説明

感光性組成物に用いられる化合物

【課題】100nm以下の微細パターンの形成においても、パターン倒れが改良され、良好なプロファイルのパターンを形成する感光性組成物に用いられる新規な化合物を提供する。
【解決手段】下式で示される多環環状炭化水素構造を有するアリールスルホニウム塩。


[式中、X1及びX2はそれぞれ独立にアリール基等を表し、Ar1はアリール基を表し、Y1は単結合又は2価の連結基を表し、Y2は多環環状炭化水素基を表し、m1及びm2は0〜2の整数を表し、m3は1又は2を表し、ここでm1+m2+m3=3であり、m4は1〜3の整数を表し、X-は対アニオンを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程に使用される感光性組成物、該感光性組成物に用いられる化合物及び該感光性組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。さらに詳しくは250nm以下、好ましくは220nm以下の遠紫外線などの露光光源、および電子線などによる照射源とする場合に好適な感光性組成物、該感光性組成物に用いられる化合物及び該感光性組成物を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学増幅系感光性組成物は、遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応によって、活性放射線の照射部と非照射部の現像液に対する溶解性を変化させ、パターンを基板上に形成させるパターン形成材料である。
【0003】
KrFエキシマレーザーを露光光源とする場合には、主として248nm領域での吸収の小さい、ポリ(ヒドロキシスチレン)を基本骨格とする樹脂を主成分に使用するため、高感度、高解像度で、且つ良好なパターンを形成し、従来のナフトキノンジアジド/ノボラック樹脂系に比べて良好な系となっている。
【0004】
一方、更なる短波長の光源、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源として使用する場合は、芳香族基を有する化合物が本質的に193nm領域に大きな吸収を示すため、上記化学増幅系でも十分ではなかった。
このため、脂環炭化水素構造を有する樹脂を含有するArFエキシマレーザー用レジストが開発されてきている。遠紫外光等の放射線の照射により露光部に酸を生成させる光酸発生剤についても種々の化合物が開発されてきており、例えば特定の置換基を有するスルホニウム塩化合物が開示されている。(WO 00/08525号パンフレット、特開2000−47387号公報)。
しかしながら、レジストとしての総合性能の観点から、使用される樹脂、光酸発生剤、添加剤、溶剤等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難であるのが実情であり、更に線幅100nm以下のような微細なパターンを形成する際には、解像性能が優れていても、形成したラインパターンが倒れてしまい、デバイス製造時の欠陥となってしまうパターン倒れの問題や、密集パターンと孤立パターンにおける性能差、特に孤立パターンの膜減りにおいては十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/08525号
【特許文献2】特開2000−47387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、100nm以下の微細パターンの形成においても、パターン倒れが改良され、良好なプロファイルのパターンを形成する感光性組成物に用いられる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の通りである。
<1> 下記一般式(I)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】


一般式(I)に於いて、
1及びX2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。X1とX2がアルキル基である場合は、X1とX2とが結合して環構造を形成するものに限る。
Ar1は、アリール基を表す。
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
2は、多環環状炭化水素基を表す。
1は、0〜2を表す。
2は、0〜2を表す。
3は、1又は2を表す。
但し、m1+m2+m3=3である。
4は、1〜3を表す。
-は、対アニオンを表す。
<2> 一般式(I)に於いて、m3=1である、上記<1>に記載の化合物。
<3> 下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される上記<1>に記載の化合物。
【化2】


一般式(I−a)及び(I−b)に於いて、Ar、Y、Y、m、m、m、m及びXは、一般式(I)に於ける、Ar1、Y1、Y、m、m、m、m及びXと同義である。Ar及びArは、アリール基を表す。
<4> 一般式(I)、(I−a)、及び(I−b)に於いて、Yが、アダマンタン構造を有する多環環状炭化水素基である、上記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の化合物。
<5> 一般式(I)、(I−a)、及び(I−b)に於いて、Xが、下記一般式(AN1)で表される有機アニオンである、上記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の化合物。
c1−SO (AN1)
一般式(AN1)に於いて、Rcは、有機基を表す。
<6> 一般式(AN1)に於いて、Rcが、1位がフッ素原子もしくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子もしくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である、上記<5>に記載の化合物。
<7> 一般式(I)、(I−a)及び(I−b)に於いて、Yが、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-O-、-SO-、-SO-、-C(=O)NRd-、-SONRd-、又は、これらの複数が組み合わさった2価の連結基である、上記<1>〜<6>のいずれか一項に記載の化合物。
本発明は上記<1>〜<7>に記載の発明であるが、以下、他の事項も含めて記載している。
【0008】
(1) (A)多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物
を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0009】
(2) (A)多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物及び(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【0010】
(3) 多環環状炭化水素構造をカチオン部に有することを特徴とするアリールスルホニウム塩化合物。
【0011】
(4) 下記一般式(I)で表されることを特徴とする化合物。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(I)に於いて、
1及びX2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。X1とX2が結合して環構造を形成していてもよい。
Ar1は、アリール基を表す。
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
2は、多環環状炭化水素基を表す。
1は、0〜2を表す。
2は、0〜2を表す。
3は、1〜3を表す。
但し、m1+m2+m3=3である。
4は、1〜3を表す。
-は、対アニオンを表す。
【0014】
(5) (1)又は(2)に記載の感光性組成物により、感光性膜を形成し、該感光性膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
(6) (B)成分の樹脂が、ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂であることを特徴とする(2)に記載のポジ型感光性組成物。
(7) (B)成分の樹脂が、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂であることを特徴とする(2)に記載のポジ型感光性組成物。
(8) (B)成分の樹脂が、シリコン原子を有する樹脂であることを特徴とする(2)に記載のポジ型感光性組成物。
(9) (B)成分の樹脂が、ラクトン構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることを特徴とする(2)に記載のポジ型感光性組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、100nm以下の微細パターンの形成においても、パターン倒れが改良され、良好なプロファイルのパターンを形成する感光性組成物及び該感光性組成物を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】2光束干渉露光実験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0018】
(A)多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物
本発明の感光性組成物は、多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物(「以下、(A)成分の化合物」ともいう)を含有する。
多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物としては、アリール基が硫黄カチオンと結合したアリールスルホニウム塩であって多環環状炭化水素構造をカチオン部に有していればいずれのものでも用いることができる。アリールスルホニウム塩としては、硫黄原子に結合する全ての置換基がアリール基でもよいし、硫黄原子に結合する置換基の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基でもよい。多環環状炭化水素構造は、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基のいずれに設けられていてもよいが、アリール基に設けられていることが好ましい。
【0019】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物、ジアリールアラルキルスルホニウム化合物、アリールジアラルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物におけるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭化水素アリール基、ピロール基、インドール基などのヘテロ原子を含有するヘテロアリール基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロへキシル基、ノルボルナン基、アダマンチル基等を挙げることができる。
アラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0020】
多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(I)に於いて、
1及びX2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。X1とX2が結合して環構造を形成していてもよい。
Ar1は、アリール基を表す。
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
2は、多環環状炭化水素基を表す。
1は、0〜2を表す。
2は、0〜2を表す。
3は、1〜3を表す。
但し、m1+m2+m3=3である。
4は、1〜3を表す。
-は、対アニオンを表す。
【0023】
一般式(I)、X1、X2及びAr1に於けるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭化水素アリール基、ピロール基、インドール基などのヘテロ原子を含有するヘテロアリール基が挙げられ、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基、インドール基である。
1及びX2に於けるアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
1及びX2に於けるシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロへキシル基、ノルボルナン基、アダマンチル基等を挙げることができる。
1及びX2に於けるアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
1及びX2は、X1及びX2の両方がフェニル基であるか、X1及びX2が結合してアルキレン基(好ましくは炭素数4〜6)を形成するが好ましい。
1の2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−SO2−、−SO3−、−C(=O)NRd−、−SO2NRd−、またはこれらの複数が組み合わさった2価の連結基を挙げることができる。式中、Rdは、水素原子又はアルキル基を表す。
2の多環環状炭化水素基は、2環以上の多環環状炭化水素基であり、好ましくは、アダマンチル基、ノルボルナン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基、ジアマンチル基などが挙げられる。好ましくはアダマンチル基である。
-の対アニオンとしては、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビススルホニルイミドアニオン、トリススルホニルメチドアニオンなどの炭素原子を有する有機アニオン、BF4-、PF6-、AsF6-、ClO4-などの無機アニオンが挙げられ、有機アニオンが好ましい。
【0024】
好ましい有機アニオンとしては、下記一般式(AN1)〜(AN4)で表される有機アニオンを挙げることができる
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(AN1)〜(AN2)に於いて、
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は、水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rc1の有機基としてより好ましくは、1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rc1において炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は全ての水素原子がフッ素原子で置換されていないことが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
【0027】
Rc1の特に好ましい様態としては、下記一般式で表される基である。
【0028】
【化6】

【0029】
式中、
Rc6は、炭素数4以下、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2〜3のパーフロロアルキレン基、3〜4個のフッ素原子及び/又は1〜3個のフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは、単結合又は2価の連結基(好ましくは、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−)を表す。Rd1は、水素原子又はアルキル基を表し、Rc7と結合して環構造を形成してもよい。
Rc7は、水素原子、フッソ原子、置換していてもよい直鎖若しくは分岐状アルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基又は置換していてもよいアリール基を表す。置換していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、置換基としてフッソ原子を含有しないことが好ましい。
【0030】
一般式(AN3)〜(AN4)に於いて、
Rc3、Rc4及びRc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4及びRc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができる。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。Rc3とRc4が結合して形成される基としては、アルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。Rc3とRc4が結合して環を形成することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0031】
多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物として、更に好ましくは、下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される化合物である。
【0032】
【化7】

【0033】
一般式(I−a)及び(I−b)に於いて、
Ar1、Y1、Y2、m1、m2、m3、m4及びX-は、一般式(I)に於ける、Ar1、Y1、Y2、m1、m2、m3、m4及びX-と同義である。
Ar2及びAr3は、アリール基を表す。
【0034】
一般式(I−a)及び(I−b)に於ける、Ar1、Ar2、Ar3及びY2が有していてもよい置換基として、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0035】
(A)成分の化合物における、好ましいスルホニウムカチオンの具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
(A)成分の化合物における、好ましい対アニオンの具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0039】
【化10】

【0040】
(A)成分の化合物は、上述の好ましいスルホニウムカチオンと好ましい対アニオンとの任意の組み合わせが好ましい。
特に好ましい(A)成分の化合物を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、I−3は、参考例である。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
(A)成分の化合物は、新規化合物である。
(A)成分の化合物は、例えば、多環環状炭化水素基を有するアリール化合物とスルホキシド化合物を反応させることによりカチオン部を形成し、これを塩交換により所望の対アニオンと交換することにより合成できる。
【0045】
(A)成分の化合物の組成物中の含量は、感光性組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%であり、特に好ましくは3〜7重量%である。
【0046】
本発明の感光性組成物は、多環環状炭化水素構造をカチオン部に有するアリールスルホニウム塩化合物以外の活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を併用してもよい。
そのような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0047】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0048】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0049】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0050】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0051】
【化14】

【0052】
一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
-は、対アニオンを表し、一般式(I)に於けるX-の対アニオンと同様のものである。
【0053】
一般式(ZI)に於ける、R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0054】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0055】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0056】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6−から14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0057】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0058】
201〜R203としてのアルキル基は、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
201〜R203としての直鎖、分岐、環状の2−オキソアルキル基は、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基等によって更に置換されていてもよい。
【0059】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0060】
【化15】

【0061】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、対アニオンを表し、一般式(I)に於ける、X-の対アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0062】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜20個の直鎖若しくは分岐状アルキル基、好ましくは、炭素数1〜12個の直鎖若しくは分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0063】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐2−オキソアルキル基、アルコキシメチル基であることがより好ましい。
x及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることがより好ましい。
直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0064】
前記一般式(ZII)及び(ZIII)に於いて、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、対アニオンを表し、一般式(I)に於けるX-の対アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0065】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0066】
【化16】

【0067】
一般式(ZIV)〜(ZVI)に於いて、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。R207として、好ましくは、アリール基である。R208として、好ましくは、電子吸引性基であり、より好ましくは、シアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0068】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物であり、更に好ましくは一般式(ZI)で表される化合物であり、特に好ましくは一般式(ZI−1)〜(ZI−3)で表される化合物である。
【0069】
更に、活性光線又は放射線の照射により、下記一般式(AC1)〜(AC3)で表される酸を発生する化合物が好ましい。
【0070】
【化17】

【0071】
一般式(AC1)〜(AC3)に於ける、Rc1、Rc3〜Rc5は、前記一般式(AN1)〜(AN4)に於ける、Rc1、Rc3〜Rc5と同義である。
【0072】
特に好ましい酸発生剤の様態としては、一般式(ZI)の構造において、X-が、前記(AN1)、(AN3)、(AN4)から選ばれる対アニオンである化合物である。
【0073】
併用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
併用してもよい酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
(A)成分の化合物および併用してもよい酸発生剤の合計の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%であり、特に好ましくは3〜7重量%である。
【0078】
(A)成分の化合物を含有する感光性組成物は、ポジ型感光性組成物及びネガ型感光性組成物の態様をとることができる。
(A)成分の化合物及び(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂を含有する感光性組成物は、ポジ型感光性組成物であり、感光性膜を形成し、活性光線又は放射線を照射し、アルカリ現像液で現像した場合に、露光部が溶解除去され、パターンが形成される。
(A)成分の化合物、アルカリ現像液に可溶な樹脂及び酸の作用によりアルカリ現像液に可溶な樹脂を架橋する酸架橋剤を含有する感光性組成物は、ネガ型感光性組成物であり、感光性膜を形成し、活性光線又は放射線を照射し、アルカリ現像液で現像した場合に、未露光部が溶解除去され、パターンが形成される。
【0079】
(B)酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂
本発明のポジ型感光性組成物に用いられる、酸により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂(以下、「(B)成分の樹脂」ともいう)は、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸で分解し得る基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂である。この内、酸で分解し得る基を側鎖に有する樹脂がより好ましい。
【0080】
酸で分解し得る基として好ましい基は、−COOH基、−OH基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
本発明においては、酸分解性基は、アセタール基又は3級エステル基が好ましい。
【0081】
これら酸で分解し得る基が側鎖として結合する場合の母体樹脂は、側鎖に−OHもしくは−COOH基を有するアルカリ可溶性樹脂である。例えば、後述するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
【0082】
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して170A/秒以上が好ましい。特に好ましくは330Å/秒以上である。
【0083】
このような観点から、特に好ましいアルカリ可溶性樹脂は、o−,m−,p−ポリ(ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、ハロゲンもしくはアルキル置換ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(ヒドロキシスチレン)の一部、O−アルキル化もしくはO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂、(メタ)アクリル酸、ノルボルネンカルボン酸などのカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有するアルカリ可溶性樹脂である。
【0084】
本発明に於ける好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0085】
本発明に用いられる(B)成分の樹脂は、欧州特許254853号、特開平2−25850号、同3−223860号、同4−251259号等に開示されているように、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解し得る基の前駆体を反応させる、もしくは、酸で分解し得る基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合して得ることができる。
【0086】
本発明のポジ型感光性組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(好ましくはEUVなど)を照射する場合には、(B)成分の樹脂は、ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン繰り返し単位/酸分解基で保護されたヒドロキシスチレン繰り返し単位を含有する共重合体、ヒドロキシスチレン繰り返し単位/酸分解基で保護された(メタ)アクリル酸エステル繰り返し単位を含有する共重合体が好ましい。
【0087】
本発明に使用される(B)成分の樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
上記具体例において、tBuはt−ブチル基を表す。
【0091】
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基の数(B)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)をもって、B/(B+S)で表される。
含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0092】
本発明のポジ型感光性組成物にArFエキシマレーザー光を照射する場合には、(B)成分の樹脂は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂であることが好ましい。
【0093】
単環又は多環の脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性が増大する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう)としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II−AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0094】
【化23】

【0095】
一般式(pI)〜(pV)に於いて、
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表す。
Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0096】
【化24】

【0097】
一般式(II−AB)に於いて、
11'及びR12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0098】
上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0099】
【化25】

【0100】
一般式(II−AB1)及び(II−AB2)に於いて、
13'〜R16'は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R17'、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Rl3'〜R16'のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。
A'は、単結合又は2価の連結基を表す。
17'は、−COOH、−COOR5、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0101】
前記一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25における、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基等を挙げることができる。
【0102】
12〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。
【0103】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0104】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0105】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0106】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(PV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0107】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(PA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0108】
【化26】

【0109】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合、−COO−CH2−である。
Rp1は、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0110】
一般式(PA)で表される繰り返し単位は、最も好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0111】
以下、一般式(PA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0112】
式中、RxはH、CH3、CF3又はCH2OHを表し、Rxa及びRxaは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0113】
【化27】

【0114】
前記一般式(II−AB)、R11'、R12'におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
11'、R12'におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0115】
Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)に於けるR12〜R25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、前記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13'〜R16'を挙げることができる。
【0116】
本発明に係る脂環炭化水素系酸分解性樹脂においては、酸の作用により分解する基は、前記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含有することができる。
酸分解性繰り返し単位は、1種を用いてもよいが、酸脱離基の炭素数の異なる2種以上の酸分解性繰り返し単位を併用することが好ましい。これにより解像力、露光ラチチュードのバランスが良好になる。
【0117】
一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR13'〜R16'の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0118】
一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0119】
【化28】

【0120】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、ラクトン基を有することが好ましい。ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造に多環構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0121】
【化29】

【0122】
ラクトン構造部分は置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0123】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、前記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を表す)、又は下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0124】
【化30】

【0125】
一般式(AI)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環若しくは多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。
Abは、好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0126】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0127】
ラクトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0128】
好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては下記の繰り返し単位が挙げられる。
最適なラクトン構造を選択することにより、パターンプロファイル、粗密依存性が良好となる。
【0129】
【化31】

【0130】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。好ましい極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0131】
【化32】

【0132】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基又はシアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。一般式(VIIa)において更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0133】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、前記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0134】
【化33】

【0135】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R2c〜R4cと同義である。
【0136】
極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
【0137】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0138】
【化34】

【0139】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0140】
【化35】

【0141】
一般式(VIII)に於いて、
2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、水酸基、アルキル基又は−OSO2−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0142】
一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0143】
【化36】

【0144】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(好ましくは下記一般式(F1)で表される構造)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
【0145】
【化37】

【0146】
一般式(F1)中、
50〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R50〜R55の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、R50〜R55の全てがフッ素原子であることが好ましい。
【0147】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。最も好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0148】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
【0149】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0150】
【化38】

【0151】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、更に、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0152】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を含有することができる。
【0153】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0154】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0155】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0156】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0157】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0158】
本発明の感光性組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0159】
本発明に用いる脂環炭化水素系酸分解性樹脂として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系、繰り返し単位のすべてがアクリレート系、メタクリレート系/アクリレート系混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。より好ましくは一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50%、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30%有する共重合ポリマー、または更にその他の繰り返し単位を0〜20%含む共重合ポリマーである。
【0160】
特に好ましい樹脂としては、下記一般式(ARA−1)〜(ARA−5)で表される酸分解性基を有する繰り返し単位20〜50モル%、一般式(ARL−1)〜(ARL−7)で表されるラクトン基を有する繰り返し単位20〜50モル%、一般式(ARH−1)〜(ARH−3)で表される極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30モル%含有する樹脂、または更にカルボキシル基、あるいは前記一般式(F1)で表される構造を含有する繰り返し単位、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を5〜20モル%含む樹脂である。
(式中、Rxy1は、水素原子またはメチル基を表し、Rxa1及びRxb1は、各々独立に、メチル基またはエチル基を表す。)
【0161】
【化39】

【0162】
【化40】

【0163】
本発明の感光性組成物を多層レジストの上層レジストに使用する場合に、(B)成分の樹脂は、シリコン原子を有することが好ましい。
【0164】
シリコン原子を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解性を増大する樹脂としては、シリコン原子を主鎖及び側鎖の少なくとも一方に有する樹脂を用いることができる。樹脂の側鎖にシロキサン構造を有する樹脂として、例えば、シリコン原子を側鎖に有するオレフィン系単量体、無水マレイン酸及び酸分解性基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸系単量体の共重合体を挙げることができる。
シリコン原子を有する樹脂としてはトリアルキルシリル構造、単環または多環の環状シロキサン構造を有する樹脂が好ましく、下記一般式(SS−1)〜(SS−4)で表される構造を有する繰り返しを有する樹脂がより好ましく、一般式(SS−1)〜(SS−4)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系繰り返し単位、ビニル系繰り返し単位またはアリル系繰り返し単位がより好ましい。
【0165】
【化41】

【0166】
一般式(SS−1)〜(SS−4)中、
Rsは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0167】
シリコン原子を有する樹脂は、異なる2種類以上のシリコン原子を有する繰り返し単位を有することが好ましく、より好ましくは(Sa)シリコン原子を1〜4個有する繰り返し単位と(Sb)シリコン原子を5〜10個有する繰り返し単位の両方を有する樹脂であり、更により好ましくは一般式(SS−1)〜(SS−3)で表される構造を有する少なくとも1種類の繰り返し単位と一般式(SS−4)で表される構造を有する繰り返し単位を有する樹脂である。
【0168】
好ましいシリコン原子を有する樹脂の具体例として以下の(SI−1)〜(SI−5)が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0169】
【化42】

【0170】
(B)成分の樹脂は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。重合開始剤とともにチオール化合物などの連鎖移動剤を併用してもよい。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0171】
(B)成分の樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
(B)成分の樹脂の分子量分布(分散度)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜2、更に好ましくは1.3〜2の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0172】
本発明の感光性組成物において、本発明に係わる全ての樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中60〜99質量%が好ましく、より好ましくは80〜98質量%である。
また、本発明において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0173】
アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物
本発明の感光性組成物には、アルカリ可溶性基、親水基、酸分解性基から選ばれるすくなくとも1つを有する、分子量3000以下の溶解制御化合物(以下、「溶解制御化合物」ともいう)を加えてもよい。
溶解制御化合物としては、カルボキシル基、スルホニルイミド基、α位がフロロアルキル基で置換された水酸基などのようなアルカリ可溶性基を有する化合物、水酸基やラクトン基、シアノ基、アミド基、ピロリドン基、スルホンアミド基、などの親水性基を有する化合物、または酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基を含有する化合物が好ましい。酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基または親水性基を放出する基としてはカルボキシル基あるいは水酸基を酸分解性基で保護した基が好ましい。溶解制御化合物としては220nm以下の透過性を低下させないため、芳香環を含有しない化合物を用いるか、芳香環を有する化合物を組成物の固形分に対し20wt%以下の添加量で用いることが好ましい。
好ましい溶解制御化合物としては、アダマンタン(ジ)カルボン酸、ノルボルナンカルボン酸、コール酸などの脂環炭化水素構造を有するカルボン酸化合物、またはそのカルボン酸を酸分解性基で保護した化合物、糖類などのポリオール、またはその水酸基を酸分解性基で保護した化合物が好ましい。
【0174】
本発明における溶解制御化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0175】
溶解制御化合物の添加量は、感光性組成物の固形分に対し、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0176】
以下に溶解制御化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0177】
【化43】

【0178】
アルカリ現像液に可溶な樹脂
ネガ型感光性組成物に使用される、アルカリ現像液に可溶な樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂」ともいう)のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して20Å/秒以上のものが好ましい。
特に好ましくは200Å/秒以上のものである。
【0179】
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、水素化ノボラツク樹脂、アセトン−ピロガロール樹脂、o−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン、水素化ポリヒドロキシスチレン、ハロゲンもしくはアルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、o/p−及びm/p−ヒドロキシスチレン共重合体、ポリヒドロキシスチレンの水酸基に対する一部O−アルキル化物(例えば、5〜30モル%のO−メチル化物、O−(1−メトキシ)エチル化物、O−(1−エトキシ)エチル化物、O−2−テトラヒドロピラニル化物、O−(t−ブトキシカルボニル)メチル化物等)もしくはO−アシル化物(例えば、5〜30モル%のo−アセチル化物、O−(t−ブトキシ)カルボニル化物等)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、カルボキシル基含有メタクリル系樹脂及びその誘導体、ポリビニルアルコール誘導体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0180】
特に好ましいアルカリ可溶性樹脂は、ノボラック樹脂及びo−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン及びこれらの共重合体、アルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの一部O−アルキル化、もしくはO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体である。
【0181】
ノボラック樹脂は、所定のモノマーを主成分として、酸性触媒の存在下、アルデヒド類と付加縮合させることにより得られる。
【0182】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、2000以上、好ましくは5000〜200000、より好ましくは5000〜100000である。
【0183】
ここで、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーのポリスチレン換算値をもって定義される。
【0184】
本発明におけるこれらのアルカリ可溶性樹脂は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0185】
アルカリ可溶性樹脂の使用量は、感光性組成物の全組成物の固形分に対し、通常40〜97質量%、好ましくは60〜90質量%である。
【0186】
酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂と架橋する酸架橋剤
本発明のネガ型感光性組成物には、酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂と架橋する酸架橋剤(以下、「架橋剤」ともいう)が使用される。
【0187】
架橋剤としては酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂と架橋する化合物であればいずれも用いることができるが、以下の(1)〜(3)が好ましい。
(1)フェノール誘導体のヒドロキシメチル体、アルコキシメチル体、アシルオキシメチル体。
(2)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、N−アシルオキシメチル基を有する化合物。
(3)エポキシ基を有する化合物。
【0188】
アルコキシメチル基としては炭素数6個以下、アシルオキシメチル基としては炭素数6個以下が好ましい。
【0189】
これらの架橋剤の内、特に好ましいものを以下に挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0190】
【化44】

【0191】
式中、L1〜L8は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基又は炭素数1〜6個のアルキル基を示す。
【0192】
架橋剤は、ネガ型感光性組成物の固形分中、通常3〜70質量%、好ましくは5〜50質量%の添加量で用いられる。
【0193】
塩基性化合物
本発明の感光性組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減あるいは、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
【0194】
塩基性化合物としては含窒素塩基性化合物、オニウム塩化合物を挙げることができる。
好ましい含窒素塩基性化合物の構造として、下記一般式(A)〜(E)で示される部分構造を有する化合物を挙げることができる。
【0195】
【化45】

【0196】
一般式(A)に於いて、
250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、R250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。
また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでも良い。
【0197】
一般式(E)に於いて、
253、R254、R255及びR256は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。
【0198】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジンを挙げることができ、置換基を有していてもよい。更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0199】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等があげられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどがあげられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドなどがあげられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等があげられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0200】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上で用いられる。
塩基性化合物の使用量は、感光性組成物の固形分を基準として、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。十分な添加効果を得る上で0.001質量%以上が好ましく、感度や非露光部の現像性の点で10質量%以下が好ましい。
【0201】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤
本発明の感光性組成物は、更に、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
【0202】
本発明の感光性組成物がフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤とを含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0203】
これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0204】
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0205】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
【0206】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0207】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0208】
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤の使用量は、感光性組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0209】
表面疎水化樹脂
本発明の感光性組成物からなる感光性膜を、液浸水を介して露光する場合には、感光性組成部tに必要に応じてさらに表面疎水化樹脂を添加することができる。これにより、レジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性をよくすることができる。
表面疎水化樹脂としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。添加量は、レジスト膜の後退接触角は60°〜80°になるよう適宜調整して使用できるが、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0210】
有機溶剤
本発明の感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤に溶解して用いる。
【0211】
使用し得る有機溶剤としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0212】
本発明において、有機溶剤としては、単独で用いても混合して用いても良いが、異なる官能基を有する2種以上の溶剤を含有する混合溶剤を用いることが好ましい。これにより素材の溶解性が高まり、経時におけるパーティクルの発生が抑制できるだけでなく、良好なパターンプロファイルが得られる。異なる官能基を有する2種以上の溶剤を含有する混合溶剤としては水酸基を含有する溶剤、エステル構造を有する溶剤、ケトン構造を有する溶剤、ラクトン構造を有する溶剤、カーボネート構造を有する溶剤から選ばれる少なくとも2種を含有する混合溶剤が好ましい。
異なる官能基を有する2種以上の溶剤を含有する混合溶剤としては、以下の(S1)〜(S6)の混合溶剤が好ましい
(S1)水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤、
(S2)エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤、
(S3)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤、
(S4)エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を有する溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤、
(S5)エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を有する溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤、
(S6)エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤とを少なくとも含有する混合溶剤。
これによりレジスト液保存時のパーティクル発生を軽減でき、また、塗布時の欠陥の発生を抑制することができる。
【0213】
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルがより好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
ケトン構造を有する溶剤としては、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどが挙げられ、好ましくは2−ヘプタノンである。
エステル構造を有する溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、酢酸ブチルなどが挙げられ、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
ラクトン構造を有する溶剤としては、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
カーボネート構造を有する溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートが挙げられ、好ましくはプロピレンカーボネートである。
【0214】
(S1)における、水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
(S2)における、エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは40/60〜80/20である。エステル構造を有する溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
(S3)における、エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤との混合比(質量)は、70/30〜99/1、好ましくは80/20〜99/1、更に好ましくは90/10〜99/1である。エステル構造を有する溶剤を70質量%以上含有する混合溶剤が経時安定性の点で特に好ましい。
(S4)における、エステル構造を有する溶剤とラクトン構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80重量%、ラクトン構造を有する溶剤を1〜20重量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60重量%含有することが好ましい。
(S5)における、エステル構造を有する溶剤とカーボネート構造を有する溶剤と水酸基を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80重量%、カーボネート構造を有する溶剤を1〜20重量%、水酸基を含有する溶剤を10〜60重量%含有することが好ましい。
(S6)における、エステル構造を有する溶剤とケトン構造を有する溶剤とラクトン構造を含有する溶剤を混合する際は、エステル構造を有する溶剤を30〜80重量%、ケトン構造を有する溶剤を10〜60重量%、ラクトン構造を含有する溶剤を1〜20重量%含有することが好ましい。
【0215】
<その他の添加剤>
本発明の感光性組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、上記フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0216】
本発明で使用できる現像液に対する溶解性を促進させる化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
【0217】
これら溶解促進性化合物の好ましい添加量は、(B)成分の樹脂に対して2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制、現像時パターン変形防止の点で50質量%以下が好ましい。
【0218】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号、欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
【0219】
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0220】
本発明においては、上記フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を加えることもできる。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪族エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類等のノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0221】
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0222】
(パターン形成方法)
本発明の感光性組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0223】
例えば、感光性組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により任意の厚み(通常50〜500nm)で塗布する。塗布後、スピンまたはベークにより乾燥し、レジスト膜を形成する。ベーク温度は適宜設定できるが、通常60〜150℃であり、このましくは90〜130℃である。
【0224】
ついでパターン形成のためマスクなどを通し、露光する。
露光量は適宜設定できるが、通常1〜100mJ/cm2である。露光後、好ましくはスピンまたは/かつベークを行い、現像、リンスを行い、パターンを得る。
【0225】
活性光線又は放射線の照射時に感光性膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。また、液浸露光を行なう際に液浸媒体と感光性膜が直接触れ合わないようにするために感光性膜の上にさらにオーバーコート層を設けても良い。これにより感光性膜から液浸媒体への組成物の溶出が抑えられ、現像欠陥が低減する。
【0226】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下の波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、電子線等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子線が好ましい。
【0227】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0228】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜14.0である。
【0229】
本発明のポジ型レジスト組成物は、多層レジストプロセス(特に3層レジストプロセス)に適用してもよい。多層レジスト法は、以下のプロセスを含むものである。
(a) 被加工基板上に有機材料からなる下層レジスト層を形成する。
(b) 下層レジスト層上に中間層及び放射線照射で架橋もしくは分解する有機材料からなる上層レジスト層を順次積層する。
(c) 該上層レジスト層に所定のパターンを形成後、中間層、下層及び基板を順次エッチングする。
中間層としては、一般にオルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂)あるいはSiO2塗布液(SOG)が用いられる。下層レジストとしては、適当な有機高分子膜が用いられるが、各種公知のフォトレジストを使用してもよい。たとえば、フジフイルムアーチ社製FHシリーズ、FHiシリーズ或いは住友化学社製PFIシリーズの各シリーズを例示することができる。
下層レジスト層の膜厚は、0.1〜4.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0μmであり、特に好ましくは0.25〜1.5μmである。0.1μm以上とすることは、反射防止や耐ドライエッチング性の観点で好ましく、4.0μm以下とすることはアスペクト比や、形成した微細パターンのパターン倒れの観点で好ましい。
【実施例】
【0230】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
なお、以下において、化合物I−3及びこれを用いた実施例3は参考例である。
【0231】
合成例1(化合物(I−1)の合成)
トリフロロメタンスルホン酸銀5gとベンゼン50mlを混合し、これに1−ブロモアダマンタン4.2gをベンゼン50mlに溶解させたものを30分かけて加えた。暗所で12時間攪拌した。反応液を水300mlに注ぎ、これをヘキサンで抽出、有機相を水、飽和食塩水で洗浄、乾燥、濃縮すると粗生成物が得られた。これをカラムクロマトグラフィーで精製すると、1−フェニルアダマンタンが1.7g得られた。
1−フェニルアダマンタン1.6g、ジフェニルスルホキシド1.5gをジクロロメタン10mlと混合し、これにトリフロロ酢酸無水物10gを加えた。−30℃で、ノナフロロブタンスルホン酸2.4gを加え、2時間反応した。室温まで昇温しさらに1時間攪拌した後、反応液を氷に注いだ。これをクロロホルムで抽出し、有機相を飽和NaHCO3水溶液、水で洗浄、濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製すると、化合物(I−1)が2.9g得られた。
H−NMR(CDCl
δ1.6〜2.2(m、15H)、δ7.6〜7.8(m、14H)
【0232】
合成例2(化合物(I−2)の合成)
4−(1−アダマンチルメトキシメチル)フェニルジフェニルスルホニウムブロミド2gをメタノール30mlに溶解させ、これにノナフロロブタンスルホン酸カリウム1.36gを水/メタノール混合液に溶解させたものを加えた。反応液をクロロホルムで抽出し、有機相を水洗、濃縮すると粗生成物が得られた。これにジイソプロピルエーテルを加えて攪拌すると粉体が析出した。これをろ取、乾燥すると、化合物(I−2)が1.2g得られた。
H−NMR(CDCl
δ1.6〜1.8(m、12H)、δ2.0(bs、3H)、δ3.1(s、2H)、δ4.6(s、2H)、δ7.6〜7.8(m、14H)
【0233】
他の(A)成分の化合物についても同様の手法を用いて合成した。
【0234】
合成例3(樹脂(RA−1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン8.4gを3つ口フラスコに入れこれを80℃に加熱した。これにγブチロラクトンメタクリレート6.8g、3−ヒドロキシアダマンチル−1−メタクリレート4.7g、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート9.4g、重合開始剤V−60(和光純薬製)をモノマーに対し13mol%をシクロヘキサノン75gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後メタノール900m/水100mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(RA−1)が178g得られた。得られた樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で6300、分散度(Mw/Mn)は、1.60であった。
【0235】
樹脂(RA−2)〜(RA−12)についても同様の手法を用いて合成した。重量平均分子量は開始剤の量を変更することで調整した。
【0236】
以下、樹脂(RA−1)〜(RA−12)の構造を示す。
【0237】
【化46】

【0238】
【化47】

【0239】
実施例1〜13及び比較例1〜2
<レジスト調製>
下記表1に示す成分を溶剤に溶解させ固形分濃度7質量%の溶液を調製し、これを0.03ミクロンのポリエチレンフィルターでろ過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価し、結果も表1に示した。
<レジスト評価>
スピンコーターにてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上にブリューワーサイエンス社製反射防止膜DUV−42を600オングストローム均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で乾燥した後、190℃で240秒間加熱乾燥を行った。その後、各ポジ型レジスト溶液をスピンコーターで塗布し120℃で60秒乾燥を行い160nmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製NA=0.75、ダイポール)で露光し、露光後直ぐに120℃で60秒間ホットプレート上で加熱した。さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを得た。
パターン倒れ評価法:
75nmライン/75nmスペースのマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量からさらに露光量を増大させて形成されるラインパターンの線幅を細らせた際に、パターンが倒れずに解像する線幅をもって定義した。値が小さいほど、より微細なパターンが倒れずに解像することを表し、パターン倒れが発生しにくく、解像力が高いことを示す。
膜減り評価法:
75nmライン/75nmスペースのマスクパターンを再現する露光量における、90nmライン/900nmスペース(孤立パターン)のパターンプロファイルを評価した。
矩形なものを○、やや膜減りしているものを△、膜減りが大きいものを×とした。
【0240】
【表1】

【0241】
以下、表1中の略号を示す。
【0242】
〔酸発生剤〕
【0243】
【化48】

【0244】
〔塩基性化合物〕
TPSA:トリフェニルスルホニウムアセテート
DIA:2,6−ジイソプロピルアニリン
TEA:トリエタノールアミン
PBI:2−フェニルベンズイミダゾール
TMEA:トリス(メトキシエトキシエチル)アミン
PEA:N−フェニルジエタノールアミン
〔界面活性剤〕
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W‐4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)(シリコン系)
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
S2:2−ヘプタノン
S3:シクロヘキサノン
S4:γ−ブチロラクトン
S5:プロピレングリコールメチルエーテル
S6:乳酸エチル
S7:プロピレンカーボネート
【0245】
表1から、本発明の感光性組成物は、パターン倒れ性能が改良され、プロファイルが良好であることが明らかである。
【0246】
(液浸露光)
<レジスト調製>
表1の実施例1〜13および比較例1〜2の成分を溶剤に溶解させ固形分濃度5質量%の溶液を調整し、これを0.03μmのポリエチレンフィルターで濾過してポジ型レジスト溶液を調整した。調整したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価した。
<解像性評価>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃、60秒ベークを行い78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト溶液を塗布し、115℃、60秒ベークを行い140nmのレジスト膜を形成した。
こうして得られたウエハーを液浸液としては純水を使用し、2光束干渉露光を行った(ウェット露光)。尚、2光束干渉露光(ウエット)では、図1に示すように、レーザー1、絞り2、シャッター3、3枚の反射ミラー4,5、6、集光レンズ7を使用し、プリズム8、液浸液(純水)9を介して反射防止膜及びレジスト膜を有するウエハー10に露光を行った。レーザー1の波長は、193nmを用い、65nmのラインアンドスペースパターンを形成するプリズム8を使用した。露光直後に115℃、90秒加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38%)で60秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥して得たレジストパターンについて走査型電子顕微鏡(日立製S−9260)を用い、観察した。実施例1〜13のポジ型レジスト溶液を用いたところ、65nmのラインアンドスペースパターンがパターン倒れを発生せずに解像した。比較例1、2のポジ型レジスト溶液を用いたところ、65nmのラインアンドスペースパターンは解像するものの、一部のパターンでパターン倒れが観測された。
本発明の感光性組成物は、液浸液を介した露光方法においても良好な画像形成能を有することが明らかである。
【0247】
実施例14及び比較例3
(1)下層レジスト層の形成
シリコンウエハにFHi−028DDレジスト(富士フィルムオーリン社製i線用レジスト)をスピンコーターを用い塗布し、90℃で、90秒間ベークし、膜厚0.55μmの均一膜を得た。
これを更に200℃で、3分間加熱し、膜厚0.40μmの下層レジスト層を形成させた。
(2)上層レジスト層の形成
下記表2に示す成分を溶剤に溶解させ、固形分濃度8質量%の溶液を調製し、口径0.03μmのメンブレンフィルターで精密ろ過して上層レジスト組成物を調製した。
下層レジスト層の上に上層レジスト組成物を下層と同様に塗布し、130℃で、90秒間加熱して、膜厚0.20μmの上層レジスト層を形成させた。
(3)レジスト評価
こうして得られたウエハに、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製 NA=0.75)で露光し、露光後直ぐに120℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを得た。
【0248】
パターン倒れ評価法:
線幅90nmのラインアンドスペースのマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量より露光量を増大させ、ラインパターンを細らせていった際にパターンが倒れる線幅を観測した。値が小さいほど、パターン倒れを発生せずにより細いパターンを形成できパターン倒れ性能が良好である。
膜減り評価法:
90nmライン/90nmスペースのマスクパターンを再現する露光量における、100nmライン/1000nmスペース(孤立パターン)のパターンプロファイルを評価した。矩形なものを○、やや膜減りしているものを△、膜減りが大きいものを×とした。
評価結果を表2に示す。
【0249】
【表2】

【0250】
以下、表2中の樹脂(SI−3)の構造を示す。
【0251】
【化49】

【0252】
表2から、本発明の感光性組成物は、パターン倒れ性能が改良され、プロファイルが良好であることが明らかである。
【0253】
実施例15〜16及び比較例4
<レジスト調製>
下記表3に示した成分を溶剤に溶解させ、これを0.05μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して固形分濃度14質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、0.4μmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザーステッパー(NA=0.63)を用いラインアンドスペース用マスクを使用してパターン露光し、露光後すぐに110℃で90秒間ホットプレート上て加熱した。更に2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液で23℃下60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを形成した。
膜減り発生線幅評価法:
線幅130nmの孤立パターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量より露光量を増大させ、ラインパターンを細らせていった際に膜減りが発生する線幅を観測した。値が小さいほど、膜減りを発生せずにより細いパターンを形成でき性能が良好である。
【0254】
【表3】

【0255】
以下、表3中の樹脂(R−8)及び(R−13)の構造を示す。
【0256】
【化50】

【0257】
表3から、本発明の感光性組成物は、膜減り発生線幅性能が良好であることが明らかである。
【0258】
実施例17〜18及び比較例5
<レジスト調製>
前記表3に示した成分を溶剤に溶解させ、これを0.05μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して固形分濃度11質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、250nmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、電子線直描装置(加速電圧50keV)でパターン照射し、照射後直ぐに120℃で90秒間ホットプレート上て加熱した。更に濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインアンドスペースパターンを形成した。
パターン倒れ:
線幅120nmのラインアンドスペースのマスクパターンを再現する照射量を最適照射量とし、最適照射量より照射量を増大させ、ラインパターンを細らせていった際にパターンが倒れる線幅を観測した。値が小さいほど、パターン倒れを発生せずにより細いパターンを形成できパターン倒れ性能が良好である。
評価結果を表4に示す。
【0259】
【表4】

【0260】
表4から、本発明の感光性組成物は、パターン倒れ性能が改良されていることが明らかである。
【符号の説明】
【0261】
1 レーザー
2 絞り
3 シャッター
4、5、6 反射ミラー
7 集光レンズ
8 プリズム
9 液浸液
10 反射防止膜及びレジスト膜を有するウエハー
11 ウエハーステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】


一般式(I)に於いて、
1及びX2は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。X1とX2がアルキル基である場合は、X1とX2とが結合して環構造を形成するものに限る。
Ar1は、アリール基を表す。
1は、単結合又は2価の連結基を表す。
2は、多環環状炭化水素基を表す。
1は、0〜2を表す。
2は、0〜2を表す。
3は、1又は2を表す。
但し、m1+m2+m3=3である。
4は、1〜3を表す。
-は、対アニオンを表す。
【請求項2】
一般式(I)に於いて、m3=1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記一般式(I−a)又は(I−b)で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】


一般式(I−a)及び(I−b)に於いて、Ar、Y、Y、m、m、m、m及びXは、一般式(I)に於ける、Ar1、Y1、Y、m、m、m、m及びXと同義である。Ar及びArは、アリール基を表す。
【請求項4】
一般式(I)、(I−a)、及び(I−b)に於いて、Yが、アダマンタン構造を有する多環環状炭化水素基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(I)、(I−a)、及び(I−b)に於いて、Xが、下記一般式(AN1)で表される有機アニオンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
c1−SO (AN1)
一般式(AN1)に於いて、Rcは、有機基を表す。
【請求項6】
一般式(AN1)に於いて、Rcが、1位がフッ素原子もしくはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子もしくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(I)、(I−a)及び(I−b)に於いて、Yが、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-O-、-SO-、-SO-、-C(=O)NRd-、-SONRd-、又は、これらの複数が組み合わさった2価の連結基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25762(P2012−25762A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191956(P2011−191956)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2006−287220(P2006−287220)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】