説明

感光性組成物及び感光性平版印刷版

【課題】 経時によるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の凝集がなく、保存安定性に優れる感光性組成物、及び該感光性組成物を用いた感光性平版印刷版を提供する。
【解決手段】 エステル結合を含む置換基を有するフェニル基を置換基として少なくとも有するか、水酸基で置換された置換基をo−位又はm−位に有するフェニル基を置換基として少なくとも有し、且つ、水不溶性及びアルカリ不溶性であるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物、並びに、支持体表面に該感光性組成物からなる層が形成されてなる感光性平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物、及び感光性平版印刷版に関し、更に詳しくは、経時によるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の凝集がなく、保存安定性に優れる感光性組成物、及び該感光性組成物を用いた感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物は、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が波長250〜1300nmの光によって直接に光分解するか、又は、共存された色素で増感されて光分解してラジカル又は/及び酸を発生させることから、例えば、それらのラジカル又は/及び酸により退色又は発色する色素と組み合わせ露光部の色調を変化させて潜像に可視画性を付与する可視画性感光性組成物、又は、それらのラジカル又は/及び酸により付加重合又は架橋する化合物と組み合わせ露光部を不溶化させてネガ画像を形成するネガ型感光性組成物、或いは、それらのラジカル又は/及び酸により解離する化合物と組み合わせ露光部を可溶化させてポジ画像を形成するポジ型感光性組成物等として、平版印刷版、印刷校正用カラープルーフ、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用カラーフィルターレジスト、半導体素子の集積回路用フォトレジスト、配線板やグラビア製版用銅エッチングレジスト等の分野で多用されている。
【0003】一方、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有するこれらの感光性組成物は、通常、溶剤分散液或いは溶液とした塗布液として支持体表面に塗布して感光性層を有する感光性材料とされ、画像露光後、アルカリ剤を含有する水系アルカリ現像液により現像処理され、非画像部分が溶解除去されて、支持体表面にネガ型或いはポジ型画像が形成された感光材として用いられるが、その感光性材料としての、例えば感光性平版印刷版としての保存時、感光性層を形成する感光性組成物中のビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が凝集し易く、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物は保存安定性が劣っているという欠点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、経時によるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の凝集がなく、保存安定性に優れる感光性組成物、及び該感光性組成物を用いた感光性平版印刷版を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物が前記目的を達成できることを見い出し本発明を完成したものであって、即ち、本発明は、エステル結合を含む置換基を有するフェニル基を置換基として少なくとも有し、且つ、水不溶性及びアルカリ不溶性であるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物、及び、水酸基で置換された置換基をo−位又はm−位に有するフェニル基を置換基として少なくとも有し、且つ、水不溶性及びアルカリ不溶性であるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物、並びに、支持体表面に該感光性組成物からなる層が形成されてなる感光性平版印刷版、を要旨とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の感光性組成物において必須の成分として含有されるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物は、画像露光光源の光(通常、波長250〜1,300nm)によって直接に光分解するか、又は、共存された色素で増感されて光分解して、トリハロメチル構造における炭素−ハロゲン結合を解離させてメチルラジカルとハロゲンラジカルを発生すると共に、そのハロゲンラジカルが水素供与体から水素原子を引き抜いてハロゲン化水素(酸)を発生させ、それらのラジカル又は/及び酸により、退色又は発色する色素の色調を変化させ、又は、付加重合又は架橋する化合物を付加重合又は架橋させ、或いは、解離する化合物を解離させる等の機能を有する化合物である。
【0007】本発明において、ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物は、エステル結合を含む置換基を有するフェニル基を置換基として少なくとも有するか、又は、水酸基で置換された置換基をo−位又はm−位に有するフェニル基を置換基として少なくとも有するものであることが必須であり、これらの置換基を有さないビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物では、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0008】ここで、置換基としてのフェニル基における、エステル結合を含む置換基のエステル結合としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、燐酸エステル、及び硼酸エステル等のエステルに由来するものが挙げられるが、中で、カルボン酸エステルに由来するものであるのが特に好ましい。
【0009】これらのエステルとしては、具体的には、例えば、炭素数1〜15の脂肪族飽和モノカルボン酸、炭素数2〜15の脂肪族不飽和モノカルボン酸、炭素数6〜15の芳香族モノカルボン酸、又は炭素数4〜15の複素環モノカルボン酸のエステル、及び、スルホン酸、燐酸、又は硼酸の、炭素数1〜15のアルキルエステル、炭素数2〜15のアルケニルエステル、炭素数6〜15のアリールエステル、又は、炭素数4〜15の複素環化合物エステル等が挙げられ、更に、これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基、及び複素環基は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0010】又、置換基としてのフェニル基における、前記エステル結合を含む置換基、及び、水酸基で置換された置換基としては、前記エステル結合を含む、又は水酸基で置換された、アルコキシ基、アシルオキシ基、及び、アシルオキシアルコキシ基等が挙げられる。
【0011】本発明において、そのビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物としては、下記一般式(I) で表されるものが特に好ましい。
【0012】
【化2】


【0013】〔式(I) 中、Xは塩素原子、又は臭素原子を示し、Rはアシルオキシ基、又はアシルオキシ基若しくは水酸基を置換基として有する置換基を示し、エチレン結合は置換基を有していてもよく、ベンゼン環はRの外に置換基を有していてもよく、lは0〜3の整数である。〕
【0014】ここで、Xとしては塩素原子が好ましく、又、エチレン結合における置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基等が挙げられるが、置換基を有さないのが好ましく、lは0又は1であるのが好ましい。又、Rとしては、下記式(IIa) 又は(IIb) で表されるものが好ましい。
【0015】
【化3】


【0016】〔式(IIa) 及び(IIb) 中、R1 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、R2 は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニレン基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリレン基を示し、R3 は置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数4〜15の複素環基を示し、mは0〜30の整数、nは0又は1である。但し、式(IIb) においては、Rはo−位又はm−位に位置し、且つ、m、nのいずれもが0であることはない。〕
【0017】ここで、R1 のアルキレン基の炭素数は1〜5であるのが好ましく、又、R2がアルキレン基であるときの炭素数は1〜5、アルケニレン基であるときの炭素数は2〜5、アリレン基であるときの炭素数は6であるのがそれぞれ好ましく、又、R3 がアルキル基であるときの炭素数は1〜5、アルケニル基であるときの炭素数は2〜5、アリール基であるときの炭素数は6、複素環基であるときの炭素数は4〜5であるのがそれぞれ好ましい。
【0018】又、式(IIb) におけるRの置換位としてはm−位が好ましく、ベンゼン環におけるRの外の置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10、好ましくは2〜5のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10、好ましくは2〜5のアルコキシカルボニル基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられ、隣接する二つの置換基が互いに連結して縮合環を形成していてもよい。
【0019】又、前記のR1 、R2 、及びR3 、並びにRの外の置換基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0020】本発明において、式(I) 、及び式(IIa) 、(IIb) で表されるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物として特に好ましいものは、Xが塩素原子、エチレン結合において置換基を有さず、lが0又は1、R1 が炭素数1〜3のアルキレン基、R2 が炭素数1〜3のアルキレン基、R3 が炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基、mが0〜3の整数、nが0の、式(I) 及び式(IIa) で表される化合物である。
【0021】そして、本発明において、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物は、水不溶性及びアルカリ不溶性であることが必須であり、それ以外のビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物では、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0022】尚、ここで、水不溶性とは、中性の水に対する25℃における溶解性が0.025重量%以下であることを言い、0.01重量%以下であるのが好ましい。又、アルカリ不溶性とは、1モル/dm3 の水酸化ナトリウム水溶液に対する25℃における溶解性が0.025重量%以下であることを言い、0.01重量%以下であるのが好ましい。
【0023】本発明において用いられる好適なこれらのビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物としては、具体的には、例えば、2−(4’又は3’又は2’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−アセトキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジアセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−アセトキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジアセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−アセトキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−アセトキシエトキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジアセトキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−アセトキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−アセトキシエトキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジアセトキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−アセトキシエトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−バレリルオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−バレリルオキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジバレリルオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−バレリルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−バレリルオキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジバレリルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−バレリルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−バレリルオキシエトキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジバレリルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−バレリルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−バレリルオキシエトキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジバレリルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−バレリルオキシエトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−ベンゾイルオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−ベンゾイルオキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジベンゾイルオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−ベンゾイルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−ベンゾイルオキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジベンゾイルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−ベンゾイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’又は2’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−ベンゾイルオキシエトキシ−4’−エトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジベンゾイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’又は2’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’−アセトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’又は3’又は2’−ベンゾイルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’又は2’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’−ベンゾイルオキシエトキシ−4’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’又は5’−ジベンゾイルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’又は2’−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’−アセトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシ−3’−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ベンゾイルオキシエトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0024】本発明の感光性組成物において、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の含有割合は、該組成物全体に対して0.1〜30重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのが更に好ましく、0.5〜15重量%であるのが特に好ましい。
【0025】本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が露光光源の光によって発生させるラジカル又は/及び酸により退色又は発色する色素又はその前駆体を含有し、露光部の色調を変化させて潜像に可視画性を付与する可視画性感光性組成物が挙げられる。
【0026】その際の色素又はその前駆体は、有色から無色或いは異なる有色へ、又は、無色から有色へと色相が変化し、露光後の感光体中の潜像に可視画性を付与し、又、現像後の画像に可視画性を付与する機能を有するものである。
【0027】本発明において用いられるそれらの色素又はその前駆体としては、具体的には、例えば、ビクトリアピュアブルーBOH、オイルブルー♯603、パテントピュアブルー、クリスタルバイオレット、メチルグリーン、エリスロシンB、ベイシックフクシン、マラカイトグリーン、オイルレッド、m−クレゾールパープル、ローダミンB、オーラミン等に代表されるトリフェニルメタン系、及び、ジフェニルメタン系、オキサイジン系、キサンテン系、ロイコ色素、並びに、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、o−クロロアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン等の第一又は第二アリールアミン系等の有機色素又はその前駆体が挙げられ、中で、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系が好ましい。
【0028】本発明の感光性組成物において、前記色素又はその前駆体の含有割合は、該組成物全体に対して0.1〜10重量%であるのが好ましく、0.5〜5重量%であるのが特に好ましい。
【0029】又、本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、可視画性を付与する前記色素又はその前駆体と共に用いられ、露光光源の光により解離して不溶化する化合物を含有し、露光部を不溶化させてネガ画像を形成するネガ型感光性組成物が挙げられる。
【0030】その解離して不溶化する化合物として、例えば、芳香族ジアゾ樹脂が挙げられる。芳香族ジアゾ樹脂は、芳香族ジアゾニウム化合物を、単独で又は他の芳香族化合物と共に、硫酸、燐酸、塩酸等の酸性触媒下、例えば、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、又は、アセトン、アセトフェノン等のケトン類と重縮合又は共重縮合させることによって得られる重縮合体又は共重縮合体であり、本発明においては、共重縮合体であるのが好ましい。
【0031】本発明において用いられるその芳香族ジアゾニウム化合物としては、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウム化合物、ジフェニルエーテル−4−ジアゾニウム化合物、ジフェニルチオエーテル−4−ジアゾニウム化合物等が挙げられる中で、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウム化合物が好ましく、そのジアゾニウム化合物を形成する4−アミノジフェニルアミン類としては、具体的には、例えば、4−アミノジフェニルアミン、4−アミノ−3−メチルジフェニルアミン、4−アミノ−2−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−3−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−2’−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−4’−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−3−エトキシジフェニルアミン、4−アミノ−3−β−ヒドロキシエトキシジフェニルアミン、4−アミノ−2−スルホジフェニルアミン、4−アミノ−2−カルボキシジフェニルアミン、4−アミノ−2’−カルボキシジフェニルアミン等が挙げられ、中で、4−アミノジフェニルアミン、又は、置換基として炭素数1〜4のアルキル基或いはアルコキシ基を有する4−アミノジフェニルアミンが好ましく、4−アミノジフェニルアミン、又は、4−アミノ−4’−メトキシジフェニルアミンが特に好ましい。
【0032】又、共重縮合に用いられるその芳香族化合物としては、具体的には、例えば、2,4−ジメチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、2,4−ジメトキシ安息香酸、p−フェノキシ安息香酸、4−アニリノ安息香酸、4−p−メチルアニリノ安息香酸、4−m−メトキシアニリノ安息香酸、4−p−メチルベンゾイル安息香酸、m−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−6−メチル安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ−4−クロロ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、フロログルシノールカルボン酸、桂皮酸、桂皮酸エチル、p−ヒドロキシ桂皮酸、フェノキシ酢酸、p−メトキシフェニル酢酸、ジフェニル酢酸、フェノール、(o,m,p)−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、(o,m,p)−エチルフェノール、プロピルフェノール、クミルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、(o,m,p)−メトキシフェノール、(o,m,p)−クロロフェノール、(o,m,p)−ブロモフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアミン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−クロロレゾルシノール、ハイドロキノン、p−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシエチルフェノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、スチレン、(o,p)−ヒドロキシスチレン、スチルベン、4−ヒドロキシスチルベン、4−カルボキシスチルベン、4,4’−ジカルボキシスチルベン、ジフェニルエーテル、4−メトキシジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、4−メトキシジフェニルアミン、ジフェニルチオエーテル、4−メトキシジフェニルチオエーテル等が挙げられ、中で、p−メトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、又はp−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0033】又、共重縮合体における、前記芳香族ジアゾニウム化合物の重縮合単位と前記芳香族化合物の重縮合単位との構成比は、前者構成単位:後者構成単位がモル比で10:1〜1:10であるのが好ましく、5:1〜1:5であるのが更に好ましく、5:1〜1:2であるのが特に好ましい。
【0034】又、前記芳香族ジアゾ樹脂のジアゾニウム塩における対アニオンとしては、具体的には、例えば、メタンスルホン酸、クロロエタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、4−アセチルベンゼンスルホン酸、ジメチル−5−スルホイソフタレート等の芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸類、デカン酸、安息香酸等の有機カルボン酸類、フェニル燐酸等の有機燐酸類、1,2,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の水酸基含有芳香族化合物類、ヘキサフルオロ燐酸、テトラフルオロ硼酸等のハロゲン化ルイス酸類、ClO4 、IO4 等の過ハロゲン酸類、及びヒドロキシスルホン酸等が挙げられ、中で、ヘキサフルオロ燐酸、テトラフルオロ硼酸、メシチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸が好ましい。
【0035】尚、前記芳香族ジアゾ樹脂は、ジアゾ化前の前駆体としての前記4−アミノジフェニルアミン等の芳香族第一アミンを、亜硝酸と反応させる等の公知の方法でジアゾ化して芳香族ジアゾニウム化合物となした後に(共)重縮合させるか、又は、ジアゾ化前の前駆体としての前記4−アミノジフェニルアミン等の芳香族第一アミンを(共)重縮合させた後にジアゾ化する等のいずれの方法によって得られたものであってもよく、又、アニオン化も(共)重縮合前又は(共)重縮合後のいずれの方法によって得られたものであってもよい。
【0036】又、本発明において用いられる前記芳香族ジアゾ樹脂の分子量は、重量平均分子量で400〜10,000の範囲のものが好ましく、800〜5,000の範囲のものが特に好ましい。
【0037】本発明の感光性組成物として、前記芳香族ジアゾ樹脂含有ネガ型感光性組成物における前記芳香族ジアゾ樹脂の含有割合は、該組成物全体に対して0.5〜20重量%であるのが好ましく、1〜10重量%であるのが特に好ましい。
【0038】又、本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が発生させるラジカルにより付加重合する化合物を含有し、露光部を不溶化させてネガ画像を形成するネガ型感光性組成物が挙げられる。
【0039】その付加重合して不溶化する化合物として、例えば、エチレン性不飽和化合物が挙げられる。エチレン性不飽和化合物は、感光性組成物が画像露光光源の光を照射されたときに、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物又は/及び後述する光重合開始剤の作用により付加重合し、場合により架橋、硬化するような、ラジカル重合性のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、重合性、架橋性、及び、それに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、そのような二重結合を分子内に2個以上有する化合物であるのが好ましく、又、その二重結合が(メタ)アクリロイルオキシ基に由来するアクリレート化合物が好ましい。尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味するものとする。
【0040】そのアクリレート化合物としては、代表的には、(メタ)アクリル酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸又はヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類等が挙げられる。
【0041】そのエステル(メタ)アクリレート類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ノナメチレングリコール、トリメチロールエタン、テトラメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、及びそれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物との反応物、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加トリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールプロピレンオキサイド付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】更に、そのエステル(メタ)アクリレート類としては、(メタ)アクリル酸と、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との反応物、具体的には、例えば、ヒドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等、及び、(メタ)アクリル酸と、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のヘテロ環ポリヒドロキシ化合物との反応物、具体的には、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】又、そのエポキシ(メタ)アクリレート類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、又は、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、(ポリ)エチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ペンタメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ヘキサメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ソルビトールポリグリシジルエーテル等の脂肪族ポリエポキシ化合物、フェノールノボラックポリエポキシ化合物、ブロム化フェノールノボラックポリエポキシ化合物、(o−,m−,p−)クレゾールノボラックポリエポキシ化合物、ビスフェノールAポリエポキシ化合物、ビスフェノールFポリエポキシ化合物等の芳香族ポリエポキシ化合物、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のヘテロ環ポリエポキシ化合物等のポリエポキシ化合物との反応物等が挙げられる。
【0044】又、そのウレタン(メタ)アクリレート類としては、具体的には、例えば、前記の如きヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、リジンメチルエステルトリイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン等の脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の芳香族ポリイソシアネート、イソシアヌレート等のヘテロ環ポリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0045】又、その(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチレングリコールホスフェート等が挙げられる。
【0046】本発明の感光性組成物として、前記エチレン性不飽和化合物含有ネガ型感光性組成物における前記エチレン性不飽和化合物の含有割合は、該組成物全体に対して1〜70重量%であるのが好ましく、5〜60重量%であるのが特に好ましい。
【0047】尚、前記エチレン性不飽和化合物含有ネガ型感光性組成物に用いられる光重合開始剤は、光照射されたときに活性ラジカルを発生するラジカル発生剤であって、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物がその光重合開始剤機能を有するが、必要に応じて更に、この種感光性組成物において公知のものを用いることができ、それらの光重合開始剤として、例えば、チタノセン化合物類、ヘキサアリールビイミダゾール化合物類、有機硼素錯体類、カルボニル化合物類、有機過酸化物類等が挙げられる。
【0048】そのチタノセン化合物類としては、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4−ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕等が挙げられる。
【0049】又、そのヘキサアリールビイミダゾール化合物類としては、具体的には、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−フルオロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジブロモフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−ヨードフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o−クロロ−p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロナフチル)ビイミダゾール等が挙げられる。
【0050】又、その有機硼素錯体類としては、例えば、有機硼素アンモニウム錯体、有機硼素スルホニウム錯体或いは有機硼素オキソスルホニウム錯体、有機硼素ヨードニウム錯体、有機硼素ホスホニウム錯体、有機硼素遷移金属配位錯体等が挙げられ、又、そのカルボニル化合物類としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、安息香酸エステル誘導体等が挙げられ、又、その有機過酸化物類としては、例えば、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0051】本発明の感光性組成物として、前記エチレン性不飽和化合物含有ネガ型感光性組成物における前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物以外の前記重合開始剤の含有割合は、該組成物全体に対して0.1〜20重量%であるのが好ましく、0.5〜10重量%であるのが特に好ましい。
【0052】更に、本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が発生させる酸により架橋する化合物を含有し、露光部を不溶化させてネガ画像を形成するネガ型感光性組成物が挙げられる。
【0053】その架橋して不溶化する化合物として、例えば、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基、又はビニルエーテル基等を有する樹脂、具体的には、例えば、レゾール樹脂、メチロールメラミン樹脂、エポキシ化ノボラック樹脂、尿素樹脂誘導体等の光架橋性樹脂が挙げられる。
【0054】本発明の感光性組成物として、前記光架橋性樹脂含有ネガ型感光性組成物における前記光架橋性樹脂の含有割合は、該組成物全体に対して5〜70重量%であるのが好ましく、10〜60重量%であるのが特に好ましい。
【0055】更に、本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が発生させる酸により解離する化合物を含有し、露光部を可溶化させてポジ画像を形成するポジ型感光性組成物が挙げられる。
【0056】その解離して可溶化する化合物として、例えば、後述するバインダー樹脂として挙げるフェノール性水酸基含有樹脂中のアルカリ親和性基を、t−ブチルエステル基、t−ブトキシカルボニル基、シリル基、ケタール基、アセタール基等で置換した樹脂等の光分解性樹脂が挙げられる。
【0057】本発明の感光性組成物として、前記光分解性樹脂含有ポジ型感光性組成物における前記光分解性樹脂の含有割合は、該組成物全体に対して5〜70重量%であるのが好ましく、10〜60重量%であるのが特に好ましい。
【0058】更に、本発明の前記ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有する感光性組成物の好適な例として、可視画性を付与する前記色素又はその前駆体と共に用いられ、露光光源の光により解離して可溶化する化合物を含有し、露光部を可溶化させてポジ画像を形成するポジ型感光性組成物が挙げられる。
【0059】その解離して可溶化する化合物として、例えば、後述するバインダー樹脂として挙げるフェノール性水酸基含有樹脂をo−キノンジアジドスルホン酸或いはカルボン酸等でエステル化したo−キノンジアジド基含有化合物が挙げられる。尚、ここで、前者フェノール性水酸基に対する後者スルホン酸或いはカルボン酸の縮合反応率は、15〜80%であるのが好ましく、20〜45%であるのが更に好ましい。
【0060】又、そのo−キノンジアジドスルホン酸或いはカルボン酸等としては、具体的には、例えば、o−ベンゾキノンジアジトスルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸、o−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジトスルホン酸アミド、o−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸フェニル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸シクロヘキシル、o−ベンゾキノンジアジド−4(N−エチル−N−β−ナフチル)スルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−(ジヒドロアビエチル)−スルホン酸アミド、1,2,1’,2’−ビス(o−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニル)ジヒドロキシビフェニル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸−4’−ヒドロキシフェニル−4’−アゾ−β−ナフトール、N,N−ビス(1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル)アニリン、1’−(1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル)−3’,5’−ジメチルピラゾール、2’−(1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルオキシ)−1’−ヒドロキシアントラキノン、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンエステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸−2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンエステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド2モルと4,4’−ジアミノベンゾフェノン1モルとの縮合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド2モルと4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ジフェニルスルホン1モルとの縮合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド1モルとプルプロガリン1モルとの縮合物等が挙げられ、中で、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸が好ましい。
【0061】本発明の感光性組成物として、前記o−キノンジアジド基含有樹脂含有ポジ型感光性組成物における前記o−キノンジアジド基含有樹脂の含有割合は、該組成物全体に対して5〜60重量%であるのが好ましく、10〜50重量%であるのが特に好ましい。
【0062】本発明の感光性組成物として挙げた前記の、色素又はその前駆体含有可視画性感光性組成物、芳香族ジアゾ樹脂含有ネガ型感光性組成物、エチレン性不飽和化合物含有ネガ型感光性組成物、光架橋性樹脂含有ネガ型感光性組成物、光分解性樹脂含有ポジ型感光性組成物、及び、o−キノンジアジド基含有樹脂含有ポジ型感光性組成物等には、塗膜性や現像性等の向上を目的として、通常、バインダー樹脂として、カルボキシル基含有ビニル系樹脂、又は、フェノール性水酸基含有樹脂等のアルカリ可溶性樹脂が加えられる。
【0063】そのカルボキシル基含有ビニル系樹脂としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体等が挙げられ、これらのカルボキシル基含有ビニル系樹脂の酸価は30〜250KOH・mg/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1,000〜300,000であるのが好ましい。
【0064】更に、そのカルボキシル基含有ビニル系樹脂として、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するものが好適であり、具体的には、例えば、カルボキシル基含有重合体に、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマル酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有不飽和化合物を、カルボキシル基含有重合体の有するカルボキシル基の5〜90モル%、好ましくは30〜70モル%程度を反応させて得られた反応生成物、及び、アリル(メタ)アクリレート、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロトニル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド等の2種以上の不飽和基を有する化合物、又は、ビニル(メタ)アクリレート、1−クロロビニル(メタ)アクリレート、2−フェニルビニル(メタ)アクリレート、1−プロペニル(メタ)アクリレート、ビニルクロトネート、ビニル(メタ)アクリルアミド等の2種以上の不飽和基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、又は更に不飽和カルボン酸エステルとを、前者の不飽和基を有する化合物の全体に占める割合を10〜90モル%、好ましくは30〜80モル%程度となるように共重合させて得られた反応生成物等が挙げられる。
【0065】又、そのフェノール性水酸基含有樹脂としては、具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させたノボラック樹脂、前記ノボラック樹脂の重縮合における酸性触媒に代えてアルカリ性触媒を用いる以外は同様にして重縮合させたレゾール樹脂、及び、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させたポリビニルフェノール樹脂等が挙げられ、これらのフェノール性水酸基含有フェノール樹脂は、重量平均分子量が1,500〜50,000であるのが好ましい。
【0066】本発明の感光性組成物として、前記各感光性組成物における前記アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、該組成物全体に対して20〜95重量%であるのが好ましく、40〜90重量%であるのが特に好ましい。
【0067】尚、本発明の感光性組成物には、更に、必要に応じて、各種添加剤、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の熱重合防止剤、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤、三級アミン、チオール等の感度改善剤、フッ素系等の界面活性剤等の塗布性改良剤や現像促進剤等が添加されていてもよい。
【0068】本発明の感光性組成物としての前記各種の感光性組成物の中で、芳香族ジアゾ樹脂含有ネガ型感光性組成物、及び、エチレン性不飽和化合物含有ネガ型感光性組成物は、例えば感光性平版印刷版としての保存時、感光性層を形成する感光性組成物中のビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の凝集が発生し易いことから、本発明の感光性組成物をこれらの感光性組成物として用いるにおいて本発明の効果を顕著に発現することができるので、特に好ましい。
【0069】本発明の前記感光性組成物の感光性材料としての使用形態は、使用目的に応じた種々の形態を採り得るが、本発明の感光性組成物は、該組成物を適当な溶媒に溶解した溶液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥することにより、支持体表面に本発明の感光性組成物の層が形成された感光性平版印刷版としての使用形態が好適である。
【0070】ここで、その溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の高極性溶媒、或いはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0071】又、その支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中で、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板が特に好ましい。
【0072】又、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布量は用途により異なるが、乾燥膜厚として、通常、0.5〜100μmの範囲であり、例えば、平版印刷版の場合には0.5〜5μm、更に好ましくは1〜3μmとする。尚、その際の乾燥温度としては、例えば、30〜150℃程度、好ましくは40〜110℃程度、乾燥時間としては、例えば、5秒〜60分間程度、好ましくは10秒〜30分間程度が採られる。
【0073】尚、前記感光性組成物層の上には、酸素による重合禁止作用を防止するために、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、セルロース等の酸素遮断層が設けられてもよい。
【0074】本発明の前記感光性組成物を画像露光する光源としては、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ等、並びに、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられ、これらの光源により、通常、走査露光した後、現像液にて現像し画像が形成される。
【0075】本発明の前記感光性組成物を画像露光した感光材の現像に用いる現像液としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、又は、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物等の0.05〜10重量%程度の水溶液からなるアルカリ現像液が用いられる。
【0076】又、前記現像液には、画質向上、現像時間の短縮等を目的として、必要に応じて、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン性、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性、アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性の界面活性剤を添加することができる。
【0077】又、前記現像液には、有機シラン化合物等の消泡剤等を更に添加することができるが、有機溶剤を含有しないのが好ましく、添加するとしてもその量を0.5重量%以下とするのが好ましい。
【0078】尚、現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、好ましくは10〜40℃程度の温度、10〜80秒程度の時間でなされる。
【0079】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】実施例1〜5、比較例1〜2砂目立て処理及び陽極酸化処理を施したアルミニウム板(厚さ0.3mm)を支持体として用い、該アルミニウム板支持体表面に、下記(1)〜(7)の化合物からなる感光性組成物を該組成物重量の2倍量のメチルセロソルブに室温で攪拌して調液した塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、乾燥させて膜厚1.5μmの感光性組成物層を形成することにより感光性平版印刷版を作製した。
【0081】
(1)エチレン性不飽和化合物 ペンタエリスリトールテトラアクリレート 6.4重量% (2)ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物 下記に示す化合物A〜G 各1.0重量% (3)光重合開始剤 ジシクロペンタジエニルチタニウムビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕 0.3重量% (4)芳香族ジアゾ樹脂 下記製造例の樹脂 1.3重量% (5)バインダー樹脂 2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルメタクリレート(48重量%)
/ビニルメタクリレート(36重量%)/アクリロニトリル(6重量%)/メタクリル酸(10重量%)の四元共重合体樹脂(重量平均分子量230,000)
89.4重量% (6)色素 ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学社製) 0.8重量% (7)現像性向上剤 ジュリマーAC−10L(日本純薬社製) 0.8重量%
【0082】ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物A;下記構造の2−(4’−アセトキシ−3’−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.01重量%以下)。
【0083】
【化4】


【0084】B;下記構造の2−(4’−アセトキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.01重量%以下)。
【0085】
【化5】


【0086】C;下記構造の2−(4’−バレリルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.01重量%以下)。
【0087】
【化6】


【0088】D;下記構造の2−(3’−バレリルオキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.01重量%以下)。
【0089】
【化7】


【0090】E;下記構造の2−(3’−ヒドロキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.01重量%以下)。
【0091】
【化8】


【0092】F(比較例用);下記構造の2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.025重量%超過)。
【0093】
【化9】


【0094】G(比較例用);下記構造の2−(4’−ヒドロキシエトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(水に対する溶解性0.01重量%以下、水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解性0.025重量%超過)。
【0095】
【化10】


【0096】芳香族ジアゾ樹脂の製造例p−ジアゾジフェニルアミン硫酸塩21.75g(75ミリモル)とp−ヒドロキシ安息香酸3.5g(25ミリモル)とを、氷冷下で90gの濃硫酸に溶解し、その溶液にパラホルムアルデヒド2.7g(90ミリモル)を10℃以下に保持しつつ添加し、攪拌して2時間反応させた後、反応液を1リットルのエタノールに滴下し、生じた沈澱物を濾別し、エタノールで洗浄した。引き続いて、沈澱物を200ミリリットルの純水に溶解し、10.5gの塩化亜鉛を溶解した水溶液を加え、生じた沈澱物を濾別し、エタノールで洗浄した後、300ミリリットルの純水に溶解した。この溶液にヘキサフルオロ燐酸アンモニウム13.7gを溶解した水溶液を添加し、生じた沈澱物を濾別し、水及びエタノールで洗浄した後、30℃で1日乾燥させることにより、対アニオンがヘキサフルオロ燐酸アニオンであり、重量平均分子量が2,300の芳香族ジアゾ樹脂を得た。
【0097】得られた各感光性平版印刷版の版面を合い紙で10回擦った後、55℃のドライサーモで3日間保存した後の版面に析出した結晶の有無を目視にて観察し、その結果を表1に示した。
【0098】更に、保存後の各感光性平版印刷版を用いて、版上に175線、3〜97%の網点画像の銀塩マスクシートを真空密着させ、露光光源として2kWメタルハライドランプを用い、60cmの距離から60秒間照射することにより露光した後、花王社製現像液(「ペレックスNBL」)3重量%、トリエタノールアミン3重量%、ベンジルアルコール3重量%を含有する水溶液からなる現像液に25℃で20秒間浸漬した後、脱脂綿で軽く擦って現像することにより、平版印刷版上に3〜97%の網点画像を形成させ、その際の97%網点画像の再現性を目視にて観察し、10cm2 の画像部中にs−トリアジンの析出結晶による画像欠落(通常、100〜1000μmの欠落)が5個未満であるものを「良好」、5個以上であるものを「不良」として評価し、結果を表1に示した。
【0099】
【表1】


【0100】
【発明の効果】本発明によれば、経時によるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物の凝集がなく、保存安定性に優れる感光性組成物、及び該感光性組成物を用いた感光性平版印刷版を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エステル結合を含む置換基を有するフェニル基を置換基として少なくとも有し、且つ、水不溶性及びアルカリ不溶性であるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】 エステル結合がカルボン酸エステルに由来するものである請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】 水酸基で置換された置換基をo−位又はm−位に有するフェニル基を置換基として少なくとも有し、且つ、水不溶性及びアルカリ不溶性であるビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項4】 ビス(トリハロメチル)−s−トリアジン化合物が、下記一般式(I) で表されるものである請求項1乃至3のいずれかに記載の感光性組成物。
【化1】


〔式(I) 中、Xは塩素原子、又は臭素原子を示し、Rはアシルオキシ基、又はアシルオキシ基若しくは水酸基を置換基として有する置換基を示し、エチレン結合は置換基を有していてもよく、ベンゼン環はRの外に置換基を有していてもよく、lは0〜3の整数である。〕l
【請求項5】 感光性組成物が芳香族ジアゾ樹脂を含有するネガ型のものである請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項6】 感光性組成物がエチレン性不飽和化合物を含有するネガ型のものである請求項1乃至4のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項7】 支持体表面に、請求項1乃至6のいずれかに記載の感光性組成物からなる層が形成されてなることを特徴とする感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2001−154350(P2001−154350A)
【公開日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−339754
【出願日】平成11年11月30日(1999.11.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】