意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体
【課題】従来にない、新規な色調を実現するとともに、媒体の部分毎に異なる色調を実現する意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体を提供する。
【解決手段】意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、塗工層の所定部分毎に、所定方向に顔料を配向させる顔料配向ステップと、磁場をかけたまま、又は、磁場をかけて顔料を配向させた後に、塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、を行う。
【解決手段】意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、塗工層の所定部分毎に、所定方向に顔料を配向させる顔料配向ステップと、磁場をかけたまま、又は、磁場をかけて顔料を配向させた後に、塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含む塗料を基材に塗布し、磁場において顔料を配向することによって、意匠性を有する意匠性媒体を形成する意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材に顔料を含む塗料を塗布して意匠性を有する意匠性媒体を形成する方法として、下塗り及び/又は中塗り塗膜を直接着磁して磁化させて磁石を形成することにより、被塗物の材料や形状等に左右されることなく、様々な模様を塗膜上に現出させることができる「模様塗膜形成方法」(例えば、特許文献1参照)、塗膜に分散している磁性粉末を磁力によって配向・移動させることにより、意匠性及び識別性に優れた模様を付けることができる「模様付き塗装金属板の製造方法」(例えば、特許文献2参照)、入射光を分散させて出射する光分散層の光出射側に、磁性を有する光輝性顔料を磁場印加により配向させて含有する樹脂層を設けることにより、観察方向によって異なる模様を表すことができる「意匠性フィルム」(例えば、特許文献3参照)、等が開示されている。
【特許文献1】特開平6−114332号公報
【特許文献2】特開平8−38992号公報
【特許文献3】特開平9−94529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術では、強磁性を持つ光輝性顔料を用いることにより顔料の配向を制御している。この強磁性を持つ光輝性顔料は、鱗片状、針状の強磁性材料単独や、それらに二酸化チタンや酸化鉄を被覆したもの、マイカ・シリカ・アルミナなどに酸化鉄やニッケル(Ni)等の強磁性体を被覆したものが挙げられる。しかしながら、上記従来技術のいずれも、上記で列挙した強磁性体全般に適用できるものではない。よって、上記各従来技術の方法は、配向対象となる強磁性体が限定的されているので、輝度の変化のみしか実現されず、バリエーションに富んだ意匠性の実現は困難であった。
【0004】
一方、従来の磁場配向方法では、マイカ・シリカ・アルミナなどの非強磁性体材料を主成分とし、質量磁化率が10-6m3/kg(SI unit)以下となる光輝性顔料を使用した場合、顔料を動かすことができなかったため、非強磁性光輝性顔料(非強磁性パール顔料)を配向させた媒体はなかった。
【0005】
また、従来の磁場配向方法では、顔料の配向は一様であり、媒体の部分毎に顔料の配向を変えた媒体はなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、媒体の部分毎に、異なる方向に非強磁性光輝性顔料の配向を行うことにより、従来にない、新たな色調を実現できるとともに、媒体の部分毎に異なる色調を実現することができる意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、塗工層の所定部分毎に、所定方向に顔料を配向させる顔料配向ステップと、磁場をかけたまま、又は、磁場をかけて顔料を配向させた後に、塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、磁気異方性を有する顔料が光輝性顔料であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、媒体の塗工層に直線状又はほぼ直線状の磁力線が通るように磁場をかけて顔料を配向させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、媒体の塗工層に曲線状の磁力線が通るように磁場をかけて顔料を配向させたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、塗料として、無溶媒系の樹脂を用いたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、基材として、光を透過する透明基材を用いたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法で形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非強磁性光輝性顔料の配向制御を行うことにより、従来にない、新しい色調の意匠性媒体を実現でき、また、媒体の部分毎に顔料の配向制御を行うことにより、媒体の部分毎に異なる色調を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)は本発明の一実施形態に係る媒体の側面を模式的に示す図である。また、図1(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法(意匠性媒体形成方法の一工程)において、磁力線を発生させるための着磁ヨークと、その着磁ヨークにより発生した複数の磁力線と、それら磁力線により形成された磁場中に配置された媒体と、を示す概念図である。また、図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る媒体の顔料の配向状態を模式的に示す側断面図である。
【0017】
媒体5は、図1(a)に示すように、基材(例えば、樹脂、紙、セラミック等の非磁性体)5bの一方の面に対し、塗料を塗布して塗膜(塗工層)5aが形成された媒体である。この塗料は、マイカ・シリカ・アルミナなどの反磁性体材料を主成分とする光輝性顔料を無溶媒低粘度硬化型樹脂に均一に分散させた塗料であり、反磁性光輝性顔料は、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁化率と磁気異方性を有する。質量磁化率が10-6m3/kg以下のものとしては、常磁性体や反磁性体がある。また、光輝性顔料であることによって、高い意匠性を得ることができる。
【0018】
図1(a)に示す媒体5において、磁場印加前の顔料の配向状態は、図2(a)に示すようにほぼ水平(略水平状態)となっている。この状態においては、媒体表面から入射光Lを当てると、0°〜150°の範囲で媒体表面に、干渉色、光沢が発現する。なお、顔料の異方性磁化率が正(+)の値であるか負(−)の値であるかにかかわらず、顔料の形状が楕円形、鱗片状であれば、エネルギー的に安定なため、図2(a)に示すように、顔料の長軸は、基材5bに対してほぼ水平に並んだ状態である。
【0019】
上記光輝性顔料に含まれる反磁性体材料は、鉄やニッケルなどの強磁性体材料に比べ磁化率が非常に小さいものではあるが、その物質の結晶構造が非対称である場合、結晶軸の方位により磁化率に僅かな差が生じる。これを結晶磁気異方性と呼び、強磁場に置くと磁化率の大きな結晶軸方位が磁場方向と平行になるように結晶が回転・配向する。
【0020】
また、溶媒を用いると、溶媒が蒸発する時に塗料の体積が減るため、直立した顔料が倒れてしまう場合がある。これを防止するために無溶媒系の樹脂を用いることが好ましい。さらには、無溶媒低粘度硬化型樹脂を使用するのが望ましく、例えば、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂の中で粘度の低いものが、鱗片状光輝性顔料を配向させやすいため、好ましい。
【0021】
本実施形態に係る顔料配向方法について以下に説明する。
図1(b)及び(c)において、1、2は電磁石の着磁ヨークを示している。これらの着磁ヨーク1(S極),2(N極)は、図示しない部分にコイルが巻き付けられている。着磁ヨーク1、2は、磁力線3a、3b、3c、…、3mを発生させることによって、着磁ヨーク1、2間に、磁場を形成する。これらの磁力線3a〜3mは、図1(b)及び(c)に示すように、直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)や曲線状の部分がある。また、形成される磁場の強さは、0.3T(Tはテスラ)以上、好ましくは1T以上である。
【0022】
以下、本実施形態の顔料配向方法として、図1(b)に示すように、媒体5を、磁力線3gの直線状の部分に対して水平に配置した場合(横磁場、水平磁場)、及び、図1(c)に示すように、媒体5を、磁力線3e〜3iの直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)に対して垂直に配置した場合(縦磁場、垂直磁場)、についてそれぞれ説明する。
【0023】
顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合において、媒体5を図1(b)に示す水平磁場で印加すると、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(a)の略水平状態から図2(b)の垂直状態に配向が変化する。また、顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合において、媒体5を図1(c)に示す垂直磁場で印加すると、図2(a)の略水平状態から図2(c)の均一な水平状態に配向が変化する。よって、顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合は、顔料を配向させたい角度に直交した磁力線の中に媒体を配置することによって、顔料の配向制御が可能となる。
【0024】
一方、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合において、媒体5を図1(c)に示す垂直磁場で印加すると、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(a)の略水平状態から図2(b)の垂直状態に配向が変化する。また、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合において、媒体5を図1(b)に示す水平磁場で印加すると、図2(a)の略水平状態から図2(c)の均一な水平状態に配向が変化する。よって、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合は、顔料を配向させたい角度に沿った磁力線の中に媒体を配置することによって、顔料の配向制御が可能となる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の顔料配向方法によれば、磁力線の直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)に媒体を配置して磁場をかけることによって、磁気異方性を有する顔料が均一に配向するため、鱗片状光輝性顔料を基材に対して垂直に配向させた場合は、通常得られる色調とは大きく異なる色調の意匠性を実現できる。また、鱗片状光輝性顔料を基材に対して水平に配向させた場合は、通常塗布しただけの磁気異方性を有する顔料の配向に比べ、より均一に顔料が並ぶため、より鮮やかな色調の意匠性を実現できる。
【0026】
なお、上述した顔料配向方法の説明では、磁力線の直線部分の中に媒体5を配置したが、図1(b)及び(c)において、磁力線の曲線部分の中に配置してもよい。この場合について以下に説明する。
【0027】
例えば、図3(a)に示すように、垂直磁場における磁力線a〜eの曲線部分に、異方性磁化率が正(+)の値であり、鱗片状光輝性顔料を含む塗料の塗膜が形成された媒体5を配置した場合、図3(b)に示すように、塗膜5a中の顔料成分14a、14b、14c、14dは、磁力線5a〜eの曲線部分に沿ってそれぞれ配向される。
【0028】
よって、図3(b)に示すように、鱗片状光輝性顔料14a〜14dの配向角度(傾き)がそれぞれ異なるため、媒体5を傾けた際の光の反射の仕方が媒体表面の部分毎に異なるようになり、従来にない色調変化を得ることできる。また、図3(b)に示すように、媒体の表面からの光だけでなく媒体の横からの光(入射光L)も反射することができるので、媒体の表面において、媒体の横からの光の反射による色調変化も得ることできる。
【0029】
ここで、本実施形態の顔料配向方法と上記特許文献1〜3との違いについて以下に述べる。
特許文献1では、使用する粒子として5〜100emu/gと明示しており、明らかに強磁性体であるといえる。
特許文献2では、Ni、Co、Feを含む金属又は合金でコーティングされた磁性粉末とあり、磁場としては100〜3000ガウス(0.01T〜0.3T)を使用するが、本実施形態で使用する質量磁化率が10-6m3/kg以下の鱗片状光輝性顔料は、0.3T以上、好ましくは1T以上の強磁場を使用することで配向する。
特許文献3では、使用する光輝性顔料は、単体の材料としてγ−Fe2O3、Fe3O4、Ni箔など、非磁性体にコーティングする材料としてCo、Ni、Fe3O4など、いずれも強磁性体であり、顔料の質量磁化率として10-6m3/kgを大きく超える。
また、本実施形態の磁場の強度は0.3T以上、好ましくは1T以上であるが、特許文献1〜3に記載されている強磁性体の顔料を含む塗液を、本実施形態で使用している0.3T以上の強磁場に近づけると、顔料が磁場に吸い寄せられ、均一な塗膜が得られない。
【0030】
次に、上述した本実施形態の顔料配向方法を一工程として含む、本実施形態の意匠性媒体形成方法について以下に説明する。図4〜図7は、本実施形態の意匠性媒体方法を実行し、本実施形態の意匠性媒体を形成するための装置の概略を示す図である。図8は、この装置に備えられる図1に示す着磁ヨークの動作を示す図である。図9は、本実施形態の意匠性媒体の顔料の配向状態を模式的に示す側断面図である。
【0031】
まず、本実施形態の意匠性媒体を形成するための装置の概要について説明する。なお、ここでの説明では、意匠性媒体を構成する基材としてPETフィルムを用いるものとする。
図4〜図7に示すように、本装置は、予め巻き付けられた基材を送り出すロール部6a、基材に塗料を塗工して塗膜(塗工層)を形成する塗工部7、塗膜に磁場をかけ、塗膜中の顔料を配向させる着磁ヨーク1,2、塗膜に紫外線を照射し、硬化させるUV照射部8、塗膜硬化により形成された意匠性媒体を巻き取るロール部6b、を備える。本装置において、ロール部6aから送り出された基材5bは、塗工部7により塗膜5aが塗工され、着磁ヨーク1,2により塗膜の顔料が配向され、UV照射部8により塗膜が硬化され、意匠性媒体となってロール部6bに収納される。なお、本装置では、着磁ヨーク1,2により磁場をかけて顔料を配向した後に、UV照射部8により紫外線照射を行うように構成しているが、着磁ヨーク1,2により磁場をかけたまま紫外線照射を行えるように、UV照射部8を配置するようにしてもよい。
【0032】
ここで、本装置の着磁ヨーク1,2の動作について図8を参照して説明する。本装置の着磁ヨーク1,2は、上述した顔料配向方法で用いられる、図1(b)及び(c)に示すものと同じである。
図8に示すように、XY平面、YZ平面、XZ平面からなる3次元空間の所定の位置に仮想軸が存在するものとする。着磁ヨーク1と、着磁ヨーク2とは、例えば、XY平面に直交する軸Aに線対称の位置に配置され、この軸Aの周りを、時計回り又は反時計回りに360°回転可能である。同様に、その他の軸B、軸C、軸Dの場合も、着磁ヨーク1,2は、各軸に線対称の位置に移動し、その軸の周りを時計回り又は反時計回りに360°回転する。なお、仮想軸は、図8に示すものに限定されない。
【0033】
上記装置を使用した本実施形態の意匠性媒体形成方法について説明する。
図4において、ロール部6aには、基材(PETフィルム)5bが予め巻き付けられており、本装置が作動し始めると、ロール部6aは、図示しない駆動手段により駆動され、予め巻き付けられている基材5bを図中の矢印方向に送り出す。本装置において、基材5bは、所定の速度で矢印方向に移動する。
【0034】
次に、図4において、塗工部7は、ロール部6aから送り出された基材5bの片面に対して、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する光輝性顔料を無溶媒系の樹脂に分散させた塗料を塗工する。これにより、塗膜(塗工層)5aが形成され、媒体5となる。この時の塗膜5a中の顔料は、図2(a)に示す略水平状態となっている。なお、ここでの説明では、顔料の異方性磁化率は、正(+)の値とする。
【0035】
次に、図4において、着磁ヨーク1,2は、磁力線3を発生させて磁場を形成する。この時、着磁ヨーク1,2は、図1(c)に示す垂直磁場を形成するものとする。図4(A)は、この時の着磁ヨーク1,2と媒体5の状態を示す斜視図である。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(b)に示すように、基材5bに対して垂直方向に配向される。
【0036】
次に、着磁ヨーク1,2により顔料が配向された媒体5は、図5に示すように、磁場を出て矢印方向に移動する。図5(a)は、媒体5において、顔料が垂直に配向された部分(以下、部分10という)を示す。また、この時、媒体5において、部分10の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図4に示す垂直磁場を形成する配置から回転し、図5に示すように、図1(b)に示す水平磁場を形成する配置となる。図5(A)は、この時の着磁ヨーク1,2と媒体5の状態を示す斜視図である。媒体5は、図1(b)に示す磁力線3gの直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(c)に示すように、基材5bに対して水平方向に配向される。
【0037】
次に、媒体5において、図6(b)に示すように、顔料が水平に配向された部分(以下、部分11という)が磁場を出て移動すると、部分11の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図5に示す垂直磁場を形成する配置から回転し、図6に示すように、ロール部6b方向に傾いた、斜めの配置となる。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図9(a)に示すように、ロール部6b方向に傾いた斜め方向に配向される。
【0038】
また、この時、先に顔料配向された部分10は、図6に示すように、UV照射部8の配置位置に達し、UV照射部8により、塗膜5aに対する紫外線照射が行われる。これにより、塗膜5aが硬化する。
【0039】
次に、媒体5において、図7(c)に示すように、顔料がロール部6b方向に傾いて斜めに配向された部分(以下、部分12という)が磁場を出て移動すると、部分12の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図6に示す配置から回転し、図7に示すように、ロール部6a方向に傾いた、斜めの配置となる。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図9(b)に示すように、ロール部6a方向に傾いた斜め方向に配向される。
【0040】
また、この時、先に顔料配向された部分11は、図7に示すように、UV照射部8の配置位置に達し、UV照射部8により、塗膜5aに対する紫外線照射が行われる。これにより、塗膜5aが硬化する。
【0041】
図示はしていないが、上記同様にして、図7(c)に示す部分12、及び、顔料がロール部6a方向に傾いて斜めに配向された部分(以下、部分13という)も、UV照射部8により紫外線照射され、塗膜が硬化される。
【0042】
紫外線照射の後、媒体5は、ロール部6bに巻き取られ、収納される。
以上が、本実施形態の意匠性媒体形成方法である。
【0043】
次に、上記本実施形態の意匠性媒体形成方法によって形成された意匠性媒体について説明する。図10は、本実施形態の意匠性媒体の一例を示す図であり、(a)は、上記本実施形態の意匠性媒体形成方法で形成された意匠性媒体を模式的に示す側断面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ、(a)に示す意匠性媒体のデザインの一例を示す上面図である。
【0044】
図10(a)に示すように、本実施形態の意匠性媒体30は、左から、顔料が垂直方向に配向された部分10(図2(b)参照),顔料が水平方向に配向された部分11(図2(c)参照),顔料が左上から右下への斜め方向に配向された部分12(図9(a)参照),顔料が右上から左下への斜め方向に配向された部分13(図9(b)参照)の順に、隣り合うように形成されている。この意匠性媒体30の表面に、図10(a)に示すように入射光Lを当てると、部分10から13のそれぞれの部分毎に異なる色調を得ることができる。すなわち、部分10では、通常得られる色調とは大きく異なる色調となり、部分11では、通常塗布しただけの磁気異方性を有する顔料の配向に比べ、より鮮やかな色調となる。また、部分12及び部分13では、媒体の表面からの入射光だけでなく媒体の横からの入射光も反射することができるので(図9(a)及び(b)参照)、媒体の表面において、媒体の横からの光の反射による色調変化も得ることできる。
【0045】
意匠性媒体の一例として、図10(b)に示すように、意匠性媒体の表面において、背景部分15と、文字部分16,17,18,19とを形成する場合、例えば、背景部分15には所定の塗料を塗工して塗膜を設けた後、顔料を配向せずに、紫外線照射で塗膜を硬化して下準備をした後、本実施形態の意匠性媒体形成方法により、文字部分16〜19に塗料を塗工して塗膜を設け、文字部分16〜19毎に、図10(a)の10〜13の部分をそれぞれ対応させた顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。これにより、背景部分15と、文字部分16〜19とで異なる色調を得ることができ、さらに、文字部分16〜19においてそれぞれ異なる色調を得ることができる。
【0046】
意匠性媒体の一例として、図10(c)に示すように、意匠性媒体の表面において、黒の正方形部分20,21,22,23と、白の正方形部分24,25,26,27とで格子模様を形成する場合、例えば、本実施形態の意匠性媒体形成方法により、黒の正方形部分20〜23に塗料を塗工して塗膜を設けた後、黒の正方形部分20〜23毎に、図10(a)の10〜13の部分をそれぞれ対応させた顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。その後、再び本実施形態の意匠性媒体形成方法により、白の正方形部分24〜27に塗料を塗工して塗膜を設け、白の正方形部分24〜27毎に、図10(a)の13〜10の部分をそれぞれ対応させた(黒の正方形部分の配向とは逆の順で)顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。これにより、黒の正方形部分20,21,22,23は、図10(a)の10,11,12,13にそれぞれ対応した顔料配向となり、また、白の正方形部分24,25,26,27は、図10(a)の13,12,11,10にそれぞれ対応した顔料配向となる。よって、格子模様の部分毎に異なる色調を得ることができ、さらに、同じ色の部分(黒の正方形部分20〜23や白の正方形部分24〜27)においてそれぞれ異なる色調を得ることができる。
【0047】
なお、上記説明では、媒体5における顔料の配向順や配向方向を、部分10,11,12,13としたが、これに限定されるものではない。
また、上記説明では、顔料配向の際に、磁力線の直線状(又はほぼ直線状)の部分で磁場印加を行うようにしたが、図3(a)を用いて説明したように、磁力線の曲線状の部分で磁場印加を行ってもよい。これにより、着磁ヨークを所定の角度に傾けて、さらに、磁力線の曲線状部分にて磁場印加することができるので、より細かく、より自在に顔料の配向を行うことができる。
また、上記説明では、顔料配向の際に、着磁ヨークを回転させるようにしたが、着磁ヨークを固定して、塗膜を設けた媒体自体を回転・移動するようにしてもよい。
【0048】
以下、上述した第1の実施形態の意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例1〜4及び比較例1〜4で使用したパール顔料(Merck製)は、いずれも−の異方性磁化率を有するものである。
【実施例1】
【0049】
実施例1では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例2】
【0050】
実施例2では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの垂直磁場(縦磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例3】
【0051】
実施例3では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例4】
【0052】
実施例4では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの垂直磁場(縦磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0053】
〈比較例1〉
比較例1は、実施例1及び2の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0054】
〈比較例2〉
比較例2は、実施例3及び4の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0055】
〈比較例3〉
比較例3は、実施例1及び2の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、0.05T(500ガウス)の水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0056】
〈比較例4〉
比較例4は、実施例3及び4の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、0.05T(500ガウス)の水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0057】
上記実施例1〜4及び比較例1〜4で形成した媒体の評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1の媒体は、比較例1の媒体と比べると、顔料が垂直に配向され(図2(b)参照)、色調が淡い水色〜淡い赤色となった。実施例2の媒体は、比較例1と比べ、変化はなかった。
実施例3の媒体は、比較例2の媒体と比べると、顔料が垂直に配向され(図2(b)参照)、色調が淡い赤色となった。実施例4の媒体は、比較例2と比べ、変化はなかった。
【0060】
また、比較例3の媒体は、顔料の配向に変化は見られず、ほぼ水平に配向された状態であり(図2(a)参照)、色調は水色〜赤色のままであった。
比較例4の媒体も、顔料の配向に変化は見られず、ほぼ水平に配向された状態であり(図2(a)参照)、色調は赤色のままであった。
【0061】
よって、上記実施例1〜4及び比較例1〜4によれば、異方性磁化率が−の値の顔料(Color Code及びXillaric T60-21)は元々水平に配向されているので、実施例1及び3のように水平磁場に配置し、磁場印加することによって、顔料の配向状態を垂直に制御することができる。また、形成された媒体は元々の色調とは違った色調になる。また、0.05Tの弱い磁場では顔料の配向に変化は起きない。
【0062】
本発明に適用できる顔料として、上記実施例1〜4においてColor Code及びXillaric T60-21を用いたが、その他の顔料の例を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
上記Color Code及びXillaric T60-21と同様に、異方性磁化率が−の顔料としてIridodin302やIridodin524(Merck製)が挙げられる。Iridodin302を用いて上記実施例と同じ方法で媒体を形成したところ、磁場無しの形成又は垂直磁場での形成では金色の色調であったが、水平磁場での形成では黄土色の色調となった。また、Iridodin524を用いて上記実施例と同じ方法で媒体を形成したところ、磁場無しの形成又は垂直磁場での形成では金属光沢赤色の色調であったが、水平磁場での形成では褐色の色調となった。
【0065】
また、異方性磁化率が+の顔料として、Xillaric T60-23(Merck製)、SECURE SHIFT(Flex Product製)やInfinite R-08(資生堂製)が挙げられる。これらの顔料を用いて上記実施例と同じ方法で媒体をそれぞれ形成したところ、磁場無しの形成と水平磁場での形成とでは同じ色調であったが、垂直磁場での形成では違った色調となった。すなわち、Xillaric T60-23では、元々の青色の色調から淡い青色の色調に変化し、SECURE SHIFTでは、元々のローズ〜緑の色調から黒のみの色調に変化し、Infinite R-08では、元々の小豆色〜青紫色の色調から小豆色のみの色調に変化した。
【0066】
なお、表2において、マイカ(Mica)に強磁性体(Fe2O3)を被覆した顔料(Iriodin302、Iriodin524、Infinite R-08)は、赤銅色を得ることを目的としてごく弱い強磁性を持つα−Fe2O3を被覆したものであり、顔料としての質量磁化率は10-6m3/kg以下である(従来の磁場配向技術では強磁性体としてγ−Fe2O3、Fe3O4を使用していたが、これは磁化率を高めるためであり、磁化率の低いα−Fe2O3は従来使用されていなかった)。一方、表2において、反磁性体だけで組成された顔料(SECURE SHIFT、Color Code)は、1T以上の磁場が必要である。
【0067】
〔第2の実施形態〕
以上、本発明の第1の実施形態について説明したが、第1の実施形態では、光を透過しない基材を用いて意匠性媒体を形成した。よって、第1の実施形態の意匠性媒体では、媒体の表面及び横から入射する光を反射して色調が変化するが、媒体の裏面から入射する光は基材で遮断されてしまう。以下、本発明の第2の実施形態として、媒体の裏面からの入射光を反射することが可能な意匠性媒体について説明する。
【0068】
第2の実施形態の意匠性媒体の基本構成は上記第1の実施形態と同様であるが、基材として、透明基材を用いる点が異なる。本実施形態の意匠性媒体は、図11に示すように、光を透過する透明基材(例えば、プラスチック、フィルム、ガラス等)5cの一方の面に対し、塗料を塗布して塗膜5aが形成された媒体である。この塗料は、マイカ・シリカ・アルミナなどの反磁性体材料を主成分とする光輝性顔料を無溶媒低粘度硬化型樹脂(紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂の中で粘度の低いもの)に均一に分散させた塗料であり、反磁性光輝性顔料は、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁化率と磁気異方性を有する。
【0069】
磁場印加の方法は第1の実施形態の方法と同様である。すなわち、透明基材5cを用いて形成した意匠性媒体を図1(b)又は図1(c)の磁場の所定の位置に配置し、0.3T以上の磁場を印加する。これにより、鱗片状光輝性顔料は、例えば図2や図9のように配向される。
【0070】
例えば、顔料が図2(b)に示す配向となった場合、図11に示すように、媒体の裏面から入射する入射光Lは、透明基材5cを透過し、鱗片状光輝性顔料14に当たって反射する(なお、媒体の表面からの入射光は媒体を透過する)。よって、本実施形態の意匠性媒体は、透明基材を用いて形成することにより、媒体の裏面からの入射光を反射することができ、従来にはない色調変化を得ることができる。
【0071】
以下、上述した第2の実施形態の意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例5及び比較例5で使用したパール顔料(Merck製、Iriodin302)は、−の異方性磁化率を有するものであり、表2に示すように、元々は金色であり、光を当てると黄土色の光輝性を示す顔料である。
【実施例5】
【0072】
実施例5では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Iriodin302)を10重量部添加した塗料を用いて透明PETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0073】
〈比較例5〉
比較例5は、実施例5の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Iriodin302)を10重量部添加した塗料を用いて透明PETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0074】
そして、実施例5の媒体及び比較例5の媒体において、表面及び裏面に対して光を当て、媒体を45°傾け、各媒体の表面の塗膜の様子を目視で観察した。観察結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示すように、比較例5の媒体は、顔料が水平に配向された状態(図2(a)参照)であるので、表面から光を当てた場合には黄土色の光輝性が認められたが、裏面から光を当てた場合には元の金色のままであり、光輝性は認められなかった。一方、実施例5の媒体は、顔料が垂直に配向された状態(図2(b)及び図11参照)であるので、表面から光を当てた場合は元の金色のままであり、光輝性は認められなかったが、裏面から光を当てた場合は黄土色の光輝性が認められた。
【0077】
よって、上記実施例5によれば、透明基材を用いて媒体を形成することにより媒体の裏面からの光を入射することができ、その入射光を垂直に配向された顔料が反射するので(図11参照)、媒体の表面にて干渉色、光沢を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、塗膜面に周囲と異なる微細な色調あるいは模様、図形、文字等のパターンの形成を行うことに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る媒体の側面を模式的に示す図であり、(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の概念図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る顔料の磁場印加前における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の水平磁場における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る顔料の垂直磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の概念図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の垂直磁場の曲線部分における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の動作を説明するための概念図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施形態に係る顔料の左上から右下への斜め磁場における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の右上から左下への斜め磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図10】(a)は、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体の側面図であり、(b)及び(c)は、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体のデザインの一例をそれぞれ示す上面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る顔料の水平磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2 着磁ヨーク
3a〜3m 磁力線
5 媒体
5a 塗膜(塗工層)
5b 基材
5c 透明基材
6a ロール部(送り出し部)
6b ロール部(巻き取り部)
7 塗工部
8 UV照射部
10 顔料が垂直に配向された部分
11 顔料が水平に配向された部分
12 顔料が左斜めに配向された部分
13 顔料が右斜めに配向された部分
14 顔料成分
15 媒体表面の背景部分
16,17,18,19 媒体表面の文字部分
20,21,22,23 媒体表面の黒正方形部分
24,25,26,27 媒体表面の白正方形部分
30 意匠性媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含む塗料を基材に塗布し、磁場において顔料を配向することによって、意匠性を有する意匠性媒体を形成する意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材に顔料を含む塗料を塗布して意匠性を有する意匠性媒体を形成する方法として、下塗り及び/又は中塗り塗膜を直接着磁して磁化させて磁石を形成することにより、被塗物の材料や形状等に左右されることなく、様々な模様を塗膜上に現出させることができる「模様塗膜形成方法」(例えば、特許文献1参照)、塗膜に分散している磁性粉末を磁力によって配向・移動させることにより、意匠性及び識別性に優れた模様を付けることができる「模様付き塗装金属板の製造方法」(例えば、特許文献2参照)、入射光を分散させて出射する光分散層の光出射側に、磁性を有する光輝性顔料を磁場印加により配向させて含有する樹脂層を設けることにより、観察方向によって異なる模様を表すことができる「意匠性フィルム」(例えば、特許文献3参照)、等が開示されている。
【特許文献1】特開平6−114332号公報
【特許文献2】特開平8−38992号公報
【特許文献3】特開平9−94529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術では、強磁性を持つ光輝性顔料を用いることにより顔料の配向を制御している。この強磁性を持つ光輝性顔料は、鱗片状、針状の強磁性材料単独や、それらに二酸化チタンや酸化鉄を被覆したもの、マイカ・シリカ・アルミナなどに酸化鉄やニッケル(Ni)等の強磁性体を被覆したものが挙げられる。しかしながら、上記従来技術のいずれも、上記で列挙した強磁性体全般に適用できるものではない。よって、上記各従来技術の方法は、配向対象となる強磁性体が限定的されているので、輝度の変化のみしか実現されず、バリエーションに富んだ意匠性の実現は困難であった。
【0004】
一方、従来の磁場配向方法では、マイカ・シリカ・アルミナなどの非強磁性体材料を主成分とし、質量磁化率が10-6m3/kg(SI unit)以下となる光輝性顔料を使用した場合、顔料を動かすことができなかったため、非強磁性光輝性顔料(非強磁性パール顔料)を配向させた媒体はなかった。
【0005】
また、従来の磁場配向方法では、顔料の配向は一様であり、媒体の部分毎に顔料の配向を変えた媒体はなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、媒体の部分毎に、異なる方向に非強磁性光輝性顔料の配向を行うことにより、従来にない、新たな色調を実現できるとともに、媒体の部分毎に異なる色調を実現することができる意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、塗工層の所定部分毎に、所定方向に顔料を配向させる顔料配向ステップと、磁場をかけたまま、又は、磁場をかけて顔料を配向させた後に、塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、磁気異方性を有する顔料が光輝性顔料であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、媒体の塗工層に直線状又はほぼ直線状の磁力線が通るように磁場をかけて顔料を配向させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、媒体の塗工層に曲線状の磁力線が通るように磁場をかけて顔料を配向させたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、塗料として、無溶媒系の樹脂を用いたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、基材として、光を透過する透明基材を用いたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法で形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非強磁性光輝性顔料の配向制御を行うことにより、従来にない、新しい色調の意匠性媒体を実現でき、また、媒体の部分毎に顔料の配向制御を行うことにより、媒体の部分毎に異なる色調を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1(a)は本発明の一実施形態に係る媒体の側面を模式的に示す図である。また、図1(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法(意匠性媒体形成方法の一工程)において、磁力線を発生させるための着磁ヨークと、その着磁ヨークにより発生した複数の磁力線と、それら磁力線により形成された磁場中に配置された媒体と、を示す概念図である。また、図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る媒体の顔料の配向状態を模式的に示す側断面図である。
【0017】
媒体5は、図1(a)に示すように、基材(例えば、樹脂、紙、セラミック等の非磁性体)5bの一方の面に対し、塗料を塗布して塗膜(塗工層)5aが形成された媒体である。この塗料は、マイカ・シリカ・アルミナなどの反磁性体材料を主成分とする光輝性顔料を無溶媒低粘度硬化型樹脂に均一に分散させた塗料であり、反磁性光輝性顔料は、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁化率と磁気異方性を有する。質量磁化率が10-6m3/kg以下のものとしては、常磁性体や反磁性体がある。また、光輝性顔料であることによって、高い意匠性を得ることができる。
【0018】
図1(a)に示す媒体5において、磁場印加前の顔料の配向状態は、図2(a)に示すようにほぼ水平(略水平状態)となっている。この状態においては、媒体表面から入射光Lを当てると、0°〜150°の範囲で媒体表面に、干渉色、光沢が発現する。なお、顔料の異方性磁化率が正(+)の値であるか負(−)の値であるかにかかわらず、顔料の形状が楕円形、鱗片状であれば、エネルギー的に安定なため、図2(a)に示すように、顔料の長軸は、基材5bに対してほぼ水平に並んだ状態である。
【0019】
上記光輝性顔料に含まれる反磁性体材料は、鉄やニッケルなどの強磁性体材料に比べ磁化率が非常に小さいものではあるが、その物質の結晶構造が非対称である場合、結晶軸の方位により磁化率に僅かな差が生じる。これを結晶磁気異方性と呼び、強磁場に置くと磁化率の大きな結晶軸方位が磁場方向と平行になるように結晶が回転・配向する。
【0020】
また、溶媒を用いると、溶媒が蒸発する時に塗料の体積が減るため、直立した顔料が倒れてしまう場合がある。これを防止するために無溶媒系の樹脂を用いることが好ましい。さらには、無溶媒低粘度硬化型樹脂を使用するのが望ましく、例えば、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂の中で粘度の低いものが、鱗片状光輝性顔料を配向させやすいため、好ましい。
【0021】
本実施形態に係る顔料配向方法について以下に説明する。
図1(b)及び(c)において、1、2は電磁石の着磁ヨークを示している。これらの着磁ヨーク1(S極),2(N極)は、図示しない部分にコイルが巻き付けられている。着磁ヨーク1、2は、磁力線3a、3b、3c、…、3mを発生させることによって、着磁ヨーク1、2間に、磁場を形成する。これらの磁力線3a〜3mは、図1(b)及び(c)に示すように、直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)や曲線状の部分がある。また、形成される磁場の強さは、0.3T(Tはテスラ)以上、好ましくは1T以上である。
【0022】
以下、本実施形態の顔料配向方法として、図1(b)に示すように、媒体5を、磁力線3gの直線状の部分に対して水平に配置した場合(横磁場、水平磁場)、及び、図1(c)に示すように、媒体5を、磁力線3e〜3iの直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)に対して垂直に配置した場合(縦磁場、垂直磁場)、についてそれぞれ説明する。
【0023】
顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合において、媒体5を図1(b)に示す水平磁場で印加すると、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(a)の略水平状態から図2(b)の垂直状態に配向が変化する。また、顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合において、媒体5を図1(c)に示す垂直磁場で印加すると、図2(a)の略水平状態から図2(c)の均一な水平状態に配向が変化する。よって、顔料の異方性磁化率が負(−)の値の場合は、顔料を配向させたい角度に直交した磁力線の中に媒体を配置することによって、顔料の配向制御が可能となる。
【0024】
一方、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合において、媒体5を図1(c)に示す垂直磁場で印加すると、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(a)の略水平状態から図2(b)の垂直状態に配向が変化する。また、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合において、媒体5を図1(b)に示す水平磁場で印加すると、図2(a)の略水平状態から図2(c)の均一な水平状態に配向が変化する。よって、顔料の異方性磁化率が正(+)の値の場合は、顔料を配向させたい角度に沿った磁力線の中に媒体を配置することによって、顔料の配向制御が可能となる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の顔料配向方法によれば、磁力線の直線状の部分(又は、ほぼ直線状の部分)に媒体を配置して磁場をかけることによって、磁気異方性を有する顔料が均一に配向するため、鱗片状光輝性顔料を基材に対して垂直に配向させた場合は、通常得られる色調とは大きく異なる色調の意匠性を実現できる。また、鱗片状光輝性顔料を基材に対して水平に配向させた場合は、通常塗布しただけの磁気異方性を有する顔料の配向に比べ、より均一に顔料が並ぶため、より鮮やかな色調の意匠性を実現できる。
【0026】
なお、上述した顔料配向方法の説明では、磁力線の直線部分の中に媒体5を配置したが、図1(b)及び(c)において、磁力線の曲線部分の中に配置してもよい。この場合について以下に説明する。
【0027】
例えば、図3(a)に示すように、垂直磁場における磁力線a〜eの曲線部分に、異方性磁化率が正(+)の値であり、鱗片状光輝性顔料を含む塗料の塗膜が形成された媒体5を配置した場合、図3(b)に示すように、塗膜5a中の顔料成分14a、14b、14c、14dは、磁力線5a〜eの曲線部分に沿ってそれぞれ配向される。
【0028】
よって、図3(b)に示すように、鱗片状光輝性顔料14a〜14dの配向角度(傾き)がそれぞれ異なるため、媒体5を傾けた際の光の反射の仕方が媒体表面の部分毎に異なるようになり、従来にない色調変化を得ることできる。また、図3(b)に示すように、媒体の表面からの光だけでなく媒体の横からの光(入射光L)も反射することができるので、媒体の表面において、媒体の横からの光の反射による色調変化も得ることできる。
【0029】
ここで、本実施形態の顔料配向方法と上記特許文献1〜3との違いについて以下に述べる。
特許文献1では、使用する粒子として5〜100emu/gと明示しており、明らかに強磁性体であるといえる。
特許文献2では、Ni、Co、Feを含む金属又は合金でコーティングされた磁性粉末とあり、磁場としては100〜3000ガウス(0.01T〜0.3T)を使用するが、本実施形態で使用する質量磁化率が10-6m3/kg以下の鱗片状光輝性顔料は、0.3T以上、好ましくは1T以上の強磁場を使用することで配向する。
特許文献3では、使用する光輝性顔料は、単体の材料としてγ−Fe2O3、Fe3O4、Ni箔など、非磁性体にコーティングする材料としてCo、Ni、Fe3O4など、いずれも強磁性体であり、顔料の質量磁化率として10-6m3/kgを大きく超える。
また、本実施形態の磁場の強度は0.3T以上、好ましくは1T以上であるが、特許文献1〜3に記載されている強磁性体の顔料を含む塗液を、本実施形態で使用している0.3T以上の強磁場に近づけると、顔料が磁場に吸い寄せられ、均一な塗膜が得られない。
【0030】
次に、上述した本実施形態の顔料配向方法を一工程として含む、本実施形態の意匠性媒体形成方法について以下に説明する。図4〜図7は、本実施形態の意匠性媒体方法を実行し、本実施形態の意匠性媒体を形成するための装置の概略を示す図である。図8は、この装置に備えられる図1に示す着磁ヨークの動作を示す図である。図9は、本実施形態の意匠性媒体の顔料の配向状態を模式的に示す側断面図である。
【0031】
まず、本実施形態の意匠性媒体を形成するための装置の概要について説明する。なお、ここでの説明では、意匠性媒体を構成する基材としてPETフィルムを用いるものとする。
図4〜図7に示すように、本装置は、予め巻き付けられた基材を送り出すロール部6a、基材に塗料を塗工して塗膜(塗工層)を形成する塗工部7、塗膜に磁場をかけ、塗膜中の顔料を配向させる着磁ヨーク1,2、塗膜に紫外線を照射し、硬化させるUV照射部8、塗膜硬化により形成された意匠性媒体を巻き取るロール部6b、を備える。本装置において、ロール部6aから送り出された基材5bは、塗工部7により塗膜5aが塗工され、着磁ヨーク1,2により塗膜の顔料が配向され、UV照射部8により塗膜が硬化され、意匠性媒体となってロール部6bに収納される。なお、本装置では、着磁ヨーク1,2により磁場をかけて顔料を配向した後に、UV照射部8により紫外線照射を行うように構成しているが、着磁ヨーク1,2により磁場をかけたまま紫外線照射を行えるように、UV照射部8を配置するようにしてもよい。
【0032】
ここで、本装置の着磁ヨーク1,2の動作について図8を参照して説明する。本装置の着磁ヨーク1,2は、上述した顔料配向方法で用いられる、図1(b)及び(c)に示すものと同じである。
図8に示すように、XY平面、YZ平面、XZ平面からなる3次元空間の所定の位置に仮想軸が存在するものとする。着磁ヨーク1と、着磁ヨーク2とは、例えば、XY平面に直交する軸Aに線対称の位置に配置され、この軸Aの周りを、時計回り又は反時計回りに360°回転可能である。同様に、その他の軸B、軸C、軸Dの場合も、着磁ヨーク1,2は、各軸に線対称の位置に移動し、その軸の周りを時計回り又は反時計回りに360°回転する。なお、仮想軸は、図8に示すものに限定されない。
【0033】
上記装置を使用した本実施形態の意匠性媒体形成方法について説明する。
図4において、ロール部6aには、基材(PETフィルム)5bが予め巻き付けられており、本装置が作動し始めると、ロール部6aは、図示しない駆動手段により駆動され、予め巻き付けられている基材5bを図中の矢印方向に送り出す。本装置において、基材5bは、所定の速度で矢印方向に移動する。
【0034】
次に、図4において、塗工部7は、ロール部6aから送り出された基材5bの片面に対して、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する光輝性顔料を無溶媒系の樹脂に分散させた塗料を塗工する。これにより、塗膜(塗工層)5aが形成され、媒体5となる。この時の塗膜5a中の顔料は、図2(a)に示す略水平状態となっている。なお、ここでの説明では、顔料の異方性磁化率は、正(+)の値とする。
【0035】
次に、図4において、着磁ヨーク1,2は、磁力線3を発生させて磁場を形成する。この時、着磁ヨーク1,2は、図1(c)に示す垂直磁場を形成するものとする。図4(A)は、この時の着磁ヨーク1,2と媒体5の状態を示す斜視図である。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(b)に示すように、基材5bに対して垂直方向に配向される。
【0036】
次に、着磁ヨーク1,2により顔料が配向された媒体5は、図5に示すように、磁場を出て矢印方向に移動する。図5(a)は、媒体5において、顔料が垂直に配向された部分(以下、部分10という)を示す。また、この時、媒体5において、部分10の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図4に示す垂直磁場を形成する配置から回転し、図5に示すように、図1(b)に示す水平磁場を形成する配置となる。図5(A)は、この時の着磁ヨーク1,2と媒体5の状態を示す斜視図である。媒体5は、図1(b)に示す磁力線3gの直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図2(c)に示すように、基材5bに対して水平方向に配向される。
【0037】
次に、媒体5において、図6(b)に示すように、顔料が水平に配向された部分(以下、部分11という)が磁場を出て移動すると、部分11の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図5に示す垂直磁場を形成する配置から回転し、図6に示すように、ロール部6b方向に傾いた、斜めの配置となる。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図9(a)に示すように、ロール部6b方向に傾いた斜め方向に配向される。
【0038】
また、この時、先に顔料配向された部分10は、図6に示すように、UV照射部8の配置位置に達し、UV照射部8により、塗膜5aに対する紫外線照射が行われる。これにより、塗膜5aが硬化する。
【0039】
次に、媒体5において、図7(c)に示すように、顔料がロール部6b方向に傾いて斜めに配向された部分(以下、部分12という)が磁場を出て移動すると、部分12の後の部分が着磁ヨーク1,2により顔料配向される。着磁ヨーク1,2は、図6に示す配置から回転し、図7に示すように、ロール部6a方向に傾いた、斜めの配置となる。媒体5は、図1(c)に示す磁力線3e〜3iの直線状及びほぼ直線状の部分で形成された磁場の中を移動、あるいは、磁場の中で所定時間停止する。これにより、塗膜5a中の顔料成分14は、図9(b)に示すように、ロール部6a方向に傾いた斜め方向に配向される。
【0040】
また、この時、先に顔料配向された部分11は、図7に示すように、UV照射部8の配置位置に達し、UV照射部8により、塗膜5aに対する紫外線照射が行われる。これにより、塗膜5aが硬化する。
【0041】
図示はしていないが、上記同様にして、図7(c)に示す部分12、及び、顔料がロール部6a方向に傾いて斜めに配向された部分(以下、部分13という)も、UV照射部8により紫外線照射され、塗膜が硬化される。
【0042】
紫外線照射の後、媒体5は、ロール部6bに巻き取られ、収納される。
以上が、本実施形態の意匠性媒体形成方法である。
【0043】
次に、上記本実施形態の意匠性媒体形成方法によって形成された意匠性媒体について説明する。図10は、本実施形態の意匠性媒体の一例を示す図であり、(a)は、上記本実施形態の意匠性媒体形成方法で形成された意匠性媒体を模式的に示す側断面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ、(a)に示す意匠性媒体のデザインの一例を示す上面図である。
【0044】
図10(a)に示すように、本実施形態の意匠性媒体30は、左から、顔料が垂直方向に配向された部分10(図2(b)参照),顔料が水平方向に配向された部分11(図2(c)参照),顔料が左上から右下への斜め方向に配向された部分12(図9(a)参照),顔料が右上から左下への斜め方向に配向された部分13(図9(b)参照)の順に、隣り合うように形成されている。この意匠性媒体30の表面に、図10(a)に示すように入射光Lを当てると、部分10から13のそれぞれの部分毎に異なる色調を得ることができる。すなわち、部分10では、通常得られる色調とは大きく異なる色調となり、部分11では、通常塗布しただけの磁気異方性を有する顔料の配向に比べ、より鮮やかな色調となる。また、部分12及び部分13では、媒体の表面からの入射光だけでなく媒体の横からの入射光も反射することができるので(図9(a)及び(b)参照)、媒体の表面において、媒体の横からの光の反射による色調変化も得ることできる。
【0045】
意匠性媒体の一例として、図10(b)に示すように、意匠性媒体の表面において、背景部分15と、文字部分16,17,18,19とを形成する場合、例えば、背景部分15には所定の塗料を塗工して塗膜を設けた後、顔料を配向せずに、紫外線照射で塗膜を硬化して下準備をした後、本実施形態の意匠性媒体形成方法により、文字部分16〜19に塗料を塗工して塗膜を設け、文字部分16〜19毎に、図10(a)の10〜13の部分をそれぞれ対応させた顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。これにより、背景部分15と、文字部分16〜19とで異なる色調を得ることができ、さらに、文字部分16〜19においてそれぞれ異なる色調を得ることができる。
【0046】
意匠性媒体の一例として、図10(c)に示すように、意匠性媒体の表面において、黒の正方形部分20,21,22,23と、白の正方形部分24,25,26,27とで格子模様を形成する場合、例えば、本実施形態の意匠性媒体形成方法により、黒の正方形部分20〜23に塗料を塗工して塗膜を設けた後、黒の正方形部分20〜23毎に、図10(a)の10〜13の部分をそれぞれ対応させた顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。その後、再び本実施形態の意匠性媒体形成方法により、白の正方形部分24〜27に塗料を塗工して塗膜を設け、白の正方形部分24〜27毎に、図10(a)の13〜10の部分をそれぞれ対応させた(黒の正方形部分の配向とは逆の順で)顔料配向を行い、紫外線照射で塗膜を硬化する。これにより、黒の正方形部分20,21,22,23は、図10(a)の10,11,12,13にそれぞれ対応した顔料配向となり、また、白の正方形部分24,25,26,27は、図10(a)の13,12,11,10にそれぞれ対応した顔料配向となる。よって、格子模様の部分毎に異なる色調を得ることができ、さらに、同じ色の部分(黒の正方形部分20〜23や白の正方形部分24〜27)においてそれぞれ異なる色調を得ることができる。
【0047】
なお、上記説明では、媒体5における顔料の配向順や配向方向を、部分10,11,12,13としたが、これに限定されるものではない。
また、上記説明では、顔料配向の際に、磁力線の直線状(又はほぼ直線状)の部分で磁場印加を行うようにしたが、図3(a)を用いて説明したように、磁力線の曲線状の部分で磁場印加を行ってもよい。これにより、着磁ヨークを所定の角度に傾けて、さらに、磁力線の曲線状部分にて磁場印加することができるので、より細かく、より自在に顔料の配向を行うことができる。
また、上記説明では、顔料配向の際に、着磁ヨークを回転させるようにしたが、着磁ヨークを固定して、塗膜を設けた媒体自体を回転・移動するようにしてもよい。
【0048】
以下、上述した第1の実施形態の意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例1〜4及び比較例1〜4で使用したパール顔料(Merck製)は、いずれも−の異方性磁化率を有するものである。
【実施例1】
【0049】
実施例1では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例2】
【0050】
実施例2では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの垂直磁場(縦磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例3】
【0051】
実施例3では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【実施例4】
【0052】
実施例4では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの垂直磁場(縦磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0053】
〈比較例1〉
比較例1は、実施例1及び2の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0054】
〈比較例2〉
比較例2は、実施例3及び4の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0055】
〈比較例3〉
比較例3は、実施例1及び2の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Color Code)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、0.05T(500ガウス)の水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0056】
〈比較例4〉
比較例4は、実施例3及び4の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Xillaric T60-21)を10重量部添加した塗料を用いてPETフィルム上に塗膜を形成し、0.05T(500ガウス)の水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0057】
上記実施例1〜4及び比較例1〜4で形成した媒体の評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1の媒体は、比較例1の媒体と比べると、顔料が垂直に配向され(図2(b)参照)、色調が淡い水色〜淡い赤色となった。実施例2の媒体は、比較例1と比べ、変化はなかった。
実施例3の媒体は、比較例2の媒体と比べると、顔料が垂直に配向され(図2(b)参照)、色調が淡い赤色となった。実施例4の媒体は、比較例2と比べ、変化はなかった。
【0060】
また、比較例3の媒体は、顔料の配向に変化は見られず、ほぼ水平に配向された状態であり(図2(a)参照)、色調は水色〜赤色のままであった。
比較例4の媒体も、顔料の配向に変化は見られず、ほぼ水平に配向された状態であり(図2(a)参照)、色調は赤色のままであった。
【0061】
よって、上記実施例1〜4及び比較例1〜4によれば、異方性磁化率が−の値の顔料(Color Code及びXillaric T60-21)は元々水平に配向されているので、実施例1及び3のように水平磁場に配置し、磁場印加することによって、顔料の配向状態を垂直に制御することができる。また、形成された媒体は元々の色調とは違った色調になる。また、0.05Tの弱い磁場では顔料の配向に変化は起きない。
【0062】
本発明に適用できる顔料として、上記実施例1〜4においてColor Code及びXillaric T60-21を用いたが、その他の顔料の例を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
上記Color Code及びXillaric T60-21と同様に、異方性磁化率が−の顔料としてIridodin302やIridodin524(Merck製)が挙げられる。Iridodin302を用いて上記実施例と同じ方法で媒体を形成したところ、磁場無しの形成又は垂直磁場での形成では金色の色調であったが、水平磁場での形成では黄土色の色調となった。また、Iridodin524を用いて上記実施例と同じ方法で媒体を形成したところ、磁場無しの形成又は垂直磁場での形成では金属光沢赤色の色調であったが、水平磁場での形成では褐色の色調となった。
【0065】
また、異方性磁化率が+の顔料として、Xillaric T60-23(Merck製)、SECURE SHIFT(Flex Product製)やInfinite R-08(資生堂製)が挙げられる。これらの顔料を用いて上記実施例と同じ方法で媒体をそれぞれ形成したところ、磁場無しの形成と水平磁場での形成とでは同じ色調であったが、垂直磁場での形成では違った色調となった。すなわち、Xillaric T60-23では、元々の青色の色調から淡い青色の色調に変化し、SECURE SHIFTでは、元々のローズ〜緑の色調から黒のみの色調に変化し、Infinite R-08では、元々の小豆色〜青紫色の色調から小豆色のみの色調に変化した。
【0066】
なお、表2において、マイカ(Mica)に強磁性体(Fe2O3)を被覆した顔料(Iriodin302、Iriodin524、Infinite R-08)は、赤銅色を得ることを目的としてごく弱い強磁性を持つα−Fe2O3を被覆したものであり、顔料としての質量磁化率は10-6m3/kg以下である(従来の磁場配向技術では強磁性体としてγ−Fe2O3、Fe3O4を使用していたが、これは磁化率を高めるためであり、磁化率の低いα−Fe2O3は従来使用されていなかった)。一方、表2において、反磁性体だけで組成された顔料(SECURE SHIFT、Color Code)は、1T以上の磁場が必要である。
【0067】
〔第2の実施形態〕
以上、本発明の第1の実施形態について説明したが、第1の実施形態では、光を透過しない基材を用いて意匠性媒体を形成した。よって、第1の実施形態の意匠性媒体では、媒体の表面及び横から入射する光を反射して色調が変化するが、媒体の裏面から入射する光は基材で遮断されてしまう。以下、本発明の第2の実施形態として、媒体の裏面からの入射光を反射することが可能な意匠性媒体について説明する。
【0068】
第2の実施形態の意匠性媒体の基本構成は上記第1の実施形態と同様であるが、基材として、透明基材を用いる点が異なる。本実施形態の意匠性媒体は、図11に示すように、光を透過する透明基材(例えば、プラスチック、フィルム、ガラス等)5cの一方の面に対し、塗料を塗布して塗膜5aが形成された媒体である。この塗料は、マイカ・シリカ・アルミナなどの反磁性体材料を主成分とする光輝性顔料を無溶媒低粘度硬化型樹脂(紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂の中で粘度の低いもの)に均一に分散させた塗料であり、反磁性光輝性顔料は、質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁化率と磁気異方性を有する。
【0069】
磁場印加の方法は第1の実施形態の方法と同様である。すなわち、透明基材5cを用いて形成した意匠性媒体を図1(b)又は図1(c)の磁場の所定の位置に配置し、0.3T以上の磁場を印加する。これにより、鱗片状光輝性顔料は、例えば図2や図9のように配向される。
【0070】
例えば、顔料が図2(b)に示す配向となった場合、図11に示すように、媒体の裏面から入射する入射光Lは、透明基材5cを透過し、鱗片状光輝性顔料14に当たって反射する(なお、媒体の表面からの入射光は媒体を透過する)。よって、本実施形態の意匠性媒体は、透明基材を用いて形成することにより、媒体の裏面からの入射光を反射することができ、従来にはない色調変化を得ることができる。
【0071】
以下、上述した第2の実施形態の意匠性媒体形成方法及び意匠性媒体の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例5及び比較例5で使用したパール顔料(Merck製、Iriodin302)は、−の異方性磁化率を有するものであり、表2に示すように、元々は金色であり、光を当てると黄土色の光輝性を示す顔料である。
【実施例5】
【0072】
実施例5では、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Iriodin302)を10重量部添加した塗料を用いて透明PETフィルム上に塗膜を形成し、5Tの水平磁場(横磁場)中に5分間静置し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0073】
〈比較例5〉
比較例5は、実施例5の比較例であり、紫外線硬化型樹脂100重量部にパール顔料(Merck製、Iriodin302)を10重量部添加した塗料を用いて透明PETフィルム上に塗膜を形成し、その後紫外線照射して塗膜を硬化させ、媒体を形成した。
【0074】
そして、実施例5の媒体及び比較例5の媒体において、表面及び裏面に対して光を当て、媒体を45°傾け、各媒体の表面の塗膜の様子を目視で観察した。観察結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に示すように、比較例5の媒体は、顔料が水平に配向された状態(図2(a)参照)であるので、表面から光を当てた場合には黄土色の光輝性が認められたが、裏面から光を当てた場合には元の金色のままであり、光輝性は認められなかった。一方、実施例5の媒体は、顔料が垂直に配向された状態(図2(b)及び図11参照)であるので、表面から光を当てた場合は元の金色のままであり、光輝性は認められなかったが、裏面から光を当てた場合は黄土色の光輝性が認められた。
【0077】
よって、上記実施例5によれば、透明基材を用いて媒体を形成することにより媒体の裏面からの光を入射することができ、その入射光を垂直に配向された顔料が反射するので(図11参照)、媒体の表面にて干渉色、光沢を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、塗膜面に周囲と異なる微細な色調あるいは模様、図形、文字等のパターンの形成を行うことに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る媒体の側面を模式的に示す図であり、(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の概念図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る顔料の磁場印加前における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の水平磁場における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(c)は、本発明の一実施形態に係る顔料の垂直磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の概念図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の垂直磁場の曲線部分における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法を実行する装置の側面を概略的に示すとともに、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体形成方法の一工程を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る顔料配向方法を実行する装置の動作を説明するための概念図である。
【図9】(a)は、本発明の一実施形態に係る顔料の左上から右下への斜め磁場における配向状態を模式的に示す側断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る顔料の右上から左下への斜め磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【図10】(a)は、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体の側面図であり、(b)及び(c)は、本発明の一実施形態に係る意匠性媒体のデザインの一例をそれぞれ示す上面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る顔料の水平磁場における配向状態を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2 着磁ヨーク
3a〜3m 磁力線
5 媒体
5a 塗膜(塗工層)
5b 基材
5c 透明基材
6a ロール部(送り出し部)
6b ロール部(巻き取り部)
7 塗工部
8 UV照射部
10 顔料が垂直に配向された部分
11 顔料が水平に配向された部分
12 顔料が左斜めに配向された部分
13 顔料が右斜めに配向された部分
14 顔料成分
15 媒体表面の背景部分
16,17,18,19 媒体表面の文字部分
20,21,22,23 媒体表面の黒正方形部分
24,25,26,27 媒体表面の白正方形部分
30 意匠性媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、
質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、
前記塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、前記塗工層の所定部分毎に、所定方向に前記顔料を配向させる顔料配向ステップと、
前記磁場をかけたまま、又は、前記磁場をかけて前記顔料を配向させた後に、前記塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、
を行うことを特徴とする意匠性媒体形成方法。
【請求項2】
前記磁気異方性を有する顔料が光輝性顔料であることを特徴とする請求項1記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項3】
前記媒体の塗工層に直線状又はほぼ直線状の磁力線が通るように磁場をかけて前記顔料を配向させたことを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項4】
前記媒体の塗工層に曲線状の磁力線が通るように磁場をかけて前記顔料を配向させたことを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項5】
前記塗料として、無溶媒系の樹脂を用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項6】
前記基材として、光を透過する透明基材を用いたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法で形成されたことを特徴とする意匠性媒体。
【請求項1】
意匠性を有する媒体を形成する意匠性媒体形成方法であって、
質量磁化率が10-6m3/kg以下の磁気異方性を有する顔料を樹脂に分散させた塗料を基材に塗工して塗工層を形成する塗工層形成ステップと、
前記塗工層を形成した媒体を、0.3テスラ以上の磁場の中で、前記塗工層の所定部分毎に、所定方向に前記顔料を配向させる顔料配向ステップと、
前記磁場をかけたまま、又は、前記磁場をかけて前記顔料を配向させた後に、前記塗料を硬化させる塗料硬化ステップと、
を行うことを特徴とする意匠性媒体形成方法。
【請求項2】
前記磁気異方性を有する顔料が光輝性顔料であることを特徴とする請求項1記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項3】
前記媒体の塗工層に直線状又はほぼ直線状の磁力線が通るように磁場をかけて前記顔料を配向させたことを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項4】
前記媒体の塗工層に曲線状の磁力線が通るように磁場をかけて前記顔料を配向させたことを特徴とする請求項1又は2記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項5】
前記塗料として、無溶媒系の樹脂を用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項6】
前記基材として、光を透過する透明基材を用いたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の意匠性媒体形成方法で形成されたことを特徴とする意匠性媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−18393(P2008−18393A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194438(P2006−194438)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】
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