説明

情報通信装置及び情報通信方法

【課題】 セキュリティ用のアンテナ装置と連携させて、セキュリティ機能を高めた情報通信装置及び情報通信方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 アンテナ装置をリーダアンテナ6に対して高さ方向に配置した状態で情報通信を行うことが可能な情報通信装置1において、情報通信用の第1のアンテナ装置4と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5とを有し、第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5とを高さ方向に対向配置して、前記第1のアンテナ装置4の共振周波数を読取周波数へシフトさせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ機能を備える情報通信装置及び情報通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式のICカードをリーダライタ上にかざすことで両者間で無線通信を行う通信システムが普及している。
【0003】
しかしながらICカード情報のセキュリティは適切に保たれていない。このため持ち主以外の誰でも、例えば金額の入った電子マネーを使用することができてしまう問題があった。
【特許文献1】特開2000−174539号公報
【特許文献2】特開2008−35033号公報
【特許文献3】WO2008/038672号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、アンテナ装置に関する発明が開示されているが、セキュリティ機能については一切、記載されていない。
【0005】
一方、特許文献2には、無線タグ単体では通信不能で、無線タグに導体を協働させることで、リーダライタとの通信を可能とした通信システムに関する発明が開示されている。
【0006】
また特許文献3には、アンテナ部材単体では通信不能で、アンテナ部材と導電体とを協働させることで、通信可能としたRFID情報媒体に関する発明が開示されている。
【0007】
しかしながら特許文献2,3では、導体がなくては通信できないように、無線タグやアンテナ部材自体に対して、例えば感度を実用レベルよりも低くする等の工夫を必要とした。
【0008】
しかも、特許文献2,3の構成では、例えば、セキュリティを段階的に高めるようなことはできないし、また、セキュリティを必要とする場合と、セキュリティを必要とせず簡便的に使用したい場合のような使い分けができない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、セキュリティ用のアンテナ装置と連携させて、セキュリティ機能を高めた情報通信装置及び情報通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アンテナ装置をリーダアンテナに対して高さ方向に配置した状態で情報通信を行うことが可能な情報通信装置において、
情報通信用の第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置とを有し、
前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置とを前記高さ方向に対向配置して、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、アンテナ装置をリーダアンテナに対して高さ方向に配置した状態で情報通信を行うことが可能な情報通信方法において、
情報通信用の第1のアンテナ装置単体では通信不能とし、前記第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置とを前記高さ方向に対向配置して、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせて通信可能とすることを特徴とするものである。
【0012】
このように本発明では、情報通信用の第1のアンテナ装置のみでは、リーダアンテナとの間で情報通信を行うことができないが、情報通信用の第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置との所定の組み合わせにより、第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせることができて初めて情報通信を可能とする。よって高いセキュリティ機能を備えた情報通信装置にできる。
【0013】
本発明では、前記第1のアンテナ装置を前記第2のアンテナ装置よりも前記リーダアンテナ側に配置することが好ましい。これにより、第1のアンテナ装置の共振周波数を発現させやすくなり、リーダアンテナとの間で確実に情報通信を行うことが出来る。
【0014】
また本発明では、前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置との組み合わせだけでは通信不能とし、さらに前記第1のアンテナ装置に磁性部材を重ねた状態にして、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を、前記読取周波数へシフトさせて通信可能とすることが好ましい。このように、磁性部材なしでは、第1のアンテナ装置の共振周波数を、読取周波数へシフトさせることができなくなり、セキュリティ機能をより高めることができる。
【0015】
また本発明では、前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置のシフトしたそれぞれの共振周波数を前記リーダアンテナにて読み取り、それぞれ所定の共振周波数のときにのみ第1のアンテナ装置と通信可能とすることができる。
【0016】
また本発明では、前記第1のアンテナ装置と第2のアンテナ装置との各ICチップの情報を読み取り、それぞれ照合して適合したとき前記第1のアンテナ装置と通信可能とすることができる。
上記により、より効果的に、セキュリティ機能を高めることができる。
【0017】
また本発明では、前記第1のアンテナ装置に内蔵されるアンテナの大きさは、前記第2のアンテナ装置に内蔵されるアンテナよりも大きいことが好ましい。これにより、第1のアンテナ装置の共振周波数を発現させやすくなり、リーダアンテナとの間で確実に情報通信を行うことが出来る。
【0018】
また本発明では、少なくとも一方のアンテナ装置を収納可能な収納部を有する保持体が前記リーダアンテナと一体的に設けられていることが好ましい。これにより例えば、第1のアンテナ装置と第2のアンテナ装置の2枚を手で持った状態で操作しなくても、少なくとも一方のアンテナ装置を保持できるため、簡単且つ適切にリーダアンテナとの間で情報通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、情報通信用の第1のアンテナ装置のみでは、リーダアンテナとの間で情報通信を行うことができないが、情報通信用の第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置との所定の組み合わせにより、第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせることができて初めて情報通信を可能とする。よって高いセキュリティ機能を備えた情報通信装置にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における第1実施形態の情報通信装置の模式図(部分縦断面図)、
【図2】比較例における情報通信装置の模式図(部分縦断面図)、
【図3】比較例における情報通信装置の模式図(部分縦断面図)、
【図4】第1のアンテナ装置と第2のアンテナ装置との設置を逆にした場合の情報通信装置の模式図(部分縦断面図)、
【図5】本発明における第2実施形態の情報通信装置の模式図(部分縦断面図)、
【図6】(a)は、情報通信用の第1のアンテナ装置を示す平面図であり、(b)は、セキュリティ用の第2のアンテナ装置を示す平面図、
【図7】図1の実施例における周波数と信号出力との実験結果、
【図8】図2の比較例における周波数と信号出力との実験結果、
【図9】図3の比較例における周波数と信号出力との実験結果、
【図10】図4の構成における周波数と信号出力との実験結果、
【図11】図5の実施例における周波数と信号出力との実験結果。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明における第1実施形態の情報通信装置の模式図(部分縦断面図)である。
【0022】
図1に示す情報通信装置1は、リーダ機能部2と、収納部7を備える保持体3と、情報通信用の第1のアンテナ装置4と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5とを有して構成される。図1は、いわゆるリーダライタに第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5が保持、設置された状態を示している。
【0023】
図1に示すように、リーダ機能部2の内部にはリーダアンテナ6が内蔵されている。
図1に示すように、リーダ機能部2の表面2aに保持体3が取り付けられて一体化されている。
【0024】
図1に示すように、保持体3に形成された収納部7は、正面に挿入口7aを備え、収納部7の大きさ(内部空間の大きさ)は第1のアンテナ装置4と同等である。図1に示すように、第1のアンテナ装置4を挿入口7aから収納部7内に収納して保持することが出来る。
【0025】
図1に示すように、保持体3の上面3aが、第2のアンテナ装置5の設置面となっている。第2のアンテナ装置5の設置領域を凹状あるいは凸状にしたり、設置領域の周囲を凸部で囲むなどして、第2のアンテナ装置5を上面3aの所定場所に設置しやすいようにすることが出来る。また、保持体3の厚み寸法を図1よりも大きくして、第2のアンテナ装置5用の収納部を、収納部7の上方に並設することも可能である。
【0026】
図6(a)は、情報通信用の第1のアンテナ装置を示す平面図であり、図6(b)は、セキュリティ用の第2のアンテナ装置を示す平面図である。
【0027】
図6(a)に示すように第1のアンテナ装置4は、基板上に第1のアンテナ9とICチップ10が形成された形態である。
【0028】
図6(a)に示すように第1のアンテナ9は例えば巻回されたコイル状で形成されている。ICチップ10はアンテナ9に電気的に接続されている。
【0029】
また図6(b)に示すように第2のアンテナ装置5は、基板上に第2のアンテナ11とICチップ12が形成された形態である。
【0030】
図6(b)に示すように第2のアンテナ11は例えば巻回されたコイル状で形成されている。ICチップ12はアンテナ11に電気的に接続されている。
【0031】
図6(a)、図6(b)に示すように、第1のアンテナ装置4と、第2のアンテナ装置5とではアンテナ9,11の大きさが異なっている。
【0032】
図6(a)に示すように、第1のアンテナ9は、幅寸法(X方向の寸法)がT1で、縦寸法(Y方向の寸法)がL1で形成されており、第2のアンテナ11は、幅寸法(X方向の寸法)がT2で、縦寸法(Y方向の寸法)がL2で形成されている。
【0033】
図6(a)(b)では、第1のアンテナ9の幅寸法T1は、第2のアンテナ11の幅寸法T2よりも大きく、第1のアンテナ9の縦寸法L1は、第2のアンテナ11の縦寸法L2よりもやや大きい。各幅寸法T1,T2及び縦寸法L1,L2は数mm〜数百mm程度である。
【0034】
なお、情報通信用の第1のアンテナ装置4では、ICチップ10に所定の情報が記憶されているが、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5では、ICチップ12にセキュリティ情報を入れるか否かは任意である。本実施形態では、後述するように、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5は、第1のアンテナ装置4の共振周波数をシフトさせるために必要なものであり、例えば、第2のアンテナ装置5自体を読み取らない構成にできるため、第2のアンテナ装置5のICチップ12に情報を入れなくてもよい。かかる場合、第2のアンテナ装置5にはICチップ12が無くてもよい。また、セキュリティ機能の向上のために、第1のアンテナ装置4のみならず、第2のアンテナ装置5自体も読み取る構成とする場合には、第2のアンテナ装置5のICチップ12にセキュリティ情報を入れておくことが望ましい。
【0035】
図1に示すように、保持体3の収納部7に収納された第1のアンテナ装置4とリーダアンテナ6との間には高さ方向(Z)に間隔H1が設けられ、保持体3の上面3aに設置された第2のアンテナ装置5と第1のアンテナ装置4との間には高さ方向(Z)に間隔H2が設けられる。各間隔H1,H2は、第1のアンテナ装置4、第2のアンテナ装置5及びリーダアンテナ6の各特性に応じて任意に決定することが可能である。間隔H1,H2は、具体的には、数mm〜数十mm程度である。
【0036】
図1に示すように、情報通信用の第1のアンテナ装置4とセキュリティ用の第2のアンテナ装置5とを高さ方向(Z)に対向配置することで、第1のアンテナ装置4の共振周波数を読取周波数へシフトさせることが出来る。
【0037】
すなわち、第1のアンテナ装置4だけでは、リーダアンテナ6との間で情報通信を行うことはできないが、情報通信用の第1のアンテナ装置4と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5との所定の組み合わせにより、第1のアンテナ装置4の共振周波数を読取周波数へシフトさせることができて初めて情報通信を可能とする。よって高いセキュリティ機能を備えた情報通信装置1にできる。
【0038】
図2、図3は比較例の構成であり、いずれも通信不能な状態を示している。
図1に示す実施例や図2、図3の各比較例の構成を用いて、第1のアンテナ装置4の共振周波数に関する実験を行った。
【0039】
実験では、保持体3の間隔H1(図1参照)を10mm、間隔H2を5mmとした。また、第1のアンテナ装置(RFIDカード)4はNFC ISO14443 Type Aで、第1のアンテナ9の幅寸法T1を85mm、縦寸法L1を55mmとした。また、第2のアンテナ装置(RFIDカード)5はNFC ISO14443 Type Aで、第2のアンテナ11の幅寸法T2を50mm、縦寸法L2を50mmとした。
【0040】
図2は、保持体3の上面3aに第1のアンテナ装置4を設置し、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を使用しない比較例である。図2の構成における周波数と信号出力との実験結果が図8に示されている。
【0041】
図3は、保持体3の収納部7に第1のアンテナ装置4を収納し、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を使用しない比較例である。図3の構成における周波数と信号出力との実験結果が図9に示されている。
【0042】
図8,図9に示すように、第1のアンテナ装置4のみを使用した構成では、信号出力(絶対値)が14.30MHzで高くなっており、第1のアンテナ装置4の共振周波数が14.30MHzであることがわかった。
【0043】
一方、図1に示すように、第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5とを高さ方向(Z)に対向配置した構成では、図7に示すように、信号出力(絶対値)が異なる2箇所の周波数帯域で高くなることがわかった。
【0044】
なお、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5単体での実験は行っていないが、第1のアンテナ装置4と同様にRFIDであり、共振周波数が13.56MHz付近となるように(実際には図8、図9に示すようにずれることがある)予め調整されたものである。
【0045】
図7に示す共振周波数(1)(2)のうち、16.56MHz付近の共振周波数(1)が、第1のアンテナ装置4の共振周波数である。
【0046】
リーダアンテナ6側では、第1のアンテナ装置4を構成する第1のアンテナ9との間で、図7に示す16.56MHzの共振周波数(1)にて磁束結合し無線通信可能なように調整されている。
【0047】
よって、第1のアンテナ装置4を単体で用い、共振周波数が14.30MHzとなる図8、図9の場合は、リーダアンテナ6との間で無線通信を行うことができない。
【0048】
一方、情報通信用の第1のアンテナ装置4とともにセキュリティ用の第2のアンテナ装置5を高さ方向(Z)に対向配置することで、第1のアンテナ装置4の共振周波数を、14.30MHzから16.56MHzにシフトさせることができ、これにより、リーダアンテナ6との間で無線で情報通信を行うことが可能になる。
【0049】
セキュリティ用の第2のアンテナ装置5には、所定のアンテナ装置を用いることで、第1のアンテナ装置4の共振周波数を読取周波数へシフトさせることが出来る。すなわち、第2のアンテナ装置5としてどのようなRFIDカードを用いてもよいわけでなく、所定のRFIDカードを用いることで、第1のアンテナ装置4の共振周波数を所定値に設定された読取周波数へ適切にシフトさせることが出来る。
【0050】
図1に示す実施形態では、情報通信用の第1のアンテナ装置4を、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5よりもリーダアンテナ6側に設置している。一方、図4では、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を、保持体3の収納部7に収納し、情報通信用の第1のアンテナ装置4を、保持体3の上面3aに設置して、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を、情報通信用の第1のアンテナ装置4よりもリーダアンテナ6側に設置している。
【0051】
図4の構成における周波数と信号出力との実験結果が図10に示されている。図10に示すように、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5における共振周波数(2)は発現するが、情報通信用の第1のアンテナ装置4における共振周波数(1)は発現しないか、発現しても非常に小さいと考えられる。
【0052】
このため、図1のように、情報通信用の第1のアンテナ装置4を、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5よりもリーダアンテナ6側に設置することで、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)を適切に発現させることができ、リーダアンテナ6との間で確実に情報通信を行うことが出来る。
【0053】
また図6に示すように、第1のアンテナ装置4に内蔵される第1のアンテナ9の大きさを、第2のアンテナ装置5に内蔵される第2のアンテナ11よりも大きくすることで、図7に示すように、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)を適切に発現させることができ、リーダアンテナ6との間で確実に情報通信を行うことが出来る。
【0054】
また、セキュリティ機能をさらに向上させるためには、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)と第2のアンテナ装置5の共振周波数(2)の両方をリーダアンテナ6で読み取り、共振周波数(1)と(2)が所定の共振周波数に一致しない時は通信不可とし、一致する時は通信可能とすると良い。すなわち図7に示す第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)が、16.56MHz付近にシフトするだけでなく、第2のアンテナ装置5の共振周波数(2)が、読取周波数として設定された12.60MHz付近にシフトして初めて、第1のアンテナ装置4とリーダアンテナ6との間で通信可能としている。なおこのように、複数の共振周波数を読み取るためには、リーダアンテナに共振用コンデンサを付加して、回路上でこの共振用コンデンサ付加した状態としない状態とを切り替えることで、リーダアンテナ6の共振周波数を変えて共振周波数(1)と共振周波数(2)を読み取ることが可能である。あるいは、同調回路をリーダアンテナ6に挿入してアンテナの容量成分を変化させることでも複数の共振周波数を読み取ることが可能である。さらには、図1には図示していないが、第2のアンテナ装置5の共振周波数(2)を読み取るための別のリーダアンテナを、リーダアンテナ6に積層するような形で情報通信装置1に設けても良い。
【0055】
さらに、上記のように共振周波数の一致性を認識するだけでなく、第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5との各ICチップの情報を読み込んで照合し適合したときに初めて、第1のアンテナ装置4と通信可能とする。これにより、より効果的にセキュリティ機能を向上させることが可能になる。なお図1には図示していないが、第2のアンテナ装置5のICチップのセキュリティ情報を読み取るためには、上記のようにリーダアンテナ6に共振用コンデンサや同調回路を付加したり、リーダアンテナ6とは別のリーダアンテナを情報通信装置1に設けたりすると良い。
【0056】
例えば、第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5との各ICチップ内に暗号を入れておき、その暗号が一致した場合に、通信可能とすれば、よりセキュリティ機能を高めることが可能である。
【0057】
図5は、本発明における第2実施形態の情報通信装置の模式図(部分縦断面図)である。図5において図1と同じ部分には同じ符号が付されている。
【0058】
図5に示す実施形態では、情報通信用の第1のアンテナ装置4に磁性部材20を重ねた状態にして、保持体3に設けられた収納部7に収納している。図5に示すように磁性部材20をリーダアンテナ6側に向けている。なお磁性部材20は、第1のアンテナ装置4に予め重ねた状態で保持されていてもよいし、あるいは、収納部7側に例えば交換可能に取り付けられていてもよい。そして、図1と同様に、保持体3の上面3aにセキュリティ用の第2のアンテナ装置5が設置されている。図5の構成における周波数と信号出力との実験結果が図11に示されている。なお図5での実験に使用した磁性部材20は、アルプス電気株式会社製のRFID用磁性シート(80R50)であった。
【0059】
図11に示すように、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)は、図7に示す第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)よりも低周波側にシフトし、図11での共振周波数(1)が、15.30MHzになることがわかった。これは第1のアンテナ装置4の共振周波数をfr、インダクタンスをL、容量をCとした時にfr=1/2π√(LC)と表されるため、磁性部材20を重ねることで第1のアンテナ装置4のLが増加した結果、共振周波数frが小さくなったものと考えられる。
【0060】
このように磁性部材20を第1のアンテナ装置4と重ねることで、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)を、前記磁性部材20を用いずに使用した場合(図1、図7)と異ならせることができる。そして図5の構成におけるリーダアンテナ6側では、第1のアンテナ装置4を構成する第1のアンテナ9との間で、図11に示す15.30MHzの共振周波数(1)にて磁束結合し無線通信可能なように調整されている。
【0061】
よって、図1のように、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を情報通信用の第1のアンテナ装置4と組み合わせても、磁性部材20を用いない構成では、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)を、読取周波数へ適切にシフトできなくなり、セキュリティ機能をより効果的に高めることが可能になる。
【0062】
図5の構成では、磁性部材20の種類を変えることで、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)のシフト量を種々、変えることができる。よって、情報通信用の第1のアンテナ装置4と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5とともに、磁性部材20を用いることで、組み合わせを多数にできる。
【0063】
磁性部材20は特に限定されない。例えば、上記したアルプス電気株式会社製のRFID用磁性シートを使用できる。あるいは、基材上にFeAlN等の磁性膜が成膜された構成にすることもでき、具体的には基材/FeAlN/SiO2とする積層構成や、基材/FeAlN/SiO2/FeAlN/SiO2/FeAlNとする積層構造等を用いることができる。
【0064】
本実施形態では、セキュリティの有無や、セキュリティに高低さを持たせることが可能である。
【0065】
例えば、ある程度のセキュリティ機能を必要とする場合には、図1のように、情報通信用の第1のアンテナ装置4とともに、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5を用いる構成とし、より高度なセキュリティ機能を必要とする場合には、図5のように、情報通信用の第1のアンテナ装置4、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5と、さらに磁性部材20を用いる構成としたり、あるいは、第2のアンテナ装置5側も共振周波数やセキュリティ情報を読み取る構成とする。また、セキュリティ機能が必要ない簡易的な用途では、情報通信用の第1のアンテナ装置4単体でも通信可能に、読取周波数を調整すればよい。
【0066】
また、図1の構成、図5の構成ともに、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)が13.56MHzと異なる値になっていたが、第1のアンテナ装置4単体での共振周波数を13.56MHzからずらして、図1の構成、あるいは図5の構成としたときに、第1のアンテナ装置4の共振周波数(1)が13.56MHzとなるように調整することも可能である。
【0067】
図1における情報通信装置1には、リーダアンテナ6と一体化した収納部7を有する保持体3が設けられる。このような保持体3を設けることで、例えば、第1のアンテナ装置4と第2のアンテナ装置5の2枚を手で持った状態で操作しなくても、第1のアンテナ装置4を収納部7内に保持できるため、あとは、第2のアンテナ装置5を保持体3の上面3aに設置すれば、簡単且つ適切にリーダアンテナ6との間で、情報通信を行うことが可能になる。
【0068】
図1では、リーダ機能部(リーダライタ)2を含めて情報通信装置1としたが、本実施形態では、情報通信用の第1のアンテナ装置4と、第1のアンテナ装置4の共振周波数を読取周波数へシフトさせるためのセキュリティ用の第2のアンテナ装置5とを組み合わせたアンテナ装置、あるいは、情報通信用の第1のアンテナ装置4、セキュリティ用の第2のアンテナ装置5及び磁性部材20を組み合わせたアンテナ装置を、情報通信装置と定義することができる。
【0069】
本実施形態の情報通信装置及び情報通信方法は、電子マネー、クレジットカード、セキュリティロック等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 情報通信装置
2 リーダ機能部
3 保持体
4 第1のアンテナ装置
5 第2のアンテナ装置
6 リーダアンテナ
7 収納部
9、11 アンテナ
10、12 ICチップ
20 磁性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置をリーダアンテナに対して高さ方向に配置した状態で情報通信を行うことが可能な情報通信装置において、
情報通信用の第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置とを有し、
前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置とを前記高さ方向に対向配置して、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせることを特徴とする情報通信装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナ装置を前記第2のアンテナ装置よりも前記リーダアンテナ側に配置する請求項1記載の情報通信装置。
【請求項3】
さらに前記第1のアンテナ装置に磁性部材を重ねた状態にして、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を、前記読取周波数へシフトさせる請求項1又は2に記載の情報通信装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナ装置に内蔵されるアンテナの大きさは、前記第2のアンテナ装置に内蔵されるアンテナよりも大きい請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項5】
少なくとも一方のアンテナ装置を収納可能な収納部を有する保持体が前記リーダアンテナと一体的に設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報通信装置。
【請求項6】
アンテナ装置をリーダアンテナに対して高さ方向に配置した状態で情報通信を行うことが可能な情報通信方法において、
情報通信用の第1のアンテナ装置単体では通信不能とし、前記第1のアンテナ装置と、セキュリティ用の第2のアンテナ装置とを前記高さ方向に対向配置して、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を読取周波数へシフトさせて通信可能とすることを特徴とする情報通信方法。
【請求項7】
前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置との組み合わせだけでは通信不能とし、さらに前記第1のアンテナ装置に磁性部材を重ねた状態にして、前記第1のアンテナ装置の共振周波数を、前記読取周波数へシフトさせて通信可能とする請求項6記載の情報通信方法。
【請求項8】
前記第1のアンテナ装置と前記第2のアンテナ装置のシフトしたそれぞれの共振周波数を前記リーダアンテナにて読み取り、それぞれ所定の共振周波数のときにのみ第1のアンテナ装置と通信可能とする請求項6または7に記載の情報通信方法。
【請求項9】
前記第1のアンテナ装置と第2のアンテナ装置との各ICチップの情報を読み取り、それぞれ照合して適合したとき前記第1のアンテナ装置と通信可能とする請求項8に記載の情報通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−83817(P2012−83817A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227198(P2010−227198)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】