説明

感光性着色組成物の製造方法およびカラーフィルタの製造方法

【課題】 塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を容易に除去することができ、異物欠陥を生じにくい感光性着色組成物の製造方法およびそれを用いたカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 平均粒径1μm以下の顔料と、感光性樹脂成分と、分散剤と、溶剤とを少なくとも含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物であって、前記感光性着色組成物を塗布し乾燥した後、再溶解溶剤に浸漬させたとき、再溶解した前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径が、前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径の10倍以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーの液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(以後、有機ELと記す。)表示装置等に用いられる表示装置用カラーフィルタおよびそれに用いられる感光性着色組成物に係り、特に感光性着色組成物により汚染した装置、器具を洗浄し易い感光性着色組成物の製造方法とそれを用いたカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイとして、カラーの液晶表示装置や有機EL表示装置が注目されており、これらの表示装置にはカラーフィルタが用いられている。例えば、カラー液晶表示装置には、一例として、透明基板上に遮光性の高いブラックマトリックス層を形成し、その上に複数の着色パターン(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)からなる着色層を設けたカラーフィルタと、そのカラーフィルタ上に透明電極および配向層を備えた基板と、薄膜トランジスタ(TFT素子)、画素電極および配向層を備えた対向電極基板と、これら両基板を所定の間隙をもたせて対向させ、シール部材で密封して、上記間隙に液晶材料を注入して形成された液晶層とから概略構成された透過型の液晶表示装置がある。また、上記のカラーフィルタの基板と着色層との間に反射層を設けた反射型の液晶表示装置もある。
【0003】
カラーフィルタの着色パターンの形成方法としては、染色法、印刷法、電着法、インクジェット法、顔料分散法等が知られている。これらの方法の中で、顔料分散法はフォトリソグラフィ法によるため、高精度、高品質、大画面、量産性に適した方法として広く使われている。例えば、感光性樹脂成分とR、G、Bからなる顔料をそれぞれ分散した液状の各色の感光性着色組成物を、順次、ブラックマトリックス基板上に塗布し、所定のパターンで露光し、現像することにより、カラーフィルタが形成される。最近では、ブラックマトリックス基板の黒色層も顔料分散法で形成されているカラーフィルタもある。
【0004】
顔料分散法によるカラーフィルタ用感光性着色組成物の塗布工程においては、液状の感光性着色組成物の塗布方法として、スピン塗布法、ロール塗布法、ダイ塗布法、ナイフ塗布法、エクストルージョン塗布法、ビード塗布法、インクジェット法等の種々の塗布方法が用いられている。塗布時においては、しばしば基板裏面等へ感光性着色組成物が付着して汚染し、その汚れを洗浄除去する洗浄液として、例えば、アルカリ溶液や界面活性剤含有洗浄液が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、顔料分散法を用いた上記の塗布工程においては、塗布装置吐出部のノズル、配管部、スピンナー等に感光性着色組成物の一部が付着し乾燥して残存してしまい、目詰まりを起こしたり、汚染を引き起こすという問題があった。塗布装置吐出部の目詰まりは、生産性を低下させ、塗布不良品を生じる。また、装置や配管に付着した感光性着色組成物が剥離してカラーフィルタに混入すると突起状の異物欠陥となり、良品率を低下させてしまうという問題があった。そのために、頻繁に塗布装置や配管を洗浄する必要があった。しかし、従来の洗浄液では付着し乾燥した感光性樹脂組成物を十分に洗浄除去しにくいという問題があり、上記の特許文献1および2に記載の洗浄液を用いて塗布装置や配管部を洗浄すると、新たにアルカリや界面活性剤で装置や配管を汚染させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−213909号公報
【特許文献2】特開平10−239864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を容易に除去することができ、異物欠陥を生じにくい感光性着色組成物とそれを用いたカラーフィルタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、平均粒径1μm以下の顔料と、感光性樹脂成分と、分散剤と、溶剤とを少なくとも含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物の製造方法であって、前記感光性着色組成物を塗布し乾燥した後、再溶解溶剤に浸漬させたとき、再溶解した前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径が、前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径の10倍以下であり、前記再溶解溶剤が、前記感光性着色組成物に含まれる溶剤でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、透明基板と、該透明基板上に1色または2色以上の着色パターンからなる着色層を備え、該着色層の少なくとも1色は、請求項1に記載の感光性着色組成物を用いて形成されたものであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性着色組成物は、顔料分散法による塗布工程で用いられ、たとえ装置や器具に付着し乾燥した場合でも、その付着物を容易に除去することが可能となる。
そのため、本発明の感光性着色組成物を用いることにより、感光性着色組成物の付着物に起因する異物欠陥を生じにくく、高品質のカラーフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明のカラーフィルタ用の感光性着色組成物について説明する。上記の組成物は、平均粒径1μm以下の顔料と、感光性樹脂成分と、分散剤と、溶剤とを少なくとも含有するものであり、この感光性着色組成物を塗布し乾燥した後、再溶解溶剤に浸漬させたとき、再溶解した感光性着色組成物の顔料の平均粒径が、塗布する前の感光性着色組成物の顔料の平均粒径の10倍以下とするものである。本発明において、再溶解溶剤とは、字義通りに乾燥した感光性着色組成物を再溶解させる溶剤を意味するものである。
【0012】
本発明において、感光性着色組成物に用いられる顔料としては、公知の赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料、黒色顔料等を使用することができる。顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで表示すると、赤色顔料はPR177、PR48:1、PR254、黄色顔料はPY83、PY138、PY139、PY150、緑色顔料はPG7、PG36、青色顔料は PB15番台、PB1、PB19、PB60、PB61、紫色顔料は PV23、黒色顔料はカーボンブラック、金属酸化物系の黒色顔料(チタンブラック、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の酸化物を含む顔料)等を挙げることができる。このような顔料の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分の10〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲が望ましい。顔料粒子の平均粒径は1μm以下であり、好ましくは0.03〜0.3μmである。
【0013】
上記の感光性樹脂成分としては、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤等の被膜形成性樹脂分が主体である。
アルカリ可溶型のバインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物の1種以上と、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニル−2−ピロリドンの1種以上とからなるコポリマー等が挙げられ、また、上記のコポリマーにグリシジル基または水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
また、非アルカリ可溶型のバインダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレン重合体、1−ビニル−2−ピロリドン重合体、および、これらの共重合体等を挙げることができる。
【0015】
このような樹脂成分は、光重合開始剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に10〜60重量%程度の範囲で含有されることが好ましい。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合性のモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。本発明では、上記のモノマーを1種または2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0017】
このようなモノマーは、感光性着色樹脂組成物の固形分中に10〜50重量%程度含有されることが好ましい。
【0018】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、又はそれらのエステルなどの誘導体、キサントンならびにチオキサントン誘導体、含ハロゲン化合物としてのクロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類、トリアジン類、フルオレノン類、ハロアルカン類、光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類、有機硫黄化合物、過酸化物類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、紫外線により光重合性モノマーの重合性基を重合させるラジカルを発生させることができる化合物であり、単独または複数組み合わせて使用される。
【0019】
本発明において、顔料を分散させる分散剤としては、スチレン/ブチルスチレン共重
合物、長鎖ポリアミノアマイド燐酸塩、ポリアマイド、高分子量ポリカルボン酸塩、酢酸オレイルアミン、テトラアルキルアンモニウム塩、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸アミノオレエート、リン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。このような分散剤は、顔料100重量部に対して30〜100重量部の範囲で含有させることができる。
【0020】
尚、本発明の感光性着色組成物には、更に添加剤として増感剤、重合停止剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤等を必要に応じて用いることができる。
【0021】
上記の溶剤としては、感光性着色組成物の塗布適性、バインダー樹脂等のポリマーやモノマー、顔料分散剤ないし光重合開始剤に対する溶解性、および、顔料の分散性を考慮して、下記に示す1種または2種以上の溶剤を適宜選択して用いることができる。特に、多価アルコールまたはその誘導体を1種以上含むことが望ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、メトキシメトキシエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコール、ブロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、メチルアミルケトン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチル−α−ヒドロキシイソブチレート、メチル−β−メトキシイソブチレート等が挙げられる。
【0022】
感光性着色組成物の調製法としては、凝集体化している顔料を分散させ易くするため、先ず、顔料、顔料分散剤、溶媒からなる着色液を調製し、その着色液にバインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶媒を混合して調製する。上記の着色液の調製においては、顔料分散剤と顔料とを予め均質に混合した後に溶媒に添加したり、顔料分散剤を溶媒中に混ぜた後に顔料を添加したり、顔料と非水溶媒とからなる分散系に顔料分散剤を添加したりして調整することができる。調整には、いずれの分散機を使用してもよく、例えば、ボールミル、サンドミル、ビスコミル、ロールミル、ニーダー、アトライター、ハイスピードミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。
【0023】
上記の感光性着色組成物は着色液として、ガラスやフィルム等の透明基板上に塗布され、所定のカラーフィルタパターンを有するフォトマスクで紫外線でパターン露光し、現像するフォトリソグラフィ工程を繰り返してカラーフィルタが形成される。
【0024】
このカラーフィルタの製造工程においては、塗布装置等の装置、特にその吐出部のノズル、配管部等に感光性着色組成物が付着し、汚染される。
この付着した感光性着色組成物を容易に溶解除去するために、本発明の感光性着色組成物は、感光性着色組成物を塗布し乾燥した後、再溶解溶剤に浸漬させたとき、再溶解した前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径が、塗布する前の感光性着色組成物の顔料の平均粒径の10倍以下とするものである。再溶解溶剤としては、感光性着色組成物に含まれる溶剤を用いるのが、溶剤が感光性着色組成物となじみ、溶解性が高くなるのでより好ましい。また、再溶解溶剤としては、感光性着色組成物に含まれる溶剤の2種以上を混合した溶剤を用いても良い。
【0025】
本発明のカラーフィルタは、透明基板と、該透明基板上に1色または2色以上の着色パターンからなる着色層を備え、着色層の少なくとも1色は、上記のいずれかの感光性着色組成物を用いて形成されたものである。
【0026】
本発明の感光性着色組成物の評価は、感光性着色組成物の顔料粒径と、感光性着色組成物をガラス基板等に塗布し乾燥し、次に再溶解溶剤に浸漬して再溶解させた後の顔料粒径とを比較するものである。顔料粒径の測定には、レーザードップラー散乱光による粒度分析計を用いるのが好ましい。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0027】
(感光性着色組成物の再溶解性の評価方法)
感光性着色組成物の再溶解性の評価は、以下の方法を用いた。表面を清浄にした所定の大きさのガラス棒(板状でもよい)に所定の厚さで感光性着色組成物の塗布膜を形成し、一定の温湿度環境下で一定時間乾燥した。
次に、上記の感光性着色組成物が付着し乾燥したガラス棒を一定量の再溶解溶剤に一定時間浸漬した後、ガラス棒を軽く振って攪拌してから、再溶解溶剤中に再溶解した感光性着色組成物の顔料の粒径を測定した。粒径は、日機装社製のレーザードップラー散乱光解析粒度分析計(商品名「Microtrac934UPA」)を用い、感光性着色組成物の顔料粒径の累積が50%を占める粒径を50%平均粒径とし、その値を測定して求めた。比較とする塗布する前の感光性着色組成物の顔料粒径は、感光性着色組成物のままでは濃度が高いので、感光性着色組成物に含まれる溶剤(希釈溶剤と呼ぶ)で希釈し、上記と同じく50%平均粒径を測定して求めた。もとより、希釈しても顔料粒径は変わらない。そして、顔料の粒径比は次式で算出した。
粒径比=再溶解後の顔料粒径/希釈後の顔料粒径
【0028】
(実施例1)
下記組成の赤色パターン用感光性着色組成物を用いた。
・バインダー樹脂:アクリル系共重合体
・モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・顔料:赤顔料P.R.254
黄顔料P.Y.138
・分散剤:カプロラクトン共重合体
・光重合開始剤:チバガイギー社製イルガキュア369
ジエチルチオキサントン
ビイミダゾール
・溶剤 :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以後、PGMEAとも記す)
【0029】
この組成物の再溶解後の50%平均粒径は0.1291μmとなり、粒径比は1.1であった。この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて簡単に洗浄除去することができた。またカラーフィルタに異物欠陥は生じなかった。
【0030】
(実施例2)
下記組成の緑色パターン用感光性着色組成物を用いた。
・バインダー樹脂:アクリル系共重合体
・モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製、商品名「SR399」)
・緑顔料:ゼネカ(株)製モナストラルグリーン9Y−C
・黄顔料:BASF社製パリオトールイエローD1819
・分散剤:ゼネカ(株)製ソルスパース24000
・光重合開始剤:チバガイギー社製イルガキュア907
2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−
テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール
・溶剤:PGMEA
【0031】
この組成物の再溶解後の50%平均粒径は0.1738μmとなり、粒径比は実施例1と同じく1.1であった。この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて簡単に洗浄除去することができ、カラーフィルタに異物欠陥は生じなかった。
【0032】
(実施例3)
顔料と顔料誘導体を下記の組成とした以外は、実施例1と同じ組成で青色パターン用感光性着色組成物を用いた。
・青顔料:BASF社製ヘリオゲンブルーL6700F
・顔料誘導体:ゼネカ(株)製ソルスパース12000
【0033】
この組成物の再溶解後の50%平均粒径は0.4729μmとなり、粒径比は3.5であった。この組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて簡単に洗浄除去でき、カラーフィルタに異物欠陥は生じなかった。
【0034】
(実施例4)
バインダー樹脂とモノマーを下記の組成とした以外は、実施例1と同じ組成で赤色パターン用感光性着色組成物を用いた。
・バインダー樹脂:マレイミド系共重合体
・モノマー:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製、商品名「SR399」)
【0035】
この組成物の再溶解後の50%平均粒径は0.9587μmとなり、粒径比は6.4であった。この組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて簡単に洗浄除去でき、カラーフィルタに異物欠陥は生じなかった。
【0036】
(実施例5)
下記組成の黒色パターン用感光性着色組成物を用いた。
・バインダー樹脂:アクリル系共重合体
・モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以後、DPHAとも記す)
・顔料:カーボンブラック(平均粒径100nm)
・分散剤:Disperbyk170(ビックケミー社製)
・光重合開始剤:チバガイギー社製イルガキュア369
ジエチルチオキサントン
ビイミダゾール
・溶剤 :PGMEA
【0037】
この組成物の再溶解後の50%平均粒径は1.1856μmとなり、粒径比は9.6であった。この組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて比較的容易に洗浄除去でき、カラーフィルタに異物欠陥は生じなかった。
【0038】
(比較例1)
実施例1と同一組成だが、組成比が異なる赤色パターン用感光性着色組成物を用いた。この組成物の再溶解後の粒径は、2つの集団を示し、50%平均粒径は1.6217μmとなり、粒径比は11.6であった。この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて洗浄したが、除去することができなかった。
【0039】
(比較例2)
実施例5と同一組成だが、組成比が異なる黒色パターン用感光性着色組成物を用いた。この組成物の再溶解後の50%平均粒径は2.1660μmとなり、粒径比は15.2であった。この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて洗浄したが、除去することができなかった。
【0040】
(比較例3)
実施例4と同一組成だが、組成比が異なる赤色パターン用感光性着色組成物を用いた。この組成物の再溶解後の50%平均粒径は2.5554μmとなり、粒径比は20.3であった。この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを作製したところ、塗布装置や器具に付着し乾燥した付着物を、溶剤PGMEAを用いて洗浄したが、除去することができず、カラーフィルタに異物欠陥を生じた。
【0041】
上記の各種の感光性着色組成物について、感光性着色組成物の希釈後の粒径と、感光性着色組成物を塗布し乾燥後に再溶解溶剤へ再溶解した後の粒径と、粒径比、および再溶解性の評価とを表1に示す。また、この感光性着色組成物をカラーフィルタに用いた場合、塗布装置や器具に付着し乾燥した組成物の洗浄除去の難易度を表1に示す。
再溶解性の評価は、目視判定により、表1に2段階で示した。
○:再溶解性は良い。ガラス棒に付着した感光性着色組成物は完全溶解、または剥離した着色片が5分以内に溶解する。
×:再溶解性は悪い。着色片はガラス棒から剥離することはあっても溶解しない。
また、カラーフィルタに用いた場合の洗浄除去の難易度は、次の2段階でした。
易:塗布装置や器具に付着し乾燥した感光性着色組成物の洗浄除去は容易である。
難:塗布装置や器具に付着し乾燥した感光性着色組成物を容易に洗浄除去できない。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示されるように、感光性着色組成物の再溶解した後の顔料の50%平均粒径と、希釈後の顔料の50%平均粒径との粒径比が10倍以下の場合には、いずれの感光性着色組成物も再溶解溶剤に良好な溶解性を示し、この粒径比が10倍以下の感光性着色組成物をカラーフィルタの製造に用いたところ、たとえ塗布ノズル等に付着物を生じても容易に再溶解溶剤で除去することができた。また、この場合には、カラーフィルタに突起状の異物欠陥が生じないことが確認された。
一方、粒径比が10倍を超えると、凝集した顔料粒子はもはや再溶解溶剤には溶解せず、粒径比が10倍を超える感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの製造を行うと、塗布ノズル等に生じた付着物は溶解除去できず、ノズル等から剥がれてカラーフィルタ上に落下し、カラーフィルタの異物欠陥となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径1μm以下の顔料と、感光性樹脂成分と、分散剤と、溶剤とを少なくとも含有するカラーフィルタ用の感光性着色組成物の製造方法であって、
前記感光性着色組成物を塗布し乾燥した後、再溶解溶剤に浸漬させたとき、再溶解した前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径が、前記感光性着色組成物の顔料の平均粒径の10倍以下であり、前記再溶解溶剤が、前記感光性着色組成物に含まれる溶剤でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることを特徴とする感光性着色組成物の製造方法
【請求項2】
透明基板と、該透明基板上に1色または2色以上の着色パターンからなる着色層を備え、該着色層の少なくとも1色は、請求項1に記載の感光性着色組成物を用いて形成されたものであることを特徴とするカラーフィルタの製造方法

【公開番号】特開2011−138161(P2011−138161A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59423(P2011−59423)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【分割の表示】特願2005−120622(P2005−120622)の分割
【原出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】