説明

感光性組成物及びその硬化物

【課題】大気中の酸素及び湿度により阻害されない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)を有する感光性組成物を提供すること。
【解決手段】分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)40質量%以上84.9質量%以下と、分子中にエポキシ基を1個以上と、加水分解性基とを有するシラン化合物(b)15質量%以上50質量%以下と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)0.1質量%以上10質量%以下と、を含む感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及びその硬化物、並びに感光性接着剤、感光性コーティング材、感光性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等のエネルギー線を用いた硬化システムは、生産性の向上や近年の環境問題を解決する上で有力な方法となっている。現在の光硬化システムの主流は(メタ)アクリレート系材料を使用したラジカル硬化系材料である。一方、エポキシやビニルエーテル、オキセタン等の材料を使用したカチオン硬化系材料は、(a)酸素による硬化阻害を受け難いため、表面及び薄膜硬化性に優れること、(b)硬化収縮が小さく、幅広い基材に対し良好な接着性を有すること、(c)活性種の寿命が長く光照射後も硬化が徐々に進むため(暗反応)、残モノマー量を低く抑えることが可能であること等、ラジカル硬化系材料に比べ優れた特長を有する。そのため、近年、カチオン硬化系材料を、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等へ応用することが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
光カチオン硬化系材料として主に用いられる化合物として、エポキシ化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性に富む脂環式エポキシ化合物が多用される(例えば、特許文献1参照)。脂環式エポキシ化合物は、大気中においても酸素による硬化阻害を生じないことから、ラジカル硬化系材料に比べて優れた表面硬化性を有する。しかし、重合の進行に伴い反応率が低下するため、内部の硬化性が不十分となり、十分な硬化物性が得られないという問題がある。また使用できる化合物の種類が少なく、得られる硬化物の物性を制御するが困難である。
【0004】
一方、グリシジル型エポキシ化合物は、前記脂環式エポキシ化合物に比べて種類は豊富だが、光カチオン硬化させた場合反応性が不十分である。そのため、安全性上問題があるSbFやAsF等の特殊な開始剤を用いる必要や、熱硬化を併用する必要がある。
【0005】
これに対し、ビニルエーテル化合物が高いカチオン重合性を有することが知られているが、単独重合で得られる硬化膜は前記エポキシやオキセタンに比べ硬化収縮が大きく、基材との接着性が低下するという問題がある。そこで、前記脂環式エポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用することにより、エポキシ化合物の重合性を高め、且つ接着性を保持しようとする試みが数多くなされている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3794576号明細書
【特許文献2】特開平6−298911号公報
【特許文献3】特開平9−328634号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】角岡正弘、他著「カチオン硬化技術の工業展開」MATERIAL STAGE、技術情報協会、2002年5月10日、第2巻、第2号、p.39−p.92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように単にエポキシ化合物にビニルエーテル化合物を併用した組成物では、ビニルエーテル化合物の混合により親水性が増すため、硬化雰囲気の湿度が高い場合に、硬化阻害を受けやすい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大気中の酸素及び湿度により阻害されない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)を有する感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のエポキシ化合物と特定のシラン化合物と、光カチオン重合開始剤と、を特定の割合で含む感光性組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)40質量%以上84.9質量%以下と、
分子中に、エポキシ基を1個以上と、加水分解性基とを有するシラン化合物(b)15質量%以上50質量%以下と、
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)0.1質量%以上10質量%以下と、
を含む感光性組成物。
〔2〕
分子中に、水酸基を1個以上と、ビニルエーテル基又はオキセタニル基のいずれかを1個以上と、を有する水酸基含有化合物(d)1質量%以上44質量%以下を、さらに含む上記〔1〕の感光性組成物。
〔3〕
3〜5個のフェノール性芳香環を含み、
前記フェノール性芳香環水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、又はシクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、
前記フェノール性芳香環のフェノール性水酸基の少なくとも1つのオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(e)0.1〜40質量%を、さらに含む上記〔1〕又は〔2〕の感光性組成物。
〔4〕
前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基が、脂環式エポキシ基である上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一つの感光性組成物。
〔5〕
多核フェノール化合物(e)が、下記式(1)で表される多核フェノール化合物(f)と、下記式(2)で表される多核フェノール化合物(g)と、を含み、かつ、
前記(f)成分及び前記(g)成分の合計に対する前記(f)成分の含有率(f/(f+g))が40質量%以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの感光性組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【化2】

(式中、R、R及びRは式(1)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。)
〔6〕
前記(e)成分が、下記式(3)で表される多核フェノール化合物(h)と、下記式(4)で表される多核フェノール化合物(i)と、を含み、かつ、
前記(h)成分及び前記(i)成分の合計に対する前記(h)成分の含有率(h/(h+i))が40質量%以上である上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一つの感光性組成物。
【化3】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
【化4】

(式中、nは0又は4以上の整数を表す。)
〔7〕
上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一つの感光性組成物に、少なくとも活性光線を照射することにより得られる硬化物。
〔8〕
上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一つの感光性組成物を含む感光性接着剤。
〔9〕
上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一つの感光性組成物を含む感光性コーティング材。
〔10〕
上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一つの感光性組成物及び着色剤を含む感光性インクジェットインク。
〔11〕
上記〔8〕の感光性接着剤、上記〔9〕の感光性コーティング材、又は上記〔10〕の感光性インクジェットに、少なくとも活性光線を照射することにより得られる硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性組成物は、大気中の酸素及び湿度により阻害されない優れた光硬化性(表面硬化性、内部硬化性)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
本実施形態の感光性組成物は、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)40質量%以上84.9質量%以下と、分子中にエポキシ基を1個以上と、加水分解性基と、を有するシラン化合物(b)15質量%以上50質量%以下と、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)0.1質量%以上10質量%以下と、を含むものである。
【0015】
本実施形態においては、優れた光硬化性を実現するために、分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)を用いる。このような化合物としては、上記要件を満足するものであれば特に制限はなく、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0016】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、光硬化性に優れるため、ビスフェノールA型エポキシ化合物が好ましい。
【0017】
脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。これらの中でも、光硬化性に優れるため、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0018】
2官能脂環式エポキシ化合物としては、市販品として、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」(商品名、ダイセル化学工業社製)、「UVR−6110」、「UVR−6105」、「UVR−6128」、「ERLX−4360」(商品名、ダウ・ケミカル日本社製)等を用いることができる。
【0019】
これらの中でも、光硬化性に優れるため、脂環式エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物(a)は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
シラン化合物(b)は、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上有し、かつ加水分解性基を有するシラン化合物である。加水分解性基とは、加水分解により水酸基が生じる基であればよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、エノキシ基、オキシム基、ヒドリド基等が挙げられる。これらの中でも、感光性組成物のポットライフに優れるため、アルコキシ基が好ましい。
【0021】
シラン化合物(b)としては、下記式(5)で表される加水分解基含有シラン、下記式(6)で表される加水分解基含有シラン等が挙げられる。

(R−RSiX4−b−c (5)

式中、Rは3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基、又はグリシドキシ基を表す。Rは炭素数1〜10の、アルカンジイル基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、又はアレーンジイル基を表す。Xは加水分解基を表す。Rは炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、又は、炭素数6〜12のアリール基を表す。aは0又は1の整数を表す。bは1〜3の整数を表す。cは0〜2の整数を表す。ただし、(b+c)<4である。
【0022】

(R−R)XSi−R−SiX(R−R) (6)

式中、R、R、X、及びaは式(5)と同じ定義であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を表す。
【0023】
は、3,4−エポキシシクロヘキシル基であることが好ましい。Rは、エチレン基であることが好ましい。Rは、メチル基であることが好ましい。Rは、フェニレン基であることが好ましい。
【0024】
シラン化合物(b)の具体例としては、3−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、光硬化性に優れるため、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0025】
シラン化合物(b)は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記したシラン化合物の加水分解縮合物も、同様に用いることができる。
【0026】
シラン化合物(b)は、光硬化反応において、まず加水分解基が加水分解してシラノール基を発生し、次にシラノール基同士が縮合することでカチオン重合する。さらに、シラン化合物(b)のエポキシ基は、エポキシ化合物(a)をはじめとするその他のカチオン重合性化合物とカチオン重合する。本発明者は、これらのシラン化合物を添加すると、相対湿度60%以上の高湿度下における硬化阻害を、特に低減できることを見出した。そのメカニズムは定かではないが、シラン化合物(b)の反応式から、次のように推測される。加水分解基が縮合し、シロキサン結合を形成する反応は、全体として水を消費する反応となっている。このため、本反応は湿度により加速され、高分子量のシロキサン結合鎖を形成するが、そのシロキサン結合鎖が、側鎖のエポキシ基を介して、硬化阻害により分子量の低下したエポキシ化合物(a)重合体の間を架橋する。これにより系全体の分子量を高めることになり、高湿度下でも優れた光硬化性を示す。例えば、加水分解基Xがアルコキシ基(−OR’)である場合の、加水分解反応、縮合反応、及び加水分解基縮合反応の全体としての反応式は下記のようになる。
加水分解反応:2Si−OR’+2HO→2Si−OH+2R’−OH
縮合反応:2Si−OH→Si−O−Si+H
全体としての反応式:2Si−OR’+HO→Si−O−Si+2R’−OH
【0027】
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)は、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物をいう。好ましいものとしては照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩が挙げられる。
【0028】
オニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられる。これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF、PF、SbF、[BX(ここで、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す。)等により構成されたオニウム塩である。
【0029】
具体的には、六フッ化リンのトリアリールスルフォニウム塩、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等が挙げられる。これらの中でも、ポットライフが良好で、かつ毒性が低いことから、六フッ化リンのトリアリールスルフォニウム塩が好ましい。
【0030】
オニウム塩の市販品として、「CD−1012」(商品名、SARTOMER社製)、「PCI−019」、「PCI−021」(商品名、日本化薬社製)、「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−170」(商品名、旭電化社製)、「UVI−6990」(商品名、ダウ・ケミカル社製)、「CPI−100P」、「CPI−100A」(商品名、サンアプロ社製)、「TEPBI−S」(商品名、日本触媒社製)、「RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074」(商品名、Rhodia社製)等を用いることができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)は、上述したもの1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本実施形態の感光性組成物は、水酸基1個以上と、ビニルエーテル基又はオキセタニル基のいずれか1個以上を有する水酸基含有化合物(d)を含むと、相対湿度30%以下での光硬化速度が向上するため、好ましい。水酸基含有化合物(d)は、1分子中に水酸基とカチオン重合性基(ビニルエーテル基又はオキセタニル基)を併せ持つ。
【0032】
水酸基含有化合物(d)を含むことにより、相対湿度30%以下での光硬化速度が速くなる理由は定かではないが、おそらく、水酸基含有化合物(d)の水酸基が、シラン化合物(b)の加水分解基と直接縮合する他に、感光性組成物の親水性を高め、吸湿することで、シラン化合物(b)の加水分解基の縮合を促進するためであると考えられる。加えて、ビニルエーテル基又はオキセタニル基は、エポキシ化合物(a)等のカチオン重合性基と重合し、水酸基は、シラン化合物(b)の加水分解基や、カチオン重合性基と反応することで、高い光硬化速度を達成していると考えられる。
【0033】
水酸基含有化合物(d)として用いられる、水酸基を有するビニルエーテル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、相対湿度30%以下での光硬化速度が速くなる観点から、ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0034】
水酸基含有化合物(d)として用いられる、水酸基を有するオキセタン化合物としては、下記式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0035】
【化5】

式中、Rは炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、又は、炭素数6〜12のアリール基を表す。Rは炭素数1〜10の、アルカンジイル基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、又はアレーンジイル基を表す。Rは、炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。Rは、メチレン基が好ましい。
【0036】
これらの水酸基含有化合物(d)は、1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本実施形態の感光性組成物は、3〜5個のフェノール性芳香環を含み、このフェノール性芳香環の水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、シクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、前記フェノール性芳香環の水酸基の少なくとも1個のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(e)を、さらに含むことが好ましい。多核フェノール化合物(e)は、複数のフェノール性芳香環を含むものである。ここでいう、フェノール性芳香環とは、フェノール性水酸基を有する芳香環のことである。本実施形態において、フェノール性水酸基は、光架橋反応で重要な役割を果たすものであり、このようなフェノール性水酸基を有する多核フェノール化合物を用いることにより、より優れた光硬化性を感光性組成物に付与できる。
【0038】
多核フェノール化合物(e)は、その全ての水酸基のいずれのオルト位にもメチロール基を有さない。すなわち、一般にレゾール樹脂と呼ばれる、分子中にメチロール基を有するものは、多核フェノール化合物(e)には含まれない。メチロール基はエポキシ基との反応性は有するが、反応の結果形成された結合は酸性条件下で不安定であり、硬化後に得られる膜硬度が経時で低下する問題がある。
【0039】
多核フェノール化合物(e)は、オルト位に炭素数4以上のアルキル基またはシクロアルキル基を有しない。すなわち、特に嵩高いt−ブチル基等を有するヒンダードフェノール等のような、一般にラジカル禁止剤や酸化防止剤と呼ばれるフェノール化合物は、多核フェノール化合物(e)には含まれない。多核フェノール化合物(e)は、そのフェノール性水酸基が直接光硬化反応に関与するため、反応の阻害因子となる嵩高い置換基がフェノール性水酸基のオルト位に置換したものは好ましくないからである。
【0040】
多核フェノール化合物(e)は、フェノール性芳香環が3〜5個からなり、且つ、その分子中に、その水酸基の少なくとも一方のオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、少なくとも2つ以上有する。1〜2個のフェノール性芳香環では、光硬化反応において、効率的に架橋構造を形成することができず、また6個以上の場合、架橋反応に関与しないフェノール性水酸基が発生し硬化性及び硬化膜物性に悪影響を及ぼす。
【0041】
このような多核フェノール化合物としては、例えば下記式(8)〜(12)で表される種々の多核フェノール化合物、さらに、下記式(1)、(3)で表される種々の多核フェノール化合物、及び低分子量の鎖状ポリブタジエンとフェノールとのFriedel−Crafts反応付加物である3〜5個のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物等が挙げられる。ここで、低分子量とは、重量平均分子量で1000以下のものをいう。重量平均分子量は、移動相としてテトラヒドロフランを用い、標準物質としてポリスチレンを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0042】
【化6】

式中、R10、R11及びR12は炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、また各々のベンゼン環におけるp個のR10、R11及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい。p10、p11及びp12は0〜4の整数を表し、互いに同一でも異なってもよく、q10、q11及びq12は1〜3の整数を表し、互いに同一でも異なってもよい。対応するpとqにおいて、p+q≦5である。ただし、R10、R11及びR12のいずれかの炭素数が4又は5の場合、当該R10、R11及びR12はベンゼン環上の水酸基に対しオルト位に位置することはない。
【0043】
【化7】

式中、R13、R14及びR15は式(8)のR10、R11及びR12と同じ定義であり、p13、p14及びp15は式(8)のp10、p11及びp12と同じ定義であり、q13、q14及びq15は式(8)のq10、q11及びq12と同じ定義である。
【0044】
【化8】

式中、R13、R14及びR15は式(8)のR10、R11及びR12と同じ定義であり、p13、p14及びp15は式(8)のp10、p11及びp12と同じ定義であり、q13、q14及びq15は式(8)のq10、q11及びq12と同じ定義である。
【0045】
【化9】

式中、R16、R17、R18及びR19は炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく、また各々のベンゼン環におけるp個のR16、R17、R18及びR19は互いに同一でも異なっていてもよい。p16及びp17は0〜4の整数を表し、互いに同一でも異なってもよく、q16及びq17は1〜3の整数を表し、互いに同一でも異なってもよい。ただし、対応するpとqにおいて、p+q≦5である。
【0046】
【化10】

式中、R20は下記式(13)、(14)又は(15)で表される基を表し、R21、R22、R23及びR24は式(8)のR10、R11及びR12と同じ定義であり、p21、p22、p23及びp24は式(8)のp10、p11及びp12と同じ定義である。
【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

式中、R、R及びRは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0051】
【化15】

式中、nは1〜3の整数を表す。
【0052】
これらの中でも、前記式(1)で表される多核フェノール化合物(f)と、前記式(3)で表される付加化合物に相当する多核フェノール化合物(h)が好ましい。
【0053】
多核フェノール化合物(f)は、エポキシ化合物(a)や、シラン化合物(b)や、水酸基含有化合物(d)との相溶性及び反応性に優れるため好ましい。多核フェノール化合物(h)は、吸湿性が低く耐水性に優れた硬化物が得られるため好ましい。
【0054】
多核フェノール化合物(f)において、mは1〜3の整数であるのが好ましく、より好ましくは1である。また、mが1〜3の整数である場合、R、R及びRは、ベンゼン環の水酸基に対しパラ位に結合したものが好ましい。ここで、R、R及びRは、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が好ましい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、炭素数6のシクロヘキシル基が好ましい。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α’ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0055】
多核フェノール化合物(f)及び(g)は、例えば、Rで表される置換基を有するフェノール(R置換フェノール)又はフェノールをアルデヒド類と縮合反応させることにより、n(式(1)のn、式(2)のn)が0以上の整数で表される縮合体として得ることができる。ここで、上記Rは、上記したR〜Rのいずれかで表される置換基である。R置換フェノールは、1置換に限定されず、2以上の置換基を有するものであってもよい。
【0056】
上記縮合反応は、公知の方法によって行うことができる。例えば、塩酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン等のアルデヒド類と、上記R置換フェノール又はフェノールを、0〜150℃で数時間から数十時間反応させる方法が挙げられる。このときの反応条件にもよるが、R置換フェノール又はフェノールと、アルデヒド類の混合割合を制御することにより、副生成物として生成する下記式(2)で表される種々の多核フェノール化合物(g)の量を制御できる。
【0057】
【化16】

式中、R、R及びRは式(1)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。
【0058】
例えば、R置換フェノールがアルデヒド類より多すぎると、フェノール2核体の含有量が増加し、逆にR置換フェノールがアルデヒド類より少なすぎると、6個以上のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物(f)の含有量が増加する。得られた縮合体中の、多核フェノール化合物(f)の含有量が少なすぎる場合、蒸留又は再沈等の方法により未反応原料及び多核フェノール化合物(g)を除去できる。
【0059】
本実施形態においては、多核フェノール化合物(f)及び(g)の合計に対する多核フェノール化合物(f)の含有率(f/(f+g))は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0060】
多核フェノール化合物(f)の上記含有率(f/(f+g))が40質量%以上であることが好ましい理由を、多核フェノール化合物(f)の構造に基づき説明する。式(2)においてnが0の場合、感光性組成物の反応性の低下を抑制できるため、多核フェノール化合物(f)の含有率(f/(f+g))が40質量%以上であることが好ましい。式(2)においてnが4以上の場合、光硬化反応終了後における、未反応のフェノール性水酸基の残存を低減し、硬化物の耐水性を向上できることや、光の照射による黄変を抑制できることから、多核フェノール化合物(f)の含有率(f/(f+g))が40質量%以上であることが好ましい。
【0061】
多核フェノール(f)の市販品の中で、好ましいものとしては、例えば、新規分子量分布集約型ノボラック樹脂「PAPS」(商品名、旭有機材工業社製)が挙げられる。
【0062】
多核フェノール化合物(f)の合成に用いられるR置換フェノールの具体例としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、m−sec−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−(α−メチルベンジル)フェノール、m−(α−メチルベンジル)フェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−クロロフェノール、m−クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0063】
一方、多核フェノール化合物(h)及び(i)は、ジシクロペンタジエンとフェノールをBF等の酸触媒の存在下でFriedel−Crafts反応を行うことにより得ることができる。この場合、使用するジシクロペンタジエンとフェノールの量比を決定することにより、副生成物として生成する下記式(4)で表される種々の多核フェノール化合物(i)の生成量を制御することができる。
【0064】
【化17】

式中、nは0又は4以上の整数を表す。
【0065】
本実施形態においては、多核フェノール化合物(h)及び(i)の合計に対する多核フェノール化合物(h)の含有率(h/(h+i))は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0066】
多核フェノール化合物(h)の含有率(h/(h+i))が40質量%以上であることが好ましい理由を、多核フェノール化合物(h)の構造に基づき説明する。式(4)においてnが0の場合、感光性組成物の反応性の低下を抑制できるため、多核フェノール化合物(h)の含有率(h/(h+i))が40質量%以上であることが好ましい。式(4)においてnが4以上の場合、光硬化反応終了後における、未反応のフェノール性水酸基の残存を低減し、硬化物の耐水性を向上できることや、光の照射による黄変を抑制できることから、多核フェノール化合物(h)の含有率(h/(h+i))が40質量%以上であることが好ましい。
【0067】
市販されている多核体フェノール化合物(h)として好ましいものとしては、例えば、日石特殊フェノール樹脂「DPP」シリーズ(新日本石油化学社製)のうち「DPP−6125」等が挙げられる。
【0068】
多核フェノール化合物(e)としては、前記した種々の多核フェノール化合物の1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
本実施形態の感光性組成物は、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)以外に、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を発生させる、他の重合開始剤を併用することもできる。このような他の重合開始剤としては、例えば、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0070】
本実施形態の感光性組成物には、水酸基含有化合物(d)以外に、水酸基を含有しない多官能のビニルエーテル又はオキセタンを併用することもできる。
【0071】
ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0072】
オキセタンとしては、例えば、1,4−ビス([(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0073】
本実施形態の感光性組成物の硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度で、他のカチオン重合性化合物を添加してもよい。他のカチオン重合性化合物としては、例えば、前記以外の低分子量のエポキシ化合物を希釈剤として用いることができ、また、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等が挙げられる。さらに、通常用いられる、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールといったジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等を用いることもできる。
【0074】
本実施形態の感光性組成物には、エネルギー線に対する硬化性を促進する(感度の向上)目的で、(メタ)アクリレートモノマー類、オリゴマー類及びビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物や、光ラジカル開始剤等を、必要に応じて添加してもよい。これらの中でも、1分子中にビニル基とアクリレート基を有するビニル(メタ)アクリレート化合物は、低粘度であり、かつカチオン重合性であることから、高い感度を維持しながら低粘度化が可能であるため、インクジェット用途に用いる場合に特に有効な希釈剤である。この他にも、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
【0075】
感光性組成物の透湿性を特に低下させる目的で、微粒子無機フィラーを添加することが好ましい。微粒子無機フィラーとしては、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーであり、具体的にはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、雲母等が挙げられる。
【0076】
微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの及び表面処理したもの共に使用できる。表面処理した微粒子無機フィラーとしては、例えば、メトキシ化、トリメチルシリル化、オクチルシリル化、又はシリコーンオイルで表面処理したものが挙げられる。これら1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
次に、本実施形態において用いられる感光性組成物中の各成分の組成割合について説明する。なお、以下に示される「部」は、特に断りがない限り、全て「質量部」である。
【0078】
感光性組成物におけるエポキシ化合物(a)の含有量は、40質量%以上84.9質量%以下であり、好ましくは50質量%以上80質量%以下である。上記含有量とすることで、速い光硬化速度を達成することができる。
【0079】
感光性組成物中におけるシラン化合物(b)の含有量は、15質量%以上50質量%以下であり、15質量%以上40質量%以下であることが好ましい。上記含有量とすることで、相対湿度60%以上での速い光硬化速度を達成することができる。
【0080】
感光性組成物におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。10質量%を超える場合、高価な開始剤を過剰に使用することになることから経済的に好ましくないだけでなく、光線透過率が低下し膜底部の硬化が不足するため好ましくない。0.1質量%未満の場合、エネルギー線照射により発生する活性カチオン物質の量が不足し、十分な硬化性が得られなくなる。
【0081】
感光性組成物における水酸基含有化合物(d)の含有量は、1質量%以上44質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。上記数値範囲とすることで、本実施形態の感光性組成物の相対湿度30%以下でも速い光硬化速度を達成できる。
【0082】
感光性組成物における多核フェノール化合物(e)の含有量は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.5以上20質量%以下であることがより好ましい。上記数値範囲とすることで、本実施形態の感光性組成物の光硬化速度を向上できる。
【0083】
必要に応じて用いられる前記微粒子無機フィラーの含有量は、感光性組成物において0.1質量%以上44質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下である。
【0084】
本実施形態の感光性組成物を基材等に塗布して薄膜とし、この薄膜にエネルギー線照射や加熱を行うことで、短時間で硬化させることができる。感光性組成物の硬化は、エネルギー線照射により行うことができるが、エネルギー線照射と加熱を併用してもよい。本実施形態の感光性組成物は、溶剤等を含まなくても十分に実用できるが、粘度調整のために溶剤等を用いて希釈してもよいし、多孔質微粒子等を含んだゾルの形態としてもよい。溶剤等を用いて希釈した場合、及び多孔質微粒子等を含んだゾルの形態で用いた場合には、事前に溶剤成分を揮散させるために、50〜150℃で数分程度の加熱を光照射前に行ってもよい。また、露光後にも同様にして加熱することで硬化をさらに促進させることもできる。またさらに、本実施形態の感光性組成物は光照射により硬化するため、感光性接着剤として用いることができる。本実施形態の感光性組成物を含む感光性接着剤は、上記した形態等にして用いることができ、湿度による硬化阻害がなく優れた接着性を発揮できる。
【0085】
本実施形態の感光性組成物は、その優れた硬化性及び種々の基材に対する優れた接着性を有することから、感光性接着剤として有用である。特にエネルギー線照射による重合転化率が高いことから生産性に優れ、さらに、耐湿性にも優れる。このため、良好な接着性のみならず高い信頼性が要求される、液晶ディスプレイ、有機EL(OLED)ディスプレイ、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用シール剤として好適である。中でもOLEDディスプレイ用シール剤には、高い耐透湿性が求められることから、本実施形態のシール剤を好適に用いることができる。本実施形態の感光性組成物は、空気中において薄膜を高速に硬化することができることから、非加熱で高速に硬化することが要求される樹脂フィルム、基板等へのコーティング材としても好適に使用される。
【0086】
さらに、本実施形態の感光性組成物を含む感光性コーティング材とすることができる。本実施形態の感光性組成物は、空気中において薄膜を高速に硬化することが出来ることから、非加熱で高速に硬化することが要求される樹脂フィルム、基板等へのコーティング材としても好適に使用される。このような例としては、FPD等に用いられる反射防止膜形成用コーティング材が挙げられる。基材上に感光性組成物を塗布して硬化させた後、1.4以下の屈折率を持った被膜を形成させるために、本実施形態の感光性組成物に空隙を有した多孔質微粒子を含有させることにより得られる。
【0087】
このような多孔質微粒子としては、平均粒径が5nm〜1μmであるシリカ粒子が挙げられ、樹脂の透明性の観点から、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ粒子が好ましい。具体的な市販品としては、親水性又は表面を疎水化処理したフュームドシリカである「アエロジル」(商品名、日本アエロジル社製)や、シリカ粒子が直鎖状に連結したパールネックレス状シルカゾルである「スノーテックスPS」(商品名、日産化学社製)等が挙げられる。これらの多孔質微粒子は、感光性組成物100質量部に対し、多孔質微粒子の合計が10〜70質量部の範囲で添加して用いることが好ましく、ホモジナイザー等を用いて感光性組成物内に均一に分散させることが好ましい。
【0088】
このようにして得られる感光性コーティング材を、透明な基材(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂基材や、ガラス等の無機材料基材)の表面上に、反射防止膜や傷防止膜等として厚さ10nm〜1μmの範囲で形成させることができる。基材への塗布は、比較的薄膜を高い精度で形成する必要があることから、マイクログラビア法、ロールコート法、フローコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、スプレーコート法等が用いられる。
【0089】
さらに、本実施形態の感光性組成物に着色剤を添加することにより、感光性のインクジェットインクとすることができる。本実施形態の感光性組成物は、比較的低粘度化が容易であるという特徴も有しており、優れた光硬化性とあいまって、適当な着色剤と混合することにより感光性のインクジェットインクとしても好適に用いることが可能である。
【0090】
本実施形態において用いられる着色剤としては、有機顔料及び/又は無機顔料が挙げられる。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒及びカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー及びパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン及びパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料、その他各種蛍光顔料、金属紛顔料、体質顔料等が挙げられる。本実施形態の感光性組成物中における、上記顔料の含有量の合計は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0091】
上記顔料には必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩が挙げられる。
【0092】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離機やフィルターを用いてもよい。
【0093】
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性等を考慮して選択するが、光沢向上、質感向上の観点からも粒径は適宜選択することが好ましい。
【0094】
以上述べたように、本実施形態の感光性組成物はその特徴を生かし、上記の用途をはじめとして、塗料、接着剤、インキ、フィルムコーティング材、より具体的には、インクジェット用UVインク;液晶や有機EL等のディスプレイパネル用シール材;光ディスクの貼り合わせ用接着剤等の光学部品の接着剤;CD、DVD、さらには次世代光ディスクであるブルーレイディスク(Blu−ray(登録商標) Disc)の表面保護層形成材;反射防止膜形成用コーティング材;ハードコーティング材等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
本発明を実施例に基づいて説明する。特に断りがない限り、実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0096】
<タックフリー露光量の測定>
ガラス基板上に、ワイヤーバーを使用して、感光性組成物を膜厚12μmに塗布した。そして、高圧水銀灯「H015−L312」(センエンジニアリング株式会社製)を光源に使用した紫外線照射装置「MSA−0151−B3」(センエンジニアリング株式会社製)を使用して、所定量の紫外線を照射して、感光性組成物を硬化させた。その後、硬化体を触指観察し、表面が硬化しベタツキがなくなるのに必要な最小露光量を、受光器「UVD−S365」(ウシオ電機株式会社製)を用いた紫外線積算光量計「UIT−250」(ウシオ電機株式会社製)により測定した。硬化時の温度・湿度は、デジタル温湿度計「WF−301」(カスタム社製)により測定した。
【0097】
[実施例1]
分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート「セロキサイド2021P」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)57.9部、分子中にエポキシ基を1個以上と、加水分解性基と、を有するシラン化合物(b)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン「LS−3990」(商品名、信越シリコーン社製)16部、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)として、スルホニウム塩の含有量が50質量%の「CPI−100P」(商品名、サンアプロ社製)3.8部を十分混合することにより感光性組成物を得た。この感光性組成物の、温度20℃、相対湿度20%におけるタックフリー露光量を測定したところ、150mJ・cm−2であった。
【0098】
[実施例2]
実施例1で得られた感光性組成物について、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は100mJ・cm−2であった。
【0099】
[実施例3]
実施例1において、水酸基含有化合物(d)として、ヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学株式会社製)19部をさらに用いて、感光性組成物を調製した以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は100mJ・cm−2であった。
【0100】
[実施例4]
実施例3で得られた感光性組成物について、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、実施例1と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は100mJ・cm−2であった。
【0101】
[実施例5]
実施例3において、多核フェノール化合物(e)として、フェノール3〜5核体の含有率が50質量%のp−tert−ブチル−フェノールノボラック樹脂「PAPS−PTBPN」(商品名、旭有機材工業社製)3.3部をさらに用いて、感光性組成物を調製した以外は、実施例3と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
【0102】
[実施例6]
実施例5で得られた感光性組成物について、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、実施例3と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
【0103】
[実施例7]
実施例5で得られた感光性組成物について、分子中にエポキシ基を少なくとも1個以上と、加水分解性基を有するシラン化合物(b)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「LS−2940」(商品名、信越シリコーン社製)16部を用いた以外は、実施例5と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は200mJ・cm−2であった。
【0104】
[実施例8]
実施例7で得られた感光性組成物について、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、実施例7と同様に測定を行った。その結果、タックフリー露光量は200mJ・cm−2であった。
【0105】
[実施例9]
実施例3において、さらに多核フェノール化合物(e)として、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂である「DPP−6125」(商品名、新日本石油化学社製)9部を用いて、感光性組成物を調製した以外は、実施例3と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
[実施例10]
実施例9で得られた感光性組成物について、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、実施例9と同様に測定を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
【0106】
[比較例1]
実施例1において、シラン化合物(b)を用いずに感光性組成物の調製を行った以外は実施例1と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は150mJ・cm−2であった。
【0107】
[比較例2]
比較例1において、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、比較例1と同様に試験を行った。その結果、紫外線を200mJ・cm−2照射しても表面のベタツキはなくならず、タックフリー露光量を測定できなかった。
【0108】
[比較例3]
実施例3において、シラン化合物(b)を用いずに感光性組成物の調製を行った以外は実施例3と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は100mJ・cm−2であった。
【0109】
[比較例4]
比較例3において、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、比較例3と同様に試験を行った。その結果、紫外線を200mJ・cm−2照射しても表面のベタツキはなくならず、タックフリー露光量を測定できなかった。
【0110】
[比較例5]
実施例5において、加水分解性基を含有するシラン化合物(b)を用いずに感光性組成物の調製を行った以外は実施例1と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
【0111】
[比較例6]
比較例5において、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、比較例5と同様に試験を行った。その結果、紫外線を200mJ・cm−2照射しても表面のベタツキはなくならず、タックフリー露光量を測定できなかった。
【0112】
[比較例7]
実施例7において、加水分解性基を含有するシラン化合物(b)を用いずに感光性組成物の調製を行った以外は実施例7と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は200mJ・cm−2であった。
【0113】
[比較例8]
比較例7において、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、比較例5と同様に試験を行った。その結果、紫外線を200mJ・cm−2照射しても表面のベタツキはなくならず、タックフリー露光量を測定できなかった。
【0114】
[比較例9]
実施例9において、加水分解性基を含有するシラン化合物(b)を用いずに感光性組成物の調製を行った以外は実施例9と同様に試験を行った。その結果、タックフリー露光量は30mJ・cm−2であった。
【0115】
[比較例10]
比較例9において、硬化時の相対湿度70%でタックフリー露光量を測定した以外は、比較例9と同様に試験を行った。その結果、紫外線を200mJ・cm−2照射しても表面のベタツキはなくならず、タックフリー露光量を測定できなかった。
【0116】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の感光性組成物は、硬化性、硬化物の種々の基材に対する接着性、硬化耐水性、及び柔軟性に優れることから、感光性のコーティング材、インクジェットインク、接着剤、とりわけ有機EL等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用シール剤等の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(a)40質量%以上84.9質量%以下と、
分子中に、エポキシ基を1個以上と、加水分解性基とを有するシラン化合物(b)15質量%以上50質量%以下と、
エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(c)0.1質量%以上10質量%以下と、
を含む感光性組成物。
【請求項2】
分子中に、水酸基を1個以上と、ビニルエーテル基又はオキセタニル基のいずれかを1個以上と、を有する水酸基含有化合物(d)1質量%以上44質量%以下を、さらに含む請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
3〜5個のフェノール性芳香環を含み、
前記フェノール性芳香環水酸基のオルト位の全てが、メチロール基、炭素数4以上のアルキル基、又はシクロアルキル基のいずれにも置換されておらず、かつ、
前記フェノール性芳香環のフェノール性水酸基の少なくとも1つのオルト位が無置換であるフェノール性芳香環を、2個以上有する、多核フェノール化合物(e)0.1〜40質量%を、さらに含む請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基が、脂環式エポキシ基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
多核フェノール化合物(e)が、下記式(1)で表される多核フェノール化合物(f)と、下記式(2)で表される多核フェノール化合物(g)と、を含み、かつ、
前記(f)成分及び前記(g)成分の合計に対する前記(f)成分の含有率(f/(f+g))が40質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基又はアラルキル基を表し、R、R及びRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。)
【化2】

(式中、R、R及びRは式(1)の定義と同じであり、mは0〜3の整数を表し、nは0又は4以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記(e)成分が、下記式(3)で表される多核フェノール化合物(h)と、下記式(4)で表される多核フェノール化合物(i)と、を含み、かつ、
前記(h)成分及び前記(i)成分の合計に対する前記(h)成分の含有率(h/(h+i))が40質量%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【化3】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
【化4】

(式中、nは0又は4以上の整数を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性組成物に、少なくとも活性光線を照射することにより得られる硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性組成物を含む感光性接着剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性組成物を含む感光性コーティング材。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性組成物及び着色剤を含む感光性インクジェットインク。
【請求項11】
請求項8に記載の感光性接着剤、請求項9に記載の感光性コーティング材、又は請求項10に記載の感光性インクジェットに、少なくとも活性光線を照射することにより得られる硬化物。

【公開番号】特開2011−37973(P2011−37973A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185705(P2009−185705)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】