説明

感光性組成物及び感光性平版印刷版材料

【課題】ポットライフに優れる水性分散液である感光性組成物及びこの感光性組成物を利用した水現像可能で高感度な感光性平版印刷版材料を与えること。
【解決手段】少なくとも、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物とスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを含有する水性分散液である感光性組成物であって、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物の少なくとも一方が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の存在下で、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散して得た水中乳化物であることを特徴とする感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性分散液である感光性組成物と、これを利用した水で現像可能な感光性平版印刷版材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合を利用した感光性組成物として種々の応用分野があるが、例えばフォトレジストや平版印刷版等の用途では、有機溶剤や強アルカリ性試薬を用いる現像処理から、近年では水等による現像処理が可能であるシステムの開発が行われ、現像に関わる薬品や機器の取扱いが容易で、環境保全の観点からも極めて好ましい動向である。特に平版印刷版関係においては、近年、コンピューター上で作製したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版材料の開発が盛んに行われている。CTP方式の普及と共にクローズアップされてきた重要な問題点あるいは要望として、現像処理に関わる諸点が挙げられる。通常方式のCTP方式では、感光性平版印刷版材料をレーザー露光した後、アルカリ性現像液により非画像部を溶出し、水洗及びガム引き工程を経て印刷に供される。アルカリ性現像液は人体に有害であり、その取扱い及び保管には十分な注意と管理が必要とされる。さらにその購入コスト及び廃液処理に関わるコストはユーザーに多大の負担を強いるものであり、加えてアルカリ性現像液の液性としてpH、温度等の管理を細心の注意を以て管理しなければならず、極めて取扱いが煩雑であった。
【0003】
このようなアルカリ性現像液を用いることを回避し、水で現像可能な感光性組成物の提案がされている。例えば特開平5−27437号公報(特許文献1)には、カルボキシル基含有樹脂、アミン化合物、光硬化性不飽和化合物、光重合開始剤及び水を含む水系感光性組成物が開示されている。このような系では、感光性組成物の水溶液もしくは水性分散液を塗布液として用い、支持体上に皮膜を形成させて乾燥皮膜の状態で用いるが、長期間にわたる保存に適さず、経時により現像性が低下する、あるいは使用する光重合開始剤が経時により分解することで感度が低下もしくは消失する等の問題が生じた。
【0004】
さらに、特開2003−215801号公報(特許文献2)や特開2008−265297号公報(特許文献3)等には側鎖に重合性二重結合基を有するカチオン性あるいはアニオン性の水溶性ポリマーをバインダーポリマーとして用いる、水で現像可能な感光性組成物及びこれを利用する感光性平版印刷版材料が開示されている。しかし、これらの系では、製造過程における塗布液の状態での安定性が低く、塗布液状態での感度維持可能時間(ポットライフ)は短いものであった。すなわち、塗布液状態において、熱重合もしくは光重合反応が開始し、光重合開始剤及びモノマーが反応によって消費されることで、塗布乾燥後の感光性材料の感度が低下する等の問題が生じた。
【0005】
さらに、ポットライフの長い感光性組成物として特開平5−331240号公報(特許文献4)にはトリアジン誘導体を含有する系が、特開平9−6881号公報(特許文献5)には特定の感光性樹脂を用いた系が開示されている。しかし、これらの系では、十分に高い感度を得ることが困難であった。また、ハイドロキノン等の酸化防止剤の添加によりポットライフが向上することは良く知られているが、この方法では酸化防止剤により重合停止反応を誘発することで、高感度な感光性組成物を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−27437号公報
【特許文献2】特開2003−215801号公報
【特許文献3】特開2008−265297号公報
【特許文献4】特開平5−331240号公報
【特許文献5】特開平9−6881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポットライフに優れる水性分散液である感光性組成物及びこの感光性組成物を利用した水現像可能で高感度な感光性平版印刷版材料を与えること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物とスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを含有する水性分散液である感光性組成物であって、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物の少なくとも一方が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の存在下で、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散して得た水中乳化物であることを特徴とする感光性組成物、及び、支持体上に、この感光性組成物を含有する塗布液を塗布して設けた光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料によって本発明の課題は本質的には解決される。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式1中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される原子を含んで構成される連結基を表し、Rはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドより選択される繰り返し単位から構成される置換基を表す。
【発明の効果】
【0011】
ポットライフに優れる水性分散液である感光性組成物及びこの感光性組成物を利用した水現像可能で高感度な感光性平版印刷版材料が与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(以下本発明の化合物とも称す)は、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散する際に、分散助剤として作用する。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式1中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される原子を含んで構成される連結基を表し、Rはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドより選択される繰り返し単位から構成される置換基を表す。
【0015】
一般式1におけるLで表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される原子を含んで構成され、その総原子数が1〜50程度であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜10である。
【0016】
一般式1のLで表される連結基は、具体的には、酸素原子、アルキレン基、アリーレン基、脂肪族環等が挙げられ、これらの基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していても良く、またそれぞれの基がさらに置換基を有してもよい。アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、脂肪族環としては、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造が挙げられ、環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。
【0017】
一般式1のLで表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0018】
一般式1のRはエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドより選択される繰り返し単位が2以上の連結された置換基を表す。エチレンオキサイドのみを繰り返した構造もしくはプロピレンオキサイドのみを繰り返した構造であっても良く、両方の繰り返し単位を含んだ構造であっても良い。また、この繰り返し構造の末端は水素原子の他にアルキル基、アリール基等の置換基によって置換されてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基の他にイソプロピル基、イソブチル基等の分岐アルキル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0019】
一般式1のRで表されるエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドより選択される2以上の繰り返し単位から構成される構造の繰り返し単位数は、5〜80であることが好ましく、10〜50であることが特に好ましい。また、エチレンオキサイドの占める割合がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの繰り返し単位数の総和の60%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0020】
一方、本発明の化合物は、高分子主鎖における一般式1以外の繰り返し単位として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩類、メタクリル酸塩類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類等の重合性化合物から誘導される構造を有していても良い。
【0021】
アクリル酸塩類、メタクリル酸塩類の例として、アクリル酸もしくはメタクリル酸の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等で中和されたアルカリ金属塩や、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、あるいは4級アンモニウム塩基としてテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド等により中和された塩が挙げられる。
【0022】
アクリル酸エステル類の例として、ベンジルアクリレート、4−ビフェニルアクリレート、ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、4−t−ブチルフェニルアクリレート、4−クロロフェニルアクリレート、ペンタクロロフェニルアクリレート、4−シアノベンジルアクリレート、シアノメチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソプロピルアクリレート、メチルアクリレート、3,5−ジメチルアダマンチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、オクチルアクリレート、フェネチルアクリレート、フェニルアクリレート、プロピルアクリレート、トリルアクリレート、アミルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパギルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
メタクリル酸エステル類の例として、ベンジルメタクリレート、4−ビフェニルメタクリレート、ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、4−t−ブチルフェニルメタクリレート、4−クロロフェニルメタクリレート、ペンタクロロフェニルメタクリレート、4−シアノフェニルメタクリレート、シアノメチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、メチルメタクリレート、3,5−ジメチルアダマンチルメタクリレート、2−ナフチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、フェネチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、プロピルメタクリレート、トリルメタクリレート、アミルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパギルメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
スチレン類としてはスチレンの他、アルキルスチレンの例として、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等が挙げられ、アルコキシスチレンの例としてメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等が挙げられ、ハロゲンスチレンの例として、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
アクリルアミド類の例としてアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ナフチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−アリルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、2−ヒドロキシフェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシルアクリルアミド、N,N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
メタクリルアミド類の例としてメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、モルホリルメタクリルアミド、ピペリジルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ナフチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−アリルメタクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、2−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシルメタクリルアミド、N,N−フェニルメタクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド類が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩類、メタクリル酸塩類、アクリル酸塩類、メタクリル酸塩類、アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)、アクリルアミド類、スチレン、アルキルスチレン等が好ましく用いられる。
【0028】
これらの一般式1以外の構造は、主鎖を形成する繰り返し単位のモル組成比率において50%以下が好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0029】
これらの本発明の化合物の具体例を下に示すが、本発明の化合物はこれらの例に限られるものではない。下記の図中、主鎖を形成する括弧外の数字は繰り返し単位のモル組成比率を表す。また、一般式1のRに該当する部分の括弧外の数字はエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドの連結数を表す。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散した水中乳化物について説明を行う。光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物は一般に水不溶性の化合物であることが知られており、本発明では、水に不溶性の任意の化合物が基本的には使用することができる。具体的な水に不溶性の化合物の例については後ほど詳しく説明を行う。なお、本発明において水不溶性とは、25℃の水に対する溶解度(水100gに対して溶解する量(g))が0.1未満であることを意味する。本発明においては、光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物の少なくとも一方は、本発明の化合物の存在下で水中において乳化分散されていることが必要である。光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物の両方が、本発明の化合物の存在下で水中において乳化分散されていることが好ましい。本発明の化合物は、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を安定でかつ均一に乳化分散するために効果的なだけでなく、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物を共に含有する水性分散液である感光性組成物の、液状態での感度維持可能時間(ポットライフ)の長寿命化に寄与する。光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物の分散性をさらに向上させるために、乳化分散時にアニオン性界面活性剤を好ましく添加することができる。
【0034】
光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散するには、それぞれの化合物を溶解もしくは分散可能な有機溶剤を使用して溶液を作製し水と混合した上で、本発明の化合物の存在下に乳化分散させる方法が好ましい。ただし、重合性二重結合基を有する化合物が液体であり、光重合開始剤がこれに溶解して両者の混合物が液状である場合には、敢えて有機溶剤を使用せずとも両者の混合物を水中に乳化分散させることも可能である。光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する化合物を予め混合して、両者が混合した水中乳化物を作製することも可能であるが、各々別々に水中乳化物を作製することが好ましい。光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物を別々に作製し、それらを混合して感光性組成物を作製することで、乳化安定性の向上及びポットライフの長寿命化をさらに図ることができる。乳化分散を行う方法については、高速攪拌、振盪、その他高剪断応力下に光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を含む油状物質を微粒子状に水中分散させる方法が好ましく、このために用いる装置としてはホモミキサーやホモジナイザー等の市販される装置が好ましく利用できる。
【0035】
上記で使用できる有機溶剤としては、常温で液体であり、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を溶解もしくは分散可能である有機溶剤を意味する。本発明で用いることのできる有機溶剤の例として、揮発性有機溶剤と不揮発性有機溶剤が挙げられる。揮発性有機溶剤を用いた場合には、作製した水中乳化物から揮発性有機溶剤を加熱もしくは放置すること等で系中から取り除くことが好ましい。不揮発性有機溶剤を用いる場合には、不揮発性有機溶剤が50℃より高い引火点を示し、通常の取扱いにおいて危険物としての対策が軽減できる場合が好ましい。
【0036】
上記の揮発性有機溶剤として、本発明で好ましく使用できる溶剤の例を挙げると、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の低級アルカノールの酢酸エステル類、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール系酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられるが、これらの内で酢酸エチルが後述する種々の理由から、最も好ましく使用することができる。
【0037】
本発明で用いることのできる不揮発性有機溶剤として、リン酸エステル、フタル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン、塩素化パラフィン、アルコール系溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、モノオレフィン系溶剤、エポキシ系溶剤等が挙げられる。具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウレート、フタル酸ジシクロヘキシル、オレフィン酸ブチル、ジエチレングリコールベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1′−ジトリルエタン、モノイソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、2,4−ジターシャリアミルフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエチレングリコール等の高沸点溶剤が挙げられる。
【0038】
上記の例示化合物のような不揮発性有機溶剤は50℃より高い引火点を示し、通常の取扱いにおいて危険物としての対策が軽減できるため、本発明の光重合開始剤の水中乳化物あるいは重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物から敢えて溜去する等して取り除く必要はなく、これらを含んだ塗布液を用いて、後述する感光性平版印刷版材料を作製することも可能である。
【0039】
しかしながら、本発明において好ましく用いることのできる光重合開始剤の水中乳化物あるいは重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物としては、揮発性有機溶剤を使用した系である。この場合、水中乳化物が最も安定して製造でき、かつ室温より高い温度に晒しても乳化分散状態が安定に保たれることから好ましい。揮発性有機溶剤としては、特に酢酸エチルが好ましい。酢酸エチルは揮発性が高いため、加熱もしくは減圧下に置くだけで簡便に水中乳化物から溜去でき、酢酸エチルを溜去した後の水中乳化物は固体分散状態であり、酢酸エチル等の有機溶剤を含んだ状態よりもさらに安定な感光性組成物を形成することから極めて好ましい。
【0040】
具体的に、本発明の光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を分散した水中乳化物を作製する製造方法について説明する。前述の酢酸エチル等の有機溶剤を使用して後述する光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を溶解もしくは分散した溶液を作製する。これを、本発明の化合物や必要に応じてアニオン性界面活性剤、後述するスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマー等の水可溶性の化合物を含む水中に添加する際に、ホモミキサーやホモジナイザー等の高速剪断が可能である公知の攪拌装置を使用して乳化分散を行うことで光重合開始剤の水中乳化物あるいは重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物を作製することができる。有機溶剤には、本発明の感光性組成物に含まれる他の水不溶性の化合物を添加してもよいし、分散媒として用いる水には、本発明の感光性組成物に含まれる他の水可溶性の化合物を添加してもよい。本発明の感光性組成物は水性分散液であるので、水可溶性の化合物は後から添加しても構わない。あるいはこのような組み合わせや添加順序によらず、各々の成分をどのような組み合わせで、どのような順序で添加しても、光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物の少なくとも一方が、本発明の化合物の存在下で乳化分散されていれば、基本的には最終的に得られる感光性組成物は同様に秀逸な特性を示す。ただし、本発明の化合物を用いずに光重合開始剤と重合性二重結合基を有する化合物のどちらかを乳化分散する場合は、何らかの分散助剤が必要であり、その場合はアニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。さらにいずれの場合においても、乳化分散方式はバッチ式で行う場合や、連続的方式で配管系を流れる状態で連続して乳化分散を行うことが可能である。また、0℃から70℃の温度範囲で乳化分散を行うことが好ましい。
【0041】
上記のように分散された光重合開始剤の乳化物あるいは重合性二重結合基を有する化合物の乳化物は、揮発性有機溶剤を使用した場合には、さらに加熱することでこれを溜去して除くことが可能である。
【0042】
上記の溜去の工程においては、加熱により揮発性有機溶剤を溜去しても良いが、減圧下に有機溶剤を溜去することがさらに好ましく行われる。本発明で用いることのできる光重合開始剤は一般的に長時間加熱されることで分解する場合が多く、加熱を行う場合には、好ましくは70℃以下の温度で数時間以内の短時間で加熱されることが好ましい。従って、揮発性有機溶剤として酢酸エチルを用いた場合には70℃以下の温度で溜去が可能であり、さらに減圧にすることでより低い温度で溜去が可能であるため極めて好ましい。上記の減圧条件としては大気圧を標準として、これの70%から5%の圧力下で揮発性有機溶剤の溜去を行うことが好ましい。溜去した有機溶剤は冷却されて別の容器に回収されることが好ましい。この際回収された有機溶剤の量を計測することで、水中乳化物中の揮発性有機溶剤量を求めることができる。
【0043】
次に、本発明の感光性組成物に含まれるもう一つの要素であるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーについて述べる。前記のように光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を、本発明の化合物及び好ましくはアニオン性界面活性剤の存在下で水中に乳化分散することで、ある程度高温に晒しても安定に乳化分散状態が保てる水中乳化物が得られるのであるが、この系にさらに該水溶性ポリマーを加えることで乳化分散安定性はさらに向上することを見出した。該水溶性ポリマーは、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物の乳化分散時に添加してもよいし乳化分散後に添加してもよいが、分散時に添加することで、水中乳化物の水中における分散粒子径が顕著に減少し、極めて微小な液滴、微粒子の形態で分散するため、経時による沈降あるいは浮上等の問題発生が抑えられることから好ましい。さらに、該水溶性ポリマーは、その一部を分散時に使用して先ず水中乳化物を作製し、安定な乳化物が作製された後にさらに該水溶性ポリマーを添加することも好ましく行うことができる。
【0044】
また、本発明の感光性組成物を支持体上に塗布、乾燥して、例えば後述する感光性平版印刷版材料を構成した場合に、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーは良好なバインダーポリマーとして機能し、光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する化合物を含んだ均質な皮膜を形成することから、水による現像性が良好で、現像処理を続けてもスラッジの発生がなく、画質に優れ、また感度の経時変化が少なく高感度である感光性平版印刷版材料を与えることができる。
【0045】
こうした目的で使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、スルホン酸基が任意の塩基により中和された塩である置換基を有する水溶性ポリマーであり、本発明において、スルホン酸基を中和する目的で好ましく用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や、アミン類として、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン、あるいは4級アンモニウム塩基としてテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド等の各種塩基を使用することができる。
【0046】
本発明において最も好ましく使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、下記一般式2で示される構造のスルホン酸塩基を有するモノマーを重合して得られるポリマーである。
【0047】
【化6】

【0048】
式中、Lはなくても良い任意の原子または基からなる連結基を表し、酸素原子、硫黄原子、置換していても良い直鎖あるいは分岐のアルキレン基、アリーレン基、−NH−、−COO−、−CONH−、−CO−、及びこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。Aはカチオンを表す。
【0049】
こうしたスルホン酸塩基を有するモノマーの例として、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩、アリルスルホン酸のアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタリルスルホン酸のアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩、メタクリル酸3−スルホプルピルエステルのアルカリ金属塩及びそのアミン塩、4級アンモニウム塩等が好ましい例として挙げられる。ここでいうアルカリ金属塩とはナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩であり、アミン塩とはアミンとしてアンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n−ブチルジエタノールアミン、t−ブチルジエタノールアミン等のアミン類、あるいは4級アンモニウム塩とは、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、コリン、フェニルトリメチルアンモニウムハイドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロキサイドを用いて形成される塩を意味する。
【0050】
本発明において最も好ましく使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしては、上記の種々のスルホン酸塩基を有するモノマーを各々単独もしくは数種を組み合わせて重合して得られるポリマーを使用しても良い。さらに好ましい該水溶性ポリマーの例としては、上記のスルホン酸塩基を有するモノマーと共に、以下の各種共重合モノマーとの組み合わせで得られる共重合体ポリマーである場合がさらに好ましい。
【0051】
上記の目的で使用することのできる共重合モノマーの例としては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の種々のアルキル(メタ)アクリレート、あるいは4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、あるいは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、あるいはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することができる。これらの共重合モノマーの共重合体ポリマー中に占める割合としては、全体に対して最大でも90質量%未満であり、共重合体中に含まれるスルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が10質量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、これらの共重合モノマーが含まれる場合であっても、全体に対する割合が最大でも70質量%未満であり、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が30質量%以上である場合においては、該水溶性ポリマーの水に対する溶解性が良好であり、好ましい。
【0052】
上記の共重合体モノマーの中でも特に好ましい例が挙げられる。本発明に使用できるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーがある程度疎水性である構造を併せて有している場合において、該水溶性ポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料のインキ乗り性が向上することが好ましい効果として挙げられる。即ち、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーに疎水性構造を与えるための共重合モノマーの例として、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、c−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の種々の(メタ)アクリル酸エステルが極めて好ましく使用することができる。
【0053】
本発明において好ましく使用することのできるスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0054】
【化7】

【0055】
さらに好ましいスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例として、側鎖に重合性二重結合基を併せて有するポリマーを挙げることができる。この場合、該水溶性ポリマーを含んでなる感光性平版印刷版材料において、画像部(露光部)において効率的に光重合による架橋構造の形成が生じるため、耐刷性に極めて優れた印刷版を与えることから極めて好ましく使用することができる。これらの側鎖に導入した重合性二重結合基の共重合体ポリマー中に占める割合としては、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が10質量%以上である範囲であれば任意の割合で導入することができる。ただし、スルホン酸塩基を有するモノマーの共重合体ポリマー中に占める割合が30質量%以上である場合においては、該水溶性ポリマーの水に対する溶解性が良好であり好ましい。
【0056】
本発明において好ましく使用することのできる、側鎖に重合性二重結合基を併せて有するスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0057】
【化8】

【0058】
側鎖に重合性二重結合基を併せて有するスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーの最も好ましい例として、例えば特開2008−265297号公報に記載される、スルホン酸塩基と、ヘテロ環を介してビニル基が結合したフェニル基の両方を側鎖に有するポリマーが挙げられる。こうした最も好ましい該水溶性ポリマーの例を下記に示す。図中の数値は共重合組成比(質量比)を表す。
【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
本発明における上記のような該水溶性ポリマーと、光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する化合物の比率には好ましい範囲が存在する。該水溶性ポリマーが100質量部である場合には、光重合開始剤の含まれる好ましい範囲は1質量部〜50質量部であり、さらに好ましい範囲は3質量部〜40質量部である。一方、重合性二重結合基を有する化合物が含まれる好ましい範囲は、10質量部〜100質量部であり、さらに好ましくは20質量部〜60質量部の範囲である。
【0062】
次に、本発明に使用する光重合開始剤について述べる。本発明に用いることのできる光重合開始剤の例としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)アジニウム化合物、(g)活性エステル化合物、(h)メタロセン化合物、(i)トリハロアルキル置換化合物、及び(j)有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0063】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、“RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY”J.P.FOUASSIER,J.F.RABEK(1993)、P.77〜P.177に記載のベンゾフェノン骨格、あるいはチオキサントン骨格を有する化合物、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン類、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報に記載のベンゾインエーテル類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン類、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類を挙げることができる。
【0064】
(b)芳香族オニウム塩の例としては、N、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、TeまたはIの芳香族オニウム塩が含まれる。このような芳香族オニウム塩は、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報等に例示されている化合物を挙げることができる。
【0065】
(c)有機過酸化物の例としては、分子中に酸素−酸素結合を一個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、例えば、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化エステル系が好ましい。
【0066】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールの例としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報に記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0067】
(e)ケトオキシムエステルの例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0068】
(f)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報等に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0069】
(g)活性エステル化合物の例としては特公昭62−6223号公報等に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号公報、特開昭59−174831号公報等に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0070】
(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報等に記載のチタノセン化合物、並びに特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等を挙げることができる。具体的なチタノセン化合物としては、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等を挙げることができる。
【0071】
(i)トリハロアルキル置換化合物の例としては、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、米国特許第3,954,475号明細書、米国特許第3,987,037号明細書、米国特許第4,189,323号明細書、特開昭61−151644号公報、特開昭63−298339号公報、特開平4−69661号公報、特開平11−153859号公報等に記載のトリハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭54−74728号公報、特開昭55−77742号公報、特開昭60−138539号公報、特開昭61−143748号公報、特開平4−362644号公報、特開平11−84649号公報等に記載の2−トリハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合した、特開2001−290271号公報等に記載のトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0072】
(j)有機ホウ素塩化合物の例としては、特開平8−217813号公報、特開平9−106242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素アンモニウム化合物、特開平6−175561号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−157623号公報等に記載の有機ホウ素スルホニウム化合物及び有機ホウ素オキソスルホニウム化合物、特開平6−175553号公報、特開平6−175554号公報等に記載の有機ホウ素ヨードニウム化合物、特開平9−188710号公報等に記載の有機ホウ素ホスホニウム化合物、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−292014号公報、特開平7−306527号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体化合物等が挙げられる。また、特開昭62−143044号公報、特開平5−194619号公報等に記載の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有するカチオン性色素が挙げられる。
【0073】
上記光重合開始剤は単独で用いても良いし、任意の2種以上の組み合わせで用いても良い。本発明に関わる光重合開始剤については特に有機ホウ素塩が好ましく用いられる。さらに好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)を組み合わせて用いることである。これらを用いることによるメリットの一つは、得られる感光性組成物としての感度が高くなり、これを利用した感光性平版印刷版材料としての感度や耐刷性等が向上する効果が挙げられるが、加えて重要なメリットは、本発明の水性分散液である感光性組成物が極めて安定に製造できる点である。これは有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物が各種有機溶剤に易溶性であり、本発明の化合物の存在下において、乳化分散状態及び固体分散状態において安定に存在できる事実によるものである。
【0074】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式3で表される。
【0075】
【化11】

【0076】
式中、R、R、R及びRは各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらのうちで、R、R、R及びRのうちの一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0077】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウム及びホスホニウム化合物が挙げられる。
【0078】
本発明において光重合開始剤として好ましく用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した一般式3で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
本発明において、有機ホウ素塩と共に用いることでさらに高感度化が具現される光重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0082】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を下記に示す。
【0083】
【化14】

【0084】
【化15】

【0085】
次に、本発明に使用する重合性二重結合基を有する化合物について述べる。この場合の重合性二重結合基を有する化合物とは、上記の光重合性開始剤の光分解により発生するラジカルにより重合を行う化合物であればいずれも好ましく用いることができる。さらには、分子内に2個以上の重合性二重結合基を有する化合物を含んで用いた場合には、ラジカルによる重合の結果、架橋物が生成するため、後述する感光性平版印刷版材料を構成した場合に、架橋した堅い画像部皮膜を形成することから耐刷性及びインキ乗り性に優れた印刷版を与えるため極めて好ましく用いることができる。こうした目的で用いることのできる重合性二重結合基を有する化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー等を挙げることができ、あるいは、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。
【0086】
本発明に関わる感光性組成物中には、前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大される化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報等に記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報等に記載されるスチリル系色素、あるいは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらのうち、シアニン系色素またはクマリン系化合物あるいは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。
【0087】
本発明の感光性組成物を構成するその他の要素として、光照射により得られた重合物や感光性平版印刷版材料における画像部の視認性を高める目的で種々の着色剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で添加される着色剤として着色顔料の水系分散物が最も好ましく用いることができる。こうした顔料の水系分散物の例として各種、黒色、青色、赤色、緑色、黄色等の着色した顔料が水溶性である各種分散剤の存在下に水中で分散された任意の素材が使用可能である。顔料として特に、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等は入手が容易であり水中での分散も比較的容易であるため特に好ましく用いることができる。また、こうした顔料を水中で分散させるために用いることのできる分散剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン基を有する水溶性であるノニオン系界面活性剤や、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ポリスチレン−マレイン酸共重合体、その他各種水溶性高分子が挙げられる。こうした分散剤は着色顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。さらに着色顔料を用いる場合には、本発明の感光性組成物に含まれる割合として、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマー100質量部に対して1〜30質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0088】
本発明において、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物の乳化分散時に好ましく添加することのできるアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。これらのうちで、特にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類及びアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類が最も安定な水中乳化物を形成することから極めて好ましい。
【0089】
本発明において用いられるアニオン性界面活性剤の水中乳化物に含有される量については好ましい範囲が存在する。光重合開始剤の水中乳化物あるいは重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物の、さらに酢酸エチル等の有機溶剤を使用する場合にはこれを含有し溜去していない状態において、この水中乳化物100質量部に対するアニオン性界面活性剤の割合は、0.5質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0090】
本発明の感光性組成物を構成するその他の要素として、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、本発明の感光性組成物の総固形分質量100質量部に対して0.01質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0091】
本発明の感光性組成物の好ましい利用態様である感光性平版印刷版は、支持体上に本発明の感光性組成物を含有する塗布液を塗布して設けた光硬化性感光層を有する。本発明の感光性平版印刷版に用いられる支持体としてはアルミニウム支持体、各種プラスチックフィルム、各種プラスチックによりラミネートされた紙が挙げられる。中でも柔軟性があり、張力による変形の少ない素材である各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。好ましいプラスチックフィルム支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。これらのフィルム支持体の光硬化性感光層を塗布する面には、例えば特開2008−250195号公報や特開2008−265297号公報等に記載される水溶性重合体、コロイダルシリカ及び架橋剤から構成される親水性層を有することが好ましい。また、親水性層を設ける前に、フィルム支持体表面に親水化加工が施されていることが好ましく、こうした親水化加工としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。さらなる親水化加工として支持体上に設ける親水性層との接着性を高めるため支持体上に下引き層を設けても良い。
【0092】
支持体としてアルミニウム板を使用する場合には、粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が好ましく用いられる。さらに、表面をシリケート処理したアルミニウム板も好ましく用いることができる。あるいは、さらに表面に上記の親水性層を形成したアルミニウム板を用いることもできる。
【0093】
上記のような支持体を用いて本発明の感光性平版印刷版材料を作製するためには、本発明の感光性組成物を含有する塗布液を支持体上に塗布して光硬化性感光層を設けることが必要である。この光硬化性感光層は支持体表面あるいは上記の親水性層を介して支持体表面に形成することが好ましい。この場合の光硬化性感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらに0.5gから3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光性組成物を含有する塗布液には、感光性平版印刷版材料としての諸特性を向上するために任意の添加剤を加えてもよい。
【0094】
本発明の感光性平版印刷版材料においては、本発明の感光性組成物を含有する塗布液を塗布して設けた光硬化性感光層の上に、さらに保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、光硬化性感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の光硬化性感光層への混入を防止し、大気中での露光感度をさらに向上させる好ましい効果を有する。さらには感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光硬化性感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。本発明の感光性平版印刷版材料においては、水現像の過程においてこうした保護層と光硬化性感光層の未露光部の除去が同時に行うことも可能であるため、特に保護層の除去工程を設ける必要がないことが特徴である。さらに、先に述べたような光硬化性感光層に含まれる該重合体が水溶性であるが故に大気中の水分を吸湿しブロッキングを発生したり、保存中に感度変化等の問題を生じる場合があるが、保護層を光硬化性感光層の上部に設けることでこうしたブロッキングや感度変化の問題を解消することが可能である。加えて、特に半導体レーザー等を使用して走査露光を行う場合、特に高感度である光硬化性感光層が要求される。こうした場合に、保護層を設けることでさらに感度が上昇するため特に好ましく適用することができる。
【0095】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等のような水溶性ポリマーが知られているが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1gから10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらには0.2gから2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて光硬化性感光層上に塗布、乾燥される。
【0096】
本発明の感光性平版印刷版材料における下引き層、親水性層、光硬化性感光層、保護層等を塗布する場合は、支持体上に、上述した要素から構成される組成物の塗液を塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、バーコーター塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。
【0097】
上記のようにして支持体上に形成された光硬化性感光層を有する材料を感光性平版印刷版材料として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することで水に対する溶解性が低下することから、水により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0098】
本発明において、水現像に使用される水とは、pHが7±2の範囲にあり、純水もしくはこれに各種無機、有機イオン性化合物が含まれても良く、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムイオン等が含まれる水であっても良い。あるいは水中に公知である各種界面活性剤等が含まれていても良い。また、水には各種アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メトキシエタノール、ポリエチレングリコール等の溶剤が含まれていても良い。あるいは、水現像の際に、市販される各種ガム液を添加して現像することも、版面を指紋汚れ等から保護する目的で好ましく用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は断りのない限り質量基準である。
【0100】
<水中乳化物Aの作製>
重合性二重結合基を有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート6部に酢酸エチル100部を加えて溶解した。
【0101】
一方、イオン交換水150部をとり、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてSP−2を20部加え溶解した。これに表1で示すように実施例1及び実施例5では本発明の化合物であるEP−1、実施例2ではEP−2、実施例3ではEP−13を各3部添加し、実施例4ではEP−1を3部及びアニオン性界面活性剤としてペレックスOTP(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム:花王株式会社製)を5部添加した。比較例1では分散助剤は添加せず、実施例6及び比較例2ではペレックスOTPを5部添加し、比較例3ではポリアクリル酸ナトリウムを5部添加し、比較例4では非イオン性活性剤としてニューコール2302(ポリオキシエチレンアルキルエーテル:日本乳化剤株式会社)を5部添加した。
【0102】
【表1】

【0103】
水中乳化物の作製には、密閉容器内にホモミキサーが配置され、減圧下で加熱しながら溶媒を溜去可能な、みずほ工業(株)製卓上型真空乳化装置PVQ−1Dを使用して作製を行った。ホモミキサーの回転速度は5000rpmに設定した。上記で作製したトリメチロールプロパントリアクリレートを溶解した酢酸エチル溶液と、水溶性ポリマー及び各種分散助剤を溶解した水溶液を真空乳化装置内に導入し、室温下でホモミキサーの20分間高速攪拌により乳化分散を行った。分散直後に、水中乳化物から一部の試料を取り出し、蒸留水で希釈して粒度分布測定装置((株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910)を使用して分散粒子の粒子径を測定し、表1に示した。その後、真空乳化装置内をアスピレーターを用いて減圧状態にし、大気圧の20%の減圧条件下で温度を50℃に上昇させて酢酸エチルを減圧溜去した。冷却器にて回収した酢酸エチルの量から、用いた全ての酢酸エチルが水中乳化物から溜去されたことを確認した。このトリメチロールプロパントリアクリレートの水中乳化物を水中乳化物Aと称する。
【0104】
比較例1の水中乳化物Aでは微粒子の平均粒子径が酢酸エチル溜去後に増大し、一部容器の底に沈殿物が認められた。分散助剤の添加がなければ安定した分散ができないため、以後の試験は行わなかった。
【0105】
<水中乳化物Bの作製>
次に光重合開始剤としてBC−7で示される有機ホウ素塩2部及びT−8で示されるトリハロアルキル置換化合物1.5部と増感剤として下記のシアニン色素を0.6部秤取り、酢酸エチル100部を加えて溶解した。
【0106】
【化16】

【0107】
一方、イオン交換水150部をとり、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてSP−2を20部加え溶解した。これに表1で示すように実施例1及び実施例6では本発明の化合物であるEP−1、実施例2ではEP−2、実施例3ではEP−13を各3部添加し、実施例4ではEP−1を3部及びペレックスOTPを5部添加した。比較例1では分散助剤は添加せず、実施例5及び比較例2ではペレックスOTPを5部添加し、比較例3ではポリアクリル酸ナトリウムを5部添加し、比較例4ではニューコール2302を5部添加した。
【0108】
それぞれ前述の真空乳化装置を用い、水中乳化物Aと同条件で分散、蒸留したものを水中乳化物Bと称する。
【0109】
<水中乳化物Cの作製>
重合性二重結合基を有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート6部に酢酸エチル100部を加えて溶解した。
【0110】
一方、イオン交換水150部をとり、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてSP−2を20部加え溶解した。これに表1で示すように実施例7では本発明の化合物であるEP−1を3部、実施例8ではEP−1を3部とペレックスOTPを5部添加して溶解した。
【0111】
水中乳化物の作製には、前述の卓上型真空乳化装置を使用してホモミキサーの回転速度5000rpmで20分間とし、上記で作製したトリメチロールプロパントリアクリレートを溶解した酢酸エチル溶液と水溶性ポリマー等を溶解した水溶液の混合物の分散を行った。また、分散直後に水中乳化物から一部の試料を取り出して蒸留水で希釈し、粒度分布測定装置を使用して分散粒子の粒子径を測定した結果を表1に示した。この酢酸エチル未蒸留のトリメチロールプロパントリアクリレートの水中乳化物を水中乳化物Cと称する。
【0112】
<水中乳化物Dの作製>
次に光重合開始剤としてBC−7で示される有機ホウ素塩2部及びT−8で示されるトリハロアルキル置換化合物1.5部と上記シアニン色素を0.6部秤取り、酢酸エチル100部を加えて溶解した。
【0113】
一方、イオン交換水150部をとり、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてSP−2を20部加え溶解した。これに表1で示すように実施例7では本発明の化合物であるEP−1を3部、実施例8ではEP−1を3部とペレックスOTPを5部添加して溶解した。酢酸エチル溶液と水溶液の混合物に対し、水中乳化物Cと同様の方法で分散を行った。この酢酸エチル未蒸留の光重合開始剤及び増感剤の水中乳化物を水中乳化物Dと称する。
【0114】
<水中乳化物Eの作製>
さらに、水中乳化物C及び水中乳化物Dを混合した後、卓上型真空乳化装置でアスピレーターを用いて系を減圧状態にし、大気圧の20%の減圧条件下で温度を50℃に上昇させて酢酸エチルを減圧溜去した。この水中乳化物C及び水中乳化物Dの混合蒸留液を水中乳化物Eとする。
【0115】
<感光性組成物の作製>
本発明1〜6及び比較例2〜4に関しては、上記で得られた酢酸エチル溜去後の水中乳化物A150部と水中乳化物B150部を混合し、さらに着色剤を添加し、本発明7、8に関しては水中乳化物Eに着色剤を添加することで感光性組成物を作製し、これをそのまま感光性平版印刷版材料を製造するための塗布液とした。着色剤として水中に青色顔料が分散した市販の水系顔料分散液(御国色素(株)製ハイミクロンKブルー7361)を使用した。使用した水系顔料分散液はフタロシアニン系顔料を水溶性ポリマーである分散剤を使用して分散を行ったものであり、分散剤はフタロシアニン顔料に対して約20%添加されており、またフタロシアニン顔料の固形分濃度は約20%であった。各々の実施例1〜3で得られた水中乳化物全量に対して、それぞれに上記のハイミクロンKブルーを10部加えて攪拌を行い、均一に分散した青色の感光性組成物である塗布液を作製した。完成した塗布液を作製直後及び、25℃の環境下で3日間経過した後に、後述の塗布及び感度評価を行った。
【0116】
<感光性平版印刷版材料の作製>
厚みが100μmのポリエステルフィルム上に、下記の親水性層処方にてワイヤーバーで乾燥重量が2.0g(1平方メートル当たり)になるように親水性層の塗布を行い、60℃の乾燥機にて3分間乾燥を行い、さらに乾燥物を40℃の乾燥機にて2日間加熱を行い、親水性層を有する支持体を得た。
【0117】
<親水性層処方>
コロイダルシリカ分散液 スノーテックスS(日産化学工業(株))1.5質量部
下記水溶性重合体(分子量20万) 1質量部
下記架橋剤 0.3質量部
pH調整剤(水酸化ナトリウム水溶液もしくは硫酸水溶液にてpH5.0に調整)
イオン交換水 20質量部
【0118】
【化17】

【0119】
上記で得た塗布液を、親水性層を有する支持体の親水性層上に塗布、乾燥することで光硬化性感光層を形成し、実施例1〜8及び比較例2〜4の感光性平版印刷版材料を作製した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.6gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して行った。
【0120】
さらに下記保護層をそれぞれ乾燥厚みが1.5μmになるよう感光層上に塗布を行い、75℃の乾燥器内にて10分間乾燥し感光性平版印刷版を得た。
【0121】
<保護層処方>
ポリビニルアルコール PVA−102((株)クラレ製) 1質量部
イオン交換水 9質量部
【0122】
<感光性平版印刷版材料の製版及び評価>
得られた上記感光性平版印刷版材料について塗布当日にそれぞれ、露光装置として、405nmに発光する青紫半導体レーザー(出力50mW)を用いて、版面露光エネルギーを100μJ/cm、200μJ/cm、400μJ/cmに設定してベタ画像を描画した。描画した感光性平版印刷版について、25℃のイオン交換水に15秒に漬けてセルローススポンジで感光層を有する側の面を擦ることで現像し、乾燥した。得られた製版後の感光性平版印刷版材料の、ベタ画像部の反射濃度をDM−620(大日本スクリーン製造(株)製)で測定し、現像前の反射濃度の80%以上を○、80%未満50%以上を△、50%未満を×と評価した結果を表2に示した。
【0123】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0124】
水による現像が可能な感光性平版印刷版材料、プリント配線基板作製用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成、光硬化型あるいは電離放射線硬化型の各種印刷用インクやインクジェット記録用インク等に好適に用いることができる感光性組成物が与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物とスルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーを含有する水性分散液である感光性組成物であって、光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物の少なくとも一方が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の存在下で、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散して得た水中乳化物であることを特徴とする感光性組成物。
【化1】

一般式1中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Lは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される原子を含んで構成される連結基を表し、Rはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドより選択される繰り返し単位から構成される置換基を表す。
【請求項2】
光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物の少なくとも一方が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に加えてアニオン性界面活性剤の存在下で、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散して得た水中乳化物である請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
光重合開始剤の水中乳化物が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の存在下で光重合開始剤を水中に乳化分散して得た水中乳化物であり、かつ重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物が、一般式1で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の存在下で重合性二重結合基を有する化合物を水中に乳化分散して得た水中乳化物である請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
光重合開始剤の水中乳化物及び重合性二重結合基を有する化合物の水中乳化物が、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を揮発性有機溶剤に溶解したのちに水中に乳化分散し、その後揮発性有機溶剤を溜去して得た水中乳化物である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1〜4のいずれかに記載の感光性組成物を含有する塗布液を塗布して設けた光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料。

【公開番号】特開2012−168281(P2012−168281A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27614(P2011−27614)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】