性保護層を若干、熱溶融させてアンカー層と密着させる方がよい。
【0025】
ホログラム箔や画像印字適性向上のために接着性アンカー層の形成方法としては、 オフセットやシルク印刷で直接部分塗布するよりも、グラビア法やマイクログラビア法、スプレー法などでフィルム基材上に接着性アンカー層の転写箔を作製し、必要な箇所に部分熱転写する方が生産速度の面で効率的であることに加え、カード製造工程を自動装置化し易い。
【0026】
具体的には、エチレン−酢ビ共重合樹脂(住友化学社製、商品名「エバテートD3022」)70部、シリコンアクリルポリオール(大成ファインケミカル社製、商品名「8BS−1005N」)30部の酢酸エチル/酢酸ブチル混合溶液をグラビア法でポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、商品名「E5007」、25μm厚)上に乾燥時で1μm厚ほど形成し、耐擦傷性保護層を有するカード上に120℃10分加圧プレスし、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することによって形成できる。場合によっては、ポリエチレンテレフタレートフィルムからの剥離を軽くするために離型フィルムを使用することも可能である。同様に、接着性アンカー層用樹脂として、たとえばエチレン−酢ビ共重合樹脂の代わりにアクリルウレタン(大成ファインケミカル社製、商品名「8UA−308」)でもホログラム箔や画像印字適性向上の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の情報記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明における接着性アンカー層転写箔フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1……ベース基材
2……オーバーシート
3……絵柄印刷層
4……耐擦傷性及び防汚性保護層
5……接着性アンカー層
6……ホログラム箔又は画像印字層
7……磁気テープ
8……接着性アンカー層
9……剥離層
10……ベースフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム若しくは回折格子パターンからなる転写箔又は画像印字を必要とする情報記録媒体において、
前記情報記録媒体の最表面の少なくとも前記転写箔又は画像印字部領域に接着性アンカー層を有していることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記情報記録体の最表面が、耐擦傷性保護層からなることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記耐擦傷性保護層が、シリコーン樹脂又はフッ素含有樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記接着性アンカー層は、前記耐擦傷性保護層に含有する樹脂成分を含むウレタン樹脂又はビニル系樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記接着性アンカー層は、熱溶融転写によって形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−262092(P2008−262092A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105769(P2007−105769)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】